説明

子守帯

【課題】 子供の頭部上方空間に入射する光の強さを調節することのできる子守帯を提供する。
【解決手段】 子守帯1は、子供を保持する子供保持部材10と、使用者が装着する装着ベルト2と、子供保持部材10に取付けられ子供の頭部の上方空間を覆うように延在する幌部材20とを備える。幌部材20は、内側幌布21と、外側幌布22とからなる2重構造を有している。内側幌布21と外側幌布22とは材質が異なる。外側幌布22は、内側幌布21の全領域を覆う閉鎖位置から、内側幌布21の全領域を開放する開放位置にまで畳むことができるようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、子供を抱っこしたり、背負ったりするための子守帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
子守帯は、子供を保持するための子供保持部材と、使用者が装着する装着ベルトとを備える。子守帯によって子供を抱っこしたり、背負ったりして戸外に出るとき、紫外線を含んだ強い直射日光が子供の顔に当たるのを避けたい。
【0003】
特開2004−248879号公報(特許文献1)は、日除けや風塵除けとして機能するつば部を設けたベビーキャリアを開示している。具体的には、ベビーキャリアは、幼児の背面側にあてがう本体部と、この本体部の頭部側周縁から立ち上がるガード部と、基端縁がガード部の上端縁に取付けられて起立可能なつば部とを備えている。
【特許文献1】特開2004−248879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2004−248879号公報に開示されたつば部は、子供の頭頂部のみを覆う大きさのものであり、種々の方向から子供の顔に向かって差し込んでくる日差しを十分に防ぐことができない。特に子供の顔の側方から差し込んでくる日差しを十分に防ぐことができない。
【0005】
また、特開2004−248879号公報に開示された子守帯のつば部は、起立して子供の頭部上方空間を覆う起立位置と、下方に反転して子供の頭部上方空間を開放する開放位置とに選択的に切換え可能になっている。子供に対してより良い環境を与えるためには、このような2状態の切換だけでは不十分である。すなわち、日差しの強さに関して言えば、非常に強烈な日差しのときもあれば、それほど強くない日差しのときもある。さらに、風の強さに関しても、強弱がある。特開2004−248879号公報に開示されたつば部付き子守帯では、入射する光の強さの調節や、入り込む風の強さの調節を行うことができない。
【0006】
この発明の目的は、子供の頭部上方空間に入射する光の強さを調節することのできる子守帯を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、種々の方向からの日差しが子供の顔に当たるのを防ぐことのできる子守帯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従った子守帯は、子供を保持する子供保持部材と、使用者が装着する装着ベルトと、子供保持部材に取付けられ、子供の頭部の上方空間を覆うように延在する幌部材とを備える。幌部材は、内側幌布と外側幌布とからなる2重構造を有している。内側幌布と外側幌布とは、材質が異なる。また、外側幌布は、内側幌布の全領域を覆う閉鎖位置から、内側幌布の全領域を開放する開放位置にまで畳むことができるようにされている。
【0009】
上記構成の本発明によれば、少なくとも次の3状態を実現できる。
【0010】
(1)第1の状態
内側幌布および外側幌布の2重構造で子供の頭部上方空間を覆う状態であり、光および風の遮断効果が高い。
【0011】
(2)第2の状態
外側幌布を開放位置にまで畳み、内側幌布のみで子供の頭部上方空間を覆う状態であり、光や風の強さを緩和する効果がある。
【0012】
(3)第3の状態
内側幌布および外側幌布の両者を開放位置にまで畳み、子供の頭部上方空間を開放する状態である。
【0013】
この発明の一実施形態では、内側幌布は、目の細かいメッシュ地で形成され、外側幌布は、光反射性素材で形成されている。
【0014】
好ましくは、子供保持部材の背当て部の背面には、光反射性素材が貼り付けられている。子供を横抱き状態で抱っこする場合、子供保持部材の背当て部は、道路の路面に対面する。この場合、子供保持部材の背当て部の背面に貼り付けられた光反射性素材は、路面からの輻射熱を反射する。好ましくは、外側幌布の光反射性素材と背当て部背面の光反射性素材とは、隙間無く連続的に形成されている。
【0015】
好ましくは、幌部材は、立体的な形状を維持し得るように逆U字状の形状で幅方向に延びる第1幌骨および第2幌骨と、第1幌骨および第2幌骨を回動可能に支持するベース部材とを備える。内側幌布は、第1幌骨および第2幌骨に接続されている。このように回動可能な第1幌骨および第2幌骨を備えることにより、大きな面積で子供の頭部上方空間を覆うことができる。また、幌骨が回動可能であるので、幌部材の開き角度を適度に調節することができる。
【0016】
好ましくは、外側幌布を閉鎖位置から開放位置にまで引き寄せる引き寄せ手段を備える。このような引き寄せ手段を備えることにより、外側幌布の畳み動作が容易になる。引き寄せ手段は、例えば、外側幌布の先端部に連結された紐と、紐を受入れて外側幌布の先端部から基端部にまで延びるように外側幌布に形成された紐案内通路とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明の一実施形態に係る子守帯の使用状態を示している。子守帯1は、子供を保持する子供保持部材10と、母親等の使用者が装着する装着ベルト2と、子供保持部材10に取付けられ、子供の頭部上方空間を覆うように延在する幌部材20とを備える。子供保持部材10と装着ベルト2とは複数の箇所で接続されている。図1は、子供を横抱きの状態で抱っこしており、装着ベルト2は使用者の肩にたすき掛けの状態で使用されている。
【0018】
子供保持部材10は、子供の背中部分を支える背当て部11を有しており、この背当て部11の上方端部分は、上方に屈曲して立ち上がり、子供の頭頂部を覆うように形成されている。
【0019】
図2に示すように、幌部材20は、立体的な形状を維持し得るように逆U字状の形状で幅方向に延びる第1幌骨24と、第2幌骨25と、第1および第2幌骨を軸26を介して回動可能に支持するベース部材23と、第1幌骨24および第2幌骨25に接続されている内側幌布21と、内側幌布21上に重なるように配置された外側幌布22とを備える。
【0020】
幌部材20のベース部材23は、子供保持部材10の背当て部11の上方端に取外し可能に連結される。2重構造を形成する内側幌布21と外側幌布22とは、材質が異なる。例えば、内側幌布21は、目の細かいメッシュ地で形成され、外側幌布22は、光反射性素材で形成されている。
【0021】
外側幌布22は、図2に示す内側幌布21の全領域を覆う閉鎖位置から、図4に示す内側幌布21の全領域を開放する開放位置にまで畳むことができるようにされている。このような外側幌布22の畳み動作を容易に行うために、幌部材20は、外側幌布22を閉鎖位置から開放位置にまで引き寄せる引き寄せ手段を備える。
【0022】
図5〜図7を参照して、引き寄せ手段の詳細を説明する。引き寄せ手段は、外側幌布22の先端部分に入れられている補強線30に連結された2本の紐27,27と、紐27を受入れて外側幌布22の先端部から基端部にまで延びるように外側幌布22に形成された2つの紐案内通路28,28と、2つの紐案内通路28,28から出てきた紐27,27を抵抗を加えながら通過させる紐通し部材29とを備える。
【0023】
図2および図5に示す状態から、紐27を後方に引出すと、外側幌布22だけが内側幌布21上を後方に向かって移動する。図3および図6は、第1幌骨24と第2幌骨25との間に位置する内側幌布21を露出させている状態を示し、図4は内側幌布21の全領域を露出させている状態を示している。
【0024】
2本の紐27,27を同時に後方に引出せば、外側幌布22の幅方向の左右部分を同時に後方に向かって移動させることが可能である。他方、2本の紐27,27のうち例えば幅方向に見て左側に位置する紐27のみを後方に引出せば、外側幌布22の幅方向の左側部分のみを後方に移動させることが可能になる。
【0025】
図1に示すように、子供を横抱きの状態で抱っこする場合、子供保持部材10の背当て部11が道路の路面に対面するようになる。道路からの輻射熱を反射するために、図8に示すように子供保持部材10の背当て部11の背面には、光反射性素材31が貼り付けられている。好ましくは、光反射性素材で形成された外側幌布22と、背当て部11の背面に貼り付けられた光反射性素材31とは、隙間無く連続的に形成されている。図8において、光反射性素材が位置する領域に斜線を施している。
【0026】
幌部材20の役割は、光や風が子供の頭部上方空間に入り込むのを遮断するということのみならず、子供の顔の周囲の明るさを適度に調節するという機能も併せ持つ。このような明るさ調節機能は、幌部材20が内側幌布21と外側幌布22とからなる2重構造を有していることによって実現可能となるものである。
【0027】
図1〜図8に示した実施形態によれば、以下の状態を実現できる。
【0028】
(1)第1の状態
内側幌布21および外側幌布22の2重構造で子供の頭部上方空間を覆う状態であり、光および風等の遮断効果が高い。この第1の状態は、図2および図5に示す状態である。
【0029】
(2)第2の状態
外側幌布22を開放位置にまで畳み、内側幌布21のみで子供の頭部上方空間を覆う状態であり、光や風等の強さを緩和する効果がある。この第2の状態は、図4に示す状態である。
【0030】
(3)第3の状態
内側幌布21および外側幌布22の両者を開放位置にまで畳み、子供の頭部上方空間を開放する状態である。
【0031】
上記の3状態に加えて、次の状態も実現可能である。
【0032】
(4)第4の状態
外側幌布22を途中位置まで畳み、内側幌布21のほほ半分の領域を露出させる状態である。この状態は、図3および図6に示す状態である。
【0033】
(5)第5の状態
第1幌骨24を第2幌骨25にほぼ重なる位置まで移動させ、幌部材20の展開角度をほほ半分にした状態である。
【0034】
(6)第6の状態
外側幌布22の幅方向左右領域の畳み動作を不均一にし、内側幌布21の幅方向の左側領域または右側領域の一方のみを露出させる状態である。
【0035】
周囲の気象条件、周囲の明るさ、子供の状態等に応じて幌部材の形態を適切に変更することにより、子供に対して最適な環境を与えることができる。例えば、子供保持部材10内の子供が眠っているときには、ある程度の通気性を維持しながら明るさの度合いを弱めるために、内側幌布21のみで子供の頭部上方空間を覆うようにすることが可能である。
【0036】
図示した実施形態では、子供を母親の前で横抱きしている状態を示したが、子供を母親の前で縦抱きしている状態や、背中側で背負う状態にした子守帯にも、この発明を適用することが可能である。
【0037】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明は、子供に対して快適な使用環境を与える子守帯として有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施形態に係る子守帯の使用状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る幌部材を側方から見た縦断面図である。
【図3】図2に示す状態から、外側幌布を途中位置まで畳んだ状態を示す縦断面図である。
【図4】図2に示す状態から、外側幌布を開放位置にまで畳んだ状態を示す縦断面図である。
【図5】この発明の一実施形態に係る幌部材の平面図である。
【図6】外側幌布を途中位置にまで畳んだ状態の幌部材の平面図である。
【図7】外側幌布を閉鎖位置から開放位置にまで引き寄せる引き寄せ手段の一例を示す断面図である。
【図8】子供保持部材の背面側を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 子守帯、2 装着ベルト、10 子供保持部材、11 背当て部、11a 背当て部の上方端部分、20 幌部材、21 内側幌布、22 外側幌布、23 ベース部材、24 第1幌骨、25 第2幌骨、26 軸、27 紐、28 紐案内通路、29 紐通し部材、30 補強線、31 光反射性素材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子供を保持する子供保持部材と、
使用者が装着する装着ベルトと、
前記子供保持部材に取付けられ、子供の頭部の上方空間を覆うように延在する幌部材とを備え、
前記幌部材は、内側幌布と外側幌布とからなる2重構造を有しており、
前記内側幌布と前記外側幌布とは、材質が異なり、
前記外側幌布は、前記内側幌布の全領域を覆う閉鎖位置から、前記内側幌布の全領域を開放する開放位置にまで畳むことができるようにされている、子守帯。
【請求項2】
前記内側幌布は、目の細かいメッシュ地で形成され、
前記外側幌布は、光反射性素材で形成されている、請求項1に記載の子守帯。
【請求項3】
前記子供保持部材の背当て部の背面には、光反射性素材が貼り付けられている、請求項1または2に記載の子守帯。
【請求項4】
前記幌部材は、立体的な形状を維持し得るように逆U字状の形状で幅方向に延びる第1幌骨および第2幌骨と、
前記第1幌骨および第2幌骨を回動可能に支持するベース部材とを備え、
前記内側幌布は、前記第1幌骨および第2幌骨に接続されている、請求項1〜3のいずれかに記載の子守帯。
【請求項5】
前記外側幌布を前記閉鎖位置から前記開放位置にまで引き寄せる引き寄せ手段を備える、請求項1〜4のいずれかに記載の子守帯。
【請求項6】
前記引き寄せ手段は、前記外側幌布の先端部に連結された紐と、
前記紐を受入れて前記外側幌布の先端部から基端部にまで延びるように前記外側幌布に形成された紐案内通路とを備える、請求項5に記載の子守帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−271858(P2006−271858A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99002(P2005−99002)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)