説明

孔版印刷装置、製版給版装置および孔版印刷方法

【課題】多数の独立ドットで穿孔製版されたマスタを用いてエリア指定の印刷をした場合にも、印刷物等のニス印刷表面に穿孔の影響を受けた凹凸が形成されることもなく、均一で平滑なニス塗布・印刷が可能になることで、印刷物等に光沢を付与したり耐こすり性を付与したりして、印刷物等を高付加価値化することができる孔版印刷装置、製版給版装置および孔版印刷方法を提供する。
【解決手段】給版手段(給版ローラ上・下73,74、給版ファン下76、給版ファン上77、先端クランパ19、先端クランパ開閉装置84、後端クランパ28、後端クランパ開閉装置85および印刷ドラム回転駆動装置83)は、ニス印刷用印刷ドラム21Aの版胴20外周面に製版済みのマスタ18を巻装するとき、フィルム18a側が印刷ドラム21Aの版胴20外周面側に、多孔質支持体18b側が外側になるように巻装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷装置、製版給版装置および孔版印刷方法に関し、詳しくは、孔版印刷方式を利用して、印刷済みのシートの表面に紫外線硬化型ニス等の粘液性のコーティング液の塗布・印刷を行う孔版印刷装置、この孔版印刷装置に配設される製版給版装置および上記孔版印刷装置を使用した孔版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
簡便な印刷方式として、デジタル感熱式に孔版印刷を行えるデジタル製版式孔版印刷機(以下、単に「孔版印刷装置」ともいう)が知られている。この孔版印刷装置では、多数の微細な発熱素子が主走査方向に配列されたサーマルヘッドを孔版原紙とも呼ばれる感熱孔版マスタ(以下、「マスタ」という)に接触させ、各発熱素子にパルス的に通電させながら主走査方向と直交する副走査方向(マスタ搬送方向)にマスタを搬送することで、画像情報・画像データに応じてマスタを加熱溶融穿孔し、この製版済みのマスタを多孔性円筒状の版胴を外周に備えた印刷ドラムの該版胴外周面に巻装した後に、シート状の記録媒体ないしは被印刷媒体としての印刷用紙(以下、単に「用紙」ともいう)を介して版胴外周面をプレスローラ等の押圧手段によって押圧することにより、版胴内周に供給されたインキを版胴の開孔部分、製版済みのマスタの穿孔部分より通過させて用紙に転移させることによって印刷画像を得るものである。以下、印刷ドラムのことを単に「ドラム」というときがある。
【0003】
上述の孔版印刷装置は、ランニング・コストが低く、高速に印刷できるため、文教市場や官公庁、組合団体、病院等における各種配布物や書式等の印刷に、また新聞の折込広告、不動産の広告、民間企業内連絡文書などの、印刷物を多枚数印刷するために広く利用されている。それは、安価な装置によりフリーオペで誰でも簡単にいつでも印刷ができるという特徴を生かしているからである。
【0004】
そしてそこで使われているインキは黒色または各種のカラーであり、その目的は全て目視確認ができる印刷画像を形成することにあり、そこで透明ないし半透明のインキを用いるという発想はなかった。
但し、孔版印刷装置で紫外線硬化型のインキを用いて印刷画像のインキを硬化させることについては既に知られており、例えば特許文献1には、孔版印刷装置の排紙側に接続して使用する印刷用紙搬送兼紫外線照射装置に関して開示されている。
【0005】
一方、オフセット印刷やグラビア印刷において、印刷後に光沢の付与や印刷面の保護を目的にしてニスコートを行うことは既に知られている。その場合一般には印刷物の全面にニスを塗布するニスコーター装置として多数知られている。
ニス印刷という観点では、例えば特許文献2には、グラビア印刷されたパッケージヘのニス印刷において、ロゴ印刷部のニス厚さを大にする製版と印刷とに関して開示されている。
【0006】
また、本発明に一見類似するものとしては、例えば特許文献3があり、これには印刷用紙や印刷物の特定エリアに液体噴射ノズルによって紫外線硬化型ニスを噴射し、その後、紫外線を照射して硬化させることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−64878号公報
【特許文献2】特開2002−225448号公報
【特許文献3】特開2004−313829号公報
【特許文献4】特許第3288808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、孔版印刷方式で紫外線硬化型ニスを印刷するという技術に関しては、今まで開示されているものはない。デジタル製版式孔版印刷装置では、これまでは黒印刷が主流で、たまに赤や青のカラー印刷が行われるが、透明ないし半透明なニス印刷という用途では使われることはなく、そういった使われ方は不可能と思われていた。
【0009】
そこで、本発明は、デジタル製版式孔版印刷装置が、手軽に誰でも簡単な操作で印刷することができることから広くフリーオペレータで比較的小部数の印刷に多用されている事情に鑑み、簡単な操作で印刷可能な孔版印刷装置を活用して、小部数のカード、封筒や小パッケージあるいは印刷物表紙等に簡単に高付加価値を与えるニス印刷をすることを可能にすることが主な狙いである。
【0010】
本発明者は、上記本発明の狙いに着目し、既存のデジタル製版式孔版印刷装置を用いて、紫外線硬化型ニス(以下、単に「ニス」ともいう)を印刷ドラム内に供給し、従来のマスタを用いて所定画像をニス印刷する試験を実施した結果、新たな課題を発見・見出した。この試験の詳細内容は、後述の実施形態における比較試験で補説する。本発明は、この新たな課題を解決するためになされたものである。印刷用紙または印刷物の表面に所定画像のニス印刷または全面エリアのニスコートを行うことの目的は、主に以下の3つである。
(1)耐擦性の付与:印刷物の表面を物理的にこすられても画像には影響がないように表面に保護層を形成する。
(2)高級感の付与:画像表面に透明な光沢層を形成することで、画像に高級感を持たせる。
(3)画像インキ層の保護:印刷画像のインキ等が空気や風雨によって変色、変質、汚れが発生することを防止する。
ここで、(1)〜(3)に記載した「画像」とは、孔版印刷による画像やオフセット印刷による画像、あるいはインクジェット印刷によるインキ画像等を含む主として印刷画像を意味するが、定着後のトナー画像等を含んでもよい広い用語概念を意味する(以下、同様)。
【0011】
こうした目的を効率よく達成するためは、ニス液を用紙表面に均一かつ平滑に必要最小限の厚さで、塗布・印刷することが求められる。本発明者は次の2つの問題点・課題があることを見出してその解決策を検討した。すなわち、第1に、孔版印刷の場合には、マスタを構成する熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)に形成された多数の独立孔を通過させたインキを用紙表面に転移させることで印刷を行うために、転移したインキやニスは独立ドットを形成してしまい、均一かつ平滑にはなりにくいという問題がある。
第2には、マスタのフィルムに形成された孔は、その直径が約30μmと小さいために、ニスに粘性があり過ぎると用紙表面への転移量が不十分で光沢を発生させるに必要な量が転移されないという問題もある。
しかしながら、画像データに対応した所定エリアに、孔版印刷でニス印刷をするためには上記のように孔版製版されたマスタを用いてニス印刷をする必要がある。
【0012】
なお、本発明に一見類似の発明に関してさらに言及すると、特許第3288808号公報(特許文献4)が挙げられる。この技術では2つの版胴のうち、後流側の版胴においてマスタを未製版状態で和紙(多孔質可撓性の支持体)側が外側になるようにして、版胴に装着することが開示されている。しかし、その目的は孔版印刷された印刷物のインキを吸収して汚れの発生を防止しようとするものであり、その目的(過剰インキの除去)とマスタの使い方(未製版マスタを使う)と効果(画像汚れの防止)とが、本発明とは全く異なるものであることを付記しておく。
【0013】
従って、本発明は、デジタル製版式孔版印刷装置が、手軽に誰でも簡単な操作で印刷することができることから広くフリーオペレータで比較的小部数の印刷に多用されている事情の下で、上記問題点・課題に鑑みてなされたものであり、多数の独立ドットで穿孔製版されたマスタを用いてエリア指定の印刷をした場合にも、印刷物等(小部数のカード、封筒や小パッケージあるいは印刷物表紙等)のニス印刷表面に穿孔の影響を受けた凹凸が形成されることもなく、均一で平滑なニス塗布・印刷が可能になることで、印刷物等に光沢を付与したり耐こすり性を付与したりして、印刷物等を高付加価値化することができる孔版印刷装置、製版給版装置および孔版印刷方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述の課題を解決するとともに上述の目的を達成するために、請求項毎の発明では、以下のような特徴ある手段・構成を採っている。
請求項1記載の発明は、画像データに基づいてマスタに穿孔製版する製版手段と、穿孔製版されたマスタを外周面に巻装する印刷ドラムと、穿孔製版されたマスタを搬送して前記印刷ドラムの外周面に巻装させる給版手段と、前記印刷ドラムの内部に配設され該印刷ドラム上の製版済みのマスタに粘液性のコーティング液を供給するコーティング液供給手段と、給送されてくる印刷済みのシートを前記印刷ドラム上の製版済みのマスタに押し付ける押圧手段とを有し、印刷済みのシートの所定範囲に前記コーティング液で印刷する孔版印刷装置であって、前記マスタは、熱可塑性樹脂フィルムと前記コーティング液通過性の多孔質支持体とからなり、前記給版手段は、前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装することを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、前記印刷ドラムおよび前記コーティング液供給手段は、一体化されて印刷装置本体に対して着脱可能なコーティング用ドラムユニットを構成しており、孔版印刷用のインキを供給するインキ供給手段を内部に備えた孔版印刷用印刷ドラムを有し、該孔版印刷用印刷ドラムおよび前記インキ供給手段は、一体化されて前記印刷装置本体に対して着脱可能な孔版印刷用ドラムユニットを構成していることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、前記給版手段は、前記印刷ドラムの外周面に製版済みのマスタを巻装するとき、前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装するコーティング用給版方向と、前記孔版印刷用印刷ドラムの外周面に製版済みのマスタを巻装するとき、前記多孔質支持体側が前記孔版印刷用印刷ドラムの外周面側に、前記熱可塑性樹脂フィルム側が外側になるように巻装する孔版印刷用給版方向とに切り替える給版方向切替手段を有しており、前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、
前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、前記コーティング用給版方向となるように前記給版方向切替手段を制御する第1の制御手段とを具備することを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の孔版印刷装置において、画像データを処理して穿孔製版するための製版画像データを作製し、該製版画像データを前記製版手段に送り出す画像出力手段を有し、
前記画像出力手段は、前記画像データを孔版印刷用に鏡像処理して得られた製版画像データを前記製版手段に送り出す標準モードと、前記画像データを前記標準モードとはマスタ搬送方向に対し逆になるように処理して得られた製版画像データを前記製版手段に送り出すコーティングエリアモードの両方のモードを実行可能に構成されており、前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、前記コーティングエリアモードを実行するように前記画像出力手段を制御する第2の制御手段とを具備することを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項2ないし4の何れか一つに記載の孔版印刷装置において、前記製版手段に穿孔用エネルギーを供給するエネルギー供給手段と、前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、前記孔版印刷用ドラムユニットの装着が認識されたときに比べて、前記穿孔用エネルギーを大きくするように前記エネルギー供給手段を制御する第3の制御手段とを具備することを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項2ないし5の何れか一つに記載の孔版印刷装置において、前記孔版印刷用ドラムユニットを前記印刷装置本体に装着して印刷を行う孔版印刷モードおよび前記コーティング用ドラムユニットを前記印刷装置本体に装着してコーティング液で印刷を行うコーティング孔版印刷モードの何れか一方を選択設定するモード選択設定手段と、前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、前記選択設定手段により孔版印刷モードが選択設定されている場合であって、前記ドラムユニット種類認識手段により前記孔版印刷用ドラムユニットの装着が認識されているときには、入力と動作を許容し、前記選択設定手段によりコーティング孔版印刷モードが選択設定されている場合であって、前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されているときには、入力と動作を許容するよう制御する第4の制御手段とを有することを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項2ないし6の何れか一つに記載の孔版印刷装置において、前記コーティング用ドラムユニットと前記孔版印刷用ドラムユニットとは、前記ドラムユニット種類認識手段により認識される被認識手段、製版済みのマスタの端部を保持するマスタ保持手段および印刷に使用するコーティング液、インキを除き、共通する構成部品および部材から構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか一つに記載の孔版印刷装置において、前記コーティング液は、透明または半透明の紫外線硬化型ニスであり、前記孔版印刷装置のシート搬送方向後流側には印刷済みのシートの表面に塗布・印刷された前記ニスを硬化させるための紫外線照射装置が接続されていることを特徴とする。
【0022】
請求項9記載の発明は、画像データに基づいてマスタに穿孔製版する製版手段と、穿孔製版されたマスタを搬送して印刷ドラムの外周面に巻装させる給版手段とを有する製版給版装置において、前記マスタは、熱可塑性樹脂フィルムと粘液性のコーティング液通過性の多孔質支持体とからなり、前記給版手段は、前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装することを特徴とする。
【0023】
請求項10記載の発明では、画像データに基づいてマスタに穿孔製版する製版手段と、穿孔製版されたマスタを外周面に巻装する印刷ドラムと、穿孔製版されたマスタを搬送して前記印刷ドラムの外周面に巻装させる給版手段と、前記印刷ドラムの内部に配設され該印刷ドラム上の製版済みのマスタに粘液性のコーティング液を供給するコーティング液供給手段と、給送されてくる印刷済みのシートを前記印刷ドラム上の製版済みのマスタに押し付ける押圧手段とを使用して、印刷済みのシートの所定範囲に前記コーティング液を用いて印刷する孔版印刷方法であって、前記マスタは、熱可塑性樹脂フィルムと前記コーティング液通過性の多孔質支持体とからなり、前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装して印刷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上述したような従来の技術の有する問題点・上記課題を解決して上記目的を達成することができる新規な孔版印刷装置、製版給版装置および孔版印刷方法を提供することができる。請求項毎の効果を挙げれば次のとおりである。
【0025】
請求項1記載の発明によれば、給版手段は、熱可塑性樹脂フィルム側が印刷ドラムの外周面側に、多孔質支持体側が外側になるように巻装することにより、多数の独立ドットで穿孔製版されたマスタを用いて印刷物へのエリア指定の印刷をした場合にも、印刷物へのコーティング液塗布・印刷表面に穿孔の影響を受けた凹凸が形成されることもなく、均一で平滑なコーティング液塗布印刷が可能になり、印刷物に光沢を付与するとか耐こすり性を付与して、印刷物を高付加価値化することができる。
【0026】
請求項2記載の発明によれば、上記構成により、コーティング用ドラムユニットと孔版印刷用ドラムユニットとを交換するだけで、従来の孔版印刷用のインキを供給してシートに孔版印刷を行う従来の孔版印刷と、印刷済みのシートの所定範囲にコーティング液で孔版印刷を行う本発明の孔版印刷とを簡単な装置構成で行うことができる。また、請求項7記載の発明を考慮すれば、コーティング用ドラムユニットと孔版印刷用ドラムユニットとの共通部品化を図れるので、省資源化にも寄与することができる。
【0027】
請求項3記載の発明によれば、第1の制御手段は、ドラムユニット種類認識手段によりコーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、コーティング用給版方向となるように給版方向切替手段を制御するので、マスタの表裏を誤って装着することが確実に防止される。
【0028】
請求項4記載の発明によれば、第2の制御手段は、ドラムユニット種類認識手段によりコーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、コーティングエリアモードを実行するように画像出力手段を制御するので、印刷ドラムに装着される製版済みのマスタの表裏が逆になるにもかかわらず、同じ画像での孔版用インキによる印刷をした場合の原稿を基準にしてコーティングエリアを決定した原稿を作成してその原稿を用いてそのままコーティング塗布・印刷をしても、必要な画像エリアに前後左右が逆になることなく所定のコーティング印刷が可能になる。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、第3の制御手段は、ドラムユニット種類認識手段によりコーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、孔版印刷用ドラムユニットの装着が認識されたときに比べて、穿孔用エネルギーを大きくするようにエネルギー供給手段を制御するので、製版時の穿孔径を大にすることが可能になって、コーティング液塗布・印刷時の通過転移量を増大させることが可能で、しかも印刷済みのシートへのコーティング液表面に製版時の穿孔の影響を受けた凹凸が形成されることがより確実に防止されるので、より一層均一で平滑なコーティング塗布・印刷が可能になり、印刷物に光沢を付与するとか耐こすり性を付与して、印刷物を高付加価値化することができるようになる。
【0030】
請求項6記載の発明によれば、第4の制御手段は、選択設定手段により孔版印刷モードが選択設定されている場合であって、ドラムユニット種類認識手段により孔版印刷用ドラムユニットの装着が認識されているときには、孔版印刷モード実行のための入力と動作を許容し、選択設定手段によりコーティング孔版印刷モードが選択設定されている場合であって、ドラムユニット種類認識手段によりコーティング用ドラムユニットの装着が認識されているときには、コーティング孔版印刷モード実行のための入力と動作を許容するよう制御するので、装着されているドラムユニットが指示・選択設定されたモードに合致しないために起こるトラブルを未然に防止することが可能となり、誤装着の場合にはユーザに警告することが可能となる。
【0031】
請求項8記載の発明によれば、上記構成により、紫外線の照射によって印刷物表面に塗布された紫外線硬化型ニス液を即時に硬化定着させることが可能になり、高級感を与えられた印刷物をそのまますぐに次の工程で取り扱うことが可能になる。
【0032】
請求項9記載の発明によれば、上記構成により、多数の独立ドットで穿孔製版されたマスタを用いて印刷物へのエリア指定の印刷をするような場合にも、印刷物へのコーティング液塗布・印刷表面に穿孔の影響を受けた凹凸が形成されることもなく、均一で平滑なコーティング液塗布印刷を可能とすることに寄与することができ、印刷物に光沢を付与するとか耐こすり性を付与して、印刷物を高付加価値化することに寄与することができる製版給版装置を実現し提供することができる。
【0033】
請求項10記載の発明によれば、上記構成により、多数の独立ドットで穿孔製版されたマスタを用いて印刷物へのエリア指定の印刷をした場合にも、印刷物へのコーティング液塗布・印刷表面に穿孔の影響を受けた凹凸が形成されることもなく、均一で平滑なコーティング液塗布印刷が可能になり、印刷物に光沢を付与するとか耐こすり性を付与して、印刷物を高付加価値化することができる孔版印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0035】
説明の都合上から、まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る図4に示すニス孔版印刷装置1Aによってニス印刷が行われた印刷物の内容を説明する。ここで、ニスとは、粘液性の透明(もしくは半透明)なコーティング液の一例としての紫外線硬化型ニス(以下、単に「ニス」もしくは「ニス液」ともいう)を指す。
【0036】
図1において、101は、印刷物もしくは印刷済みのシートである印刷済みの用紙を示し、これには既にオフセット印刷や孔版印刷や電子写真方式またはインクジェット方式等の手段で、写真画像部102および文字画像部103が形成されている。
写真画像部102および文字画像部103が形成された印刷物101を本実施形態の図4に示すニス孔版印刷装置1Aに通して、写真画像部102の部分だけを強調すべく所定エリア(領域)104にニス印刷による光沢を付与して目立つようにしたものである。但し、文字画像部103はそのままでニス印刷はしない。こうして写真画像部102のエリアは、写真画像部102の上に所定厚さのニスが印刷されているために、その写真画像にツヤがでて耐久性が向上し、耐濡れ性や耐こすり性も向上することとなる。また、見栄えがよくなり印刷物の価値を上げることができるようになる。
【0037】
図2は、第1の実施形態に係る図4等に示すニス孔版印刷装置1Aによって、あるいは図3に示す比較試験結果において、印刷済みの用紙12上にニス印刷を行った場合の、ニス孔版印刷部におけるマスタ18と印刷用紙(以下、「用紙」という)12の剥離部分を特に拡大して見た説明図である。マスタ18は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)18aと、和紙繊維や合成繊維、あるいは和紙繊維および合成繊維を混抄したもの等からなる多孔質支持体18bとを図示しない接着剤等を介して貼り合わせて構成された周知のものである。
【0038】
図2(a)では、図示しない印刷ドラム外周(版胴外周)に製版済みのマスタ18を従来の方法で巻装、すなわち多孔質支持体18b側を図示しない印刷ドラム外周面側に、フィルム18a面側を外側にして巻き付け装着して印刷した場合を示している。この方法では、製版済みのマスタ18のフィルム18aに形成された多数の独立穿孔18cを通過したニス8が用紙12表面に独立ドットを形成しながら転移するために、その表面は激しい凹凸になってしまう。
これを防止するにはニス8を相当程度・極端に低粘度にして、転移後に時間をかけて十分にレベリングしてから紫外線(以下、「UV」とも略称する)を照射して硬化させる必要がある。
【0039】
一方、図2(b)では、図示しない印刷ドラム外周に製版済みのマスタ18を従来と逆の方法で巻装、すなわちフィルム18a面側を図示しない印刷ドラム外周面側に、多孔質支持体18b側を外側にして巻き付け装着して印刷した場合、つまり本発明の場合を示している。この方法では、製版済みのマスタ18のフィルム18aに形成された多数の独立穿孔18cの影響を受けにくくなり、多孔質支持体18bを通過したニス8が用紙12表面に転移するために、その表面は凹凸になりにくくなる。従って、ニス8を若干低粘度にすることで時間をかけずに直ぐにUV照射をしても均一かつ平滑な表面を形成しやすくなる。
【0040】
(比較試験)
次に、図3を参照して、発明が解決しようとする課題の欄で説明した、本発明者が新たに見出した課題に係る比較試験について詳述する。本発明者は、サプライとしての有色の紫外線硬化型インキと、透明ないし半透明の紫外線硬化型ニスとの成分の類似性に着目して、既存のデジタル製版式孔版印刷装置を使用して、以下のニス印刷比較試験を行った。
【0041】
既存のデジタル製版式孔版印刷装置である、株式会社リコー製の「サテリオA650」を用い、紫外線硬化型ニスとして自社で試作した「顔料を含まず反応開始剤、モノマー、体質顔料などから成る透明なニス」を、従来使用されている黒色インキ(紫外線硬化型インキ)の粘度相当にすると共に、上記孔版印刷装置の印刷ドラムの内部に設けられているインキ供給手段(本比較試験では上記紫外線硬化型ニスを供給するのでニス供給手段となる)にニスを充填したニス印刷用印刷ドラムを用い、従来のマスタとして、株式会社リコー製の「サテリオマスタ」を用いて、ニス印刷用印刷ドラム外周面に図2に示した製版済みのマスタ18を従来の巻装方法と本発明の巻装方法とに分けてのニス印刷比較試験を実施した。この巻装方法以外の試験・印刷条件等は、同一の条件で実施した。
上記試作した紫外線硬化型ニスについてさらに言及すると、「原材料が有機溶剤等を使用していないモノマー、反応開始剤、体質顔料等からなるもの」が、従来の印刷ドラムおよびその内部に配設されるインキ供給手段とニス供給手段との共通部品化および互換性を図る上から、また取り扱いの容易さおよび環境に優しい点から好ましく用いられる。
【0042】
試験・印刷条件を補足すれば、同一の製版条件下で同一の穿孔用エネルギー(通電パルス幅)を供給して、両者において同一の製版済みのマスタ18を得て実施した。すなわち、製版済みのマスタ18としては、その独立穿孔18cの径は、共に25〜40μmであり、サーマルヘッドの主走査方向の解像度は共に600dpiで、副走査方向の解像度は共に600dpiであり、穿孔状態としては共に全ベタのものを用いた。
【0043】
比較試験におけるニス印刷用印刷ドラム外周面に対する製版済みのマスタ18の巻装方法としては、上記既存のデジタル製版式孔版印刷装置を実質的に改造することなく、サプライとしてのインキに代えて上記ニスを使用し、従来と同様に自動製版を行うことによって、上記した同一の製版済みのマスタ18を得て実施した。そして、本発明の給版・巻き付けが従来のそれと比べてフィルム18a面側と多孔質支持体18b側とが逆であるため、本発明に係る試験の給版・巻き付けについてはマニュアル(手動)操作でシワを発生させないように注意して実施した。比較試験に用いたマスタ18の種類および厚さ等の仕様は、両者で同一である。
勿論、後述の図4〜図9等に示す本発明の実施形態の孔版印刷装置1Aを使用して、これに特有の自動製版および自動給版動作によって巻装しニス印刷を実施した結果においても、図2(b)および図3(b)に示したと同様に、均一かつ平滑なニス印刷表面が得られたことを付記しておく。
【0044】
図3(a),(b)は、上記製版済みのマスタ18を用いて、塗工用紙上にニス印刷を行った場合の、ニス皮膜表面顕微鏡写真を示す。倍率は、100倍である。
図3(a),(b)のニス皮膜表面顕微鏡写真において、共に右下に写っている目盛り状のものは、少し不鮮明であるがスケールを示している。
図3(a)は、図2(a)に示したと同様に、多孔質支持体18b側を図示しない印刷ドラム外周面側に、フィルム18a面側を外側にして巻装して印刷した場合を示している。図3(b)は、図2(b)に示したと同様に、フィルム18a面側を図示しない印刷ドラム外周面側に、多孔質支持体18b側を外側にして巻装して印刷した場合を示している。
図3(a)では、ニス皮膜表面に製版済みのマスタ18の穿孔18cの影響による凹凸が消えずに残っているが、図3(b)では、ニス皮膜表面はかなり均一かつ平滑で製版済みのマスタ18の穿孔18cの影響は確認されない程度であることが分かった。従って、本発明の必要条件として、上記した図2(b)および図3(b)に示した良好なニス印刷状態を得るための装置構成の詳細と共に、本発明の十分条件としての装置構成を適宜補足しながら以下説明する。
【0045】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係るデジタル製版式のニス孔版印刷装置1Aとその排紙部に接続された紫外線照射装置2とを示している。ニス孔版印刷装置1Aは、孔版印刷方式を利用し上記ニスを用いて印刷を行う孔版印刷装置であり、以下、単に「孔版印刷装置1A」ともいう。
まず、図4を参照して、孔版印刷装置1Aおよび紫外線照射装置2の全体構成と共にその動作の概要を、同図に括弧を付して示す従来の孔版印刷装置1Bと随時比較しながら説明する。
孔版印刷装置1Aは、同図に示すように、印刷装置本体9のほぼ中央部に配置されたニス印刷用の印刷ドラム21Aのほぼ真下近傍に配置されたニス孔版印刷部110Aと、印刷ドラム21Aの右上方に配置された製版給版装置としての製版給版部111Aと、印刷ドラム21Aの右下方に配置されたシート給送装置・給紙装置としての給紙部112と、印刷ドラム21Aの左下方に配置されたシート排出装置・排紙装置としての排紙部113と、印刷ドラム21Aの左方に配置された排版部114と、後述する特有の制御構成等とを有している。
【0046】
図4において、印刷ドラム21Aは、印刷済みのシート・印刷物としての印刷済みの用紙12の所定範囲にニス液を塗布することでニス印刷するための印刷手段として機能する。同図において、10Aは、印刷ドラム21Aおよびこの印刷ドラム21Aの内部に配設され後述のニス供給手段等を有して一体化(ユニット化)されて、印刷装置本体9に対して着脱可能(挿脱可能)であるコーティング用ドラムユニットとしてのニス印刷用ドラムユニットを表している。同図は、ニス印刷用ドラムユニット10Aを印刷装置本体9の装着部に装着した状態を示している。
【0047】
図4において、括弧を付して示す1Bは、従来と同様に有色のインキ(ここでは、紫外線照射装置2を作動させて紫外線(UV)照射を行う場合では紫外線硬化型インキを、紫外線照射を行わない場合ではエマルションインキ等を用いる)で孔版印刷を行う従来から周知の孔版印刷装置を表している。
孔版印刷装置1Bは、同図に示すように、従来と同様の装置・部から構成されている。すなわち、孔版印刷装置1Bは、ニス印刷用の印刷ドラム21Aに代えて、従来と同様に有色のインキを用いて孔版印刷を行うための印刷ドラム21B(括弧を付して示す)が配置された場合に、そのほぼ真下近傍に配置・構成される孔版印刷部110B(括弧を付して示す)と、印刷ドラム21Bが配置された場合に、その右上方に配置される製版給版装置としての製版給版部111B(括弧を付して示す)と、上記した給紙部112と、上記した排紙部113と、上記した排版部114等を有している。
【0048】
同図において、印刷ドラム21Bは、印刷済みの用紙12に代えて、シートとしての印刷用紙(以下、「用紙」ともいう)12の所定範囲に上記インキで印刷するための印刷手段として機能する。同図において、括弧を付して示す10Bは、印刷ドラム21Bおよびこの印刷ドラム21Bの内部に配設され周知のインキ供給手段等を有して一体化されて、印刷装置本体9に対して着脱可能(挿脱可能)である周知の孔版印刷用ドラムユニット(以下、単に「ドラムユニット」ともいう)を表している。
上記したとおり、ニス孔版印刷装置1Aは、従来の孔版印刷装置1Bと比較して、従来のドラムユニット10Bに対してニス印刷用ドラムユニット10Aが、従来の孔版印刷部110Bに対してニス孔版印刷部110Aが、従来の製版給版部111Bに対して製版給版部111Aが、それぞれ相違するものとなっている。
【0049】
印刷ドラム21Aに対応したドラムユニット10A、印刷ドラム21Bに対応したドラムユニット10Bを、印刷装置本体9に対して選択的に着脱可能ないしは挿脱可能とさせる着脱手段ないしは挿脱手段(図示せず)の具体例としては、例えば実開昭61−85462号公報の第1図ないし第4図に示されている版胴支持装置と同様のものが挙げられ、それを採用している。その他、例えば特開平5−229243号公報の図2および図3等に示され段落「0021」等に記載されている保持手段(36)、把持フレーム(50)、前フレーム(51)および後フレーム(52)等から構成されているものと同様のものなどでも構わない。
【0050】
孔版印刷装置1Aは、給紙台11に積載された印刷済みの用紙12あるいはシート状記録媒体の一例としての用紙12を1枚ずつに分離して送り出すための呼び出しコロ13と分離コロ14と分離パッド15とを有していて、そのシート搬送方向の下流である用紙搬送方向Xの後流には、分離された1枚の印刷済みの用紙12を所定のタイミングでニス孔版印刷部110Aに送り出すレジストローラ上16とこれに圧接されたレジストローラ下17とが配設されている。
上記したとおり、給紙台11、呼び出しコロ13、分離コロ14、分離パッド15、レジストローラ上16、レジストローラ下17等により、給紙部112が構成されている。
【0051】
所定タイミングで送り出された印刷済みの用紙12は、その先端部がマスタ保持手段としての先端クランパ19で係止されることにより製版済みのマスタ18をその外周面に巻き付け装着される多孔性円筒状の版胴20を備えた印刷ドラム21Aと、該印刷ドラム21Aに印刷済みの用紙12を押圧しながら回転され昇降揺動自在に構成された押圧手段としてのプレスローラ22との間に向けて、図示しない案内板を介して搬送される。
【0052】
各印刷ドラム21A,21Bは、例えば図示しない正逆転可能なメインモータおよびこの駆動力を伝達する駆動力伝達手段等を備えた図8に示す印刷ドラム回転駆動装置83によって図4に示す矢印D方向およびこれと反対方向に回転駆動される。
プレスローラ22は、例えば特開2004−155170号公報の図3に示されていると同様のプレスローラ変位手段(22)と同様の機構によって、図示しないカム板の凸部(大径部)が図示しないカムフォロアと当接したときにプレスローラ22の外周面が版胴20の外周面より離間する離間位置を占め、図示しないカム板の凸部と図示しないカムフォロアとの当接が解除されたときに図示しない印圧ばねの付勢力によってその周面が版胴20の外周面に圧接する圧接位置を占める周知の構成をなす。
【0053】
印刷ドラム21Aの内部には、印刷ドラム21Aの版胴20外周面に巻装された製版済みのマスタ18に版胴20の内周側からニス液を供給するコーティング液供給手段としてのニス供給手段が配設されている。
上記ニス供給手段は、印刷ドラム21Aと同方向に回転駆動され版胴20の内周面にニス液を供給するニス液供給部材としてのニス供給ローラ23と、ニス供給ローラ23と近接し所定の隙間を有して平行に配置され、ニス供給ローラ23との間でニス液を一時貯容する断面楔状のニス溜まり25を形成するコーティング液計量部材としてのドクターローラ24と、ニス溜まり25に向けてニス液を供給するニス供給管26とから主に構成されている。
【0054】
上記ニス供給手段は、上述の主な構成部品や部材の他に、従来のインキ供給手段と同様に、コーティング液としてのニス液を収納するコーティング液収納容器としてのニス容器(図示せず)を着脱自在に保持する保持部材としての図示しないニス容器受け台と、上記ニス容器からニス溜まり25に向けてニス供給管26を介してニス液を送出するポンプ装置としてのニス送出ポンプ(図示せず、例えばギヤポンプ、チューブポンプまたは往復ポンプ等からなる)等とを有して、ニス印刷用ドラムユニット10Aを構成している。
ニス溜まり25には、例えば特開2001−246732号公報の図1に示されているインキ検知針(2)と同様の図示しないニス検知針が配置されている。これにより、インキ検知針(2)を備えたインキ有無検知センサ(1)と同様の原理によってニス溜まり25の大きさ、すなわちニス液量を検出することで、上記特開2001−246732号公報記載の技術と同様の制御によって常に適正な大きさのニス溜まり25を形成するようになっている。
上記したとおり、印刷ドラム21Aおよび上記ニス供給手段等を備えたニス印刷用ドラムユニット10Aおよびプレスローラ22により、ニス孔版印刷部110Aが構成されている。
【0055】
ニス供給管26から供給されたニス液はニス溜まり25に貯容され、ニス溜まり25のニス液はドクターローラ24によって一定の厚さの層膜状に規制されてニス供給ローラ23の外周面に付与される。そして、プレスローラ22が所定のタイミングで上昇し、これと所定のタイミングをもってレジストローラ上・下16,17より給送されてくる印刷済みの用紙12を印刷ドラム21A上の製版済みのマスタ18に押し付け・押圧することにより、版胴20内周面がニス供給ローラ23と圧接することで版胴20内周面にニス液が供給され、このニス液が版胴20に形成された多数の開孔部分を通過し、さらに製版済みのマスタ18の穿孔部分を通過して印刷済みの用紙12表面に転移することで、紫外線硬化タイプのニス液の塗布により所定エリアの画像にニス印刷が行われる。
【0056】
こうして所定エリアにニス塗布・印刷が施されたニス印刷済みの用紙12(例えば図1参照)は、剥離爪27によって印刷ドラム21A上の製版済みのマスタ18から剥離されて、排紙搬送装置29によって図4のさらに左方向(排紙方向)に搬送される。ここで、排紙搬送装置29は、前ローラ30と後ローラ31との間に掛け渡された複数本の無端ベルト32と、駆動ローラである後ローラ31を回転させて該無端ベルト32を回転駆動させる駆動モータ33と、ニス印刷済みの用紙12の裏面を吸引して無端ベルト32に接触させる負圧を発生させるためのエア吸引ダクト34と、エア吸引駆動源としてのエア吸引ファン35とから主に構成されている。
上記したとおり、剥離爪27、排紙搬送装置29、紫外線照射装置2の出口に配置された排紙トレイ47等により、排紙部113が構成されている。
【0057】
排紙搬送装置29の最後流部には、紫外線照射装置2の受け入口が接続されている。紫外線照射装置2は、受け入れたニス印刷済みの用紙(ニス印刷された印刷物)を搬送するための印刷物搬送装置36と、印刷物搬送装置36の上方近傍に配設され、印刷物搬送装置36により搬送されるニス印刷済みの用紙のニス塗布面に紫外線を照射するための紫外線照射ユニット43とを有している。
【0058】
印刷物搬送装置36は、前ローラ37と後ローラ38との間に掛け渡された複数本の穴明き無端ベルト39と、駆動ローラである後ローラ38を回転させて穴明き無端ベルト39を回転駆動させる駆動モータ40と、ニス印刷済みの用紙の裏面を吸引して穴明き無端ベルト39に接触させる負圧を発生させるためのエア吸引ダクト41と複数のエア吸引ファン42とから主に構成されている。
【0059】
紫外線照射ユニット43は、低圧水銀ランプやメタルハライドランプあるいは高圧水銀ランプのような紫外線ランプ44と、アルミ板等で形成され紫外線を反射する反射板45と、反射板45の外側に設けられたカバーケーシング46とを有する。
また、図示していないがカバーケーシング46内の空気を吸引して、オゾンフィルタを通過させた上で印刷装置の外部に排出するための、エア排出パイプや吸引ファン等も設けられている。
【0060】
印刷物搬送装置36で搬送されたニス印刷済みの用紙は、紫外線照射ユニット43により紫外線を照射されることで所定エリアに塗布・印刷されたニス皮膜の硬化定着が行われて、排紙台としての排紙トレイ47上に積載収容される。図4において、48は、排出用紙先端を停止させるためのエンドフェンスであり、49は、排出用紙の両側面を案内位置決めするサイドフェンスである。
【0061】
ここで、ニス印刷用ドラムユニット10Aおよび従来のドラムユニット10Bの構成部品、構成部材について補説する。
印刷ドラム21Aは、例えばステンレススチール製の薄板にプレス加工や化学的エッチング処理等により多数の開孔を形成された金属板を円筒状に丸めて形成した版胴20あるいは電鋳加工にて製作した版胴20と、あるいはこの版胴20の外周面の多孔性部分を覆うニス拡散保持部材もしくはインキ拡散保持部材としての樹脂製あるいは金属製のメッシュスクリーンを少なくとも1層とを有して構成されたものであり、印刷ドラム21Bと実質的に同様の構成部品、構成部材から構成されている。
【0062】
上述したように、ニス印刷用ドラムユニット10Aの上記ニス供給手段を構成している上記構成部材の名称に付した接頭語「ニス」を「インキ」に置き換え・読み替えれば、従来の印刷ドラム21Bの内部に配設されたインキ供給手段となる。上記ニス供給手段は、例えば特開2001−246732号公報の図1に示されている従来の孔版印刷装置におけるインキ供給装置(29)と同様の構成となっていて、サプライのインキに代えてニス液を使用することが主に相違するだけのものとなっている。
従来の印刷ドラム21Bおよびそのインキ供給手段の紫外線硬化型インキもしくはエマルションインキに代えて、紫外線硬化型ニスとして、上記したように原材料が有機溶剤等を使用していないモノマー、反応開始剤、体質顔料等からなるものを使用した場合、従来のドラムユニット10Bを構成する印刷ドラム21Bおよびそのインキ供給手段の上記構成部材に何らの有害な腐食や機能上の問題を発生することなく、耐久信頼性上も問題ないことを確認済みである(上記比較試験参照)。
それ故に、印刷ドラム21Aおよびそのニス供給手段の実質的な構成は、サプライであるニスを除き、従来の印刷ドラム21Bおよびそのインキ供給手段と同様のものを使用可能であることから、本実施形態によれば、従来の孔版印刷部技術を有効に活用転用して、構造が簡単でコンパクトかつ安価に構成することができ、ニス液量は自動的に維持されるので操作が容易になるという利点・効果を奏する。
【0063】
上述および後述するとおり、印刷ドラム21Aおよび上記ニス供給手段等を有して構成されたニス印刷用ドラムユニット10Aは、従来の印刷ドラム21Bおよび従来のインキ供給手段を有して構成されインキを用いて印刷を行う従来のドラムユニット10Bと比較して、印刷に使用するサプライとしてニス液を供給する上記ニス供給手段、後述するドラムユニット種類認識手段により認識される被認識手段、製版済みのマスタ18の端部を保持するマスタ保持手段(後述する)を除き、共通する構成部品および部材から構成されている。
【0064】
図4に示す排版部114は、版胴上20上の使用済みのマスタ18を剥離し排版する周知の機能・構成を有し、例えば特開2004−160662号公報の図1に示されている装置構成と同様のものである。
ここで、ニス孔版印刷装置1Aおよび従来の孔版印刷装置1Bの全体動作・工程の概略を補説すると、何れの装置の場合にも先ず最初に、図7に示す操作パネル90に配設された製版スタートキー92の押下による製版スタート信号がトリガとなって、図8に示す中央制御装置80による制御の下に、排版部114による排版工程が行われ、次いで図示しない画像読取部による画像読み取り工程と並行して製版工程が行われ、また製版工程と共に給版工程が行われ、次いで、給紙・孔版印刷・排紙工程がこの順に行われるようになっている。
【0065】
以下、製版給版部111Aと従来の製版給版部111B、ニス孔版印刷部110Aと従来の孔版印刷部110Bの相違点の構成および本実施形態に特有の構成について説明する。
図4は、画像データ(画像情報)に基づいてマスタ18に穿孔製版して製版済みのマスタ18を作製し、これを各印刷ドラム21A,21Bの版胴20外周面に巻装させるべく供給する製版給版部111A,111Bの概略的な全体構成を、図5では、製版給版部111A,111Bのうちの給版装置の構成および動作を拡大して示している。製版給版部111A,111Bのうち、製版装置の細部構成は、共に、例えば特開2003−200645号公報の図1に示され、それに対応した段落「0066」〜「0073」に記載されている内容と同様のものである。製版給版部111A,111Bおよび印刷ドラム21A,21Bで共通する動作については、併記して説明を行う。
【0066】
すなわち、図示しない駆動手段としてのステッピングモータにより回転駆動されるプラテンローラ71によって、マスタ18が芯管の周りにロール状に巻かれて形成されたマスタロール18Aから引き出されつつ、プラテンローラ71によって搬送力を付与されながら主走査方向に沿って多数配列された発熱素子(図示せず)を備えたサーマルヘッド72の上記発熱素子配列部に図示しない保護膜を介して押し付けられる。この際、サーマルヘッド72における上記発熱素子の位置選択的な発熱によって独立孔として穿孔製版された製版済みのマスタ18は、マスタ搬送方向X1の下流側に適宜配置される図示しないテンションローラ対で送られ、さらにマスタ搬送方向X1の下流側に配置される給版ローラ上73と給版ローラ下74とによって各印刷ドラム21A,21Bに向けて搬送される。
ここで、サーマルヘッド72およびプラテンローラ71は、製版手段を構成している。プラテンローラ71、図示しないテンションローラ対および給版ローラ上・下73,74は、マスタ搬送手段を構成している。
【0067】
次に、図4〜図6を参照して、各印刷ドラム21A,21Bによって製版済みのマスタ18の給版時の巻き付け方法(巻装方法)が異なる内容を説明する。
ニス印刷用の印刷ドラム21Aは、従来の印刷ドラム21Bに配設されていると同様の製版済みのマスタ18の先端部を係止・保持する開閉自在なマスタ保持手段としての先端クランパ19を有する他に、従来の印刷ドラム21Bと比較して、上述の相違点の他に、製版済みのマスタ18の後端部を補助的に係止・保持する開閉自在なマスタ保持手段としての後端クランパ28を有する点が相違している。
後端クランパ28は、メインの先端クランパ19と比較して、先端クランパ19によって製版済みのマスタ18の先端部が確実に係止・保持されるまで、製版済みのマスタ18の後端部を保持して印刷ドラム21Aの版胴20外周面に一時的に巻き付け保持できる程度にその保持力が低く設定されていて、コンパクトでかつ薄型に構成されている。
先端クランパ19は、図8に示す先端クランパ開閉装置84により、後端クランパ28は、同図に示す後端クランパ開閉装置85により、それぞれ自動的に開閉駆動される。
【0068】
図5(a)に示すように、ニス印刷用ドラムユニット10Aが印刷装置本体9の上記装着部に装着されている状態において、後端クランパ28が同図に示す右斜め上方に位置する給版待機位置を占めた印刷ドラム21Aの版胴20外周面近傍には、拡開した後端クランパ28とステージ部との間にエアaを吐出させる給版ファン下76が配設されている。従来のドラムユニット10Bが上記装着部に装着されている状態では、図8に示す中央制御装置80からの指令によって給版ファン下76は作動しないように制御される。
また、図5(b),(c)に示すように、ニス印刷用ドラムユニット10Aまたは従来のドラムユニット10Bが印刷装置本体9の上記装着部に装着されている状態において、先端クランパ19が同図に示す右斜め上方に位置する給版待機位置を占めた印刷ドラム21A,21Bの版胴20外周面近傍には、拡開した先端クランパ19とステージ部との間にエアaを吐出させる給版ファン上77が配設されている。
【0069】
上記したとおり、給版ローラ上・下73,74、給版ファン下76、給版ファン上77、先端クランパ19、図8に示す先端クランパ開閉装置84、後端クランパ28、図8に示す後端クランパ開閉装置85および図8に示す印刷ドラム回転駆動装置83は、製版済みのマスタ18を搬送してニス印刷用の印刷ドラム21Aの版胴20外周面に巻装させる給版手段を構成している。
【0070】
上記給版手段は、ニス印刷用印刷ドラム21Aの版胴20外周面に製版済みのマスタ18を巻装するとき、フィルム18a側が印刷ドラム21Aの版胴20外周面側に、多孔質支持体18b側が外側になるように巻装するコーティング用給版方向としてのニス印刷用給版方向と、孔版印刷用印刷ドラム21Bの版胴20外周面に製版済みのマスタ18を巻装するとき、多孔質支持体18b側が孔版印刷用印刷ドラム21Bの版胴20外周面側に、フィルム18a側が外側になるように巻装する孔版印刷用給版方向とに切り替える給版方向切替手段を有している。
上記給版方向切替手段は、給版ファン下76、給版ファン上77、先端クランパ19、図8に示す先端クランパ開閉装置84、後端クランパ28、図8に示す後端クランパ開閉装置85および図8に示す印刷ドラム回転駆動装置83から構成されている。
【0071】
図5および図6を参照して、図8に示す中央制御装置80による制御の下に、各印刷ドラム21A,21Bに製版済みのマスタ18を巻装する工程・動作を対比しながら説明する。
図5(a)は、ニス印刷用ドラムユニット10Aが印刷装置本体9の上記装着部に装着された状態での、その印刷ドラム21Aの版胴20外周面への給版に係る第1工程を示している。先ず、給版ローラ上・下73,74によって送られた製版済みのマスタ18の先端部は、同図において破線で示す下方への垂れ下がり状態から実線で示すようにほぼ水平状態になるように、給版ファン下76からの吐出エアaによって浮かされた状態で所定角度開いて停止している後端クランパ28にガイドされながらさらに送られて、そこで図8に示した後端クランパ開閉装置85が作動することにより、後端クランパ28が図5(a)の矢印方向に閉じることで製版済みのマスタ18の先端が係止される。次いで、ドラムユニット10Aの版胴20は図の矢印C方向にゆっくりと回転駆動される。この回転方向は、実は印刷時回転とは逆の方向であり、この動作の理由は後述する。
【0072】
図5(b)は、印刷ドラム21Aの版胴20外周面への給版に係る第2工程を示している。印刷ドラム21Aの版胴20の回転に合わせて製版済みのマスタ18も搬送されて版胴20の外周面に巻き付けられ、版胴20に巻装されるべき1版分の所定量の製版済みのマスタ18が搬送されつつ巻装されたら製版済みのマスタ18の後端が切断手段としてのカッタ75により切断され、さらに所定量搬送されて製版済みのマスタ18の後端が給版ローラ上・下73,74のニップ部を抜けたところで、印刷ドラム21Aの版胴20の回転が停止すると共に、図8に示した先端クランパ開閉装置84の作動によって先端クランパ19が開状態になり、そこに給版ファン上77からの吐出エアaによって製版済みのマスタ18の後端部が破線で示す状態から実線で示す状態に押されて先端クランパ19の拡開した部分に入り込み、その後、先端クランパ19が図の矢印方向に閉じることで先端が確実に係止される。次いで、ドラムユニット10Aの版胴20は図の矢印D方向、すなわちニス印刷時の回転方向にゆっくりと回転する。
こうして印刷ドラム21Aの版胴20の外周面に巻き付け装着された製版済みのマスタ18は、サーマルヘッド72で穿孔されたフィルム18a面側が内側、すなわち印刷ドラム21Aの版胴20外周面側になり、多孔質支持体18b側が外側になる。
なお、図5(b)に示した印刷ドラム21Aの版胴20外周面への給版に係る第2工程では、1版分の製版済みのマスタの18の切断長が、後述する図5(c)に示す従来の印刷ドラム21Bの版胴20外周面への給版に係る工程における切断長よりも少し長くなるように制御されて、カッタ75により切断されるようになっている(図6(a)、(b)参照)。
【0073】
図6(a)は、図5(a)、(b)に示した印刷ドラム21Aの版胴20外周面への給版に係る第1および第2工程によって、製版済みのマスタ18の後端部(上記した先端部に相当するが、ここではニス印刷動作に焦点を当てて説明するのでこのように言い替える)が後端クランパ28に、その先端部(上記した後端部に相当するが、ここではニス印刷動作に焦点を当てて説明するのでこのように言い替える)が先端クランパ19に係止された状態で、1版分の製版済みのマスタ18が版胴20外周面に巻装されていてニス印刷可能な状態にある版胴20周りおよび印圧エリアを展開して示したものである。また、図6(b)は、図5(c)に示した印刷ドラム21Bの版胴20外周面への給版に係る工程によって、製版済みのマスタ18の先端部が先端クランパ19に係止された状態で、1版分の製版済みのマスタ18が版胴20外周面に巻装されていて有色のインキによる印刷可能な状態にある版胴20周りおよび印圧エリアを展開して示したものである。
図6(a)、(b)に示したように、図4に示したプレスローラ22による印圧(押圧)のオン/オフおよび印圧エリアが破線で示す印圧曲線を描くように、プレスローラ22を変位させる上記カムの凸部(大径部)形状を含む輪郭形状を設定している。換言すれば、図6(a)、(b)共に、先端クランパ19および後端クランパ28との干渉を避けてこれらを逃げるように、また、版胴上に巻装された製版済みのマスタ18の穿孔製版エリア部分が印圧オンとなるようにプレスローラ22を変位させる上記カムの輪郭形状を設定しているので、カムを複数設定して切り換えたりすることなく簡単な構成でニス孔版印刷装置1Aおよび従来の孔版印刷装置1Bを提供できる。
【0074】
図5(c)は、従来と同様にインキ供給手段を備えた印刷ドラム21Bの版胴20外周面への給版に係る周知の工程を示している。この工程では、給版ローラ上・下73,74によって送られた製版済みのマスタ18の先端部は、給版ファン上77からの吐出エアaによって下向きに押された状態で、所定角度開いて停止している先端クランパ19に向けて送られて、そこで先端クランパ19が図の矢印方向に閉じることで先端が確実に係止される。その後、印刷ドラム21Bの版胴20が同図の矢印D方向にゆっくりと回転駆動されることで、1版分の製版済みのマスタ18が版胴20の外周面に巻き付け装着される。
なお、図5(c)における給版ファン上77による製版済みのマスタ18の先端部のガイド方法は、同図に示した以外にも給版ローラ上・下73,74と図示しないマスタガイド板とによってガイドする周知の方式もあり、この意味で従来の製版給版装置111bにおいて給版ファン上77は必須の構成でないことを付記しておく。
【0075】
図7を参照して、各孔版印刷装置1A,1Bに動作指示等を与える操作部としての操作パネル90について、補説する。操作パネル90には、製版スタートキー92、テンキー93、印刷スタートキー(プリントスタートキー)94、タッチパネル95等が配設されている。
【0076】
製版スタートキー92は、排版動作、製版動作を始めとする一連の動作を開始するための起動設定手段として機能し、印刷スタートキー94は、設定された印刷枚数分の正規の印刷動作を開始する印刷起動手段として機能し、テンキー93は、印刷枚数等の置数を行う置数設定手段として機能する。
【0077】
タッチパネル95は、図示しないタッチパネル駆動回路を含むLCD(液晶表示装置)駆動回路により駆動され、周知のタッチパネル方式で画面表示された各種モードや種々の選択・設定手段、本実施形態ではニス孔版印刷モード設定キー91a、孔版印刷モード設定キー91b、孔版印刷用ドラムユニット設定キー96b、ニス印刷用ドラムユニット設定キー96a等が配設されていて、これらを白黒反転表示させて選択設定できるように構成されている。
ニス孔版印刷モード設定キー91aは、図4に示すニス印刷用ドラムユニット10Aを印刷装置本体9の上記装着部に装着してニス液で印刷を行うコーティング孔版印刷モードとしてのニス孔版印刷モードを、孔版印刷モード設定キー91bは、図4に括弧を付して示す従来の孔版印刷用ドラムユニット10Bを印刷装置本体9の上記装着部に装着して印刷を行う孔版印刷モードを、それぞれ選択設定するモード選択設定手段として機能する。
ニス印刷用ドラムユニット設定キー96a、孔版印刷用ドラムユニット設定キー96bは、ニス印刷用ドラムユニット10Aおよび孔版印刷用ドラムユニット10Bの何れのユニットが印刷装置本体9に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段としてのドラムユニット種類設定手段として機能する。
【0078】
タッチパネル95に配設されたLCD画面からなる表示手段ないしは報知手段は、上記したモード選択設定手段やドラムユニット種類設定手段により選択・設定された結果、これが実行すべき印刷条件に見合っていない場合に、それを表示ないしは報知するものである。報知手段は、タッチパネル95に表示されるものに限らず、例えば単なるLCD表示やLED表示、音声による報知や、操作パネル90等に配設されたブザー97による吹鳴警告音あるいはLEDの7セグメントを使用したコード表記でもよいし、あるいはそれらを適宜組合せたものでも構わない。
【0079】
図8は、ニス孔版印刷装置1Aおよび従来の孔版印刷装置1Bと紫外線照射装置2の制御関連構成を主に示している。ニス孔版印刷装置1Aおよび従来の孔版印刷装置1B側の各装置・部等を制御する中央制御装置80は、図4に示した印刷装置本体9の排紙部113に接続されている紫外線照射装置2の各装置・部等を制御する制御装置65とシリアル通信することにより、必要な情報指示(オン/オフ信号やデータ信号あるいは指令信号等)をやりとりすることができるようになっている。
中央制御装置80は、内部に図示しないCPU、ROM、RAM、図示しないタイマを有する周知のマイクロコンピュータを具備して構成されており、印刷装置本体9の内部に設けられている。
【0080】
中央制御装置80の上記CPU(以下、説明の簡明化のため単に「中央制御装置80」ともいう)は、図8に示すように、操作パネル90からの各種信号および印刷装置本体9に設けられた各種センサからの検知信号および上記ROMから呼び出された動作プログラムに基づいて、画像出力手段としての画像処理装置86、操作パネル90のタッチパネル95、図示しない画像読取部、ニス孔版印刷部110A、孔版印刷部110B、製版給版部111A,111B、給紙部112、排紙部113、排版部114に設けられた図8に具体的に示す装置の各駆動手段等を制御し、ニス孔版印刷装置1Aおよび従来の孔版印刷装置1B全体の動作を制御する。
【0081】
上記ROMには、ニス孔版印刷装置1A全体および従来の孔版印刷装置1B全体の動作プログラムおよび関係データが記憶されており、この動作プログラムおよび関係データは上記CPUによって適宜呼び出される。上記RAMは、上記CPUの計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル90上の各種キーおよび各種センサから設定および入力されたデータ信号およびオン・オフ信号を随時記憶する機能等を有している。また中央制御装置80は、版胴20のホームポジションを検知するホームポジションセンサ(図示せず)からのホームポジション信号と、印刷ドラム回転駆動装置83に設けられた図示しないエンコーダからの信号とに基づいて、版胴20の位置の把握も行っている。
制御装置65は、内部に図示しないCPU、ROM、RAM、タイマ67を有する周知のマイクロコンピュータを具備して構成されており、紫外線照射装置2内の図示しない制御盤に設けられている。
【0082】
ここで、操作パネル90に配設されていたドラムユニット種類設定手段の他に、ニス印刷用ドラムユニット10Aおよび孔版印刷用ドラムユニット10Bの何れのユニットが印刷装置本体9の上記装着部に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段として機能するドラムユニット種類検出手段を説明する。このドラムユニット種類検出手段は、ニス印刷用ドラムユニット10Aおよび孔版印刷用ドラムユニット10Bの何れのユニットが印刷装置本体9の上記装着部に装着されたかを自動的に検出するものである。
前記着脱手段ないしは挿脱手段近傍の印刷装置本体9には、ニス印刷用ドラムユニット10Aおよび孔版印刷用ドラムユニット10Bの何れのユニットであるかを検知するドラムユニット種類検出センサ81(図8のみに示す)が配設されている。ドラムユニット種類検出センサ81の具体例としては、例えばニス印刷用ドラムユニット10A側、孔版印刷用ドラムユニット10B側に配設され被認識手段ないしは被検出手段としての電気コネクタ(例えば雄)と、装置本体9側に配設され認識手段ないしは検出手段としての電気コネクタ(例えば雌)との結合の組み合わせにより、その違いを電気的に検出し判断・認識するものが挙げられる。これは、特開2006−281658号公報の図5に示されているドラムユニットインキ種類識別センサ(51)と同様のものである。
【0083】
また、ドラムユニット種類識別手段ないしはドラムユニット種類検出手段は、上記したドラムユニット種類検出センサ81に限らず、例えば特開2004−155170号公報の図16に示され装置本体側に配置されたホール素子センサ(136,137,138)と、ニス印刷用ドラムユニット10A側、孔版印刷用ドラムユニット10B側に配置されたマグネット(130,131、132)との組合せで検出するものでもよい。
また、上記選択設定手段の具体例としては、操作パネル90に適宜設けられる階層表示用の液晶表示部と選択設定キーとで選択設定する例が挙げられる。
【0084】
以下、上記装着部に装着されているドラムユニットが「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」で構成されたニス印刷用ドラムユニット10Aであるか、または「内部にインキ供給手段を有する印刷ドラム21B」で構成された孔版印刷用ドラムユニット10Bであるかによって制御される動作を、さらに詳しく説明する。
操作パネル90に設けられた孔版印刷用ドラムユニット設定キー96bにより設定されまたはドラムユニット種類検出センサ81により検出された、上記装着部に装着されているドラムユニットが「内部にインキ供給手段を有する印刷ドラム21B」で構成された孔版印刷用ドラムユニット10Bである場含には、中央制御装置(上記CPU)80からの指令により、製版スタートキー92が押されたら製版給版部111Bの動作制御に関して、図5(c)に示した動作をするように制御する。すなわち、印刷ドラム21Bの版胴20外周に巻き付け装着された製版済みのマスタ18は、サーマルヘッド72で穿孔されたフィルム18a面側が外側になり多孔質支持体18b側が版胴20外周面側(内側)になるようにする。
【0085】
一方、ニス印刷用ドラムユニット設定キー96aにより設定されまたはドラムユニット種類検出センサ81により検出された、上記装着部に装着されているドラムユニットが「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」で構成されたニス印刷用ドラムユニット10Aである場合には、製版スタートキー92が押されたら製版給版111Aの動作制御に関して、図5(a)〜(b)に示した動作をするように制御する。すなわち、印刷ドラム21Aの版胴20外周面に巻き付け装着された製版済みのマスタ18は、サーマルヘッド72で穿孔されたフィルム面18a側が版胴20外周面側(内側)になり多孔質支持体18b側が外側になるようにする。
【0086】
この際、中央制御装置(上記CPU)80は、ニス印刷用ドラムユニット設定キー96aまたはドラムユニット種類検出センサ81からのオン信号に基づき、ニス印刷用ドラムユニット10Aの装着が認識されたと判断した場合、上記ニス印刷用給版方向となるように上記給版方向切替手段を制御する第1の制御手段として機能する。
またこの際、中央制御装置(上記CPU)80は、孔版印刷モード設定キー91bにより孔版印刷モードが選択設定されている場合であって、孔版印刷用ドラムユニット設定キー96bにより孔版印刷用ドラムユニット10Bが装着設定されていることを、またはドラムユニット種類検出センサ81からの孔版印刷用ドラムユニット10Bの装着検出に係る信号に基づき、孔版印刷用ドラムユニット10Bの装着を認識したときには、孔版印刷モード実行のための入力と動作を許容するよう、ニス印刷モード設定キー91aによりニス印刷モードが選択設定されている場合であって、ニス印刷用ドラムユニット設定キー96aによりニス印刷用ドラムユニット10Aが装着設定されていることを、またはドラムユニット種類検出センサ81からのニス印刷用ドラムユニット10Bの装着検出に係る信号に基づき、ニス印刷用ドラムユニット10Aの装着を認識したときには、ニス印刷モード実行のための入力と動作を許容するよう制御する第4の制御手段として機能する。
【0087】
またこの際、紫外線照射装置2の制御装置65は、印刷装置本体9に装着されているドラムユニットの種類によって、紫外線ランプ点灯回路66を制御する。すなわち、上記装着部に装着されているドラムユニットが「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」で構成されたニス印刷用ドラムユニット10Aである場合には、操作パネル90の印刷スタートキー94が押されたら直ちに紫外線ランプ点灯回路66をオンにして紫外線照射ランプ44を点灯させるとともに、エア吸引ファン42を駆動させてエア吸引動作を開始させる。
【0088】
しかし、紫外線ランプ44の紫外線照射出力が正規の値になるまでに若干時間を要するので、制御装置65は内部に保持しているタイマ67によって待ち時間の計測を行い、予め上記ROMに記憶されている所定の待ち時間になった時点で、孔版印刷装置1Aの中央制御装置80に給紙印刷開始オーケーの信号を送る。待ち時間は紫外線ランプの種類によって異なるが、例えば具体的には1分から10数分程度に設定される。
次いで、孔版印刷装置1Aの中央制御装置80は、サーマルヘッド72による穿孔製版する際の製版条件を、上記装着部に装着されたドラムユニットが「内部にインキ供給手段を有する印刷ドラム21B」で構成された孔版印刷用ドラムユニット10Bであるか「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」で構成されたニス印刷用ドラムユニット10Aであるかによって変更するように制御する。それは、サーマルヘッド72に穿孔用エネルギーを供給するための、図示しないサーマルヘッド駆動回路および電源等を有して構成されたサーマルヘッド駆動装置63を制御することで行う。
【0089】
具体的には、「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」で構成されたニス印刷用ドラムユニット10Aである場合には、ニス塗布・印刷に使用されるニス転移量を大にして十分な光沢を得ることが必要なので、大きな穿孔が形成される製版をすることが必要になり、「内部にインキ供給手段を有する印刷ドラム21B」で構成された孔版印刷用ドラムユニット10Bである場合に比べて、サーマルヘッド72ヘ供給する穿孔用エネルギーとしての供給電力(電流値や電圧値)や通電パルス幅を大にするように制御する。極力大きな穿孔を得たいので、例えば通電パルス幅を20〜30%程度大きくなるようにする。
この際、中央制御装置(上記CPU)80は、ニス印刷用ドラムユニット設定キー96aまたはドラムユニット種類検出センサ81からのニス印刷用ドラムユニット10Aの装着検出に係る信号に基づき、ニス印刷用ドラムユニット10Aの装着が認識されたと判断した場合、孔版印刷用ドラムユニット10Bの装着が認識されたときに比べて、穿孔用エネルギーとしての供給電力(電流値や電圧値)や通電パルス幅を大にするようにサーマルヘッド駆動装置63を制御する第3の制御手段として機能する。
【0090】
図9(a1)は、「内部にインキ供給手段を有する印刷ドラム21B」に巻装された製版済みのマスタ18の展開図を示し、図9(a2)は、図9(a1)に示す印刷ドラム21Bによって印刷された印刷物画像を示している。図9(b1)は、図9(a1)に示す印刷物画像の特定エリアにニス印刷をする場合の、「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」に巻装された製版済みのマスタ18の展開図を示し、図9(b2)は、その印刷ドラム21Aによってニス印刷が追加された印刷物画像を示している。
なお、図9(b2)に示されているニス印刷部のエリア指定は、例えば本願発明者が提案した特開平5−254237号公報で開示した方式や、その他公知の方式を用いて指定される。
【0091】
図9(a1)の場合、印刷ドラム21Bに巻装された製版済みのマスタ18は、フィルム18a面が外側(同図の紙面手前側)になっており、その製版画像はフィルム18a面側から見て原稿画像に対して鏡像になっている。
一方、図9(b1)の場合は、印刷ドラム21Aに巻装された製版済みのマスタ18は、多孔質支持体18b側が外側(同図の紙面手前側)になっており、その製版画像はフィルム18a面側から見て、図9(a1)の場合とは上下が逆になっている。
【0092】
上記両図から分かるように、「内部にインキ供給手段を有する印刷ドラム21B」からなる孔版印刷用ドラムユニット10Bが装着された場合と、「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」からなるニス印刷用ドラムユニット10Aが装着された場合とで、製版画像を異なるように制御してやる必要がある。
図9(b1)に示す製版済みのマスタ18を表裏逆にしてフィルム18a面側から見たのが図9(c)である。これを図9(a1)と比較してみれば分かるように、穿孔製版時のマスタ搬送方向X1に対して画像位置が(両図では上下に)逆になる。しかし製版画像は製版済みのマスタ18搬送方向と直交方向では(図では左右に)逆になっていない。このような画像位置関係になるように製版を制御するのである。つまり、図示しない画像読取部に配設されているCCD等の光電変換可能な画像センサやパソコン等のコンピュータから送信されてくる画像データを上下方向だけ逆にして製版することになる。これは図示しない画像メモリ等を備えた画像処理装置86によって行われ、「内部にニス供給手段を有する印刷ドラム21A」からなるニス印刷用ドラムユニット10Aが装着された場合には、そのように変換された製版画像データがサーマルヘッド駆動装置63に送り出される。
【0093】
上記のとおり、画像処理装置86は、画像センサやパソコン等のコンピュータから送信されてくる画像データを処理して穿孔製版するための製版画像データを作製し、該製版画像データをサーマルヘッド駆動装置63を介してサーマルヘッド72に送り出す画像出力手段として機能する。そして、画像処理装置86は、画像データを孔版印刷用に鏡像処理して得られた製版画像データをサーマルヘッド駆動装置63を介してサーマルヘッド72に送り出す標準モードと、上記画像データを上記標準モードとはマスタ搬送方向X1に対し逆になるように処理して得られた製版画像データをサーマルヘッド駆動装置63を介してサーマルヘッド72に送り出すコーティングエリアモードとしてのニスエリアモードの両方のモードを実行可能に構成されている。
【0094】
図9(a1)では、版胴回転方向Dと穿孔製版時のマスタ搬送方向X1は共に上方矢印の方向である。同図上部のクランパは先端クランパ19である。そして、製版済みのマスタ18は同図の紙面手前・表側がフィルム18a面になり、外側になる。
図9(A2)では、版胴回転方向Dは上方矢印の方向であるが、穿孔製版時のマスタ搬送方向X1はそれとは逆の下方矢印の方向になる。同図上部のクランパは先端クランパ19であり、同図下部のクランパは後端クランパ28である。そして、製版済みのマスタ18は同図の紙面手前・表側が多孔質支持体18b側になり、外側になる。
【0095】
上記したように、中央制御装置(上記CPU)80は、ニス印刷用ドラムユニット設定キー96aまたはドラムユニット種類検出センサ81からのニス印刷用ドラムユニット10Aの装着検出に係る信号に基づき、ニス印刷用ドラムユニット10Aの装着が認識されたと判断した場合には、上記ニスエリアモードを実行するように画像処理装置86を制御する第2の制御手段として機能する。
【0096】
上述したとおり、本実施形態では、課題を解決する手段の欄に記載した孔版印刷方法が使用されていたと言える。また、本実施形態によれば、上述した構成および動作から発明の効果の欄に記載した効果を奏することは無論である。
【0097】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、従来の孔版印刷装置1Bに代えて、ニス孔版印刷装置1A専用の孔版印刷装置である点が主に相違する。
すなわち、第2の実施形態に係るニス孔版印刷装置1Aは、従来の孔版印刷装置1Bにおける孔版印刷用ドラムユニット10Bを除去した点が相違する。第2の実施形態に係るニス孔版印刷装置1Aは、ニス印刷用ドラムユニット10Aを有して印刷装置本体9に対して図示しない挿脱・着脱手段を介して挿脱・着脱自在に構成されていてもよいし、ニス印刷用ドラムユニット10Aを有さずに、ニス印刷用印刷ドラム21Aが印刷装置本体9に対してネジ等の締結手段を介して取り付けられている構成であってもよい。
第2の実施形態に係るニス孔版印刷装置1Aの動作は、その制御動作を含めて、上述した第1の実施形態等のそれから当業者であれば容易に理解して実施できるから、重複説明を避けるためこれ以上の説明を省略する。
上述したとおり、本実施形態では、課題を解決する手段の欄に記載した孔版印刷方法が使用されていたと言える。また、本実施形態によれば、上述した構成および動作から発明の効果の欄に記載した効果を奏することは無論である。
【0098】
以上述べたとおり、本発明を実施例を含む特定の実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよい。
例えば、操作パネル90のタッチパネル95に、印刷物の余白を除く全面にニス塗布・印刷を行う全面ニス印刷モードを設定するためのキーを配設してもよい。また、画像処理装置86が製版画像データを自動的にパターン認識して所定の黒画像データの密度・集まり状態を認識することで、自動的にニス印刷すべき画像範囲を設定するようにしてもよい。このように、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るニス孔版印刷装置によってニス印刷が行われた印刷物の内容を説明する平面図である。
【図2】(a)は、製版済みのマスタを従来の方法で印刷ドラムの版胴外周面に巻装してニス印刷した場合の印刷物表面のニス印刷状態を、(b)は、製版済みのマスタを従来の方法と逆の方法で巻装、すなわち本発明によるフィルム面側を印刷ドラムの版胴外周面側に、多孔質支持体側を外側にして巻装してニス印刷した場合の印刷物表面のニス印刷状態を示す要部の拡大断面図である。
【図3】(a)は、図2(a)による実際の印刷物表面のニス皮膜表面状態を、(b)は、図2(b)による実際の印刷物表面のニス皮膜表面状態を、それぞれ顕微鏡で撮影した写真である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示すニス孔版印刷装置および従来の孔版印刷装置に紫外線照射装置を接続した装置全体の概略的な正面図である。
【図5】(a)は、ニス印刷用ドラムユニットが印刷装置本体の装着部に装着されている状態において、後端クランパ等による製版済みのマスタの給版動作を説明する簡略的な要部の正面図、(b),(c)は、ニス印刷用ドラムユニットAまたは従来のドラムユニットが印刷装置本体の装着部に装着されている状態において、先端クランパ等による製版済みのマスタの給版動作を説明する簡略的な要部の正面図である。
【図6】(a)、(b)は、図5の給版動作によって各印刷ドラムの版胴外周面に製版済みのマスタが巻装された状態、印圧曲線および印圧オンエリアを展開して説明する図である。
【図7】操作パネルの要部を示す平面図である。孔版印刷装置におけるドラムユニットの要部を示す部分断面図である。
【図8】図4のニス孔版印刷装置、従来の孔版印刷装置、紫外線照射装置における要部の制御構成を示すブロック図である。
【図9】(a1)は、従来の印刷ドラムに巻装された製版済みのマスタを展開して示す図、(a2)は、(a1)の製版済みのマスタによって得られた印刷物を示す図、(b1)は、ニス印刷用印刷ドラムに巻装された製版済みのマスタを展開して示す図、(b2)は、(b1)の製版済みのマスタによって得られたニス印刷物を示す図、(c)は、(b1)に示した製版済みのマスタを表裏逆にしてフィルム面側から見た図である。
【符号の説明】
【0100】
1A ニス孔版印刷装置
1B 従来の孔版印刷装置
2 紫外線照射装置
8 ニス液、紫外線硬化型ニス(粘液性のコーティング液)
9 印刷装置本体
10A ニス印刷用ドラムユニット(コーティング用ドラムユニット)
10B 孔版印刷用ドラムユニット
11 給紙トレイ(シート載置台)
12 用紙・印刷用紙(シート、被印刷媒体)
18 マスタ
18a 熱可塑性樹脂フィルム
18b 多孔質支持体
18c 穿孔、独立孔、孔
19 先端クランパ(マスタ保持手段、給版手段および給版方向切替手段を構成)
20 版胴
21A ニス印刷用印刷ドラム
21B 孔版印刷用印刷ドラム
22 プレスローラ(押圧手段、押圧部材)
23 ニス供給ローラ(コーティング液供給手段を構成)
24 ドクターローラ(コーティング液供給手段を構成)
25 ニス溜まり
28 後端クランパ(マスタ保持手段、給版手段および給版方向切替手段を構成)
65 制御装置
80 中央制御装置(第1〜第4の制御手段)
90 操作パネル(操作部)
91a 孔版印刷モード設定キー(モード選択設定手段)
91b ニス印刷モード設定キー(モード選択設定手段)
92 製版スタートキー(起動設定手段)
95 タッチパネル
96a ニス印刷用ドラムユニット設定キー(ドラムユニット種類認識手段、ドラムユニット種類検出手段)
96b 孔版印刷用ドラムユニット設定キー(ドラムユニット種類認識手段、ドラムユニット種類検出手段)
101 印刷物
102 写真画像部
103 文字画像部
104 エリア
110A ニス孔版印刷部
110B 従来の孔版印刷部
111A 製版給版部(製版給版装置)
111B 従来の製版給版部(製版給版装置)
112 給紙部(シート給送部)
113 排紙部(シート排出部)
114 排版部
C,D 印刷ドラムの版胴回転方向
X1 マスタ搬送方向
X 用紙搬送方向(シート搬送方向)
Y 用紙幅方向(シート幅方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいてマスタに穿孔製版する製版手段と、穿孔製版されたマスタを外周面に巻装する印刷ドラムと、穿孔製版されたマスタを搬送して前記印刷ドラムの外周面に巻装させる給版手段と、前記印刷ドラムの内部に配設され該印刷ドラム上の製版済みのマスタに粘液性のコーティング液を供給するコーティング液供給手段と、給送されてくる印刷済みのシートを前記印刷ドラム上の製版済みのマスタに押し付ける押圧手段とを有し、印刷済みのシートの所定範囲に前記コーティング液で印刷する孔版印刷装置であって、
前記マスタは、熱可塑性樹脂フィルムと前記コーティング液通過性の多孔質支持体とからなり、
前記給版手段は、前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
前記印刷ドラムおよび前記コーティング液供給手段は、一体化されて印刷装置本体に対して着脱可能なコーティング用ドラムユニットを構成しており、
孔版印刷用のインキを供給するインキ供給手段を内部に備えた孔版印刷用印刷ドラムを有し、該孔版印刷用印刷ドラムおよび前記インキ供給手段は、一体化されて前記印刷装置本体に対して着脱可能な孔版印刷用ドラムユニットを構成していることを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
【請求項3】
前記給版手段は、前記印刷ドラムの外周面に製版済みのマスタを巻装するとき、前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装するコーティング用給版方向と、前記孔版印刷用印刷ドラムの外周面に製版済みのマスタを巻装するとき、前記多孔質支持体側が前記孔版印刷用印刷ドラムの外周面側に、前記熱可塑性樹脂フィルム側が外側になるように巻装する孔版印刷用給版方向とに切り替える給版方向切替手段を有しており、
前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、
前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、前記コーティング用給版方向となるように前記給版方向切替手段を制御する第1の制御手段と、
を具備することを特徴とする請求項2記載の孔版印刷装置。
【請求項4】
画像データを処理して穿孔製版するための製版画像データを作製し、該製版画像データを前記製版手段に送り出す画像出力手段を有し、
前記画像出力手段は、前記画像データを孔版印刷用に鏡像処理して得られた製版画像データを前記製版手段に送り出す標準モードと、前記画像データを前記標準モードとはマスタ搬送方向に対し逆になるように処理して得られた製版画像データを前記製版手段に送り出すコーティングエリアモードの両方のモードを実行可能に構成されており、
前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、
前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、前記コーティングエリアモードを実行するように前記画像出力手段を制御する第2の制御手段と、
を具備することを特徴とする請求項2または3記載の孔版印刷装置。
【請求項5】
前記製版手段に穿孔用エネルギーを供給するエネルギー供給手段と、
前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、
前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されたとき、前記孔版印刷用ドラムユニットの装着が認識されたときに比べて、前記穿孔用エネルギーを大きくするように前記エネルギー供給手段を制御する第3の制御手段と、
を具備することを特徴とする請求項2ないし4の何れか一つに記載の孔版印刷装置。
【請求項6】
前記孔版印刷用ドラムユニットを前記印刷装置本体に装着して印刷を行う孔版印刷モードおよび前記コーティング用ドラムユニットを前記印刷装置本体に装着してコーティング液で印刷を行うコーティング孔版印刷モードの何れか一方を選択設定するモード選択設定手段と、
前記コーティング用ドラムユニットおよび前記孔版印刷用ドラムユニットの何れのユニットが前記印刷装置本体に装着されたかを認識するドラムユニット種類認識手段と、
前記選択設定手段により孔版印刷モードが選択設定されている場合であって、前記ドラムユニット種類認識手段により前記孔版印刷用ドラムユニットの装着が認識されているときには、入力と動作を許容し、前記選択設定手段によりコーティング孔版印刷モードが選択設定されている場合であって、前記ドラムユニット種類認識手段により前記コーティング用ドラムユニットの装着が認識されているときには、入力と動作を許容するよう制御する第4の制御手段と、
を有することを特徴とする請求項2ないし5の何れか一つに記載の孔版印刷装置。
【請求項7】
前記コーティング用ドラムユニットと前記孔版印刷用ドラムユニットとは、前記ドラムユニット種類認識手段により認識される被認識手段、製版済みのマスタの端部を保持するマスタ保持手段および印刷に使用するコーティング液、インキを除き、共通する構成部品および部材から構成されていることを特徴とする請求項2ないし6の何れか一つに記載の孔版印刷装置。
【請求項8】
前記コーティング液は、透明または半透明の紫外線硬化型ニスであり、前記孔版印刷装置のシート搬送方向後流側には印刷済みのシートの表面に塗布・印刷された前記ニスを硬化させるための紫外線照射装置が接続されていることを特徴とする請求項1ないし7の何れか一つに記載の孔版印刷装置。
【請求項9】
画像データに基づいてマスタに穿孔製版する製版手段と、穿孔製版されたマスタを搬送して印刷ドラムの外周面に巻装させる給版手段とを有する製版給版装置において、
前記マスタは、熱可塑性樹脂フィルムと粘液性のコーティング液通過性の多孔質支持体とからなり、
前記給版手段は、前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装することを特徴とする製版給版装置。
【請求項10】
画像データに基づいてマスタに穿孔製版する製版手段と、穿孔製版されたマスタを外周面に巻装する印刷ドラムと、穿孔製版されたマスタを搬送して前記印刷ドラムの外周面に巻装させる給版手段と、前記印刷ドラムの内部に配設され該印刷ドラム上の製版済みのマスタに粘液性のコーティング液を供給するコーティング液供給手段と、給送されてくる印刷済みのシートを前記印刷ドラム上の製版済みのマスタに押し付ける押圧手段とを使用して、印刷済みのシートの所定範囲に前記コーティング液を用いて印刷する孔版印刷方法であって、
前記マスタは、熱可塑性樹脂フィルムと前記コーティング液通過性の多孔質支持体とからなり、
前記熱可塑性樹脂フィルム側が前記印刷ドラムの外周面側に、前記多孔質支持体側が外側になるように巻装して印刷することを特徴とする孔版印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−202496(P2009−202496A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48678(P2008−48678)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)