説明

孔版印刷装置

【課題】版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙クランプ部に孔版原紙の搬送方向の先端部を確実にクランプさせる。
【解決手段】孔版原紙クランプ部20は、版胴11の外周面11aの一部に版胴11の軸方向に沿って固定設置した版取付台座21と、版取付台座21上で版胴11の軸方向の中心部を中心にして所定の長さを持って版胴11の両側面側に向って取り付けられた電磁石22と、電磁石22をオン/オフ動作させる電磁石駆動手段と、版取付台座21上で電磁石22の両側に取り付けられた一対の永久磁石23,23と、版取付台座21上に電磁石22及び一対の永久磁石23,23と対向して開閉可能に磁性金属材を用いて設置されたクランプ板(30)と、版胴11の回転位置に応じてクランプ板(30)を開閉させるクランプ板開閉手段と、を備えたことを特徴とする孔版印刷装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙クランプ部に孔版原紙の搬送方向の先端部を確実にクランプさせることができる孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、孔版印刷装置は、回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙クランプ部に製版済みの孔版原紙の搬送方向の先端部をクランプさせて、この孔版原紙を版胴の外周面に沿って巻回させ、且つ、版胴内に供給したインクを孔版原紙に形成した穿孔画像部分を通過させて印刷用紙上にインク画像を印刷するものであり、1版分の孔版原紙により同一のインク画像を多数枚印刷することができるので多用されている。
【0003】
この種の孔版印刷装置において、本出願人は、先に、版胴の外周面の一部に製版済みの孔版原紙の端部を係止する孔版原紙係止装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された孔版原紙係止装置は、ここでの図示を省略するが、回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に設けられている。
【0005】
上記した孔版原紙係止装置は、版胴の外周面の一部に版胴の軸方向に沿って設けられた版取付台座と、版取付台座上で版胴の軸方向に沿って設けられた磁石板と、孔版原紙の端部を係止するために磁石板と対向して版取付台座上に回動可能に設けられたクランプ板と、孔版原紙の端部をクランプ板から引き出すために版取付台座上に回動可能に設けられた跳ね上げ部材とで構成されており、孔版原紙の端部を磁石板とクランプ板との間でクランプしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−219638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された孔版原紙係止装置では、前述したように、孔版原紙の端部を磁石板とクランプ板との間でクランプさせることができる。
【0008】
この際、一般的に使用されている孔版印刷装置において、円筒状の版胴は、用紙最大サイズとしてA3サイズ(420mm×297mm)の印刷用紙を印刷するためにA3サイズ用の孔版原紙が外周面に沿って巻回できるように版胴の直径がφ180mm程度に設定されているので、A3サイズの印刷用紙の長手方向の長さ420mmと対応してA3サイズ用の孔版原紙の長手方向が版胴の外周面に沿い、且つ、A3サイズの印刷用紙の短手方向の長さ297mmが版胴の軸方向に沿うので、A3サイズ用の孔版原紙の短手方向である幅方向が版胴の軸方向と対応している。
【0009】
尚、A3サイズ以下で、B4サイズ(364mm×257mm),A4サイズ(297mm×210mm),B5サイズ(257mm×182mm)など複数種の印刷用紙を印刷する場合でも、インクが版胴の外周面に付着しないように版胴の外周面にはA3サイズ以下の画像情報を製版したA3サイズ用の孔版原紙を巻回させている。
【0010】
一方、最近、A3サイズ(420mm×297mm)の印刷用紙よりも大型サイズで例えばA2サイズ(594mm×420mm)の印刷用紙を印刷できる孔版印刷装置の開発が要望されている。
【0011】
この際、A2サイズの印刷用紙への印刷を可能とする孔版印刷装置の開発にあたって、版胴の直径を大径化せずに版胴の円周方向の長さをA2サイズの印刷用紙の短手方向の長さ420mmに対応させて版胴の直径を上記と同じ値であるφ180mm程度に設定した場合に、A2サイズ用の孔版原紙の幅方向の長さはA2サイズの印刷用紙の長手方向の長さ594mmと対応することになるので、版胴の軸方向の長さ及び磁石板の長さ並びにクランプ板の長さはA3サイズ用の孔版原紙の場合に対して2倍になってしまう。
【0012】
これにより、A2サイズの印刷用紙への印刷を可能とする孔版印刷装置を開発する場合に、特許文献1に開示された孔版原紙係止装置の技術的思想を適用して、A2サイズ用の孔版原紙の端部を版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙係止装置によりクランプするときに、磁石板の長さがA3サイズ用の場合よりも2倍長くなるために、クランプ板へのクランプ力が倍増してしまい、これ伴って、クランプ板を開閉するクランプ板開閉駆動機構内に設けたクランプ用モータの負荷が増大するので、クランプ用モータを大型化しなければならないという新たな問題点が生じてしまう。
【0013】
更に、クランプ板の長さが長くなるので、クランプ板が撓みやすくなるという問題点も生じてしまう。
【0014】
そこで、A3サイズの印刷用紙よりも大型サイズで例えばA2サイズの印刷用紙を印刷可能とする孔版印刷装置の開発にあたって、版胴の直径を大径化せずに、版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙クランプ部に孔版原紙の搬送方向の先端部を確実にクランプさせることができ、且つ、クランプ用モータの小型化やクランプ板の撓みを軽減できる孔版印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙クランプ部により孔版原紙の搬送方向の先端部をクランプして、前記孔版原紙を前記版胴の外周面に巻回させるように構成した孔版印刷装置において、
前記孔版原紙クランプ部は、
前記版胴の外周面の一部に該版胴の軸方向に沿って固定設置した版取付台座と、
前記版取付台座上で前記版胴の軸方向の中心部を中心にして所定の長さを持って該版胴の両側面側に向って取り付けられた電磁石と、
前記電磁石をオン/オフ動作させる電磁石駆動手段と、
前記版取付台座上で前記電磁石の両側に取り付けられた一対の永久磁石と、
前記版取付台座上に前記電磁石及び前記一対の永久磁石と対向して開閉可能に磁性金属材を用いて設置されたクランプ板と、
前記版胴の回転位置に応じて前記クランプ板を開閉させるクランプ板開閉手段と、
を備え、
前記孔版原紙の搬送方向の先端部を前記電磁石及び前記一対の永久磁石と前記クランプ板との間でクランプさせることを特徴とする孔版印刷装置である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の孔版印刷装置において、
前記クランプ板開閉手段により前記クランプ板を閉じたときに、前記孔版原紙の先端部のうちで幅方向の両端側を前記一対の永久磁石と前記クランプ板でクランプした後に前記電磁石駆動手段を介して前記電磁石をオン動作させて前記孔版原紙の先端部のうちで幅方向の略中央部位近傍をクランプし、且つ、印刷用紙への印刷時に前記電磁石のオン動作を継続させると共に、前記孔版原紙を排版するときに前記電磁石をオフ動作させることを特徴とする孔版印刷装置である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の孔版印刷装置において、
前記電磁石は、
前記一対の永久磁石の上面の高さと略同一高さの上面を有し、且つ、下面が前記版取付台座上に取り付けられる鉄板と、
前記鉄板の下面に一端部が固着され、且つ、他端部が前記版取付台座に埋め込まれた一つ以上の鉄心と、
前記一つ以上の鉄心に巻回されたコイルと、
を有することを特徴とする孔版印刷装置である。
【0018】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の孔版印刷装置において、
前記電磁石駆動手段は、
前記版胴の一方の側面にリング状に設けられ、前記コイルの一端部が接続された+電極用の電極レールと、
前記版胴の一方の側面にリング状に設けられ、前記コイルの他端部が接続された−電極用の電極レールと、
前記+電極用の電極レール及び前記−電極用の電極レールに給電する給電手段と、
前記電磁石をオン/オフ制御する電磁石駆動回路と、
を有することを特徴とする孔版印刷装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の孔版印刷装置によると、A3サイズの印刷用紙よりも大型サイズで例えばA2サイズの印刷用紙を印刷可能とする孔版印刷装置を開発するに当たって、版胴の外周面の一部に版胴の軸方向に沿って長尺な版取付台座を固定設置した上で、この版取付台座上に版胴の軸方向の中心部を中心にして所定の長さを持った電磁石を配置すると共に、電磁石の両側に一対の永久磁石を配置することで、孔版原紙の搬送方向の先端部を電磁石及び一対の永久磁石とクランプ板との間で確実にクランプさせることができると共に、印刷用紙への印刷中に電磁石をオン動作させることにより、印刷中に孔版原紙の片寄りや、孔版原紙の抜けを防止することが可能となる。
【0020】
また、請求項2記載の孔版印刷装置によると、クランプ板開閉手段によりクランプ板を閉じたときに、孔版原紙の先端部のうちで幅方向の両端側を一対の永久磁石とクランプ板でクランプした後に電磁石駆動手段を介して電磁石をオン動作させて孔版原紙の先端部のうちで幅方向の略中央部位近傍をクランプさせることにより、孔版原紙の先端部のうちで幅方向の両端側が先にクランプされ、その後、孔版原紙の先端部のうちで幅方向の略中央部位近傍がクランプされるために、版胴に対する孔版原紙の画像位置精度を確実に向上させることができる。
【0021】
また、孔版原紙を排版するときに電磁石をオフ動作させることにより、クランプ板への磁力が軽減されるのでクランプ板開閉手段のクランプ用モータへのクランプ解除負荷を軽減できるためにクランプ用モータを小型化でき、更に、クランプ板の撓みも軽減できる。
【0022】
また、請求項3記載の孔版印刷装置によると、版取付台座上に取り付けられる鉄板と、鉄板の下面に固着された一つ以上の鉄心と、一つ以上の鉄心に巻回したコイルとにより電磁石を薄型に構成できる。
【0023】
更に、請求項4記載の孔版印刷装置によると、版胴の一方の側面に設けられた+電極用の電極レール及び−電極用の電極レールと、両電極レールに給電する給電手段と、電磁石駆動回路とにより電磁石を確実にオン/オフ動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a),(b)は本発明に係る孔版印刷装置において、孔版原紙の着版状態を示した側面図,A部拡大図である。
【図2】図1に示した孔版原紙クランプ部を示した平面図である。
【図3】図1に示した孔版原紙クランプ部の版取付台座に電磁石と一対の永久磁石とを取り付けた状態を示した斜視図である。
【図4】本発明に係る孔版印刷装置孔内に設けた制御部を説明するためのブロック図である。
【図5】(a),(b)は本発明に係る孔版印刷装置において、印刷用紙への印刷状態を示した側面図,B部拡大図である。
【図6】本発明に係る孔版印刷装置において、孔版原紙の排版状態を示した側面図,C部拡大図である。
【図7】(a),(b)は本発明に係る孔版印刷装置内に設けたクランプ板を一部変形させた変形例のクランプ板を説明するための上面図,D−D矢視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明に係る孔版印刷装置の一実施例について、図1〜図7を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
図1(a)に示す如く、本発明に係る孔版印刷装置10は、A3サイズ(420mm×297mm)の印刷用紙よりも大型サイズで不図示の給紙部から搬送される例えばA2サイズ(594mm×420mm)の印刷用紙Pを印刷可能に構成されており、この孔版印刷装置10の内部に円筒状の版胴11が中心軸12に連結されたエンコーダ付き版胴用モータ13によって中心軸12と一体に図示反時計方向に回転可能に設けられている。
【0027】
この際、孔版印刷装置10は製版済みの孔版原紙Gを版胴11に着版する着版状態を示しているので、版胴11は回転を停止している。
【0028】
上記に伴って、版胴11の直径φDは、A2サイズの印刷用紙Pの短手方向の長さ420mmに対応させてφ180mm程度に設定されており、これに伴って、A2サイズの印刷用紙Pの短手方向の長さ420mmと対応してA2サイズ用の孔版原紙Gの短手方向が版胴11の外周面11aに沿って巻回され、且つ、A2サイズの印刷用紙Pの長手方向の長さ594mmが版胴11の軸方向に沿うので、A2サイズ用の孔版原紙Gの長手方向である幅方向は版胴11の軸方向と対応している。
【0029】
一方、図2に示した如く、A2サイズの印刷用紙Pと対応して製版されたA2サイズ用の孔版原紙Gの長手方向となる幅寸法Wは、A2サイズの印刷用紙P(図1)の長手方向の長さ594mmよりも長く設定されていると共に、版胴11の軸方向の長さLはA2サイズ用の孔版原紙Gの幅寸法Wよりも長く設定されている。
【0030】
図1(a)に戻り、版胴11の外周面11a上の一部には、A2サイズの印刷用紙Pと対応して製版されたA2サイズ用の孔版原紙Gの先端部Gaを幅方向に沿ってクランプするための孔版原紙クランプ部20が設けられており、孔版原紙クランプ部20によってクランプされた孔版原紙Gは版胴11の外周面11aに沿って巻き付けられるようになっている。
【0031】
この際、製版された孔版原紙Gは、熱可塑性樹脂フィルムなどを用いて版胴11の右上方部位に設置された不図示の製版部内に設けたサーマルヘッドにより1版分の画像情報に応じて感熱穿孔された穿孔画像部分が製版画像として形成されているものである。
【0032】
また、図1(b),図2及び図3に示す如く、上記した孔版原紙クランプ部20は、版胴11の外周面11aの一部に版取付台座21が非磁性材のアルミ材又は合成樹脂材などを用いて所定の高さで版胴11の円周方向に沿って略台形状に形成され且つ版胴11の軸方向に沿って版胴11の軸方向の長さLと略同じ長さで長尺に形成されている。
【0033】
また、版取付台座21の上面21aには、電磁石22が版胴11の版胴11の軸方向の中心部を中心にして版胴11の軸方向の長さLに対して1/3以上の所定の長さを持って版胴11の両側面11b,11c(図3のみ図示)側に向って略左右対称に取り付けられていると共に、電磁石22の左右両端側に例えばゴム製の永久磁石23,23が版取付台座21の左右両端に向って一対取り付けられている。
【0034】
この際、図3に示すように、上記した電磁石22は、平板状に形成された一対の永久磁石23,23の各上面の高さと略同一高さの上面を有し且つ下面が版取付台座21の上面21a上に取り付けられた鉄板22aと、この鉄板22aの下面に一端部が固着され且つ一端部と反対側の他端部が非磁性を有する版取付台座21内に埋め込まれた一つ以上の鉄心22bと、一つ以上の鉄心22bに巻回したコイル22cとからなり、この実施例では、間隔を離して設置した2個の鉄心22b,22bにコイル22cが直列に結線されて巻回しているので、電磁石22を薄型に構成できる。
【0035】
また、2個の鉄心22b,22bに巻回したコイル22cの一端部22c1及び他端部22c2(図3のみ図示)は版取付台座21の下面21b側に形成した凹溝21b1を通って版胴11の一方の側面11b側まで延出されて、コイル22cの一端部22c1が版胴11の一方の側面11bにリング状に形成した+電極用の電極レール24に接続され、且つ、コイル22cの他端部22c2が版胴11の一方の側面11bにリング状に形成した−電極用の電極レール25に接続されている。
【0036】
また、上記した電極レール24,25に、不図示のDC電源とスイッチ回路などを備えた電磁石駆動回路47(図4)を介して接続された一対の導電性ブラシ26,27が常時当接することで、コイル22cへの給電手段を構成している。
【0037】
従って、版胴11の一方の側面11bに形成した電極レール24,25と、電磁石駆動回路47(図4)を介して接続された一対の導電性ブラシ26,27とで電磁石駆動手段を構成している。
【0038】
また、図1(b)及び図2に示す如く、版取付台座21上には、孔版原紙Gの先端部Gaを幅方向に沿ってクランプするためのクランプ板30が磁性金属材を折り曲げて形成した平坦なクランプ面30aを電磁石22及び一対の永久磁石23,23と対向させて版胴11の軸方向に沿って長尺に設けられており、このクランプ板30は版取付台座21の長手方向の両端部に固定された一対の支持軸部31,31に対して第1回転軸32,32を介して第1ネジリバネ33,33により閉じ方向に付勢されながら回動可能となっていると共に、クランプ板30の長手方向の一方の端部に第1カムフォロワー34が版胴11の一方の側部から外側に向って突出した状態で取り付けられている。そして、電磁石22及び一対の永久磁石23,23と、クランプ板30のクランプ面30aとの間に孔版原紙Gの先端部Gaを挿入することで磁性力により孔版原紙Gの先端部Gaが版胴11にクランプされようになっている。
【0039】
また、版取付台座21上には、使用済みの孔版原紙Gをクランプ板30からクランプを解除して排版するときに、クランプを解除された使用済みの孔版原紙Gの先端部Gaを跳ね上げるための跳ね上げ部材35が金属材を折り曲げて形成した跳ね上げ面35aをクランプ板30と対向させて版胴11の軸方向に沿って長尺に設けられており、この跳ね上げ部材35は版取付台座21上でクランプ板30よりも版胴11の回転方向の上流側に取り付けられていると共に、クランプ板30によってクランプされた孔版原紙Gの裏面側に配置されている。
【0040】
そして、跳ね上げ部材35も版取付台座21の長手方向の両端部に固定された一対の支持軸部31,31に対して第2回転軸36,36を介して第2ネジリバネ37,37により閉じ方向に付勢されながら回動可能となっていると共に、跳ね上げ部材35の長手方向の一方の端部に第2カムフォロワー38が版胴11の一方の側部から外側に向って突出した状態で取り付けられている。
【0041】
この際、版胴11の軸方向の一方の側部側に設けた弓形状カム部材45(図4)の一端部側と他端部側とが、第1,第2カムフォロワー34,38にそれぞれ独立して当接することで、クランプ板30と跳ね上げ部材35とがそれぞれ独立して回動可能になっている。
【0042】
再び、図1(a)に戻り、版胴11と一体に回転する中心軸12の一端面側にはインク挿入口12aが形成されており、このインク挿入口12aから挿入されたインクIKは、版胴11内に設けたインク溜り14に溜められた後にインク溜り14を挟んで設けたドクターローラ15とインク塗布ローラ16との間に形成された隙間から製版済みの孔版原紙G側に浸み出すようになっている。
【0043】
また、版胴11の外周面11aの下方には、プレスローラ17が不図示の電磁ソレノイドなどの駆動力により版胴11の外周面11aに対して接離自在に設けられており、このプレスローラ17は版胴11の外周面11aに設けた孔版原紙クランプ部20が通過するときに版胴11の外周面11aから離間するようになっていると共に、孔版原紙Gの着版時に離間している。
【0044】
次に、図4に示した如く、孔版印刷装置10内に設けた制御部40は、この装置全体を制御するCPU40aと、孔版印刷装置10の動作プログラムや予め固定された情報を格納するROM40bと、孔版印刷装置10内で変更可能な情報などを一時的に格納するRAM40cと、エンコーダ付き版胴用モータ13のエンコーダから出力されるエンコーダパルスの数を計数するカウンタ40dとを有している。
【0045】
また、制御部40は、版胴用モータ駆動回路41を介してエンコーダ付き版胴用モータ13の回転を制御していると共に、作業者が版胴11を孔版印刷装置10から取り外す位置となる版胴初期位置をエンコーダの近傍に設けた版胴初期位置センサ42で検出している。
【0046】
この際、エンコーダ付き版胴用モータ13のエンコーダは、版胴11の版胴初期位置を基準として所定の間隔でエンコーダパルスを順次出力しているので、版胴11の回転に伴って発生するエンコーダパルスの数をカウンタ40dで計数することにより、後述する着版位置,印刷開始位置,印刷完了位置,排版位置をそれぞれ検出している。
【0047】
また、制御部40は、版胴11の回転に伴ってクランプ用モータ駆動回路43を介してクランプ用モータ44を作動させて、版胴11の軸方向の一方の側部側に設けた弓形状カム部材45を上下動させることで、クランプ板30と跳ね上げ部材35とをそれぞれ開閉しており、且つ、クランプ板30の開閉状態をクランプ板30の近傍に設置したクランプセンサ46により検出しているので、クランプ用モータ駆動回路43とクランプ用モータ44と弓形状カム部材45とクランプセンサ46とでクランプ板開閉手段が構成されている。
【0048】
また、制御部40は、電磁石駆動回路47を介して電磁石22をオン/オフ制御しており、この電磁石22は、孔版原紙Gの着版時にオフ動作され、一対の永久磁石23,23とクランプ板30とで孔版原紙Gの先端部Gaのうちで幅方向の両端側をクランプした後にオン動作され、且つ、印刷用紙Pへの印刷中もオン動作を継続され、孔版原紙Gの排版時にオフ動作されている。
【0049】
更に、制御部40は、不図示の電磁ソレノイドなどを用いたプレスローラ駆動手段48を介してプレスローラ17を版胴11の外周面11aに対して接離させている。
【0050】
ここで、上記構成による孔版印刷装置10の動作について説明する。
【0051】
まず、図1(a),(b)に示す如く、孔版印刷装置10内で版胴11が孔版原紙Gを着版する着版位置に至っているときには、版胴11が回転を停止しており、版胴11の版胴初期位置を基準としてエンコーダ付き版胴用モータ13からのエンコーダパルスの数が着版位置と対応した所定数に達していて、この版胴11の外周面11aの一部に設けた孔版原紙クランプ部20が略真上に至っている。
【0052】
この着版位置では、クランプ用モータ駆動回路43(図4)を介してクランプ用モータ44が作動されて、版胴11の軸方向の一方の側部側に設けた弓形状カム部材45(図4)の一端側がクランプ板30の長手方向の一方の側部に取り付けた第1カムフォロワー34を上方から下方に向って押し付けているので、クランプ板30が第1ネジリバネ33に抗して第1回転軸32を中心に反時計方向に回動して開放状態とされるが、跳ね上げ部材35の長手方向の一方の側部に取り付けた第2カムフォロワー38には弓形状カム部材45(図4)の他端側が当接していないので、跳ね上げ部材35は第2ネジリバネ37の付勢力により電磁石22及び一対の永久磁石23,23側に閉じている。
【0053】
そして、電磁石22及び一対の永久磁石23,23と、クランプ板30との間に、不図示の製版部から搬送された製版済みの孔版原紙Gの先端部Gaが挿入されるが、この着版位置では前述したように制御部40は電磁石駆動回路47を介して電磁石22をオフ動作させているので非動作状態であるが、一対の永久磁石23,23の磁力は作用している。
【0054】
次に、図5(a),(b)に示した如く、着版位置から版胴用モータ駆動回路41を介してエンコーダ付き版胴用モータ13を作動させて版胴11を反時計方向に回転させると、弓形状カム部材45(図4)の一端側がクランプ板30の長手方向の一方の側部に取り付けた第1カムフォロワー34から離れるので、クランプ板30は第1ネジリバネ33の付勢力により第1回転軸32を中心に時計方向に回動して閉じ方向に移動するので、孔版原紙Gの先端部Gaのうちで幅方向の両端側が一対の永久磁石23,23とクランプ板30との間にクランプされ、このクランプ状態をクランプセンサ46(図4)により確認した後に、電磁石22をオン動作させる。これにより、孔版原紙Gの先端部Gaが電磁石22及び一対の永久磁石23,23と、クランプ板30との間で確実にクランプされる。
【0055】
この際、孔版原紙Gの先端部Gaのうちで幅方向の両端側が一対の永久磁石23,23の磁力により先にクランプされ、その後、孔版原紙Gの先端部Gaのうちで幅方向の略中央部位近傍が電磁石22の磁力により確実にクランプされるので、版胴11に対する孔版原紙Gの画像位置精度を確実に向上させることができる。
【0056】
この後、電磁石22のオン動作を継続して、孔版原紙Gの先端部Gaを電磁石22及び一対の永久磁石23,23とクランプ板30とでクランプしたまま、版胴11を反時計方向に更に回転させて、エンコーダ付き版胴用モータ13からのエンコーダパルスの数が印刷位置に対応とすると、制御部40は、プレスローラ駆動手段48(図4)を介してプレスローラ17を不図示の給紙ユニットから搬送された印刷用紙Pと、版胴11の外周面11aに巻回した製版済みの孔版原紙Gとに押し当てて、印刷用紙Pを下流側に向って搬送しながら版胴11内に供給されたインクIKを製版済みの孔版原紙Gを通して印刷用紙P上に孔版原紙Gの製版画像に応じたインク画像を印刷している。従って、印刷用紙Pへの印刷中に電磁石22をオン動作させることにより、印刷中に孔版原紙Gの片寄りや、孔版原紙Gの抜けを防止することが可能となる。
【0057】
そして、印刷用紙Pへの印刷を複数回繰り返して複数枚全て印刷が終了した段階で、版胴11に巻き付けられた孔版原紙Gは使用済みとなるので、版胴11と一体に孔版原紙クランプ部20を図6(a),(b)に示した孔版原紙Gの排版位置まで反時計方向に回転させている。
【0058】
ここで、版胴11の反時計方向への回転により版胴11の外周面11aに設けた孔版原紙クランプ部20が排版位置に至る寸前に電磁石22をオフ動作させると共に、弓形状カム部材45(図4)の一端側がクランプ板30の長手方向の一方の側部に取り付けた第1カムフォロワー34を上方から下方に向って押し付けるために、クランプ板30が第1ネジリバネ33に抗して第1回転軸32を中心に反時計方向に回動して開放状態とされるので、電磁石22及び一対の永久磁石23,23とクランプ板30とで挟持されていた使用済みの孔版原紙Gの先端部Gaへのクランプが解除され、且つ、電磁石22のオフ動作によりクランプ板30への磁力が軽減されるのでクランプ用モータ44(図4)へのクランプ解除負荷を軽減できるためにクランプ用モータ44を小型化でき、更に、クランプ板30の撓みも軽減できる。
【0059】
この後、更に版胴11を反時計方向に回転させると、弓形状カム部材45(図4)の他端側が跳ね上げ部材35の長手方向の一方の側部に取り付けた第2カムフォロワー38を上方から下方に向って押し付けるために、跳ね上げ部材35が第2ネジリバネ37に抗して第2回転軸36を中心に反時計方向に回動して開放状態とされるので、クランプを解除された使用済みの孔版原紙Gの先端部Gaが跳ね上げ部材35の揺動端部にて持ち上げられて、不図示の排版部に搬送される。そして、エンコーダ付き版胴用モータ13からのエンコーダパルスの数が排版位置に至ったときに、使用済みの孔版原紙Gに対して排版動作を確実に行うことができる。
【0060】
次に、本発明に係る孔版印刷装置10内に設けたクランプ板30を一部変形させた変形例のクランプ板について図7を用いて簡略に説明する。
【0061】
図7に示す如く、変形例のクランプ板30’は、孔版原紙Gをクランプするクランプ面30aが平坦な面に形成されているものの、クランプ面30aと反対側の上面30bは1本の第1リブ30c及び複数の第2リブ30dにより一部凸状に突出形成されているので、クランプ板30’の剛性力を高めて補強することができ、これによりクランプ板30’のクランプ面30aの撓みを減少させることができるようになっている。
【0062】
具体的に説明すると、クランプ板30’の第1リブ30cはクランプ面30a及び上面30bの長手方向に沿って細い幅で1本長尺に形成されており、一方、複数の第2リブ30dは第1リブ30cを挟んだ両側に所定の間隔を隔てて楕円状に形成されている。
【0063】
この際、クランプ板30’の第1,第2リブ30c,30dは、共にクランプ面30a側が凹状に凹んで形成され、且つ、上面30b側が凸状に突出形成されていることにより、平坦なクランプ面30aのクランプ面積が減少するために、電磁石22及び一対の永久磁石23,23の各磁力の影響を軽減でき、孔版原紙Gへのクランプ解除時にクランプ用モータ44の負荷を軽減できる。
【0064】
尚、第1,第2リブ30c,30dを形成して、クランプ板30’のクランプ面30aのクランプ面積をA3サイズの場合と略同様に適宜設定することにより、電磁石22を省き、クランプ面30aと対向して例えば長尺なゴム製の永久磁石(図示せず)だけで対応させることも可能であり、長尺なゴム製の永久磁石(図示せず)とクランプ板30’との間で孔版原紙Gの先端部Gaをクランプする場合には大幅なコスト低減を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0065】
10…孔版印刷装置、
11…版胴、11a…外周面、11b,11c…側面、12…中心軸、
13…エンコーダ付き版胴用モータ、14…インク溜り、15…ドクターローラ、
16…インク塗布ローラ、17…プレスローラ、
20…孔版原紙クランプ部、
21…版取付台座、22…電磁石、22a…鉄板、22b…鉄心、22c…コイル、
23,23…一対の永久磁石、
24…+電極用の電極レール、25…−電極用の電極レール、
26,27…導電性ブラシ、
30…実施例のクランプ板、30’…変形例のクランプ板、30a…クランプ面、
31…支持軸部、32…第1回転軸、33…第1ネジリバネ、
34…第1カムフォロワー、35…跳ね上げ部材、36…第2回転軸、
37…第2ネジリバネ、38…第2カムフォロワー、
40…制御部、40a…CPU、40b…ROM、40c…RAM、40d…カウンタ、
41…版胴用モータ駆動回路、42…版胴初期位置センサ、
43…クランプ用モータ駆動回路、44…クランプ用モータ、45…弓形状カム部材、
46…クランプセンサ、47…電磁石駆動回路、48…プレスローラ駆動手段、
G…孔版原紙、Ga…先端部、IK…インク、P…印刷用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙クランプ部により孔版原紙の搬送方向の先端部をクランプして、前記孔版原紙を前記版胴の外周面に巻回させるように構成した孔版印刷装置において、
前記孔版原紙クランプ部は、
前記版胴の外周面の一部に該版胴の軸方向に沿って固定設置した版取付台座と、
前記版取付台座上で前記版胴の軸方向の中心部を中心にして所定の長さを持って該版胴の両側面側に向って取り付けられた電磁石と、
前記電磁石をオン/オフ動作させる電磁石駆動手段と、
前記版取付台座上で前記電磁石の両側に取り付けられた一対の永久磁石と、
前記版取付台座上に前記電磁石及び前記一対の永久磁石と対向して開閉可能に磁性金属材を用いて設置されたクランプ板と、
前記版胴の回転位置に応じて前記クランプ板を開閉させるクランプ板開閉手段と、
を備え、
前記孔版原紙の搬送方向の先端部を前記電磁石及び前記一対の永久磁石と前記クランプ板との間でクランプさせることを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
前記クランプ板開閉手段により前記クランプ板を閉じたときに、前記孔版原紙の先端部のうちで幅方向の両端側を前記一対の永久磁石と前記クランプ板でクランプした後に前記電磁石駆動手段を介して前記電磁石をオン動作させて前記孔版原紙の先端部のうちで幅方向の略中央部位近傍をクランプし、且つ、印刷用紙への印刷時に前記電磁石のオン動作を継続させると共に、前記孔版原紙を排版するときに前記電磁石をオフ動作させることを特徴とする請求項1に記載の孔版印刷装置。
【請求項3】
前記電磁石は、
前記一対の永久磁石の上面の高さと略同一高さの上面を有し、且つ、下面が前記版取付台座上に取り付けられる鉄板と、
前記鉄板の下面に一端部が固着され、且つ、他端部が前記版取付台座に埋め込まれた一つ以上の鉄心と、
前記一つ以上の鉄心に巻回されたコイルと、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の孔版印刷装置。
【請求項4】
前記電磁石駆動手段は、
前記版胴の一方の側面にリング状に設けられ、前記コイルの一端部が接続された+電極用の電極レールと、
前記版胴の一方の側面にリング状に設けられ、前記コイルの他端部が接続された−電極用の電極レールと、
前記+電極用の電極レール及び前記−電極用の電極レールに給電する給電手段と、
前記電磁石をオン/オフ制御する電磁石駆動回路と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−35238(P2013−35238A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174841(P2011−174841)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)