説明

学生の出欠行動支配心理の推理を支援する出欠データ表示方法

【課題】 複数の科目を履修する大学等においては、学生毎に履修科目は異なり、かつ個々の学生の志望進路により、学習到達目標レベルも異なるので、単一科目の授業の出席率や理解度から求められた指数のみで、学生等を個別に指導する事は甚だ困難であり、逆に学生の心理、心情を欠く指導的行為は学生の反発や離反を招く虞もある。
【解決手段】 大学等の各種教育機関において、学生の履修登録科目毎の出席状況データを収集してLAN経由のサーバに蓄積しておき、教員等は必要に応じて、当該サーバから該当する学生の連続する2週間の時間割形式の出席状況表を個々の端末機器に表示し、前記サーバに予め蓄積してある学生個人の諸情報と前記出席状況とを合わせて閲覧することにより、学生の勉学の達成を円滑にするために、教員等指導者が学生に適時・適切に支援し助言するための情報を得るシステムを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大学や短期大学並びに専門学校等の各種教育機関(以降、大学等と記す)において、学生の履修登録科目毎の出席状況データを収集してサーバに蓄積しておき、当該サーバに予め蓄積してある学生個人の諸情報と前記出席状況とを合わせて閲覧することにより、学生の勉学の達成を円滑にするために、教員等指導者が学生に適時・適切に支援し助言するための情報を得るシステムを構築するソフトウェア技術に関する。
前記した「学生の勉学の達成を円滑にするために、指導者が学生に適時、適切な支援や助言を行う」ことを、以降、「ケア」と表現する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のような学内LANを用いて学生・教員・事務職員の相互間における情報の授受を行うシステムに類似するものは、すでに、大学等で多用されている。また、受講生の出席を電子機器で把握するシステムとして、例えば、特許文献2により提案されている。更に、特許文献3には、音楽教室において、出席状況と指導レポートとから指数を算出し、当該指数により生徒の教室退会の兆候を早期に察知し、その防止を図ろうとするシステムが提案されており、情報技術の教育分野への適用は対象、目的とも急速に拡大している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−291041号公報
【特許文献2】特開平7−244652号公報
【特許文献3】特開2004−94709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
教科目毎の出席状況を電子機器で把握し、該出席状況等により算出された指数値のみで学生をケアすることは極めて困難である。また、複数の科目を履修する大学等においては、学生毎に履修科目は異なり、かつ個々の学生の志望進路により、学習到達目標レベルも異なるので、単一科目の授業の出席率や理解度から求められた指数のみで、学生等を個別に指導する事は甚だ困難であり、逆に学生の心理、心情の理解を欠く指導的行為は学生の反発や離反を招く虞もある。
【0005】
Education(教育)の語源は、Educe(学習者の潜在的な才能を見出して引き出す)のために、指導者が必要な対応を学習者にAction(働きかける)する、すなわち相反する立場の間で進行する作用・反作用の関係の進行過程で、相互に心を理解し、ケアとそれに因る効果の発現という心の理解の上に成り立つ極めて強い精神的一面を持つ。
よって、情報技術を活用して収集、把握した出席状況の数値データから、教員が出欠という学生の行動を支配した心の動きを教員がいち早くかつ適正に読み取る技術、手法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は係る観点から成されたもので、各種電子機器等により収集された授業出席データを学内のサーバに蓄積しておき、別途保有している学生個人に関する諸情報と合わせて学内LANを通して、出席状況を単週毎に時間割形式で表示することにより、学生の出席行動の支配心理の素早くかつ適切な理解を支援するための新しい思考法を提案するものである。
【0007】
さらに、個々の学生の単週時間割型別出席状況表を、連続する2週間に亘って表示する2週連続表示方法は、学生の出席行動支配心理の理解に一層有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クラス担任教員は個々の学生の2週間に亘る曜日毎・時限毎の詳細な出席状況と学生個人の諸情報とを合わせて閲覧することで、当該欠席が当該授業に対する理解力不足、当該教員との不適合さらには当該教員の指導力不足等々の原因を反映している恒常的欠席であるか、若しくは個人的事情に起因している突発的な欠席であるか等、欠席理由の本質を推定できる。
【0009】
欠席理由の適正な推定により、当該学生へ適切な忠告や助言を伴う指導が可能となり、予断と偏見で誤った欠席理由を根拠にして忠告した事による学生の反発を招く事例がなくなる。心の通う指導、忠告は学生の学習意欲を向上させる効果がある。
【0010】
更に本発明によれば、例えば、教員は担当科目の出席率と、学内における全ての授業の出席率を把握し比較する事ができることから、教員本人の授業内容や方法が妥当であるか否かの判断材料を得ることが可能であり、教員自身の自己研鑽の指針となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図を用いて詳述する。
図1は本発明から成る、出欠行動支配心理の推理を支援する出欠データ表示方法の一実施例を示したブロック図である。
【0012】
各教室で各種の電子機器等により得られる出席データ20は学内に構築されているLAN(構内通信網)により送信25されて出席データサーバ30へ蓄積される。一方、学務システム10には学生の個人情報が予め入力され蓄積されており、前記したLANに接続されている。
【0013】
前記した出席データと学生個人の情報は、ケア情報化システム40により統合・整理され、以降に示すように要求に応じて出力される。
【0014】
教員は必要に応じて、LANに接続されている端末機器により出席率グラフ120を参照して、担当する学生の中から、出席率が低い学生を選択し、2週間に亘る時間割形式の出席状況表100並びに該当する単一週の時間割形式出席状況表110を閲覧する。
【0015】
ここで重要な事は、単一週の時間割形式出席状況表110を閲覧したのみで、当該学生が欠席した理由を判断することは、甚だ困難である。なぜならば、当該週のみの突発的な原因、例えば“忌引き”等による、やむなく突発的に欠席していることがあるからである。
【0016】
そこで本発明から成る、2週間に亘る時間割形式の出席状況表100が有用な情報を提供してくれることになる。
【0017】
図2は本発明の主要な構成要件の一つである、2週間に亘る時間割形式の出席状況表100の具体的実施例を示す。(実際の画面はカラーで表示されている)
【0018】
当該出席状況表100の基本となる情報は、一人の学生に対して、連続する2週間に亘る時限毎の履修科目名と該科目の受講状況であり、且つ前記した情報が一画面で一覧できる。以下の項では、図2を用いて前記した出席状況表100の詳細を説明する。
【0019】
本実施例では、横方向に日時並びに曜日を、縦方向に時限をとり、該当する日時・時限の枠内に、(1)必修・選択別の色分け線(一例として、赤;必修科目、緑;選択科目等)、(2)履修科目名、(3)出欠状況を示す記号や字(一例として、出席;○、欠席;×、遅刻;遅、特別休暇;特)が表示されている。
【0020】
さらに、各枠内は色分けされており、出欠状況が一目で把握できる工夫をしている。色分けの一例として、白;出席、赤;欠席、黄;今後の授業予定、灰;休校、茶;未履修受講科目、橙;休校日等である。
【0021】
以下に出席状況表100として例示している図2の具体的記述によって、当該学生の出欠行動支配心理の推理方法を詳述する。
【0022】
第一行目に学生番号、氏名と所属並びに出身校が、第二行目に閲覧したい月日を入力することで、入力された月日を含む2週間の出席状況が表示される。また、表中の(凡例)をクリックすることにより先述した色分けの内容等が表示され、(学生情報)をクリックすると、当該学生の詳細情報が表示される。
【0023】
例示している図2に記載されている学生の5月22日から6月3日における出席状況を以下に詳述してみる。
【0024】
5月22日(月)の1時限目(8時50分から10時20分)は必修科目の国文学講義(3)を受講、2時限目(10時30分から12時00分)は必修科目のフランス語コミュニケーションを受講、3時限目(12時50分から14時20分)は選択科目の社会心理学を受講、4時限目(14時30分から16時00分)は選択科目の物理学を受講している。
【0025】
同様に、5月23日(火)も1時限目、2時限目を受講。5月24日(水) 3時限目は休講となっている。5月25日(木)1時限目、2時限目共に特別休暇で欠席。5月26日(金)3時限目は遅刻と表示されている。
【0026】
続いて、同一画面に次週である5月29日から6月3日の出欠状況が表示されており、先述したと同様に、日付毎・時限毎の出席状況が表示されている。
【0027】
当該学生に関しては、5月31日(水)3時限目の国文学講義(3)を欠席している以外は全て出席していることが把握できる。
【0028】
以上の出席状況から、当該学生は5月25日(木)に特別休暇で欠席しているが、学校が承認している事由による欠席である事から問題はないが、5月31日(水)3時限目の欠席に関しては少し斟酌する必要がある。
【0029】
前記した欠席理由をさらに検討することが出来るように、本発明では、図2中に示してある(前の週・次の週)のコマンドを設けている。
【0030】
先述した5月22日から6月3日における出席状況を把握した後、直ちに前記の(前の週)コマンドをクリックすることで、現在表示より1週間前の5月15日から5月27日の2週間に亘る出欠状況を、又は(次の週)コマンドをクリックすることで、現在表示より1週間後の5月29日から6月10日の2週間に亘る出欠状況が、瞬時に表示される。
【0031】
例として、前記した5月31日(水)3時限目の欠席が、次週の6月7日(水)3時限目に出席となっていれば、5月31日(水)の欠席が単なる所用のためと推考でき、反対に、6月7日(水)3時限目も欠席となっていれば、何らかの欠席理由があると推考される。
【0032】
さらに、当該学生の出席状況を3週間前に遡って、5月17日(水)の出欠状況を把握することで、当該欠席理由がより鮮明に浮び上がり、当該学生の行動パターンが極めて迅速且つ簡便に把握出来ることになる。
【0033】
当該学生の行動パターンをさらに深く推考する目的で、学生の諸情報が準備されており、該学生情報は、図2に示す(学生情報)をクリックすることで、図3に示す学生情報が表示される。
【0034】
図3は学生情報の記載内容を示す一例で、氏名・学籍等の個人を特定する事項に続いて各学年における必修科目や選択科目ごとの出席率が一覧できる。
【0035】
以下、住居区分や連絡先などの他に、性格、趣味、課外活動、学内の友人等々の項目が記載されており、これらの記載事項も当該学生の行動パターンを推考する際の参考資料となる。
【0036】
以上に述べたように、本発明によれば、学生の出席状況の履歴を簡便且つ瞬時に把握でき、さらに当該学生に係る諸情報と合わせて認識できることから、当該学生の欠席理由の真相を推理するに十分な情報が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明から成る、出欠行動支配心理の推理を支援する出欠データ表示方法の一実施例を示したブロック図である。
【図2】図1に示した2週間に亘る時間割形式の出席状況表100の具体的な一実施例を示す。(実際の画面はカラーで表示されている)
【図3】学生情報の記載内容の一例を示す。
【符号の説明】
【0038】
10:学務システム、20:出席データ、25:送信、30:出席データサーバ、40:ケア情報化システム、50:教員、60:ケア方針、70:ケア、80:学生、100:連続週時間割形式出席状況表、110:単週時間割形式出席状況表、120:出席率グラフ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
大学や専門学校等の教育機関において、選択した学生に係る連続した2週間に亘る週間事時間割形式による出席状況の照会・表示機能を有していることを特徴とする出欠行動支配心理の推理を支援する出欠データ表示方法。
【請求項2】
請求項1記載の出欠行動支配心理の推理を支援する出欠データ表示方法において当該教育機関のサーバに保有している学生個人の諸情報等を、請求項1に示した当該学生の2週間に亘る週間事時間割形式の画面から、簡易な操作で表示できることを特徴とする出欠行動支配心理の推理を支援する出欠データ表示方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−262430(P2008−262430A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105375(P2007−105375)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(303002930)財団法人青森県工業技術教育振興会 (17)