説明

安全衣服

【課題】LED等の自己発光体を用いても、自己発光体の着脱が容易で洗濯等ができ、作業服等自体から光を発することにより作業服等の服自体が隠れることのない構造の安全衣服を提供する。
【解決手段】衣服本体3と、自己発光体25を有し、前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置となるように衣服本体3に設けられる発光部材5,7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲からの視認が容易となっていることにより、作業服のみならず、夜間用の衣服、ブルゾンなどの通常衣服に適用可能な安全衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間や暗所で自分の位置を第三者に知らせるため、反射材を取り付けた作業服が使用されているが、外部からの光がない場合、反射材は光を反射することができないため、視認性に欠ける問題がある。
【0003】
これに対し、LEDは電力供給によって自己発光するため、外部からの光がなくても自己の位置を知らせることができ、反射材に比べて視認性を確保できる。そこで、LEDを装着した安全ベストが開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
この安全ベストは、複数のLEDを実装したベルトをベスト本体の外面に縫い付けた構造となっており、通常の作業服の上にベスト本体を着用した状態で、電源からLEDに電力を供給する。これにより、LEDが自己発光するため、周囲からの視認が可能となり、夜間や暗所での作業の視認性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−107850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した安全ベストでは、LEDがベスト本体に縫い付けられるため、ベスト本体からの取り外しができない。このため、安全ベストが汚れたとき安全ベストを洗濯することができない。やむなく洗濯する場合には、LED実装ベルトを縫い付け状態から取り外し、その後、LED実装ベルトを再度縫い付ける必要があり、極めて面倒となる問題がある。
【0007】
又、安全ベストは、作業服の上に被せられるように着用されるため、重くなったり、作業服の大部分が隠れて、作業性の低下を招いたり、作業服のポケットからの物の出し入れが面倒となる問題も有している。
【0008】
そこで、本発明は、LED等の自己発光体を用いても、自己発光体の着脱が容易で洗濯等が容易であり、しかも作業服等自体から光を発することにより作業服等の服自体が隠れることのない構造の安全衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明の安全衣服は、衣服本体と、自己発光体を有し、前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置となるように前記衣服本体に設けられる発光部材とを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の安全衣服であって、前記衣服本体における前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置が少なくとも上腕の外周部であり、該上腕の外周部にフレキシブルで光透過可能な保持部材が配置され、前記自己発光体は前記保持部材の内部に設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の安全衣服であって、前記発光部材は、前記衣服本体の裏側に保持可能な携帯電源と、前記自己発光体を有すると共に前記携帯電源とハーネスを介して接続され、前記保持部材の内部に配置可能なフレキシブル基板とから形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の安全衣服であって、前記ハーネスが挿脱される開閉具を備えたフレキシブルなガイド筒が前記衣服本体に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2記載の安全衣服であって、前記発光部材は、前記自己発光体を有したフレキシブル性のベルトと、このベルトに内蔵された電源とから形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の安全衣服であって、前記発光部材は、係止具を介して前記衣服本体に着脱自在に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、発光部材が前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置となるように衣服本体に設けられているため、発光部材の自己発光体が発光することにより、着座時、作業時のいずれにおいても周囲の第三者が確実に視認することができる。このため、安全性が向上する。
【0016】
又、請求項1記載の発明によれば、自己発光体を有した発光部材が衣服本体に直接に設けられるため、安全ベストを着用する必要がなく、安全ベスト着用の手間が不要となる。しかも重くなったり、衣服本体が安全ベスト等によって隠れることがないため、作業性が低下することがないと共に衣服本体のポケットからの出し入れが容易となる。さらに、自己発光体を有した発光部材が衣服本体に設けられており、発光部材を衣服本体から取り外すことにより、衣服本体の洗濯が容易に可能となる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、フレキシブルで光透過可能な保持部材が衣服本体における前後・左右・上部から視認可能で、着座時及び作業時に邪魔にならない位置に設けられており、この保持部材の内部に自己発光体が設けられるため、自己発光体を衣服本体に簡単に着脱することができる。このため、自己発光体を衣服本体から簡単に取り外し、衣服本体を洗濯することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1及び2記載の発明の効果に加えて、発光部材が、衣服本体の裏側に保持可能な携帯電源と、自己発光体を有すると共に携帯電源とハーネスを介して接続されるフレキシブル基板とによって形成されるため、携帯電源から自己発光体に確実に電力を供給でき、自己発光体の発光を確保できる。又、フレキシブル基板を保持部材の内部に配置するため、発光部材の衣服本体への着脱が容易となる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、ハーネスが挿脱される開閉具を備えたフレキシブルなガイド筒が衣服本体に設けられているため、ハーネスの配索が容易となると共に、衣服本体の着用の際にハーネスが邪魔になることがなくなる。又、ガイド筒が開閉具を備えているため、ガイド筒に対するハーネスの挿入及び離脱を簡単に行うことができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項1及び2記載の発明の効果に加えて、自己発光体を有したフレキシブル性のベルトと、このベルトに内蔵された電源とによって発光部材が形成されるため、発光部材の全体をコンパクトで簡単な構成とすることができる。このため、衣服本体に対する発光部材の取り扱いが容易となる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5記載の発明の効果に加えて、発光部材が係止具を介して衣服本体に着脱自在に取り付けられるため、発光部材を衣服本体に確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態の安全衣服を示す正面図である。
【図2】第1実施形態の発光部材を示す斜視図である。
【図3】発光部材を衣服本体に配置した状態を示す断面図である。
【図4】発光部材を衣服本体に取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】作業時における作用を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態の安全衣服を示す正面図である。
【図7】第2実施形態の安全衣服の内部を示す展開図である。
【図8】ガイド筒を示す斜視図である。
【図9】発光部材の別の実施形態を示す斜視図である。
【図10】発光部材のさらに別の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本願発明の効果を説明するための説明図である。
【図12】本願発明の効果を説明するための説明図である。
【図13】本願発明の効果を説明するための説明図である。
【図14】本願発明の効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示する実施形態により、具体的に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には、同一の符号を付して対応させてある。
【0024】
[第1実施形態]
図1〜図5は、本発明の第1実施形態の安全衣服1を示し、図1は全体の正面図、図2は発光部材の斜視図、図3は発光部材の配置を示す断面図、図4は発光部材の取り付け状態を示す断面図、図5は安全衣服1を着用した作業状態を示す斜視図である。
【0025】
この実施形態の安全衣服1は、作業服や夜間道路作業服に適用されるものである。図1に示すように、この実施形態の安全衣服1は、衣服本体3と、発光部材5、7とを有している。
【0026】
衣服本体3は、全体が服地によって形成されており、着用者の胸回り及び胴回りを覆う身頃部11と、左右の腕回りを覆う袖部12、12と、首回りを覆う襟ぐり部13とを有している。
【0027】
発光部材5、7は、衣服本体3に対して複数が設けられる。それぞれの発光部材5,7は、後述するフレキシブル基板21を備えている。発光部材5、7のフレキシブル基板21を設ける位置は、衣服本体3における前後・左右・上部から視認可能な位置で、且つ着座時及び作業時に邪魔にならない位置が選定される。図1に示す衣服本体3においては、発光部材5,5のフレキシブル基板21が左右の袖部12、12のそれぞれに設けられ、発光部材7,7のフレキシブル基板21が身頃部11における胴回りの前側部分の左右に設けられている。
【0028】
袖部12、12側の発光部材5,5におけるフレキシブル基板21は、袖部12、12における左右の肩口15、15に近接した位置に設けられるものであり、肘部よりも上側である上腕部の周囲に設けられている。上腕部は、腕全体を動かしても、下腕部よりも動く量が少ないため、着座時や作業時に前後・左右・上部から視認し易い箇所である。又、上腕部は、着座時や作業時に邪魔となることがない箇所である。従って、発光部材5,5のフレキシブル基板21を左右の袖部12,12における上腕部の周囲に設けることにより、第三者が視認し易いものとなる。
【0029】
袖部12,12側のそれぞれの発光部材5,5におけるフレキシブル基板21は、左右の袖部12,12の全周にわたって袖部12,12の外側に位置するように設けられるものであり、袖部12,12の全周にわたって設けられることにより、前後・左右・上部から確実に視認することが可能となっている。
【0030】
胴回り部分側の発光部材7,7におけるフレキシブル基板21は、身頃部11における前側である前身頃部11aに設けられている。発光部材7,7におけるフレキシブル基板21のそれぞれは、左右の胸部から胴部の左右に向かって斜めに下がるように前身頃部11aの外側に設けられている。この場合、各フレキシブル基板21の下端部分は、腰部よりも上部に位置しており、発光部材7,7においては、フレキシブル基板21の全体が腰部よりも上部の左右側に配置される。
【0031】
前身頃部11aにおける胴回り部分の左右は、前側、左右から視認し易い箇所であり、着座時や作業時に第三者が視認し易いものとなる。又、発光部材7,7のフレキシブル基板21を前身頃部11aの胴回り部分に設けることにより、着座時及び作業時の邪魔となることがない。なお、前身頃部11aに対し、後身頃部は、着座時に椅子の背もたれ部に隠蔽されるため、視認しにくい。このため、発光部材7,7のフレキシブル基板21を後身頃部へ配置することは好ましくない。
【0032】
図2は、発光部材5,7を示す。発光部材5,7は、フレキシブル基板21,21と、携帯電源22と、携帯電源22とそれぞれのフレキシブル基板21,21とを接続するハーネス23,23とを備えている。
【0033】
図1に示すように、袖部側の発光部材5,5及び胴回り部分側の発光部材7,7のそれぞれが、衣服本体3の左右に一対ずつ設けられる。このような衣服本体3の左右一対への配置に対応するため、フレキシブル基板21,21は一対を有している。それぞれのフレキシブル基板21,21は、長尺な帯状となっており、その長さ方向に沿って複数の自己発光体としてのLED25が一列状となって実装されている。
【0034】
LED25は、帯状のフレキシブル基板21,21の略全長にわたって配置されている。LED25は、電力が供給されることにより所定の色の光を発する。
【0035】
携帯電源22は、コネクタ26,26を有しており、各コネクタ26,26にハーネス23,23の基端部が接続される。ハーネス23,23の先端部は各フレキシブル基板21,21に設けられたコネクタ(図示省略)に接続され、携帯電源22からの電力がフレキシブル基板21,21に供給可能となる。このような構造では、ハーネス23を携帯電源22及びフレキシブル基板21から取り外すことにより発光部材5,7を分解することができる。
【0036】
携帯電源22は、スイッチ27を有しており、スイッチ27を押圧操作することにより、電力供給のON,OFFが切り換えられる。携帯電源22としては、繰り返し充電が可能な充電式を用いることが良好であるが、電池式を用いても良い。
【0037】
携帯電源22は、衣服本体3の裏側に保持されるものであり、図1に示すように、衣服本体3の前身頃部11aの裏側には、左右のポケット16,16が縫い付けられている。左右のポケット16,16は、前身頃部11aの裏側における胴回り部分に縫い付けられており、それぞれのポケット16,16内に携帯電源22が収納されて保持されるようになっている。このように携帯電源22が衣服本体3の裏側に保持されることにより、携帯電源22が外から見えることがなく、外観が向上すると共に、携帯電源22が作業の邪魔になることがなくなる。又、携帯電源22を確実に保持することができる。この場合、クリップ(図示省略)等を用いて携帯電源22をポケット16内に保持しても良い。
【0038】
ハーネス23は、衣服本体3の裏側に配索されており、対応するフレキシブル基板21と携帯電源22とを接続する。衣服本体3の裏側へのハーネス23の配索に際し、布材等からなるフレキシブル性を有したガイド筒31(図8参照)を衣服本体3の裏側に縫い付け、このガイド筒31内にハーネス23を挿入することが良好である。これにより、ハーネス23の配索が容易となる。又、配索したハーネス23が衣服本体3の裏側で変位したり、移動することがないため、衣服本体3の着用時や作業時の邪魔となることがなくなる。
【0039】
図4(a)、(b)は、衣服本体3の外側に対して発光部材5,7のフレキシブル基板21を設ける構造を示す。図4に示すように、衣服本体3の外側には、保持部材33が設けられる。保持部材33は、フレキシブルで且つ光透過性を有した材料が用いられる。
【0040】
この保持部材33の材料としては、塩化ビニール等の透明樹脂シート、布材からなるメッシュ素材等を選択できるが、繰り返しの洗濯や、長期の使用による劣化や、衣服本体3を洗濯し乾かす時の速乾性を考慮した場合、布材からなるメッシュが良好である。このような保持部材33は、その幅方向の両端部を衣服本体3とはぎ合わせ、更に保持部材33の下に衣服本体3と同素材の布70を縫い合わせる事により衣服本体3に配置される。上述のとおり保持部材33の下に衣服本体3と同素材の布70を縫い合わせる為、保持部材33と同素材の布70との間に隙間84を設ける事ができる。また、同素材の布70を縫い合わせる事で、図4(b)に示すようにスリット73を設ける事が出来、フレキシブル基板21を衣服本体3の裏から容易に配置し保持する事が出来る。
【0041】
このようにLED25を実装したフレキシブル基板21,21を衣服本体3に配置するため、保持部材33は、衣服本体における前後・左右・上部から視認可能で、着座時及び作業時に邪魔にならない位置に配置される。この実施形態では、図1に示すように、左右の袖部12,12における上腕部の周囲及び前身頃部11aにおける胴回り部分の左右に配置されている。左右の袖部12,12の上腕部は、前後・左右・上部から視認が可能であり、且つ着座時や作業時の邪魔となることがない。前身頃部11aにおける胴回り部分の左右は、前側、左右から視認し易い箇所であり、しかも着座時及び作業時の邪魔とならない箇所である。
【0042】
以上の保持部材33内にフレキシブル基板21を配置することにより、自己発光体であるLED25がフレキシブル基板21と共に保持部材33内に配置されて保持される。従って、フレキシブル基板21すなわちLED25の変位や移動、さらには脱離を防止することができる。又、保持部材33が光透過性を有しているため、LED25からの光が保持部材33を透過する。このため、LED25の光を周囲の第三者が前後・左右・上部から視認することができる。又、保持部材33を上述した位置に配置するため、LED25が着座時や作業時に邪魔となることがない。
【0043】
このように保持部材33内にフレキシブル基板21を配置する構造では、発光部材5,7のフレキシブル基板21すなわちLED25を衣服本体3に簡単に着脱することができる。
【0044】
図3は、袖部12側へのフレキシブル基板21の配置を示す。袖部12における上腕部には、上述した保持部材33が周回するように縫い付けられており、この保持部材33の内部にフレキシブル基板21が挿入されることにより、フレキシブル基板21が保持部材33と、袖部12における服地12aとの間に配置されて保持される。このような配置では、フレキシブル基板21すなわちLED25が袖部12の服地12aの外側全周にわたって設けられるため、LED25の光を前後・左右・上部から視認することができる。
【0045】
図5は、作業者8が倉庫の狭い箇所で荷物10の取り扱いを行っている状態を示す。作業者8は、図1に示す安全衣服1を着用しており、携帯電源22のスイッチ27をONとしている。これにより、袖部12側の発光部材5におけるLED25が発光すると共に、前身頃部11aの胴回り部分側の発光部材7におけるLED25(図示省略)が発光している。倉庫の内部は暗く、しかも狭い作業場所であっても、袖部12側のLED25の発光を周囲から視認することができる。このため、作業の安全性を向上させることができる。
【0046】
以上の実施形態では、保持部材33内にフレキシブル基板21を保持することにより、自己発光体であるLED25を前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置に設けることができる。このため、周囲の第三者が容易にかつ確実に視認でき、安全性が向上する。又、LED25を含む発光部材5,7の衣服本体3への配置を簡単に行うことができる。
【0047】
又、LED25を有した発光部材5,7を衣服本体3に直接に設けるため、衣服本体3の上に安全ベストを着用する必要がなく、安全ベスト着用の手間が不要となる。このため、安全ベストの重量によって重くなったり、衣服本体が安全ベスト等によって隠れることがないため、作業性が低下することがないと共に衣服本体のポケットからの物の出し入れが容易となる。
【0048】
さらに、ハーネス23をコネクタから外した後、フレキシブル基板21を保持部材33から抜き取って衣服本体3から取り外し、ハーネス23及び携帯電源22を衣服本体3から取り出すことにより、発光部材5,7の全体を衣服本体3から取り外すことができる。これにより、衣服本体3の洗濯が容易に可能となる。
【0049】
なお、この実施形態では、袖部12側の発光部材5におけるフレキシブル基板21が上腕部の全周に設けられているが、全周に設けることなく、上腕部の半周等の部分的に設けても良い。この場合にも、LED25が発光することにより、前後・左右・上部から視認することが可能である。又、前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置としては、上述した位置に加えて、襟ぐり部13や前身頃部11aにおける肩口15を選定することができる。
【0050】
[第2実施形態]
図6〜図8は、本発明の第2実施形態を示し、図6は安全衣服41の正面図、図7は安全衣服41を前開きした展開図、図8はガイド筒の斜視図である。
【0051】
この実施形態の安全衣服41は、ブルゾンであり、通常の衣服として着用され、夜間等にLED25を発光させることにより、夜間散歩、夜釣り等に用いることができる。
【0052】
図6に示すように、安全衣服41は、服地によって形成された衣服本体43を備えており、衣服本体43は、着用者の胸回り及び胴回りを覆う身頃部11と、左右の腕回りを覆う袖部12、12と、首回りを覆う襟ぐり部13とを有している。見頃部11における前身頃部11aは、左右に開閉可能となっている。
【0053】
この実施形態においては、第1実施形態の図1と同様に、メッシュ素材からなる保持部材33が衣服本体3に設けられている。保持部材33は、衣服本体43における前後・左右・上部から視認可能な位置で、且つ着座時及び作業時に邪魔にならない位置に設けられるものであり、図1と同様に、袖部12、12における左右の肩口15、15に近接した位置である上腕部の周囲及び前身頃部11aにおける胴回り部分の左右に設けられている。そして、これらの保持部材33の内部に、発光部材5,7のフレキシブル基板21が挿入されて保持される。これにより、第1実施形態と同様に、袖部12,12のフレキシブル基板21及び前身頃部11aのフレキシブル基板21が周囲から視認可能となっている。
【0054】
図示を省略するが、この実施形態においても、発光部材5,7は第1実施形態と同様に、衣服本体43の裏側のポケット16に収納される携帯電源22と、一対のフレキシブル基板21と、携帯電源22とフレキシブル基板21とを接続するハーネス23とを備えて構成されている(図2参照)。従って、この実施形態においても、LED25を有した発光部材5,7を衣服本体43に直接に設けるため、衣服本体43の上に安全ベストを着用する必要がなく、安全ベスト着用の手間が不要となる。このため、安全ベストの重量によって重くなることがなくなると共に、衣服本体43のポケットからの出し入れが容易となる。
【0055】
又、ハーネス23をコネクタから外した後、フレキシブル基板21を保持部材33から抜き取って衣服本体43から取り外し、ハーネス23及び携帯電源22を衣服本体43から取り出すことにより、発光部材5,7の全体を衣服本体43から取り外すことができる。これにより、衣服本体43の洗濯が容易に可能となる。
【0056】
図7は、この実施形態におけるハーネス23の配索構造を示す。衣服本体43の裏側には、ガイド筒31が設けられている。ガイド筒31は、布材によって筒状に形成されることによりフレキシブル性を備えている。ガイド筒31は、ハーネス23の配索領域に適宜数を縫い付けることにより設けられるものであり、ガイド筒31にハーネス23を挿入することにより、衣服本体43を脱いだときにもハーネス23が隠れた状態となるため、外観上の見栄えが向上する。
【0057】
図8は、ガイド筒31の構造を示し、筒状部31aに開閉具44が取り付けられている。開閉具44は、筒状部31aの長さ方向に沿って取り付けられており、開閉具44への解除操作及び閉じ操作によりガイド筒31が開閉可能となっている。この実施形態の開閉具44は、筒状部31aの長さ方向に沿って設けられたファスナーチャックからなり、そのノブ45をスライド操作することによりガイド筒31を開閉することができる。
【0058】
このような開閉具44を設けることにより、ガイド筒31を開いた状態としてハーネス23をガイド筒31内に挿入することができる。このため、衣服本体43へのハーネス23の配索を簡単に行うことができる。この場合、開閉具44としては、衣服本体43における裏側に位置するように配置することにより、衣服本体43を開いたときに開閉具44が見えないため、外観を向上させることが可能である。
【0059】
[第3実施形態]
図9及び図10は、発光部材51,52の別の実施形態をそれぞれ示す。これらの発光部材51,52は、ベルト53を有している。かかるベルト53は、衣服本体3,43における前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置に配置されるものである。
【0060】
ベルト53は、フレキシブル性を備えており、発光部材51,52の配置部位に応じた湾曲や屈曲が容易となっている。これにより、衣服本体3,43における前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置への配置を容易に行うことができる。各発光部材51,52のベルト53には、自己発光体としてのLED25が一列となるように複数が配置されている。
【0061】
図9に示す発光部材51においては、ベルト53が扁平状となっており、その一方側の端部51aが肉厚となっている。そして、この肉厚の一端部51aの内部に電源(図示省略)が内蔵される。図10に示す発光部材52においては、ベルト53がロープ状となっており、その一方の端部52aに電源(図示省略)が内蔵される。いずれの発光部材51,52において、電源としては、鉛電池、リチウム電池が用いられる。これらの電源は、ベルト53に設けたLED25に接続されており、LED25に電力を供給するため、LED25の発光が可能となっている。
【0062】
なお、それぞれの発光部材51,52における電源内蔵部分には、スイッチ54,55が設けられており、LED25への電極供給のON、OFFの切り換えが可能となっている。
【0063】
このような発光部材51,52は、LED25を配置したベルト53に電源を内蔵しているため、発光部材51,52の全体をコンパクトで簡単な構造とすることができる。
【0064】
そして、このような発光部材51,52を衣服本体3,43における前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置に対し、直接に取り付けることにより、周囲の第三者が視認できるため、安全性が向上する。
【0065】
次ぎに図11乃至図21に示す写真を用いて、本発明に係る安全衣服を用いた場合の効果について説明する。
【0066】
図11は、自己発光体としてのLEDを安全衣服としての作業服を着て倉庫内の薄暗い場所で作業を行っている状態を示す。(a)は、作業服の上腕外周部にLEDを取り付けた場合を示し、(b)はLEDを作業服の背面側に取り付けた場合を示す。倉庫内の薄暗い場所で、前後の段ボールを積むラックが配置されているため、荷物の積み下ろし作業中は、(b)に示すように作業服の背面側にLEDが取り付けられている場合よりも、(a)に示すように作業服の上腕外周部にLEDが取り付けられている場合の方が格段に視認性が高いことが確認できる。
【0067】
図12は、図11に示す状態を上から見た状態、例えばフォークリフトの運転者の視点からの状態を示している。この場合でも(a)に示すように作業服の上腕外周部にLEDが取り付けられている作業服の方が、(b)に示すように作業服の背面側にLEDが取り付けられている作業服よりもその視認性が高いことが確認できる。(a)のように上腕を上方に上げるとろ上方にLEDが向く為、上部から見た際の視認性がより高くなる。
【0068】
図13は、例えば倉庫内の薄暗い通路を歩行する場合の、上腕外周部にLEDを取り付けた作業服と、背面側にLEDを取り付けた作業服との視認性の比較を示す。この場合、(a)〜(d)に示すように、上腕外周部にLEDを取り付けた場合と背面側や正面側にLEDを取り付けた場合とで同等の視認性が得られる。また、(e)に示すように、上腕外周部からのLEDの光が横の段ボールを照らしており、側面の対象物をLEDが照らすことになるので視認性を更に高めることができる。
【0069】
図14(a)は、段ボールが積み上げられたラックの隙間から様々な角度で見た状態を示す。(a)は上腕外周部にLEDを取り付けた場合で、(b)は背面側又は表面側にLEDを取り付けた場合であり、(b)から明らかなようにLEDを作業服の背面側又は表面側に取り付けたものの視認性は、(a)で示す上腕外周部にLEDを取り付けた場合より低く、上腕外周部にLEDを取り付けた場合の方が視認性が高い。
【0070】
また、(C)に示すように、休憩時に椅子に座った場合、背面側にLEDが取り付けられていると背もたれに圧迫されて破損する場合があるが、上腕の外周部にLEDを取り付ける場合には、圧迫されてLEDが破損することはない。すなわち、「前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置」としての上腕の外周部に自己発光方のLEDを取り付けることにより、上記各実施形態で記載した効果が得られる。
【符号の説明】
【0071】
1,41 安全衣服
3,43 衣服本体
5,7,51,52 発光部材
12 袖部
11 見頃部
11a 前身頃部
21 フレキシブル基板
22 携帯電源
23 ハーネス
25 LED
26 コネクタ
31 ガイド筒
33 保持部材
44 開閉具
53 ベルト
61 ドット釦(係止具)
62 針部材(係止具)
63 クリップ(係止具)
64 フック部(係止具)
65 スライドフック(係止具)
66 面ファスナー(係止具)
67 スクリュー部材(係止具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体(3,43)と、
自己発光体(25)を有し、前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置となるように前記衣服本体(3,43)に設けられる発光部材(5,7,51,52)とを備えていることを特徴とする安全衣服(1,41)。
【請求項2】
請求項1記載の発明であって、
前記衣服本体(3.43)における前後・左右・上部から視認可能で着座時及び作業時に邪魔にならない位置が少なくとも上腕の外周部であり、該上腕の外周部にフレキシブルで光透過可能な保持部材(33)が配置され、前記自己発光体(25)は前記保持部材(33)の内部に設けられることを特徴とする安全衣服(1,41)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発明であって、
前記発光部材(5,7)は、前記衣服本体(3,43)の裏側に保持可能な携帯電源(22)と、前記自己発光体(25)が配置されると共に前記携帯電源(22)とハーネス(23)を介して接続され、前記保持部材(33)の内部に配置可能なフレキシブル基板(21)とから形成されていることを特徴とする安全衣服(1,41)。
【請求項4】
請求項3記載の発明であって、
前記ハーネス(23)が挿脱される開閉具を備えたフレキシブルなガイド筒(31)が前記衣服本体(3,43)に設けられていることを特徴とする安全衣服(1,41)。
【請求項5】
請求項1又は2記載の発明であって、
前記発光部材(51,52)は、前記自己発光体(25)を有したフレキシブル性のベルト(53)と、このベルト(53)に内蔵された電源とから形成されていることを特徴とする安全衣服(1,41)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の発明であって、
前記発光部材(5,7,51,52)は、係止具(61,62,63,64,65,66,67)を介して前記衣服本体(3,43)に着脱自在に取り付けられることを特徴とする安全衣服(1,41)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−84838(P2011−84838A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238652(P2009−238652)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】