説明

定期点検計画装置、システム及び方法

【課題】
次の定期修理までの日数を設定して定期修理計画の変更案を作成しても、日数の設定が費用にどのような影響を及ぼすか不明である。
【解決手段】
定期点検計画装置100は、定期修理計画を立案し定期修理計画データベース111に格納する。機械の部品の温度や圧力などの計測データを計測データデータベース112から取得し、部品の寿命を推定して、部品寿命データベース113に格納する。部品寿命データベース113の寿命と定期修理計画データベース111の定期修理を比較し、次の定期修理の後に寿命がくるものは、次の定期修理に部品の交換を組み込む案を作成する。また、次の定期修理の前に寿命がくるものであっても、次の定期修理計画を早めることで寿命がくる前に部品を交換できる場合は、早めた定期修理計画に部品の交換を組み込む案を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械の定期点検のスケジュールを作成する定期点検計画装置システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空輸などによって製造製品に供する部品を海外から輸入したり、国内から取り寄せたりすることもある。急な部品の故障があった場合は、空輸によって取り寄せる必要がある。しかしながらそれではコストがかかるため、事前に故障を予兆検知して、定期点検時に部品を交換する方が効率的である。
【0003】
例えば特許文献1には、定期点検時の停止計画を支援する装置が記載されている。決められた設備停止計画の策定時期になったときや臨時作業が発生したときに、定期点検のスケジュール調整を行う。設備の運転データ(過去の異常件数、設備の経過年数)を基に、設備の故障率を算出し、故障率が高い場合は次の定期点検までの日数を短くし、故障率が低い場合は延期することが可能であれば日数を長く設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−32440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、故障率を基に次の定期点検日を設定した場合、点検業者がその日に点検が行えるのか考慮されていない。点検員の人数が不足していたり、点検を受ける施設の都合が悪い場合も考えられため、点検計画が計画したスケジュールで行えるか不明である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は以下の構成を備える。即ち、部品の通常定期点検スケジュールの時刻と、通常定期点検スケジュールの時刻より一定時間前の時刻である早期点検スケジュールの時刻とを記憶する定期点検スケジュール記憶部と、部品の寿命時間を記憶する寿命データ記憶部と、部品の前回修理時刻に寿命を足し合わせた時刻を部品の寿命として予測する部品寿命推定部と、寿命が通常定期点検スケジュールの時刻よりも前で、更に早期点検スケジュールの時刻よりも後の期間内にある場合、期間内に点検するように通常定期点検スケジュールを変更する定期修理計画情報作成部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、点検計画の提示が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】定期点検計画装置の構成図。
【図2】定期修理計画データベースの具体例を示す構成図。
【図3】現場の都合データベースの具体例を示す構成図。
【図4】人員割当データベースの具体例を示す構成図。
【図5】計測データデータベースの具体例を示す構成図。
【図6】部品寿命データベースの具体例を示す構成図。
【図7】修理費用データベースの具体例を示す構成図。
【図8】定期修理計画のスケジュールを作成する処理フロー図。
【図9】定期修理計画に故障予兆の部品の交換を組み込み、定期修理計画の変更案を作成する処理フロー図。
【図10】変更前と変更後の定期修理計画を示す定期修理修正案画面。
【図11】次回の定期修理計画を示す次回定期修理計画画面。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
【0010】
本発明の一実施形態を図1乃至図11を用いて説明する。本実施の形態においては、ユーザによる定期修理計画の立案、部品寿命の推定による定期修理計画の修正案の提示、定期修理時の追加作業の操作指示を行うシステムを想定する。ただし、これにより本発明が限定されるものではなく、システムが計測データから機械の状態判定を行って部品の寿命を推定し、定期修理計画の修正案を修正に要する費用効果とともに提示する何れの状況においても、本発明実施例は適用可能である。
【0011】
図1は、本発明を実施するための最良の形態において、定期修理計画の修正案を表示する定期点検計画装置100の一利用形態における構成図である。定期点検計画装置100は、定期修理計画情報作成部101と、部品寿命推定部102と、計画変更費用演算部103と、作業指示部104と、制御部107、入出力部108と、定期修理計画データベース109と、現場都合情報データベース110と、人員割当データベース111と、計測データデータベース112と、部品寿命データベース113と、修理費用データベース114とを構成するものである。
【0012】
定期修理計画情報作成部101は、機械の定期修理のスケジュールを計画する。部品寿命推定部102は、機械の部品の計測データから部品の寿命時刻を推定する。例えば、部品の前回修理時刻に寿命時間を足し合わせた時刻を部品の寿命時刻として予測しても良い。なお、部品の寿命時間は、部品毎に部品寿命データベース113に予め登録されているものとする。計画変更費用演算部103は、部品の寿命から定期修理のスケジュールの変更案を作成し変更案を実施する際の費用効果を算定する。作業指示部104は、定期修理のスケジュール変更の際に変更されたスケジュールでどの部品を作業者が携帯するかを計画し、計画した情報の表示を入出力部108に指示する。
【0013】
なお、これらの機能部は、本実施例の定期点検計画装置100の有する機能を実現するプログラムを解釈することによりソフトウェアで実現しても良い。各機能を実現するプログラムの情報はシステムの適宜な記憶装置(メモリなど)106に格納されていて、演算装置たるCPUを含む制御部107が読み出して実行しても良い。
【0014】
また、入出力部108は、ユーザから変更後の定期点検スケジュールの選択に関する情報の入力と、ユーザへの定期点検スケジュールの時刻、費用、或は各作業者の点検部品を含む情報の出力を行う。さらに定期修理計画データベース109は、定期修理のスケジュールを立てる際の起点となる時刻と定期修理の間隔の時間と実際(変更後)のスケジュールを格納する。現場都合情報データベース110は、定期修理を行う現場が定期修理に対応できる時間帯を示すデータを格納する。人員割当データベース111は、定期修理を行う作業員の割り当てを行うために、作業員毎の作業予定データを格納する。計測データデータベース112は、機械の部品の温度や圧力等の計測データを格納する。部品寿命データベース113は、計測データを基に推定した部品の寿命時刻のデータを格納する。修理費用データベース114は、部品の修理(緊急又は定期修理への組み込み)に要する費用のデータを格納する。
【0015】
なお、定期修理計画データベース109と現場都合情報データベース110と人員割当データベース111を含むデータベースを定期修理基本データベース115とし、計測データデータベース112と部品寿命データベース113と修理費用データベース114を含むデータベースを寿命部品修理データベース116とする。
【0016】
次に、前記した定期修理基本データベース115、寿命製品修理データベース116についてその詳細を説明する。
【0017】
図2に定期修理計画データベース109の例を示す。定期修理計画データベース109は、機械が最初に稼働し始めた日時である定期修理起点テーブル200と、通常定期点検スケジュール時刻である定期修理間隔テーブル210と、定期修理スケジュールテーブル220とから構成される。定期修理起点テーブル200は、一定間隔毎に行う定期修理の間隔の開始の起点となる日時を示すテーブルで、サイトID201と、機器ID202と、製造番号203と、定期修理起点204で構成される。サイトID201には、定期修理の対象となる機械が設置されている現場のサイトを示すIDを格納する。
【0018】
機器ID202には、定期修理の対象となる機械の製品コードを格納する。製造番号203には、定期修理の対象となる機械の個体を識別するための機械の製造番号を格納する。定期修理起点204には、定期点検の対象となる機械が最初に稼働し始めた日時を定期点検の起点として格納する。
【0019】
定期修理間隔テーブル210は、機器ID211と、経過時間212と、交換部品ID213と、許容時間214で構成される。機器ID211には、定期修理の対象となる機械の製品コードを格納する。経過時間212には、定期修理を行う際の定期修理起点204からの経過時間の目安を格納する。ようするに、経過時間とは、機械の起動から寿命までの時間である。
交換部品ID213には、定期修理の対象となる部品の製品コードを格納する。許容時間214は、定期修理のスケジュールが確定した後に、定期修理の開始時刻の変更が許容される時間を格納する。
【0020】
許容時間214は固定で、現場の状況(いつ停止可能か)を把握している顧客や営業などによって、定期修理の開始時刻の変更が許容される時間が入力される。ただし、現場の状況に応じて時々刻々と変化するものとしても良い。例えば、店舗の営業時間帯や工場の操業時間帯を点検計画装置100に登録しておき、臨時休業や臨時操業停止などが発生することが事前に判明した場合は、臨時休業中や臨時操業停止中は機械を止めても問題ない時間であると考えられるため、休業中・操業停止中を許容時間としても良い。臨時休業や臨時操業停止などに伴い変更された営業時間帯や操業時間帯を点検計画装置100に再登録することで、臨時休業や臨時操業停止などによって変化した許容時間を点検計画装置100が自動的に計算して許容時間214に再登録することとしても良い。
【0021】
定期修理スケジュールテーブル220は、サイトID221と、機器ID222と、製造番号223と、停止開始予定時刻224と、停止終了予定時刻225と、経過時間226と、交換部品ID227で構成される。サイトID221には、定期修理の対象となる機械が設置されている現場のサイトを示すIDを格納する。機器ID222には、定期修理の対象となる機械の製品コードを格納する。製造番号223には、定期修理の対象となる機械の個体を識別するための機械の製造番号を格納する。停止開始予定時刻224には、定期修理のために機械を停止させる際の停止の開始時間の予定時刻を格納する。停止終了予定時刻225には、定期修理のために機械を停止させる際の停止の終了時間の予定時刻を格納する。
【0022】
経過時間226には、定期修理を行う際の定期修理起点204からの経過時間の目安を格納する。交換部品ID227には、定期修理の対象となる部品の製品コードを格納する。なお、定期修理スケジュールテーブル220は、定期修理起点テーブル200、定期修理間隔テーブル210、後述する現場都合情報データベース110を基に作成する。
【0023】
このようにして、データベースで、部品の通常定期点検スケジュールの時刻と、前記通常定期点検スケジュールの時刻より一定時間前の時刻である早期点検スケジュールの時刻とを含む情報を記憶している。
【0024】
図3に、現場都合情報データベース110の例を示す。現場都合情報データベース110は、サイトID301と、機器ID302と、製造番号303と、停止開始可能時刻304と、停止終了可能時刻305と、停止ペナルティ/時306と、停止予定307で構成される。サイトID301には、定期修理の対象となる機械が設置されている現場のサイトを示すIDを格納する。機器ID302には、定期修理の対象となる機械の製品コードを格納する。
【0025】
製造番号303には、定期修理の対象となる機械の個体を識別するための機械の製造番号を格納する。停止開始可能時刻304には、定期修理のために機械を停止させることが可能な時間の最初の時刻を格納する。停止終了可能時刻305には、定期修理のために機械を停止させることが可能な時間の最後の時刻を格納する。停止開始可能時刻304と停止終了可能時刻305の時刻の情報は例えば、現場の状況(いつ停止可能か)を把握している顧客や営業などによって入力しても良い。
【0026】
停止ペナルティ/時306には、停止開始可能時刻304から停止終了可能時刻305の間に機械を停止させる際に、機械を稼働させている顧客に対して支払う単位時間(1時間)当たりのペナルティを格納する。停止予定307は、停止開始可能時刻304から停止終了可能時刻305の間に機械を停止する予定が有るか無いかを示すもので、「有」「無」を格納する。
【0027】
図4に、人員割当データベース111の例を示す。人員割当データベース111は、氏名コード401と、サイトID402と、機器ID403と、作業開始予定時刻404と、作業終了予定時刻405で構成される。氏名コード401には、修理(定期修理、緊急故障修理)の作業が割り当てられる作業者を示すコードを格納する。サイトID402には、作業が行われる現場のサイトを示すIDを格納する。
【0028】
機器ID403には、作業が行われる機械を示す。作業開始予定時刻404には、作業の開始の予定時刻を格納する。作業終了予定時刻405には、作業の終了の予定時刻を格納する。作業開始予定時刻404と作業終了予定時刻405の時刻の情報は、例えば、定期修理の計画を行う担当者によって入力しても良い。なお、ある時刻の作業者の人数は、作業開始予定時刻404と作業終了予定時刻405により、その時刻に作業している人数を算定できるので、その時刻に新たな作業者を割り当てられるかどうか判定できる。
【0029】
図5に、計測データデータベース112の例を示す。計測データデータベース112は、サイトID501と、機器ID502と、製造番号503と、部品ID504と、温度505と、圧力506、計測時刻507で構成される。サイトID501は、計測対象の機械が設置されているサイトのIDを示す。機器ID502は、計測対象の機械の製品コードを示す。製造番号503は、計測対象の機械を個体識別するための製造番号を示す。部品ID504は、測定対象の機械の部品の製品コードを示す。温度505は、計測対象の機械の部品を温度センサで計測した際の計測データを示す。圧力506は、計測対象の機械の部品を圧力センサで計測した際の計測データを示す。計測時刻507は、温度505・圧力506を計測した時刻を示す。
【0030】
図6に、部品寿命データベース113の例を示す。部品寿命データベース113は計測データデータベース112をもとに推定された部品の寿命を格納するデータベースである。サイトID601は、寿命を推定される部品で構成される機械が設置されているサイトのIDを示す。機器ID602は、寿命を推定される部品で構成される機械の製品コードを示す。製造番号603は、寿命を推定される部品で構成される機械の製造番号を示す。部品ID604は、寿命を推定される部品の製品コードを示す。寿命時刻605は、寿命を推定される部品の寿命を示し、温度505や圧力506などから算出される。寿命時刻605は、部品の前回修理の時刻に寿命時間を足し合わせた時刻である。
【0031】
図7に、修理費用データベース114の例を示す。サイトID701には、修理(定期修理、緊急故障修理)の対象となる機械が設置されている現場のサイトを示すIDを格納する。機器ID702には、修理の対象となる機械の製品コードを格納する。部品ID703には、修理の対象となる機械の部品の製品コードを格納する。費目704には、修理の種類を格納する。機械が故障して停止し緊急に処置が必要な修理を示す場合は「緊急故障修理」を格納し、定期修理に組み込んで故障を修理することを示す場合は「定期修理組み込み」を格納する。費用705には、修理に要する費用を格納する。
【0032】
続いて、本実施の形態における定期修理計画情報作成について説明する。
図8は、定期修理計画情報作成における処理フローを示す。本処理フローの制御は制御部107が行い、処理S800以外の処理は定期修理計画情報作成部101が行うものとする。
【0033】
処理S800では、ユーザが定期点検計画装置100の入出力部108を操作し、定期修理計画情報作成のアプリケーションを起動する。本処理により定期修理計画情報作成部101が起動される。本処理による定期修理計画の立案は定期的に行うものとし、例えば月に一回実施する。
【0034】
処理S801では、定期修理計画データベース109の定期修理起点テーブル200の定期修理起点204で、各サイトに設置された機械の定期修理の起点(機械の稼働開始日時)を取得する。
【0035】
処理S802では、機器ID202が機器ID211と一致するレコードを定期修理間隔テーブル210で検索し、その経過時間212を定期修理までの経過時間として取得する。
【0036】
処理S803では、処理S802で取得した経過時間のうち、現在(定期修理計画作成時)から次の定期修理計画情報作成の時点までの間に、処理S801で取得した定期修理の起点である時刻に処理S802で取得した経過時間を足し合わせた時刻(定期修理候補時間)が存在するか判定する。ようするに、定期修理計画作成時から次回定期修理作成までの間に定期修理を行う予定があるかを判定する。存在するのであれば、全ての定期修理候補時間に関して処理S804および処理S805を実施し、存在しなければ処理S806に進む。
【0037】
処理S804では、現場都合情報データベース110の定期開始可能時刻304から停止終了可能時刻305までを停止可能時間と捉え、処理S803で算出した定期修理候補時間になるべく近く、前記停止可能時間のうち人員割当データベース111の作業開始予定時刻404から作業終了予定時刻405までの時間帯と被らずに作業可能な作業者を必要な人数確保できる時間帯を検索する。前記必要な人数は、機器ID211および経過時間212が同一の交換部品ID213のレコード数(部品数)が多ければ人数を多くし、レコード数が少なければ人数を少なくする。また、前記停止可能時間が長ければ人数を少なくし、停止可能時間が短ければ人数を多くしても良い。例えば、作業に対応する必要な人数を含んだテーブルを予め登録しておき、定期点検に必要な作業を抽出し、それに対応する人数を合わせた数を必要な人数として算出しても良い。
【0038】
処理S805では、処理S804で検索した停止可能時間の時間帯を定期修理の時間帯とし、定期修理計画データベース109の定期修理スケジュールテーブル220に登録する。登録の際には、停止開始予定時刻224を前記定期修理の開始時刻とし、停止終了予定時刻225を前記定期修理の終了時刻とし、サイトID221をサイトID201とし、機器ID222を機器ID202とし、製造番号223を製造番号203とし、経過時間226を経過時間212とし、交換部品ID227を交換部品ID213とする。また現場都合情報データベース110の停止開始可能時刻304から停止終了可能時刻305の間の時間帯が前記停止可能時間に該当する停止予定307を、「無」から「有」に変更する。
【0039】
処理S806では、定期修理起点テーブル200の全てのレコードに関して、処理S801から処理S805までの処理が終了しているか(全ての定期修理候補時間が終了しているか)検索する。終了していれば処理S807へ進む。終了していなければ、終了していないサイトID201、機器ID202、製造番号203に関して、処理S801に進む。処理S807では、制御部107が定期修理計画情報作成の処理を終了する。
【0040】
続いて、本実施の形態における部品寿命を基にした定期修理計画の修正について説明する。
図9は、定期修理計画の修正までの処理フローを示す。本処理フローの制御は制御部107が行うものとする。
【0041】
処理S900では、ユーザが部品寿命を基にした定期修理計画修正の業務アプリケーションを起動する。本処理により部品寿命推定部102、計画変更費用演算部103、作業指示部104が起動される。本起動は、最初に一回行うもので、その後、前記業務アプリケーションは常時起動している。
【0042】
処理S901では、部品寿命推定部102が、計測データデータベース112の温度505、圧力506、計測時刻507を基に、サイトID501の機器ID502の製造番号503の部品ID504の寿命時刻を推定する。
【0043】
寿命時刻の推定は、例えば次のように行う。機械の設計者がデータベースに、部品IDと故障までの平均寿命時間を予め記録しておく。また、機械の稼働開始時に、設置作業者によって、機械の各部品IDに対応するように、稼働開始年月をデータベースに記録する。また、稼働中は、機械から定期的に送られてくる稼働時間を、制御部107がデータベースに記録する。制御部107は、現在時刻に、前記平均寿命時間から前記稼働時間を差し引いた時間を足し合わせて、寿命時刻の推定を行う。
【0044】
推定した寿命は、部品寿命データベース113の寿命時刻605に格納し、サイトID601にサイトID501を格納し、機器ID602に機器ID502を格納し、製造番号603に製造番号503を格納し、部品ID604に部品ID504を格納する。
【0045】
処理S902では、計画変更費用演算部103が、処理S901で推定した部品の寿命を基に、前記寿命が定期修理計画データベース109に格納されている定期修理の開始時間より後かどうか、判定する。判定は、該当するサイトID601の機器ID602の製造番号603の部品ID604の寿命時刻605が、定期修理計画データベース109の定期修理スケジュールテーブル220の停止開始予定時刻224より後かどうかで判定する。
【0046】
停止開始予定時刻224の検索に関しては、サイトID601がサイトID221と一致し、機器ID602が機器ID222と一致し、製造番号603が製造番号223と一致し、部品ID604が交換部品ID227と一致するレコードの停止開始予定時刻224を検索するものとする。検索した停止開始予定時刻224のレコードの行数を記憶装置106に記憶する。寿命時刻605が停止開始予定時刻224より後か同じ場合は処理S908に進み、前の場合は処理S903に進む。
【0047】
処理S903では、計画変更費用演算部103が、処理S901で推定した部品の寿命を基に、前記寿命が定期修理の開始時間から許容時間分早めた時刻(最早定期修理開始時間)より後かどうか、判定する。判定は、該当するサイトID601の機器ID602の製造番号603の部品ID604の寿命時刻605が、定期修理計画データベース109の定期修理スケジュールテーブル220の停止開始予定時刻224から定期修理間隔テーブル210の許容時間214だけ早めた時刻より後かどうかで判定する。
【0048】
停止開始予定時刻224は、処理S902で記憶装置106に格納されたレコードの行数の停止開始予定時刻224とする。許容時間214の検索に関しては、前記レコードの機器ID222と定期修理間隔テーブル210の機器ID211が一致し、経過時間226が経過時間212と一致し、交換部品ID227が交換部品ID213と一致する許容時間214とする。記憶装置106に最早定期修理開始時間と許容時間214を記憶する。寿命時刻605が、前記最早定期修理開始時間(停止開始予定時刻224から許容時間214だけ早めた時刻)より後か同じの場合は次の処理S904に進み、前の場合は処理S907に進む。このように、寿命が通常定期点検スケジュールの時刻よりも前で、更に早期点検スケジュールの時刻よりも後の期間内にある場合、前記期間内に点検するように前記通常定期点検スケジュールを変更しても良い。
【0049】
処理S904では、計画変更費用演算部103が、記憶装置106に記憶された最早定期修理開始時間を取得し、最早定期修理開始時間よりも遅く部品の寿命よりも早い時間帯に、現場都合情報データベース110および人員割当データベース111で定期修理の予定を組み直せるか判定する。
【0050】
判定は、まず、最早定期修理開始時間よりも遅く部品の寿命よりも早い時間帯に、最早定期修理開始予定時間に含まれる定期修理スケジュールテーブル220のレコードのサイトID221とサイトID301が一致し、機器ID222と機器ID302が一致し、製造番号223と製造番号303が一致するレコードで、停止開始可能時刻304と停止終了可能時刻305の間の時間帯が含まれるかどうか、現場都合情報データベース110で検索する。
【0051】
含まれない場合は処理S907に進む。含まれる場合は、人員割当データベース111で、サイトID221がサイトID402と一致し、機器ID403が機器ID302と一致し、作業開始予定時刻404から作業終了予定時刻405の間に最早定期修理開始時間よりも遅く部品の寿命よりも早い時間帯が含まれる作業者の氏名コード401の数をカウントする(今回の定期修理に従事する作業者に関するレコードは、カウントから除く)。
【0052】
前記作業者の氏名コード401の数が、この時刻に作業できる作業者の最大数と等しい場合は、定期修理の予定を組み直せないものと判定し、処理S907に進む。最大数よりも少ない場合は、定期修理の予定を組み直せるものと判定し、最大数よりも少ない時間帯を定期修理組込候補時間帯として記憶装置106に記憶し、処理S905に進む。
【0053】
処理S905では、計画変更費用演算部103が、定期修理の修正案の作成および費用の見積もりを行う。定期修理の修正案の作成および費用の見積もりの際には、定期修理修正案画面(図10参照)を入出力部108に出力する。定期修理の修正案の作成は次のようにして行う。
【0054】
まず、現在の定期修理計画を定期修理スケジュールテーブル220から取得する。定期修理スケジュールテーブル220のサイトID221、機器ID222、製造番号223、停止開始予定時刻224、停止終了予定時刻225、経過時間226、交換部品ID227を取得する。ここで、臨時修理費用、定期修理費用を修理費用データベース114、現場都合情報データベース110で検索する。
【0055】
臨時修理費用は、サイトID701がサイトID221と一致し、機器ID702が機器ID222と一致し、部品ID703が交換部品ID227と一致し、費目704が「緊急故障修理」と一致する修理費用データベース114の費用705として取得する。
【0056】
定期修理費用は、サイトID301がサイトID221と一致し、機器ID302が機器ID222と一致し、製造番号303が製造番号223と一致し、停止予定307が「有」のレコードで、停止開始可能時刻304から停止終了可能時刻305までの時間帯に、停止開始予定時刻224から停止終了予定時刻225の間の時間帯が含まれる現場都合情報データベース110のレコードの停止ペナルティ/時306を取得し、停止ペナルティ/時306の値と停止開始予定時刻224から停止終了予定時刻225の間の時間を掛け合わせた値を、定期修理費用として取得する。
【0057】
次に、変更後の定期修理計画の案の表示に必要なデータ(定期修理組込費用、定期修理費用)を修理費用データベース114、部品寿命データベース113、現場都合情報データベース110で検索する。定期修理組込費用は、サイトID701がサイトID221と一致し、機器ID702が機器ID222と一致し、部品ID703が交換部品ID227と一致し、費目704が「定期修理組み込み」と一致する修理費用データベース114のレコードの費用705として取得する。
【0058】
定期修理費用は、サイトID301がサイトID221と一致し、機器ID302が機器ID222と一致し、製造番号303が製造番号223と一致し、停止開始可能時刻304から停止終了可能時刻305までの時間帯に、処理S804で記憶装置106に記憶した定期修理組込候補時間帯の開始時刻から終了時刻の間の時間帯が含まれる現場都合情報データベース110のレコードの停止ペナルティ/時306を取得し、停止ペナルティ/時306の値と前記定期修理組込候補時間帯の開始時刻から終了時刻の間の時間を掛け合わせた値を、変更後の定期修理費用として取得する。
【0059】
処理S906では、入出力部108に出力された定期修理修正案画面(図10参照)をユーザが操作し、臨時修理の実施か、定期修理計画の変更確定かの選択を、計画変更費用演算部103が取得する。臨時修理の実施確定の場合は、処理S907に進む。定期修理計画の変更確定の場合、処理S905で作成した定期修理の修正案を定期修理計画データベース109、現場都合情報データベース110に反映する。具体的には、定期修理計画データベース109の定期修理スケジュールテーブル220の停止開始予定時刻224、停止終了予定時刻225に、定期修理組込候補時間帯の開始時刻、終了時刻を上書きする。
【0060】
また、現場都合情報データベース110の停止開始可能時刻304から停止終了可能時刻305までの時間帯が定期修理組込候補時間帯を含むレコードに関して、停止予定307を「有」に上書きする。定期修理計画変更の処理が終了したら、作業指示部104が、次回定期修理計画画面(図11参照)を入出力部108に出力する。ユーザが画面の指示を確認し確認終了ボタンを押下後、作業指示部104は本処理を終了し、処理S908に進む。
【0061】
処理S907では、ユーザは、臨時修理(緊急故障修理)を実行する。
【0062】
処理S908では、作業指示部104が、業務アプリケーションを終了するかどうか判定する。アプリケーションエラーなどが無い限り、業務アプリケーションは終了せず、機械の部品の温度、圧力の計測が行われ、計測データデータベース112が更新されるタイミングで処理S901に戻る。業務アプリケーションを終了する場合は、処理S909に進む。
【0063】
処理S909では、制御部107が、業務アプリケーションを終了する。
【0064】
処理S905で表示する定期修理修正案画面は、例えば図10に示す画面となる。
図10の定期修理修正案画面は、変更前1010と、変更後1020、臨時修理実施ボタン1030、変更確定ボタン1040で構成される。変更前1010は、変更前の定期修理計画を示し、機器情報1011、予定日時1012、部品交換費用1013、交換部品一覧1014、定期修理費用1015、合計費用1016で構成される。機器情報1011は定期修理が行われる機器の情報を示し、サイトID、機器ID、製造番号などを表示する。
【0065】
予定日時1012は、次回の定期修理の実施予定日時を示す。定期修理の開始日時と終了日時を表示する。部品交換費用1013は、故障予兆した部品を臨時修理する場合の交換費用を示す。交換部品一覧1014は故障予兆して臨時修理する部品の製品コードの一覧を示す。定期修理費用1015は、機械を停止させて定期修理するためにかかるコストで、例えば、機械を停止させる際に顧客に支払うペナルティを示す。合計費用1016は、変更前の定期修理計画に要する費用の合計を示す。この例では、部品交換費用1013と定期修理費用1015の合計となる。
【0066】
変更後1020は、変更後の定期修理計画の案を示し、機器情報1021、予定日時1022、部品交換費用1023、交換部品一覧1024、定期修理費用1025、合計費用1026で構成される。機器情報1021は定期修理が行われる機器の情報を示し、サイトID、機器ID、製造番号などを表示する。予定日時1022は、変更後の次回の定期修理の実施予定日時を示す。変更後の定期修理の開始日時と終了日時を表示する。部品交換費用1023は、故障予兆した部品を次回の定期修理に組み込む際に、通常の定期修理よりも余計にかかる部品の交換費用を示す。交換部品一覧1024は故障予兆して次回の定期修理に組み込む部品の製品コードの一覧を示す。定期修理費用1025は、機械を停止させて定期修理するためにかかるコストで、例えば、機械を停止させる際に顧客に支払うペナルティを示す。合計費用1016は、変更後の定期修理計画に要する費用の合計を示す。この例では、部品交換費用1023と定期修理費用1025の合計となる。
【0067】
臨時修理実施ボタン1030は、ユーザが臨時修理を実施する際に押下するボタンで、定期修理計画のスケジュールを変更しないで臨時修理を行う場合に押下する。変更確定ボタンは、定期修理計画のスケジュールを変更前1010から変更後1020に変更する際にユーザが押下するボタンで、定期修理計画のスケジュールを変更して臨時修理を行わない場合に押下する。
【0068】
処理S906で表示する次回定期修理計画画面は、例えば図11に示す画面となる。
図11は、定期修理情報1101と確認終了ボタン1105で構成される。定期修理情報1101は、機器情報1102、予定日時1103、交換部品一覧1104で構成される。機器情報1102は定期修理が行われる機器の情報を示し、サイトID、機器ID、製造番号などを表示する。予定日時1102は、次回の定期修理の実施予定日時を示す。定期修理の開始日時と終了日時を表示する。交換部品一覧1104は定期修理の際に交換される部品の製品コードの一覧を示す。確認終了ボタン1105は、本画面の定期修理の指示の確認をユーザが終了する際に押下するボタンである。
【0069】
なお、サーバ−クライアントシステムにおいて、入出力部108以外の定期点検計画装置100がサーバシステムにあり、入出力部108のみクライアントシステムにあり、サーバシステムとクライアントシステムがネットワークを介して情報を通信するシステムとしても良い。クライアントシステムである入出力部108から、サーバシステムである定期点検計画装置100に遠隔でアクセスすることで、入出力部108を各現場に置くことが可能になる。これにより、各現場の状況に合わせて定期点検計画装置100に入力するデータを柔軟に変更することが可能になる。例えば、臨時費用の算出を、より現場のデータに即して算出可能になる。
【0070】
本実施例により、費用効果を含んだ点検計画の提示が可能になる。これにより、ユーザは臨時修理の実施か、定期修理計画の変更確定か、費用効果を加味しながら選択することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
100 システム
101 定期修理計画情報作成部
102 部品寿命推定部
103 計画変更費用演算部
104 作業指示部
106 記憶装置
107 制御部
108 入出力部
109 定期修理計画データベース
110 現場都合情報データベース
111 人員割当データベース
112 計測データデータベース
113 部品寿命データベース
114 修理費用データベース
115 定期修理基本データベース
116 寿命部品修理データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の故障を予測し、定期点検スケジュールを計画する定期点検計画装置において、
前記部品の通常定期点検スケジュールの時刻と、前記通常定期点検スケジュールの時刻より一定時間前の時刻である早期点検スケジュールの時刻とを記憶する定期点検スケジュール記憶部と、
前記部品の寿命時間を記憶する寿命データ記憶部と、
前記部品の前回修理時刻に前記寿命を足し合わせた時刻を前記部品の寿命として予測する部品寿命推定部と、
前記寿命が前記通常定期点検スケジュールの時刻よりも前で、更に前記早期点検スケジュールの時刻よりも後の期間内にある場合、前記期間内に点検するように前記通常定期点検スケジュールを変更する定期修理計画情報作成部と、
を備えることを特徴とする定期点検計画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定期点検計画装置において、
前記部品を備える施設の営業外時間を含む情報を記憶する施設情報記憶部を更に備え、
前記定期修理計画情報作成部は、前記期間内で、かつ前記営業外時間の時刻に、前記通常定期点検スケジュールを変更することを特徴とする定期点検計画装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定期点検計画装置において、
変更後にかかる前記定期点検スケジュールの時刻の策定に供するために、前記定期点検スケジュールの変更したときの費用を算出する計画変更費用演算部を備えることを特徴とする定期点検計画装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の定期点検計画装置において、
前記寿命が前記早期点検スケジュールの時刻より前の場合は、
前記早期点検スケジュールの時刻より前に、臨時修理をすることを特徴とする定期点検計画装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の定期点検計画装置において、
前記費用は前記通常定期点検スケジュールの時刻の策定に供するために、
前記計画変更費用演算部は、前記寿命が前記部品の通常定期点検スケジュールの時刻より後である場合、前記通常定期点検スケジュールの時刻から前記寿命が経過した時刻までの時間内に変更した場合の費用を算出することを特徴とする定期点検計画装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の定期点検計画装置において、
前記定期点検を行う作業員の時間帯毎の対応可否の情報を記憶する作業員情報部を更に備え、
前記施設情報記憶部は、前記施設の前記定期点検に必要な作業員の人数を更に記憶し、
前記定期修理計画情報作成部は、前記作業員の情報と前記人数に基づいて、前記通常定期点検スケジュールの時刻を変更することを特徴とする定期点検計画装置。
【請求項7】
請求項6に記載の定期点検計画装置において、
変更される前及び後の前記定期点検スケジュールの時刻と、前記定期点検で前記作業員が行う点検作業の指示情報とを含む情報を表示する表示部と、
前記指示情報を作成する作業指示部とを更に備えることを特徴とする定期点検計画装置。
【請求項8】
部品の故障を予測し、定期点検スケジュールを計画する定期点検計画システムにおいて、
定期点検計画装置と、出力装置とを備え
前記定期点検計画装置は、
前記部品の通常定期点検スケジュールの時刻と、前記通常定期点検スケジュールの時刻より一定時間前の時刻である早期点検スケジュールの時刻とを記憶する定期点検スケジュール記憶部と、
前記部品の寿命時間を記憶する寿命データ記憶部と、
前記部品の前回修理時刻に前記寿命を足し合わせた時刻を前記部品の寿命として予測する部品寿命推定部と、
前記寿命が前記通常定期点検スケジュールの時刻よりも前で、更に前記早期点検スケジュールの時刻よりも後の期間内にある場合、前記期間内に点検するように前記通常定期点検スケジュールを変更する定期修理計画情報作成部と、を備え、
前記出力装置は、変更された前記定期点検スケジュールを出力する表示部と、
を備えることを特徴とする定期点検計画システム。
【請求項9】
請求項8に記載の定期点検計画システムにおいて、
前記定期点検計画装置は、前記部品を備える施設の営業外時間を含む情報を記憶する施設情報記憶部を更に備え、
前記定期修理計画情報作成部は、前記期間内で、かつ前記営業外時間の時刻に、前記通常定期点検スケジュールを変更することを特徴とする定期点検計画システム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の定期点検計画システムにおいて、
前記定期点検計画装置は、前記定期点検スケジュールの策定に供するために、前記定期点検スケジュールの変更したときの費用を算出する計画変更費用演算部を更に備え、
前記出力装置は、前記費用を出力する表示部と、
を備えることを特徴とする定期点検計画システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−253393(P2011−253393A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127411(P2010−127411)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)