説明

定着装置、及び画像形成装置

【課題】泡状定着液を用いて樹脂微粒子を軟化させて記録媒体に定着させるもので、定着に寄与しなかった回収泡状定着液を回収するときに、良好な回収を行うことができる定着装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、泡状定着液収容部に、水を入れておくことで、定着液中の軟化剤が加水分解して酸となり、泡状定着液が破泡し、液化することで、回収泡状定着液を良好に回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に用いられる定着装置に関するものである。詳しくは、トナー等の樹脂微粒子を溶解又は膨潤させる定着液を樹脂微粒子に付与して樹脂微粒子を記録媒体上に定着させる定着装置、及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、複写機やプリンタ、ファクシミリ等のように記録媒体である転写紙上に画像を形成する画像形成装置は多くあり、その中でも主流なのがトナーを使用したいわゆる電子写真方式の画像形成装置である。電子写真方式の画像形成装置は、普通紙で高速に、高密度にまた最近ではカラー画像も手軽に作成できることからオフィス等に広く普及している。
この電子写真方式の画像形成装置では転写紙上に形成した未定着のトナー像を転写紙に定着させる定着装置としては、熱を利用した熱定着方式の定着装置が多く採用している。これはハロゲンヒーターやセラミックヒータ等の発熱体でローラやフィルム等を熱し、未定着トナーが乗った転写紙を加圧ローラで挟んで加熱・加圧してトナーを溶融、変形させ、転写紙の繊維中にアンカリングすることで定着させる。この方式は均一性、安定性に優れているため広く普及しているが、一方で発熱体を用いて加熱するために多くのエネルギーを要し、消費エネルギーが大きい定着装置であるという欠点がある。
従来の熱定着方式の定着装置では加熱処理に多くの電力を消費していたため、従来に比べて省エネルギー化を実現できる定着方式として、トナーを定着するために加熱を行わない湿式定着方式が知られている(例えば、特許文献1に記載の定着装置で用いる定着方式)。湿式定着方式は、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を転写紙表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させるものであるため、熱定着方式よりも省エネルギー化を実現できる。
【0003】
特許文献1に記載の定着装置では、表面上に液状の定着液を担持する塗布ローラを、未定着トナーを担持する転写紙に押し付けて、未定着トナーに定着液を付与している。しかしながら、特許文献1のように定着液を液状のまま転写紙上の未定着トナーに供給すると、塗布ローラが転写紙に定着液を塗布する塗布位置を通過したあとの塗布ローラの表面に残留する定着液の中に未定着トナーの一部が移行し、転写紙上のトナー像が劣化する不具合が生じた。これは、転写紙上の未定着トナーは静電気力によって転写紙に担持されているため、液体が触れると静電気力によって担持する力が著しく低下し、未定着トナーが定着液内に拡散してしまい、液中に未定着トナーが拡散した定着液の一部が塗布ローラ上に残留するために生じる。
なお、このような不具合は、定着液を転写紙上の未定着トナーに供給する構成に限らず、特許文献2のように、中間転写ベルト等のトナー像担持体上のトナーに定着液を供給した後、トナー像担持体上の樹脂が軟化したトナー像を転写紙に転写する構成で、定着液を、塗布ローラを用いてトナー像担持体上のトナーに塗布する構成においても生じ得る問題である。
【0004】
このように、未定着トナーの一部が塗布ローラに付着する不具合を抑制することができる定着装置として、特許文献3に記載の定着装置がある。この定着装置は、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を特許文献1の定着液と同様に塗布ローラによって転写紙上の未定着トナーに塗布するものである。このように定着液を泡状とすることにより、定着液の泡内に空気が大量に存在するため、未定着トナーが定着液内に拡散する力が働きにくくなり、転写紙上のトナーは定着液を塗布されても転写紙上から動かずにその場で定着液の作用で定着される。このため、未定着トナーの一部が塗布ローラに付着する不具合を抑制することができ、転写紙に液状の定着液を塗布する構成にくらべて、良好な画像が得られるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載の定着装置のように、塗布部材(塗布ローラ)を用いて泡状定着液と記録媒体(転写紙)に塗布する構成の場合、記録媒体に泡状定着液を塗布したあとの塗布部材をクリーニングする塗布部材クリーニング手段を設けることが望ましい。これは、記録媒体に泡状定着液を塗布する塗布位置を通過した後の塗布部材には記録媒体に塗布しきれずに残った残留泡状定着液が付着しており、この残留泡状定着液を回収するためである。残留泡状定着液は、泡状定着液として塗布部材に供給された後、時間が経過しており、且つ、塗布位置で機械的な力を受けているおり、泡の一部が消泡するなど、塗布部材に供給された状態と比べて、泡の状態が変化している。このため、塗布部材の表面上に変化した残留泡状定着液が残留している状態で新たな泡状定着液を塗布部材に供給すると、それらが合わさって、泡膜にムラが生じたり、異常時にオフセットしたトナーが塗布部材の表面上に残留している状態で新たな泡状定着液の供給がなされ、記録媒体への塗布がなされると、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写され、画像劣化となる恐れがある。
このように、記録媒体に付与する泡状定着液が不均一になったり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写されたりすることを防止するために、塗布部材クリーニング手段を設け、残留泡状定着液を除去することが望ましい。
【0006】
しかしながら、塗布部材クリーニング手段によって除去された泡状定着液は、嵩が多い状態となっている。定着液が泡状であることにより泡状化されていない定着液に対して体積が数十倍にも膨れ上がるため、定着液を泡状のまま収容しようとすると大きなタンクが必要となる。なお、泡状定着液は経時で自然に消泡して体積は徐々に小さくなるが、自然に消泡するには時間を要するため、連続印刷に対応するためには塗布部材から回収され、消泡する前の泡状定着液を収容する大きなタンクが必要となる。このような泡状定着液を収容可能な大きなタンクを画像形成装置に配置すると、装置の大型化につながるという問題がある。
このため、残留泡状定着液を液化して回収することが求められる。泡状液を液化する方法としては次のような方法が知られている。まず、特許文献5で示すように、泡状液を連泡構造のメッシュや多孔質体に吸引する方法では、多孔質体を構成する微小孔を通過させることで泡状液を破泡させて液化することができる。しかし、この方法だと、メッシュや細孔に泡状液が充填されていない部分があると、吸引の逃げ道ができてしまい、泡状液が全く吸引されない。
【0007】
また、最も一般的である加熱部材によって泡状液を加熱する方法では、熱により泡状液を破泡させて液化することができる。しかし、熱を使うことで、装置内に蒸気が充満してしまい、システムに不具合を生じさせることが懸念される。さらに、詳細は後述するが、熱を使うことで、システムの上流でつくる泡にも影響を及ぼしてしまい、安定した定着ができなくなってしまう。
別な方法として、特許文献6のような消泡剤を含んだものに接触させて、泡状液を消泡させ、回収する方法がある。しかし、消泡剤の消泡効果には限りがあり、効果がなくなった時点で、補充する必要がある。さらに、回収する材料としては、消泡した泡状液+消泡効果がなくなった材料となり、回収量が非常に多くなってしまう。
このような問題は、樹脂としては記録媒体上のトナー像を形成するトナー粒子に限るものではなく、記録媒体上の樹脂微粒子に泡状定着液を付与し、塗布部材をクリーニングする構成では、どの場合にも生じ得る問題点である。さらに、塗布部材をクリーニングする構成に限らず、塗布位置で塗布部材と接触する加圧部材など、定着装置内で回収となった泡状定着液を回収泡状定着液として回収する構成であれば同様の問題が生じる。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、泡状定着液を用いて樹脂微粒子を軟化させて記録媒体に定着させるもので、定着に寄与しなかった回収泡状定着液の良好な回収を行うことができる定着装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで樹脂を含有する樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した定着液を、液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、前記樹脂微粒子を含む樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に前記泡状定着液を付与する泡状定着液付与手段と、を備え、前記泡状定着液を付与することで軟化した前記樹脂微粒子を記録媒体に定着させる定着装置であって、前記定着液付与対象に付与されずに前記泡状定着液付与手段に残った残留泡状定着液を回収する泡状定着液回収手段を備え該泡状定着液回収手段は、前記残留泡状定着液を収容する残留泡状定着液収容部を備え、該残留泡状定着液収容部の中に、少なくとも水が貯留されていることを特徴とする。
請求項1の発明では、残留泡状定着液収容部内に水を貯留しておき、回収された残留泡状定着液を水と接触させて消泡する。
請求項2に記載の発明は、前記軟化剤が、脂肪酸アルコキシアルキルであることを特徴とする。
請求項2の発明では、軟化剤である脂肪酸アルコキシアルキルが残留泡状定着液収容部内の水と接触することで加水分解して酸を発生させる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記軟化剤が、炭酸エステルであることを特徴とする。
請求項3の発明では、軟化剤である炭酸エステルが残留泡状定着液収容部内の水と接触することで加水分解して酸を発生させる。
請求項4に記載の発明は、前記定着液の泡化成分が、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム又は脂肪酸アミンの何れかの脂肪酸塩であることを特徴とする。
請求項4の発明では、上記脂肪酸塩が残留泡状定着液収容部内の水と接触することで、消泡する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記泡状定着液付与手段は、前記泡状定着液を担持しつつ移動する表面を有し、前記定着液付与対象と対向する塗布位置において該定着液付与対象に前記泡状定着液を塗布する塗布部材を備え、前記泡状定着液回収手段は、前記塗布位置通過後の前記塗布部材の表面から前記残留泡状定着液を除去する塗布部材クリーニング手段を備えたことを特徴とする
請求項5の発明では、塗布部材クリーニング手段により塗布部材の表面から泡状定着液を除去するとともに、除去した残留泡状定着液を残留泡状定着液収容部に収容して、消泡させる。
請求項6に記載の発明は、前記塗布部材クリーニング手段は、前記塗布部材の表面に接触して前記泡状定着液を掻き取るクリーニングブレードを備えていることを特徴とする。
請求項6の発明では、クリーニングブレードにより塗布部材の表面から効率的に泡状定着液を掻き取る。
【0011】
請求項7に記載の発明は、樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体、または、トナー像を担持する記録媒体である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段と、を備える画像形成装置であって、前記定着手段として、請求項1乃至6の何れか一項記載の定着装置を用いることを特徴とする。
請求項7の発明では、中間転写体に泡状定着液を塗布する方式の画像形成装置、又は記録媒体に直接泡状定着液を塗布する方式の画像形成装置のいずれにも、本発明の定着装置を用いることができ、請求項1乃至6と同様の作用を有する。
本発明の定着装置では、まず回収部内の泡状定着液に水を接触させることで、軟化剤が加水分解して酸が発生する。それにより、pHが下がり、中性〜塩基性領域で泡化の特徴がある脂肪酸塩を含んだ泡状定着液を消泡させる。これにより、泡状定着液は液化し、良好に回収することができる。また、消泡させるために水しか使用しないので、回収後の処理についても問題とならない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、嵩が大きい、つまり密度が小さく、体積が大きい泡状定着液を効率的に消泡させ、容易に回収することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る定着装置を模式的に示す説明図。
【図2】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図3】同複写機におけるプリンタ部の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図。
【図4】同複写機における四つの作像ユニットのうちの一つを示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
まず、本発明の泡状定着液を詳細に説明すると、軟化剤を含有した定着液において、単に水を起泡する場合に比較して、脂肪酸塩の炭素数としては、12から18が起泡性に優れている。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、パルミチン酸塩(炭素数16、)、ステアリン酸塩(炭素数18)が適する。また、ペンタデシル酸(炭素数15)、マルガリン酸(炭素数17)なども適する。一方、脂肪酸と軟化剤との作用について説明すると、軟化剤はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、軟化剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基が定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させている。
【0015】
また、炭素数12から18の範囲においても、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。そこで、定着液中で、単独の脂肪酸塩でも良いが、炭素数12から18の脂肪酸塩を混合する方がさらに優れている。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが望ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の重量比で、0:6:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1などが適する。
【0016】
ところで、定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで軟化剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。軟化剤の濃度として、10wt%未満では、脂肪酸を含有しなくても起泡性は問題ない。しかし、軟化剤の濃度が10wt%以上、特に軟化剤の濃度が30wt%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる。このような軟化剤濃度30wt%において、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
但し、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる。そこで、脂肪酸塩のモル数を、脂肪酸のモル数と同じに、又は大きくするほうがよい。あるいは、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5から1:9の範囲とした場合起泡性が優れている。
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩の組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンで、脂肪酸がステアリン酸の組合せや脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムで脂肪酸がステアリン酸のような炭素数が12から18の範囲で異なる組合せであってもよい。要は、炭素数12から18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の軟化剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度の極めて低い泡化を可能とする。
【0017】
また、他のアニオン系界面活性剤、例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES)を起泡剤として、炭素数12から18の脂肪酸を含有した定着液であっても、軟化剤濃度増加による起泡性が悪くなるのを防止する効果があることがわかった。但し、最も組み合わせとして優れているのは脂肪酸塩との組合せである。
更に、脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アミンが適している。更に、最も適している脂肪酸アミンは、具体的には、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで作製することができる。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5から1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミンを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
【0018】
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の飽和脂肪族エステルの一般式は、R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0019】
上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについて、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
上記の飽和脂肪族エステルを使用する際、その加水分解を抑制するには、R1COOR2の加水分解物であるR1COOHとR2OHの少なくとも1種類を定着液に含有させることで、軟化剤の分解を抑制できる。上記の加水分解物としては、例えば、ラウリン酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、ミリスチン酸、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。含有量については、特に限定しないが、カルボン酸化合物については、定着液のpHが7以下にならないような含有量、アルコール化合物については1wt%から30wt%の含有量の範囲が適当である。これらの含有量を超える場合は、定着液の起泡性が劣化するため適さない。
【0020】
また、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルも含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の軟化剤を添加することによって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる軟化剤の含有量を低減することができる。
よって、本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、R3(COOR4)で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)で表される化合物を含み、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0021】
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
更に、本発明における定着液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0022】
本発明における定着液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、R5(COOR6−O−R7)で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0023】
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、炭酸エステルである炭酸エチレンや炭酸プロピレンや炭酸ブチレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
本発明において、回収部で接触させる水の量について、特に限定しないが、泡状定着液の約10倍以上の量があれば効果が得られる。それよりも少ないと、加水分解への反応が進まず、泡の回収が困難となる。また、それよりも多いと回収には問題ないが、大きい容積の回収容器が必要となる。
【0024】
以下、本発明を、電子写真方式によって画像を形成する画像形成装置である複写機(以下、複写機100と呼ぶ)に適用した実施形態について説明する。なお、本実施形態では本発明の泡生成装置を備える定着装置を有する画像形成装置が複写機である構成に付いて説明するが、プリンタ、ファクシミリ等の他の画像形成装置であってもよい。
まず、実施形態に係る複写機100の基本的な構成について説明する。図2は、実施形態に係る複写機100を示す概略構成図である。この複写機100は、プリンタ部1と、給紙装置40と、原稿搬送読取ユニット50とを備えている。原稿搬送読取ユニット50は、プリンタ部1の上に固定された原稿読取装置たるスキャナ部150と、これに支持される原稿搬送装置たるADF51とを有している。
給紙装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセット42から転写紙Pを送り出す送出ローラ43、送り出された転写紙Pを分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部1の紙搬送路37に転写紙Pを搬送する複数の搬送ローラ46等も有している。そして、給紙カセット42内の転写紙Pをプリンタ部1内の紙搬送路37内に給紙する。
プリンタ部1の上に固定されたスキャナ部150は、原稿MSの画像を読み取るための読取手段として、固定読取部151と、移動読取部152とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ部150のケーシング上壁に固定された図示しない第一コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、ADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサ153で受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSを走査する。
【0025】
一方、移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ部150のケーシング上壁に固定された図示しない第二コンタクトガラスの直下であって、固定読取部151の図中右側方に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第二コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサ153で受光する。これにより、光学系を移動させながら、原稿MSを走査する。このように、スキャナ部150において原稿MSを走査し、画像読取センサ153で得られた画像情報に基づいて、後述するように光書込装置2では光源を駆動してドラム状の四つの感光体4(K、Y、M、C)に向けてレーザー光Lを照射する。
【0026】
図3は、プリンタ部1の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。プリンタ部1は、光書込装置2の各色(K、Y、M、C)のトナー像を形成する四つの作像ユニット3(K、Y、M、C)、転写ユニット90、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置60等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の四つの感光体4(K、Y、M、C)に向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、潜像担持体たる感光体4(K、Y、M、C)の表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK、Y、M、Cという添字は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン用の仕様であることを示している。なお、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなり、これらの樹脂材料は、後述する定着装置60の定着液により溶解又は膨潤する。
作像ユニット3(K、Y、M、C)は、それぞれ、潜像担持体たる感光体4と、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体によって支持するものであり、複写機100本体に対して着脱可能になっている。ブラック用の作像ユニット3Kを例にすると、これは、感光体4Kの他、これの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像装置6Kを有している。また、後述するK用の一次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置15Kなども有している。複写機100では、四つの作像ユニット3(K、Y、M、C)を、後述する中間転写ベルト91に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0027】
図4は、四つの作像ユニット3(K、Y、M、C)のうちの一つ作像ユニット3の拡大図である。なお、四つの作像ユニット3(K、Y、M、C)は、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図4においては各符号に付すK、Y、M、Cという添字を省略している。図4に示すように、作像ユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置の帯電ローラ5、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電装置の除電ランプ22等を有している。
感光体4としては、複写機100では、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、感光体としては無端ベルト状のものを用いても良い。
【0028】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を現像剤担持体である現像ローラ12に担持し、現像ローラ12と感光体4との対向部である現像領域で感光体4上の静電潜像にトナーを供給して、静電想像を可視像化させる。また、現像装置6は、現像ローラ12の表面に供給する二成分現像剤を収容する現像剤収容部を備え、現像剤収容部は収容する二成分現像剤を攪拌する不図示の攪拌部材が設けられている。現像ローラ12は回転可能に配置された非磁性の筒状の現像スリーブと、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラとから構成される。マグネットローラは、現像スリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれ現像スリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、現像剤収容部内の二成分現像剤を現像スリーブ表面に引き寄せて担持させるとともに、現像スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。磁気ブラシは、現像スリーブの回転に伴って不図示の現像剤規制部材との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、現像領域に搬送される。そして、現像スリーブに印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像を行う。更に、現像領域を通過した後、現像スリーブの回転に伴って再び現像装置6内に戻った磁気ブラシを構成する二成分現像剤は、マグネットローラの磁極間に形成される反発磁界の影響によって現像スリーブ表面から離脱した後、現像剤収容部内に戻される。現像剤収容部内には、不図示のトナー濃度センサが配置されており、このトナー濃度センサによる検知結果に基づいて、現像剤収容器内の二成分現像剤のトナー濃度が所定の範囲内となるように、不図示のトナー補給装置が制御され、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。
【0029】
プリンタ部1では図3に示すように、四つの作像ユニット3(K、Y、M、C)の感光体4(K、Y、M、C)には、これまで説明してきた作像プロセスによってK、Y、M、Cトナー像が形成される。
図3に示すように四つの作像ユニット3(K、Y、M、C)の下方には、転写ユニット90が配設されている。この転写ユニット90は、複数の張架ローラ(92、93、94)によって張架されたトナー像担持体としての中間転写ベルト91を備え、中間転写ベルト91を挟んで第一張架ローラ92に対向する位置には、ベルトクリーニング装置32が配置されている。ベルトクリーニング装置32は、後述する二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト91上に残留するトナーを除去するために配置されている。転写ユニット90では中間転写ベルト91を感光体4(K、Y、M、C)に当接させながら図中時計回り方向(図3中の矢印A方向)に無端移動させる。これにより、感光体4(K、Y、M、C)と中間転写ベルト91とが当接するK、Y、M、C用の一次転写ニップが形成されている。K、Y、M、C用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写装置の一次転写ローラ95(K、Y、M、C)によって中間転写ベルト91が感光体4(K、Y、M、C)に向けて押圧されている。四つの一次転写ローラ95(K、Y、M、C)には、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、K、Y、M、C用の一次転写ニップでは、感光体4(K、Y、M、C)上のトナー像を転写体たる中間転写ベルト91に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK、Y、M、C用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト91の表面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト91の表面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。本実施形態の一次転写装置は、一次転写部材として一次転写ローラ95を備えた構成を採用しているが、一次転写部材としては導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。
【0030】
図4において、一次転写ニップを通過した後の感光体4の表面には、中間転写ベルト91に一次転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、作像ユニット3のドラムクリーニング装置15により、感光体4の表面から除去される。
ドラムクリーニング装置15としては、感光体4に当接しているポリウレタンゴム製のクリーニングブレード16により、転写残トナーを一次転写ニップ通過後の感光体4表面から掻き取って除去するものが用いられている。クリーニングブレード16は、作像ユニット3のケーシングに固定された金属製の支持部材に接着(ホットメルト)されており、感光体4に対してカウンタ方向に当接するようになっている。カウンタ方向とは、支持部材によって片持ち支持されるクリーニングブレード16の先端側を、後端側(自由端側)よりも感光体4の回転方向の上流側に位置させるようなブレードの向きである。ここで、ドラムクリーニング装置15によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像装置6に回収され、再利用される。
【0031】
本実施形態の作像ユニット3が備える除電装置は除電ランプ22を備えた構成であり、光を照射して感光体4の表面電位を初期化する。除電ランプ22によって除電された感光体4の表面は、帯電バイアスの印加によって感光体4との間に放電を発生させる帯電ローラ5によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。作像ユニット3が備える帯電装置は帯電ローラ5を採用した接触帯電方式の帯電装置である。この帯電装置は帯電ローラ5を感光体4の表面に接触させて、帯電ローラ5に電圧を印加することにより感光体4の表面を一様に帯電する。なお、感光体4を一様に帯電させる帯電装置としては、帯電ローラ方式のものに代えてスコロトロンチャージャ等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。
【0032】
プリンタ部1では図3に示すように、転写ユニット90の図中下方には、駆動ローラ30と二次転写ローラ31との間に、二次転写ベルトである無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる二次転写ユニットとしての紙搬送ユニット28が設けられている。複写機100では紙搬送ユニット28の二次転写ローラ31と、転写ユニット90の下部張架ローラ94との間に、中間転写ベルト91及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト91の表面と、紙搬送ベルト29の表面とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ31には図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット90の下部張架ローラ94は接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成されている。なお、中間転写ベルト91と接触して二次転写ニップを形成する部材としては、紙搬送ベルト29のようなベルト状の部材に限らず、ローラ状の転写ローラを用いてもよい。
【0033】
この二次転写ニップの図中右側には、レジストローラ対33が配設されている。レジストローラ対33はローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト91上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト91上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括二次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。二次転写ニップを通過し、表面にトナー像が転写された転写紙Pは、中間転写ベルト91から離間して、紙搬送ベルト29の表面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置60へと搬送される。
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト91の表面には、二次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、クリーニング部材が中間転写ベルト91に当接するように配置されたベルトクリーニング装置32によって掻き取り除去される。
【0034】
定着装置60に搬送された転写紙Pは、詳細は後述するが定着装置60内で定着液が塗布されることによってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置60から送り出され、排紙トレイ10上に排紙される。
なお、図2に示すように複写機100は、紙搬送ユニット28と定着装置60との下方には、転写紙反転装置であるスイッチバック装置36が配設されている。両面に画像形成を行う場合には、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙Pの進路を、切換爪を制御することによってスイッチバック装置36側に切り換え、そこで転写紙Pを反転させて再び二次転写ニップに向けて搬送する。そして、もう片面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された転写紙Pは、排紙トレイ10上に排紙される。
【0035】
次に、本発明の特徴部を備えた定着装置60について説明する。図1は本実施形態の定着装置60を模式的に示す説明図である。なお、本発明における樹脂微粒子はトナー粒子である。定着装置60は、軟化剤を含む液状定着液132を泡状とした泡状定着液Fを生成する泡状定着生成手段としての泡状定着液生成部130と、生成された泡状定着液Fを記録媒体である転写紙P(定着液付与対象)に塗布する定着液塗布手段(泡状定着液付与手段)である定着液塗布部600とを有する。
泡状定着液生成部130は、液状定着液132を収容する定着液収容手段としての定着液ボトル131と、液状定着液132に対して液中に気泡を分散させて泡を多く含んだ泡状定着液Fとする定着液泡状化手段としての定着液泡状化装置500とを備える。定着液ボトル131中の液状定着液132は、不図示の定着液搬送ポンプを駆動することにより定着液搬送管を介して定着液泡状化装置500へと搬送され、定着液泡状化装置500で空気と混合して発泡することで泡状定着液Fとなる。定着液泡状化装置500としては、例えば特許文献3に記載のフォーム状定着液生成手段を用いることができるが、液状定着液132を所望の泡径の泡状定着液Fとすることができればこれに限るものではない。
【0036】
定着液塗布部600は、泡状定着液生成部130によって生成された所望の泡径の泡状定着液Fを転写紙P上の未定着トナー像Tへ付与する。定着液塗布部600は、定着液泡状化装置500から泡状定着液Fが供給され、泡状定着液Fを塗布位置Cで転写紙Pに塗布する塗布部材としての塗布ローラ61と、塗布ローラ61に塗布位置Cで対向するように配置された加圧ローラ62とを備える。泡状定着液生成部130から塗布ローラ61の表面に薄膜状に供給された泡状定着液Fは、塗布ローラ61の表面移動によって塗布位置Cに到達する。不図示の搬送部材によって定着装置60に搬送されてきた未定着トナー像Tを担持した転写紙Pは、塗布位置Cの塗布ローラ61と加圧ローラ62とのニップ部に挟み込まれ、泡状定着液Fが未定着トナー像Tに付与される。ニップ部を通過後、定着液を付与されることによって軟化または膨潤したトナー粒子が再び硬化することで転写紙Pに定着され、定着トナー像Taとなる。
なお、本実施形態においては、泡状定着液Fを転写紙Pに塗布する構成であるが、泡状定着液Fを中間転写ベルト91(トナー像担持体、定着液付与対象)に塗布した後に、未定着トナー像Tと泡状定着液Fを転写紙Pに転写し、定着させる構成としても良い。
定着液塗布部600は、塗布ローラ61の表面移動方向について、塗布位置Cよりも下流側で、且つ、泡状定着液生成部130から泡状定着液Fが供給される位置よりも上流側に塗布ローラクリーニング装置20(塗布部材クリーニング手段)を備える。この塗布ローラクリーニング装置20によって、塗布位置Cで塗布ローラ61から転写紙Pに移行しきれなかった泡状定着液Fや転写紙Pから移行した少量のオフセットトナーTbからなる残留泡状定着液Fbを除去する。
【0037】
図1に示す定着装置60では、泡状定着液生成部130から塗布ローラ61に供給される泡状定着液Fは薄膜の状態で供給される。塗布ローラ61上に泡状定着液Fの薄層を形成する構成としては、泡状定着液生成部130から泡状定着液Fを供給される位置から塗布位置Cまでの間に、塗布ローラ61上の泡状定着液Fを所望の膜厚にする膜厚制御手段を設けても良い。なお、塗布部材を用いて塗布する泡状定着液Fとしては、泡状定着液Fの密度を変えて定着させる実験を行ったところ、泡状定着液Fを構成する定着液と空気との割合は1:25〜1:50程度、すなわち、密度としては0.04〜0.02[cm]の範囲であることが望ましいことが分かった。泡状定着液Fの密度が、この範囲よりも高いと、液状に近い状態となり、通常の液状の定着液を塗布していた従来の定着装置と同様に塗布位置を通過した塗布ローラ表面上の定着液にトナーが巻き込まれて塗布ローラ側に移行する所謂オフセットが発生しやすくなり、画像劣化が起きる。逆に、この範囲よりも泡状定着液Fの密度が低くなると、泡状定着液Fがドライフォームと呼ばれる状態となる。ドライフォームの状態となると、破泡し難くなり、記録媒体に必要量の定着液が移行せずに定着不良となったり、定着液の使用効率が低下することで必要以上の定着液を消費したりするといった不具合が生じる。
【0038】
また、実験を行ったところ、泡状定着液Fの泡径は平均で20[μm]程度が望ましいことが分かった。泡状定着液Fは定着液部と空気部とによって構成されるが、空気部には定着液がないため、泡径が大きいと空気部にあるトナーは軟化せず定着しない。つまり定着ムラが起きてしまう。一方、泡径が小さ過ぎると塗布ローラ61への濡れ性が極端に落ちたドライフォームのような状態になり、塗布ローラ61上で均一な薄膜状にならないため、やはり定着ムラになってしまう。このような理由により泡状定着液Fの密度及び泡径は定着性能に対して良好な範囲がある。もちろん定着液の種類やトナー種等により良好な部分は異なるが、定着液を泡状にしてトナーに塗布して定着させる方式には基本的にこのような範囲が存在する。
【0039】
塗布ローラ61上の泡状定着液Fの必要な膜厚は、次の計算で簡単に求められる。先ず、A4サイズ(297[mm]×210[mm])の転写紙Pに必要な定着液量を0.1[g]と仮定する。なお、A4サイズ一枚当りに0.1[g]と仮定として設定しており、転写紙Pの種類が変わればこの必要な定着液量が変化することも考えられる、実際の普通紙においてもA4サイズ一枚当り0.1[g]であった。定着液量がこれより多いと紙が膨潤しカールが目立つようになり、商品価値を著しく落としてしまう。また少ないと勿論定着不良を起こしてしまう。
上述した泡状定着液Fの密度を0.02[g/cm3]、定着液の比重を1、塗布ローラ61上での必要な泡膜厚をt[mm]とすると、(297[mm]×210[mm]×t[mm])×0.02/1000[g/mm]=0.1[g] ∴t=0.08[mm] となり、塗布ローラ61上の泡状定着液Fに必要な膜厚は約80[μm]となる。実際には泡状定着液Fの全てが記録紙に転写する訳ではない。このため、仮に塗布ローラ61から転写紙Pへの泡状定着液Fの転写率を90[%]だとすると、80[μm]/0.9=88[μm]となる。
【0040】
このように、塗布ローラ61の表面上には膜厚が約90[μm]の薄層の泡状定着液Fが形成され、これが塗布位置Cに入力し、転写紙Pに塗布されるが、塗布位置Cで塗布ローラ61上の泡状定着液Fの全てが転写紙Pに付与されるわけではない。上述したように、転写率(塗布位置Cに到達する直前の塗布ローラ61上の単位面積当りの泡状定着液Fの量を、塗布位置C通過直後の転写紙P上の泡状定着液Fの量で割った値)は良くても90[%]程度である。すなわち、塗布ローラ61表面上に供給された泡状定着液Fのうちの約10[%]程度の定着液は塗布位置Cを通過後の塗布ローラ61上に残留する。また、塗布位置Cでは、転写紙P上のトナーが微少量剥がれて(オフセットして)塗布ローラ61上に残留した泡状定着液Fと混じった形で残る。そして、オフセットトナーTbや泡状定着液Fからなる残留泡状定着液Fbを塗布ローラクリーニング装置20によって除去する必要がある。残留泡状定着液Fbが良好に除去されないと、再び泡状定着液生成部130から新しい泡状定着液Fが供給されるときに、所望の状態に制御された新しい泡状定着液Fに残留泡状定着液Fbが混ざって、泡状定着液Fの均一性や供給量が所望の状態から変化する。さらに、オフセットトナーTbが次の転写紙Pに再転写されることで画像不良が生じ、定着品質に重大なダメージを与えるおそれがある。よって、定着装置60では、塗布ローラクリーニング装置20によって残留泡状定着液Fbの確実に除去されることが求められる。
【0041】
次に、本実施形態の定着装置60の特徴部について説明する。図1に示すように、定着装置60は、塗布ローラ61をクリーニングする塗布部材クリーニング手段として塗布ローラクリーニング装置20(泡状定着液回収手段)を有する。そして、塗布ローラクリーニング装置20は、塗布ローラ61が転写紙Pに泡状定着液Fを塗布する塗布位置Cを通過した後の塗布ローラ61表面に残留する残留泡状定着液Fbを除去する定着液除去ブレード201(クリーニングブレード)を備える。さらに、塗布ローラクリーニング装置20は、定着液除去ブレード201によって塗布ローラ61表面から除去された泡状定着液Fを収容する泡状定着液収容部216と泡状定着液収容部216内の泡状定着液Fを液化して回収する定着液回収装置200を備える。
【0042】
定着液回収装置200は、塗布ローラ61上の残留泡状定着液Fbを回収し、定着液回収ボトル220に収容する。しかし、残留泡状定着液Fbは通常の液状の定着液に比べると体積が大きくなっているため、残留泡状定着液Fbを泡状のまま収容すると、大容量の定着液回収ボトル220が必要となり、装置の大型化につながるため残留泡状定着液Fbを液化して回収する必要がある。定着液除去ブレード201によって除去した残留泡状定着液Fbは、いったん泡状定着液収容部216に収容され、泡状定着液収容部216内の残留泡状定着液Fbは経時で自然に消泡して体積は徐々に小さくなるが、自然に消泡するには時間を要する。そして、自然に消泡した残留泡状定着液Fbを回収する構成であると泡状定着液収容部216がすぐにいっぱいになり、その後、定着液除去ブレード201によって除去した残留泡状定着液Fbを回収できなくなる。このため、図1のような減圧回収機構が必要となってくる。
【0043】
ここで、図1のような減圧回収機構を説明する。本発明に係る減圧回収機構は、泡状定着液収容部216に一時的に収容された残留泡状定着液Fbを消泡させるための蒸留水を保存する蒸留水保存容器215と、液状化した残留泡状定着液Fbを定着液回収ボトル220に機械的に送り出す定着液回収ポンプ225と、泡状定着液収容部216から定着液回収ボトル220へ液状化した残留泡状定着液Fbを移動させる定着液回収管226と、を備えている。
まず、残留泡状定着液Fbを回収する前に、予め泡状定着液収容部216を蒸留水保存容器215に保存された水にてある程度満たしておく。残留泡状定着液Fbを泡状定着液収容部216内に貯留された水の上から流し込んで、泡状定着液収容部216に一時的に回収する。そして、水による消泡効果が少なくなった段階で、定着液回収ポンプ225を作動させ、定着液回収管226を経由して定着液回収ボトル220に回収する。
【0044】
この消泡メカニズムについて、以下に説明する。水が多い環境下では軟化剤の加水分解反応が進むことで酸が発生し、pHが下がる。それにより、上記で示した泡化成分の泡を保てるpHが中性〜塩基性であるため、消泡して液状化する。この形態になることで定着液を良好に回収することができる。
【0045】
[実施例1]
軟化剤の分解量測定
<脂肪酸カリウム塩系定着液の調整>
次に、本発明で使用した定着液の調整方法について説明する。脂肪酸であるミリスチン酸(関東化学試薬)を4.00g、パルミチン酸(関東化学試薬)を3.00g、ステアリン酸を1.00g(関東化学試薬)とし、中和剤である水酸化カリウムを1.28gになるようにそれぞれ計量し、それらを液温80℃のイオン交換水中で、30分間スターラー(100rpm)で撹拌したら、室温になるまで自然冷却する。それに、軟化剤や増泡剤などの残りの材料を添加して超音波ホモジナイザーにて10分間撹拌し、それを定着液(フォーム化する前の原液)とした。細かい成分量については、後で詳細に記述する。
<脂肪酸ナトリウム塩系定着液の調整>
次に、本発明で使用した定着液の調整方法について説明する。脂肪酸であるミリスチン酸(関東化学試薬)を4.00g、パルミチン酸(関東化学試薬)を3.00g、ステアリン酸を1.00g(関東化学試薬)とし、中和剤である水酸化ナトリウムを0.92gになるようにそれぞれ計量し、それらを液温80℃のイオン交換水中で、30分間スターラー(100rpm)で撹拌したら、室温になるまで自然冷却する。それに、軟化剤や増泡剤などの残りの材料を添加して超音波ホモジナイザーにて10分間撹拌し、それを定着液(フォーム化する前の原液)とした。細かい成分量については、後で詳細に記述する。
【0046】
<脂肪酸トリエタノールアミン塩系定着液の調整>
次に、本発明で使用した定着液の調整方法について説明する。脂肪酸であるミリスチン酸(関東化学試薬)を4.00g、パルミチン酸(関東化学試薬)を3.00g、ステアリン酸(関東化学試薬)を1.00gとし、中和剤であるトリエタノールアミンを3.41gになるようにそれぞれ計量し、それらを液温80℃のイオン交換水中で、30分間スターラー(100rpm)で撹拌したら、室温になるまで自然冷却する。それに、軟化剤や増泡剤などの残りの材料を添加して超音波ホモジナイザーにて10分間撹拌し、それを定着液(フォーム化する前の原液)とした。細かい成分量については、後で詳細に記述する。
【0047】
定着液の軟化剤の加水分解状態を測定するため、まず後述する定着液を調合し、常温で15〜30分間放置し、ガスクロマトグラフィー測定を実施した。ガスクロマトグラフィー測定条件について、装置はHEWLETT PACKARD 5890 SERIESII、使用したカラムはHEWLETT PACKARD HP−1(30m×0.25mm×0.25μm)、カラム温度は50℃〜250℃、インジェクション温度は200℃、ディテクター温度は200℃、試料量は1μLとした(なお、ガスクロマトグラフィー測定は、装置内でガス化するものしか検出しない。)。
【0048】
[サンプル1](サンプル1−1⇒混合直後品、サンプル1−2⇒室温30min保存品、サンプル1−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸カリウム塩(脂肪酸K塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を45.5wt%、軟化剤であるプロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)を40wt%の定着液10gに、蒸留水を90g添加した。
[サンプル2](サンプル2−1⇒混合直後品、サンプル2−2⇒室温30min保存品、サンプル2−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸カリウム塩(脂肪酸K塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を84.5wt%、軟化剤であるコハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)を10wt%の定着液10gに、蒸留水を90g添加した。
【0049】
[サンプル3](サンプル3−1⇒混合直後品、サンプル3−2⇒室温30min保存品、サンプル3−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸ナトリウム塩(脂肪酸Na塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を45.5wt%、軟化剤であるプロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)を40wt%の定着液10gに、蒸留水を90g添加した。
[サンプル4](サンプル4−1⇒混合直後品、サンプル4−2⇒室温30min保存品、サンプル4−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸ナトリウム塩(脂肪酸Na塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を84.5wt%、軟化剤であるコハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)を10wt%の定着液10gに、蒸留水を90g添加した。
【0050】
[サンプル5](サンプル5−1⇒混合直後品、サンプル5−2⇒室温30min保存品、サンプル5−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を45.5wt%、軟化剤であるプロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)を40wt%の定着液10gに、蒸留水を90g添加した。
[サンプル6](サンプル6−1⇒混合直後品、サンプル6−2⇒室温30min保存品、サンプル6−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を84.5wt%、軟化剤であるコハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)を10wt%の定着液10gに、蒸留水を90g添加した。
【0051】
[比較例2]軟化剤の分解量測定(過剰な水を加えない従来の定着液)
[サンプル1−0](サンプル1−0−1⇒混合直後品、サンプル1−0−2⇒室温15min保存品、サンプル1−4−3⇒室温30min保存品)
起泡剤である脂肪酸カリウム塩(脂肪酸K塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を45.5wt%、軟化剤であるプロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)を40wt%の定着液10g。
[サンプル2−0](サンプル2−0−1⇒混合直後品、サンプル2−0−2⇒室温30min保存品、サンプル2−0−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸カリウム塩(脂肪酸K塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を84.5wt%、軟化剤であるコハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)を10wt%の定着液10g。
【0052】
[サンプル3−0](サンプル3−0−1⇒混合直後品、サンプル3−0−2⇒室温30min保存品、サンプル3−0−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸ナトリウム塩(脂肪酸Na塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を45.5wt%、軟化剤であるプロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)を40wt%の定着液10g。
[サンプル4−0](サンプル4−0−1⇒混合直後品、サンプル4−0−2⇒室温30min保存品、サンプル4−4−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸ナトリウム塩(脂肪酸Na塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を84.5wt%、軟化剤であるコハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)を10wt%の定着液10g。
【0053】
[サンプル5−0](サンプル5−0−1⇒混合直後品、サンプル5−0−2⇒室温35min保存品、サンプル5−0−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を45.5wt%、軟化剤であるプロピレンカーボネート(関東化学試薬、PC)を40wt%の定着液10g。
[サンプル6−0](サンプル6−0−1⇒混合直後品、サンプル6−0−2⇒室温15min保存品、サンプル6−0−3⇒室温60min保存品)
起泡剤である脂肪酸トリエタノールアミン塩(脂肪酸TEA塩)を4.0wt%、増泡剤であるヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂、マーポンMM)を0.5wt%、希釈剤であるイオン交換水を84.5wt%、軟化剤であるコハク酸ジエトキシエチル(クローダ社、クローダDES)を10wt%の定着液10g。
【0054】
上述の実施例1と比較例1のガスクロマトグラフィー測定結果とpH測定結果を表2に示す。
【0055】
【表1】

*:水が過剰添加されていない定着液の軟化剤エリア%を100%としたそれぞれの定着液中の軟化剤エリア%
【0056】
表1を参照して、実施例1と比較例1を比較すると、明らかに水を過剰に含有させた定着液の方は、軟化剤の分解が起こっており、pHが下がっていることから、加水分解が起こって、それらが加水分解したと考えられる。さらに、この分解反応は15分〜30分でほぼ止まっていることもわかった。
【0057】
[実施例2]
<定着液>
定着液について、上述した水を過剰に含有させていない、サンプル1−0−1、サンプル2−0−1、サンプル3−0−1、サンプル4−0−1、サンプル5−0−1、サンプル6−0−1を使用した。
<塗布装置>
図1に示すような、定着液ボトル131から供給される定着液を定着液泡状化装置500(バブリング攪拌法)に導入し、泡状定着液を作製した。また、定着液泡状化装置500と塗布ローラ61のギャップを70μmとすることで、塗布ローラ上の泡膜は90μmとなった。また、そのときの泡状定着液の嵩密度は0.02g/cmであった。それぞれの構成材料について、以下に示す。
・塗布ローラ61:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30)
・紙搬送速度:150mm/s
・加圧ローラと塗布ローラ間の加重:片側196N
【0058】
<泡状定着液収容部、定着液回収装置>
泡状定着液収容部、定着液回収装置については、図1のような構成とした。泡状定着液収容部には、あらかじめ本発明で説明した蒸留水を約50ml入れておいた。
プリンタとしてIpsioColorCX8800(リコー社製)を用い、未定着トナーのカラー画像が形成されたPPC用紙を連続500枚通紙し、回収部の泡の状態を確認し、すぐに次の500枚を通紙した。そして、500枚ごとの定着液回収部の状態について以下のように判定をした。
・泡状定着液収容部の状態 ⇒評価:○ ・・・ 泡状定着液収容部から泡状定着液が溢れず、回収に問題がない状態。
・泡状定着液収容部の状態 ⇒評価:× ・・・ 泡状定着液収容部から泡状定着液が溢れて、回収に問題がある状態。
【0059】
[比較例2]
<泡状定着液収容部、定着液回収装置>
泡状定着液収容部、定着液回収装置については、図1のような構成とした。泡状定着液収容部には、何も入れない状態とした。なお、その他の条件は実施例2と同様とした。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に実施例と比較例の結果を示す。また、その詳細について以下に示す。
・実施例2・・・泡状定着液収容部も溢れることなく、綺麗に泡状定着液を回収できていた。
・比較例2・・・泡状定着液収容部から泡状定着液が溢れてしまい、真下の定着画像に落ちて、それを汚してしまった。
【0062】
以上の結果から、泡状定着液収容部内に水を入れておき、それと泡状定着液を接触させることにより、良好に定着液を回収できることが明らかとなった。この原理について、泡状定着液の軟化剤が水に接触することで、加水分解して酸が発生する。それにより、pHが下がり、中性〜塩基性領域で泡化の特徴がある脂肪酸塩を含んだ泡状定着液を消泡させる。これにより、泡状定着液は液化し、良好に回収することができたと考えられる。なお、本発明は上記各実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1…プリンタ部、2…光書込装置、3…作像ユニット、4…感光体、5…帯電ローラ、6…現像装置、10…排紙トレイ、12…現像ローラ、15…ドラムクリーニング装置、16…クリーニングブレード、20…塗布ローラクリーニング装置、22…除電ランプ、28…紙搬送ユニット、29…紙搬送ベルト、30…駆動ローラ、31…二次転写ローラ、32…ベルトクリーニング装置、33…レジストローラ対、36…スイッチバック装置、37…紙搬送路、40…給紙装置、41…ペーパーバンク、42…給紙カセット、43…送出ローラ、44…給紙路、45…分離ローラ、46…搬送ローラ、50…原稿搬送読取ユニット、51…ADF、60…定着装置、61…塗布ローラ、62…加圧ローラ、90…転写ユニット、91…中間転写ベルト、92…第一張架ローラ、94…下部張架ローラ、95…一次転写ローラ、100…複写機、130…泡状定着液生成部、131…定着液ボトル、132…液状定着液、150…スキャナ部、151…固定読取部、152…移動読取部、153…画像読取センサ、200…定着液回収装置、201…定着液除去ブレード、215…蒸留水保存容器、216…泡状定着液収容部、220…定着液回収ボトル、225…定着液回収ポンプ、226…定着液回収管、500…定着液泡状化装置、600…定着液塗布部、C…塗布位置、F…泡状定着液、Fb…残留泡状定着液、P…転写紙、T…未定着トナー像、Ta…定着トナー像、Tb…オフセットトナー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2006−78573公報
【特許文献2】特開2004−109749公報
【特許文献3】特開2007−219105公報
【特許文献4】特開平09−94561号公報
【特許文献5】特開平09−268393号公報
【特許文献6】特許第3051495号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで樹脂を含有する樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した定着液を、液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、前記樹脂微粒子を含む樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に前記泡状定着液を付与する泡状定着液付与手段と、を備え、前記泡状定着液を付与することで軟化した前記樹脂微粒子を記録媒体に定着させる定着装置であって、
前記定着液付与対象に付与されずに前記泡状定着液付与手段に残った残留泡状定着液を回収する泡状定着液回収手段を備え
該泡状定着液回収手段は、前記残留泡状定着液を収容する残留泡状定着液収容部を備え、
該残留泡状定着液収容部の中に、少なくとも水が貯留されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記軟化剤が、脂肪酸アルコキシアルキルであることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記軟化剤が、炭酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着液の泡化成分が、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム又は脂肪酸アミンの何れかの脂肪酸塩であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の定着装置。
【請求項5】
前記泡状定着液付与手段は、前記泡状定着液を担持しつつ移動する表面を有し、前記定着液付与対象と対向する塗布位置において該定着液付与対象に前記泡状定着液を塗布する塗布部材を備え、
前記泡状定着液回収手段は、前記塗布位置通過後の前記塗布部材の表面から前記残留泡状定着液を除去する塗布部材クリーニング手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の定着装置。
【請求項6】
前記塗布部材クリーニング手段は、前記塗布部材の表面に接触して前記泡状定着液を掻き取るクリーニングブレードを備えていることを特徴とする請求項5記載の定着装置。
【請求項7】
樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、
記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体、または、トナー像を担持する記録媒体である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段と、を備える画像形成装置であって、前記定着手段として、請求項1乃至6の何れか一項記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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