説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】簡単な構成で、熱せられる回転部材に付着した残留トナーが除去される定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置5は、用紙上に担持されたトナー像を定着ローラ18及び加圧ローラ19により加熱及び加圧して用紙9上に定着し、加圧ローラ19の表面に圧接するニップ部NCにて、加圧ローラ19の表面に付着したトナーを引っ掻き該トナーを加圧ローラ19の表面に散乱させる撹乱部材61を備える。撹乱部材61は、加圧ローラ19の回転方向(Y方向)に対して傾斜して形成される複数の突条部62とこの複数の突条部62の間に設けられる溝部63とを有する。各突条部62は、ニップ部NCの領域で回転方向(Y方向)において、少なくとも一部が隣接する突条部62に対向するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、熱せられる回転部材に残留するトナーのクリーニングが可能な定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式に用いる定着装置では、加熱される定着ローラと加圧ローラとの間の定着ニップ部にトナー像を形成した用紙が送り込まれ、定着ローラによる加熱作用によって用紙上のトナーが溶融されると同時に、溶融したトナー像に対して加圧ローラから加圧作用が付与されることによって用紙に対してトナー像の定着が行われるようになっている。
【0003】
これらの定着ローラ及び加圧ローラの表面には、用紙に定着しきれなかったトナーが残留する。定着ローラ及び加圧ローラの表面に残留したトナーは、次の定着工程までに、該表面から除去されないと、画像上にそのまま付着してしまい、画像欠陥が発生する。
【0004】
そこで、特許文献1では、定着ローラの表面に残留したトナーを除去するためにクリーニング部材を設けている。クリーニング部材は、定着ローラの表面に残留したトナーを回収するメッシュ部と、このメッシュ部の下方側にて回収したトナーを収容するトナー収容部とを備え、メッシュ部とトナー収容部が一体的に構成されている。メッシュ部は、複数の線材でもって構成され、線材が互いに交差することにより格子状に形成されている。そして、メッシュ部は定着ローラの表面に接触し、メッシュ部にて定着ローラの表面に残留したトナーを回収する。回収されたトナーはトナー収容部に収容され、定着ローラの表面に残留するトナーを除去している。
【0005】
また、特許文献2では、定着ローラの表面温度を検出する熱検出装置と、熱検出装置の上流位置に対向して配設され定着ローラの表面に残留するトナーを除去するブレードとを備え、このブレードは定着ローラの長手方向に対して傾斜して配設される。ブレードが定着ローラの長手方向に平行に配置されていると、定着ローラ表面に付着したトナーがブレードの面に直角に当接して阻止される。ブレードに留まるトナーが増えてくると、大きなトナーの塊となって定着ローラに対して付着状態を保持しきれなくなり、残留トナーは用紙上に落下し用紙の印刷面を汚染することになる。しかし、特許文献2では、ブレードが定着ローラの長手方向に平行に配置されていないために、除去されたトナーは傾斜したブレードに沿って微粒子のまま長手方向に移動し、トナーの塊とならないので、定着ローラ表面に対する付着力を保持し、落下することがなく、用紙の印刷面が汚染されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−94345号公報(段落[0130]〜[0132]、第5図)
【特許文献1】特開平4−166973号公報(3〜5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1では、クリーニング部材のメッシュ部にて回収したトナーを収容するトナー回収部が必要となり、クリーニング部材が複雑な構成となり、また、部品点数が増加するという不都合があった。
【0008】
また、上述した特許文献2では、熱検出装置に対向する対向領域では残留したトナーが除去されるが、長手方向の熱検出装置に対向していない非対向領域では、定着ローラの表面に付着したトナーが残留するとともに、対向領域から移動してきたトナーが付着する。このように、定着ローラの対向領域ではトナーが除去され、一方、非対向領域では残留トナーで覆われると、定着ローラの長手方向に定着性能が不均一になり、更に、トナーが定着ローラに付着したままであると、定着ローラの耐用期間が短くなるという不都合があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で、熱せられる回転部材に付着した残留トナーが除去される定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1の発明は、記録媒体上に担持されたトナー像を加熱部材及び加圧部材により加熱及び加圧して記録媒体上に定着する定着装置において、前記加熱部材の熱により熱せられる回転部材と、前記回転部材の表面に圧接するニップ部にて前記回転部材の表面に付着したトナーを引っ掻き該トナーを前記回転部材の表面に散乱させる撹乱部材とを備え、前記撹乱部材は、前記回転部材の回転方向に対して傾斜して形成された複数の突条部と、前記複数の突条部の間に設けられる溝部とを有し、前記各突条部は、前記ニップ部の領域で前記回転部材の回転方向において、少なくとも一部が隣接する突条部に対向するように配置されることを特徴としている。
【0011】
また、第2の発明では、上記の定着装置において、前記突条部と溝部は弾性材で形成されることを特徴としている。
【0012】
また、第3の発明では、上記の定着装置において、前記突条部と溝部はフッ素樹脂チューブで形成され、前記回転部材は該表面をフッ素樹脂コートにて被覆されてなることを特徴としている。
【0013】
また、第4の発明では、上記の定着装置において、前記回転部材は、前記加熱部材に圧接される加圧部材であることを特徴としている。
【0014】
また、第5の発明では、上記の定着装置において、前記回転部材は、前記加圧部材に接触して前記加圧部材の熱を放散させる均熱ローラであることを特徴としている。
【0015】
また、第6の発明では、上記の構成の定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、トナー像が担持された記録媒体が加熱及び加圧され、トナー像が記録媒体に定着され、記録媒体に定着しきれなかったトナーが回転部材の表面に残留するが、回転部材が回転すると、撹乱部材は、突条部にて回転部材の表面に付着した残留トナーを引っ掻き、溝部の傾斜に沿って引っ掻いたトナーを回転部材の表面に散乱させる。このとき、各突条部は、ニップ部の領域で回転部材の回転方向において、少なくとも一部が隣接する突条部に対向するように配置されるために、ニップ部の全領域においてトナーが引っ掻かれ、散乱し、トナーが塊となるおそれがない。そして、散乱したトナーは、回転部材の表面から、例えば定着処理される記録媒体の裏面に付着することが可能となる。従って、所定の突条部と溝部とを形成した撹乱部材を設けるという簡単な構成にて、熱せられる回転部材に付着したトナーを除去することができる。
【0017】
また、第2の発明によれば、弾性材で形成される突条部は、回転部材の表面に沿って確実に圧接するので、回転部材が回転すると、回転部材の表面に付着したトナーは突条部にて良好に引っ掻かれ、引っ掻かれたトナーは溝部の傾斜に沿って回転部材の表面に良好に散乱する。
【0018】
また、第3の発明によれば、撹乱部材の突条部と溝部はフッ素樹脂チューブからなり、回転部材は該表面をフッ素樹脂コートにて被覆されてなることで、撹乱部材の突条部と溝部は回転部材の表面よりトナーの付着力が小さくなり、突条部にて回転部材の表面から引っ掻いたトナーは、突条部と溝部に付着し難く、回転部材の表面に散乱し易くなる。
【0019】
また、第4の発明によれば、加圧部材が回転すると、加圧部材表面に付着した残留トナーが撹乱部材にて引っ掻かれ、加圧部材の表面に散乱し、記録媒体が定着処理されるときに、散乱したトナーが加圧部材の表面から該記録媒体の裏面に転移し付着する。従って、記録媒体の表面(印刷面)が汚染されることがない。
【0020】
また、第5の発明によれば、均熱ローラが回転すると、均熱ローラ表面に付着した残留トナーが撹乱部材にて引っ掻かれ、均熱ローラの表面に散乱し、散乱したトナーが均熱ローラの表面から加圧部材の表面に転移する。記録媒体が定着処理されるときに、散乱したトナーが加圧部材の表面から該記録媒体の裏面に転移し付着する。従って、記録媒体の表面(印刷面)が汚染されることがない。
【0021】
また、第6の発明によれば、簡単な構成で、熱せられる回転部材に付着した残留トナーが除去される定着装置を備える画像形成装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図
【図2】第1実施形態に係る定着装置の概略構成を示す図
【図3】第1実施形態に係る撹乱部材の概略構成を示す図
【図4】第2実施形態に係る撹乱部材の概略構成を示す図
【図5】第3実施形態に係る定着装置の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、その下部に配設された給紙部2と、この給紙部2の側方に配設された用紙搬送部3と、この用紙搬送部3の上方に配設された画像形成部4と、この画像形成部4よりも排出側に配設された定着装置5と、画像形成部4及び定着装置5の上方に配設された画像読取部6とを備えている。
【0025】
給紙部2は、記録媒体である用紙9を収容する複数の給紙カセット7を備えており、給紙ローラ8の回転により、複数の給紙カセット7のうち選択された給紙カセット7から用紙9を1枚ずつ用紙搬送部3に送り出す。
【0026】
用紙搬送部3に送られた用紙9は、用紙搬送経路10を経由して画像形成部4に向けて搬送される。画像形成部4は、電子写真プロセスによって、用紙9にトナー像を形成するものであり、図1の矢印方向に回転可能である感光体11と、この感光体11の周囲にその回転方向に沿って、帯電部12、露光部13、現像器14、転写部15、クリーニング部16、及び除電部17を備えている。
【0027】
帯電部12は、高電圧を印加される帯電ワイヤを備えており、この帯電ワイヤからのコロナ放電によって感光体11表面に所定電位を与えると、感光体11表面が一様に帯電させられる。そして、画像読取部6によって読み取られた原稿の画像データに基づく光が、露光部13により感光体11に照射されると、感光体11の表面電位が選択的に減衰され、感光体11表面に静電潜像が形成される。
【0028】
次いで、現像器14が感光体11表面の静電潜像を現像し、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像が転写部15によって感光体11と転写部15との間に供給された用紙9に転写される。
【0029】
トナー像が転写された用紙9は、画像形成部4の用紙搬送方向の下流側に配置された定着装置5に向けて搬送される。定着装置5では、定着ローラ18及び加圧ローラ19によって、用紙9が加熱加圧され、用紙9上にトナー像が溶融定着される。次いで、トナー像が定着された用紙9は、排出ローラ対20によって排出トレイ21上に排出される。
【0030】
転写部15による転写後、感光体11表面に残留しているトナーは、クリーニング部16により除去され、また感光体11表面の残留電荷は除電部17により除去される。そして、感光体11は帯電部12によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0031】
図2は、上述の画像形成装置1に用いられる定着装置5の概略の構成を示す図である。
【0032】
定着装置5は、ローラ定着方式であり、加熱部材である定着ローラ18と、加圧部材である回転部材である加圧ローラ19と、熱源であるヒータ43と、分離爪51と、撹乱部材61と、モータと減速ギアを有する駆動源42とを備える。定着ローラ18及び加圧ローラ19は定着装置5の筐体(図略)の長手方向に回転可能に軸支され、駆動源42と撹乱部材61は筐体(図略)に固定保持される。
【0033】
定着ローラ18は、熱伝導性に優れたアルミや鉄等の金属からなる円筒形状の芯金上に、フッ素樹脂のコーティングやチューブを被覆したものが用いられる。定着ローラ18の芯金内部にハロゲンランプやキセノンランプ等のヒータ43が設けられている。
【0034】
加圧ローラ19は、合成樹脂、金属その他材料から構成される円筒形状の基材上にシリコンゴム等の弾性層が形成され、この弾性層の表面をテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂コートにて被覆したものが用いられる。また、加圧ローラ19は定着ローラ18に所定の圧力で圧接されて、加圧ローラ19が回転駆動すると、定着ローラ18は従動回転する。
【0035】
駆動源42は、加圧ローラ19にギア接続され、ギアを介してモータからの駆動力を加圧ローラ19に伝達する。モータが回転駆動すると、加圧ローラ19が矢印方向に回転し、加圧ローラ19の回転により、加圧ローラ19に圧接する定着ローラ18が矢印方向に回転する。尚、駆動源42が加圧ローラ19にギア接続する構成に替えて、駆動源42が定着ローラ18に接続され、定着ローラ18の回転により加圧ローラ19を従動回転させる構成にしてもよい。
【0036】
定着ローラ18と加圧ローラ19とが互いに逆回転しながら当接する部分には、定着ニップ部Nが形成される。用紙9が搬送ガイド40に案内されて、この定着ニップ部Nに搬送され、定着ニップ部Nにおいて、定着ローラ18と加圧ローラ19によって加熱及び加圧されることにより、用紙9上の粉体状態のトナーが加圧溶融して定着される。
【0037】
分離爪51は、定着処理後の用紙9を定着ローラ18の表面から分離するものであり、定着ニップ部Nに対して定着ローラ18の回転方向の下流側に配設され、その先端部が定着ローラ18の表面に当接あるいは近接して配置される。また、分離爪51は定着ローラ18の軸方向に複数個並べて設けられる。
【0038】
撹乱部材61は、回転部材である加圧ローラ19に所定の圧力で圧接する部分にニップ部NCを形成し、ニップ部NCにおいて加圧ローラ19の表面に付着したトナーを引っ掻き、散乱させるものである。通常、加熱された定着ローラ18の熱は、加圧ローラ19の表面にも伝わり、加圧ローラ19の表面が昇温する。加圧ローラ19の表面には、用紙9に定着しきれなかったトナーが残留し、昇温している加圧ローラ19表面に付着する。付着したトナーの表層には、トナーに含有されるワックスが露出し、ワックスは離形性に優れているために、加圧ローラ19の表面に別のローラや用紙9が接触しても、付着したトナーは別のローラや用紙9に転移しない。そこで、上記のように、加圧ローラ19の表面に付着したトナー、つまりワックスが露出したトナー表層を撹乱部材61にて引っ掻くことで、トナー表層の離形性を低下させ、加圧ローラ19表面に付着したトナーを別のローラや用紙9に転移し易くしている。
【0039】
撹乱部材61の詳しい構成を図3に示す。図3は撹乱部材の概略構成を示す平面図(図3(a))と、断面した側面図(図3(b))である。図3(a)において、X方向は、撹乱部材61に圧接する加圧ローラ19の軸方向(長手方向)に対応している。一方、Y方向は加圧ローラ19の回転方向に対応し、更に、Y方向のY1が回転方向の上流側、またY方向のY2が回転方向の下流側に対応する。
【0040】
撹乱部材61は、合成樹脂、金属その他材料からなる剛体にて構成される矩形板状の基材65と、その基材65上に形成される弾性層64とを有する。弾性層64は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂チューブからなり、基材65の略半分の厚みを有し、基材65上に接着剤にて固着される。尚、弾性層64は基材65と一体成形にて取り付けてもよい。また、撹乱部材61は平板形状に替えて、加圧ローラ19の外周に沿う円弧板形状として、ニップ部NCを大きくとるようにしてもよい。
【0041】
また、撹乱部材61は、X方向(長手方向)に加圧ローラ19(図2参照)の軸方向と同等以上の長さを有し、また、Y方向(回転方向)の上側(下流側)にてニップ部NCを形成している。このニップ部NCは、前述のように、撹乱部材61と加圧ローラ19との圧接部にて形成され、図3(a)に示す破線の領域にある。尚、ニップ部NCは、撹乱部材61のX方向の両端部まで延びるように形成してもよく、また、Y方向では撹乱部材61の中央部または下側に形成してもよい。
【0042】
撹乱部材61の弾性層64は複数の突条部62m、62n、62p、62q等と、複数の溝部63m、63n、63p、63q等とを有する。尚、突条部及び溝部はX方向に連続して配列されているが、図3(a)、図3(b)では突条部及び溝部の一部を省略して示している。また、以下の説明では、突条部62m、62nと溝部63m、63nの構成作用について説明するが、他の突条部及び溝部の構成作用は突条部62m、62nと溝部63m、63nと同様であり、説明を省略し、また突条部及び溝部のm、nの符号を省略し、必要な場合のみ符号を付すようにする。
【0043】
複数の突条部62は、一方が直角で他方が45°に傾斜した台形状の側面断面(図3(b)参照)をなし、回転方向(Y方向)に対する傾斜角Aが45°にて互いに平行に配置される。加圧ローラ19(図2参照)が回転すると、突条部62は、加圧ローラ19の表面に圧接しているので、加圧ローラ19の表面に強く擦れ、ニップ部NCの領域内で加圧ローラ19表面に付着したトナーを引っ掻くことになる。このとき、各突条部62は、45°に傾斜した突条部62をX方向に投影した範囲内のトナーを引っ掻くことなる。
【0044】
複数の溝部63は、隣接する突条部62の間に直角三角形状の側面断面((図3(b)参照)の空間を有し、回転方向(Y方向)に対する傾斜角Aが45°にて互いに平行に配置される。加圧ローラ19が回転すると、溝部63は、突条部62にて引っ掻かれたトナーをニップ部NCの領域内でX方向及びY方向に移動(散乱)させる。このとき、各溝部63は、45°に傾斜した溝をX方向に投影した範囲内のトナーを移動(散乱)させる。
【0045】
突条部62mと突条部62nが隣接し、二つの突条部62m、62nの間には溝部63mが設けられる。突条部62mの上流端62maは、破線で囲むニップ部NCの領域内の上流側Y1に位置し、Y方向(回転方向)において、隣接する突条部62nの稜線62nbに対向する位置に配置される。尚、突条部62mの下流端をY方向(回転方向)において、隣接する突条部62nの稜線62nbに対向する位置に配置してもよい。つまり、突条部62mは、ニップ部NCの領域でY方向(回転方向)において、少なくとも一部が突条部62nに対向するように配設されることになる。
【0046】
上記のように隣接する突条部62m、62nを配設することで、加圧ローラ19がY方向に回転したときに、ニップ部NCの領域内において、突条部62mは、傾斜した突条部62mをX方向に投影した範囲内でトナーを引っ掻き、また、突条部62nは、傾斜した突条部62nをX方向に投影した範囲内でトナーを引っ掻くために、夫々の投影した範囲はX方向に重なり、ニップ部NCのX方向に引っ掻き残しが発生しない。同様に、加圧ローラ19がY方向に回転したときに、ニップ部NCの領域内において、溝部63mは、傾斜した溝部63mをX方向に投影した範囲内でトナーを散乱し、また、溝部63nは、傾斜した溝部63nをX方向に投影した範囲内でトナーを散乱させるために、夫々の投影した範囲はX方向に重なり、ニップ部NCのX方向に散乱のやり残しが発生しない。
【0047】
上記実施形態では、突条部62及び溝部63の各傾斜角Aが45°である場合を示したが、傾斜角Aは45°に限らずに、傾斜角Aと突条部62のピッチ等は下記の構成であればよい。即ち、ニップ部NCの回転方向(Y方向)の長さをNCy、突条部62(または溝部63)の長手方向(X方向)ピッチをPx、傾斜角をAで表すときに、下記の条件式1を満たすと、ニップ部NCの全ての領域において、加圧ローラ19表面に付着したトナーを撹乱部材61にて引っ掻き、散乱させることができる。
tanA≧Px/NCy ・・・式1
【0048】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る撹乱部材の概略構成を示す平面図(図4(a))と、断面した側面図(図4(b))である。第2実施形態は、撹乱部材の突条部及び溝部の形状が第1実施形態に対して異なり、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0049】
撹乱部材61は、合成樹脂、金属その他材料からなる剛体にて構成される矩形板状の基材65と、その基材65上に形成される弾性層64とを有する。弾性層64はテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂チューブからなり、基材65の略半分の厚みを有し、基材65上に接着剤にて固着される。
【0050】
弾性層64は複数の突条部62m、62n、62p、62q等と、複数の溝部63m、63n、63p、63q等とを有する。尚、突条部及び溝部はX方向に連続して配列されているが、図4(a)、図4(b)では突条部及び溝部の一部を省略して示している。
【0051】
複数の突条部62は、直角三角形状の側面断面(図4(b)参照)をなし、回転方向(Y方向)に対する傾斜角Aが45°にて互いに平行に配置される。加圧ローラ19が回転すると、突条部62は、加圧ローラ19(図2参照)の表面に圧接しているので、加圧ローラ19の表面に強く擦れ、ニップ部NCの領域内で加圧ローラ19表面に付着したトナーを引っ掻くことになる。このとき、各突条部62は、45°に傾斜した突条部62をX方向に投影した範囲内のトナーを引っ掻くことなる。
【0052】
複数の溝部63は、隣接する突条部62の間に直角三角形状の側面断面((図4(b)参照)の空間を有し、回転方向(Y方向)に対する傾斜角Aが45°にて互いに平行に配置される。加圧ローラ19が回転すると、溝部63は、突条部62にて引っ掻かれたトナーをニップ部NCの領域内でX方向及びY方向に移動(散乱)させる。このとき、各溝部63は、45°に傾斜した溝をX方向に投影した範囲内のトナーを移動(散乱)させる。
【0053】
突条部62mと突条部62nが隣接し、二つの突条部62m、62nの間には溝部63mが設けられる。突条部62mの上流端62maは、破線で囲むニップ部NCの領域内の上流側Y1に位置し、Y方向(回転方向)において、隣接する突条部62nの稜線62nbに対向する位置に配設される。尚、突条部62mの下流端をY方向(回転方向)において、隣接する突条部62nの稜線62nbに対向する位置に配置してもよい。つまり、突条部62mは、ニップ部NCの領域でY方向(回転方向)において、少なくとも一部が突条部62nに対向するように配設されることになる。
【0054】
上記のように隣接する突条部62m、62nを配設することで、加圧ローラ19がY方向に回転したときに、ニップ部NCの領域内において、突条部62mは、傾斜した突条部62mをX方向に投影した範囲内でトナーを引っ掻き、また、突条部62nは、傾斜した突条部62nをX方向に投影した範囲内でトナーを引っ掻くために、夫々の投影した範囲はX方向に重なり、ニップ部NCのX方向に引っ掻き残しが発生しない。同様に、加圧ローラ19がY方向に回転したときに、ニップ部NCの領域内において、溝部63mは、傾斜した溝部63mをX方向に投影した範囲内でトナーを散乱し、また、溝部63nは、傾斜した溝部63nをX方向に投影した範囲内でトナーを散乱させるために、夫々の投影した範囲はX方向に重なり、ニップ部NCのX方向に散乱のやり残しが発生しない。
【0055】
また、前記の条件式1を満たすことによって、傾斜角Aに係わらず、ニップ部NCの全ての領域において、加圧ローラ19表面に付着したトナーを撹乱部材61にて引っ掻き、散乱させることになる。
【0056】
上記第1及び第2実施形態によれば、定着装置5は、用紙上に担持されたトナー像を定着ローラ18及び加圧ローラ19により加熱及び加圧して用紙9上に定着し、加圧ローラ19の表面に圧接するニップ部NCにて、加圧ローラ19の表面に付着したトナーを引っ掻き該トナーを加圧ローラ19の表面に散乱させる撹乱部材61を備える。撹乱部材61は、加圧ローラ19の回転方向(Y方向)に対して傾斜して形成される複数の突条部62とこの複数の突条部62の間に設けられる溝部63とを有する。各突条部62は、ニップ部NCの領域で回転方向(Y方向)において、少なくとも一部が隣接する突条部62に対向するように配置される。
【0057】
この構成によると、トナー像が担持された用紙9が加熱及び加圧され、トナー像が用紙9に定着され、用紙9に定着しきれなかったトナーが加圧ローラ19の表面に残留するが、加圧ローラ19が回転すると、撹乱部材61は、突条部62にて加圧ローラ19の表面に付着した残留トナーを引っ掻き、溝部63の傾斜に沿って引っ掻いたトナーを加圧ローラ19の表面に散乱させる。このとき、突条部62mは、ニップ部NCの領域で回転方向Yにおいて、少なくとも一部が隣接する突条部62nに対向するように配置されるために、ニップ部NCの全領域においてトナーが引っ掻かれ、散乱し、トナーが塊となるおそれがない。そして、用紙9が定着処理されるときに、散乱したトナーが加圧ローラ19の表面から該用紙9の裏面に転移し付着する。従って、所定の突条部62と溝部63とを形成した撹乱部材61を設けるという簡単な構成にて、熱せられる加圧ローラ19に付着したトナーを除去することができ、また、用紙の表面(印刷面)が汚染されることがない。
【0058】
また、上記第1及び第2実施形態によれば、突条部62と溝部63は弾性材で形成されることで、突条部62は、加圧ローラ19の表面に沿って確実に圧接するので、加圧ローラ19が回転すると、加圧ローラ19の表面に付着したトナーは突条部62にて良好に引っ掻かれ、引っ掻かれたトナーは溝部63の傾斜に沿って加圧ローラ19の表面に良好に散乱する。
【0059】
また、上記第1及び第2実施形態によれば、突条部62と溝部63はフッ素樹脂チューブで形成され、加圧ローラ19は該表面をフッ素樹脂コートにて被覆されてなる。フッ素樹脂チューブはフッ素樹脂コートよりトナーに対する接触角が大きいので、突条部62と溝部63は加圧ローラ19の表面よりトナーの付着力が小さくなり、突条部62にて加圧ローラ19の表面から引っ掻いたトナーは、突条部62と溝部63に付着し難く、加圧ローラ19の表面に散乱し易くなる。
【0060】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る定着装置の概略構成を示す図である。第3実施形態では均熱ローラが設けられ、撹乱部材が均熱ローラに圧接している。
【0061】
定着装置5は複数の用紙サイズに対して定着処理を行なうために、定着ローラ18及び加圧ローラ19は、最大幅を有する用紙のサイズに適応した軸方向幅を備えている。小さいサイズの用紙を定着処理する場合には、定着ローラ18及び加圧ローラ19における用紙の通紙領域では定着処理のために熱消費が行われる一方、非通紙領域においては熱消費がなされないため、通紙領域と非通紙領域との間で温度差が拡大することとなる。
【0062】
均熱ローラ53は、上記の通紙領域と非通紙領域との温度差を解消するために、加圧ローラ19の熱を放散させるものであり、加圧ローラ19に対して接触回転し、アルミニウムや銅等の熱伝導性の良好な材質で形成される。また、均熱ローラ53の表面にはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂コートが被覆される。尚、均熱ローラ53には、加圧ローラ19の熱を放散させるときに、用紙9に定着しきれなかった残留トナーが加圧ローラ19を介して付着することになる。
【0063】
撹乱部材61は、回転部材である均熱ローラ53の軸方向と同等以上の長さを有し、均熱ローラ53に所定の圧力で圧接する部分にニップ部NCを形成している。そして、撹乱部材61は、ニップ部NCにて均熱ローラ53の表面に付着したトナーを引っ掻き、散乱させる。尚、撹乱部材61の材料や突条部及び溝部等の構成は、第1または第2実施形態と同じある。
【0064】
上記第3実施形態によれば、加圧ローラ19に接触し加圧ローラ19の熱を放散させる均熱ローラ53と、均熱ローラ53の表面に付着したトナーを引っ掻き該トナーを均熱ローラ53の表面に散乱させる撹乱部材61とを備える。
【0065】
この構成によると、均熱ローラ53が回転すると、均熱ローラ53表面に付着した残留トナーが撹乱部材61にて引っ掻かれ、均熱ローラ53の表面に散乱し、散乱したトナーが均熱ローラ53の表面から加圧ローラ19の表面に転移する。用紙9が定着処理されるときに、散乱したトナーが加圧ローラ19の表面から該用紙9の裏面に転移し付着する。従って、均熱ローラ53に付着したトナーを除去することができ、また、用紙9の表面(印刷面)が汚染されることがない。
【0066】
尚、上記実施形態では、ローラ定着方式を用いた定着装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、ベルト定着方式、更に、電磁誘導加熱方式の熱源を用いた定着装置に適用しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0067】
また、上記実施形態では、撹乱部材61の突条部62は台形状または三角形状の側面断面をなす構成したが、本発明はこれに限らず、突条部62は矩形状の側面断面をなす構成してもよい。また、溝部63も矩形状の側面断面をなすようにしてもよい。また、突条部62及び溝部63は第1及び第2実施形態に対して逆方向に傾斜するように構成してもよい。更に、各突条部62は、ニップ部NCの領域で回転方向(Y方向)において、少なくとも一部が隣接する突条部62に対向するように配置されるのであれば、突条部62を互いに平行に配置しなくともよく、また、溝部63を互いに平行に配置しなくともよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、熱せられる回転部材に残留するトナーのクリーニングが可能な定着装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成装置
5 定着装置
18 定着ローラ(加熱部材)
19 加圧ローラ(加圧部材、回転部材)
53 均熱ローラ(回転部材)
61 撹乱部材
62m、62n、62p、62q 突条部
62ma 上流端
62nb 稜線
63m、63n、63p、63q 溝部
64 弾性層
65 基材
A 傾斜角
N 定着ニップ部
NC ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に担持されたトナー像を加熱部材及び加圧部材により加熱及び加圧して記録媒体上に定着する定着装置において、
前記加熱部材の熱により熱せられる回転部材と、前記回転部材の表面に圧接するニップ部にて前記回転部材の表面に付着したトナーを引っ掻き該トナーを前記回転部材の表面に散乱させる撹乱部材とを備え、
前記撹乱部材は、前記回転部材の回転方向に対して傾斜して形成された複数の突条部と、前記複数の突条部の間に設けられる溝部とを有し、
前記各突条部は、前記ニップ部の領域で前記回転部材の回転方向において、少なくとも一部が隣接する突条部に対向するように配置されることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記突条部と溝部は弾性材で形成されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記突条部と溝部はフッ素樹脂チューブで形成され、前記回転部材は該表面をフッ素樹脂コートにて被覆されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記加熱部材に圧接される加圧部材であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記加圧部材に接触して前記加圧部材の熱を放散させる均熱ローラであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate