説明

定着装置

【課題】多メディアを高品質で高速定着するために紙搬送速度が高くなると、ローラ表層に発生する局所的な静電気の強帯電により、定着直前の記録材上のトナーに静電力による外乱を与えてしまい、ライン状の画像欠陥などの品質低下を招いてしまう。
【解決手段】最外層に導電性の離型層(剥離層)46bを持つ除電ローラ46を加圧ローラ32に圧接させる。除電ローラに除電針50を当接させ、除電針をアースに落とす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式などの画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機能機等)に搭載され、記録材(記録紙:記録媒体)上に担持された未定着の現像剤画像を加熱して固着画像として定着する画像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置における画像定着装置としては、加熱ローラ(加熱回転体)と加圧ローラ(加圧回転体)を用いた熱ローラ対方式の装置が一般的に用いられる。これは加熱ローラと加圧ローラとの圧接部であるニップ部で未定着の現像剤画像であるトナー画像を担持した記録材を挟持搬送して加熱加圧することで固着画像として定着させるものである。
【0003】
近年は多種類のメディア(記録材)に対する幅広い定着性を達成するために、加熱ローラはアルミニウムや鉄の芯金にシリコーンゴムやフッ素ゴムからなる弾性層と表層にフッ素樹脂チューブやコーティングからなる離型層を備えている。
【0004】
また、加熱ローラ及び加圧ローラの圧接圧力を任意の圧力に自動的に変更することで、加熱ローラ及び加圧ローラにより形成されるニップ部幅を可変とする。これによって、メディアに与える熱量及び圧力を制御することによってメディア毎に適切な定着条件を設定し、高品質なトナー定着を提供している。
【0005】
しかし、近年では高品質な定着性に合わせ、高生産性を要求され、かつ、対応するメディアの種類も増大の一途をたどっている。高生産性を達成するために記録材の搬送速度が増大し、それに伴って加熱ローラ及び加圧ローラにより形成されるニップ部幅を大きくする必要がある。大きなニップ部幅を形成するためには加熱ローラ及び加圧ローラの圧接力を増大させる必要がある。
【0006】
また、ローラ表層と記録材が接触し、圧力をかけた後に剥離させる場合、圧力が高く、剥離速度が速いほどローラ表層に大きな静電気が発生する。すなわち、高生産性を達成するために圧接力を高め、搬送速度が速い状態においてはローラ表層に大きな静電気が発生することになり、記録材の後端がローラから剥離する際に、その剥離した位置においてローラ表層に過大な帯電状態が発生してしまう。
【0007】
上記のような過大な帯電状態がローラ表層に発生した場合には、表面に未定着のトナー画像を形成され、定着装置に搬送されてきた記録材が加熱ローラ及び加圧ローラにより形成されるニップ部に侵入する際に、次のような現象が発生する場合がある。即ち、その記録材上に静電付着しているトナーがローラ表層の過大な帯電により外力を受け、トナー位置がずれてしまうという現象が発生する。この現象により、特に中間濃度の画像において先行した記録材の後端に位置するローラ表面位置でライン状の画像乱れを発生するという問題がある。
【0008】
上記のような問題を解決するために、本出願人は先に特許文献1のような定着装置を提案している。この定着装置は、加圧ローラの近傍に、加圧ローラの帯電された表層を除電する目的で除電針を所定の隙間をおいて設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−295427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来技術を更に発展させたものである。即ち、近年、画像形成装置は特に商業印刷の分野において、多種のメディアについて高品位で画像定着する需要が高まってきている。定着品位を向上させるためには記録材の剛度や種類によって、加熱ローラ及び加圧ローラ温度や、加熱ローラ及び加圧ローラにより形成されるニップ部の圧接圧力が適切に設定される必要がある。しかしながら、圧接圧力を変化させるということは加圧ローラの位置が変化するということであり、また、加圧ローラ温度を変化させるということは加圧ローラの膨張量が変化することでローラ表層外径が変化するということになる。
【0011】
ローラ位置やローラ外径が変化することで、除電針との隙間が変化し、そのときのローラの状態により除電手段による除電能力が安定して最大の効果を発揮することが出来ないので、この点の更なる改善が望まれている。また、位置が変化するローラ表層に対して除電効果を出すために調整機構を設ける必要があり、そのため組立工数の増大や、装置の複雑化、コストアップなどを招くことにもなるので、この点の更なる改善が望まれている。本発明は上記の要望に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る定着装置の代表的な構成は、表面に非導電性層が設けられており、未定着の現像剤画像を担持した記録材の画像担持面に接触して加熱し未定着の現像剤画像を固着画像として定着する回転可能な加熱回転体と、表面に非導電性層が設けられており、前記加熱回転体を加圧し前記記録材を挟持搬送するニップ部を形成する回転可能な加圧回転体と、表面に導電性層が設けられており、前記加熱回転体と前記加圧回転体との少なくとも1つに圧接して配設されて当該加熱回転体もしくは加圧回転体の表層の電荷を除電する回転可能な除電回転体と、前記除電回転体に接触して配設されており、かつ接地されている除電手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱回転体もしくは加圧回転体の位置や、温度による外径変化が発生しても、除電回転体が加熱回転体もしくは加圧回転体との間に無段階の安定した隙間を生成する。そして、加熱回転体もしくは加圧回転体の帯電量に応じて適正な隙間部分で加熱回転体もしくは加圧回転体の表面の電荷を除電回転体の表面に移動し、かつ、除電回転体に直接位置決めされた除電針によってアースに落とす。
【0014】
これにより、加熱回転体もしくは加圧回転体の表層の除電を行うことが出来、静電付着した記録材上の未定着の現像剤画像を加熱回転体もしくは加圧回転体の表層の過大な帯電により乱すことなく、高品位な定着を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成模式図である。
【図2】定着装置の拡大横断面模式図である。
【図3】除電ユニットの一端側の拡大斜視図である。
【図4】除電ユニットの除電プロセスの説明図である。
【図5】実施例5における定着装置の概略構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
(1)画像形成装置
図1は本発明に従う画像加熱装置を定着装置13として搭載した画像形成装置の一例の概略構成図である。この画像形成装置は電子写真方式を用いたフルカラーレーザービームプリンタであり、パソコン・イメージリーダー等のホスト装置(不図示)からコントローラ(制御手段:不図示)に入力する電気的画像情報に対応した画像を記録材Sに形成して出力する。
【0018】
装置内には、第1から第4の4つの画像形成部P(Pa,Pb,Pc,Pd)が併設され、各画像形成部は異なった色のトナー画像を、潜像形成、現像、転写の電子写真プロセスを経て記録材Sに形成する。
【0019】
各画像形成部Pは、それぞれ専用の像担持体、本例では電子写真感光ドラム1(1a,1b,1c,1d:以下、ドラムと記す)を具備している。ドラム1は矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動されて、各ドラム1上に各色のトナー画像が形成される。各ドラム1に隣接して中間転写体である中間転写ベルト(以下、ベルトと記す)8が設置されている。各ドラム1上に形成された各色のトナー画像がベルト8上に重畳されて1次転写され、更に2次転写部で記録材S上に転写される。
【0020】
トナー画像が転写された記録材Sは定着装置13に導入されて加熱及び加圧によりトナー画像の定着処理を受けた後、画像形成物(フルカラープリント)として装置外の排出トレイ17上に排出される。
【0021】
各ドラム1の外周部には、それぞれドラム帯電器2(2a,2b,2c,2d)、現像器4(4a,4b,4c,4d)、1次転写帯電器5(5a,5b,5c,5d)及びドラムクリーナー6(6a,6b,6c,6d)が設けられている。ドラム帯電器2はドラム1の周面を所定の極性・電位に一様に帯電する。
【0022】
各ドラム1の上方部にはレーザースキャナー3(3a,3b,3c,3d)が設置されている。各レーザースキャナー3は、図には省略したけれども、光源装置、ポリゴンミラー、fθレンズ等を有している。光源装置から発せられたレーザー光をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズにより、ドラム1の母線上に集光して露光する。ドラム帯電器2で帯電されたドラム1にレーザー光による走査露光がなされることにより、ドラム1上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0023】
現像器4a,4b,4c,4dには、現像剤としてそれぞれイエロー,マゼンタ,シアン及びブラックの各色のトナーが所定量充填されている。各現像器4には、補給装置7(7a,7b,7c,7d)よりトナーが適宜補給される。各現像器4は、それぞれ対応する感光ドラム1上の潜像を現像して、イエロートナー画像,マゼンタトナー画像,シアントナー画像及びブラックトナー画像として可視化する。ベルト8は、駆動ローラ9、2次転写対向ローラ10、テンションローラ11に懸回張設されていて、矢示の時計方向に各ドラム1と同じ周速度をもって回転駆動される。
【0024】
第1の画像形成部Paのドラム1a上に形成担持された第1色のイエロートナー画像は、ドラム1aとベルト8とのニップ部(1次転写部)を通過する過程でベルト8に中間転写される。即ち、1次転写帯電器5aに印加される1次転写バイアスにより形成される電界とニップ圧力により、ベルト8の外周面に中間転写されていく。
【0025】
以下、同様にして、第2の画像形成部Pbの第2色のマゼンタトナー画像、第3の画像形成部Pcの第3色のシアントナー画像、第4の画像形成部Pdの第4色のブラックトナー画像が順次にベルト8上に重畳転写される。これによりベルト8上には装置に入力したカラー画像情報に対応した未定着の合成カラートナー画像が形成される。ベルト8に対するトナー画像の1次転写後のドラム1の表面はドラムクリーナー6により1次転写残トナーの除去(クリーニング)を受けて、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。
【0026】
2次転写対向ローラ10にはベルト8を挟ませて2次転写ローラ12を圧接させてある。2次転写ローラ12は2次転写対向ローラ10に対応し平行に軸受させてベルト8に接触させて配設されている。ベルト8と2次転写ローラ12とのニップ部が2次転写部である。2次転写ローラ12には、所定の制御タイミングで所定の2次転写バイアスが印加される。
【0027】
ベルト8上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材Sへの転写は、2次転写部に記録材Sが導入されてなされる。即ち、第1又は第2の給紙カセット19a又は19bから記録材Sが給送機構の動作により所定の制御タイミングにて1枚分離給送される。その記録材Sがシートパス20で搬送されて、レジストローラ21、転写前ガイド22を通過して2次転写部に対して所定の制御タイミングで給送され、同時に2次転写ローラ12に2次転写バイアスが印加される。この2次転写バイアスによりベルト8から記録材Sへ合成カラートナー画像が一括して2次転写される。
【0028】
ベルト8上に残留した2次転写残トナー及びその他の異物は、ベルト8の表面に当接させたベルトクリーナー18のクリーニングウエブ(不織布)で拭い取られる。
【0029】
2次転写部で未定着の合成カラートナー画像の2次転写を受けた記録材Sはベルト8から分離されて定着装置13に導入され、加熱及び加圧によりトナー画像の定着処理を受ける。そして、記録材Sは定着装置13を出て、搬送ローラ対14で搬送され、フラッパー15の上側を通り、排出ローラ16により装置外の排出トレイ17上に排出される(片面画像形成モードの場合)。
【0030】
両面画像形成モードである場合は、定着装置13を出た片面画像形成済み(1面目画像形成済み)の記録材Sが、搬送ローラ対14で搬送され、姿勢切り換えされたフラッパー15により反転パス23に導かれる。そして、記録材Sは反転ローラ(スイッチバックローラ)24により反転されて両面パス25へと導かれ、再びシートパス20、レジストローラ21、転写前ガイド22の経路で2次転写部に導入される。これにより、記録材Sは、2面目に対するトナー画像の2次転を受ける。
【0031】
そして、記録材Sはベルト8から分離され、再度、定着装置13に導入されて2面目に対するトナー画像の定着処理を受ける。フラッパー15は記録材が両面画像形成中に元の姿勢に戻し切り換えされている。これにより、定着装置13を出た両面画像形成済みの記録材Sが、搬送ローラ対14で搬送され、フラッパー15の上側を通り、排出ローラ16により装置外の排出トレイ17上に排出される。
【0032】
(2)定着装置13
図2は定着装置13の拡大横断面模式図である。この定着装置13は熱ローラ対方式の装置である。定着装置13は、未定着の現像剤画像(トナー画像)tを担持した記録材Sの画像担持面に接触して加熱し未定着の現像剤画像を固着画像として定着する回転可能な加熱回転体としての加熱ローラ(定着ローラ)31を有する。また、加熱ローラ31を加圧し記録材Sを挟持搬送するニップ部(定着ニップ部)Nを形成する回転可能な加圧回転体としての加圧ローラ32を有する。
【0033】
加圧ローラ31は、中空の芯金31aと、この芯金の外周面に形成された弾性層31bと、更にその弾性層の外周面に形成された、非導電性層である離型層(剥離層、表面層)31cと、からなる複合層ローラである。本実施例において、芯金31aはアルミニウムのパイプ、弾性層31bはシリコーンゴム層、離型層31cは非導電のフッ素樹脂チューブ(より具体的にはPFAチューブ)である。
【0034】
加熱ローラ31は芯金31aの一端側と他端側がそれぞれ定着装置筐体30の一端側と他端側の側板間にベアリング(不図示)を介して回転可能に軸受保持されて配設されている。加熱ローラ31はコントローラ(不図示)で制御される駆動源(不図示)の駆動力により矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。
【0035】
加圧ローラ32は、中空の芯金32aと、この芯金の外周面に形成された弾性層32bと、更にその弾性層の外周面に形成された、非導電性層である離型層(剥離層、表面層)32cと、からなる複合層ローラである。本実施例において、芯金32aは鉄のパイプ、弾性層32bはシリコーンゴム層、離型層32cは非導電のフッ素樹脂チューブ(より具体的にはPFAチューブ)である。
【0036】
加圧ローラ32は加熱ローラ31の下側に加熱ローラ31に並行に配列されており、芯金32aの一端側と他端側がそれぞれ定着装置筐体30の一端側と他端側の側板間にベアリング(不図示)を介して回転可能に軸受保持されて配設されている。
【0037】
加圧ローラ32の一端側と他端側のベアリングはそれぞれ加熱ローラ31に向う方向と離れる方向とにスライド移動する自由度がある。そして、それらのベアリングが加圧ユニット33の加圧力により加熱ローラ31に向う方向に加熱ローラ31の弾性層31bと加圧ローラ32の弾性層32bの弾性に抗して加圧される。これにより、加熱ローラ31の下面側に対して加圧ローラ32の上面側が圧接して該両ローラ31・32間に記録材搬送方向において所定幅のニップ部Nが形成される。
【0038】
本実施例においては、加圧ユニット33は加圧カム33aの回転角度が調整されることでコロ33bが上下動されて加熱ローラ31と加圧ローラ32により形成されるニップ部Nの圧接圧力を変更(増減変化)することができる。そして、コントローラは、定着品位を向上させるために、装置に通紙使用される記録材Sの剛度や種類によって、加圧カム33aを駆動する駆動源(不図示)を制御してニップ部Nの圧接圧力が適切に設定されるように加圧カム33aの回転角度を調整する。加圧ローラ32は加熱ローラ31に圧接している状態において加熱ローラ31の回転に従動して矢印の時計方向に回転する。
【0039】
加熱ローラ31の芯金31aの内部には加熱ローラ31を内部から加熱する加熱ヒータ31dが設けられている。また、加熱ローラ31の外側には加熱ローラ31を外側から加熱する外部加熱ユニット34が配設されている。本実施例における外部加熱ユニット34は、それぞれ加熱ローラ31の外面に対して加熱ローラ31に並行に当接して加熱ローラ31を外側から加熱する2本の第1と第2の外部加熱ローラ34a・34bを有する。この2本のローラ34a・34bはそれぞれ一端側と他端側が外部加熱ユニット34の枠体34cの一端側と他端側の側板間に回転可能に軸受保持されて配設されている。
【0040】
第1と第2の外部加熱ローラ34a・34bはそれぞれ中空の金属パイプであり、それらの内部には加熱ヒータ34d・34eが設けられている。また、外部加熱ユニット34には第1と第2の外部加熱ローラ34a・34bの外面にそれぞれ押圧された状態でクリーニングローラ34f・34gがローラ34a・34bに並行に配置されている。外部加熱ユニット34の枠体34cは加圧バネ34hにより加圧ローラ31の方向に押圧されて、第1と第2の外部加熱ローラ34a・34bが加熱ローラ31の外面に対して所定の押圧力で押し付けられている。
【0041】
第1と第2の外部加熱ローラ34a・34bは加熱ローラ31の回転に従動して回転する。クリーニングローラ34f・34gはそれぞれ外部加熱ローラ34a・34bの回転に従動して回転して外部加熱ローラ34a・34bをクリーニングする。
【0042】
加熱ローラ31は加熱ヒータ31dに対する通電により内側から加熱される。また、加熱ローラ31は外部加熱ユニット34の加熱ヒータ34d・34eへの通電により加熱される第1と第2の外部加熱ローラ34a・34bの熱により外側から加熱される。また、加圧ローラ32の芯金32aの内部には加熱ヒータ32dが設けられている。加圧ローラ32は加熱ヒータ32dに対する通電により内側から加熱される。
【0043】
コントローラは、加熱ローラ31と加圧ローラ32が回転されている状態において加熱ヒータ31d・34d・34e・32dにそれぞれ通電して加熱ローラ31と加圧ローラ32を加熱する。そして、コントローラは、定着品位を向上させるために、装置に通紙使用される記録材Sの剛度や種類によって、加熱ローラ31と加圧ローラ32の表面温度が適切な温度に温調されるように加熱ヒータ31d・34d・34e・32dに対する供給電力を調整する。
【0044】
35は加熱ローラ31の表面を清掃するクリーナユニットである。クリーニングウェッブ35aをロール巻きに保持したウェッブ繰り出し軸部35bと、ウェッブ巻取り軸部35cと、該両軸部35b・35c間のウェッブ部分を加熱ローラ31の外面に押し付ける押し付けローラ35dを有する。押し付けローラ35dで加熱ローラ31に押し付けたウェッブ部分で加熱ローラ31の表面にオフセットしたトナーが拭われて加熱ローラ面が清掃される。加熱ローラ31に押し付けられるウェッブ部分は繰り出し軸部35b側から巻取り軸部35c側にウェッブ35aが少しずつ送られることで徐々に更新される。
【0045】
ニップ部Nよりも記録材搬送方向aの上流側には入口ガイド36が配設されている。またニップ部Nよりも記録材搬送方向aの下流側には加熱ローラ分離爪37及び加圧ローラ分離爪38が配置されている。加熱ローラ分離爪37はニップ部Nを出て加熱ローラ31の表層31cに貼り付いた記録材を剥離する部材である。加圧ローラ分離爪38はニップ部Nを出て加圧ローラ32の表層32cに貼り付いた記録材を剥離する部材である。
【0046】
また、分離爪37と38からなる分離部の記録材搬送方向直後には記録材を搬送するための搬送ローラ対39が配置される。この搬送ローラ対39の記録材搬送方向下流側には搬送路40が設けられている。
【0047】
記録材Sに未定着のトナー画像tを形成する画像形成機構部側から定着装置13に搬送された記録材Sは入口ガイド36に案内されてニップ部Nに導入される。コントローラは、装置に通紙使用される記録材Sの剛度や種類によって加圧ユニット34を制御して、ニップ部Nの圧接圧力を適切な圧力に調整している。また、コントローラは、加熱ローラ31を駆動すると共に、加熱ローラ31と加圧ローラ32の表面温度を装置に通紙使用される記録材Sの剛度や種類によって適切な温度にして温調している。
【0048】
この状態において、記録材はニップNに進入して挟持搬送されることで、ニップ部Nにおける加熱と加圧により未定着のトナー画像tが記録材上に固着画像として定着される。ニップ部Nを出た記録材Sは分離爪37・38により加熱ローラ31または加圧ローラ32の表面から分離され、搬送ローラ対39により中継ぎされて搬送路40を通り定着装置13の外に送り出される。
【0049】
(3)加圧ローラ32の除電構成
加圧ローラ32の下側には加圧ローラ32の表面を除電するための除電ユニット41が配設されている。この除電ユニット41について図3と図4を参照して詳述する。図3は除電ユニット41の一端側の拡大斜視図である。他端側も一端側と対称構造である。図4は除電ユニット41の除電プロセスの説明図である。
【0050】
42は加圧ローラ32の下側において加圧ローラ32に並行に配設された金属製のステーであり、定着装置筐体30の一端側と他端側の側板間に固定して支持されている。このステー42の上側に加圧ローラ32に沿って長い板金製の除電針取り付け部材43が固定して配設されている。除電針取り付け部材43はステー42に対して電気的に導通している。除電針取り付け部材43の一端側と他端側にはそれぞれベラリング45を保持するベアリング支持部材43が上下方向にスライド移動可能に配設されている。
【0051】
そして、その一端側と他端側のベアリング支持部材43にそれぞれ保持されたベラリング45間に除電ローラ46が回転可能に軸受保持されて配設されている。除電ローラ46は加圧ローラ32に圧接して配設されて当該加圧ローラ32の表層の電荷を除電する回転可能な除電回転体である。本実施例において除電ローラ46は、アルミニウムからなる芯金46aと、その外周に設けた導電性層としての離型層(剥離層)46bを有する。離型層46bは本実施例においては、導電材を添加したフッ素樹脂チューブである。より具体的には、カーボン等の導電材を含有したPFAチューブであり、導電性を持つ。
【0052】
一端側と他端側のベアリング支持部材44の下面とステー42の上面との間にはそれぞれコイルばね(付勢手段)47が圧縮されて配設されている。これにより、一端側と他端側のベアリング支持部材44がそれぞれコイルばね47の圧縮反力にて加圧ローラ32の中心軸線にほぼ向う方向に押し上げ付勢されて、除電ローラ46が加圧ローラ32に対して全長に渡って圧接した状態にされる。除電ローラ46は加圧ローラ32の回転に従動して回転する。
【0053】
上記の構成により、加圧ローラ32の外周面に圧接される除電ローラ46は加圧ローラ32の温度や加圧状態による加圧ローラ32の外周面位置の変化に追従し、常に加圧ローラ32の外周面に除電ローラ46の外周面が圧接した状態を作り出すことができる。
【0054】
除電ローラ46の近傍には除電ローラ46の外周面にその先端が接するように除電針48が設けられている。即ち、除電針取り付け部材43には、除電ローラ46に接触して配設されており、かつ接地Gされている除電手段としての除電針48が固定して配設されている。除電針48は除電ローラ46に沿って長い部材であり、上下に重ねて折り曲げた金属板間に数多の除電針を金属板の長手に沿って配列して挟み込んだ除電針アレイ部材である。
【0055】
除電針48は除電ローラ46に並行に配列されて、除電ローラ46の位置によらず除電針先端部48aを除電ローラ46に接することが可能な位置に除電針取り付け部材44上に取り付けられている。49は除電針48の除電針取り付け部材43に対する取り付け固定ネジである。
【0056】
次に、加圧ローラ32の表層の静電気の除電プロセスにについて図4を用いて詳細に説明する。加圧ローラ32の外周面には除電ローラ46が圧接され、それぞれ矢印方向へ回転する。加圧ローラ32及び除電ローラ46の圧接ニップ部のローラ回転方向上流側には連続的に隙間が変化する領域L(楔状の空間領域)が形成される。
【0057】
そのため、加圧ローラ32の表層32cに帯電された静電気はその静電気の大きさによってそれぞれ最適な隙間部分で除電ローラ46の表層である導電性のPFAチューブによる離型層45bへ電荷eを移動させる。離型層45bへ移動した電荷eは離型層45b上を移動し、除電針48を通り、除電針取り付け部材43からステー42を介して装置本体(アースG)へ落とされる。
【0058】
即ち、加圧ローラ32の位置や、温度による外径変化が発生しても、除電ローラ46が加圧ローラ32との間に無段階の安定した隙間(楔状の空間領域L)を生成する。これにより、加圧ローラ32の帯電量に応じて適正な隙間部分で加圧ローラ表面の電荷eが除電ローラ46の表面に移動し、かつ、除電ローラ46に直接位置決めされた除電針48によってアースGに落とすことで確実なローラ表層の除電を行うことが出来る。それにより静電付着した記録材上の未定着のトナーtをローラ表層の過大な帯電により乱すことなく、高品位な定着を行うことが可能になる。
【0059】
かくして、ローラ表層に強帯電された静電気を安定して最適条件で除電することにより、ローラ表層の部分的な帯電状態を無くし、未定着のトナーtが載った記録材Sに対して静電気による外乱を与えることを無くす。これにより、トナーを転写された記録材を高品位で定着することが可能になる。
【0060】
[実施例2]
図5は本実施例2の構成略図である。本実施例は実施例1の定着装置において、更に、除電回転体である除電ローラ46の表面の付着物を除去する清掃手段50を配設したものである。本実施例において清掃手段50は除電ローラ46に圧接させて配設したクリーニングローラである。クリーニングローラ50は除電ローラ46の回転に従動して回転して除電ローラ46をクリーニングする。清掃手段50はローラ体に限られず、パッドやブラシなどの他の形態のものにすることもできる。
【0061】
除電ローラ46の表層を清掃手段50で清掃することで、除電ローラ46と加圧ローラ32の表層間の無断階に生成される隙間(楔状の空間領域L)での異物による局所的な隙間変化をなくすことが出来る。これにより、さらに安定した無段階の安定した隙間を生成することが可能になり、ひいてはさらに高品位な定着を行うことが可能になる。
【0062】
[その他の事項]
1)上記の実施例1、2においては加圧ローラ32についての除電構成を示すものであるが、加熱ローラ31についても同様な除電構成を適用する装置構成にすることもできる。また、加圧ローラ32と加熱ローラ31の両方に同様な除電構成を適用する装置構成にすることもできる。即ち、加圧ローラ32と加熱ローラ31の少なくとも1つに対して上述のような除電構成を適用する装置構成にすることができる。
【0063】
2)加熱回転体31と加圧回転体32はローラ体に限られず、エンドレスのベルト体の構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0064】
31・・加熱回転体、31c・・表面の非導電性層、32・・加圧回転体、32c・・表面の非導電性層、N・・ニップ部、S・・記録材、t・・未定着の現像剤画像、46・・除電回転体、46b・・表面に導電性層、48・・除電手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に非導電性層が設けられており、未定着の現像剤画像を担持した記録材の画像担持面に接触して加熱し未定着の現像剤画像を固着画像として定着する回転可能な加熱回転体と、
表面に非導電性層が設けられており、前記加熱回転体を加圧し前記記録材を挟持搬送するニップ部を形成する回転可能な加圧回転体と、
表面に導電性層が設けられており、前記加熱回転体と前記加圧回転体との少なくとも1つに圧接して配設されて当該加熱回転体もしくは加圧回転体の表層の電荷を除電する回転可能な除電回転体と、
前記除電回転体に接触して配設されており、かつ接地されている除電手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記除電回転体の表面の付着物を除去する清掃手段を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記非導電性層が非導電のフッ素樹脂チューブであり、前記導電性層が導電材を添加したフッ素樹脂チューブであることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105081(P2013−105081A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249693(P2011−249693)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】