説明

実施計画統合支援システム及び実施計画統合支援プログラム

【課題】標準化された内容及び実施順序の質や安全性を自動的に向上させることができる、実施計画統合支援システム及び実施計画統合支援プログラムを提供すること。
【解決手段】実施計画を作成する作成サーバ10と、実施計画の実施を管理する管理サーバ30と、実施計画に関する解析を行う解析サーバ20とを備える。管理サーバ30は、実施計画の実施時に取得された実施履歴情報を格納する実施履歴情報DB31hを有する。解析サーバ20は、実施履歴情報の解析値に対する標準値を格納する標準値情報DB21eと、解析値を取得する履歴解析部22aと、解析値を標準値と比較することにより実施計画の改善点を特定する改善点特定部22bとを有する。作成サーバ10は、標準的な内容及び標準的な実施順序を改善する実施計画改善部12bと、改善された内容及び実施順序に基づいて実施計画を作成する実施計画作成部12aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定対象に対する複数の実施行為を標準化された内容及び実施順序で行うための実施計画を統合的に支援するための実施計画統合支援システム及び実施計画統合支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療関連行為を二次元構造で示したクリティカルパスが知られている。このクリティカルパスは、医療計画や実施の標準化及び可視化を通じて、医療の質と効率を系統的に保証及び向上させることができる点で有用である。しかしながら、患者の状態によっては、クリティカルパスを適用できなかったり、予め想定された標準的な経過から乖離してしまいクリティカルパスを逸脱する可能性があるという問題が指摘されていた。
【0003】
この点に鑑みて本願発明者等は、医療プロセス質管理システム及び医療プロセス質管理方法を提案した(特許文献1参照)。このシステムは、患者に対して実施する複数の医療プロセス及び各医療プロセスの実施順序等を記憶する記憶部と、次に実施する医療プロセスを読み出すプロセス管理部等を備えて構成されている。このシステムによれば、医療プロセスが所定基準に従って記憶部から順次読み出されて出力されるので、この出力された医療プロセスを参照しつつ医師が医療行為を行うことで、各医師が個別的に独自判断で医療行為の内容や実施順序を決定する場合に比べて、医療行為の標準化を図ることができ、延いては医療プロセスの質を維持及び向上させることができる。また、このシステムによれば、患者の個別性に柔軟に対応できるので、クリティカルパスの問題点を解消することが可能になる。
【0004】
さらに、本願発明者等は、この医療プロセス質管理システムで用いられる医療プロセスチャートを自動的に作成することにより、統一化された医療プロセスチャートを簡易に活用可能とするための医療プロセスチャート作成支援装置を提案した(特許文献2参照)。この装置は、症例に対する処置に関連する質問を表示する質問表示部、この質問表示部にて表示された質問に対する回答の入力を受け付ける処置情報入力部、及び、プロセスチャートのフォーマットを作成するフォーマット作成部等を備えて構成されており、質問に対する回答等に基づいてプロセスチャートを自動的に作成する。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/057336号パンフレット
【特許文献2】特開2007−128351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献2に開示された医療プロセスチャート作成支援装置は、医療プロセスチャートを作成する機能を有し、特許文献1に開示された医療プロセス質管理システムは、医療プロセスの実施順序を管理する機能を有しているが、従来、これら作成機能と実施管理機能とは相互に独立して動作するものに過ぎなかったので、作成された計画の有効性の検証を行うことや、この検証結果を計画に反映させることができなかった。例えば、実施行為の内容や実施順序を規定する標準的な情報を準備しておき、この標準的な情報に基づいて医療プロセスチャートの作成や実施管理を行なう場合にも、医師の暗黙知が形式知として完全に標準的な情報に反映できていない場合や、医師自らも把握していない知識が存在する可能性がある。このような場合、従来のシステムでは、これらの情報を顕在化させて標準的な情報に反映させることは困難であり、標準的な情報の質の改善が図られないまま運用が継続されてしまうことになるため、その結果として医療プロセスの安全性の向上が進展しない可能性があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所定対象に対する複数の実施行為を標準化された内容及び実施順序で行うための実施計画に関して、作成された計画の有効性の検証やこの検証結果に基づく計画の改善を自動的に行うことで、これら標準化された内容及び実施順序の質や安全性を自動的に向上させることができる、実施計画統合支援システム及び実施計画統合支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、所定対象に対して実施され得る実施行為の内容及び実施順序を含んだ実施計画を作成する作成手段と、前記作成手段にて作成された実施計画の実施を管理する管理手段と、前記管理手段にて管理された実施計画の実施の結果に基づいて、前記実施計画に関する解析を行う解析手段とを備え、前記管理手段は、前記実施計画の実施時に取得された実施履歴情報を格納する実施履歴情報格納手段と、前記実施計画の実施時に実施履歴情報を所定方法にて取得して前記実施履歴情報格納手段に格納する実施履歴情報取得手段とを有し、前記解析手段は、前記実施履歴情報格納手段にて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって取得される解析値に対して、標準的な値として設定された標準値を格納する標準値情報格納手段と、前記実施履歴情報格納手段にて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって前記解析値を取得する履歴解析手段と、前記履歴解析手段にて取得された前記解析値を、前記標準値情報格納手段にて格納された前記標準値と比較することにより、前記実施計画における実施行為の内容及び実施順序の改善点を特定する改善点特定手段とを有し、前記作成手段は、前記実施行為の標準的な内容及び標準的な実施順序を含んだ標準情報格納手段と、前記改善点特定手段にて特定された改善点に基づいて、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序を改善する改善手段と、前記改善手段にて改善された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序に基づいて、前記実施計画を作成する実施計画作成手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記管理手段は、前記実施計画を実施する複数の実施者の各々に対応して配置され、前記解析手段は、前記複数の実施者の属性に関する情報を格納する実施者情報格納手段を備え、前記履歴解析手段は、解析の対象になる前記実施履歴情報に対応する実施計画を実施した実施者を所定方法にて特定し、当該特定した実施者の属性を前記実施者情報格納手段から取得し、当該取得した属性に基づいて当該実施履歴情報を解析することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の本発明において、前記作成手段は、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序に対する改善に関する改善履歴情報を格納する改善履歴情報格納手段を備え、前記改善手段は、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序を改善した場合、当該改善に関する改善履歴情報を前記改善履歴情報格納手段に格納することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の本発明において、前記所定対象は、患者であり、前記実施行為は、前記患者に対して実施され得る医療行為であり、前記実施計画は、前記患者に対して当該患者の疾患に応じて実施され得る医療行為の内容及び実施内容を含んだ医療計画であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、所定対象に対して実施され得る実施行為の内容及び実施順序を含んだ実施計画に関する処理を行なうコンピュータであって、前記実施計画の実施時に取得された実施履歴情報を格納する実施履歴情報格納手段と、前記実施履歴情報格納手段にて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって取得される解析値に対して、標準的な値として設定された標準値を格納する標準値情報格納手段と、前記実施行為の標準的な内容及び標準的な実施順序を含んだ標準情報格納手段とを備えたコンピュータに、実行させる実施計画統合支援プログラムであって、前記実施計画の実施時に実施履歴情報を所定方法にて取得して前記実施履歴情報格納手段に格納する実施履歴情報格納ステップと、前記実施履歴情報格納ステップにおいて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって前記解析値を取得する履歴解析ステップと、前記履歴解析ステップにおいて取得された前記解析値を、前記標準値情報格納手段にて格納された前記標準値と比較することにより、前記実施計画における実施行為の内容及び実施順序の改善点を特定する改善点特定ステップと、前記改善点特定ステップにおいて特定された改善点に基づいて、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序を改善する改善ステップと、前記改善ステップにおいて改善された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序に基づいて、前記実施計画を作成する実施計画作成ステップとを前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、5に記載の本発明によれば、標準情報に基づいて作成された実施計画を、実施の履歴に基づいて自動的に改善することができ、この改善された標準情報に基づいて次の実施計画が作成されるので、実施計画の「作成」、「実施管理」、「解析」という各処理を相互に連携させて一連の統合処理に昇華させることで、標準情報の質を自動的に高め、この標準情報を用いて作成された実施計画の質及び安全性を自動的に高めることができる。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、実施計画を実施する実施者の属性に基づいて解析を行うことで、実施者の属性に起因して生じた様々な現象を除外することができ、実施者の属性に依存しない統一化された方法で標準情報を改善できるので、標準情報の改善手法自体についての標準化を図ることができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明によれば、改善に関する改善履歴情報が自動的に蓄積されるので、標準情報の改善の理由や経過を把握することができ、例えば、標準情報の正当性を検証するための情報として活用することができるので、標準情報の信頼性を向上させることや、標準情報の改善手法自体についての信頼性を向上させることができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明によれば、標準的な医療行為情報に基づいて作成された医療計画を、医療行為の実施履歴に基づいて自動的に改善することができ、この改善された標準的な医療行為情報に基づいて次の医療計画が作成されるので、医療計画の「作成」、「実施管理」、「解析」という各処理を相互に連携させて一連の統合処理に昇華させることで、医療行為情報の質を自動的に高め、この医療行為情報を用いて作成された医療計画の質及び安全性を自動的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る実施計画統合支援システム及び実施計画統合支援プログラムを実施するための最良の形態について詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態の基本概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
〔I〕本実施の形態の基本概念
まず、本実施の形態の基本概念について説明する。本実施の形態に係る実施計画統合支援システム(以下「本システム」)及び実施計画統合支援プログラム(以下「本プログラム」)は、所定対象に対する複数の実施行為を標準化された内容及び実施順序で行うための実施計画を統合的に支援するためのシステム及びプログラムである。
【0019】
本システム及び本プログラムは、広範な分野に適用可能であり、概念的には、当該分野における形式知(具体的には、所定対象に対して実施者が実施する複数の実施行為の内容と、これら複数の実施行為の相互間の実施順序)を構造化することで可視化が可能な全ての分野に適用可能である。この適用分野の例としては、「医療分野」、「防災分野」、「教育分野」を挙げることができる。この適用分野に応じて、「所定対象」、「実施者」、「実施行為」、「実施計画」の具体的内容は異なり得る。例えば、医療分野では、所定対象=患者、実施者=医師(又は病院)、実施行為=医療行為、実施計画=医療計画である。同様に、防災分野では、所定対象=災害やテロ行為の被災者や被災物、実施者=救援者、実施行為=救援行為、実施計画=救援計画が該当し、教育分野では、所定対象=生徒、実施者=教師、実施行為=教育行為、実施計画=教育計画が該当する。以下では、本装置及び本プログラムを医療分野に適用した場合について説明する(必要に応じて、本システムを「医療行為統合支援システム」、本プログラムを「医療行為統合支援プログラム」と称する)が、本システム及び本プログラムを他の分野に適用する場合には、上述のように「所定対象」、「実施者」、「実施行為」、「実施計画」の内容を当該他の分野に応じた内容に読み替えばよい。
【0020】
図1は、医療行為統合支援システムの全体構成を概念的に示す説明図である。この図1に示すように、医療行為統合支援システム1は、統合支援センターに設置された作成サーバ10及び解析サーバ20と、複数の病院(医療機関)の各々に設置された管理サーバ30とを、構内LANやインターネットの如きネットワーク40を介して相互に通信可能に接続して構成されている。また、管理サーバ30に対しては、オーダサーバ50及び複数の支援端末60がネットワーク40を介して相互に通信可能に接続して構成されている。
【0021】
本システム1及び本プログラムでは、上述の特許文献1又は特許文献2に全部又は一部が開示された「患者状態適応型パスシステム(PCAPS: Patient Condition Adaptive Path System)」を利用する。この患者状態適応型パスシステムは、患者の初期状態から最終目標状態に至る臨床経路を示す俯瞰的なモデルであり、この臨床経路を、「患者状態」を基軸とする複数の「目標状態」を相互にリンクして視覚化したものであって、具体的には「臨床プロセスチャート」と「ユニットシート」の2つのツールを用いて構成される。
【0022】
図2には、これら臨床プロセスチャート及びユニットシートの基本構成モデルを示す。臨床プロセスチャートとは、患者の目標状態毎に形成された医療行為単位(医療の質を管理するために適切な大きさに設定された単位)である「ユニット(プロセス)」を連結することで構成される臨床経路の俯瞰図であり、疾患毎に構成され、当該疾患を有する患者の初期状態から最終目標状態に至る間に想定されるすべての臨床状態を包含する。各ユニットは「実行エレメント」と「判断エレメント」とから構成されている。実行エレメントは、患者状態を当該ユニットの目標状態に達するように組み込まれた医療業務を実行していく行為を示し、判断エレメントは、患者状態が当該ユニットの目標状態に達したか否かを判断する行為を示す。そして、各実行エレメントと、当該各実行エレメントの直後の判断エレメントとを、視覚的に表示する手段として「ユニットシート」が構成される。
【0023】
このユニットシートの表示画面例を図3に示す。具体的にはユニットシートは、「患者ID」、「ユニットID」、「医療行為」、「患者状態」、「目標状態」、「ユニット移行ロジック」、「条件付き指示」、「離脱条件」を含む。患者IDは、当該ユニットシートが適用されている患者を一意に特定するための識別情報である。ユニットIDは、当該ユニットシートに対応するユニットを一意に特定するための識別情報である。医療行為は、当該ユニットシートに対応する実行エレメントにおいて実行すべき医療行為の項目や内容を記述した情報であり、例えば、医行為、ケア行為、及び調整行為を含む。患者状態は、当該ユニットシートに対応するユニットにおいて注目すべき患者状態の内容を記述した情報である。ユニット移行ロジックは、当該ユニットシートに対応するユニットから次順のユニットに移行するときの条件及び移行先のユニットシートに対応するユニットIDを記述した情報である。条件付き指示は、当該ユニットにおける医療行為中に発生した患者状態に早急に対応するための指示内容を含んで構成されている。離脱条件は、目標状態からの危険な乖離の判断基準を示す遷移状態になった場合には、当該ユニットシートを離脱すべき場合があるため、この離脱を行うための条件を含んで構成されている。
【0024】
このように構成される「臨床プロセスチャート」及び「ユニットシート」を特定するための情報が作成サーバ10に予め格納されており、作成サーバ10は各病院に共通の標準的な臨床プロセスチャート及びユニットシートを作成し、これを各病院の管理サーバ30に送信する。管理サーバ30は、この標準的な臨床プロセスチャート及びユニットシートを、当該各病院で供給可能なリソースの現状に合致した臨床プロセスチャート及びユニットシートに修正する。その後、管理サーバ30は、臨床プロセスチャートにおける最初のユニットに対応するユニットシートの内容を支援端末60を介して医師に対して表示出力等にて提示する。そして、医師が、当該提示されたユニットシートに含まれる医療行為を行い、その後の患者状態を支援端末60に入力すると、この患者状態が支援端末60を介して管理サーバ30にて受け付けられる。次いで、管理サーバ30は、患者状態が当該ユニットの目標状態に達したか否かを判断する。目標状態に達したと判断した場合には、当該最初のユニットの次順のユニットを臨床プロセスチャートに基づいて特定し、当該次順のユニットに対応するユニットシートの内容を支援端末60を介して医師に対して提示する。以降同様に、臨床プロセスチャートにて定義された順序に従ったユニットに対応するユニットシートの内容の提示処理と、医師による患者状態の入力を受け付ける処理と、目標状態に達したか否かを判断する判断処理とが繰り返し行われ、臨床プロセスチャートにおける最後のユニットの医療行為が終了することで、一連の処理が終了する。
【0025】
図4は、臨床プロセスチャートの具体例である。この臨床プロセスチャートは、前立腺全摘徐を行う場合の例である。この臨床プロセスチャートは、複数のユニットの各々を構成する実行エレメント及び判断エレメントと、これら各エレメントを相互に接続する線分とを含んでおり、当該線分によって各エレメントの相互間の実施順序が視覚的に示されている。例えば、実行エレメント「A−1 前立腺全摘除術」の医療行為を実行した後、判断エレメント「SA−1」において患者状態と目標状態とに基づく判断を行い、この判断結果に応じて、実行エレメント「A−2 術後急性期」又は実行エレメント「B−2 術後急性期」のいずれかに移行する。図4における各実行エレメントの枠内には、各実行エレメントに対応するユニットの名称及びユニットIDを示す。例えば、最初の実行エレメントに対応するユニットの名称は「入院 術前」であり、ユニットIDは「A−0」である。
【0026】
この実施の形態の特徴の一つは、標準情報を自動的に改善することにある。この改善の具体的方法としては、実施計画の実施履歴に関する情報を取得し、この情報を統計解析して解析値を取得し、この解析値に基づいて標準情報の改善点を特定する。改善点の特定は、解析値を標準値と比較することで行う。この際、実施計画の実施者の属性を考慮した比較を行うことで、実施者の属性の影響を除外し、統一化された改善点の特定を行う。このように特定された改善点に基づいて標準情報を改善する。この改善時には、改善履歴を蓄積しておくことで、標準情報の改善の理由や経過を後日把握することを可能とする。
【0027】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。以下では、図1に示した医療行為統合支援システム1の各部の構成について説明し、次いで、医療行為統合支援システム1を用いて実行される医療行為支援プログラムの処理内容について説明する。
【0028】
(構成−作成サーバ)
最初に、図1の作成サーバ10の構成を説明する。この作成サーバ10は、患者に対して実施され得る医療行為の内容及び実施順序を含んだ医療計画を作成するもので、特許請求の範囲における作成手段及びコンピュータに対応する。機能概念的には、作成サーバ10は、記憶部11、制御部12、及びネットワークインターフェース(以下「ネットワークIF」)13を、バスにて相互に通信可能に接続して構成されている。
【0029】
記憶部11は、各種処理に必要な情報やパラメータを不揮発的に格納する格納手段であり、例えば、HD(Hard Disk)にて構成される(後述する記憶部21、31において同じ)。具体的には、この記憶部11は、機能概念的に、標準実施順序情報DB11a、標準実施内容情報DB11b、改善履歴情報DB11cを備える。これら各DB11a〜11cに格納される情報の具体的内容については後述する。
【0030】
制御部12は、作成サーバ10の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、実施計画作成部12a及び実施計画改善部12bを備える。実施計画作成部12aは、実施計画改善部12bにて改善された標準的な内容及び標準的な実施順序に基づいて、医療計画を作成するもので、特許請求の範囲における実施計画作成手段に対応する。実施計画改善部12bは、後述する解析サーバ20の改善点特定部22bにて特定された改善点に基づいて、標準実施順序情報DB11a又は標準実施内容情報DB11bにて格納された標準的な内容及び標準的な実施順序を改善するもので、特許請求の範囲における改善手段に対応する。この制御部12は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)や、このCPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの制御プログラムや、各種の処理手順などを規定したプログラム)、及び、所要プログラムや所要データを格納するためのキャッシュメモリを備えて構成される(後述する制御部22、32において同じ)。特に、制御部12は、本プログラムの少なくとも一部を備えて構成されており、このプログラムは、例えば、CD−ROMやDVDを含む任意の記憶媒体に記憶された後、インストールされて記憶部11に不揮発的に記憶され、CPUにて解釈実行されることで制御部12の実質的機能を構成する(後述する制御部22、32において同じ)。
【0031】
ネットワークIF13は、ネットワーク40を介した通信を行うための通信手段であり、例えばネットワークボードとして構成される(後述するネットワークIF23、33、において同じ)。このネットワークIF13を介して、各種の情報の入出力が行われることから、当該ネットワークIF13は入力手段及び出力手段を構成する(後述するネットワークIF23、33、において同じ)。
【0032】
(構成−解析サーバ)
次に、解析サーバ20の構成を説明する。この解析サーバ20は、管理サーバ30にて管理された医療計画の実施の結果に基づいて、医療計画に関する解析を行うもので、特許請求の範囲における解析手段及びコンピュータに対応する。機能概念的には、解析サーバ20は、記憶部21、制御部22、及びネットワークIF23を、バスにて相互に通信可能に接続して構成されている。
【0033】
記憶部21には、具体的には、機能概念的に、実施履歴情報DB21a、実施者情報DB21b、解析値調整情報DB21c、解析結果情報DB21d、標準値情報DB21e、改善点情報DB21fを備える。これら各DB21a〜21fに格納される情報の具体的内容については後述する。
【0034】
制御部22は、解析サーバ20の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、履歴解析部22a及び改善点特定部22bを備える。履歴解析部22aは、実施履歴情報DB21aにて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって解析値を取得するもので、特許請求の範囲における履歴解析手段に対応する。改善点特定部22bは、履歴解析部22aにて取得された解析値を、標準値情報DB21eにて格納された標準値と比較することにより、医療計画における医療行為の内容及び実施順序の改善点を特定するもので、特許請求の範囲における改善点特定手段に対応する。
【0035】
(構成−管理サーバ)
次に、管理サーバ30の構成を説明する。この管理サーバ30は、作成サーバ10にて作成された医療計画の実施を管理するもので、特許請求の範囲における管理手段及びコンピュータに対応する。機能概念的には、管理サーバ30は、記憶部31、制御部32、及びネットワークIF33を、バスにて相互に通信可能に接続して構成されている。
【0036】
記憶部31には、具体的には、機能概念的に、対象情報DB31a、基本リソース情報DB31b、所要リソース情報DB31c、現状リソース情報DB31d、標準実施順序情報DB31e、標準実施内容情報DB31f、修正実施内容情報DB31g、実施履歴情報DB31hを備える。これら各DB31a〜31hに格納される情報の具体的内容については後述する。
【0037】
制御部32は、管理サーバ30の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、実施計画修正部32a及び実施計画管理部32bを備える。実施計画修正部32aは、作成サーバ10にて作成された標準的な医療計画を各病院のリソースの現状に合致した医療計画に修正する。実施計画管理部32bは、医療計画の実施時に実施履歴情報を所定方法にて取得して実施履歴情報DB31hに格納するもので、特許請求の範囲における実施履歴情報取得手段に対応する。
【0038】
(構成−オーダサーバ)
オーダサーバ50は、各種のリソースの発注、在庫管理、あるいは予約管理を行う資源管理装置である。このオーダサーバ50の具体的構成は任意であり、管理サーバ30との通信機能を有する限りにおいて、公知のサーバ装置と同様に構成できるために、その詳細な説明は省略する。なお、病院に配置されるサーバとしては、このオーダサーバ50以外にも、医事会計サーバの如き任意のサーバを含めることができる。
【0039】
(構成−支援端末)
各支援端末60は、医師を含む医療従事者が管理サーバ30に対して入出力を行うための端末装置であり、特に、患者状態の入力を受け付ける入力機能と、臨床プロセスチャート及びユニットシートの出力を行う出力機能を有する。この支援端末60は、管理サーバ30との通信機能を有する限りにおいて、公知のパーソナルコンピュータと同様に構成できるために、その詳細な説明は省略する。
【0040】
(構成−データベースの具体的内容−作成サーバ)
次に、作成サーバ10、解析サーバ20、及び管理サーバ30の各DB11a〜11c、21a〜21f、31a〜31hの具体的内容について説明する。ただし、以下の構成例では本実施の形態に係る最低限の情報を格納する例を示し、実際には以下に説明する情報以外の任意の情報を各DB11a〜11c、21a〜21f、31a〜31hに格納することができる。また、各DB11a〜11c、21a〜21f、31a〜31hに格納される情報のうち、同一名称の情報については、特記する場合を除いて相互に同一の内容であるものとし、重複説明は行わない。なお、説明の都合上、作成サーバ10の各DB11a〜11cについて説明した後、管理サーバ30の各DB31a〜31hについて説明し、最後に解析サーバ20の各DB21a〜21fについて説明する。
【0041】
まず、作成サーバ10の各DB11a〜11cの具体的内容について説明する。標準実施順序情報DB11aは、複数の医療行為の相互間における標準的な実施順序を特定するための情報(標準実施順序情報)を格納する手段である。この標準実施順序情報は、図5に例示するように、「疾患ID」と「ユニットID」とを相互に関連付けて構成されている。疾患IDは、疾患を一意に特定するための識別情報である。ユニットIDとしては、各疾患IDにて特定される疾患を治療するためのユニットシートに対応する複数のユニットIDが格納されている。ここでは、医療行為の順序に応じた順序にてユニットIDを格納することで、ユニットシートにて規定される医療行為の相互間の実施順序が規定されている。ただし、後述する標準実施内容情報DB11bの標準実施内容情報におけるユニット移行ロジックのみによって医療行為の順序が特定できる場合には、標準実施順序情報では、少なくとも疾患IDと、各疾患IDにて特定される疾患を治療するために最初に実施されるユニットシートに対応するユニットIDのみを格納しておけばよい。
【0042】
図1の標準実施内容情報DB11bは、患者に対して実施すべき医療行為の内容を医療行為単位で特定するためのユニットシートの内容を特定する情報(標準実施内容情報)を格納する手段である。この標準実施内容情報は、図6に例示するように、「ユニットID」、「標準日数」、「医療行為」、「リソース」、「患者状態」、「目標状態」、「ユニット移行ロジック」、「条件付き指示」、「離脱条件」を相互に関連付けて構成されている。リソースは、各ユニットシートにて規定される医療行為を実施する際に必要な医療資源を特定する情報であり、リソースを一意に特定するためのリソースID(図6では「OP0001」や「BL0002」)を含む。
【0043】
これら標準実施順序情報及び標準実施内容情報は、標準化された医療行為の内容やその実施順序を特定するための情報であり、以下では、必要に応じて「標準情報」と総称する。この標準情報を格納する標準実施順序情報DB11aや標準実施内容情報DB11bは、特許請求の範囲における標準情報格納手段に対応する。この標準情報を生成する方法及びタイミングは任意であるが、例えば、当該標準情報を、医師のヒアリング等に基づいて標準化することで決定して標準実施順序情報DB11aや標準実施内容情報DB11bに予め格納しておくことができる。この標準情報の標準化は、必ずしも硬直的なものではなく、各医療機関や各患者の実情に合致するように、各医療機関や各医師が支援端末60を用いて任意の内容にカスタマイズできるようにしてもよい。なお、これら各情報の具体的な記述構造としては、上述した構成例以外の任意の構造を採用することができ、例えばXML(Extensible Markup Language)により、タグを用いて各情報の意味及び構造を記述することができる。このような構造体系を用いた場合、標準実施順序情報及び標準実施内容情報は、構造化された相互一体の標準情報として構成することができ、標準実施順序情報DB11a及び標準実施内容情報DB11bを一つのデータベースに統合化することができる。
【0044】
図1の改善履歴情報DB11cは、標準実施順序情報DB11aや標準実施内容情報DB11bにて格納された標準的な内容及び標準的な実施順序の改善履歴に関する情報(改善履歴情報)を格納するもので、特許請求の範囲における改善履歴情報格納手段に対応する。この改善履歴情報は、図7に例示するように、「ユニットID」、「改善種別」、「改善前情報」、「改善後情報」、「改善年月日」、「改善累計数」を相互に関連付けて構成されている。改善種別は、作成サーバ10にて改善された情報の種別を示す情報であり、ここでは「日数」又は「離脱」のいずれかである。日数は、各ユニットIDにて特定されるユニットシートにて規定される医療行為を実施するための日数であり、離脱先は、各ユニットIDの次の離脱先である。改善前情報は、作成サーバ10による標準情報の改善前の内容を示し、改善後情報は、作成サーバ10による標準情報の改善後の内容を示す。改善年月日は、作成サーバ10にて行われた改善の実行日を示す。改善累計数は、各ユニットIDに対応する標準情報が、これまでに作成サーバ10にて改善された回数の累計値である。
【0045】
(構成−データベースの具体的内容−管理サーバ)
次に、図1の管理サーバ30の各DB31a〜31hの具体的内容について説明する。対象情報DB31aは、医療行為の対象である患者に関する情報(対象情報)を格納する手段である。この対象情報は、図8に例示するように、「患者ID」、「年齢」、「性別」、「住所」、「疾患ID」を相互に関連付けて構成されている。「年齢」、「性別」、及び「住所」は、それぞれ、各患者の年齢、性別、住所であり、疾患IDは、患者IDにて特定される患者の疾患に対応する疾患IDである。
【0046】
図1の基本リソース情報DB31bは、医療行為を実施するために必要なリソースに関する基本的な情報(基本リソース情報)を格納する手段である。この基本リソース情報は、図9に例示するように、「リソースID」、「リソース名」、「単位」、「取得所要日数」を相互に関連付けて構成されている。リソースIDは、リソースを一意に特定するための識別情報である。リソース名は、各リソースの名称である。単位は、各リソースの最小の取り扱い単位である。取得所要日数は、各リソースをオーダーしてから納品されるまでの所要日数である。なお、取得所要日数=「不足分」と示されているリソースについては、所要数量に対する供給可能数量の不足分(=所要数量−供給可能数量)を待つことで、所要数量が取得できることを意味しており、例えば、手術室の所要数量が2時間で、手術室の供給可能数量が1時間であれば、供給可能数量の不足分=1時間を待てば、手術室の所要数量=2時間が取得できることを意味する。
【0047】
図1の所要リソース情報DB31cは、各医療行為を実施するために必要なリソースを特定するための情報(所要リソース情報)を格納する手段である。この所要リソース情報は、図10に例示するように、「ユニットID」、「リソースID」、「所要数量」を相互に関連付けて構成されている。所要数量は、ユニットIDにて特定されるユニットシートにて規定される医療行為を実施するために必要になる、各リソースの数量を示す。
【0048】
図1の現状リソース情報DB31dは、当該管理サーバ30が設置されている病院におけるリソースの現在の供給可能数量を特定するための情報(現状リソース情報)を格納する手段である。この現状リソース情報は、図11に例示するように、「リソースID」、「供給可能数量」を相互に関連付けて構成されている。供給可能数量は、当該管理サーバ30が設置されている病院において、リソースIDにて特定されるリソースを現在時点において供給することができる数量を示す。
【0049】
図1の標準実施順序情報DB31eは、標準実施順序情報を格納する手段である。この標準実施順序情報は、図12に例示するように、作成サーバ10の標準実施順序情報DB11aにおける標準実施順序情報(図5参照)に対して、さらに「患者ID」を関連付けて構成されている。
【0050】
図1の標準実施内容情報DB31fは、標準実施内容情報を格納する手段である。この標準実施内容情報は、図13に例示するように、作成サーバ10の標準実施内容情報DB11bにおける標準実施内容情報(図6参照)に対して、さらに「患者ID」及び「実施予定日」を関連付けて構成されている。実施予定日は、各ユニットIDにて特定されるユニットシートにて規定される医療行為を実施する予定の年月日である。
【0051】
図1の修正実施内容情報DB31gは、当該管理サーバ30にて修正された医療計画に関する情報(修正実施内容情報)を格納する手段である。この修正実施内容情報は、図14に例示するように、標準実施内容情報DB31fにおける標準実施内容情報(図13参照)と同様に構成されている。
【0052】
図1の実施履歴情報DB31hは、医療計画が実施された際の履歴情報(実施履歴情報)を格納する手段であり、特許請求の範囲における実施履歴情報格納手段に対応する。この実施履歴情報は、図15に例示するように、「患者ID」、「ユニットID」、「患者状態」、「遷移結果」、「離脱先のユニットID」、「当該ユニットへの移行年月日」、「当該ユニットからの移行年月日」を相互に関連付けて構成されている。患者状態は、各ユニットIDにて特定されるユニットの医療行為を実施した際に、医師から入力された患者の状態を示す情報である、遷移結果は、各ユニットIDにて特定されるユニットから他のユニットへ移行した結果を示す情報であり、他のユニットへ移行した場合には当該移行先のユニットの「ユニットID」が格納され、他のユニットへ移行することなく当該ユニットを離脱した場合には「離脱」の旨が格納される。離脱先のユニットIDは、他のユニットへ移行することなく当該ユニットを離脱した場合にのみ格納されるもので、当該離脱時における離脱先のユニットのユニットIDである。当該ユニットへの移行年月日は、各ユニットIDにて特定されるユニットへ移行した際の年月日である。当該ユニットからの移行年月日は、各ユニットIDにて特定されるユニットから他のユニットへ移行したり当該ユニットを離脱した際の年月日である。
【0053】
(構成−データベースの具体的内容−解析サーバ)
次に、図1の解析サーバ20のDB21a〜21fの具体的内容について説明する。実施履歴情報DB21aは、実施履歴情報を格納する手段である。この実施履歴情報は、図16に例示するように、各管理サーバ30の実施履歴情報DB31hにおける実施履歴情報(図15参照)に対して、さらに「病院ID」を関連付けて構成されている。この病院IDは、各病院の管理サーバ30から解析サーバ20に対して実施履歴情報が送信された際、当該送信元になった各病院(又は各管理サーバ30)を一意に特定するための識別情報である。
【0054】
図1の実施者情報DB21bは、複数の実施者(ここでは各病院であるが、各病院の各医師としてもよい)の属性に関する情報(実施者情報)を格納するもので、特許請求の範囲における実施者情報格納手段に対応する。この実施者情報は、図17に例示するように、「病院ID」、「病院名」、「所在地」、「ベッド数」、「種別」を相互に関連付けて構成されている。病院名は、病院IDにて特定される病院の名称である。所在地は、病院IDにて特定される病院の所在地である。ベッド数は、病院IDにて特定される病院が保有するベッドの総数である。種別は、病院IDにて特定される病院の種類であり、ここでは急性期(病気を発症したり、けがをした直後の患者を治療するための病院)又は慢性期(病状が安定した患者を治療するための病院)のいずれかである。
【0055】
図1の解析値調整情報DB21cは、当該解析サーバ20にて算出された解析値を、実施者の属性に基づいて調整するための情報(解析値調整情報)を格納する手段である。この解析値調整情報は、図18に例示するように、「解析種別」、「実施者の属性」、「調整値」を相互に関連付けて構成されている。解析種別は、解析値の種類であり、ここでは「平均離脱率」と「平均超過日数」である。平均離脱率とは、各ユニットの離脱率の平均値であり、平均超過日数とは、各ユニットの超過日数の平均値である。実施者の属性は、実施者情報DB21bにて格納された実施者の属性(実施者情報)のうち、調整値の選択基準として使用する情報であり、ここでは所在地、ベッド数、及び種別が使用される。調整値は、当該解析サーバ20にて算出された解析値を調整するための値であって、ここでは、解析値に対して加算される値として予め設定されている。
【0056】
図1の解析結果情報DB21dは、当該解析サーバ20にて算出された解析値を、実施者情報に基づいて調整した結果として取得された情報(解析結果情報)を格納する手段である。この解析結果情報は、図19に例示するように、「ユニットID」、「調整後解析値」、「最多の離脱先のユニットID」を相互に関連付けて構成されている。調整後解析値は、当該解析サーバ20にて算出された解析値に対して、解析値情報の調整値を加算することで算出された数値であり、ここでは「平均離脱率」の調整後解析値と、「平均超過日数」の調整後解析値がある。最多の離脱先のユニットIDは、実施履歴情報DB21aの実施履歴情報に含まれる離脱先のユニットIDのうち、出現頻度が最多である離脱先のユニットIDである。
【0057】
図1の標準値情報DB21eは、実施履歴情報DB21aにて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって取得される解析値に対して、標準的な値として設定された標準値に関する情報(標準値情報)を格納するもので、特許請求の範囲における標準値情報格納手段に対応する。この標準値情報は、図20に例示するように、「ユニットID」、「解析種別」、「標準値」を相互に関連付けて構成されている。
【0058】
図1の改善点情報DB21fは、標準実施順序情報DB11aにて格納された標準実施順序情報や、標準実施内容情報DB11bにて格納された標準実施内容情報に対する改善点を特定するための情報(改善点情報)である。この改善点情報は、図21に例示するように、「ユニットID」、「改善種別」、「改善要否フラグ」「平均超過日数」、「最多の離脱先のユニットID」を相互に関連付けて構成されている。改善種別は、改善すべき情報の種類を示す情報であり、ここでは「離脱」又は「日数」である。改善要否フラグは、改善の有無を示す情報であり、ここでは「0」は改善不要、「1」は改善必要を示す。
【0059】
(処理)
次に、本システム1において本プログラムを実行すること等によって行われる医療行為統合支援処理(以下、本処理)について説明する。なお、以下の本処理の説明において、制御主体を特記しない処理については、作成サーバ10の制御部12、解析サーバ20の制御部22、又は管理サーバ30の制御部32にて実行されるものとし、情報の取得元や取得経路を特記しない場合については、公知のタイミング及び公知の方法にて、作成サーバ10の記憶部11、解析サーバ20の記憶部21、又は管理サーバ30の記憶部31に予め格納されており、あるいは、支援端末60を介して医療従事者が情報を手入力するものとする。
【0060】
(処理−全体)
まず、本処理の全体について説明する。図22は、本処理の概要を示すフローチャートである。最初に、作成サーバ10は、「実施計画作成処理(ステップSA−1。特許請求の範囲における実施計画作成ステップに対応する)」を行うことで標準的な医療計画を作成する。その後、管理サーバ30は、「実施計画修正処理(ステップSA−2)」を行うことで医療計画を修正し、さらに「実施計画管理処理(ステップSA−3。特許請求の範囲における実施履歴情報格納ステップに対応する)」を行うことで実施履歴情報を蓄積する。次いで、解析サーバ20は、「履歴解析処理(ステップSA−4。特許請求の範囲における履歴解析ステップに対応する)」を行うことで解析値を算出し、さらに「改善点特定処理(ステップSA−5。特許請求の範囲における改善点特定ステップに対応する)」を行うことで改善点を特定する。その後、作成サーバ10は、「実施計画改善処理(ステップSA−6。特許請求の範囲における改善ステップに対応する)」を行うことで、改善点に基づいて標準情報を改善する。以降同様に、これら各処理が繰り返して実行される。
【0061】
(処理−実施計画作成処理)
このうち、まず実施計画作成処理について説明する。図23は、実施計画作成処理のフローチャートである。最初に、各病院において医師が支援端末60を介して患者の患者ID及び当該患者の疾患に対応する疾患IDを入力すると共に、医療計画作成の開始を指示すると、これらの情報が支援端末60から管理サーバ30を介して作成サーバ10に送信される(ステップSB−1)。
【0062】
作成サーバ10の実施計画作成部12aは、支援端末60からの情報の入力を受け付けると、当該入力された疾患IDに対応する標準実施順序情報を標準実施順序情報DB11aから取得すると共に、当該取得された標準実施順序情報に含まれる各ユニットIDに対応する標準実施内容情報を標準実施内容情報DB11bから取得する(ステップSB−2)。そして、実施計画作成部12aは、これら標準実施順序情報及び標準実施内容情報を管理サーバ30に送信する(ステップSB−3)。
【0063】
管理サーバ30の制御部32は、このように送信された標準実施順序情報及び標準実施内容情報を、標準実施順序情報DB31e及び標準実施内容情報DB31fに格納する(ステップSB−4)。この際、実施計画作成部12aは、先に医師によって入力された患者IDを実施順序情報及び標準実施内容情報に関連付けて格納する。またこの際、実施計画作成部12aは、現在の年月日を公知の方法で取得し、この年月日を基準として標準実施内容情報の各ユニットの標準日数をその実施順序に応じて順次加算することで、各ユニットの実施予定日を算定して、この実施予定日を標準実施内容情報に関連付けて標準実施内容情報DB31fに格納する。これにて実施計画作成処理が終了する。
【0064】
(処理−実施計画修正処理)
次に、実施計画修正処理について説明する。図24は、実施計画修正処理のフローチャートである。管理サーバ30の実施計画修正部32aは、実施計画作成処理にて標準実施内容情報DB31fに格納された標準実施内容情報からユニットIDを取得する(ステップSC−1)。そして、実施計画修正部32aは、このユニットIDに基づいて、所要リソース情報DB31cを参照することでリソースID及び所要数量を取得する(ステップSC−2)。また、実施計画修正部32aは、当該取得したリソースIDに基づいて現状リソース情報DB31dを参照することで、リソースの供給可能数量を取得する(ステップSC−3)。そして、実施計画修正部32aは、所要数量が供給可能数量以下であるか否かを判定し(ステップSC−4)、供給可能数量以下である場合には(ステップSC−4,Yes)、当該リソースは補充することなく直ちに供給可能であるため、当該リソースを必要とするユニットについては修正が不要であると判定する(ステップSC−5)。
【0065】
一方、所要数量が供給可能数量を超えている場合には(ステップSC−4,No)、当該リソースは直ちに供給不可能であるため、当該リソースを必要とするユニットについては修正が必要であると判定し、当該ユニットの実施予定日を修正する(ステップSC−6)。例えば、直ちに供給不可能なリソースのリソースIDに基づいて、基本リソース情報DB31bを参照することで取得所要日数を取得し、この取得所要日数の分だけ当該ユニットの実施予定日を繰り下げるように、標準実施内容情報DB31fにおける当該ユニットの実施予定日を修正する。また、実施計画修正部32aは、供給不可能なリソースの不足量を、所要数量から供給可能数量を減算することにより算定し、この不足量とリソースIDとをオーダサーバ50に送信する。オーダサーバ50は、これら不足量とリソースIDとに基づいて、不足しているリソースの発注処理を行う。これにて実施計画修正処理が終了する。なお、オーダサーバ50の発注処理によって取得されたリソースの数量は、任意のタイミングで管理サーバ30に送信され、現状リソース情報DB31dの現状リソース情報が更新される。
【0066】
(処理−実施計画管理処理)
次に、実施計画管理処理について説明する。図25は、実施計画管理処理のフローチャートである。先の実施計画修正処理の終了後、医師は、支援端末60を介して任意のタイミングで医療プロセスの開始を指示することで(ステップSD−1,Yes)、標準実施順序情報DB31eにて格納された標準実施順序情報及び標準実施内容情報DB31fにて格納された標準実施内容情報を呼び出して、プロセスチャート又はユニットシートとして、当該支援端末60のモニタを介して閲覧できる(ステップSD−2)。従って、医師は、患者の疾患に対応する医療行為やその実施手順を確認し、標準化された内容及び手順にて医療行為を行うことができる。
【0067】
医師は、各ユニットシートに表示されている医療行為を実施する毎に、当該医療行為が行われた患者の状態を、支援端末60を介して管理サーバ30に入力する(ステップSD−3)。管理サーバ30の実施計画管理部32bは、入力された患者状態と、標準実施内容情報DB31fにて格納された当該ユニットシートの目標状態とを比較して、患者状態が目標状態に達したか否かを判定する(ステップSD−4)。そして、患者の状態が目標状態に達したと判定された場合ステップSD−4,Yes)、実施計画管理部32bは、標準実施順序情報DB31eの標準実施順序情報によって規定される次順のユニットのユニットシートの内容を標準実施内容情報DB31fから取得して支援端末60に送信する(ステップSD−5)。このユニットシートの内容を支援端末60を介して閲覧することで、医師は、患者状態に合致したユニットシートの内容を閲覧でき、医療行為の実施内容を確認できる。
【0068】
一方、ステップSD−4において患者状態が目標状態に達していないと判定された場合(ステップSD−4,No)、実施計画管理部32bは、次のユニットシートに移行することなく、次の患者状態の入力が受け付けられるまで待機する。ここで、患者状態が目標状態から大きく乖離して離脱条件に合致した場合には、当該ユニットを離脱する(ステップSD−6)。この離脱後の行為の特定方法としては種々の方法を取り得るが、ここでは、標準実施内容情報DB31fに標準実施内容情報として格納されているユニットシートの内容を支援端末60に順次提示し(ステップSD−7)、この中から離脱先として最適だと思われるユニットシートを医師に選択させ、選択があった場合には(ステップSD−8,Yes)、このユニットシートを表示し(ステップSD−5)、それ以降は、当該ユニットシートを開始点として、当該ユニットシートに規定されるユニット移行ロジックに基づいて移行する。
【0069】
このように患者状態の入力が行われた場合や、ユニットの移行や離脱が行われた場合、実施計画管理部32bは、その都度、実施履歴情報を実施履歴情報DB31hに格納する(ステップSD−9)。例えば、ユニットの移行が行われた場合には、当該ユニットシートのユニットIDに関連付けて、医師から入力された「患者状態」を格納し、「遷移結果」としては移行先のユニットの「ユニットID」を格納する。一方、離脱が行われた場合には、離脱元になったユニットシートのユニットIDに関連付けて、医師から入力された「患者状態」を格納し、「遷移結果」として「離脱」を記録し、「離脱先のユニットID」としてはステップSD−8で医師によって選択されたユニットシートの「ユニットID」を記録する。また、離脱が行われた場合や、ユニットの移行が行われた場合には、現在年月日を公知の方法で取得し、この現在年月日を、移行元(離脱元)になったユニットシートのユニットIDに関連付けて、「当該ユニットからの移行年月日」として記録すると共に、移行先(離脱先)になったユニットシートのユニットIDに関連付けて、「当該ユニットへの移行年月日」として記録する。これにて実施計画管理処理が終了する。
【0070】
(処理−履歴解析処理)
次に、履歴解析処理について説明する。図26は、履歴解析処理のフローチャートである。解析サーバ20の履歴解析部22aは、履歴解析処理の所定の実行タイミングが到来したか否かを監視しており(ステップSE−1)、実行タイミングが到来した場合には(ステップSE−1,Yes)、各病院の管理サーバ30に対して、実施履歴情報の送信を要求する(ステップSE−2)。実行タイミングの決定方法は任意であり、実施履歴情報が更新される毎に行ってもよいが、日単位や週単位によるバッチ処理として行ってもよい。
【0071】
管理サーバ30の制御部32は、実施履歴情報の送信要求を受信すると、自己の実施履歴情報DB31hから実施履歴情報を取得し、当該取得した実施履歴情報を解析サーバ20に送信する(ステップSE−3)。この際、制御部32は、当該管理サーバ30に予め割り当てられて記憶部31に記憶されている病院IDを、実施履歴情報と共に送信する。
【0072】
解析サーバ20の履歴解析部22aは、管理サーバ30から送信された実施履歴情報及び病院IDを相互に関連付けて実施履歴情報DB21aに格納した後(ステップSE−4)、解析値算出処理を起動する(ステップSE−5)。この解析値算出処理のフローチャートを図27に示す。この処理において、履歴解析部22aは、実施履歴情報DB21aにて格納された実施履歴情報を対象に所定の統計解析を行うことで、各病院毎に、所定の解析値(ここでは、平均離脱率及び平均超過日数)を算出する(ステップSF−1)。例えば、平均離脱率については、各病院における全ての患者に対する実施履歴情報を対象に、各ユニットが実施された総数と、当該各ユニットから離脱された総数とを求め、実施された総数に対する離脱された総数の百分率を算出する。平均超過日数については、各病院における全ての患者に対する実施履歴情報を対象に、各ユニットを実施するために要した日数から、各ユニットの標準日数を減算することで算出する。この際、各ユニットを実施するために要した日数は、「当該ユニットへの移行年月日」及び「当該ユニットからの移行年月日」に基づいて算出でき、各ユニットの標準日数は、例えば解析サーバ20にも標準実施内容情報を予め保持させておくことで特定できる。
【0073】
次いで、履歴解析部22aは、実施履歴情報DB21aの病院IDを取得し、当該取得した病院IDに対応する実施者情報を実施者情報DB21bから取得した後(ステップSF−2)、この実施者情報に含まれる実施者の属性に対応する解析値調整情報を解析値調整情報DB21cから取得する(ステップSF−3)。そして、この解析値調整情報に基づいて、先に算出した解析値を調整することで、調整後解析値を求める(ステップSF−4)。例えば、医療行為が行われた病院の属性が、所在地=「神奈川県」、ベッド数=「50」、種別=「急性期」である場合、図18を参照すると、平均離脱率の調整値は、所在地に対応する調整値=「−1」、ベッド数に対応する調整値=「0」、種別に対応する調整値=「−1」であるから、先に算出された平均離脱率の解析値に「−2(=−1−1)」を加算することで、平均離脱率の調整後解析値を求めることができる。同様に、病院の属性が同一条件の場合、平均超過日数の調整値は、所在地に対応する調整値=「−0.5」、ベッド数に対応する調整値=「0」、種別に対応する調整値=「−1」であるから、先に算出された平均離脱率の解析値に「−1.5(=−0.5−1)」を加算することで、平均超過日数の調整後解析値を求めることができる。この調整ロジックは任意であるが、例えば、都市部の病院の場合や、ベッド数が多い病院の場合、あるいは、急性期の病院の場合には、医療業務が繁忙であるために離脱率が高くなる傾向にあるため、解析値を割り引いた上で標準値と比較する。
【0074】
このように平均離脱率の調整後解析値と、平均超過日数の調整後解析値とを、それぞれ病院毎に求めた後、全病院を対象として、平均離脱率の調整後解析値の平均値と、平均超過日数の調整後解析値の平均値を求めることで、全病院を対象とした統一的な調整後解析値を算出する。そして、この統一的な調整後解析値を、各ユニットのユニットIDに関連付けて解析結果情報DB21dに格納する(ステップSF−5)。また、履歴解析部22aは、実施履歴情報の「離脱先のユニットID」に基づいて、各ユニットIDにて特定されるユニットの離脱先として最も多く選択されたユニットのユニットIDを特定し(ステップSF−6)、当該特定したユニットIDを解析結果情報に関連付けて解析結果情報DB21dに格納する(ステップSF−7)。これにて解析値算出処理及び履歴解析処理が終了する。
【0075】
(処理−改善点特定処理)
次に、改善点特定処理について説明する。図28は、改善点特定処理のフローチャートである。解析サーバ20の改善点特定部22bは、解析結果情報DB21dから各ユニットIDに対応する平均離脱率の調整後解析値と平均超過日数の調整後解析値とを取得すると共に(ステップSG−1)、標準値情報DB21eから各ユニットIDに対応する平均離脱率の標準値と平均超過日数の標準値とを取得する(ステップSG−2)。
【0076】
そして、改善点特定部22bは、平均離脱率及び平均超過日数の各々について、調整後解析値と標準値とを相互に対比する(ステップSG−3)。ここで、調整後解析値が標準値を超えている場合には(ステップSG−3,Yes)、改善が必要であると判定し、改善要否フラグ=1を当該ユニットIDに関連付けて改善点情報DB21fに格納する(ステップSG−4)。この際、改善点特定部22bは、平均離脱率の調整後解析値が標準値を超えている場合については、解析結果情報に含まれる「最多の離脱先のユニットID」を改善要否フラグと共に改善点情報DB21fに格納し、平均超過日数の調整後解析値が標準値を超えている場合については、当該平均超過日数の調整後解析値を改善要否フラグと共に改善点情報DB21fに格納する。一方、調整後解析値が標準値を超えていない場合には(ステップSG−3,No)、改善が必要ではないと判定し、改善要否フラグ=0を各ユニットIDに関連付けて改善点情報DB21fに格納する(ステップSG−5)。これにて改善点特定処理が終了する。
【0077】
(処理−実施計画改善処理)
次に、実施計画改善処理について説明する。図29は、実施計画改善処理のフローチャートである。作成サーバ10の実施計画改善部12bは、実施計画改善処理の所定の実行タイミングが到来したか否かを監視しており(ステップSH−1)、実行タイミングが到来した場合には(ステップSH−1,Yes)、解析サーバ20に対して、改善点情報の送信を要求する(ステップSH−2)。実行タイミングの決定方法は任意であり、改善点情報が改善される毎に行ってもよいが、日単位や週単位によるバッチ処理として行ってもよい。
【0078】
解析サーバ20の制御部22は、改善点情報の送信要求を受信すると、改善点情報DB21fから改善点情報を取得し、当該取得した改善点情報を作成サーバ10に送信する(ステップSH−3)。この送信を受けた作成サーバ10の実施計画改善部12bは、標準情報改善処理を起動する(ステップSH−4)。この標準情報改善処理のフローチャートを図30に示す。この処理において、実施計画改善部12bは、解析サーバ20から送信された改善点情報を参照し、改善要否フラグ=1に対応するユニットIDを特定する(ステップSI−1)。
【0079】
そして、実施計画改善部12bは、当該特定したユニットIDに関連付けて「平均超過日数」が格納されている場合(ステップSI−2,Yes)、標準実施内容情報DB11bに格納されている標準実施内容情報のうち、当該特定されたユニットIDに対応する標準日数に当該平均超過日数を加算することで、当該標準日数を改善する(ステップSI−3)。この処理を行うことで、標準値以上超過している標準日数については、実施履歴に応じた日数だけ延長することができ、実施の実情に合致した標準日数とすることができる。なお、平均超過日数に小数点以下の値が含まれている場合には、四捨五入等の任意の方法で平均超過日数を整数値とした上で、標準日数に加算してもよい。
【0080】
一方、当該特定したユニットIDに関連付けて「最多の離脱先のユニットID」が格納されている場合(ステップSI−4,Yes)、実施計画改善部12bは、標準実施内容情報DB11bに格納されている標準実施内容情報のうち、当該特定されたユニットIDに対応するユニット移行ロジックに、当該最多の離脱先のユニットIDを追加することで、当該ユニット移行ロジックを改善する(ステップSI−5)。この処理を行うことで、標準の移行先として規定されているユニット以外のユニットへ離脱することが多いユニットについては、当該離脱先として選択されることが多いユニットについても、移行先のユニットに加えることで、実施の実情に合致したユニット移行ロジック(プロセスチャートにおける分岐ロジック)を構成することができる。なお、この時に、ユニット移行ロジックにおける移行条件としては、当該ユニットに離脱条件として格納されていた条件を用いることができ、このように離脱条件をユニット移行ロジックに適用した場合には、当該適用した条件を標準実施内容情報における離脱条件から削除する。
【0081】
また、ステップSI−3やSI−5において改善を行った場合、実施計画改善部12bは、この改善を行ったユニットのユニットIDに関連付けて、改善種別、改善前情報、改善後情報、及び改善年月日を改善履歴情報DB11cに格納する。また同時に、実施計画改善部12bは、当該ユニットIDに対応して改善履歴情報DB11cに格納されている改善累計数に1を増分することで(改善累計数が未だ記録されていない場合には初期値=1を格納することで)、改善累計数を更新する(ステップSI−6)。これにて標準情報改善処理及び実施計画改善処理が終了する。
【0082】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、医療プロセスを作成するための標準情報を、実施の履歴に基づいて自動的に改善することができ、この改善された標準情報に基づいて次の医療計画が作成されるので、医療計画の「作成」、「実施管理」、「解析」という各処理を相互に連携させて一連の処理とすることで、医療プロセスの標準情報の質を自動的に高め、この標準情報を用いて作成された医療計画の質及び安全性を高めることができる。
【0083】
また、医療計画を実施する病院の属性に基づいて解析を行うことで、病院の属性に起因して生じた現象を除外することができ、病院の属性に依存しない統一化された方法で、標準情報の質を自動的に高めることができる。
【0084】
また、改善に関する改善履歴情報が自動的に蓄積されるので、標準情報の改善の理由や経過を把握することができ、例えば、標準情報の正当性を裏付けるための根拠情報として活用することができる。
【0085】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良できる。以下、このような変形例について説明する。
【0086】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0087】
(構成及び制御について)
また、上記実施の形態で自動的に行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を手動で行っても良く、逆に、手動で行われるものとして説明した制御の全部または任意の一部を公知技術または上述した思想に基づいて自動化しても良い。また、上記実施の形態において示した各構成要素の各機能ブロックの一部又は全部を、ハードワイヤードロジックにて構成しても良い。
【0088】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、作成サーバ10と解析サーバ20とを相互に統合したり、解析サーバ20の一部の機能を管理サーバ30に持たせてもよい。あるいは、作成サーバ10や解析サーバ20の一部の機能を他のサーバに分散配置してもよい。
【0089】
(解析値や標準値について)
上記実施の形態では、解析値や標準値として平均離脱率及び平均超過日数を用いているが、この他の任意の統計値を用いることができる。
【0090】
(調整値について)
上記実施の形態では、解析値に調整値を加算し、この加算結果を標準値と比較することで、解析結果を実行者の属性に応じて調整しているが、その他の調整ロジックを採用してもよい。例えば、標準値を病院の属性に応じて複数設定しておき、病院の属性に合致した標準値を選択して解析値と比較してもよい。
【0091】
(実行者の属性について)
実行者の属性としては、上記実施の形態で示したもの以外にも、種々のものを挙げることができる。例えば、病院の所在国、当該国の医療レベル、当該国で普及している宗教の種類、あるいは当該国において認可されている医療行為の種別を基準として、調整値を選択してもよい。
【0092】
(標準情報の改善について)
上記実施の形態では、標準日数の改善は、標準日数に平均超過日数を加算することで行っているが、その他の改善ロジックを採用してもよい。例えば、平均超過日数とは全く別個に、改善処理用の初期日数を予め設定しておき、平均超過日数が標準値を超えた場合には、当該設定された初期日数を標準日数に加算してもよい。また、ユニット移行ロジックの改善は、最多の離脱先のユニットIDを自動的に付加する以外のロジックで実行してもよく、例えば、一度でも医師に選択されたユニットシートの全てのユニットIDを自動的に付加してもよい。また、改善累計数が所定値を超えた場合や、調整後解析値と標準値との差異が所定値よりも大きいような場合には、標準情報を根本的に見直す必要があると考え、所定の出力手段に対して警報を出力するような処理を加えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明は、医療分野を含む様々な分野における実施行為の標準化システムに適用できるもので、実施行為に関連する情報を実施履歴に基づいて自動的に改善することで、実施行為を規定する標準化情報の質を高めることに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係る医療行為統合支援システムの全体構成を概念的に示す説明図である。
【図2】臨床プロセスチャート及びユニットシートの基本構成モデルを示す図である。
【図3】ユニットシートの表示画面例を示す図である。
【図4】臨床プロセスチャートの具体例を示す図である。
【図5】標準実施順序情報の構成例を示す図である。
【図6】標準実施内容情報の構成例を示す図である。
【図7】改善履歴情報の構成例を示す図である。
【図8】対象情報の構成例を示す図である。
【図9】基本リソース情報の構成例を示す図である。
【図10】所要リソース情報の構成例を示す図である。
【図11】現状リソース情報の構成例を示す図である。
【図12】標準実施順序情報の構成例を示す図である。
【図13】標準実施内容情報の構成例を示す図である。
【図14】修正実施内容情報の構成例を示す図である。
【図15】実施履歴情報の構成例を示す図である。
【図16】実施履歴情報の構成例を示す図である。
【図17】実施者情報の構成例を示す図である。
【図18】解析値調整情報の構成例を示す図である。
【図19】解析結果情報の構成例を示す図である。
【図20】標準値情報の構成例を示す図である。
【図21】改善点情報の構成例を示す図である。
【図22】実施行為統合支援処理全体のフローチャートである。
【図23】実施計画作成処理のフローチャートである。
【図24】実施計画修正処理のフローチャートである。
【図25】実施計画管理処理のフローチャートである。
【図26】履歴解析処理のフローチャートである。
【図27】解析値算出処理のフローチャートである。
【図28】改善点特定処理のフローチャートである。
【図29】実施計画改善処理のフローチャートである。
【図30】標準情報改善処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 医療行為統合支援システム
10 作成サーバ
11、21、31 記憶部
11a、31e 標準実施順序情報DB
11b、31f 標準実施内容情報DB
11c 改善履歴情報DB
12、22、32 制御部
12a 実施計画作成部
12b 実施計画改善部
13、23、33 ネットワークIF
20 解析サーバ
21a 実施履歴情報DB
21b 実施者情報DB
21c 解析値調整情報DB
21d 解析結果情報DB
21e 標準値情報DB
21f 改善点情報DB
22a 履歴解析部
22b 改善点特定部
30 管理サーバ
31a 対象情報DB
31b 基本リソース情報DB
31c 所要リソース情報DB
31d 現状リソース情報DB
31g 修正実施内容情報DB
31h 実施履歴情報DB
40 ネットワーク
50 オーダサーバ
60 支援端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定対象に対して実施され得る実施行為の内容及び実施順序を含んだ実施計画を作成する作成手段と、
前記作成手段にて作成された実施計画の実施を管理する管理手段と、
前記管理手段にて管理された実施計画の実施の結果に基づいて、前記実施計画に関する解析を行う解析手段とを備え、
前記管理手段は、
前記実施計画の実施時に取得された実施履歴情報を格納する実施履歴情報格納手段と、
前記実施計画の実施時に実施履歴情報を所定方法にて取得して前記実施履歴情報格納手段に格納する実施履歴情報取得手段とを有し、
前記解析手段は、
前記実施履歴情報格納手段にて格納された前記実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって取得される解析値に対して、標準的な値として設定された標準値を格納する標準値情報格納手段と、
前記実施履歴情報格納手段にて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって前記解析値を取得する履歴解析手段と、
前記履歴解析手段にて取得された前記解析値を、前記標準値情報格納手段にて格納された前記標準値と比較することにより、前記実施計画における実施行為の内容及び実施順序の改善点を特定する改善点特定手段とを有し、
前記作成手段は、
前記実施行為の標準的な内容及び標準的な実施順序を含んだ標準情報格納手段と、
前記改善点特定手段にて特定された改善点に基づいて、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序を改善する改善手段と、
前記改善手段にて改善された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序に基づいて、前記実施計画を作成する実施計画作成手段とを有すること、
を特徴とする実施計画統合支援システム。
【請求項2】
前記管理手段は、前記実施計画を実施する複数の実施者の各々に対応して配置され、
前記解析手段は、前記複数の実施者の属性に関する情報を格納する実施者情報格納手段を備え、
前記履歴解析手段は、解析の対象になる前記実施履歴情報に対応する実施計画を実施した実施者を所定方法にて特定し、当該特定した実施者の属性を前記実施者情報格納手段から取得し、当該取得した属性に基づいて当該実施履歴情報を解析すること、
を特徴とする請求項1に記載の実施計画統合支援システム。
【請求項3】
前記作成手段は、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序に対する改善に関する改善履歴情報を格納する改善履歴情報格納手段を備え、
前記改善手段は、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序を改善した場合、当該改善に関する改善履歴情報を前記改善履歴情報格納手段に格納すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の実施計画統合支援システム。
【請求項4】
前記所定対象は、患者であり、
前記実施行為は、前記患者に対して実施され得る医療行為であり、
前記実施計画は、前記患者に対して当該患者の疾患に応じて実施され得る医療行為の内容及び実施内容を含んだ医療計画であること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の実施計画統合支援システム。
【請求項5】
所定対象に対して実施され得る実施行為の内容及び実施順序を含んだ実施計画に関する処理を行なうコンピュータであって、前記実施計画の実施時に取得された実施履歴情報を格納する実施履歴情報格納手段と、前記実施履歴情報格納手段にて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって取得される解析値に対して、標準的な値として設定された標準値を格納する標準値情報格納手段と、前記実施行為の標準的な内容及び標準的な実施順序を含んだ標準情報格納手段とを備えたコンピュータに、実行させる実施計画統合支援プログラムであって、
前記実施計画の実施時に実施履歴情報を所定方法にて取得して前記実施履歴情報格納手段に格納する実施履歴情報格納ステップと、
前記実施履歴情報格納ステップにおいて格納された実施履歴情報を対象として所定の統計解析を行うことによって前記解析値を取得する履歴解析ステップと、
前記履歴解析ステップにおいて取得された前記解析値を、前記標準値情報格納手段にて格納された前記標準値と比較することにより、前記実施計画における実施行為の内容及び実施順序の改善点を特定する改善点特定ステップと、
前記改善点特定ステップにおいて特定された改善点に基づいて、前記標準情報格納手段にて格納された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序を改善する改善ステップと、
前記改善ステップにおいて改善された前記標準的な内容及び前記標準的な実施順序に基づいて、前記実施計画を作成する実施計画作成ステップと、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする実施計画統合支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−129200(P2009−129200A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303667(P2007−303667)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(502099201)
【出願人】(504426089)
【出願人】(505411756)
【出願人】(301018603)株式会社サイバー・ラボ (11)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)