説明

室内侵入花粉捕捉方法

【課題】外気進入部を介した換気を行いながらも、室内に侵入した花粉を効率的に捕捉することで、花粉症の症状を抑制しえる環境を提供する。
【解決手段】室内と外界とが接する外気進入部の室内側下部に、花粉捕捉部を設け、室内に侵入した花粉を捕捉する。花粉捕捉部を、非揮発もしくは低揮発性の液性成分及び/又は粘着性成分が塗布又は含浸された部材を含むようにする方法も有効である。さらに、花粉捕捉部がシート状部材を含んで構成される場合、シート状部材を、不織布又は織布としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内へ侵入した花粉を効果的に捕捉する、室内侵入花粉捕捉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スギやヒノキの花粉は、アレルギー症状を引き起こすアレルゲン物質であり、その特異的な症状は花粉症と呼ばれている。花粉は窓や扉から室内に侵入してくるため、窓や扉を閉め切ることで侵入を防止するなどの方法がとられている。しかしながら、窓や扉を閉め切りにより外気を遮断すると室内の湿度が上昇し、カビやダニの繁殖を促進させるなどの室内環境の悪化が引き起こされるため、外気を遮断することなく、かつ室内に侵入した花粉を効率的に捕捉できる方法が強く求められている。
【0003】
花粉侵入防止方法としては特許文献1には換気小窓にフィルターを設置する方法、特許文献2には花粉侵入防止装置を具備する換気扇の技術が開示されている。しかしながらこのような方法は限られた部分においてのみ花粉侵入してくる花粉の捕捉が可能となるが、窓や扉といった場所からの侵入した花粉に対しては捕捉することができない。また、通気抵抗による換気効率の低下や、高価な設備を必要とするといった問題もある。
【0004】
また、特許文献3には花粉捕捉シートの技術が開示されているが、該技術は布団カバーなどに用いるものであり、室内の特定の箇所に設置する点については示唆するものではない。また、特許文献4、5には花粉症アレルゲン除去材の技術が開示されているが、これらはマスクなどに応用するものである。
【特許文献1】特開2005−98085号公報
【特許文献2】特開2001−280656公報
【特許文献3】特開2004−332122号公報
【特許文献4】特開平7−171387号公報
【特許文献5】特開平4−90762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外気進入部を介した換気を行いながらも、室内に侵入した花粉を効率的に捕捉することで、花粉症の症状を抑制しえる環境を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、外気進入部を介した換気を行いながらも室内に侵入した花粉を効率的に捕捉するために、室内の花粉分布を調べた結果、室内の花粉のほとんどが換気扇、窓及び玄関などの外気進入部下部に集中していること、一方で外気進入部から遠ざかると劇的に花粉量が減ること、その傾向は一般生活においても同様な傾向にあることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、室内と外界とが接する外気進入部の室内側下部に、花粉捕捉部を設ける、室内侵入花粉捕捉方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外気進入部を介した換気を行いながらも、室内に侵入した花粉を効率的に捕捉することで、花粉症の発症を抑制しえる環境を提供することができる。つまり、本発明によれば、窓や扉を開放した状態で換気を行っても、室内に侵入した花粉を効果的に捕捉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は換気扇、窓及び玄関などの外気進入部の室内側下部に花粉を捕捉可能にする状態を作ることに本質がある。本発明では、該状態の具体例を複数挙げることができるため、こうした花粉捕捉手段を花粉捕捉部と称することとする。
【0010】
また、本発明における外気進入部とは室内と外界とが接する部分を指し、具体的には窓、扉、換気口、及び換気扇を指す。これらは、室内への外気の導入手段である。
【0011】
まず、住宅自体の構造を、花粉捕捉部を具備するように設計することである。具体的な態様の1つとしては、外気進入部の室内側下部に特定の範囲において、床よりも低い部位を設けることで達成することができる。室内の例えば、スギ花粉の質量は比較的重いため、窪みをつけることで、そこに花粉を捕捉することができる。バリアフリーを考慮するならば、窪み部分に剛性の高いメッシュ状の金属網などをはめ込む構造を提案することができる。従って、本発明では該要件を備えた部屋又は住宅もまた提案する。なお、窪みないし凹部の程度は、深さとして、少なくとも0.5mm以上、特には5mm以上必要であり、花粉捕捉部の設置位置は外気進入部の室内側の開口部から水平面方向に200cm以内の位置の下部に設置すればよい。なお、本発明では、開口部とは室内と外界との接する部分において、開口している部分だけでなく、窓、玄関及び換気扇などの開口可能な部分もまた指す。最も理想的には、花粉捕捉部は、室内側開口部から水平方向に20〜200cmの幅にすることで、外気進入部より侵入した花粉を効果的に捕捉をすることができる。なお該捕捉部は、単に凹ませるだけではなく、その表面は、例えばやすりのように、ざらざらした質感を与えることで、マクロ的には摩擦性を高め、ミクロ的には物理的障害性を付与することが好ましく、或いは、後述するが表面に布や粘着性の物質を備えるものであってもよい。もちろん該捕捉部を深くしたり、縁に向かって傾斜させることで、花粉がフロアに舞い上がりにくいように、床面自体を設計してもよい。
【0012】
本発明の花粉捕捉部としては、窪みや凹部を設ける以外にも、非揮発もしくは低揮発性の液性成分及び/又は粘着性成分を含有する液体又は固体を直接床に塗布することのよって花粉捕捉部としてもよく、或いは該成分を塗布又は含浸した部材を床面に敷設することで達成してもよい。こうした部材は、後述するシート部材表面に塗布したもの、或いは布などに含浸させたもの等が挙げられる。非揮発もしくは低揮発性の液性成分及び/又は粘着性成分としては、花粉を捕捉しやすい液性のものがよく、本発明でいう液性とは、室温で液体又はゲル状物質であるか、或いは潮解性を有する無機塩であってもよい。
【0013】
また花粉捕捉部をシート状部材にすることで、設置と除去操作が容易になる。シート部材としては、フィルム状のものであってもよく、また不織布や織布などの、引っかかりのある布を敷設する方法も考えられ、シート部材に前記の非揮発もしくは低揮発性の液性成分及び/又は粘着性成分を塗布又は含浸させたものを挙げることができる。シート状部材は外気進入部の室内側の開口部から水平方向に200cm以内の下部ないし床面に設置されることが好ましく、シート幅は10cm以上、更には20〜200cm、特には20〜150cm有することが好ましく、シートの設置長さは、開口部からの吹き込みを考慮すると、開口部の幅以上であることが望ましい。敷設方法のひとつとして、例えば開口部を囲むように床面にコの字型に設置する方法が挙げられるが、理想的にはシート部材は外気進入部の室内側の開口部直下から敷設することが望ましい。
【0014】
本発明における花粉捕捉部材の設置方法をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1は本発明において用いる花粉捕捉部材が室内に設置された状況の一例を示す平面概略図である。花粉捕捉部材1は外気進入部の一例である窓2の下部床面上に窓2に対して水平方向に設置されている。室内花粉捕捉部材1の幅3は20〜200cm、より好ましくは20〜150cmであり、シート状花粉捕捉部材1の一辺(端部)4を窓2の位置する壁に接する状態で用いることがより好ましい。
【0015】
また本発明実施の際には換気の条件を考慮することでさらに効率的な花粉の捕捉が可能となる。例えばスギ花粉は3〜5cm/sと比較的速やかに沈降することから室内に入った風の流速を遅くする策を講じれば、室内に侵入したと同時に沈降しはじめ、その結果、外気進入部近傍でより花粉を捕捉しやすくなる。室内に入った風の流速を遅くするには、例えば換気時に網戸5、レースカーテン6を閉める、レースカーテン6の目開きをより小さくする、窓2の開口部7を狭くする、などの方法が挙げられる。また換気扇や換気口に関しては室内側より通気性部材、例えば布又はネットで覆っても良い。なお布又はネットは、少なくとも室内に入った風の流速を遅くさせることが可能な程度の坪量又はメッシュもしくは目の粗さである必要がある。このように室内に入った風の流速を遅くするための工夫をすることで、室内への換気を妨げることなく、且つ花粉捕捉部の幅を100cm以下に縮小しても効果的な捕捉効果を得ることができる。
【0016】
本発明においては非揮発もしくは低揮発性の液性成分及び/又は粘着性成分と不織布からシート状花粉捕捉部材を用いることで花粉を捕捉しやすくなると共に、一度捕捉した花粉の再飛散を防止できる。
【0017】
本発明に用いる非揮発もしくは低揮発性の液性成分は有機性化合物(以下液性有機化合物とする)が好ましく具体的な化合物としては鉱物油、合成油、及び界面活性剤の内、少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。上記鉱物油としては、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。上記合成油としては、アルキルベンゼン油、ポリオレフィン油、ポリグリコール油等が用いられる。上記界面活性剤としては、非イオン系、陽イオン系、陰イオン系、両性系の各種界面活性剤が挙げられ、不織布に用いられる繊維の種類や併用する他の成分の種類に応じて適宜用いられる。これらの液性有機化合物のうちパラフィン系炭化水素系、ポリグリコール油が好ましく、特にワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセリンが好ましい。
【0018】
本発明に用いる粘着性成分としては、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系及びシリコーン系等が挙げられ、上記ゴム系の素材としては、例えば、天然ゴムの他、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、ポリイソブチレン、イソブチレン/イソプレン共重合ゴム(ブチルゴム)、熱可塑性ゴム(スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、クロロプレンゴム、ブタジエン/アクリロニトリルブロックコポリマー等)などから選ばれる少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。上記アクリル系の素材としては、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸オクチル(主として2-エチルヘキシル)、及びこれらを基礎として適当なコポリマーを選択して調製した共重合物等が挙げられ、上記ビニルエーテル系の素材としては、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどの重合体が挙げられ、上記シリコーン系の素材としては、前述の主としてポリジメチルシロキサンポリマーからなる重合体などが挙げられる。これらの粘着性成分のうちゴム系、アクリル系、シリコーン系が好ましい。
【0019】
本発明の捕捉部のシート部材としても用いることができる不織布としては、綿、麻等の天然繊維、及びビスコースレーヨン、テンセルやアセテート等のセルロース系化学繊維やポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などを用いて製造した不織布を用いることができ、これらの繊維のうち、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維が好ましい。本発明では不織布に前記非揮発又は低揮発性の液性成分及び/又は粘着性成分を含浸させることが好ましい。
【0020】
前述の不織布の製造に用いる繊維は単繊維でも分割繊維でも良く、不織布に加工した際の繊維径は0.2〜2.5dtexことが好ましく、さらに0.3〜1.5dtexであることがより好ましい。
【0021】
本発明に用いる不織布は湿式不織布、ケミカルボンド、サーマルボンド(エアスルー)、エアーレイド等の乾式不織布の他にスパンレース、スパンボンド、メルトブローン、ニードルパンチ及び/又はステッチボンド等の不織布などいずれも方法で製造された不織布も用いることができる。中でも花粉捕捉性能の点からエアスルー不織布、及びスパンレース不織布を用いることが好ましい。
【0022】
本発明おける不織布の厚みは乾燥状態において3g/m2の荷重下で0.2〜10mmであることが好ましく、さらに0.4〜5mmであることがより好ましい。
【0023】
また本発明における不織布の目付は10〜300g/m2であることが好ましく、さらに30〜200g/m2であることがより好ましい。
【0024】
上記液性有機化合物及び/又は粘着性成分の不織布への処理量は花粉捕捉、花粉再飛散防止、及びシート上を歩行する際に不具合が生じないようする観点から不織布に対しての処理量は1〜20g/m2であることが好ましく、さらに2〜10g/m2であることがより好ましい。また液性有機化合物と粘着性成分を併用する場合は、液性有機化合物/粘着性成分の重量比は100/1〜50/50であることが好ましい。また前述の液性有機化合物及び/又は粘着性成分はそのままでの使用、溶剤に希釈しての使用、界面活性剤を用いて分散/溶解/乳化した状態での使用などいずれの状態で不織布に処理しても良く、また処理後は余分な溶剤や水を乾燥などにより取り除くことがより好ましい。特に水に分散/溶解/乳化させた状態で不織布に対して処理をする場合、不織布への濡れ性を向上させる目的で上記液性有機化合物として記載した界面活性剤を添加することが好ましい。
【0025】
また本発明にはシート表面に多数のスリットを有するシート状花粉捕捉部材も用いることができる。
【0026】
図2には本発明のスリットを有するシート状室内侵入花粉捕捉部材の断面図が示されている。シート部材表面には花粉を捕捉するためのスリット8が必要であり、花粉捕集性と再飛散防止の点からスリットの幅9が0.01〜1mm、スリット8の深さ10が0.5〜5mm、幅1cmあたりのスリット8の本数が5〜50本であることが好ましく、さらにスリット8の幅10が0.5〜0.5mm、スリット8の深さ11が1〜5mm、幅1cmあたりのスリット8の本数が10〜50本であることがより好ましい。またスリット8は一方向のみでなく、例えば該スリット8と垂直方向にも交差するスリット8を設けるなど、何方向に入れても良い。
【0027】
スリット8を有するシート状花粉捕捉部材に用いる材質は丸めたりすることができるようフレキシブルなものが適しており、加工性の点からポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、天然ゴム、合成ゴムなどが好ましく、特にポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。また該シート状花粉捕捉部材に用いるシートの厚さは好ましくは1〜10mmであり、より好ましくは1〜5mmである。
【0028】
またスリットを有するシート状花粉捕捉部材に対しても、前述の液性成分及び/又は粘着性成分を処理してもよく、その場合の処理量は1〜20g/m2であり、さらに2〜20g/m2であることがより好ましい。
【実施例】
【0029】
実施例1
<不織布を用いたシート状花粉捕捉部材の作成>
長さ38mm、太さ0.9dtexのポリエステル繊維を用い、スパンレース法により厚さ1.5mm、目付100g/m2の不織布を作成した。この不織布を10cm角の大きさに裁断し、表1の捕捉成分を片面のみ30mg塗布した。処理後、室温で1日放置したものをシート状花粉捕捉部材とした。一方、比較例は表1の捕捉成分を塗布しないものとした。
【0030】
<花粉再飛散防止性の評価>
前述の方法により作成したシート状花粉捕捉部材の片面(捕捉成分の塗布面)に、5cmの高さから1mgのスギ花粉を均一にまいた。その後、シート状花粉捕捉部材を両手で持ち、軽く5回振りさばいた後、花粉捕捉部材より0.2%BSAを含む0.01M PBS(pH7.4)20mlを用いてスギ花粉アレルゲン(Cry j 1)を室温で24時間抽出し、下記ELISA法を用いてCry j 1量を定量した。その後、下記式に従い、花粉再飛散防止率を算出した。結果を表1に示した。
花粉再飛散防止率(%)=
{(シート状花粉捕捉部材に残留していたCry j 1量)/(事前に付着させた花粉量に相当するCry j 1量)}×100
【0031】
<Cry j 1 の定量法(ELISA法)>
1.モノクローナル抗体Ab-Cry j1 mAb 013(生化学工業(株))をPBS(リン酸バッファー液:pH 7.4±0.1、KH2PO4、NaCl、Na2HPO4・7H2Oをそれぞれ0.144g/L、9.00g/L、0.795g/Lとなるように蒸留水に溶解したもの)で2μg/mlの濃度に希釈しマイクロプレート(住友ベークライトELISA PLATE H TYPE)の各ウェルに50μlずつ分注し、室温で2時間静置する。
2.プレートをPBSで3回洗浄する。
3.1%BSAを含むPBSを各ウェルに200μlずつ分注し室温で2時間静置し、ブロッキングを行う。
4.プレートをTween20(SIGMA)を0.05質量%含有するPBS(以下、T-PBSとする)で3回洗浄する。
5.スタンダードとして精製 Cry j 1(生化学工業(株))を4ng/mlから5管 T-PBS で2n倍希釈し、各々50μlを各ウェルに分注し、更に陰性対照として Cry j 1の替わりにT-PBSを50μl加えたウェルを用意する。測定する試料はT-PBSで適宜希釈してから各ウェルに50μlずつ分注し、室温で2時間静置する。
6.プレートをT-PBSで3回洗浄する。
7.至適濃度のPeroxidase Conjugated Ab-Cry j1 mAb 053(生化学工業(株))を各ウェルに50μl分注し室温で2時間静置する。
8.プレートをT-PBSで3回洗浄する。
9.ペルオキシダーゼ用発色キットT(住友ベークライト)を用いて発色を行う。まず発色剤10mLに基質液を0.1mL加えて混和して発色液とする。この発色液を各ウェルに100μlずつ分注し室温で発色させる。その後停止液を各ウェルに100μlずつ分注して反応を止め、プレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定する。
10.スタンダードの吸光度から得られる検量線を用いて測定する試料の Cry j1濃度を算出する。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例2
<スリット式侵入花粉捕集部材の作成>
真空成型法によりスリット幅が0.1mm、スリット深さが0.5mm、1cmあたりのスリット数が40本であり、かつメッシュ状にスリットが入っている厚さ1mmのポリエチレン製のシート状花粉捕捉部材を作成した。
【0034】
<花粉再飛散防止性の評価>
前述の方法により作成した10cm角のシート状花粉捕捉部材のスリットを設けた面に対して5cmの高さから1mgのスギ花粉を均一にまいた。その後、ひっくり返して軽く5回たたいた後、花粉捕捉部材より0.2%BSAを含む0.01M PBS(pH7.4)20mlを用いてスギ花粉アレルゲン(Cry j 1)を室温で24時間抽出し、前述のELISA法を用いてCry j 1量を定量し、実施例1と同様に花粉再飛散防止率を算出した。花粉再飛散防止率は95%であり、効率的に花粉を捕捉することができた。
【0035】
実施例3
<花粉捕集部材の作成>
実施例1で使用した不織布から30cm×200cmの大きさのシートを作成し、その片面にワセリン3g/m2を塗布した。処理後、室温で1日放置したものをシート状花粉捕捉部材とした。
【0036】
<花粉捕集性の評価>
スギ花粉飛散シーズンにおいて、同じ集合住宅内の同じ階にある隣接した同一の間取り(3LDK)の住宅A、Bを用いて花粉捕捉性能の評価を行った。この住宅A、Bは、家具などの家財道具を一切置かず、無人の状態にて使用した。
【0037】
住宅Aの北側に面した部屋の窓及び南側に面した部屋の窓のそれぞれ下部の床面に、窓に対して垂直方向に幅150cm、長さ200cm(前述の30cm×200cmの不織布を5枚使用)のシート状花粉捕集部材を前述のワセリン処理面を表側にして養生テープを用いて貼り付けた。住宅Bにはシート状花粉捕集部材は設置をしなかった。
【0038】
住宅A、Bいずれの住宅においても北側、及び南側の窓は全開にし、それ以外の窓はすべて閉め切った。またこれら窓の網戸及びレースカーテンは閉めた状態し、室内の換気扇、換気口をすべて目張りした。こうした条件で8時間換気を行い、開けていた窓を閉めた後、A宅より花粉捕捉部材を撤去した。その後、A宅、B宅共に床面対して掃除機がけをし、捕集できなかった花粉等、床面に存在する花粉をそれぞれ紙パックに回収した。
【0039】
回収した紙パックから0.2%BSAを含む0.01M PBS(pH7.4)20mlを用いて室温で24時間抽出し、遠心分離後の上清をサンプルとし、Cry j 1量を前述のELISA法を用いて定量した。その後、下記式に従い、花粉捕捉率を算出した。
花粉捕捉率(%)={1−(A宅の床面に存在したCry j 1量)/(B宅の床面に存在したCry j 1量)}×100
【0040】
花粉捕捉率は70.5%であり、設置した花粉捕捉部材により侵入したスギ花粉の70.5%にあたるCry j 1を捕捉することができた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】室内にシート状花粉捕捉部材を設置した状況を示す平面概略図である。
【図2】スリットを有するシート状花粉捕捉部材の一例を示す断面略示図である。
【符号の説明】
【0042】
1:花粉捕捉部材
8:スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内と外界とが接する外気進入部の室内側下部に、花粉捕捉部を設ける、室内侵入花粉捕捉方法。
【請求項2】
花粉捕捉部が、非揮発もしくは低揮発性の液性成分及び/又は粘着性成分が塗布又は含浸された部材を含む、請求項1記載の室内侵入花粉捕捉方法。
【請求項3】
花粉捕捉部がシート状部材を含んで構成される、請求項1記載の室内侵入花粉捕捉方法。
【請求項4】
シート状部材が不織布又は織布である請求項3記載の室内侵入花粉捕捉方法。
【請求項5】
シート状部材を外気進入部の室内側の開口部から水平方向に200cm以内の場所に設置する請求項3又は4記載の室内侵入花粉捕捉方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−113827(P2007−113827A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304855(P2005−304855)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年9月30日 日本アレルギー学会事務所発行の「アレルギー 第54巻8・9号 第55回日本アレルギー学会秋季学術大会号」に発表
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】