説明

室内機

【課題】輻射熱交換器(輻射パネル)の輻射板の温度が低下するのを防ぐ。
【解決手段】室内機内において室内ファンと対向するように設けられた室内熱交換器と、室内機の表面に設けられた輻射パネルとを有する。輻射パネルを構成する輻射板31の下端部は、空気を室内機内に吸い込む補助吸込口に面している。そして、輻射板31の下端部に、伝熱を抑制する伝熱抑制手段となる溝部39を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内熱交換器と輻射熱交換器とを備えた室内機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内機として、その内部においてファンと対向するように配置された室内熱交換器と、その表面に配置された輻射パネルとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の室内機は、下端部に設けられた吸込口から空気を吸い込み、上端部に設けられた吹出口から空気を吹き出す構成になっており、輻射パネルの輻射板の下端部は、吸込口に面している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−36527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような室内機においては、吸込口から吸い込まれる空気によって、輻射板の下端部が冷却される。そして、輻射板の下端部以外の部分の熱が、熱伝導により輻射板の下端部に伝わり、輻射板の温度が全体的に低下するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、輻射熱交換器(輻射パネル)の輻射板の温度が低下するのを防ぐことができる室内機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る室内機は、室内熱交換器と輻射熱交換器とを備えた室内機であって、前記室内熱交換器が、前記室内機内においてファンと対向するように設けられ、前記輻射熱交換器が、前記室内機の表面に設けられており、空気を前記室内機内へ吸い込む吸込口と、前記輻射熱交換器の一部であって、前記吸込口に面する端部を有する輻射板とを有しており、前記輻射板の前記端部に、伝熱抑制手段が設けられている。
【0007】
この室内機では、伝熱抑制手段により、輻射板における吸込口に面する端部以外の部分の熱が、吸い込み空気によって冷却された輻射板の端部に移動するのを抑制できる。したがって、輻射板の温度が全体的に低下するのを防ぐことができる。
【0008】
第2の発明に係る室内機は、第1の発明に係る室内機において、前記室内機の下端部に設けられ、空気を吸い込む主吸込口と、前記室内機の上端部に設けられ、空気を吹き出す吹出口と、前記主吸込口と前記吹出口との間に設けられた補助吸込口を有しており、前記輻射板の前記端部が、前記補助吸込口に面している。
【0009】
この室内機では、輻射板の端部に面する補助吸込口を設けた場合でも、輻射板の温度が全体的に低下するのを防ぐことができる。
【0010】
第3の発明に係る室内機では、第1または第2の発明に係る室内機において、前記伝熱抑制手段が、前記輻射板の前記端部に設けられた溝部である。
【0011】
この室内機では、輻射板の溝部が形成された部分は、その他の部分に比べて厚みが薄く、伝熱抵抗が大きくなっている。よって、輻射板における端部以外の部分の熱が、溝部及び溝部よりも端部側に移動するのを抑制できる。また、別部材を用いることなく容易に伝熱抑制手段を設けることができる。
【0012】
第4の発明に係る室内機では、第1または第2の発明に係る室内機において、前記伝熱抑制手段が、前記輻射板の前記端部に設けられた肉薄部である。
【0013】
この室内機では、輻射板の肉薄部が形成された部分は、その他の部分に比べて伝熱抵抗が大きくなっている。よって、輻射板における端部以外の部分の熱が、肉薄部が設けられた端部に移動するのを抑制できる。また、別部材を用いることなく容易に伝熱抑制手段を設けることができる。
【0014】
第5の発明に係る室内機では、第4の発明に係る室内機において、前記肉薄部が、先端に近付くにつれて薄くなる。
【0015】
この室内機では、輻射板における肉薄部が形成された端部の先端に近付くにつれて、伝熱抵抗が大きくなっている。したがって、輻射板における端部以外の部分の熱が、吸い込み空気によって最も冷却される輻射板の端部の先端近傍に移動するのを抑制できる。
【0016】
第6の発明に係る室内機では、第1または第2の発明に係る室内機において、前記伝熱抑制手段が、前記輻射板の前記端部に設けられた断熱部材である。
【0017】
この室内機では、断熱部材により、輻射板における端部以外の部分の熱が端部に移動するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
第1の発明では、伝熱抑制手段により、輻射板における吸込口に面する端部以外の部分の熱が、吸い込み空気によって冷却された輻射板の端部に移動するのを抑制できる。したがって、輻射板の温度が全体的に低下するのを防ぐことができる。
【0020】
第2の発明では、輻射板の端部に面する補助吸込口を設けた場合でも、輻射板の温度が全体的に低下するのを防ぐことができる。
【0021】
第3の発明では、輻射板の溝部が形成された部分は、その他の部分に比べて厚みが薄く、伝熱抵抗が大きくなっている。よって、輻射板における端部以外の部分の熱が、溝部及び溝部よりも端部側に移動するのを抑制できる。また、別部材を用いることなく容易に伝熱抑制手段を設けることができる。
【0022】
第4の発明では、輻射板の肉薄部が形成された部分は、その他の部分に比べて伝熱抵抗が大きくなっている。よって、輻射板における端部以外の部分の熱が、肉薄部が設けられた端部に移動するのを抑制できる。また、別部材を用いることなく容易に伝熱抑制手段を設けることができる。
【0023】
第5の発明では、輻射板における肉薄部が形成された端部の先端に近付くにつれて、伝熱抵抗が大きくなっている。したがって、輻射板における端部以外の部分の熱が、吸い込み空気によって最も冷却される輻射板の端部の先端近傍に移動するのを抑制できる。
【0024】
第6の発明では、断熱部材により、輻射板における端部以外の部分の熱が端部に移動するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る室内機を備えた空気調和機の概略構成を示す回路図であって、冷房運転モードでの運転時と温風暖房運転モードでの運転時の冷媒の流れを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る室内機を備えた空気調和機の概略構成を示す回路図であって、輻射暖房運転モードでの運転時の冷媒の流れを示す図である。
【図3】図1及び図2に示す室内機の斜視図である。
【図4】図3に示す室内機のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】(a)は図3に示す輻射パネルの正面図であり、(b)は(a)の上視図であり、(c)は(a)の背面図である。
【図6】(a)は図5に示す輻射板の背面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図7】図5(a)のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図7の溝部が形成された下端部の拡大図である。
【図9】本実施形態の第1の変形例に係る室内機における輻射板の下端部の拡大図である。
【図10】本実施形態の第2の変形例に係る室内機における輻射板の下端部の拡大図である。
【図11】本実施形態の第3の変形例に係る室内機における輻射板の下端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る室内機2を備えた空気調和機1について説明する。
【0027】
<空気調和機1の全体構成>
図1及び図2に示すように、本実施形態の空気調和機1は、室内に設置される室内機2と、室外に設置される室外機6とを備えている。室内機2は、室内熱交換器20と、室内熱交換器20の近傍に配置された室内ファン21と、輻射パネル30と、室内電動弁23と、室内の気温を検出するための室内温度センサ24と、を備えている。また、室外機6は、圧縮機60と、四路切換弁61と、室外熱交換器62と、室外熱交換器62の近傍に配置された室外ファン63と、室外電動弁64とを備えている。
【0028】
また、空気調和機1は、室内機2と室外機6とを接続する冷媒回路10を備えている。冷媒回路10は、室外電動弁64、室外熱交換器62及び圧縮機60が順に設けられた主流路11を有している。圧縮機60の吸入側配管及び吐出側配管は、四路切換弁61に接続されている。暖房運転時(後で詳述するように、冷媒回路10において図1、2中実線の矢印で示す方向に冷媒が流れる時)、主流路11の圧縮機60の下流側となる部分に分岐部10aが設けられており、室外電動弁64の上流側となる部分に合流部10bが設けられている。そして、冷媒回路10は、分岐部10aと合流部10bとを接続すると共に、室内熱交換器20が設けられた第1流路12と、分岐部10aと合流部10bとを第1流路12と並列に接続すると共に、輻射パネル30が設けられた第2流路13とをさらに有している。
【0029】
第2流路13における輻射パネル30と合流部10bとの間には、室内電動弁23が設けられている。また、第2流路13における輻射パネル30の両側には、パネル入温度センサ25とパネル出温度センサ26とが付設されている。より具体的には、パネル入温度センサ25は、暖房運転時において、輻射パネル30の後述する輻射熱交換器34(図5(a)等参照)よりも上流側の配管に設けられている。パネル出温度センサ26は、暖房運転時において、輻射パネル30の輻射熱交換器34よりも下流側の配管に設けられている。
【0030】
また、冷媒回路10における圧縮機60の吸入側と四路切換弁61との間にはアキュムレータ65が介設されており、冷媒回路10における圧縮機60の吐出側と四路切換弁61との間には、吐出温度センサ66が付設されている。さらに、室外熱交換器62には、室外熱交温度センサ68が付設されている。
【0031】
室内熱交換器20は、冷媒回路10の一部を構成する配管を有しており、室内熱交温度センサ27が付設されている。室内熱交換器20は、室内ファン21の風上側に配置されている。室内熱交換器20との熱交換により加熱または冷却された空気が、室内ファン21によって温風または冷風として室内に吹き出されることで、温風暖房または冷房が行われる。
【0032】
輻射パネル30は、後で詳述するように、室内機2の表面側に配置されており、冷媒回路10の一部を構成するパネル配管36(図5等参照)を有している。この配管を流れる冷媒の熱が室内に輻射されることで輻射暖房が行われる。室内電動弁23は、輻射パネル30に供給される冷媒の流量を調整するために設けられている。
【0033】
本実施形態の空気調和機1では、冷房運転モード、温風暖房運転モード、及び輻射暖房運転モードの3種類の運転モードでの運転か可能である。冷房運転モードは、輻射パネル30に冷媒を流さないで室内熱交換器20に冷媒を流して冷房を行う運転モードである。温風暖房運転モードは、輻射パネル30に冷媒を流さないで室内熱交換器20に冷媒を流して温風暖房を行う運転モードである。輻射暖房運転モードは、室内熱交換器20に冷媒を流して温風暖房を行うと共に、輻射パネル30に冷媒を流して輻射暖房を行う運転モードである。
【0034】
各運転時における冷媒回路10の冷媒の流れについて図1及び図2を用いて説明する。
冷房運転モード時には、室内電動弁23が閉弁されると共に、四路切換弁61が図1中破線で示す状態に切り換えられる。そのため、図1中破線の矢印で示すように、圧縮機60から吐出された高温高圧冷媒は、四路切換弁61を通って、室外熱交換器62に流入する。そして、室外熱交換器62において凝縮した冷媒は、室外電動弁64で減圧された後、室内熱交換器20に流入する。そして、室内熱交換器20において蒸発した冷媒は、四路切換弁61及びアキュムレータ65を介して、圧縮機60に流入する。
【0035】
温風暖房運転モード時には、室内電動弁23が閉弁されると共に、四路切換弁61が図1中実線で示す状態に切り換えられる。そのため、図1中実線の矢印で示すように、圧縮機60から吐出された高温冷媒は、四路切換弁61を通って、室内熱交換器20に流入する。そして、室内熱交換器20において凝縮した冷媒は、室外電動弁64で減圧された後、室外熱交換器62に流入する。そして、室外熱交換器62において蒸発した冷媒は、四路切換弁61及びアキュムレータ65を介して、圧縮機60に流入する。
【0036】
輻射暖房運転モード時には、室内電動弁23が開弁されると共に、四路切換弁61が図2中実線で示す状態に切り換えられる。そのため、図2中実線の矢印で示すように、圧縮機60から吐出された高温冷媒は、四路切換弁61を通って、室内熱交換器20と輻射パネル30とに流入する。そして、室内熱交換器20と輻射パネル30において凝縮した冷媒は、室外電動弁64で減圧された後、室外熱交換器62に流入する。そして、室外熱交換器62において蒸発した冷媒は、四路切換弁61及びアキュムレータ65を介して、圧縮機60に流入する。
【0037】
<室内機2の構成>
次に、室内機2の構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態の室内機2は、全体として直方体形状を有しており、室内の床面近傍に据え付けるものである。本実施形態においては、室内機2は、床面から10cm程度浮かした状態で、壁面に取り付けられている。なお、以下の説明において、室内機2が取り付けられる壁から突出する方向を「前方」と称し、その反対の方向を「後方」と称する。また、図3に示す左右方向を単に「左右方向」と称し、上下方向を単に「上下方向」と称する。
【0038】
図4に示すように、室内機2は、ケーシング4と、ケーシング4内に収容された室内ファン21、室内熱交換器20、吹出口ユニット46、および電装品ユニット47などの内部機器と、前面グリル42とを主に備えている。後で詳述するように、ケーシング4は、その下壁に形成された主吸込口4aと、その前壁に形成された補助吸込口4b、4cとを有している。さらに、ケーシング4の上壁には、吹出口4dが形成されている。室内機2においては、室内ファン21の駆動により、主吸込口4aから床面近傍にある空気を吸い込みつつ、補助吸込口4b、4cからも空気を吸い込む。そして、室内熱交換器20において、吸い込んだ空気に対して加熱または冷却などを行い調和する。その後、調和後の空気を吹出口4dから吹き出し、室内へと返流させる。
【0039】
ケーシング4は、本体フレーム41、吹出口カバー51、輻射パネル30及び開閉パネル52で構成されている。なお、後述するように、吹出口カバー51は前面パネル部51aを有しており、輻射パネル30は輻射板31を有している。吹出口カバー51の前面パネル部51a、輻射パネル30の輻射板31及び開閉パネル52は、ケーシング4の前面において面一となるように配置され、前面パネル5を構成する。図3に示すように、前面パネル5の右上端部、すなわち吹出口カバー51の前面パネル部51aの右端部には、電源ボタン48と、運転状況を示す発光表示部49とが設けられている。
【0040】
本体フレーム41は、壁面に取り付けられるものであり、上述の各種内部機器を支持している。そして、前面グリル42、吹出口カバー51、輻射パネル30及び開閉パネル52は、内部機器を支持している状態の本体フレーム41の前面に取り付けられている。吹出口カバー51は、本体フレーム41の上端部に取り付けられており、その上壁に左右方向に長い矩形状の開口である吹出口4dが形成されている。輻射パネル30は吹出口カバー51の下方に、開閉パネル52は輻射パネル30の下方にそれぞれ取り付けられている。本体フレーム41の下前端と開閉パネル52の下端との間は、左右方向に長い開口である主吸込口4aとなっている。
【0041】
ここで、ケーシング4内に収容される各内部機器について説明する。
室内ファン21は、ケーシング4の高さ方向中央部分のやや上方において、その軸方向が左右方向に沿うように配置されている。室内ファン21は、下前方から空気を吸い込んで、上後方に吹き出すようになっている。
【0042】
室内熱交換器20は、前面パネル5と略平行に配置されており、前面パネル5の背面と対向する前面熱交換器20aと、前面熱交換器20aの下端部近傍から背面に近付くにつれて上方に傾斜する背面熱交換器20bとで構成されている。前面熱交換器20aは、室内ファン21の前方に配置されており、背面熱交換器20bは、室内ファン21の下方に配置されている。すなわち、室内熱交換器20は、全体として略V字の形状を有しており、室内ファン21と対向しつつ室内ファン21の前方と下方とを取り囲むように配置されている。
【0043】
室内熱交換器20の下方には、左右方向に延在するドレンパン22が配置されている。また、ドレンパン22の下方には、電装品ユニット47が配置されている。
【0044】
吹出口ユニット46は、室内ファン21の上方に配置されており、室内ファン21から吹き出された空気をケーシング4の上壁に形成された吹出口4dへと導くものである。吹出口ユニット46は、吹出口4dの近傍に配置される水平羽根46aと、水平羽根46aの下方に配置される垂直羽根46bとを備えている。水平羽根46aは、吹出口4dから吹き出される空気流の上下方向の風向きを変更すると共に、吹出口4dの開閉を行う。垂直羽根46bは、吹出口4dから吹き出される空気流の左右方向の風向きを変更する。
【0045】
前面グリル42は、上述のように、室内熱交換器20、室内ファン21、吹出口ユニット46及び電装品ユニット47などの内部機器が取り付けられた状態の本体フレーム41を覆うように、本体フレーム41に取り付けられる。より具体的には、前面グリル42は、前面熱交換器20aの上下方向略中央部分から、本体フレーム41の下端までを覆うように、本体フレーム41に取り付けられている。前面グリル42は、フィルタ保持部42aと、主吸込口4aに配置される吸込口グリル42bとを有している。フィルタ保持部42aには、下部フィルタ43と上部フィルタ44とが上下に並んで取り付けられる。
【0046】
吹出口カバー51は、吹出口ユニット46を覆っている。そして、上述のように、吹出口カバー51の上壁には吹出口4dが形成されている。また、吹出口カバー51の前面には、前面パネル部51aが設けられている。前面パネル部51aは、左右方向に長い矩形形状を有している。
【0047】
輻射パネル30は、左右に長い略矩形形状を有しており、後で詳述するように、輻射熱交換器34を含んでいる。
【0048】
開閉パネル52は、輻射パネル30の輻射板31の下方に着脱可能に取り付けられている。開閉パネル52は、左右方向に長い矩形形状を有している。図4に示すように、開閉パネル52の上端の上下方向位置は、前面グリル42の上端とほぼ同じである。上述のように、開閉パネル52の下端は、主吸込口4aに面している。したがって、開閉パネル52を取り外すことにより、前面グリル42を露出させ、前面グリル42のフィルタ保持部42aに取り付けられている下部フィルタ43及び上部フィルタ44の着脱を行うことができる。
【0049】
上述のように、前面パネル5は、吹出口カバー51に設けられた前面パネル部51aと、輻射パネル30に設けられた輻射板31と、開閉パネル52とで構成されている。そして、輻射パネル30の輻射板31と開閉パネル52との間には、左右方向に伸延するスリット状の開口である補助吸込口4bが形成されている。すなわち、輻射板31の下端部は、補助吸込口4bに面している。また、開閉パネル52の上端近傍にも、左右方向に伸延するスリット状の開口である補助吸込口4cが形成されている。補助吸込口4b、4cは、前面熱交換器20aと対向している。
【0050】
<輻射パネル30の構成>
図5及び図7に示すように、輻射パネル30は、アルミ製の輻射板31と、輻射板31の背面に取り付けられた樹脂製の断熱カバー32とで主に構成されている。また、図6に示すように、輻射板31の背面には、冷媒回路10を構成する配管の一部であるパネル配管36が取り付けられている。より詳細には、パネル配管36は、冷媒回路10におけるパネル入温度センサ25とパネル出温度センサ26との間の配管である。
【0051】
図5(a)に示すように、パネル配管36の両端部は、正面視において輻射板31の右側端部の下方に位置している。そして、パネル配管36の両端には、パネル入温度センサ25が付設されている部分の近傍の配管に接続される接続部36aと、パネル出温度センサ26が付設されている部分の近傍の配管に接続される接続部36bとが設けられている。室外機6から送られてきた冷媒は、接続部36aを介してパネル配管36内に流入し、接続部36bからパネル配管36の外に流れ出る。
【0052】
また、図5(a)において破線で示すように、パネル配管36における輻射板31の背面と対向する部分には、右側に開放された略U字の形状を有する輻射配管36cが設けられている。より詳細には、輻射配管36cは、左右方向に沿って伸延する直線状部分を上下に2つ備えており、これら2つの直線状部分の左側端部同士が接続されて、略U字の形状をなしている。そして、上述の2つの直線状部分のうち上方に位置するものの右側端部は接続部36aに接続されており、下方に位置するものの右側端部は接続部36bに接続されている。よって、接続部36aを介してパネル配管36内に流入した冷媒は、輻射配管36cの上方に位置する直線状部分を、正面視において右側から左側に向かって流れた後、下方に位置する直線状部分を、左側から右側に向かって流れ、接続部36bから流れ出る。
【0053】
図6(a)、図7に示すように、輻射板31の背面には、左右方向に沿って伸延する突起31aが上下に2本形成されている。上述のパネル配管36における輻射配管36cの直線状部分は、この突起31aに埋設されており、輻射板31に固定されている。より詳細には、輻射配管36cの直線状部分は、その表面の半分以上が突起31aによって被覆されており、輻射板31側とは反対側の部分が露出している。このように、輻射配管36cの表面のほとんどが、輻射板31に形成された突起31aで覆われているので、パネル配管36内を流れる冷媒の熱を輻射板31に効率良く伝えることができる。図6(b)に示すように、パネル配管36は、輻射配管36cの直線状部分が輻射板31の背面と接触しており、輻射配管36cの直線状部分以外の部分は輻射板31の背面から離隔している。なお、輻射パネル30において、輻射板31全体と輻射配管36cとで構成された部分が、輻射熱交換器34である。
【0054】
図6及び図7に示すように、輻射板31の背面における上方に位置する突起31aの上方、及び下方に位置する突起31aの下方には、断熱カバー32をネジ止めするための固定部31bが形成されている。固定部31bは、左右方向に沿って伸延しており、輻射板31の背面から突出していると共にその先端が突起31a側に向かって折り曲げられている。この折り曲げられた部分は、輻射板31の背面と略平行であり、断熱カバー32をネジ止めするためのネジ孔31cが複数形成されている。
【0055】
断熱カバー32は、ネジによって、輻射板31の固定部31bに取り付けられている。図5(c)、図7に示すように、パネル配管36の輻射配管36cは、輻射板31の背面と断熱カバー32の前面との間に形成された空間内に配置される。この空間内の空気による断熱作用により、輻射熱交換器34を構成する輻射配管36cからの熱が断熱カバー32の外側の空間に伝わるのを抑制できる。
【0056】
また、図6(a)、図7及び図8に示すように、輻射板31の下端部、より詳細には、輻射板31の背面における下方に位置する固定部31bの下方には、左右方向に沿って伸延する溝部39が形成されている。溝部39の左右方向に沿う伸延長さは、輻射配管36cの直線状部分の長さLとほぼ同じである。また、本実施形態においては、輻射板31の厚さd1は3mmであり、溝部39の深さd2は2〜2.5mmであるとする。したがって、輻射板31の溝部39が形成された部分は、厚さd3が0.5〜1mmであり、溝部39が形成された部分以外に比べて厚みが薄く、伝熱抵抗が高くなっている。
【0057】
また、図5に示すように、輻射板31の背面における左右方向両端部には、ケーシング4の側面を構成するサイドパネル37と、輻射パネル30を本体フレーム41に取り付けるための取付部材38とが、端側から順番に取り付けられている。
【0058】
<本実施形態の室内機2の特徴>
本実施形態の室内機2は、室内機2内において室内ファン21と対向するように設けられた室内熱交換器20と、室内機2の表面に設けられた輻射パネル30とを有している。輻射パネル30を構成する輻射板31の下端部は、空気を室内機2内に吸い込む補助吸込口4bに面している。そして、輻射板31の下端部に、伝熱を抑制する伝熱抑制手段となる溝部39が形成されている。
したがって、輻射板31の下端部の溝部39が形成された部分は、その他の部分に比べて厚みが薄く、伝熱抵抗が大きくなっている。よって、輻射板31における下端部以外の部分の熱が、溝部39が形成された部分及び溝部39よりも下端部側に移動するのを抑制できる。よって、輻射板31の温度が全体的に低下するのを防ぐことができる。また、別部材を用いることなく容易に伝熱を抑制する手段を設けることができる。
【0059】
また、本実施形態の室内機2では、ケーシング4の下壁(すなわち、室内機2の下端部)に設けられ、空気を吸い込む主吸込口4aと、ケーシング4の上壁(すなわち、室内機2の上端部)に設けられ、空気を吹き出す吹出口4dと、ケーシング4の前壁(すなわち、主吸込口4aと吹出口4dとの間)に設けられた補助吸込口4b、4cとを有している。そして、輻射パネル30の輻射板31の下端部が、補助吸込口4bに面している。
したがって、輻射板31の下端部に面する補助吸込口4bを設けた場合でも、輻射板31の温度が全体的に低下するのを防ぐことができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
上述の実施形態では、輻射板31の下端部に伝熱抑制手段となる溝部39を設ける場合について説明したが、伝熱抑制手段はこれには限定されない。
【0062】
すなわち、図9に示すように、本実施形態の第1の変形例に係る室内機においては、輻射板31の下端部に肉薄部139が設けられている。肉薄部139は、輻射板31の背面における下端部を切り欠くことで、一定厚さに形成されている。本変形例においては、輻射板31の肉薄部139以外の部分の厚さd1は3mmであり、肉薄部139の厚さd4は0.5〜1mmであるとする。
【0063】
本変形例においては、輻射板31の肉薄部139が形成された下端部は、その他の部分に比べて伝熱抵抗が大きくなっている。よって、上述の実施形態と同様に、輻射板31における下端部以外の部分の熱が、補助吸込口4bから吸い込まれる空気によって冷却された下端部に移動するのを抑制できる。
【0064】
また、図10に示すように、本実施形態の第2の変形例に係る室内機においては、輻射板31の下端部に、先端に近付くにつれて薄くなる肉薄部239が設けられている。肉薄部239は、輻射板31の背面における下端部にテーパを設けることで形成されており、下方に向かって尖った形状を有している。
【0065】
本変形例においては、上述の実施形態と同様に、輻射板31における下端部以外の部分の熱が、肉薄部239が形成された下端部に移動するのを抑制できる。また、輻射板31の下端部の先端に近付くにつれて、伝熱抵抗が大きくなっている。したがって、輻射板31における下端部以外の部分の熱が、補助吸込口4bからの吸い込み空気によって最も冷却される輻射板31の下端部の先端近傍に移動するのを抑制できる。
【0066】
さらに、図11に示すように、本実施形態の第3の変形例に係る室内機においては、輻射板31の下端部に、断熱部材339が設けられている。断熱部材339は、輻射板31の下端部以外の部分を形成する材料に比べて、熱伝導率が低い材料で形成されている。本変形例においては、輻射板31の下端部以外の部分は、上述の実施形態と同様に、アルミ(熱伝導率237W/(m・k))で形成されている。すなわち、断熱部材339は、例えば、発泡ポリエチレン(熱伝導率0.042W/(m・k))等の、アルミに比べて熱伝導率が低い材料で形成されている。なお、本変形例においては、断熱部材339は、輻射板31の下端まで延びているが、断熱材339は、輻射板31の下端近傍に設けられていればよい。
【0067】
本変形例においては、上述の実施形態と同様に、輻射板31における下端部以外の部分の熱が、断熱部材339が設けられた下端部に移動するのを抑制できる。
【0068】
また、上述の実施形態では、輻射板31の下端部に形成される溝部39が、左右方向に伸延しており、輻射配管36cの直線状部分の長さとほぼ同じ長さを有している場合について説明したが、溝部39の形状や大きさは変更可能である。したがって、例えば、溝部39は、左右方向に関して互いに離隔しつつ複数形成されていてもよい。
同様に、上述の第1〜第3変形例の肉薄部139、239、及び断熱部材339についても、形状や大きさは変更可能である。
【0069】
加えて、上述の実施形態及びその変形例では、輻射板31の下端部が、補助吸込口4bに面している場合について説明したが、これには限定されない。輻射板31の上端部等、下端部以外の端部が吸込口に面している場合にも、本発明を適用できる。また、輻射板31の端部は、主吸込口4aに面していてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態においては、主吸込口4aに加えて、補助吸込口4b、4cを有している場合について説明したが、補助吸込口4b、4cはなくてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態においては、室内熱交換器20と輻射パネル30とが並列に接続された冷媒回路10を備えた空気調和機1に、本発明の室内機2を適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明は、室内熱交換器20と輻射パネル30とが直列に接続された冷媒回路を備えた空気調和機に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明を利用すれば、輻射熱交換器(輻射パネル)の輻射板の温度が低下するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0073】
2 室内機
4a 主吸込口
4b 補助吸込口(吸込口)
4d 吹出口
20 室内熱交換器
21 室内ファン
34 輻射熱交換器
39 溝部(伝熱抑制手段)
139、239 肉薄部(伝熱抑制手段)
339 断熱部材(伝熱抑制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内熱交換器と輻射熱交換器とを備えた室内機であって、
前記室内熱交換器が、前記室内機内においてファンと対向するように設けられ、
前記輻射熱交換器が、前記室内機の表面に設けられており、
空気を前記室内機内へ吸い込む吸込口と、
前記輻射熱交換器の一部であって、前記吸込口に面する端部を有する輻射板とを有しており、
前記輻射板の前記端部に、伝熱抑制手段が設けられていることを特徴とする室内機。
【請求項2】
前記室内機の下端部に設けられ、空気を吸い込む主吸込口と、
前記室内機の上端部に設けられ、空気を吹き出す吹出口と、
前記主吸込口と前記吹出口との間に設けられた補助吸込口を有しており、
前記輻射板の前記端部が、前記補助吸込口に面していることを特徴とする請求項1に記載の室内機。
【請求項3】
前記伝熱抑制手段が、前記輻射板の前記端部に設けられた溝部であることを特徴とする請求項1または2に記載の室内機。
【請求項4】
前記伝熱抑制手段が、前記輻射板の前記端部に設けられた肉薄部であることを特徴とする請求項1または2に記載の室内機。
【請求項5】
前記肉薄部が、先端に近付くにつれて薄くなることを特徴とする請求項4に記載の室内機。
【請求項6】
前記伝熱抑制手段が、前記輻射板の前記端部に設けられた断熱部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−172848(P2012−172848A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31686(P2011−31686)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】