説明

室内環境を監視するための超音波センサを含む多機能センサシステムおよび方法

本発明は、室内環境を監視するための多機能センサシステムおよび対応の方法に関するものである。多機能センサシステムは、温度センサと、湿度センサと、超音波を発する超音波トランスデューサであって、固定反射面から固定距離に配された超音波トランスデューサとを含む。監視対象の室内のCO濃度を計算するため、トランスデューサと固定反射面との間の、超音波の伝播時間が計測され、温度センサおよび湿度センサの出力値と、計測された伝播時間とから、CO濃度が計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内環境を監視するための多機能センサシステムおよび対応の方法に関するものであり、とりわけ、室内の空調をコントロールするためのビル管理システムにおける、かかる多機能センサシステムおよび対応の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル管理システムは、建物の室内環境に関する情報、たとえば、在室状況、室内温度、湿度およびCO濃度に関する情報を必要とする。この情報に基づいて、暖房空調および換気(HVAC)システムによって、室内の空調コントロールを行うことができる。
【0003】
かかる必要な情報は、コントロール対象のそれぞれの部屋に配置された、種々のセンサにより提供される計測値から導出される。一般的なシステムでは、計測されるべきパラメータに応じて各センサが付与される。たとえば、現在の温度値を提供するために温度センサが付与され、湿度を計測するために湿度センサが付与される等といった具合である。欧州特許出願公開EP0838792A2号に開示されているように、複数の異なる種類のセンサを、多機能センサシステムに統合することも知られている。この公報に記載されている多機能在室センサは、複数の異なる種類のセンサ機能を1つのセンサ機器に統合したものであり、各多機能センサは、在室状況、周囲光レベル、温度およびその他のパラメータを検出するための、複数の異なるセンサを含んでいる。
【0004】
ますます重要性が高まっている事項として、エネルギーの節減があり、このことは(地球)環境にとって極めて重要であると捉えられている。北米および欧州では、エネルギー節減対策が法律で要求されている。照明業界およびビルオートメーションの分野では、エネルギー節減効果を実現するにあたり、センサが重要な立役者となる。特に在室センサについて、このことがいえる。
【0005】
建物へのセンサシステムの設置コストを抑制するため、とりわけ既存の建物にかかるシステムが後から設置される場合にコストを抑制するためには、新たな配線を設置することなく、各部屋にセンサを設置できることが望まれる。低い設置コストを考慮すれば、価格がより高くても、無線センサを採用する価値はある。センサと、計測データを受信する制御装置との間で、無線通信を可能とするだけでなく、センサに無線エネルギーの供給源を付与することも望まれる。かかる独立したエネルギー供給は、バッテリーにより電力供給されるセンサによって、または、たとえばソーラーエネルギー等を利用する、環境発電によって実現され得る。10年以上のスケールで長寿命を実現するためには、かかる形態は、エネルギー消費量が非常に低いセンサによってのみ実現可能性がある。
【0006】
暖房空調および換気システム(HVAC)によるコントロールに関しては、温度、湿度、CO濃度および在室状況が、完全な室内環境コントロールを可能とするための非常に重要なパラメータである。加えて、実際のCO濃度が分かれば、換気の調整、あるいは警告信号さえも可能である。一般的に知られているシステムでは、各パラメータ用のセンサを含む多機能センサシステムによって、これら複数の異なるパラメータが計測される必要があり、このことが、センサシステム全体のエネルギー消費量を増大させてしまっている。在室状況、温度、湿度およびCO濃度用の各センサを、それらのパラメータを計測する単一の無線センサ機器に統合することは困難である。各パラメータごとに1つのセンサを有するかかるシステムのパワー要求は大きく、バッテリーのような独立したエネルギー供給源でかかる多機能センサシステムを駆動させた場合には、その多機能センサシステムの寿命は短くなってしまう。高いエネルギー消費量はまた、太陽電池等の独立した環境発電方法を採用するにあたっても、課題を生む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の1つの目的は、低い設置労力および低い電力消費量で、室内の空調を調整するのに必要なパラメータ値を計測する、室内環境を監視するための多機能センサシステムおよび方法を提供することである。これにより、真の無線センサシステムを提供することが可能となり、設置コストを抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、室内環境を監視する多機能センサシステムであって、温度センサと、 湿度センサと、超音波を発する超音波トランスデューサであって、超音波を反射することのできる固定反射面から、固定距離に配された超音波トランスデューサと、そのトランスデューサと固定反射面との間の、超音波の伝播時間を計測するための計測デバイスと、上記の温度センサおよび上記の湿度センサの出力値と、計測された上記の伝播時間とから、CO濃度を計算する計算手段とを含む多機能センサシステムによって達成される。
【0009】
本発明に係る多機能センサシステムは、4つの異なる室内パラメータを導出するのに、3つのみの異なる検出ユニットを含んでいる。湿度センサおよび温度センサが、温度値および湿度値を計測するため一般的な態様で設けられる一方、超音波トランスデューサを用いて、一方では在室状況を検出し、もう一方ではトランスデューサと固定反射面との間の発せられた超音波の伝播時間を計測することができる。各センサから与えられる温度値および湿度値を用いて、伝播時間の値から、CO濃度を導出することができる。
【0010】
上記の目的で超音波トランスデューサを用いることは、追加のCOセンサを用いない態様を可能とする。これにより、エネルギー消費量だけではなく、多機能センサシステムの製造労力および全体の製造コストが抑制され、完全に無線で動作するシステムを構築することが可能となる。その結果、本発明に係る多機能センサシステムの設置は、簡単かつ低コストで済む。超音波トランスデューサは、在室状況を検出するためのものとして一般的に知られているが、本発明のセンサシステムにそれを組み込み、発せられた超音波の動作中の効果を利用して間接的にCO濃度を導出することは、非常に有効かつ汎用的なコンセプトである。
【0011】
1つの好ましい実施形態では、上記の超音波トランスデューサは、前面および背面において超音波を発するように構成され、当該多機能センサシステムはさらに、超音波導波部を含むものとされ、上記のトランスデューサは、背面が、超音波導波部の第1端と面するように配される。
【0012】
この構成によれば、トランスデューサの背面と固定反射面との間で、超音波の伝播時間を計測する一方、反対側のトランスデューサ前面から発せられる超音波を用いて、在室状況を検出することができる。
【0013】
別の好ましい実施形態によれば、上記の固定反射面が、上記の超音波導波部の反対側の第2端に配されたミラーとされる。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、上記の超音波導波部が直管形状を有するものとされ、トランスデューサの背面とミラーとが、管の共通の軸上において、互いに対向して配される。
【0015】
別の実施形態によれば、上記の超音波導波部は、湾曲させられたホーン型の形状を有するものとされる。湾曲のパラメータは、信号の劣化が生じないように適切に選択され、それにより、超音波トランスデューサユニット全体の厚さを低減させることができる。
【0016】
本発明に係るビル管理システムは、上記で述べたような多機能センサシステムと、室内環境条件をコントロールする制御デバイスとを含む。
【0017】
上記で述べたような多機能センサシステムで使用するための1つの超音波トランスデューサユニットは、少なくとも背面において超音波を発するように構成されている超音波トランスデューサと、そのトランスデューサの背面側において超音波を導波する、超音波導波部と、その導波部の、上記のトランスデューサと反対側の端部に配された、固定反射面と、上記のトランスデューサと固定反射面との間の、超音波の伝播時間を計測するためのデバイスとを含む。
【0018】
1つの好ましい実施形態では、この超音波トランスデューサはさらに、前面においても超音波を発するように構成される。これにより、この方向における在室状況の検出に、当該超音波トランスデューサを用いることが可能となる。
【0019】
この受信ユニットは、温度センサおよび湿度センサにより出力された計測値の助けを借りてCO濃度を導出するために、計算デバイスに接続されてもよい。
【0020】
本発明に係る室内環境を監視する方法は、室内の温度を計測し、室内の湿度を計測し、超音波トランスデューサから、そのトランスデューサより固定距離に配され、超音波を反射することのできる固定反射面へ向けて、超音波を発し、上記のトランスデューサと固定反射面との間の、超音波の伝播時間を計測し、その計測の後、計測された室温、計測された湿度、および計測された伝播時間から、CO濃度を計算する各工程を含む。
【0021】
この方法は、気体中における超音波の速度は、温度、圧力および気体中の分子量をパラメータとして含む関係式により、与えられるという事実に基づいている。温度および圧力が分かっていれば、分子量の変化を検出することができ、かかる分子量の変化の検出はCOの存在を示す。
【0022】
この本発明に係る方法の1つの好ましい実施形態では、トランスデューサにより、在室状況の検出が実行される。このことは、超音波を発射および受信することにより在室状況を示すという上記で述べたような追加機能を、トランスデューサが有することを意味する。
【0023】
1つの好ましい実施形態では、この方法は、トランスデューサの両面から超音波を発する動作を含み、トランスデューサの、上記の固定反射面の側とは反対側の面において、在室状況の検出が行われる。
【0024】
別の好ましい実施形態によれば、在室状況の検出は、トランスデューサの、上記の固定反射面に面した側の面において行われる。
【0025】
この本発明の方法のさらなる1つの実施形態によれば、トランスデューサと固定反射面との間で、導波部内において超音波が導波される。
【0026】
本発明に係る上記方法の別の好ましい実施形態は、少なくとも、計測された室内の温度値、計測された湿度値、および計測された伝播時間を、CO濃度を計算する計算デバイスに伝達する工程を含む。
【0027】
この計算デバイスは、建物の複数の部屋にある複数の異なる多機能センサシステムと、無線接続されたコンピュータであってもよい。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、上記で述べた方法は、予め決められた条件下における、トランスデューサと壁構造との間の超音波の伝播時間の計測結果に基づいて、トランスデューサと壁構造との間の距離を計算する、較正工程を含むものとされてもよい。
【0029】
監視方法のこの実施形態は、トランスデューサと壁構造との間の距離が既知の距離となるように、たとえば壁構造の位置に関し、自己学習工程を含むものである。その後の処理では、この距離も、CO濃度を計算するためのパラメータとして用いることができる。
【0030】
較正工程が実行される際の上記の予め決められた条件は、予め決められたCO濃度を含んでいてもよい。較正工程はさらに、1日のうちの予め決められた時刻に実行されてもよい。
【0031】
たとえば、上記の自己学習工程は夜間に実行されてもよい。夜間は、1日のうちで、CO濃度がシステムにとって既知の一定値を有する時間であると想定することができる。あるいは、システムの設置後に、ある平均値を用いて計測を開始し、夜間において、予め決められた条件下でこの値を調整してもよい。
【0032】
本発明のさらなる側面および利点は、以下の詳細な説明より明らかとなる。この詳細な説明および具体例は、本発明の例示的な実施形態を示すものであるが、単なる説明目的のものであり、本発明の技術的範囲を限定する意図のものではない点を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るビル管理システムの1つの実施形態の概要を示した図
【図2】本発明に係る多機能センサシステムの1つの好ましい実施形態の概略図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の上記の特徴、側面および利点は、図面を参照しながらの以下の説明により、よりよく理解されるであろう。
【0035】
図1に示したビル管理システムは、全体として参照番号10で示される多機能センサシステムと、図の右側にあり参照番号12で示される制御システムとを含んでいる。多機能センサシステム10は、当該ビル管理システムによるコントロール対象である建物の部屋の、室内環境を監視するために設けられている。この目的のため、室内環境に関する種々のパラメータが多機能センサシステム10により計測および導出され、制御システム12へと無線送信される。制御システム12は、対象の部屋の空調を管理するため、すなわち温度や湿度等を管理するため、暖房空調および換気(HVAC)システムを含んでいてもよい。たとえば、部屋の現在の空調および在室状況が計測され、計測されたデータが、多機能センサシステム10から制御システム12へと無線送信され、制御システム12が、その部屋の暖房、空調および換気状態を適切な値に設定する。
【0036】
室内環境を監視するため、多機能センサシステムは、温度センサ14、湿度センサ16および超音波トランスデューサユニット18を備えている。超音波トランスデューサユニット18は、2つの機能を提供する。1つには、超音波トランスデューサユニット18は、超音波を発し、反射された超音波を受信して、在室状態を導出することにより、在室状況を検出するために使われる。さらに、以下で超音波トランスデューサユニット18の詳細構造を参照しながら詳細説明するように、このユニットは、当該トランスデューサユニット18および固定反射面としての反射壁構造の一部である、トランスデューサにより発せられた超音波の伝播時間を計測し、温度センサ14および湿度センサ16からそれぞれ与えられる温度および湿度の計測データを用いて、この伝播時間の計測値からCO濃度を導出するためにも使われる。結果として、この多機能センサシステムは、室内環境を管理およびコントロールするための4つの重要な値、具体的には温度、湿度、在室状況およびCO濃度を提供する。これらの値は、制御システム12へと無線で直接転送することができる。
【0037】
図2を参照すると、図1に従う多機能センサシステム10で使用される超音波トランスデューサユニット18は、直管形状を有する導波部22の一端に配された、超音波トランスデューサ20を含んでいる。管22の一端には、トランスデューサ20が、トランスデューサ20の背面24が管22に面するように配されている。超音波トランスデューサ20の前面26は開放されている。超音波トランスデューサ20の両面24および26は、両方とも、超音波を発するべく設けられている。
【0038】
管22の他端には、固定反射面として、ミラー28が配されている。これにより、管22の両端は、一端がミラー28、他端がトランスデューサ20により閉じられていることとなる。超音波トランスデューサ20に面する側のミラー28の内面30は、超音波トランスデューサ20の背面24から管22を通ってミラー28へと伝播してきた超音波を、反射することができる。トランスデューサ20の背面24により発せられた超音波の伝播方向は、矢印32により示されている。ミラー30により反射された超音波の伝播方向は、別の矢印34により示されている。これらの反射された超音波は、超音波トランスデューサ20の対応の受信部により受信される。超音波トランスデューサユニット18はまた、トランスデューサ20とミラー28との間の超音波の伝播時間を計測するための、計測手段も含んでいる。この目的のため、計測デバイス36が設けられており、この計測デバイス36は、距離2L、すなわちトランスデューサ20とミラー28との間の管22の長さLの2倍の距離に関し、超音波の伝播時間を計測および自動導出する。この計測デバイス36は、図では単に模式的に描かれているが、多機能センサシステム10の一部として、いかなる形態で設けられてもよい点に留意されたい。本発明の目的に鑑みれば、トランスデューサ20の背面24における超音波の発射と、同トランスデューサ20における反射波の受信との間の時間を計測するデバイスであれば、いかなるデバイスであってもよい。
【0039】
管22には、管22の側壁上の対向する2つの側に、2つの空気取入口38、40が設けられている。これらの空気取入口38、40を介して、周囲環境中の空気を管22内に引き入れ、導波部内の空気状態が室内環境に対応するよう担保することができる。
【0040】
超音波の伝播時間の計測値から、以下のようにして、管22を満たす空気中のCO濃度を導出することができる。ある固定距離に亘る超音波の空気による吸収は、CO含有量の関数となる。超音波トランスデューサ20とミラー28との間は固定距離Lであるため、伝播時間(ToF)の計測値から、吸収係数を算出することが可能である。
【0041】
音の速度は、温度、圧力、湿度およびCO含有量の関数であり、以下の式(1)で与えられる。

【0042】
この式(1)において、cは音のゼロ周波数速度、tは摂氏単位の温度、xおよびxはそれぞれ水蒸気および二酸化炭素のモル分率、pはPa(N/m)単位の圧力である。係数aは予め決められた定数であり、ルックアップテーブルから得られる係数であってもよい。
【0043】
固定距離Lに関し、伝播時間(ToF)は、以下の式(2)により与えられる。

【0044】
伝播時間(ToF)の変化は速度の違いの寄与によるものであり、その速度の違いは、上記の式(1)によれば、圧力、温度および気体中の分子量の変化により生じる。温度および湿度は、温度センサ14および湿度センサ16により直接計測できるため、分子量の変化を検出することができ、この分子量の変化は、COの存在を示すものである。式(1)中の圧力を含む項は、対応の係数aが非常に小さい値であるため、無視できると考えられる。しかしながら、適当な圧力センサによって圧力値を計測し、かかる計測値を考慮に入れて式(1)の計算を行うことにより、圧力の影響を認めた計算を行うことも可能である。
【0045】
温度センサ14、湿度センサ16、および計測ユニット36により計測された伝播時間ToFの出力値から、CO濃度を計算するための計算手段は、湿度センサ16および温度センサ14に近い位置において、トランスデューサユニット18に直接設けられた計算デバイス42とされてもよい(図1参照)。たとえば、超音波トランスデューサユニット18、温度センサ14、湿度センサ16および計算ユニット42を、監視対象の部屋に取り付けられる1つの独立したデバイス内に、統合することも可能である。別の1つの実施形態によれば、計算手段42を、ビル管理システム内の別の個所の遠隔ユニットとして、たとえばそのビルの中央管理部にある制御システム12近くの遠隔ユニットとして、構成することも可能である。その場合、計測場所から離れた場所においてCO濃度の計算を行えるように、温度センサ14ならびに湿度センサ16の出力値、および計測された伝播時間(ToF)が、計算デバイス42に接続された受信ユニットへと無線送信されなくてはならない。圧力値を提供する追加のセンサとして圧力センサが付与されている場合は、圧力センサの出力値も、温度センサ14および湿度センサ16の出力値と同様に、計算デバイス42に送信される点を理解されたい。
【0046】
室内環境の追加パラメータとして、在室状況が、超音波トランスデューサユニットによって検出される。この目的のため、超音波トランスデューサ20の前面26(図2)より、超音波が発せられる。前面26の前方の存在検出は、トランスデューサ20に到達する反射された超音波から、導出することができる。前面26により発せられた波の主伝播方向は、矢印44により示されており、反射波は、別の矢印46により示されている。在室状況も、室内環境を管理するための重要なパラメータであるため、在室状況に関する情報も、ビル管理システムの制御システム12に送信される。たとえば、在室状況に応じて、個々の部屋の照明が点灯または消灯され得る。
【0047】
上記の説明より、本発明に従う多機能センサシステムは、温度センサ、湿度センサ、および在室状況検出ならびに伝播時間の計測に同時に使用される超音波トランスデューサを利用して、重要な監視パラメータ、具体的には温度、湿度、CO濃度および在室状況を規定することが明らかである。必要であれば、追加の監視パラメータとして、圧力を計測することも可能であり、かかる圧力計測は、室内環境に関する補足情報を与える。
【0048】
エネルギーを消費するセンサ機器を3つのみ使用することは、多機能センサシステム自体のエネルギー消費量を抑制することを可能とする。このため、図1に従う多機能センサシステム10には、バッテリーや、環境発電のための太陽電池といったような、独立のエネルギー源を付与することが可能である。あるいは、温度センサ14、湿度センサ16、および超音波トランスデューサユニット18の各々に、独立のエネルギー源を備えさせることも可能である。無線通信が付与され、かつ室内にはエネルギー供給のための配線が必要とされないので、多機能センサシステム10の設置は簡単かつ低コストである。かかるシステムは、室内の配線を変更することなく建物に簡単に導入することができるので、このことは他の利点と相乗効果がある。
【0049】
市販のセンサ機器はすでに非常に低い電力消費特性を有している。たとえば、センシリオン社により販売されているSHT75のようなセンサは、温度または湿度の計測に使用できるが、(望ましい14ビットの精度の場合には)最大210msに亘って約500μAを使用する。このセンサがスリープモードにあるときは、0.3μAしか消費しない。このセンサと共に使用され得る1つのマイクロコントローラとしては、No.MSP430のモデルが挙げられ、このモデルのスリープモード中における電流消費量は、約0.3から0.5μAと非常に低い。かかるセンサを用いれば、望ましい低エネルギー消費の特性は、簡単に実現することができる。
【0050】
本発明は、図2に示すように、超音波導波部として直線状の管を用いる形態に限定されるものではない。湾曲させられたホーン型のものを導波部として用いて、信号劣化が生じないように湾曲パラメータを適切に選択することも可能であり、そうすることにより機器全体の厚さを減らすことができる。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、予め決められた距離をもって超音波トランスデューサ20の背面側に取り付けられたミラーを有する管構造は、必要とされない。この場合、当該システムは、トランスデューサ20と反射壁構造との間の固定距離を自動的に算出する、自己学習型または自己較正型のシステムとされ得る。この較正処理は、予め決められた条件下における、トランスデューサと壁構造との間の超音波の伝播時間計測値に基づいて行われ得る。これらの予め決められた条件には、既知のCO濃度、たとえば1日のうちの予め決められた時刻におけるCO濃度が含まれ得る。たとえば、夜間におけるある部屋のCO濃度は分かる。これに基づき、上記で述べたこの自己較正手順が、夜間の予め決められた時刻に行われ得る。あるいは、あるCO濃度の所与の平均値を用いて、システムのインストール直後に計測を始め、夜間において、既知のCO濃度を有する予め決められた条件下で、システムを調整する形態も可能である。ひとたび距離が計算されれば、上記で説明したようにして伝播時間の計測を続けて行い、CO濃度を導出することができる。
【0052】
上記の説明は、単に本発明を説明することを意図したものであり、特許請求の範囲による技術的範囲を特定の実施形態または実施形態群に限定するものであると捉えられるべきではない。特定の例示的な実施形態を参照して本発明を詳細に説明してきたが、特許請求の範囲による本発明の精神および技術的範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更を加えることができる。したがって、明細書および図面は、説明のためのものと捉えられるべきであり、特許請求の範囲による技術的範囲を限定する意図ではない。請求項中において、「含む」または「備える」との語は、他の要素または工程の存在を排除するものではなく、「1つの」という不定冠詞は、かかる要素が複数存在することを排除するものではない。請求項中のいずれの参照符号も、その請求項を限定するものと捉えられるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内環境を監視する多機能センサシステムであって、
温度センサと、
湿度センサと、
超音波を発する超音波トランスデューサであって、超音波を反射することのできる固定反射面から、固定距離に配された超音波トランスデューサと、
前記トランスデューサと前記固定反射面との間の、超音波の伝播時間を計測するための計測デバイスと、
前記温度センサおよび前記湿度センサの出力値と、計測された前記伝播時間とから、CO濃度を計算する計算手段とを含む多機能センサシステム。
【請求項2】
前記超音波トランスデューサが、前面および背面を有し、前記前面および前記背面において超音波を発するように構成され、当該多機能センサシステムがさらに、超音波導波部を含み、前記トランスデューサは、前記背面が、前記超音波導波部の第1端と面するように配されることを特徴とする請求項1記載の多機能センサシステム。
【請求項3】
前記固定反射面が、前記超音波導波部の反対側の第2端に配されたミラーであることを特徴とする請求項2記載の多機能センサシステム。
【請求項4】
前記超音波導波部が直管形状を有し、前記トランスデューサの前記背面と、前記ミラーとが、管の共通の軸上において、互いに対向していることを特徴とする請求項2または3記載の多機能センサシステム。
【請求項5】
前記超音波導波部が、湾曲させられたホーン型の形状を有することを特徴とする請求項2または3記載の多機能センサシステム。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の多機能センサシステムと、1つ以上の室内環境条件をコントロールする、少なくとも1つの制御デバイスとを含むことを特徴とするビル管理システム。
【請求項7】
請求項1記載の多機能センサシステムで使用する超音波トランスデューサユニットであって、
前面および背面を有し、少なくとも前記背面において超音波を発するように構成されている超音波トランスデューサと、
前記トランスデューサの前記背面側において前記超音波を導波する、超音波導波部と、
前記導波部の、前記トランスデューサと反対側の端部に配された、固定反射面と、
前記トランスデューサと前記固定反射面との間の、超音波の伝播時間を計測するための計測デバイスとを含むことを特徴とする超音波トランスデューサユニット。
【請求項8】
前記超音波トランスデューサが、前記前面においても超音波を発するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の超音波トランスデューサユニット。
【請求項9】
室内環境を監視する方法であって、
室内の温度を計測し、
室内の湿度を計測し、
超音波トランスデューサから、該トランスデューサより固定距離に配され、超音波を反射することのできる固定反射面へ向けて、超音波を発し、
前記トランスデューサと前記固定反射面との間の、超音波の伝播時間を計測し、
該計測の後、計測された前記温度、計測された前記湿度、および計測された前記伝播時間から、CO濃度を計算する各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記トランスデューサにより在室状況の検出を実行する工程を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記トランスデューサの両面から超音波を発し、前記トランスデューサの、前記固定反射面の側とは反対側の面において、前記在室状況の検出が行われることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記在室状況の検出が、前記トランスデューサの、前記固定反射面に面した側の面において行われることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記トランスデューサと前記固定反射面との間で、導波部内において超音波を導波する工程を含むことを特徴とする請求項9から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
少なくとも、計測された室内の前記温度の値、計測された前記湿度の値、および計測された前記伝播時間を、CO濃度を計算する計算デバイスに伝達する工程を含むことを特徴とする請求項9から13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
予め決められた条件下における、前記トランスデューサと前記固定反射面との間の、超音波の伝播時間の計測結果に基づいて、前記トランスデューサと前記固定反射面との間の前記距離を計算する、較正工程を含むことを特徴とする請求項9から14いずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−533060(P2012−533060A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519089(P2012−519089)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052884
【国際公開番号】WO2011/004286
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】