説明

室内空調構造

【課題】空調機の室内機を覆い隠す機能や居室部が狭くならないようにする機能を保持し、且つ冷暖房効果の立ち上りが遅くなったり、暖房時に足元まで温まり難くなったり、空調機への負荷が大きくなったりするのを回避できる室内空調構造を提供する。
【解決手段】側壁部12との接合角部分14の天井部13を上方に窪ませて、室内機15の上部が納められた上部収容凹部17が、開口縁部17aを室内機15の正面部15a及び側面部15bから離間させて設けられており、室内機15が取り付けられた側壁部12の全幅から、上部収容凹部17を下方から覆い隠した状態で天井部13の途中まで延設して、天井部13と平行に配置される送風板16が、室内機15の下面部15cに近接する高さ位置に設けられている。上部収容凹部17の開口縁部17aから張り出して、仕切り板18が設けられており、送風板16には、通風可能な目隠し板部19が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空調構造に関し、特に空調機の室内機を、側壁部と天井部との接合角部分に取り付けて用いる室内空調構造に関する。
【背景技術】
【0002】
室内を冷暖房する方法として、冷風や温風を吹き出す機能を備える空調機(エアコン)を用いて室内の空調を行う方法が一般に採用されている。空調機による空調は、通常は室内機を室内の側壁部に取り付けた状態で行われるようになっており、このような壁掛けタイプの空調機による空調構造は、室内機が壁面から突出した状態で露出することになるので室内の美観を損い易い。このため、室内の美観を向上させること等を目的として、室内機を天井部や側壁部に内蔵するタイプの空調構造も採用されているが、室内機を天井部に内蔵するタイプでは、冷房時の上向き気流を作り難いので不快な気流感を発生しやすく、室内機を側壁部に内蔵するタイプでは、暖房時の下向き気流を作り難いので足元まで温めることが難しいといった弱点がある。
【0003】
一方、空調機を用いて室内の空調を行う場合、冷風や温風による気流が発生することで居住者に不快感を与えることもあることから、輻射熱を利用することによって気流を抑制したり発生しないようにして、快適性を向上させた空調システムも開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の空調システムでは、下方天井体及び上方天井体からなる二重天井を室内の天井部分に設けて、この二重天井の内部に空調機の室内機から冷風や温風を吹き出すことで二重天井を冷やしたり暖めたりして、下方天井体からの輻射熱によって室内の空調を行うようになっている。
【0004】
また、特許文献1の空調システムでは、下方天井体を例えば和紙やポリエステルシート等の透湿性及び通気性を備える素材で形成することによって、室内機からの冷風や温風の一部を下方天井体を通過させて下方の居室部に流れ込ませることで、輻射熱による冷暖房に加えて、下方天井体を通過した弱い気流による冷暖房も行うことができるようになっている。さらに、特許文献1の空調システムでは、室内機が設置される側壁部と上方天井体との接合角部分に、上方天井体を上方に凹状に窪ませて収容凹部を形成し、この収容収容凹部に室内機の上部を納めることで、下方天井体を上方天井体になるべく近づけて配置できるようにして、居室部の空間が上下に狭くならないように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−223460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の二重天井による空調システムでは、室内機から吹き出される冷風や温風によって下方天井体が十分に冷やされたり暖められるまでには、ある程度の時間を要するため、輻射熱による冷暖房効果の立ち上りが遅くなるといった弱点がある。また、暖房時には足元まで温まり難くなるといった弱点がある。さらに、室内機から吹き出される冷風や温風は、閉塞された二重天井の内部で循環することになるため、室内機に戻る空気が、暖房の場合には高めに、冷房の場合には低めになることによって、空調機への負荷が大きくなるといった弱点がある。
【0007】
本発明は、特許文献1の空調システムによる、空調機の室内機を覆い隠す機能や居室部の空間が上下に狭くならないようにする機能を保持したまま、冷暖房効果の立ち上りが遅くなったり、暖房時に足元まで温まり難くなったり、空調機への負荷が大きくなったりするのを効果的に回避することのできる室内空調構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下部に冷風又は温風の吹出し口を、上部に戻り空気の吸込み口を備える空調機の室内機を、側壁部と天井部との接合角部分に取り付けて用いる室内空調構造において、前記接合角部分には、前記天井部を上方に凹状に窪ませて、前記室内機の少なくとも上部が納められた上部収容凹部が、開口縁部を前記室内機の正面部及び少なくとも一方の側面部から離間させて設けられており、前記室内機が取り付けられた前記側壁部を含む側壁面の全幅から、前記上部収容凹部を下方から覆い隠した状態で前記天井部の途中まで延設して、前記天井部と平行又は略平行に配置される送風板が、前記室内機の下面部に近接する高さ位置に設けられており、前記上部収容凹部の前記室内機の正面部と対向する側の開口縁部から、該正面部に近接する位置まで該正面部を越えることなく張り出して、仕切り板が、前記天井部に沿って延設して設けられており、前記室内機は、前記吹出し口を前記仕切り板よりも下方に配置して前記側壁部に取り付けられており、前記送風板には、前記吹出し口の直下部分に、開閉可能な多数の通気開口を備える通風可能な目隠し板部が設けられている室内空調構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の室内空調構造は、前記室内機が取り付けられる前記側壁部が、側壁本体部との間にダクト状空間を保持して該側壁本体部と共に2重壁を構成する部分の側壁部となっており、該側壁部の下端部には、多数の通気開口を備える通風可能な空気取込み板部が設けられており、該空気取込み板部から取り込んだ空気を前記ダクト状空間を介して前記室内機の前記吸込み口が配置された前記上部収容凹部に送り込むようになっていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の室内空調構造は、前記天井部と前記送風板との間の間隔部分に、前記室内機の前記吹出し口から前記送風板に沿って送り出される冷風又は温風の方向をガイドする風向案内板が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の室内空調構造によれば、空調機の室内機を覆い隠す機能や居室部の空間が上下に狭くならないようにする機能を保持したまま、冷暖房効果の立ち上りが遅くなったり、暖房時に足元まで温まり難くなったり、空調機への負荷が大きくなったりするのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る室内空調構造を用いた居室部を室内側から見た斜視図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る室内空調構造の構成を説明する、図1のA−Aに沿った破断斜視図である。
【図3】上部収容凹部を説明する、図2のB−Bに沿った略示断面図である。
【図4】風向案内板を説明する、図2のC−Cに沿った略示断面図である。
【図5】本発明の好ましい他の実施形態に係る室内空調構造を用いた居室部を室内側から見た斜視図である。
【図6】本発明の好ましい他の実施形態に係る室内空調構造の構成を説明する、図4のD−Dに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい一実施形態に係る室内空調構造10は、図1及び図2に示すように、居室部11として、例えば矩形平面形状の間取りを有する8畳程度の広さの洋室において、居室部11の4方の側壁面のうち、一方の短辺部分の側壁面11aの一部を構成する側壁部12と、天井部13との接合角部分14に、空調機(エアコン)の室内機15を壁掛けタイプのものとして取り付けると共に、室内機15を下方から覆い隠した状態で、送風板16を、いわゆる折下天井として設けることによって構成される。本実施形態の室内空調構造10は、送風板16により室内機15を下方から覆い隠して露出しないようにすることで、居室部11の美観を向上させ、また天井部13と共に2重天井を形成する送風板16を、天井部13にできるだけ近い位置に配設することで、送風板16の下方に相当の高さの居住空間を確保して、居住者が送風板16によって圧迫感を感じないようにすることができるようになっている。
【0014】
また、本実施形態の室内空調構造10は、送風板16を介することによって、輻射熱による冷暖房効果を得ることが可能になっていると共に、空調機本来の送風による通常の使い方によって、冷暖房効果の立ち上りを早めたり、暖房時に足元まで温まり易くしたりする機能を備えている。さらに、本実施形態の室内空調構造10は、室内機15の吹出し口から吹き出された冷風や温風が、吹き出された直後にすぐに吸込み口に戻るような短絡路が形成される、いわゆるショートパスが発生するのを効果的に回避できる機能を備えると共に、室内機に戻る空気が、暖房の場合には高めに、冷房の場合には低めになることによって、空調機への負荷が大きくなるのを効果的に回避できる機能を備える。
【0015】
そして、本実施形態の室内空調構造10は、下部に冷風又は温風の吹出し口(図示せず。)を、上部に戻り空気の吸込み口(図示せず。)を備える空調機の室内機15を、側壁部12と天井部13との接合角部分14に取り付けて用いる空調構造において、図2に示すように、側壁部12と天井部13との接合角部分14には、天井部13を上方に凹状に窪ませて、室内機15の少なくとも上部が納められた上部収容凹部17が、開口縁部17aを室内機15の正面部15a及び少なくとも一方の側面部15bから離間させて設けられており(図3参照)、図1にも示すように、矩形平面形状の間取りを備える居室部11の、室内機15が取り付けられた側壁部12を含む一方の短辺部分の側壁面11aの全幅から、上部収容凹部17を下方から覆い隠した状態で天井部13の途中まで延設して、天井部13と平行又は略平行に配置される送風板16が、室内機15の下面部15cに近接する高さ位置に設けられている。
【0016】
また、図3にも示すように、上部収容凹部17の、室内機15の正面部15aと対向する側の開口縁部17aから、正面部15aに近接する位置まで該正面部15aを越えることなく張り出して、仕切り板18が、天井部13の面方向に沿って延設して設けられており(図2参照)、室内機15は、吹出し口を仕切り板18よりも下方に配置して側壁部12に取り付けられており、送風板16には、図2及び図3に示すように、室内機15の下部に設けられた吹出し口の直下部分に、開閉可能な多数の通気開口を備える、通風可能な目隠し板部19が設けられている。
【0017】
本実施形態では、側壁部12と天井部13との接合角部分14に設けられた上部収容凹部17は、居室部11の一方の短辺部分の側壁面11aに沿って、天井部13を上方に凹状に窪ませることにより、側壁面11aに沿った横幅が例えば1200mm程度、側壁面11aと直角な方向の奥行が例えば800mm程度大きさの、横長矩形の平断面形状を備える中空の凹部として形成されている。上部収容凹部17は、室内機15の吸込み口が設けられた上部を納めることが可能な高さ(深さ)として、天井部13から例えば200mm程度の高さで上方に窪んで形成されている。上部収容凹部17は、天井部13に使用しているものと同様の材質の、合板や石膏ボード等の板部材によって周囲を囲まれて、好ましくは気密に設けられている。上部収容凹部17は、天井部13と共に、背面側に断熱材を適宜敷き込んで構成されていることが好ましい。
【0018】
室内機15は、エアコンとして汎用されている公知の空調機を構成するものであり、下部に冷風又は温風の吹出し口を、上部に戻り空気の吸込み口を備えている。本実施形態では、室内機15は、例えば横幅800mm程度、奥行き300mm程度、高さ300mm程度の大きさの略直方体形状を備えている。室内機15は、150mm程度の高さの上方部分を上部収容凹部17に納めると共に、150mm程度の高さの下方部分を、上部収容凹部17の下端開口面から下方に突出させた状態で、側壁部12に支持させて壁掛け形式で取り付けられている。また室内機15は、居室部11の一方の短辺部分の側壁面11aと、一方の長辺部分の側壁面11bとの角部分に近接するように取り付けられている(図3参照)。これによって、室内機15の正面部15aと対向する部分の上部収容凹部17の開口縁部17aは、当該正面部15aと例えば500mm程度離間して配置されると共に、室内機15の一方の側面部15bと対向する部分の上部収容凹部17の開口縁部17aは、当該側面部15bと例えば400mm程度離間して配置されることになる。
【0019】
仕切り板18は、天井部13に使用しているものと同様の材質の、合板や石膏ボード等の板部材からなり、例えば天井部13によって周縁部分を支持された状態で、天井部13の面方向に沿って延設して、上部収容凹部17の下端開口の側壁面11aと離れた側の部分を覆って設置される。仕切り板18は、横幅が上部収容凹部17の横幅と同様の例えば1200mm程度、奥行きが500mm程度の大きさの横長矩形の平断面形状を備えており、上部収容凹部17の室内機15の正面部15aと対向する側の開口縁部17aから、正面部15aに近接する位置まで張り出して設けられる。これによって、仕切り板18は、室内機15の側方部分においては正面部15aを越えることなく配置されて、室内機15の一方の側面部15bの側方部分には、相当の大きさの開口面積を有する通気空間20が保持される。
【0020】
室内機15の正面部15aと対向する側の上部収容凹部17の開口縁部17aから、正面部15aに近接する位置まで張り出して仕切り板18が設けられていることにより、室内機15の吹出し口から吹き出された冷風や温風が、吹き出された直後にすぐに吸込み口に戻るショートパスが発生するのを、仕切り板18によって空気の流れを遮断することで効果的に回避することが可能になる。また、室内機15の側面部15bの側方部分に相当の大きさの開口面積を有する通気空間20が保持されていることにより、室内機15の吹出し口から吹き出された冷風や温風が、居室部11を循環して温度が緩和された後に、天井部13と送風板16との間の間隔部分を通過して室内機15に戻ろうとする際に、この通気空間20を介して温度が緩和された空気を室内機15の吸込み口にスムーズに流れ込ませることが可能になる。
【0021】
送風板16は、天井部13に使用しているものと同様の材質の、合板や石膏ボード等の板部材からなるパネル部材として形成されており、例えば居室部11の一方の短辺部分の側壁面11a及び両側の長辺部分の側壁面11bによって3方の周縁部分を支持されて、天井部13との間に200mm程度の間隔を保持すると共に、天井部13と平行又は略平行に延設した状態で設置されている。送風板16は、矩形平面形状を備えており、居室部11の室内機15が取り付けられた側壁部12を含む一方の短辺部分の側壁面11aの全幅から、両側の長辺部分の側壁面11bとの間に隙間を生じさせることなく、他方の短辺部分の側壁面11aに向けて、例えば1000mm程度の奥行きで張り出した状態で設置されている。
【0022】
これによって、送風板16は、室内機15及び上部収容凹部17を下方から覆い隠すと共に、室内機15の下面部15cに近接する高さ位置として、室内機15の下面部15cから例えば50mm程度の間隔を置いた高さ位置に配置されている。また送風板16は、天井部13の下方に配置された折下天井として機能して、居室部11の意匠性を向上させている。送風板16は、例えば室内機15のメンテナンスを行い易いように、着脱可能に取り付けられていることが好ましい。送風板16の室内機15の直下部分には、室内機15からの主として温風を送風板16の下方の居室空間に直接送り出すための、通風可能な目隠し板部19が設けられている。
【0023】
目隠し板部19は、開閉可能な多数の通気開口を備える構造として、例えば公知のガラリ構造を備えるものを採用することができる。ガラリ構造を備える目隠し板部19は、回動可能な多数の羽板の間の各間隔部分を、羽板を回動させることで開放させたり閉塞させたりして、通風可能な状態と、通風を遮断する状態とを適宜切り替えることができるようになっている。目隠し板部19は、パネル部材による送風板16に嵌め込むように取り付けられて、送風板16に一体固定される。目隠し板部19は、送風板16における、横幅が例えば800mm程度、奥行きが300mm程度の横長矩形の領域を占めるようように設けられており、また室内機15の吹出し口と対向配置される直下部分として、好ましくは居室部11の一方の短辺部分の側壁面11aから、当該側壁面11a側の側縁部を例えば200mm程度離間させ位置に配置されている。
【0024】
そして、上述の構成を備える本実施形態の室内空調構造10によれば、空調機の室内機15を覆い隠す機能や居室部11の空間が上下に狭くならないようにする機能を保持したまま、冷暖房効果の立ち上りが遅くなったり、暖房時に足元まで温まり難くなったり、空調機への負荷が大きくなったりするのを効果的に回避することが可能になる。
【0025】
すなわち、本実施形態によれば、送風板16によって、空調機の室内機15を露出させることなく下方から覆い隠すことが可能になると共に、送風板16を折下天井として設置することができるので、居室部11の意匠性を効果的に向上させることが可能になる。また、室内機15は、壁掛け形式で側壁部12に取り付けられているが、その上部が上部収容凹部17に納められた状態で設置され、吹出し口を備える室内機15の下方部分のみが、天井部13よりも下方に配置されるので、送風板16を、天井部13との間の間隔が室内機15の高さの半分程度の小さな間隔となるようにして天井部13の下方に配置することが可能になり、これによって送風板16の下方に相当の高さの居住空間を確保することで居室部11の空間が上下に狭くならないようにして、送風板16が設けられた部分で居住者が送風板16によって圧迫感を感じないようにすることが可能になる。
【0026】
さらに、本実施形態によれば、例えば冷房時には、送風板16の目隠し板部19を閉塞した状態で、室内機15の吹出し口から冷風を吹き出すことにより、吹き出された冷風を、送風板16によって天井部13に沿って流れるように案内しながら天井部13と送風板16との間隔部分を通過させ、さらに天井部13の下面に沿って流れさせた後に、下方の居室部11において循環させるようになっているので、居住者に冷風が直接吹きかかるのを回避しつつ、冷風の送風によって、冷房効果の立ち上りが遅くならないようにすることが可能になる。
【0027】
さらにまた、吹出し口から吹き出された冷風が、天井部13と送風板16との間隔部分を通過することによって送風板16が冷やされるので、送風板16からの輻射冷熱による冷房効果を得ることが可能になると共に、送風板16によって天井部13の下面に沿うように送り出された冷風が、送風板16よりも先の部分で天井部13の下面に沿って流れて天井部13を冷やすことになるので、冷やされた天井部13の下面からの輻射冷熱による冷房効果も得ることが可能になる。
【0028】
また、天井部13の下面に沿って流れた冷風は、下方の居室部11を循環することで温度が緩和されたり上昇してから、天井部13と送風板16との間の間隔部分を再び通過して室内機15に戻されるので、室内機15に戻される空気の温度が低めになって空調機への負荷が大きくなるのを効果的に回避することが可能になる。
【0029】
一方、例えば暖房時には、送風板16の目隠し板部19を開放した状態で、室内機15の吹出し口から温風を吹き出すことにより、吹き出された温風は、、室内機15が取り付けられた側面部15bに沿って下方に流れた後に、居室部11において循環させるようになっているので、居住者に冷風が直接吹きかかるのを回避しつつ、温風の送風によって、暖房効果の立ち上りが遅くならないようにすることが可能になると共に、居住者の足元部分も迅速に且つ容易に温めることが可能になる。
【0030】
また、目隠し板部19の開放率を適宜調整したり、目隠し板部19を適宜閉塞して、温風を送風板16に沿って送り出すことにより、送風板16の輻射温熱による暖房効果や、天井部13の輻射温熱による暖房効果も得ることが可能になる。
【0031】
さらに、室内機15から吹き出された温風は、居室部11を循環することで温度が緩和されたり下降してから、天井部13と送風板16との間の間隔部分を通過して室内機15に戻されるので、室内機15に戻される空気の温度が高めになって空調機への負荷が大きくなるのを効果的に回避することが可能になる。
【0032】
したがって、本実施形態の室内空調構造10によれば、壁掛タイプの空調機の室内機15を、送風による通常の機能を損うことなく、且つ美観を損うことなく、送風板16による折下天井に内蔵することが可能になると共に、輻射による冷暖房と対流による冷暖房を切換え自在な空調システムを実現することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態によれば、例えば送風板16の裏側に照明器具を取り付けて天井部13を照らすようにすることで、送風板16による折下天井を間接照明を得るための構造部分として利用して、居室部11の美観をさらに向上させることが可能になる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、天井部13と送風板16との間の間隔部分に、図4に示すように、室内機15の吹出し口から送風板13に沿って送り出される冷風や温風の方向をガイドする風向案内板21を、1箇所又は複数箇所に設けておくこともできる。風向案内板21は、回動可能な構造を備えていて、ガイドする方向を適宜調整できるようになっていることが好ましい。風向案内板21が設けられていることにより、室内機15の吹出し口から吹き出される冷風や温風を、居室部11の所定の領域に向けて送り出したり、居室部11の全体に分散させて送り出したりすることが可能になる。
【0035】
図5及び図6は、本発明の好ましい他の実施形態に係る室内空調構造50を示すものである。本他の実施形態の室内空調構造50では、上記実施形態の室内空調構造10と略同様の構成を備えることに加えて、空調機の室内機15’が取り付けられる側壁部12’は、側壁本体部51との間にダクト状空間52を保持して側壁本体部51と共に2重壁を構成する部分の側壁部となっており、側壁部12’の下端部には、例えば公知のガラリ構造による、多数の通気開口を備える通風可能な空気取込み板部53が設けられており、空気取込み板部53から取り込んだ空気をダクト状空間52を介して室内機15’の吸込み口が配置された上部収容凹部17’に送り込むようになっている。
【0036】
本他の実施形態の室内空調構造50によっても、上記実施形態の室内空調構造10と同様の作用効果が奏される。また、本他の実施形態の室内空調構造50によれば、側壁部12’の背面側の側壁本体部51との間に、上部収容凹部17’に連通する、例えば100〜200mm程度の幅のダクト状空間52が還流空間として設けられており、且つ側壁部12’の下端部に空気取込み板部53が設けられているので、室内機15’の吹出し口から吹き出されて居室部11を循環した後の空気を、空気取込み板部53から引き込んで、ダクト状空間52を介して室内機15’の吸込み口が配設された上部収容凹部17’に戻すことが可能になる。またこれによって、居室部11を循環する暖気を、床面付近まで引っ張ることが可能になるので、足元までさらに効果的に暖めることが可能になる。側壁部12’の背面側に設けられたダクト状空間52は、引戸54を出し入れ可能に収納するための戸袋として利用することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、室内機が取り付けられる側壁部は、居室部の側壁面の角部近傍部分の側壁部である必要は必ずしも無く、側壁面の中央部分の側壁部であっても良い。また、室内機は、上部収容凹部の片側に寄せて配置する必要は必ずしも無く、室内機を上部収容凹部の中央部分に配置して、室内機の両側の側面部の側方に、室内機に戻ろうとする空気の通気空間を各々設けることもできる。
【符号の説明】
【0038】
10,50 室内空調構造
11 居室部
11a 居室部の短辺部分の側壁面
11b 居室部の長辺部分の側壁面
12,12’ 側壁部
13 天井部
14 接合角部分
15,15’ 空調機の室内機
15a 室内機の正面部
15b 室内機の側面部
15a 室内機の下面部
16 送風板
17,17’ 上部収容凹部
17a 開口縁部
18 仕切り板
19 目隠し板部
20 通気空間
21 風向案内板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に冷風又は温風の吹出し口を、上部に戻り空気の吸込み口を備える空調機の室内機を、側壁部と天井部との接合角部分に取り付けて用いる室内空調構造において、
前記接合角部分には、前記天井部を上方に凹状に窪ませて、前記室内機の少なくとも上部が納められた上部収容凹部が、開口縁部を前記室内機の正面部及び少なくとも一方の側面部から離間させて設けられており、
前記室内機が取り付けられた前記側壁部を含む側壁面の全幅から、前記上部収容凹部を下方から覆い隠した状態で前記天井部の途中まで延設して、前記天井部と平行又は略平行に配置される送風板が、前記室内機の下面部に近接する高さ位置に設けられており、
前記上部収容凹部の前記室内機の正面部と対向する側の開口縁部から、該正面部に近接する位置まで該正面部を越えることなく張り出して、仕切り板が、前記天井部に沿って延設して設けられており、
前記室内機は、前記吹出し口を前記仕切り板よりも下方に配置して前記側壁部に取り付けられており、
前記送風板には、前記吹出し口の直下部分に、開閉可能な多数の通気開口を備える通風可能な目隠し板部が設けられている室内空調構造。
【請求項2】
前記室内機が取り付けられる前記側壁部は、側壁本体部との間にダクト状空間を保持して該側壁本体部と共に2重壁を構成する部分の側壁部となっており、該側壁部の下端部には、多数の通気開口を備える通風可能な空気取込み板部が設けられており、該空気取込み板部から取り込んだ空気を前記ダクト状空間を介して前記室内機の前記吸込み口が配置された前記上部収容凹部に送り込むようになっている請求項1記載の室内空調構造。
【請求項3】
前記天井部と前記送風板との間の間隔部分に、前記室内機の前記吹出し口から前記送風板に沿って送り出される冷風又は温風の方向をガイドする風向案内板が設けられている請求項1又は2記載の室内空調構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137237(P2012−137237A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289628(P2010−289628)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)