説明

害虫忌避剤

【課題】害虫忌避剤を提供する。
【解決手段】一般式R−Y−R(1)で表されるアルコール又はエーテル化合物を有効成分として含有する害虫忌避剤:[式中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数4〜8のアルキレン基、−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH−(式中、m1及びm2は同一又は異なって、0以上の整数を示す。)又は−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。)を示す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を示す。但し、R及びRの少なくとも一方はヒドロキシル基又はアルコキシ基を示す。Yが−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH−の場合、R及びRの少なくとも一方がアルコキシ基又はアルケニルオキシ基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は害虫忌避剤に関する。さらに詳しくは、特定の構造を有するアルコール又はエーテル化合物を有効成分とする、人体に対して安全で、害虫、特にゴキブリに対して有効な忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴキブリや動物に対する忌避剤としてエチレングリコール構造、プロピレングリコール構造をもつグリコールエーテル類、(特許文献1〜3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−289002
【特許文献2】特開昭61−194001
【特許文献3】特開昭61−267501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記エチレングリコール構造、プロピレングリコール構造にはない別異の構造を有するグリコールエーテル類系化合物がゴキブリ等の害虫に対し極めて優れた忌避活性を有することを見出し完成されたものである。本発明の目的は、人体に対して安全で、害虫、特にゴキブリに対して有効な忌避剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような状況の下、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、後述の下記一般式(1)で表されるアルコール又はエーテル化合物(以下、単に化合物(1)と示すこともある)が、ニオイが少なくかつ人体に対して安全であり、そして害虫に対する忌避効果が高いことを見出した。
【0006】
従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.下記一般式(1)で表されるアルコール又はエーテル化合物:
−Y−R (1)
[式中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数4〜8のアルキレン基、−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH
(式中、m1及びm2は同一又は異なって、0以上の整数を示す。但し、m1+m2≧1を示す。)
又は−CHCH(OR)CH
(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。)
を示す。
及びRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基を示す。
但し、R及びRの少なくとも一方はヒドロキシル基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基を示す。
Yが−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH−の場合、R及びRの少なくとも一方がアルコキシ基又はアルケニルオキシ基を示す。
Yが−CHCH(OR)CH−の場合、R及びRは、同一又は異なって、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を示す。]
を有効成分として含有する、害虫忌避剤。
【0007】
項2.Yが、式
−CHR−CR−CH−CH
[式中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
は、水素、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
は、水素、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基を示す。
が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基の場合、R及びRは共に水素原子を示す。]
で示される、置換基を有していてもよい炭素数4〜8アルキレン基であり、
が水素又は炭素数1〜4のアルコキシ基の場合、Rは水素原子を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
がヒドロキシル基の場合、Rはアルコキシ基を示しかつRは水素原子を示す、項1に記載の害虫忌避剤。
【0008】
項3.Yが、式
−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH
[式中、m1は、0又は1を示す。
m1が0の場合、m2は1〜4の整数を示し、m1が1の場合、m2は3を示す。]
で表される基であり、
m1が0の場合、Rはオレイルオキシ基又はラウリルオキシ基を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
m1が1の場合、R及びRの一方はセチルオキシ基を示しかつ他方はヒドロキシル基を示す、項1に記載の害虫忌避剤。
【0009】
項4.Yが、式
−CHCH(OR)CH
[式中、Rは、水素原子又はイソステアリル基を示す。]
で示される基であり、
が水素原子の場合、Rはイソステアリルオキシ基を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
がイソステアリル基の場合、R及びRは共にヒドロキシル基を示す、項1に記載の害虫忌避剤。
【0010】
項5.前記項1〜4のいずれか一項に記載の害虫忌避剤を用いて害虫を防除する、有害生物防除方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に用いられる化合物(1)は、ゴキブリ等の害虫に対して極めて優れた忌避活性作用を発揮する。その上、前記化合物(1)はニオイが少なく、かつ人体への影響も少なく安全なものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記一般式において示される各基は、具体的には、次の通りである。
【0013】
Yが置換基を有していてもよい炭素数4〜8のアルキレン基である場合、炭素数4〜8のアルキレン基としては、炭素数4〜8の直鎖アルキレン基を例示することができる。具体的には、例えば、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン及びオクタメチレン基を挙げることができる。
【0014】
Yが置換基を有していてもよい炭素数4〜8のアルキレン基である場合の当該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基等を挙げることができる。
【0015】
当該置換基がアルキル基である場合、当該アルキル基としては、炭素数1〜4(好ましくは1)の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基等を例示することができる。具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、イソブチル基等を挙げることができる。
【0016】
当該置換基がアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基としては、炭素数1〜4(好ましくは1)の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等を例示することができる。具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ基等を挙げることができる。
【0017】
前記炭素数4〜8のアルキレン基が置換基を有する場合、置換基の数としては、例えば、1〜3個、好ましくは1〜2個を挙げることができる。当該炭素数4〜8のアルキレン基が2個以上の置換基を有する場合、それらの置換基は同一種類であっても異なっていてもよい。
【0018】
Yが置換基を有していてもよい炭素数4〜8のアルキレン基であり、R及びRの少なくとも一方がアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基としては、炭素数1〜4(好ましくは1)の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等を例示することができる。具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ基等を挙げることができる。
【0019】
Yが置換基を有していてもよい炭素数4〜8のアルキレン基であり、R及びRの少なくとも一方がアルケニルオキシ基である場合、当該アルケニルオキシ基としては、二重結合を1〜3個有する炭素数2〜4(好ましくは2〜3)の直鎖又は分枝鎖状のアルケニルオキシ基等を例示することができる。具体的には、ビニルオキシ、2−プロペニルオキシ、3−ブテニルオキシ基等を挙げることができる。
【0020】
Yが−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH−である場合、m1は、0以上の整数、好ましくは、0〜3、より好ましくは0又は1を示す。
m2は、0以上の整数、好ましくは、0〜5、より好ましくは1〜4を示す。
但し、m1+m2は1以上を示す。
【0021】
本発明において、Yが−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH−であって、m1が0でありかつR及びRの少なくとも一方がアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基は、n−ラウリルオキシ基を示す。
【0022】
また、m1が0でありかつR及びRの少なくとも一方がアルケニルオキシ基である場合、当該アルケニルオキシ基は、n−オレイルオキシ基を示す。
【0023】
mが1以上でありかつR及びRの少なくとも一方がアルコキシ基である場合、アルコキシ基とは、炭素数12〜20、好ましくは炭素数14〜18、より好ましくは炭素数16の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基を例示することができる。より具体的には、例えばラウリルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、セチルオキシ、ヘプタデシルオキシ、ステアリルオキシ、ノナデシルオキシ、エイコシルオキシ、イソステアリルオキシ基等を挙げることができる。
【0024】
mが1以上でありかつR及びRの少なくとも一方がアルケニルオキシ基である場合、アルケニルオキシ基とは、二重結合を1〜3個有する炭素数12〜20、好ましくは炭素数14〜18、より好ましくは炭素数16の直鎖又は分枝鎖状のアルケニルオキシ基を例示することができる。より具体的には、例えば11−ドデセニルオキシ、12−トリデセニルオキシ、13−テトラデセニルオキシ、14−ペンタデセニルオキシ、15−ヘキサデセニルオキシ、16−ヘプタデセニルオキシ、オレイルオキシ、18−ノナデセニルオキシ、19−エイコセニルオキシ基等を挙げることができる。
【0025】
Yが−CHCH(OR)CH−であり、Rが、アルキル基である場合、当該アルキル基としては、炭素数16〜20、好ましくは炭素数17〜19、より好ましくは炭素数18の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を例示することができる。より具体的には、例えば、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、ノナデシル、エイコシル、イソステアリル基等を挙げることができる。
【0026】
Yが−CHCH(OR)CH−であり、R及びRの少なくとも一方がアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基としては、炭素数16〜20、好ましくは炭素数17〜19、より好ましくは炭素数18の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基を例示することができる。より具体的には、例えば、セチルオキシ、ヘプタデシルオキシ、ステアリルオキシ、ノナデシルオキシ、エイコシルオキシ、イソステアリルオキシ基等を挙げることができる。
【0027】
Yが−CHCH(OR)CH−であり、R及びRの少なくとも一方がアルケニルオキシ基である場合、当該アルケニルオキシ基としては、二重結合を1〜3個有する炭素数16〜20、好ましくは炭素数17〜19、より好ましくは炭素数18の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を例示することができる。より具体的には、例えば、15−ヘキサデセニルオキシ、16−ヘプタデセニルオキシ、オレイルオキシ、18−ノナデセニルオキシ、19−エイコセニルオキシ基等を挙げることができる。
【0028】

本発明の好ましい実施形態において、Yは、式
−CHR−CR−CH−CH
[式中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
は、水素、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
は、水素、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基を示す。
が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基の場合、R及びRは共に水素原子を示す。]
で示される、置換基を有していてもよい炭素数4〜8アルキレン基であり、
が水素又は炭素数1〜4のアルコキシ基の場合、Rは水素原子を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
がヒドロキシル基の場合、Rはアルコキシ基を示しかつRは水素原子を示す。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態において、Yは、式
−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH
[式中、m1は、0又は1を示す。
m1が0の場合、m2は1〜4の整数を示し、m1が1の場合、m2は3を示す。]
で表される基であり、
m1が0の場合、Rはオレイルオキシ基又はラウリルオキシ基を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
m1が1の場合、R及びRの一方はセチルオキシ基を示しかつ他方はヒドロキシル基を示す。
【0030】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、Yは、式
−CHCH(OR)CH
[式中、Rは、水素原子又はイソステアリル基を示す。]
で示される基であり、
が水素原子の場合、Rはイソステアリルオキシ基を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
がイソステアリル基の場合、R及びRは共にヒドロキシル基を示す。
【0031】
前記化合物(1)の具体例としては、2−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、4−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、4−メトキシ−2−ブタノール等のアルコキシブタノール;2−メトキシ−2−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−2−メチル−1−ブタノール、4−メトキシ−2−メチル−1−ブタノール、2−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、4−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のアルコキシアルキルブタノール;イソステアリルグリセリルエーテル;POEオレイルエーテル(n=2或いはn=5);POEラウリルエーテル(n=2或いはn=4);POE(1)POP(4)セチルエーテル;1−ブタノール、1−オクタノール等のアルコール;4−フェニル−1−ブタノール等のフェニルブタノール等を挙げることができる。
【0032】
本発明において、化合物(1)には、光学異性体、幾何異性体、立体異性体等の異性体も当然に包含される。
【0033】
また、本発明には、本発明の効果を失わない範囲で、本発明の技術分野において通常用いられる方法により化合物(1)を誘導体化した状態で含有する害虫忌避剤、あるいはそれらの誘導体と化合物(1)との混合物を含有するもの等も含まれ得る。
【0034】
本発明の害虫忌避剤は、これを家庭内の玄関、台所、食堂等や畜舎、農園芸ハウス等の特定区域、タンス、食物収納庫、衣装ケース、人形ケース等の収納家具内、及び人体、動物体、植物体などに適用することによって、これらの場所への害虫の飛来、接近、接触、侵入等を確実に防止し、また上記特定区域内等で害虫棲息、食害など及び動植物体の刺咬、吸血等、さらには汚染をも見事に回避できるのである。
【0035】
本発明において害虫とは、ゴキブリ、ハエ、ダニ、アブ、ノミ、ナンキンムシ、ヌカカ、蚊、ユスリカ等の衛生害虫ないし吸血害虫、イガ、コイガ等の衣料害虫、コクヌストモドキ、コクゾウムシ等の貯穀害虫、さらにはアリ、シロアリ、ハチ、ゲジゲジ、ムカデ等の不快害虫等をいう。
【0036】
本発明において、害虫の忌避効果(作用)とは、上記害虫の定着阻害作用、侵入防止作用及びランディング防止作用のいずれか一以上の作用を有することをいう。
【0037】
本発明の有効成分である化合物(1)は、非常に強い害虫忌避活性作用を有する。当該化合物(1)は、その使用の際、有効成分として、必ずしも単一化合物である必要はなく、前に述べたように、他の害虫忌避剤成分との混合物としても使用できる。
【0038】
本発明の害虫忌避剤は、上記有効成分化合物をそのまま害虫忌避を要求される区域等に適用することもできるが、通常好ましくは適当な担体その他の配合剤を用いて適当区域、適当方法などに適した各種の形態、例えば、液剤、固剤などに調製して利用される。液剤の形態に調製するにあたり用いられる担体としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ケロシン、パラフィン、石油ベンジン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類を例示できる。これらの液剤の形態の本発明害虫忌避剤にはさらに通常の塗膜形成剤、乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、安定剤、噴射剤などの添加剤を配合することができ、塗料形態、接着剤形態、乳剤、分散剤、混濁剤、ローション、クリーム、噴霧剤、エアゾール剤等の形態で利用することができる。これらの添加剤としては、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチリルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル樹脂などのビニル系樹脂、アルキッド系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム、ポリビニルアルコール等の塗膜形成剤、石鹸類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアルキルアリールスルホン酸塩等の界面活性剤、液化石油ガス、ジメチルエーテル、フルオロカーボン等の噴射剤、カゼイン、ゼラチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース(CMC) 等を例示できる。
【0039】
また、固剤の形態に調製するにあたり用いられる担体としては、例えば、ケイ酸、カオリン、活性炭、ベントナイト、珪藻土、タルク、クレー、炭酸カルシウム、陶磁器粉等の鉱物質粉末や、木粉、大豆粉、小麦粉、澱粉等の植物質粉末等や、シクロデキストリン等の包接化合物等を例示できる。さらに該固剤の形態に調製するにあたっては、例えばトリシクロデカン、シクロドデカン、2,4,6 −トリイソプロピル−1,3,5 −トリオキサン、トリメチレンノルボルネン等の昇華性担体や、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳等の昇華性防虫剤を用い、上記有効成分化合物を溶融混合又は擂潰混合後、成型して昇華性固剤とすることもできる。
【0040】
また、本発明の害虫忌避剤は、例えば、ポリビニルアルコールやCMC 等を用いたスプレードライ法、ゼラチン、ポリビニルアルコール、アルギン酸等を用いた液中硬化法、コアセルベーション法等に従いマイクロカプセル化した形態に調製したり、ベンジリデン−D−ソルビトール、カラギーナン等のゲル化剤を用いてゲルの形態に調製することもできる。
【0041】
さらに、本発明の害虫忌避剤には、公知の害虫忌避剤、効力増強剤、酸化防止剤、殺虫剤、げっ歯類動物駆除剤、及び忌避剤、殺菌剤、防黴剤、除草剤、肥料、着香料、着色料等を配合することができる。配合可能な他の害虫忌避剤としては、N,N −ジエチル−メタ−トルアミド、2,3,4,5 −ビス(A2−ブチレン)−テトラヒドロフルフラール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート、ジ−n−ブチルサクシネート、2−ヒドロキシエチルオクチルサルファイド等を、効力増強剤としては N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ−[2,2,1 ]−5−ヘプテン−2,3 −ジカルボキシイミド、6−(プロピルピペロニル)−ブチルカルビニルエーテル等を、酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、γ−オリザノール等を、殺虫剤としては、一般名アレスリン及びその幾何及び(又は)光学異性体等のピレスロイド類を、げっ歯類動物駆除及び忌避剤としてはα−ナフチルチオウレア、シクロヘキシミド等を、殺虫剤としてはサリチル酸、p−クロロ−m−キシレノール、2−(4'−チアゾイル)ベンズイミダゾール等を、防黴剤としては、α−ブロモシンナミックアルデヒド、 N−ジメチル−N −フェニル−N'−(フルオロジクロロメチル)チオスルファミド等をそれぞれ例示できる。
【0042】
かくして調製される各種形態を有する本発明の害虫忌避剤は、その使用にあたり忌避効果を要求される害虫の侵入区域、例えば農作物栽培畑、果樹園等、一般家庭、穀物倉庫、食堂の厨房、家具、押入れ、玄関、洗面所等に、載置、撒布、噴霧、塗布、貼り付けなどにより、また、動植物体自体に撒布、噴霧、塗布等により適用できる。
【0043】
本発明の害虫忌避剤中の化合物(1)の量及び該忌避剤の使用量は、その剤型や適用方法、適用場所等に応じて適宜に決定すれば良く限定的ではないが、通常分散剤や水和剤などの液剤の形態で用いる場合、化合物(1)を1〜80重量%、好ましくは5〜40重量%含有させればよく、粉剤等の固剤の形態とする場合、1〜50重量%、好ましくは2〜20重量%含有させればよく、その適用量としては、例えば、塗布使用の場合、塗布すべき面積1cm2 当たり化合物(1)を約0.0005mg以上とするのがよく、固剤その他の形態で用いる場合、適用空間1m3当たり化合物(1)を約0.5mg 以上存在させるのが適当である。
【0044】
本発明は、また、上記害虫忌避剤を基材に保持させてなる害虫忌避剤をも提供するものである。該害虫忌避剤はその基材の特性を利用して害虫忌避性を有するシート状基材や家具部材等としても用いられる。ここで基材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル等の合成樹脂シート、動植物質または無機質繊維体シート(紙、布、不織布、皮革等)、これらの合成樹脂と無機質繊維または粉体との合成シートまたは混紡布、上記合成樹脂と動植物繊維との混紡布または不織布、アルミニウム、ステンレス、亜鉛等の金属の箔ないしフィルム及び上記各種シートの積層シートを例示できる。さらに上記基材としては、これを家具部材とする天然木材、例えばキリ、ペンシルシダ、クス等や、プラスチックス、例えば塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の成型物をも有効に利用できる。
【0045】
これらの基材への本発明害虫忌避剤の保持手段は、特に制限はなく、例えば塗布、含浸、滴下、混練等により保持させて、該基材に保持された形態で目的とする箇所に載置したり、貼り合わせることにより利用することができる。保持量も特に制限はなく、適宜に決定できるが、基材等の飽和含浸量のほぼ1倍量までを保持させればよい。
【実施例】
【0046】
前記化合物(1)の害虫忌避活性について、実施例、試験例に基づき詳細に説明する。
【0047】
試験例1 チャバネゴキブリに対する定着阻害効力試験
種々の化合物を用いてチャバネゴキブリに対する忌避効力を評価した。
【0048】
[検体]
使用した化合物は、以下の通り:
【0049】
【表1】

【0050】
[試験方法]
チャバネゴキブリ30頭(♂/♀=15/15)を入れた、50cm×50cmの角バット(バットの高さ、25cm)の4隅に、対角線上に、透明樹脂製のシェルター(12×12×1cm)を設置した。対角線上の2つのシェルター内に¢10mmのペーパーディスクに検体を50μL滴下したものを1枚入れ、他のシェルターには無処理のペーパーディスクを入れた。暗室にて放置し、各シェルター内のゴキブリの数をカウントし定着阻害率を求めた。
【0051】
定着阻害率(%)=100×(無処理区数−処理区数)/(無処理区数+処理区数)
[試験結果]
【0052】
【表2】

【0053】
上記試験において、ソルフィット(株式会社クラレ商品名)を用いた場合、ハッカ油と同様の高い定着阻害効果が確認された。これに対して、フェノキシエタノールの定着阻害率は-100%であった。ここで、定着阻害率−100%とは、上記表2から分かるように、チャバネゴキブリが処理区に侵入してしまい、無処理区に全く侵入しなかったことを示す。すなわち、定着阻害率-100%とは、当該検体が定着阻害効果を有さず、むしろチャバネゴキブリを誘引してしまった可能性があることを示す。
【0054】
試験例2 チャバネゴキブリに対する定着阻害効力試験2
[検体]
使用した検体は以下の通り:
【0055】
【表3】

【0056】
[試験方法]
チャバネゴキブリ50頭(♂/♀=25/25)を入れた、50cm×50cmの角バット(バットの高さ、25cm)の対角線上4隅に、透明樹脂製のシェルター(上部φ12cm、高さ約10cmカップ)を4つ設置した。対角線上の2つのシェルター内にφ11cmのろ紙に検体を100mg処理したものを1枚入れ、他のシェルターには無処理のろ紙を入れた。暗室にて放置し、各シェルター内のゴキブリの数をカウントし定着阻害率を求めた。
【0057】
定着阻害率(%)=100×(無処理区数−処理区数)/(無処理区数+処理区数)
[試験結果]
【0058】
【表4】

【0059】
本試験においても、ソルフィット(株式会社クラレ商品名)を用いた場合、メチルセルソルブ及びエチルセルソルブよりも著しく高く、かつハッカ油と同様に高い定着阻害率が確認された。
【0060】
試験例3 チャバネゴキブリに対する定着阻害効力試験3
ソルフィット(株式会社クラレ商品名)及びこれ以外の二価アルコールのモノエーテルとして、3-メトキシ-3-メチル-1-フ゛タノールを用いて、忌避効果を評価した。
[試験方法]
50cm×50cmのバット(バットの高さ、25cm)にチャバネゴキブリ(♂/♀=25/25)を放し、φ9cm、容積200mLの透明樹脂製カップに4cm×1.5cmの出入ロを設けて4個設置した。対角線上の2つのカップに、後述の薬剤を10μL処理したφ1cmペーパーディスクを入れ、残りの2個は無処理とした。バット中央付近に中央は水と餌を入れた透明樹脂カップを1個ずつ設置した。24℃、50%RHの暗条件で一晩静置して定着数を数え、定着阻害率を求めた。
定着阻害率(%)=100×(無処理区数処−処理区数)/(無処理区数+処理区数)
[検体及び試験結果]
【0061】
【表5】

【0062】
3-メトキシ-3-メチル-1-フ゛タノールを用いた場合も、ソルフィット(株式会社クラレ商品名)及びリナロールと同様に高い忌避効果が認められた。
【0063】
試験例4 チャバネゴキブリに対する定着阻害効力試験4
上記試験例で用いたソルフィット(株式会社クラレ商品名)以外のブタノール系化合物についても定着阻害効果を試験した。
【0064】
[検体]
使用した検体は以下の通り:
【0065】
【表6】

【0066】
[試験方法]
チャバネゴキブリ50頭(♂/♀=25/25)を入れた、50cm×50cmの角バット(バットの高さ、10cm)の4隅に、対角線上に、透明樹脂製のシェルター(上部φ12cm、高さ約10cmカップ)を設置した。対角線上の2つのシェルター内にφ10mmのペーパーディスクに検体を50μL滴下したものを1枚入れ、他のシェルターには無処理のペーパーディスクを入れた。暗室にて放置し、各シェルター内のゴキブリの数をカウントし定着阻害率を求めた。
【0067】
定着阻害率(%)=100×(無処理区数−処理区数)/(無処理区数+処理区数)
[試験結果]
【0068】
【表7】

【0069】
[考察]
今回、供試したすべての化合物において定着阻止効果が認められた。したがって、炭素数4〜8のアルキレン基を有する一価アルコールまたは二価アルコールのモノエーテルが害虫忌避効果を有することが分かる。
【0070】
試験例5 チャバネゴキブリに対する定着阻害効力試験5
各種エーテル化合物を用いて、害虫忌避効果を評価した。
【0071】
[検体]
使用した検体は以下の通り:
【0072】
【表8】

【0073】
[試験方法]
チャバネゴキブリ50頭(♂/♀=25/25)を入れた、50cm×50cmの角バット(バットの高さ、10cm)の対角線上、4隅に、シェルターとして縁を2×4cm切り欠いたKPカップの蓋(φ11cm)を逆さに4個設置した。対角線上の2つのシェルター内に検体を100mg/枚処理したφ110cmのろ紙を敷き、他の2つのシェルターは無処理とした。暗室にて放置し、各シェルター内のゴキブリの数をカウントし定着阻害率を求めた。
定着阻害率(%)=100×(無処理区数−処理区数)/(無処理区数+処理区数)
上記試験を2回行った。下記表9に記載の一晩後の定着数、及び定着阻害率は、いずれも2回の試験の平均値である。
[試験結果]
【0074】
【表9】

【0075】
上記表9から明らかなように、▲1▼イソステアリルグリセリルエーテル、▲2▼POEオレイルエーテル(ノニオンE−202S n=2 HLB4.9)、▲3▼POEオレイルエーテル(ノ二オンE−205S n=5 HLB9.0)、▲4▼POEラウリルエーテル、▲5▼POE(1)POP(4)セチルエーテル(PBC-31)及び▲6▼POEラウリルエーテル n=4 HLB9.6)は、いずれも高い忌避効果を示した。これに対し、▲7▼トリエチレングリコールモノメチルエーテル、▲8▼POEステアリルエーテル(ノ二オンS−202 n=2 HLB4.9)、▲9▼POEステアリルエーテル(ノ二オンS−207 n=7 HLB10.7)、及び▲10▼POEセチルエーテル(ノニオンP−208 n=8 HLB11.9)については、忌避効果が著しく劣っていた。特に、▲2▼POEオレイルエーテル(ノニオンE−202S n=2 HLB4.9)は、▲8▼POEステアリルエーテル(ノ二オンS−202 n=2 HLB4.9)とは、二重結合の有無以外は同じ化学構造を有するが、得られる忌避効果が大きく異なっていた。
【0076】
試験例6 クロゴキブリに対する定着阻害効力試験1
[検体]
使用した検体は以下の通り:
【0077】
【表10】

【0078】
[試験方法]
クロゴキブリ20頭(♂/♀=10/10)を入れた、50cm×50cmの角バット(バットの高さ、10cm)の対角線上、4隅に、透明樹脂製のシェルター(上部φ12cm、高さ約10cmカップ)を4個設置した。対角線上の2つのシェルター内にφ11cmのろ紙に検体を100mg処理したものを1枚入れ、他のシェルターには無処理のろ紙を入れた。暗室にて放置し、各シェルター内のゴキブリの数をカウントし定着阻害率を求めた。
【0079】
定着阻害率(%)=100×(無処理区数−処理区数)/(無処理区数+処理区数)
[試験結果]
【0080】
【表11】

【0081】
試験例7 クロゴキブリに対する定着阻害効力試験2
グリコールエーテル類のクロゴキブリに対する忌避試験を行った。本試験例は、検体を滴下するφ10mmのペーパーディスクとして、直径の小さいものを用いることにより、接触忌避のない条件で行った。
[検体]
使用した検体は以下の通り:
【0082】
【表12】

【0083】
[試験方法]
クロゴキブリ10頭(♂/♀=5/5)を入れた、33cm×44cmのバット(バットの高さ、10cm)の対角線上、4隅に、透明樹脂製のシェルター(上部φ8cm、高さ約4cmカップ)を4個設置した。対角線上の2つのシェルター内にφ10mmのペーパーディスクに検体を50μL滴下したものを1枚入れ、他のシェルターには無処理のペーパーディスクを入れた。暗室にて放置し、各シェルター内のゴキブリの数をカウントし定着阻害率を求めた。
【0084】
定着阻害率(%)=100×(無処理区数−処理区数)/(無処理区数+処理区数)
[試験結果]
【0085】
【表13】

【0086】
試験例8 キイロショウジョウバエに対する定着阻害効力試験
[検体]
使用した検体は以下の通り:
【0087】
【表14】

【0088】
[試験方法]
市販のバナナを数日間放置し、つぶした後、検体が3%、10%(W/W)になるように混合する。混合したもの1.5gを、φ6cm深さ5mmの透明樹脂性の容器にのせ、25cm×25cm×25cmのケージの中に置く(4〜5検体)。その中にキイロショウジョウバエを50匹放ち、2時間放置し、薬剤を処理したバナナ上及び近辺のハエの数を数えた。試験は2反復とし、その合計を示した。各検体の忌避率を下記表15に示す。
【0089】
忌避率=100×(無処理区合計数−処理区合計数)/無処理区合計数)
[試験結果]
【0090】
【表15】

【0091】
[考察]
ソルフィット(株式会社クラレ商品名)について、ディートと同程度又はそれ以上の高い忌避効果が確認された。これに対し、メチルセルソルブに関しては、非常に低い忌避効果しか認められなかった。
【0092】
試験例9 アミメアリに対する定着阻害効力試験
[検体]
使用した検体は以下の通り:
【0093】
【表16】

【0094】
[試験方法]:
φ1cmのろ紙を半分に切り、検体が25mg、及び50mgになるように所定濃度に調製したアセトン溶液0.5mlを均一に塗布した。20分間風乾後、この処理ろ紙を残り半分の無処理のろ紙と並べてプラスティック容器上(KPカップの蓋)に置き、その上に、内面に炭酸カルシウムを塗布した円筒(直径6cm、高さ1.5cm)をろ紙の中央に置いた。その円筒内に供飼虫10頭を放飼し、20分後の薬剤処理紙上のアリの数を数えた。試験は2反復とし、その合計を示した。各検体の忌避率を下表に示す。
【0095】
忌避率=100×(無処理区合計侵入数−処理区合計侵入数)/総供試虫数)
[試験結果]
下記表17に、各検体の接触的忌避効果を示す:
【0096】
【表17】

【0097】
[考察]
ソルフィット(株式会社クラレ商品名)を用いた場合、25mg及び50mgの両方の濃度において、ディートと同様の高い忌避効果が見られた。これに対し、メチルセルソルブを用いた場合、忌避効果は著しく劣っていた。これらのことから、本発明の害虫忌避剤が、アリに対して非常に高い忌避効果を有することが分かる。
【0098】
試験例10 ヒトスジシマカ
[検体]
使用した検体は、以下の通り:
【0099】
【表18】

【0100】
[試験方法](蚊 忌避試験):
手のひらに、検体が100mg、300mgになるように検体を均一に塗布した。この手のひらをヒトスジシマカ雌成虫が30頭入ったケージ(25cm×25cm×25cm 高密度メッシュ)の一面にあて、1分間のランディング数をカウントした。試験は2反復とし、その合計を示した。各検体の忌避率を下表に示す。
【0101】
忌避率=100×(無処理区合計ランディング数−処理区合計ランディング数)/無処理区合計ランディング
[試験結果]
下記表19に、各検体の忌避効果を示す。
【0102】
【表19】

【0103】
[考察]
この試験でも、ソルフィット(株式会社クラレ商品名)を用いた場合、全ての濃度でディートよりも高い忌避効果が確認された。これに対し、メチルセルソルブ及びエチルセロソルブに関しては、忌避率は著しく低かった。これらのことから、本発明の害虫忌避剤は、カに対する忌避効果についても優れていることが分かる。
【0104】
実施例1 化合物(1)3重量部、酸化ケイ素1重量部及びシクロドデカン96重量部を充分に擂潰混合後、300 kg/cm3 の加圧下に10g/錠に打錠し、錠剤の形態を有する本発明害虫忌避剤組成物を得た。
【0105】
実施例2 化合物(1)10gに香料微量、エチルセロソルブ20ml及び無臭灯油の全体を150ml とする量を加え、これと液化石油ガス及びジメチルエーテル混合物(50:50容積比)の150ml とをエアゾール用耐圧缶(内容400ml)に充填して噴射装置に取付け密封してエアゾール剤の形態の本発明害虫忌避剤組成物を得た。
【0106】
実施例3 化合物(1)5g、ニトロセルロース25g、シンナー25g及びジブチルフタレート2gを混合溶解して、塗料形態の本発明害虫忌避剤組成物を得た。
【0107】
実施例4 化合物(1)5g、エチルセロソルブ20g、無臭灯油75gを混合して油剤の形態を有する本発明害虫忌避剤組成物を得た。
【0108】
実施例5 化合物(1)5g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数15モル)10g、水85gを混合して製剤の形態を有する本発明害虫忌害虫忌避剤組成物を得た。
【0109】
実施例6 化合物(1)10g、プロピレングリコール5g、ミリスチン酸イソプロピル2g、精製水15g、香料微量、エタノール68gを混合して製剤形態を有する本発明害虫忌避剤組成物を得た。
【0110】
実施例7 化合物(1)5g及び効力増強剤として N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ−[2,2,1 ]−5−ヘプテン−2,3 −ジカルボキシイミド5gをn−ヘキサン1リットルに希釈し、不織布(ポリエチレン−木綿(3:1重量比)製、厚さ300 μ、面積1m2)に、供試化合物(1)が30gとなるように含浸後乾燥して、シート状形態の本発明害虫忌避剤を得た。
【0111】
実施例8 化合物(1)6重量部を 2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5 −トリオキサン94重量部と混合後、約90℃で加熱溶解した液中に、桐製板(15cm×150 cm×2cm厚さ) を浸漬し、15kg/cm2 で加圧処理して、木材重量の約25%となる量の液を含浸させて、害虫忌避剤保持材の形態の本発明害虫忌避剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアルコール又はエーテル化合物:
−Y−R (1)
[式中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数4〜8のアルキレン基、−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH
(式中、m1及びm2は同一又は異なって、0以上の整数を示す。但し、m1+m2≧1を示す。)
又は−CHCH(OR)CH
(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。)
を示す。
及びRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基を示す。
但し、R及びRの少なくとも一方はヒドロキシル基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基を示す。
Yが−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH−の場合、R及びRの少なくとも一方がアルコキシ基又はアルケニルオキシ基を示す。
Yが−CHCH(OR)CH−の場合、R及びRは、同一又は異なって、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を示す。]
を有効成分として含有する、害虫忌避剤。
【請求項2】
Yが、式
−CHR−CR−CH−CH
[式中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
は、水素、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
は、水素、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基を示す。
が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基の場合、R及びRは共に水素原子を示す。]
で示される、置換基を有していてもよい炭素数4〜8アルキレン基であり、
が水素又は炭素数1〜4のアルコキシ基の場合、Rは水素原子を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
がヒドロキシル基の場合、Rはアルコキシ基を示しかつRは水素原子を示す、請求項1に記載の害虫忌避剤。
【請求項3】
Yが、式
−(CHCHCHO)m1−(CHCHO)m2−CHCH
[式中、m1は、0又は1を示す。
m1が0の場合、m2は1〜4の整数を示し、m1が1の場合、m2は3を示す。]
で表される基であり、
m1が0の場合、Rはオレイルオキシ基又はラウリルオキシ基を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
m1が1の場合、R及びRの一方はセチルオキシ基を示しかつ他方はヒドロキシル基を示す、請求項1に記載の害虫忌避剤。
【請求項4】
Yが、式
−CHCH(OR)CH
[式中、Rは、水素原子又はイソステアリル基を示す。]
で示される基であり、
が水素原子の場合、Rはイソステアリルオキシ基を示しかつRはヒドロキシル基を示し、
がイソステアリル基の場合、R及びRは共にヒドロキシル基を示す、請求項1に記載の害虫忌避剤。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか一項に記載の害虫忌避剤を用いて害虫を防除する、有害生物防除方法。

【公開番号】特開2010−275264(P2010−275264A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131485(P2009−131485)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】