説明

害虫行動抑制成分、およびその利用

【課題】 人体および環境への悪影響がほとんどなく、アワヨトウ幼虫をはじめとする夜行性害虫の摂食行動等を有意に抑制する害虫行動抑制成分および、当該害虫の行動抑制成分を含むことを特徴とする植物食害防止剤、並びに当該植物食害防止剤を用いた植物の食害防止方法を提供する
【解決手段】 本発明にかかる害虫行動抑制成分は、トウモロコシ等のイネ科植物が明期において放出する揮発性成分、特にミルセンである。当該害虫行動抑制成分をアワヨトウ幼虫に曝露すると、アワヨトウ幼虫の摂食活動が有意に抑制されると共に、アワヨトウ幼虫は身を隠す行動を起こす。当該害虫行動抑制成分を利用すれば、トウモロコシ等のイネ科植物のアワヨトウ幼虫による食害を防止することができる。またミルセンは、天然物であるため人体および環境に対してリスクが極めて少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物、特にトウモロコシ等のイネ科植物が、明期において放出する揮発性成分であって、害虫、特にアワヨトウ幼虫をはじめとする夜行性害虫の行動を抑制する機能を有する成分(害虫行動抑制成分)に関するものである。また上記害虫行動抑制成分を含むことを特徴とする植物食害防止剤、および当該植物食害防止剤を用いた植物の食害防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物、特にイネ科植物をはじめとする農園芸植物の栽培において害虫による食害は、農作物の収穫量の減少、食味の低下等を引き起こすために重大な問題となっている。特にアワヨトウ(Pseudaletia separata)幼虫は、イネ・ムギ類(オオムギ・コムギ等)・トウモロコシ、イネ科牧草等のイネ科植物の害虫として知られており、これが大量発生すると農作物に重大な被害を与える。またアワヨトウ幼虫は、夜行性であり昼間は葉の裏や土壌中に隠れており、夜間になると出没し、摂食行動を行なうことが知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
かかるアワヨトウをはじめとする害虫を駆除または防除する方法としては、化学薬剤、農薬等を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
一方、夜行性害虫を防除する方法であって、化学薬剤を使用する以外の方法としては、光の波長を特定の波長に制御することによって、害虫の行動を抑制することが知られている(例えば特許文献3,4参照)。
【非特許文献1】Yoshibumi Sato, Toshiharu Tanaka, Michio Imafuku and Toshitaka Hidaka (1983)How dies diurnal Apanteles kariyai parasitize and egress from a nocturnal larva?Kontyu, Tokyo 51: 128-139
【特許文献1】特開平6−157444号公報(公開日:平成6年(1994)6月3日)
【特許文献2】特開平8−217754号公報(公開日:平成8年(1996)8月27日)
【特許文献3】特開2004−180616号公報(公開日:平成16年(2004)7月2日)
【特許文献4】特開2004−93号公報(公開日:平成16年(2004)1月8日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記化学薬剤を用いる方法は、その殺虫作用により害虫の駆除・防除には有効である。しかし、人体への悪影響、環境汚染等の問題を抱えており、安全な方法であるとはいえない。また化学薬剤を過度に散布すると、害虫に化学薬抵抗性の系統が出現する危険性がある。さらに、アワヨトウ幼虫をはじめとする夜行性害虫は、昼間には身を隠していることが多く、昼間に上記化学薬剤を散布しても効果が得難いという欠点も有している。
【0006】
一方、上記光の波長を特定の波長に制御することによって害虫を防除する方法は、オオタバコガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ等の夜蛾のごとく飛来する害虫に対しては有効であるが、アワヨトウ幼虫のごとく葉・穂の上で摂食活動をする害虫には効果が低いという問題点がある。またかかる方法には、別途照明設備を設ける必要があり、広大な開放系において栽培するトウモロコシ等のイネ科植物には適用し難い。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、人体および環境への悪影響がほとんどなく、アワヨトウ幼虫をはじめとする夜行性害虫の摂食行動等を有意に抑制する害虫行動抑制成分、および当該害虫行動抑制成分を含むことを特徴とする植物食害防止剤、並びに当該植物食害防止剤を用いた植物の食害防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行なった結果、(a)夜行性害虫(アワヨトウ幼虫)の夜行性(夜間の摂食活動)は、外界の明暗を感知して行なっているのではないこと、(b)アワヨトウ幼虫の夜間の摂食活動は、トウモロコシが夜間に放出する揮発性成分によって活性化され、トウモロコシが明期(昼間)に放出する揮発性成分(特にミルセン)によって抑制されることを発見した。本発明は上記新規知見に基づき完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明にかかる害虫行動抑制成分は、植物が明期環境下において放出する揮発性成分であって、害虫の行動を抑制する機能を有することを特徴としている。
【0010】
ここで上記害虫行動抑制成分が放出されるより好的な条件としては、上記明期が、6500ルクス(lux)以上であることが好ましい。
【0011】
また本発明にかかる害虫行動抑制成分は、上記植物が、イネ科植物であることがましい。
【0012】
また本発明にかかる害虫行動抑制成分は、上記イネ科植物が、トウモロコシであることが好ましい。
【0013】
また本発明にかかる害虫行動抑制成分は、上記揮発性成分が、テルペンであることが好ましい。
【0014】
また本発明にかかる害虫行動抑制成分は、上記テルペンが、非環状テルペンであることが好ましい。
【0015】
また本発明にかかる害虫行動抑制成分は、上記非環状テルペンが、ミルセンであることが好ましい。
【0016】
また本発明にかかる害虫行動抑制成分は、上記害虫が、夜行性害虫であることが好ましい。
【0017】
また本発明にかかる害虫行動抑制成分は、上記夜行性害虫が、アワヨトウ幼虫であることが好ましい。
【0018】
上記本発明にかかる害虫行動抑制成分を害虫、特にアワヨトウ幼虫等の夜行性害虫が感知すると、害虫の摂食活動は抑制されると共に、害虫は身を隠すという行動を起こす。それゆえ、本発明にかかる害虫行動抑制成分を植物に曝露することによって、害虫の植物の食害を防止することが可能となるという効果を奏する。また、本発明にかかる害虫行動抑制成分は、トウモロコシ等のイネ科植物が放出する天然の揮発性成分であるため、環境および人体への悪影響は極めて少ないといえる。
【0019】
一方、本発明にかかる植物食害防止剤は、上記害虫行動抑制成分を含むことを特徴としている。
【0020】
また本発明にかかる植物食害防止剤は、夜行性害虫による食害を防止するために使用されることが好ましい。
【0021】
また本発明にかかる植物食害防止剤は、上記夜行性害虫が、アワヨトウ幼虫であることが好ましい。
【0022】
また本発明にかかる植物食害防止剤は、イネ科植物に使用することが好ましい。
【0023】
また本発明にかかる植物食害防止剤は、上記イネ科植物が、トウモロコシであることが好ましい。
【0024】
上記本発明にかかる植物食害防止剤は、上記本発明にかかる害虫行動抑制成分を含んでいる。それゆえ、害虫、特にアワヨトウ幼虫等の夜行性害虫が本発明にかかる植物食害防止剤に含まれる害虫行動抑制成分を感知すると、害虫の摂食活動は抑制されると共に、害虫は身を隠すという行動を起こす。それゆえ、本発明にかかる植物食害防止剤を植物に曝露することによって、害虫の植物の食害を防止することが可能となるという効果を奏する。また、上記害虫行動抑制成分は、トウモロコシ等のイネ科植物が放出する天然の揮発性成分であるため、環境および人体への悪影響は極めて少ないといえる。よって、環境および人体に対してリスクのない植物食害防止剤を提供することが可能である。
【0025】
なお、上記本発明にかかる植物食害防止剤は、害虫行動抑制成分のみからなるものであっても、pH緩衝液、安定化剤等の副成分が含まれていてもよい。
【0026】
一方、本発明にかかる植物の食害防止方法は、上記植物食害防止剤を植物に曝露する工程を含むことを特徴としている。植物の食害防止剤は、上述のごとく、害虫、特に夜行性害虫の摂食活動を抑制する機能を有している。それゆえ、本発明かかる植物食害防止剤を植物に曝露するという本発明にかかる植物の食害防止方法によれば、人体および環境に対して悪影響を及ぼすことなく植物(農作物)を夜行性害虫の食害から守ることができ、収穫量の減少を防止することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、人体および環境への悪影響がほとんどなく、害虫、アワヨトウ幼虫をはじめとする夜行性害虫の摂食行動等を有意に抑制する害虫行動抑制成分および、当該害虫行動抑制成分を含むことを特徴とする植物食害防止剤、並びに当該植物食害防止剤を用いた植物の食害防止方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明についてより具体的に説明すれば、以下の通りである。なお言うまでもないが、本発明はこの記載に限定されるものではない。
【0029】
(1)本発明にかかる害虫行動抑制成分
本発明にかかる害虫行動抑制成分(以下「本害虫行動抑制成分」という)は、植物が明期環境下において放出する揮発性成分であって、害虫の行動を抑制する機能を有する物質である。
【0030】
ここで「明期」とは、通常の人間の肉眼で明るさを感じる以上の明るさを有する環境のことを意味する。ただし、植物が本害虫行動抑制成分を放出する「明期」の条件としては、平均照度が6500ルクス(lux)以上であることが好ましい。なお「平均照度」とは、植物体上の照度の最高値と最低値との平均値のことである。
【0031】
また植物が「放出する」とは、植物体内で合成した揮発性成分を気孔から分泌し、大気中の蒸散することを言う。また、植物は害虫により食害を受けた植物であっても、食害を受けていない健全な植物であってもよい。後述する実施例における検討によれば、食害を受けたか否かに関係なく害虫の行動抑制効果が見られた。ただし、食害を受けた植物の方が害虫の行動を抑制する効果が高いという結果が得られた。これは食害を受けた植物の方が、食害を受けていない健全な植物に比べて揮発性成分を多量に放出し、同様に本害虫行動抑制成分についても多量に放出するためである。したがって、本害虫行動抑制成分を放出する植物としては食害を受けた植物の方がより好ましいといえる。
【0032】
また当該行動抑制成分を放出する植物としては特に限定されるものではないが、特にイネ科植物が好ましい。また上記イネ科植物の具体例としては、トウモロコシ,イネ,オオムギ,コムギ等が挙げられる。
【0033】
特にトウモロコシの揮発性成分(におい成分)の放出には、日周性があることが知られている(Turlinds. TCT and Tumlinson JH (1992) Systemic release of chemical signals by herbivore-injured corn/ Proceedings of Natural Academy of Science UAS. 89: 8399-8402 参照)。本発明者等は、トウモロコシから明期(昼間)または暗期(夜間)に放出される揮発性成分(におい成分)各々に着目して検討を行なったところ、明期において放出される揮発性成分が夜行性害虫の行動を抑制する機能を有することを発見し、本発明の完成に至った。このことについては、後述する実施例においてより具体的に説明する。
【0034】
ここで「害虫の行動を抑制する」とは、害虫の摂食行動および移動を抑制すること、並びに害虫が身を隠す行動を起こさせることをいう。換言すれば、当該害虫による植物(園芸植物等)の食害を抑制することを意味する。
【0035】
なお本発明において「害虫」とは、植物全般に取り付き食害等の被害を及ぼす昆虫を意味する。また「夜行性害虫」とは、明期(昼間)においては、葉の裏や土壌中に身を隠しており、暗期(夜間)になると摂食、移動等の行動を行なう害虫のこと、換言すれば夜間に主に行動を行なう害虫のことを意味する。かかる害虫としては、アワヨトウ幼虫等が挙げられる。
【0036】
また「行動抑制成分」とは、夜行性害虫をはじめとする害虫に対して上記のごとく行動を抑制する機能を有する成分のことをいう。「成分」とは、単一の化合物のみならず、複数の化合物からなる組成物をも意味する。また当該「行動抑制成分」は植物が植物体内で合成する天然物であっても、同一の構造を有する人工的に合成した物質であってもよい。
【0037】
かかる行動抑制成分としては、上記夜行性害虫の行動を抑制する機能を有する成分であれば特に限定されるものではない。よって、上記植物(例えば、トウモロコシ等のイネ科植物)が、明期(昼間)において放出する揮発性成分そのものであってもよい。また前記揮発性成分から特に害虫(夜行性害虫)の行動を抑制する効果(以下適宜「行動抑制効果」という)の高い成分を分離したものであってもよい。
【0038】
かかる行動抑制効果の高い成分としては、テルペンが挙げられ、そのうち特に非環状テルペンであることが好ましい。さらには前記非環状テルペンのうち、ミルセンが好ましい。後述する実施例に示すごとく、食害を受けていない健全なトウモロコシ、および食害を受けたトウモロコシが放出する揮発性成分のうち、暗期(夜間)に比して明期(昼間)において有意に増加する揮発性成分は、非環状テルペンであるミルセンであり、しかも当該ミルセンは行動抑制効果を有するものであった。このことについては、後に詳述する。
【0039】
上記本害虫行動抑制成分の取得方法、および調製方法は特に限定されるものではなく、植物が明期(昼間)において放出する揮発性成分を捕集するか、もしくは植物が明期(昼間)に放出する揮発性成分の組成を分析同定し、その全部または一部を人工的に合成したものを本害虫行動抑制成分としてもよい。なお、前記揮発性成分を分析同定する方法としては、例えばガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)等の公知の手段を用い、公知の条件で分析を行なえばよい。
【0040】
ところで本発明者等は、図6に示す揮発性成分捕集装置1を用いて、植物(トウモロコシ)から放出される揮発性成分を捕集している。図6の揮発性成分捕集装置1は、密閉式のガラス容器2、空気流入口4、空気流出口5、チューブ6、捕集用カラム7、およびレギュレーター8とを備えている。ガラス容器2の上面には空気流入口4および空気流出口5が備えられており、さらに空気流入口4および空気流出口5の上端にはチューブ6が接続されている。また空気流出口5と接続されたチューブ6の空気流出口5と反対側にTENAX(登録商標)TAが充填された捕集用カラム7およびレギュレーター8が接続されている。TENAX(登録商標)TAとは、揮発性成分を吸着し、捕集するために用いられるポーラスポリマービーズのことである。
【0041】
揮発性成分の捕集の原理は次のとおりである。空気流入口4と接続されたチューブ6の他端から、エアポンプによって空気をガラス容器2内に供給する。ガラス容器2内の空気は空気流出口5およびチューブ6を通ってガラス容器2外へと排出される。この時、ガラス容器2内に植物3を置いておくことで、植物3から放出される揮発性成分を排出される空気と共に捕集することができる。またこのときの植物3が置かれている環境を明期(好ましくは、6500lux以上)または暗期にすることで、明期に植物3が放出する揮発性成分(すなわち本害虫行動抑制成分)、または暗期に植物3が放出する揮発性成分を捕集することができる。
【0042】
本発明者等は、後述する実施例において、上記揮発性成分捕集装置1を用い、空気流速100ml/分、明期(6500lux)、暗期(約0lux)の条件でトウモロコシから揮発性成分を捕集した。
【0043】
(2)本発明にかかる植物食害防止剤
本発明にかかる植物食害防止剤(以下、本食害防止剤という)は、上記本害虫行動抑制成分を含むことを特徴としている。それゆえ、害虫、特にアワヨトウ幼虫等の夜行性害虫が本食害防止剤に含まれる本害虫行動抑制成分を感知すると、害虫の摂食活動は抑制されると共に、害虫は身を隠すという行動を起こす。したがって、本食害防止剤を植物に曝露することによって、害虫の植物の食害を防止することが可能となる。
【0044】
かかる本食害防止剤を用いることにより、従来から害虫駆除に使用される農薬などとは異なり、自然環境への悪影響が少ないため、環境保全に貢献することができる。
【0045】
ここでいう「食害防止剤」とは、害虫、特にアワヨトウ幼虫等の夜行性害虫の摂食行動を抑制し、植物の食害を防止することができる製剤を意味する。
【0046】
また、本食害防止剤は、上記の本害虫行動抑制成分のみから成るものであっても、その他の副成分が含まれて成るものであってもよい。上記副成分としては、例えば、pH緩衝液、安定化剤等を挙げることができる。また害虫による食害防止効果を高めるために、適宜公知の農薬、害虫を防除する機能を有する成分等を添加してもよい。このように農薬を添加することによって自然環境に対する悪影響はゼロではなくなるが、少なくとも農薬の使用量を低減することができるため、本発明の環境保全に対する効果は大きいものといえる。
【0047】
次に、本食害防止剤の調製方法(製造方法)について説明する。本食害防止剤は、上記本害虫行動抑制成分を最適濃度に濃縮または希釈して調製すればよい。濃縮は、公知の方法を用いて濃縮を行なえばよい。また希釈する媒質に関しては、水系、有機系等は特に限定されないが、有機系の場合は植物の生育に悪影響をおよぼさない物質であることが好ましい。上記の媒質として具体的には、クエン酸トリエチル(以下、TECという)等が挙げられる。TECのような、不揮発性の媒質を用いれば、本害虫行動抑制成分の揮発性成分以外の、溶媒が揮発することなく、害虫の行動抑制効果をマスクすることがない。それゆえ、不揮発性の媒質を用いることがより好ましい態様であるといえる。
【0048】
害虫の行動抑制効果が有効に発揮する本食害防止剤の使用量については、本食害防止剤の組成、対象となる害虫の種類、植物の種類・栽培環境等、種々の条件により異なるため、使用条件等に応じて最適な条件を検討の上、適宜採用すればよい。
【0049】
なお本食害防止剤は、後述する実施例において試験を行なったトウモロコシ等のイネ科植物以外にも植物全般に応用可能であることは言うまでもない。例えば、食用植物、果実や野菜、花・木その他の有効樹木を含む園芸作物、工芸作物、さらには飼肥料作物等が挙げられる。
【0050】
また本食害防止剤には、上記本害虫行動抑制剤を含んでいるため、その対象となる害虫は、本害虫行動抑制剤によって行動が抑制される害虫であり、上記本害虫行動抑制剤の項で示した害虫と同様である。
【0051】
(3)本発明にかかる植物の食害防止方法
本発明にかかる植物の食害防止方法(以下、本食害防止方法という)は、上記の本食害防止剤を対象となる植物に曝露する工程を含むことを特徴としている。
【0052】
ここでいう「食害防止方法」とは、害虫、特にアワヨトウ幼虫等の夜行性害虫の摂食行動を抑制し、植物の食害を防止する方法のことをいう。また植物の害虫による食害を予防する意味をも含む。
【0053】
本食害防止剤を対象となる植物に曝露する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、霧吹き、スプレー容器等に本食外防止剤を充填し、対象植物に対して噴霧する方法などが挙げられる。
【0054】
また、本食害防止剤に徐放性を付与するための保持担体を用いて曝露させる方法を採用してもよい。なお「徐放性」とは、薬剤の緩徐な放出する性質のことを意味する。かかる本食害防止剤に徐放性を持たせることによって、当該剤の食害防止効果を長期間持続させることができる。このような方法としては、例えば、本食害防止剤を浸透させた脱脂綿・スポンジ等を対象植物の近傍に設置し、それらから蒸散させることで植物に曝露させる方法、本食害防止剤とゲル化剤とを混合してゲル化させ、そのゲルを対象植物の近傍に設置し、それらから蒸散させることで植物に曝露させる方法などが挙げられる。
【0055】
また、本食害防止剤をポリ塩化ビニルで徐放性を確保したものを、植物の根本に取り付けてもよい。ビニルハウス・温室等の密閉系(半密閉系)で対象植物を栽培している場合では、空調から当該植物用害虫防除剤を曝露させる方法を採用してもよい。こうすることで、対象植物にまんべんなく本食害防止剤を拡散させることができ、害虫の行動抑制効果が得られやすい環境を提供することできる。
【0056】
なお本食害防止方法の対象となる害虫および植物は、既述の本食害防止剤の対象となる害虫および植物と同様である。
【0057】
以上のように、本発明の植物の食害防止方法によれば、本食害防止剤を植物に曝露させることにより、害虫の摂食行動を抑制し、食害を防止することができる。それゆえ、例えば、食用の作物に対して本食害防止方法を用いれば、害虫を駆除するための農薬の散布量を低減させることができ、人体および環境に対して安全性の高い作物を収穫することができる。また、人体および環境に対しても悪影響の少ない農業を実現できる。
【0058】
また、日本の農地面積の約4割を占める中山間地では、主に少量多品目の農業生産が行なわれている。近年、このような中山間地では高齢化が進んでおり、少量多品目の農業生産において、害虫防除作業の負担の軽減が急務の課題である。また、農薬の使用を減らしたり、無農薬で栽培したりした農作物の付加価値が消費者にとって認められてきている。本食害防止方法を適用することにより、害虫の摂食行動等を人為的に抑制することが可能になる。それゆえ、従来から害虫駆除に使用される農薬などとは異なり、自然環境への悪影響が少ないため、環境保全に貢献することができる。さらに、本発明の植物の害虫防除方法は、農作業者の負担の少ない防除手段の確立につながり、地域における持続的農業の発展・活性化に貢献できる。
【0059】
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0060】
〔実施例1〕アワヨトウ幼虫の行動様式の検討−1
アワヨトウ幼虫は、既述のとおり夜行性であることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。そこでアワヨトウ幼虫の夜行性が、明暗を感知して行なわれているか否かを検討することとした。また同時に植物(トウモロコシ)の存在がアワヨトウ幼虫の行動様式に及ぼす影響についても調べることとした。
【0061】
(方法および装置)
試験は図1に示す試験装置10を用いて行なった。試験装置10は、上面にナイロンガーゼ製通気部11が備えられた透明プラスチック容器12(直径10cm,高さ5.5cmの円柱状容器)内に、人口飼料(商品名:インセクタLF、日本農産工業株式会社製)が入った給餌部13と、試験対象虫(アワヨトウ幼虫)が身を隠す場所であるシェルター14(10cm×10cm、ろ紙をアコーディオン状に折り曲げたもの)が備えられている。
【0062】
アワヨトウ幼虫が1匹入った当該試験装置10を容積約300L(リットル)のインキュベーター内に40〜50個入れ、試験環境を明期条件(6500lux)または暗期条件(約0lux)にした。この時の各試験装置10について、給餌部13にいるアワヨトウ幼虫の匹数、及びシェルター14内にいるアワヨトウ幼虫の匹数を計測した。なお、以下の実施例の結果を示す図面においては、シェルター14内にいるアワヨトウ幼虫の匹数を「隠れている幼虫数」と表示する。
【0063】
さらに試験装置10の周辺に食害を受けていない健全なトウモロコシを設置した場合において、上記と同様の試験を行なった。
【0064】
(結果)
上記試験の結果を図2に示す。図2横軸は、試験開始からの時間(hr)を示し、縦軸は隠れている幼虫数(匹)を示している。図2中の丸のシンボルで示す折れ線図は、トウモロコシを設置していない場合のおける明期条件の結果(破線で示す)、および暗期条件の結果(実線で示す)をそれぞれ示す。一方ひし形のシンボルで示す折れ線図は、トウモロコシを設置した場合のおける明期条件の結果(破線で示す)、および暗期条件の結果(実線で示す)をそれぞれ示す。
【0065】
図2の丸のシンボルで示す折れ線図で示す結果によれば、トウモロコシを設置していない場合においては、明期条件であろうと暗期条件であろうと隠れているアワヨトウ幼虫の数に影響しない、すなわちアワヨトウ幼虫は明暗を感知して摂食行動等を行なっているのではないということがわかった。
【0066】
一方、図2のひし形のシンボルで示す折れ線図で示す結果によれば、トウモロコシを試験装置10の周辺に設置した場合において、明期条件下で隠れているアワヨトウ幼虫の数が、暗期条件下のそれに比して有意に増加するということがわかった。
【0067】
また、明期条件におけるトウモロコシの有無ついて比較すると、トウモロコシを設置した場合における隠れているアワヨトウ幼虫の数が、トウモロコシを設置していない場合のそれに比して有意に増加しているということがわかった。なお、図中*は有意差検定を行なった結果、有意差があったことを示すものであり、*は危険率5%で有意差があったことを示し、**は危険率1%で有意差があったことを示す。なお有意差検定は、フィッシャーの正確確立検定法を用いて行なった(以下同じ)。
【0068】
以上の結果より、アワヨトウ幼虫の摂食行動等は、明期条件下かつトウモロコシが存在する条件において有意に抑制されるということがわかった。
【0069】
〔実施例2〕アワヨトウ幼虫の行動様式の検討−2
上記実施例1の検討によって、アワヨトウ幼虫の摂食活動等の抑制には(a)明期条件と(b)トウモロコシの存在との両者が関与するということがわかった。既述の通り、トウモロコシの揮発性成分(におい成分)の放出には日周性があることが知られている(Turlinds. TCT and Tumlinson JH (1992) Systemic release of chemical signals by herbivore-injured corn/ Proceedings of Natural Academy of Science UAS. 89: 8399-8402 参照)ことから、トウモロコシから明期条件下で放出される揮発性成分(におい成分)と、暗期条件下で放出される揮発性成分(におい成分)それぞれについて着目し、各揮発性成分がアワヨトウ幼虫の行動に及ぼす影響について検討することにした。
【0070】
(方法)
明期条件または暗期条件においてトウモロコシから放出される揮発性成分の捕集は、既述の図6記載の揮発性成分捕集装置1(捕集用カラム7を取り外したもの)を用いて行ない、試験は上記試験装置10を用いて行なった。当該揮発性成分捕集装置1については、実施の最良の形態の項で説示したとおりである。
【0071】
図3に試験系の概略図を示した。試験系を説明すれば以下のとおりとなる。まず明期に設定したインキュベーター20a内(容積約300L、約60cm×約60cm×約100cm)あるいは、暗期に設定したにインキュベーター20b内に40〜50個の試験装置10を設置する。次に揮発性成分捕集装置1の空気流出口5と上記インキュベーター20a、20bの空気流入口21各々とを二又に分かれたチューブ6で接続する。インキュベーター20c内に、トウモロコシを入れた揮発性成分捕集装置1を設置し、揮発性成分捕集装置1を明期条件(6500lux)下にセットして、空気流入口4から空気(air)を250ml/分の割合で流入させる。このようにすることによって、明期条件においてトウモロコシから放出される揮発性成分が、アワヨトウ幼虫の行動に及ぼす影響を調べることができる。なお、揮発性成分捕集装置1を暗期条件(約0lux)にセットし、前述と同様にすれば、暗期条件においてトウモロコシから放出される揮発性成分が、アワヨトウ幼虫の行動に及ぼす影響を調べることができる。なおインキュベーター20a〜20cは、東京理科器械株式会社製 EYELATORON FLY301NHを用いた。
【0072】
なお試験は、食害を受けていない健全なトウモロコシを用いた場合と、食害を受けたトウモロコシを用いて行なった。
【0073】
(結果)
図4(a)に健全なトウモロコシを用いて試験を行なった場合の結果を示し、同図(b)に食害を受けたトウモロコシを用いて試験を行なった場合の結果を示した。同図中の縦軸および横軸については、図2と同様である。また図4(a)および(b)中におけるシンボルについては、白抜き三角(△)が明期条件下でトウモロコシが放出する揮発性成分(以下、明期揮発性成分という)を用いて、明期条件下におけるアワヨトウ幼虫の行動様式を検討した結果を示し、白抜き四角(□)が明期揮発性成分を用いて暗期条件下におけるアワヨトウ幼虫の行動様式を検討した結果を示す。また黒塗り三角(▲)は暗期条件下でトウモロコシが放出する揮発性成分(以下、暗期揮発性成分という)を用いて、明期条件下におけるアワヨトウ幼虫の行動様式を検討した結果を示し、黒塗り四角(■)は、暗期揮発性成分を用いて暗期条件下におけるアワヨトウ幼虫の行動様式を検討した結果を示す。
【0074】
図4(a)および(b)の結果によれば、暗期揮発性成分を用いた場合に比して明期揮発性成分を用いた場合は、アワヨトウ幼虫の隠れている匹数が有意に増加した。またアワヨトウ幼虫の隠れている匹数とアワヨトウ幼虫の置かれている環境の明暗との間に因果関係がないということもわかった。したがって、明期揮発性成分をアワヨトウ幼虫に曝露することによって、アワヨトウ幼虫の摂食活動を抑制し、身を隠す行動を起こさせることができるということがわかった。なお、図中*は有意差検定を行なった結果有意差があったことを示すものであり、*は危険率5%で有意差があったことを示し、**は危険率1%で有意差があったことを示す。
【0075】
また図4(a)に示す健全なトウモロコシを用いて試験を行なった結果と、(b)に示す食害を受けたトウモロコシを用いて試験を行なった結果とを比較すると、食害を受けたトウモロコシを用いて試験を行なった場合の方がアワヨトウ幼虫に対する行動抑制効果がより顕著にあらわれた。一般に食害を受けた植物は、健全な植物に比して揮発性成分(におい成分)を多量に放出するということが知られており、上記現象はそのことに因るものと考えられる。
【0076】
上記結果より、かかる明期揮発性成分は、本発明でいう「害虫行動抑制成分」であるということがわかった。またかかる明期揮発性成分を用いることによって植物の食害防止剤とすることができるということも確かめられた。
【0077】
〔実施例3〕明期揮発性成分中の害虫行動抑制成分の同定−1
実施例1および2の結果から、明期揮発性成分が害虫行動抑制成分であるということがわかった。そこでかかる明期揮発性成分のうち、特に害虫行動抑制効果の高い物質を同定することとした。
【0078】
(方法)
図6に記載の揮発性成分捕集装置1を用いて、明期(6500lux)または暗期(約0lux)においてトウモロコシが放出する揮発性成分を捕集した。揮発性成分の捕集は、100ml/分の流速で空気を空気流入口4より1時間流入し、捕集用カラム7中のTENAX(登録商標) TAに吸着させることにより行なった。なお揮発性成分捕集装置1のガラス容器2(容積約2L)内には、トウモロコシ6株を入れた。
【0079】
このようにして捕集した明期揮発性成分、および暗期揮発性成分それぞれについて、GC−MS(アジレント社製)による質量分析を行なった。なおGC−MSの運転条件は、公知の最適な条件を選択の上、採用した。
【0080】
(結果)
上記質量分析の結果、暗期揮発性成分に対して、明期揮発性成分中に有意に高濃度に含まれる物質は、ミルセンのみであった。
【0081】
表1に健全なトウモロコシの明期揮発性成分中、および暗期揮発性成分中のミルセン濃度を分析した結果を示す。また明期条件(または暗期条件)にトウモロコシをさらした直後(0時間後)、4時間後、または8時間後に捕集した各揮発性成分の分析結果を示した。ミルセン濃度は、トウモロコシ6株あたり揮発成分中に含まれるミルセンの量(ng)で示した。
【0082】
【表1】

【0083】
表1によれば、暗期揮発性成分中に含まれるミルセン濃度が0.316ng(0時間後)、0.493(4時間後)、0.379(8時間後)であったのに対し、明期揮発性成分中に含まれるミルセンの濃度は、0.472ng(0時間後)、0.966(4時間後)、0.784(8時間後)であった。特に4時間後及び8時間後においては、暗期揮発成分に含まれるミルセンに比して明期成分中のそれが有意に多いということがわかった(t検定により、5%危険率において有意差有り。表中*で示す。)。
【0084】
また食害トウモロコシの明期揮発性成分に含まれるミルセンの方が、健全トウモロコシのそれに比べて多量に含まれるということがわかった。特に4時間後の明期揮発性成分に含まれるミルセンを比較すると、食害トウモロコシの方が健全トウモロコシより約10倍多量に含まれていた(データ示さず)。
【0085】
〔実施例4〕明期揮発性成分中の害虫行動抑制成分の同定−2
実施例3において、暗期揮発性成分に比して明期揮発性成分で有意に高濃度に含まれる物質がミルセンであるということがわかった。そこでミルセンに害虫行動抑制効果があるか否かを検討することとした。
【0086】
(方法)
市販のβ−ミルセン(アルドリッチ社製)を用いて以下の通りにして試験を行なった。密閉されたインキュベーター内に、前出の試験装置を40〜50個設置した。β−ミルセン(0.1μg/μl)のヘキサン溶液を10μl塗布し3分間放置したスポンジ(1cm×1cm)を、当該インキュベーター内に12個配置した。当該スポンジは、2時間ごとに取り替えた。この時のアワヨトウ幼虫の行動様式を上記実施例1および2と同様にして検討を行なった。なお、上記試験はインキュベーター(東京理科器械株式会社製 EYELATORON FLY301NH)内で暗期条件(約0lux)にて行なった。
【0087】
また同時に比較として、トウモロコシの揮発性成分のうち明期暗期で特に濃度に変化がないα−ピネン(東京化成工業株式会社製)、(Z)-3-hexenyl acetate(和光純薬工業株式会社製)を用いて同様に試験を行なった。
【0088】
(結果)
図5(a)〜(c)に結果を示した。図5(a)はβ−ミルセンの試験結果を示し、図5(b)はα−ピネンの試験結果を示し、図5(c)は(Z)-3-hexenyl acetateの試験結果を示した。同図中の縦軸および横軸については、図2と同様である。
【0089】
図5(a)〜(c)に結果によれば、α−ピネンおよび(Z)-3-hexenyl acetateでは、アワヨトウ幼虫の行動抑制効果が見られなかったのに対して、β−ミルセンには明らかな行動抑制効果が見受けられた。特に試験開始、2時間後、6時間後、8時間後において優位な行動抑制効果が見られた(危険率5%において有意差有り、図5(a)中*印)。
【0090】
したがって、トウモロコシが放出する明期揮発性成分のうち、特にミルセンがアワヨトウ幼虫の行動抑制効果の高い物質であるということがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の害虫行動抑制成分、植物食害防止剤、および食害防止方法は、害虫駆除のための農薬を低減させることができ、それらの環境に対する悪影響を避けることができるという利点を有している。それゆえ、本発明は農業を中心とした社会に大きな波及効果が期待できる。本発明の産業上の利用分野としては、農業、農薬(特に生物農薬)関連産業等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例において使用する試験装置の概略を示す図である。
【図2】実施例1において、明暗がアワヨトウ幼虫の行動に影響を及ぼすか否かを検討した結果を示す折れ線図である。
【図3】実施例2において、トウモロコシの明期揮発性成分、および暗期揮発性成分について、アワヨトウ幼虫の行動に及ぼす影響を検討する際に使用する試験系の概略を説明する図である。
【図4】実施例2において、トウモロコシの明期揮発性成分、および暗期揮発性成分について、アワヨトウ幼虫の行動に及ぼす影響について検討した結果を示す折れ線図であり、(a)は健全なトウモロコシを用いた場合の結果であり、(b)は食害されたトウモロコシを用いた結果である。
【図5】実施例3において、β−ミルセン、α−ピネン、(Z)-3-hexenyl acetateのアワヨトウ幼虫に対する行動抑制効果を検討した結果を示す図であり、(a)はβ−ミルセンの試験結果を示し、(b)はα−ピネンの試験結果を示し、(c)は(Z)-3-hexenyl acetateの結果を示す。
【図6】植物からの揮発性成分を捕集するために使用する揮発性成分捕集装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1 揮発性成分捕集装置
2 ガラス容器
3 植物
4 空気流入口
5 空気流出口
6 チューブ
7 捕集用カラム
8 レギュレーター
10 試験装置
11 通気部
12 透明プラスチック容器
13 給餌部
14 シェルター
20a、b インキュベーター
21 空気流入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が明期環境下において放出する揮発性成分であって、害虫の行動を抑制する機能を有することを特徴とする害虫行動抑制成分。
【請求項2】
上記明期が、6500ルクス(lux)以上であることを特徴とする請求項1に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項3】
上記植物が、イネ科植物であることを特徴とする請求項1または2に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項4】
上記イネ科植物が、トウモロコシであることを特徴とする請求項3に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項5】
上記揮発性成分が、テルペンであることを特徴とする請求項1ない4のいずれか1項に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項6】
上記テルペンが、非環状テルペンであることを特徴とする請求項5に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項7】
上記非環状テルペンが、ミルセンであることを特徴とする請求項6に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項8】
上記害虫が、夜行性害虫であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項9】
上記夜行性害虫が、アワヨトウ幼虫であることを特徴とする請求項8に記載の害虫行動抑制成分。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の害虫行動抑制成分を含むことを特徴とする植物食害防止剤。
【請求項11】
夜行性害虫による食害を防止するために使用されることを特徴とする請求項10に記載の植物食害防止剤。
【請求項12】
上記夜行性害虫が、アワヨトウ幼虫であることを特徴とする請求項11に記載の植物食害防止剤。
【請求項13】
イネ科植物に使用することを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載の植物食害防止剤。
【請求項14】
上記イネ科植物が、トウモロコシであることを特徴とする請求項13に記載の植物食害防止剤。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれか1項に記載の植物食害防止剤を植物に曝露する工程を含むことを特徴する植物の食害防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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