説明

家具部分のための、連結解除可能な少なくとも1つの形状記憶要素を有する作動装置

本発明は、作動装置であって、該作動装置は、可動の家具部分を、不動の家具部分に対して、形状記憶要素を有する駆動装置により、開放方向若しくは閉鎖方向へ移動させるようになっている形式のものに関する。駆動装置は、1つの家具部分に取り付けられていて、別の家具部分に連結要素を介して接触するようになっている。駆動装置は、駆動要素として、収縮する形状記憶要素を有し、形状記憶要素は、連結要素と駆動装置に相対して設けられた位置不動の支承部位との間に配置されている。本発明により、作動装置を改良して、作動装置の駆動装置は駆動部として少なくとも1つの形状記憶要素を有しており、各形状記憶要素は、誤機能による過負荷に対して保護されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動装置であって、作動装置は、可動の家具部分を、不動の家具部分に対して、形状記憶要素を有する駆動装置により、開放方向若しくは閉鎖方向へ移動させるようになっている形式のものに関する。駆動装置は、1つの家具部分に取り付けられていて、別の家具部分に、連結要素を介して接触するようになっている。駆動装置は、駆動要素として、収縮する形状記憶要素を有しており、形状記憶要素は、駆動装置と相対して設けられた位置不動の支承部位と連結要素との間に配置されている。
【0002】
独国特許出願公開第102008027541号明細書により、例えば引き出し若しくは家具扉を開けるための前記形式の作動装置が公知である。
【0003】
本発明の課題は、家具部分の開閉のための、冒頭に述べた形式の作動装置を改良して、駆動作動中の形状記憶要素を機能エラー又は誤作動若しくは誤操作による過負荷に対して保護するようにすることである。
【0004】
前記課題は、請求項1に記載の構成により解決される。形状記憶要素と駆動すべき連結要素若しくは位置不動の支承部位との間に、力結合及び/又は形状結合により切換可能に形成された継手、つまり力結合式及び/又は形状結合式の切換可能(断ち継ぎ可能若しくは開閉可能)な継手が配置されている。
【0005】
本発明の形態によれば、作動装置内に駆動装置を設けてあり、駆動装置は、1つ形状記憶要素若しくは、例えば束ねられた複数の形状記憶要素を用いて、力形成のための直線運動を生ぜしめるようになっている。直線運動は、直接に若しくは伝動部又は伝動装置を用いて、駆動装置を支持する家具部分に移動可能に支承された可動の家具部分に伝達されるようになっている。このために、形状記憶要素は、ローラ若しくは滑りレールを介して一回若しくは複数回転向されるようになっていてよいものである。
【0006】
駆動装置の必要に応じて用いられる伝動部は、例えばレバー式伝動部、歯車伝動部、若しくはラック式伝動部等である。
【0007】
形状記憶要素の作業行程とは逆向きの直線作動行程のためには、例えば、ばね駆動部、若しくは重力駆動部が用いられ、或いは別の形状記憶要素も用いられる。
【0008】
家具の不動の家具部分は、例えば、収納ケースやキャビネット等の本体、机等の本体、若しくはドアフレーム等である。可動の家具部分は、引き出し、スライドドア、回転ドア、旋回ドア、フラップ、若しくは収納式スライドテーブル又は引き出し式テーブルであり、或いは、不動の家具部分から所定の目的で外側へ旋回若しくは走出可能な可動の構成部分等である。
【0009】
駆動装置は、一般的に不動の家具部分に配置される。しかしながら、駆動装置を可動の家具部分に取り付けて、不動の家具部分から取り出しできるようにすることも可能である。
【0010】
例えば引き出しの開放のために用いられて直線運動を生ぜしめる形状記憶要素は、本体内で、引き出しの横又は側方に、若しくは引き出しの後側、或いは引き出しの上側又は下側に配置される。駆動装置若しくは形状記憶要素の長手方向は、引き出し開放方向に対して平行に、若しくは垂直に、或いは斜めに向けられてよいものである。形状記憶要素を本体背壁に沿って複数の引き出しにわたって鉛直方向に、或いは本体の対角線方向に延設することも考えられる。
【0011】
形状記憶要素は、主要な駆動要素として用いられていて、該形状記憶要素、つまり該主要な駆動要素の作動行程中にその行程運動を制動若しくは停止する場合に、大きな負荷又は荷重若しくは応力にさらされることになる。形状記憶要素の過負荷を防止するために、形状記憶要素は、発生する力に依存して開く継手を介して、不動(定位置若しくは位置不動)の家具部分に若しくは可動の家具部分の開放機構若しくは閉鎖機構に結合されている。
【0012】
継手は、磁石継手により形成される力結合式(力接続式)の継手であってよいものである。この形態においては、互いに連結(接続)すべき両方の構成部分は、永久磁石の磁力若しくは電磁石の磁力により互いに連結(接続)されるようになっている。別の形態によれば、継手は、対称的若しくは非対称的な係止ロックにより形成される形状結合式の継手若しくは係合式又は嵌合式の継手である。力結合によっても形状結合によっても断ち継ぎされる継手も考えられる。
【0013】
本発明の種々の形態を従属請求項に記載してあり、次に本発明を、概略的に示す図示の実施形態に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】湾曲したレバーを介して作用する引張りワイヤ式駆動部を有する本発明に係る駆動装置を、引き出しが閉じられた状態で示す図である。
【図2】図1のケーシングを拡大して示す図である。
【図3】図1の推進スライダーを拡大して示す図である。
【図4】図1の滑子スライダーを拡大して示す図である。
【図5】図1のスライド係止片を拡大して示す図である。
【図6】本発明に係る駆動装置を、図1と同様に、しかしながらレバーが外側へ旋回させられた状態で示す図である。
【図7】本発明に係る駆動装置を、図6と同様に、しかしながらレバーが戻し旋回させられた状態で示す図である。
【図8】本発明に係る駆動装置を、図1と同様に、しかしながらレバーが押し開け作動している状態で示す図である。
【図9】本発明に係る駆動装置を、図8と同様に、しかしながら引き出しの開放行程が中断された直後の状態で示す図である。
【図10】ゴム減衰装置を有する磁石継手を、開いた状態で示す図である。
【図11】空気力式の減衰装置を有する磁石継手を、開いた状態で示す図である。
【図12】図11の磁石継手を、閉じた状態で示す図である。
【図13】係止継手を閉じた状態で示す図である。
【図14】係止継手を開いた状態で示す図である。
【0015】
図1は、例えば作業面若しくは作業テーブル等の下方に設置され、下置き棚とも称されるキャビネット(10)の引き出し(21)の開放のための電気式の作動装置を示しており、該作動装置において、駆動装置(230)は駆動要素として、例えば特殊な引張りワイヤ(91)を有している。引張りワイヤ(91)は、形状記憶合金、例えばニッケル・チタン・合金から形成されている。このような合金は、内在の双方向作用を有しており、つまり、引張りワイヤは、2つの形状(温度の高い場合の形状と温度の低い場合の形状)を記憶しているものである。従って、引張りワイヤ(91)は、温度変化に基づき自動的に、伸びた低温形状と縮んだ高温形状との間で切り換えられるようになっている。加熱のために、引張りワイヤ(91)はその端部を介して短時間通電されるようになっている。接続線は図示を省略してある。
【0016】
引張りワイヤ(91)自体は、ここでは、つまり図示の実施形態では、円形の断面を有し、例えば0.5ミリメートルの直径を有している。他の実施形態として、引張りワイヤ断面は、卵形、正方形、長方形、四角形、楕円形、星形、又はU字形の断面形状、或いは他に考えられるあらゆる断面形状を有していてよいものである。
【0017】
図1〜図9に開けられた状態で示してあるケーシング(231)は、例えば、平らな1つのケーシング底部(245)と平板状の4つの側壁とを備える直六面体状の容器の形状を有している。ケーシング(231)内には、特に2つのスライダー(250,260)、1つの押し開けレバー(270)、及び2つの引張りばね(241,249)を支承若しくは配置してあり、ケーシング底部(245)に、凹部(233)と一緒に案内フレーム(232)、及びばね支承突起部(246)を設けてあり(図2も参照)、凹部(233)は案内フレーム(232)内に配置されている。ケーシング(231)は、作動状態では蓋を用いて閉じられており、蓋は、ケーシング底部(245)に対して鏡面対称的に、同じく案内フレーム(232)及び凹部(233)を含んでいる。
【0018】
案内フレーム(232)内に縦軸線方向移動可能(長手方向移動可能)に配置された推進スライダー(250)は、図3に、仮想の中央縦軸線に沿った縦断面図で示されている。推進スライダー(250)は、実質的に、上側のプレート、下側のプレート、及び両方のプレートを互いに結合する1つの少なくともほぼU字形のウエブ(251)によって形成されており、つまり、推進スライダー(250)は、押し開けレバー(270)に向けて設けられた開口部を有している。推進スライダー(250)の縦側壁(縦方向ウエブ区分)は、ラック(252)を形成している。推進スライダー(250)の右側の端面壁(横側壁又は横方向ウエブ区分)は、支承部位(253)として形成された切欠き部を有している。推進スライダー(250)は背壁(254)を有しており、該背壁(左側の端面壁又は横側壁)は、止まり穴(255)を有している。該止まり穴(凹部)内には、例えば、つまりここでは永久磁石(31)がはめ込まれて接着され、即ちはめ込み接着されている。
【0019】
図1において、推進スライダー(250)の左側の横に、移動可能に形成された滑子スライダー(260)を配置してあり、該滑子スライダーは、同じく案内フレーム(232)内に案内されている。滑子スライダー(260)は、同様に、ここでは互いに平行な2つのプレート、及び両方のプレートを互いに結合する1つのU字形のウエブ(261)によって形成されている。滑子スライダーにおいて、その開口部は、本体背壁(12)に向けて設けられている(図1、参照)。図4に示してあるように、滑子スライダー(260)の上側及び下側のプレートには、l字形の長孔滑子案内(264)を設けてあり、該長孔滑子案内の直線状の長い方の中央線区分(滑子案内縦区分)は、ラック(252)の基準ピッチ線の延長線上に配置されている。長孔(264)の、開放方向(1)に延びる短い方の領域(滑子案内横区分)は少なくとも、該領域の左側の推進側面(265)が、十分の数ミリメートルの長さの直線の区分を有することができるほどの長さで形成されている。
【0020】
滑子スライダー(260)は、ウエブ(261)の構成部分として前壁(262)を有しており、該前壁に止まり穴(263)が加工成形されている。止まり穴(263)内には、ここでは磁石(32)、若しくは磁化可能なプレートがはめ込まれて接着され、又は圧入され、或いは同等の手段で固定されている。例えば滑子スライダー・移動方向に平行に向けられた母線を有する柱体状又は円柱状の磁石(32)は、推進スライダー(250)の磁石(31)と整合されている。磁極の軸は、磁石中心線と合致している。一方の磁石(31)のN極は、他方の磁石(32)のS極に対向している。図1、図6、図7及び図8において、スライダー(250,260)は、互いに磁石(31,32)を介して力結合により力伝達可能に連結されている。
【0021】
図5の水平断面図には、滑子スライダー(260)に設けられた長孔滑子案内(264)内に支承して案内されたスライド係止片(266)が、該スライド係止片内に枢着された引張り舌片(92)と共に示されている。スライド係止片(266)は、側方へ例えば100度の角度を成して突出する係止片レバーアーム(267)を有しており、該係止片レバーアームは、その自由な端部に、引張りばね(249)のための支承部位(248)を有している。係止片レバーアームの自由な端部は、滑子スライダー(260)の開口部から外側へ側方に突出している。スライド係止片(266)と係止片レバーアーム(267)との間の交差部位の領域に、案内ピン(269)により貫通されるスリットが、言い換えれば、案内ピン(269)を横切るように形成されたスリットが設けられており、該スリット内に、引張りワイヤ(91)の固定のための引張り舌片(92)が差し込まれている。
【0022】
引張り舌片(92)は案内ピン(269)に保持されており、つまり、案内ピン(269)は、スリット内に差し込まれた引張り舌片(92)の孔を貫通している。案内ピン(269)は、ケーシング(231)の両方の長孔滑子案内(264)により確実に案内されるように、スライド係止片(266)の上面及び下面から突出している。スライド係止片(266)の前側の端部には、案内ピン(269)に対して平行な制御ピン(268)を設けてあり、該制御ピンは、長孔滑子案内(264)を貫通し、かつケーシング(231)の両方の凹部(233)内に突入している。
【0023】
押し開けレバー(270)は、実質的にディスク状のハブ(272)及び鎌形に湾曲する長いアーム(271)を有している(図1、参照)。ハブ(272)は、アーム(271)とは逆の側に配置された歯部(273)を有しおり、該歯部(歯列)の例えば6つの歯は、例えば180度にわたって分配されていて、ハブ(272)から突出している。ハブ中心に、押し開けレバー(270)の旋回ボルト(276)が配置されている。アーム(271)は、背壁(22)に対して湾曲された接触面(277)を有しており、該湾曲面は、図示の実施形態では部分円筒外周面に相当するものであり、つまり、凸曲面である(図1、参照)。接触面(277)は、引き出し(21)の押し開けに際して、まず、例えば引き出し背壁(22)と第1の接触線(278)で接触する。つまり、押し開けレバー(270)は、押し開け開始時には、例えば半分まで短くされたてこ腕で引き出し(21)に作用している。開放方向に移動する、つまり走出する引き出し(21)が、押し開けレバー(270)から離れる直前では、引き出し(21)は、押し開けレバー(270)と最後の接触線(279)で接触している。この状態では、押し開けレバー(270)は、その最大のてこ腕で引き出しに作用している。
【0024】
接触面(277)が、図1に描かれている曲線と交差しかつ図平面に垂直に延びる線の方向でも曲率を有している場合には、接触面は、球面状に湾曲しており、接触部位は接触線(278,279)から接点になる。
【0025】
引き出し(21)を押し開けるためには、引き出し(21)は、その背壁(22)がスイッチ(8)と当接するように、図9に示す閉鎖方向(2)で、スイッチ(8)に向けて動かされる。スイッチ(8)は、配設された電気式若しくは電子式の回路を介して引張りワイヤ(91)に給電するようになる。これにより、引張りワイヤ(91)は、一方では、本体側の支持フレーム(15)に設けられた支承部位(237)に不動に保持されていて、かつ他方で引張り舌片(92)を介してスライド係止片(266)を引っ張ることになる(図1、参照)。この時点では、スライド係止片(266)は、案内フレーム(232)内で左側に位置している滑子スライダー(260)の長孔滑子案内(264)内における右側の終端位置を占めている。制御ピン(268)は、長孔滑子案内(264)の推進側面(265)に接触していて、この接触位置に、引張りばね(249)の作用により保持されている。
【0026】
収縮する引張りワイヤ(91)は、スライド係止片(266)、滑子スライダー(260)及び推進スライダー(250)から成るユニットを左側へ引っ張ることになる。これにより、推進スライダー(250)のラック(252)が、ケーシング(231)内で支承部位(275)に旋回可能に支承された押し開けレバー(270)の歯部(273)に沿って移動し、言い換えれば、歯部(273)が相対的にラック(252)上を転動することになる。押し開けレバー(270)は、時計回り方向(図8、参照)で背壁(22)に向けて旋回させられ、ひいては引き出し(21)を開放方向(1)に加速するようになっている。
【0027】
押し開けレバー(270)が該押し開けレバーの、図6に示してある終端位置に達する直前に、制御ピン(268)は、ケーシング側の凹部(233)の乗り上げ傾斜面(234)にぶつかるようになっている。これにより、制御ピン(268)は、推進側面(265)から移し外されることになる。つまり、スライド係止片(266)は、案内ピン(269)を中心として時計回り方向に、図示の実施形態では13.5度にわたって旋回させられる。その結果、制御ピン(268)は、長孔滑子案内(264)の、推進スライダー(250)の移動方向(スライド方向)と平行に延びる領域内に達する。つまり、制御ピン(268)は、滑子スライダー(260)及び推進スライダー(250)を引張りワイヤ(91)から連結解除(係止解除)することになる。
【0028】
上記連結解除に基づき、推進スライダー(250)は、滑子スライダー(260)と一緒に、引張りばね(241)の引張り作用により右側へ引っ張られ、ひいては、押し開けレバー(270)が戻り旋回させられる(図7、参照)。推進スライダー及び滑子スライダーの右側への上記引張りに際して、スライド係止片(266)は連行されない。
【0029】
引張りワイヤ(91)の続く伸長過程において、係止片レバーアーム(267)に引っ掛けられている引張りばね(249)は、スライド係止片(266)を右側へ移動させるようになっている。引張りワイヤ(91)が完全に冷却されると、制御ピン(268)は、推進スライダー(250)と引張りワイヤ(91)との間の連結のために、再び推進側面(265)の前側の位置に達している(図1、参照)。引き出し(21)の閉鎖に伴って、作動装置は再びその出発位置を占めることになる。
【0030】
図8は、作動装置を引き出し(21)の開放過程で示している。今ちょうど通電されている引張りワイヤ(91)は、滑子スライダー(260)を全力で左側へ引っ張っており、該滑子スライダーは、推進スライダー(250)に図示の実施形態では磁力により連結されている。押し開けレバー(270)はラック(252)に沿って相対的に転動して、既に約30度にわたって開放旋回させられ、かつ引き出し背壁(22)に沿って滑動しつつ、引き出し(21)を開放方向(1)に加速している。
【0031】
今、開かれつつある引き出し(21)が外部の対向物にぶつかり、或いは使用者により意図的に受け止まられることに基づき、引き出し移動運動が急激に制動されると、既に加熱されて引き続き収縮している引張りワイヤ(91)は、基準以上の引張り応力を発生させることになる。引張り応力が、継手連結解除力(継手の開き力若しくは開放力)を上回ると、継手(30)は開かれ、即ち断たれ、つまり、継手を形成する磁石(31,32)は互いに離されることになる。その結果、滑子スライダー(260)は、引張りばね(249)の張力を引き続き増大させつつ左側へ移動させられるのに対して、推進スライダー(250)は、引張りばね(241)により駆動されて、右側へ著しく急速に移動させられ、ひいては、押し開けレバー(270)を急激に戻り旋回させ(図9、参照)、これにより押し開けレバー(270)は、図7に示してある出発位置に達するようになっている。このような構成により、引き出し(21)は、ほぼ妨げられることなく閉鎖方向(2)に移動させられ得るようになっている。
【0032】
引張りワイヤ(91)が冷却され、つまり伸ばされると、該引張りワイヤは、スライド係止片(266)を介して引張りばね(249)によって右側へ引っ張られるようになっている。これにより、制御ピン(268)は、長孔滑子案内(264)を介して滑子スライダー(260)を連行するようになっている。引張りワイヤ(91)の完全な冷却に際して、両方の磁石(31,32)は相互に接触するようになっている。つまり、継手(30)は再び閉じられ、即ち継がれる。これにより、引き出し開放過程を新たに行うことができるようになっている。
【0033】
必要に応じて、引張りワイヤ(91)の早期の通電は、例えば滑子スライダー(260)の終端位置(図1及び図7に示してある位置)をセンサーによって監視することに基づき、避けられるようになっている。センサー、例えば機械式のリミットスイッチ、リードスイッチ若しくはライトバリア又は光センサーは、スライド係止片(266)の係止片レバーアーム(267)の終端位置を検出するようになっている。センサーが係止片レバーアーム(267)の終端位置を検出していない場合には、引張りワイヤ(91)の通電は避けられる。
【0034】
図10は、相互に連結されていない状態で互いに並んで位置するスライダー(260)及び(250)を示している。滑子スライダー(260)の磁石(32)は、該実施形態では中央の止まり穴(35)を有しており、該止まり穴(凹部)内にはゴムダンパー(36)が嵌合され、又は圧入され、若しくは差し込んで接着されている。ゴムダンパー(36)は、継手の連結行程をその最後の十分の数ミリメートルにわたって減衰するために用いられている。これによって、接触騒音の発生が避けられるようになっている。
【0035】
図11及び図12に示す実施形態では、連結行程はその最後の十分の数ミリメートルにわたって空気力式に制動されるようになっている。該実施形態においては、推進スライダー(250)に設けられる柱体状若しくは円柱状の磁石(131)は、図10の磁石(131)に比べて長くされており、図10における滑子スライダーに設けられる磁石(32)は、ここでは磁化可能な薄い鉄製プレート(132)により代替されている。もちろん、図11及び図12の実施形態の滑子スライダーに設けられる薄い鉄製プレートは、磁石材料から成形されていてよいものである。更に、止まり穴(263)は、磁石(131)が連結のための数ミリメートルにわたる、該止まり穴内への入り込み行程を有するように深くされ、つまり言い換えれば、該止まり穴の側壁(周壁)を長くされて、磁石(131)の空気力式制動のための受容室を形成している。
【0036】
上記力結合式の磁石継手(130)の連結(閉鎖又は接続)の際に、磁石(131)は止まり穴(263)内に入り込み、狭くなる穴(263)から、該穴内に閉じ込められている空気を押し出すことになる。これにより、連結運動(入り込み運動若しくは接続運動)は、ピストン終端位置における減衰作用と同様の作用に基づき制動される。
【0037】
図13及び図14には、非対称的に作用する形状結合式若しくは係合式の係止継手(330)が示されており、該係止継手を用いてスライダー(250)とスライダー(260)とが連結される。係止用止め金若しくは係止ロックとして形成された係止継手(330)は、滑子スライダー(260)の前壁(262)に一体成形されたロック部(331)を有している。ロック部(331)は、該実施形態では弾性的な例えば2つのフックから成っており、該フックは、係止継手(330)の連結に際して、推進スライダー(250)の背壁(254)に設けられかつ例えば漏斗状に狭まる1つの孔(337)内に係合するようになっており、つまり、差し込まれるようになっている。孔(337)を有する背壁(254)は、係止継手(330)の係止部(336)を形成している。
【0038】
ロック部(331)のフックは、係合案内用側面(333)とロック用側面(332)とを有している。係止継手(330)の連結(接続)の状態では、ロック用側面(332)は、ロック方向(339)に対して45°の角度を成していて、孔(337)の、45°の角度で形成された面取り部と接触している。係合案内用側面(333)は、ロック方向(339)に対して15°の角度を成している。係合案内用側面(333)のこのような小さな角度は、連結抵抗(接続抵抗又は差し込み抵抗)を小さく保つためのものであるのに対して、ロック用側面(332)の45°の角度は、所定の値に規定された大きな保持力(ロック力)を可能にするためのものである。
【0039】
継手(30)、(130)及び(330)は、図示の実施形態では、引張りワイヤ(91)と推進スライダー(250)との間に配置されている。もちろん、継手(30)、(130)及び(330)は、引張りワイヤ(91)と本体側の支承部位(237)との間に配置されていてよいものである。更に、継手(30)、(130)及び(330)を、該継手が固有の案内機構を有し、かつ閉鎖運動のためのばね要素を有している場合には、引張りワイヤ(91)内に組み込むことも考えられる。
【0040】
引き出し(21)を開ける際に閉鎖運動により操作されるスイッチ(8)は、本体(11)若しくは引き出し(21)に配置された操作要素、或いは他の適切な部位に配置された操作要素によって代替されてよいものである。コードレスの操作要素若しくは無線制御式の操作要素も考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1 開放方向、 2 閉鎖方向、 8 スイッチ、 10 キャビネット、 11 家具部分又は本体、 12 背壁又は本体背壁、 15 支持フレーム、 21 引き出し又は家具部分、 22 背壁又は引き出し背壁、 30 継手又は磁石継手、 31 磁石又は永久磁石、 32 磁石又は磁化可能なプレート、 35 止まり穴、 36 ゴムダンパー又はエラストマ部材、 91 引張りワイヤ又は形状記憶要素、 92 引張り舌片、 130 継手又は磁石継手、 131 磁石、 132 鉄製プレート又は軟鉄製のプレート、 230 駆動装置、 231 ケーシング又はカバー付きのケーシング、 232 案内フレーム、 233 凹部、 234 乗り上げ傾斜面、 235 (271)のための貫通部、 236 (91)のための貫通部、 237 支承部位、 238 (249)のための支承部位、 239 (241)のための支承部位、 241 引張りばね又はコイル引張りばね、 245 ケーシング底部、 246 ばね支承突起部、 248 支承部位、 249 引張りばね、 250 スライダー又は推進スライダー、 251 ウエブ、 252 ラック、 253 支承部位又は切欠き部、 254 背壁、 255 止まり穴又は凹部、 260 スライダー又は滑子スライダー、 261 ウエブ、 262 前壁、 263 止まり穴又は凹部、 264 長孔滑子案内、 265 推進側面、 266 スライド係止片、 267 係止片レバーアーム、 268 制御ピン、 269 案内ピン、 270 押し開けレバー、 271 アーム、 272 ハブ、 273 歯部、 275 旋回支承部又は支承部位、 276 旋回ボルト、 277 接触面、 278,279 接触線、 330 係止継手又は係止ロック、 331 ロック部又はフック、 332 ロック用側面、 333 係合案内用側面又は差し込み案内側面、 336 係止部又はロック部、 337 孔、 339 ロック方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動装置であって、該作動装置は、可動の家具部分(21)を、不動の家具部分(11)に対して、少なくとも1つの形状記憶要素(91)を有する駆動装置(230)により、開放方向若しくは閉鎖方向へ移動させるようになっており、
− 前記駆動装置(230)は、1つの前記家具部分(11,21)に取り付けられていて、別の前記家具部分(21,11)に、連結要素(270)を介して接触するようになっており、
− 前記駆動装置(230)は、駆動要素として、収縮する形状記憶要素(91)を有しており、該形状記憶要素は、前記駆動装置(230)と相対して設けられた位置不動の支承部位(237)と、前記連結要素(270)との間に配置されている形式のものにおいて、
前記形状記憶要素(91)と、駆動すべき前記連結要素(270)若しくは前記位置不動の支承部位(237)との間に、力結合式及び/又は形状結合式の切換可能な継手(30,130,330)が配置されていることを特徴とする、家具部分のための、連結解除可能な少なくとも1つの形状記憶要素を有する作動装置。
【請求項2】
前記形状記憶要素(91)は、駆動力形成のために加熱により収縮しかつ可逆的に冷却により再び伸長するようになっている請求項1に記載の作動装置。
【請求項3】
各前記形状記憶要素(91)は、それぞれ通電により加熱されるようになっている請求項1に記載の作動装置。
【請求項4】
前記形状記憶要素(91)は、1つの線材により形成され、若しくは複数の線材から成る1つの線束により形成されており、各前記形状記憶要素(91)はそれぞれ任意の横断面形状を有している請求項1に記載の作動装置。
【請求項5】
前記連結要素(270)は、推進スライダー(250)及び滑子スライダー(260)から成るユニットを介して、前記形状記憶要素(91)に結合されており、前記推進スライダー(250)と前記滑子スライダー(260)との間には、磁石継手(30,130)若しくは係止継手(330)が配置されている請求項1に記載の作動装置。
【請求項6】
前記継手(30,130)は磁石継手であり、該磁石継手は、第1の継手要素(31,131)及び第2の継手要素(32,132)を有しており、少なくとも1つの前記継手要素(31,131;32,132)は、永久磁石又は電磁石である請求項1に記載の作動装置。
【請求項7】
前記磁石継手(30,130)の連結運動は、ゴム弾性式の減衰装置(36)若しくは空気力式の減衰装置(236,131)を用いて制動されるようになっている請求項6に記載の作動装置。
【請求項8】
前記係止継手(330)は、ロック部(331)と係止部(336)とから成りかつ制限された保持力を有する係止ロックである請求項5に記載の作動装置。
【請求項9】
前記ロック部(331)は、2つの側面を有する少なくとも1つのフックであり、該フックの、ロック方向(339)に向けられたロック用側面(332)は、前記ロック方向(339)に対して、該フックの係合案内用側面(333)よりも大きな角度を成している請求項8に記載の作動装置。
【請求項10】
1つの前記家具部分(11,21)に取り付けられている前記駆動装置(230)は、前記連結要素(270)を介して、別の前記家具部分(21,11)に一時的にしか接触しないようになっている請求項1に記載の作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−526164(P2011−526164A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515101(P2011−515101)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000927
【国際公開番号】WO2010/000244
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(509060143)
【氏名又は名称原語表記】Guenther Zimmer
【住所又は居所原語表記】Im Salmenkopf 7, D−77866 Rheinau, Germany
【出願人】(509060154)
【氏名又は名称原語表記】Martin Zimmer
【住所又は居所原語表記】Muehlenstrasse 6, D−77866 Rheinau, Germany
【Fターム(参考)】