説明

家具類の転倒防止装置

【課題】 従来よりも少ない装着数で家具類を安定化できるようにして、転倒防止装置の購入コストと装着手間を低減する。
【解決手段】 本発明は、部屋の天井と家具類の天板の間に突っ張り状態で介在させて使用する家具類の転倒防止装置に関する。この転倒防止装置1は、上下方向に伸縮自在な内外二重筒構造の支柱2と、支柱2の伸縮を許容するアンロック状態と当該支柱2の収縮を規制するロック状態とに切り替え自在な操作部材3と、支柱2の上端及び下端にそれぞれ取り付けられた当接部材4,5とを備えている。この当接部材4,5は、左右方向と前後方向に長いプレート材よりなり、かつ、左右方向中央部でかつ前後方向で後部側に偏った位置に、支柱2の端部が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋の天井と家具類の天板の間に突っ張り状態で介在させて使用する、家具類の転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の家具類の転倒防止装置として、上下方向に伸縮自在な内外二重筒構造の支柱と、支柱の伸縮を許容するアンロック状態と当該支柱の収縮を規制するロック状態とに切り替え自在な操作部材と、支柱の上端及び下端にそれぞれ取り付けられた当接部材とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる転倒防止装置をタンスや戸棚などの家具類の上方空間に装着するには、まず、操作部材をアンロック状態に切り替えて支柱を伸縮可能にしておき、この状態で、下側の当接部材を家具類の天板に載置して、支柱をがほぼ垂直状態となるようにセットする。
その後、上側の当接部材が部屋の天井に当接するまで支柱を伸長させ、操作部材をロック状態に切り替えて支柱の収縮を規制することにより、転倒防止装置を部屋の天井と家具類の天板の間で突っ張り状態となるようにセットすればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平9−28489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の転倒防止装置では、上下の当接部材が水平方向に長い棒状材により構成されているので、地震等で比較的大きな揺れが生じた場合でも、家具類を確実に安定させるためには、家具類の幅方向の少なくとも2箇所に転倒防止装置を装着せねばならない。
このため、ユーザは、1つの家具類に対して地震対策を施すために、複数の転倒防止装置を購入して装着する必要があり、地震対策に要する装置の購入コストと装着手間が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、従来よりも少ない装着数で家具類を安定化できるようにして、購入コストと装着手間を低減することができる転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の転倒防止装置は、部屋の天井と家具類の天板の間に突っ張り状態で介在させて使用する家具類の転倒防止装置であって、上下方向に伸縮自在な内外二重筒構造の支柱と、前記支柱の伸縮を許容するアンロック状態と当該支柱の収縮を規制するロック状態とに切り替え自在な操作部材と、前記支柱の上端及び下端にそれぞれ取り付けられた当接部材とを備えており、前記当接部材は、左右方向と前後方向に長いプレート材よりなり、かつ、左右方向中央部でかつ前後方向で後部側に偏った位置に、前記支柱の端部が取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の転倒防止装置によれば、支柱の上端及び下端に取り付けられた当接部材が、左右方向と前後方向に長いプレート材よりなり、かつ、左右方向中央部でかつ前後方向で後部側に偏った位置に、支柱の端部が取り付けられているので、上下の当接部材が水平方向に長い棒状材よりなる従来装置に比べて、家具類の前後方向だけでなく幅方向の設置面積が増大し、従来よりも少ない装着数で家具類を安定させることができる。
【0009】
本発明の転倒防止装置において、前記プレート材は、左右方向に沿った直線状の後縁部を有する、ほぼ半円形の平面形状に形成されていることが好ましい。
かかる平面形状のプレート材を採用すれば、プレート材の後縁部を家具類の後縁に沿わせた状態で装着することにより、家具類の上方空間における出来るだけ後部側に偏った位置に支柱を配置することができる。このため、転倒防止装置の装着後においても、家具類の上方空間を物品の収納空間として有効活用できるという利点がある。
【0010】
本発明の転倒防止装置において、前記支柱の内部に、当該支柱を伸長方向に付勢するばね部材が収納されていることが好ましい。
かかるばね部材を採用すれば、転倒防止装置を家具類の天板に載置した状態で操作部材をアンロック状態に切り替えると、支柱が自動的に伸長して上側の当接部材が天井に当接する。このため、ユーザが、家具類の上方空間において支柱を自力で伸長させなくても、上側の当接部材を天井に当接させることができ、転倒防止装置の装着作業がより簡便になる。
【0011】
本発明の転倒防止装置において、前記支柱が、当該支柱の下部側に位置する外筒体と、この外筒体の内部に上下動自在に挿通された内筒体とを有し、前記操作部材が、前記外筒体の上端部に取り付けられた押圧枠材と、この押圧枠材に上下動自在に枢着された操作レバーとを有し、この操作レバーを下方に揺動操作することにより、前記押圧枠材で前記内筒体を締め付けてロック可能となっていることが好ましい。
【0012】
この場合、操作レバーを下方に揺動操作するだけで、押圧枠材で内筒体を締め付けてロック可能となるので、極めて簡便な操作で支柱をロック状態にすることができ、家具類の上方空間で行う転倒防止装置の装着作業が簡便になる。
【発明の効果】
【0013】
以上の通り、本発明によれば、従来よりも少ない装着数で家具類を安定化できるので、転倒防止装置の購入コストと装着手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 (a)は本発明の実施形態に係る転倒防止装置の平面図であり、(b)は同転倒防止装置の正面図である。
【図2】 同転倒防止装置の側面図である。
【図3】 同転倒防止装置の収縮状態の側面断面図である。
【図4】 同転倒防止装置の伸長状態の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に描かれた本発明の実施形態を説明する。
図1〜図4に示すように、本実施形態の転倒防止装置1は、部屋の天井(図示せず)とタンスや書庫などの家具類(図示せず)の間に突っ張り状態で介在させて使用するものであり、上下方向に伸縮自在な支柱2と、この支柱2の伸縮をロック又はアンロックするための操作部材3と、支柱2の上端及び下端にそれぞれ取り付けられた当接部材4,5とを備えている。なお、図1及び図2では、支柱2が一部分断した状態で描かれている。
【0016】
支柱2は、下部側に位置する外筒体11と、この外筒体11の内部に上下動自在に挿通された内筒体12とを有している。これらの筒体11,12は、いずれも、背面側の一部が開放された断面ほぼC字状でかつ鋼製のチャンネル材よりなる(図4参照)。
図3及び図4に示すように、内筒体12の内部には、コイル状の引っ張りばねよりなるばね部材13が収納されている。このばね部材13の上端は、外筒体11の断面内の上端部に設けられたブラケット14に掛止され、ばね部材13の下端は、内筒体12の下端部に設けられた底壁に係止されている。
【0017】
従って、内筒体12の下端が外筒体11の上部側に位置する支柱2の伸長状態(図4の状態)では、ばね部材13がほぼ自然長となる。また、支柱2の伸長状態から内筒体12の下端を外筒体11の下部側に向かって押し込むと、支柱2が収縮状態(図3の状態)となり、ばね部材13が内筒体12の下端を上方へ付勢する。
このように、支柱2の内部に収納されたばね部材13は、支柱2が常に伸長するように内筒体12を上方に付勢する機能を有する。
【0018】
操作部材3は、外筒体11の上端部に取り付けられた押圧枠材15と、この押圧枠材15に上下動自在に枢着された操作レバー16とから構成されている。
図4の断面部分に示すように、押圧枠材15は、内筒体12の背面側の開口凹部を押圧する背面凸部17と、この背面凸部17の左右両端から前面側に伸びる左右一対の枢着アーム18と、この枢着アーム18間に架設された枢着軸19とを有する。
【0019】
操作レバー16の上端部にはヘッド部20が一体に形成され、このヘッド部20を、左右の枢着アーム18間に架設された上記枢着軸19が回転自在に貫通している。
また、操作レバー16のヘッド部20には、カム面21が形成されており、このカム面21は、操作レバー16を下方(図3のD方向)に揺動させると、押圧枠材15の背面凸部17を内筒体12に押し付け、上方(図3のU方向)に揺動させると、押圧枠材15の背面凸部17の内筒体12に対する押圧を解除する形状に形成されている。
【0020】
従って、本実施形態の操作レバー16は、上方に揺動させると支柱2の伸縮を許容する「アンロック状態」となり、逆に、下方に揺動させると支柱2の収縮を規制する「ロック状態」となり、それらのアンロック状態又はロック状態のいずれかに操作状態を切り替え可能となっている。
【0021】
図1に示すように、上下の当接部材4,5は、いずれも、左右方向と前後方向に長いプレート材よりなり、このプレート材は、左右方向に沿った直線状の後端縁6を有する、ほぼ半円形の平面形状に形成されている。
また、図3及び図4に示すように、上下の当接部材4,5を構成するプレート材は、平面から見て格子状に成型された複数のリブ7を断面内部に有しており、このリブ7により、出来るだけ重量を抑えつつ曲げ剛性を増加させた中空構造になっている。
【0022】
更に、支柱2の下側及び上側の各端部は、上下の当接部材4,5における、左右方向中央部でかつ前後方向で後部側に偏った位置にそれぞれ取り付けられている。
すなわち、図1(a)に示すように、当接部材4,5に対する支柱2の取付位置は、左右方向ではその中央部に配置され、前後方向ではその後端部よりの位置(後端縁6に近接した位置)に配置されている。なお、1つの転倒防止装置1のみで1つの家具類の転倒を防止可能とするのには、上下の当接部材4,5の幅寸法を概ね30〜50cmに設定し、前後寸法を概ね25〜40cmに設定すればよい。
【0023】
本実施形態の転倒防止装置1をタンスや戸棚などの家具類の上方空間に装着するには、まず、操作レバー16を上方揺動させてアンロック状態に切り替え、支柱2をいったん伸縮可能な状態にする。
そして、ばね部材13の付勢力に抗して支柱2を収縮させて、支柱2を家具類の上方空間よりも低い長さにして、操作レバー16を下方揺動させてロック状態に切り替える。
【0024】
その後、転倒防止装置1を家具類の上方空間に収容して、下側の当接部材5の後端縁6を家具類の天板の奥側の縁部にほぼ沿わせるようにして、当該転倒防止装置1を家具類の天板に載置し、操作レバー16をアンロック状態に切り替える。
すると、ばね部材13の付勢力によって支柱2が自動的に伸長して、上側の当接部材4が部屋の天井に当接し、支柱2がほぼ垂直状態となるようにセットされる。
【0025】
そして、操作レバー16を再び下方揺動させてロック状態に切り替え、支柱2の収縮を規制する。これにより、転倒防止装置1が、部屋の天井と家具類の天板の間で突っ張り状態となるようにセットされることになる。
【0026】
本実施形態の転倒防止装置1によれば、支柱2の上端及び下端に取り付けられた当接部材4,5が、左右方向と前後方向に長いプレート材よりなり、かつ、左右方向中央部でかつ前後方向で後部側に偏った位置に、支柱2の端部が取り付けられている。
このため、上下の当接部材4,5が水平方向に長い棒状材よりなる従来装置に比べて、家具類の前後方向だけでなく幅方向の設置面積が増大し、従来よりも少ない装着数で家具類を安定させることができる。
【0027】
その上、上下の当接部材4,5を構成するプレート材が、左右方向に沿った直線状の後縁部6を有する、ほぼ半円形の平面形状に形成されているので、プレート材の後縁部6を家具類の後縁に沿わせた状態で装着することにより、家具類の上方空間における出来るだけ後部側に偏った位置に支柱2を配置することができる。
このため、転倒防止装置1の装着後においても、家具類の上方空間を物品の収納空間として有効活用することができる。
【0028】
また、本実施形態の転倒防止装置1によれば、支柱2を伸長方向に付勢するばね部材13を採用しているので、家具類の天板に載置した状態で操作部材3をアンロック状態に切り替えると、支柱2が自動的に伸長して上側の当接部材4が天井に当接する。
このため、ユーザが、家具類の上方空間において支柱2を自力で伸長させなくても、上側の当接部材4を天井に当接させることができ、転倒防止装置1の装着作業が非常に簡便になる。
【0029】
更に、本実施形態の転倒防止装置1によれば、操作部材3として、上下揺動自在な操作レバー16を採用しており、この操作レバー16を下方に揺動操作するだけで、押圧枠材15で内筒体12を締め付けてロック可能となっている。
このため、極めて簡便な操作で支柱2をロック状態にすることができ、この点においても、家具類の上方空間で行う転倒防止装置1の装着作業が簡便になるという利点がある。
【符号の説明】
【0030】
1:転倒防止装置
2:支柱
3:操作部材
4:当接部材(上側)
5:当接部材(下側)
6:後端縁
11:外筒体
12:内筒体
13:ばね部材
15:押圧枠材
16:操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井と家具類の天板の間に突っ張り状態で介在させて使用する家具類の転倒防止装置であって、
上下方向に伸縮自在な内外二重筒構造の支柱と、
前記支柱の伸縮を許容するアンロック状態と当該支柱の収縮を規制するロック状態とに切り替え自在な操作部材と、
前記支柱の上端及び下端にそれぞれ取り付けられた当接部材とを備えており、
前記当接部材は、左右方向と前後方向に長いプレート材よりなり、かつ、左右方向中央部でかつ前後方向で後部側に偏った位置に、前記支柱の端部が取り付けられていることを特徴とする家具類の転倒防止装置。
【請求項2】
前記プレート材は、左右方向に沿った直線状の後縁部を有する、ほぼ半円形の平面形状に形成されている請求項1に記載の家具類の転倒防止装置。
【請求項3】
前記支柱の内部に、当該支柱を伸長方向に付勢するばね部材が収納されている請求項1又は2に記載の家具類の転倒防止装置。
【請求項4】
前記支柱が、当該支柱の下部側に位置する外筒体と、この外筒体の内部に上下動自在に挿通された内筒体とを有し、
前記操作部材が、前記外筒体の上端部に取り付けられた押圧枠材と、この押圧部材に上下動自在に枢着された操作レバーとを有し、この操作レバーを下方に揺動操作することにより、前記押圧枠材で前記内筒体を締め付けてロック可能となっている請求項1〜3のいずれか1項に記載の家具類の転倒防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−94653(P2013−94653A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254400(P2011−254400)
【出願日】平成23年11月3日(2011.11.3)
【出願人】(000140306)株式会社奥田製作所 (50)