説明

家具

【課題】外観を損なうことなく、地震のときに転倒することがないよう壁面に固定することができるようにした家具を提供することにある。
【解決手段】壁面1に取り付けられる連結部材12に連結固定して設置される家具であって、
家具本体3と、家具本体の背板の背面側に形成され家具本体の背面を壁面に接触させて設置したときに連結部材が入り込む凹部18と、背板に形成された長孔から連結部材に設けられたナットに螺合され家具本体を連結部材に連結固定する固定ねじを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は地震によって転倒するのを防止した家具に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋内には家具が背面を壁面に接触させて設置される。家屋内に設置された家具は地震の発生時に転倒する虞があり、そのような場合、家具の近くにいた住人は転倒した家具の下敷きになったり、手足が挟まれるなどの危険がある。
【0003】
そこで、地震の発生時に家具の転倒を防止するため、特許文献1に示されるように家具の天井板の両側部に壁面などに取り付けるための取付け金具を設けたり、特許文献2に示されるように家具の天板に当てた軸穴に伸縮軸を通し、伸縮軸の上部先端に天井接地板を取付け、天板に対する伸縮軸の取付け位置を上下方向に調整して上記天井接地版を天井壁面に当接させるなどのことが行われている。
【特許文献1】実開昭58−65946号公報
【特許文献1】実開昭58−87544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、家具の転倒を防止するため、特許文献1のように天井板の両側部に取付け金具を設けたり、特許文献2のように天板に伸縮軸を設け、この伸縮軸の上部先端に天井接地板を設けるようにすると、上記取付け金具や伸縮軸及び天井接地板が外部に露出するため、外観的に極めて体裁が悪いということがある。
【0005】
この発明は外観の低下を招くことなく家具を転倒するようなことなく確実に壁面に固定することができるようにした家具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、壁面に取り付けられる連結部材に連結固定して設置される家具であって、
家具本体と、
この家具本体の背板の背面側に形成され家具本体の背面を上記壁面に接触させて設置したときに上記連結部材が入り込む凹部と、
上記背板に形成された通孔から上記連結部材に設けられたねじ孔に螺合され上記家具本体を上記連結部材の連結固定する固定ねじと
を具備したことを特徴とする家具にある。
【0007】
上記連結部材には、この連結部材を上記壁面に水平に取り付けるための水準器が設けられ、上記背板に形成される通孔は水平方向と交差する方向に長い長孔であることが好ましい。
【0008】
上記連結部材には水平方向に沿って長い保持溝が形成され、この保持溝には上記ねじ孔を形成するナットが保持溝の長手方向に沿ってスライド可能に設けられていることが好ましい。
【0009】
上記家具本体の背面の下端部には、この背面が上記壁面の下端部に設けられる幅木に当たるのを避ける逃げ部が形成されていることが好ましい。
【0010】
上記家具本体の底部の四隅部には、家具本体の前後方向の傾きを調整するアジャスタが設けられていることが好ましい。
【0011】
上記家具本体の前面には、この全面の開口部を開閉するガラス戸が設けられていて、このガラス戸のガラス面には破損時の飛散を防止する飛散防止フィルムが貼着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、家具本体を壁面に取付け固定するための連結部材が家具本体の背面側に隠れて外部に露出しないから、外観を損なうことなく家具本体を転倒するようなことなく壁面に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図7はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1は壁面1に背面を接触させて設置された家具2を示す。この家具2は前面が開口した箱型状の家具本体3を有する。図4に示すように、家具本体3の内部には上下方向に所定間隔で複数の棚板4が着脱可能に水平に架設され、前面開口には2枚の引き違い戸5がスライド可能に設けられている。
【0014】
上記引き違い戸5の戸枠6内には板ガラス7が設けられ、この板ガラス7には図7に示すように地震などの衝撃で板ガラス7が破損したときに破片が飛び散るのを防止する透明な構成樹脂シートからなる飛散防止フィルム8が貼着されている。飛散防止フィルム8は板ガラス7の内面或いは外面のいずれであってもよいが、飛散防止フィルム8を傷付けないようにするためには内面に貼着することが好ましい。
【0015】
なお、上記引き違い戸5と家具本体3の側板3aの内面とには、地震が発生したときに上記引き違い戸5が開方向にスライドし、家具本体3内に収容された物品が外部に飛散するのを防止する耐震ロック装置(図示せず)が設けられている。
【0016】
上記家具本体3の背板3bの高さ方向上部あるいは中途部には幅方向に所定間隔で離間した一対の通孔としての長孔11(図5に1つだけ図示)が家具本体3の上下方向に沿って形成されている。図2に示すように、上記壁面1には家具本体3の長孔11が形成された部分と対応する高さに帯板状に連結部材12の両端部が上記壁面1に一対の止めねじ13によって取付け固定されている。
なお、長孔11は図5に示すように棚板4の下面の近くに形成することが好ましい。それによって、長孔11は棚板4に隠されて外部から見え難くなる。
【0017】
上記壁面1に取付けられた上記連結部材12の上端面には水準器14が設けられている。それによって上記連結部材12を上記壁面1に対して水平の取付け固定できるようになっている。
【0018】
図3(a),(b)に示すように、上記連結部材12の長手方向両端部には連結部材12の長手方向、つまり水平方向に沿って長い一対の連結孔15が穿設されている。この連結孔15は、段部15aによって壁面1側の一側面に開口する後部分15bと、他側面に開口する、上記後部分15bよりも小さな前部分15cとに分けられていて、その後部分15bにはねじ孔を形成するナット16が後部分15bの長手方向に沿ってスライド可能に収容されている。
【0019】
なお、ナット16の外径寸法は前部分15cの幅寸法よりも小さく設定されている。それによって、ナット16が連結部材12の前面側に抜け出ることがないようになっている。
【0020】
上記家具本体3の背板3bは、側板3a、天井板3c及び底板3dの後端面よりも上記連結部材12の厚さ分だけ家具本体3の前面側に設けられている。それによって、家具本体3の背板3bの背面には図4に示すように凹部18が形成されている。
【0021】
上記家具本体3の底部には枠体19が設けられ、この枠体19の四隅部内には家具本体3の支持高さを調整するねじ込み式のアジャスタ21が設けられている。上記枠体19の後端面は上記側板3aの後端面よりも所定寸法前方に位置している。それによって、家具本体3の背面下端部には、この家具本体3を壁面1に接触させて設置したときに、壁面1の下端部に設けられた幅木22が入り込む逃げ部23が形成されている。
【0022】
上記逃げ部23を形成する上記枠体19の後側面にはシート状のクッション材24が貼着されている。それによって、上記枠体19の後側面は圧縮されたクッション材24を介して上記幅木22に弾性的に密着するようになっている。
【0023】
このように構成された家具2は、図4に示すようにその家具本体3の背面を壁面1に接触させて設置する。そして、図5に示すように壁面1に設けられた連結部材12に、家具本体3の背板3bに形成された一対の長孔11(一方のみ図示)を対向させ、この長孔11から上記連結部材12の連結孔15の後部分15bに設けられたナット16に固定ねじ26を螺合する。それによって、家具本体3は壁面1に固定されることになる。
【0024】
上記家具本体3の背面には上記連結部材12が入り込む凹部18が形成され、背面の下端部には壁面1の下端部に設けられた幅木22が入り込む逃げ部23が形成されている。さらに、家具本体3の下端部に設けられた枠体19内の四隅部には家具本体3の設置高さを調整するアジャスタ21が設けられている。
【0025】
そのため、壁面1に固定されて設置される家具本体3は、その背面に形成された凹部18に連結部材12が入り込むばかりか、家具本体3の下端部の枠体19の後側面には壁面1の下端部に設けられた幅木22を逃げるために逃げ部23が形成されている。
【0026】
そのため、家具本体3の内部から長孔11を通じて連結部材12の連結孔15に設けられたナット16に固定ねじ26をねじ込めば、上記家具本体3の背面、つまり家具本体3の側板3a、天井板3c及び底板3dの後端面を壁面1に確実に接触させて家具本体3を設置することができる。
【0027】
しかも、家具本体3の下端部である、枠体19内の四隅部にはアジャスタ21が設けられ、このアジャスタ21によって家具本体3の前後方向の傾きを調整することができから、そのことによって家具本体3の背面を壁面1に無理なく確実に接触させることができる。
【0028】
家具本体3の背面を壁面1に確実に接触させることができれば、地震が発生したときに家具本体3が壁面1に対してがたつくことなくから、家具本体3を壁面1に連結した固定ねじ26を介して連結部材12に負荷が加わり、連結部材12が壁面1から外れるような虞がないばかりか、家具本体3内に収容された物品もがたつき難くなるということがある。
【0029】
壁面1の連結部材12に形成された連結孔15にはナット16が水平方向にスライド可能に設けられ、家具本体3の背板3bには固定ねじ26を通すための長孔11が上下方向に沿って長く形成されている。
【0030】
そのため、家具本体3を設置したとき、水平方向及び上下方向に対して連結部材12の連結孔15と背板3bの長孔11とに多少の位置ずれが生じても、水平方向は上記ナット16が連結孔15に対して水平方向にスライド可能に設けられていることで吸収され、上下方向は長孔11によって吸収されるから、上記固定ねじ26を上記ナット16に確実にねじ込むことができる。
【0031】
しかも、連結部材12に水準器14を設けたため、その連結部材12を壁面1に水平に取付け固定することができるから、そのことによっても水平方向に対するナット16と長孔11の位置ずれを少なくすることができる。
【0032】
このように、家具本体3の背面側に形成された凹部18に壁面1に設けられた連結部材12を入り込ませ、家具本体3を壁面1に固定するようにしたことで、家具本体3を壁面1に固定するための連結部材12や止めねじ13などが外部に全く露出しないから、外観的に良好であり、室内の美観が損なわれるようなことがない。
【0033】
図8はこの発明の第2の実施の形態である。この実施の形態は家具本体3Aが枠体19に代わって下面四隅部に設けられた脚体28によって支持される場合であって、そのような場合には脚体28の下端面に高さ調整用のアジャスタ21Aを設け、さらに家具本体3の後端側に設けられる2本の脚体28(1本のみ図示)を幅木22に当たらないよう、家具本体3Aの後端面から同図に寸法dで示すように前方へずらして逃げ部23aを形成する。
【0034】
このような構成によれば、第1の実施の形態と同様、家具本体3Aを脚体28に設けられたアジャスタ21Aによって前後方向の傾きを調整して設置することができ、しかも設置の際に背面が壁面1に確実に接触するのを幅木22によって邪魔されるようなこともない。
【0035】
図9はこの発明の第3の実施の形態であって、この実施の形態は連結部材12Aの変形例を示す。この実施の形態の連結部材12Aは連結孔15に代わって連結部材の両端部にそれぞれ複数の埋め込みナット16aを設けるようにしたものであって、このような構成の連結部材12Aを用いるようにすれば、埋め込みナット16aは第1の実施の形態の連結孔15にスライド可能に設けられたナット16のように連結部材12Aから落下することがないから、連結部材12Aの取り扱いが容易となる。
【0036】
上記実施の形態では家具として前面に引き違い戸が設けられた構成を例に挙げて説明したが、引き違い戸に代わり観音開きの戸が設けられた家具や戸に代わり引き出しが設けられた家具などなどであってもよく、家具の種類はなんら限定されるものでない。
【0037】
なお、引き出しが設けられる場合には、この引き出しが地震の振動によって飛び出すことがないよう、引き出しと家具本体とに耐震ロック装置を設けるようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は壁面に背面を接触させて設置された家具の斜視図。
【図2】壁面に設けられた連結部材の斜視図。
【図3】(a)は連結部材の平面図、(b)は同じく側面図。
【図4】家具本体が壁面の連結部材に連結された状態の断面図。
【図5】家具本体の背板と連結部材との連結部分の拡大断面図。
【図6】家具本体の下部の枠体の部分の拡大断面図。
【図7】板ガラスの一部分を示す拡大断面図。
【図8】この発明の第2の実施の形態を示す家具本体の下部の断面図。
【図9】この発明の第3の実施の形態を示し、(a)は連結部材の平面図、(b)は同じく側面図。
【符号の説明】
【0039】
1…壁面、2…家具、3…家具本体、5…引き違い戸、7…板ガラス、8…飛散防止フィルム、11…長孔、12…連結部材、13…止めねじ、14…水準器、15…連結孔、16…ナット(ねじ孔)、18…凹部、21…アジャスタ、22…幅木、23…逃げ部、26…固定ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付けられる連結部材に連結固定して設置される家具であって、
家具本体と、
この家具本体の背板の背面側に形成され家具本体の背面を上記壁面に接触させて設置したときに上記連結部材が入り込む凹部と、
上記背板に形成された通孔から上記連結部材に設けられたねじ孔に螺合され上記家具本体を上記連結部材に連結固定する固定ねじと
を具備したことを特徴とする家具。
【請求項2】
上記連結部材には、この連結部材を上記壁面に水平に取り付けるための水準器が設けられ、上記背板に形成される通孔は水平方向と交差する方向に長い長孔であることを特徴とする請求項1記載の家具。
【請求項3】
上記連結部材には水平方向に沿って長い保持溝が形成され、この保持溝には上記ねじ孔を形成するナットが保持溝の長手方向に沿ってスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の家具。
【請求項4】
上記家具本体の背面の下端部には、この背面が上記壁面の下端部に設けられた幅木に当たるのを避ける逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の家具。
【請求項5】
上記家具本体の底部の四隅部には、家具本体の前後方向の傾きを調整するアジャスタが設けられていることを特徴とする請求項1記載の家具。
【請求項6】
上記家具本体の前面には、この前面の開口部を開閉するガラス戸が設けられていて、このガラス戸のガラス面には破損時の飛散を防止する飛散防止フィルムが貼着されていることを特徴とする請求項1記載の家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−237546(P2008−237546A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82204(P2007−82204)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)