説明

家庭用冷蔵庫の除霜ヒータ

【課題】 ガラス管の表面温度を低下させることで可燃性冷媒の発火の可能性を低減させることを目的とする。
【解決手段】 内側ガラス管と、前記内側ガラス管に挿通したヒータ線と、前記内側ガラス管端部開口を封止する内側封止キャップと、前記内側ガラス管を緩挿してヒータ線のコイル部外周を囲む外側ガラス管と、前記外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓とよりなる家庭用冷蔵庫の除霜ヒータとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用冷蔵庫の除霜ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温暖化防止の環境規制を受け、家庭用冷蔵庫ではフロンの替わりに可燃性ではあるがイソブタンを使用したノンフロン冷蔵庫が急速に普及している。
【0003】
以下、図面を参照しながら、従来の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータを説明する。
【0004】
図7は、従来の家庭用冷蔵庫の要部の縦断面図である。図7において、101は冷蔵庫本体、102は冷蔵庫本体101の内部にある冷蔵室、103は冷蔵庫本体101の内部にある冷凍室、104は冷蔵室扉、105は冷凍室扉、106は冷蔵室102と冷凍室103を仕切る仕切壁、107は冷蔵室102内の空気を吸い込む冷蔵室吸込口、108は冷凍室103内の空気を吸い込む冷凍室吸込口、109は冷気を吐出する吐出口、110は蒸発器、111は冷気を循環させるファン、112は蒸発器110と冷蔵室102を仕切る蒸発器仕切壁、113は桶、114は排水口、115はニクロム線をコイル状にしたものをガラス管で覆った除霜ヒータ、116は除霜水が除霜ヒータ115に直接滴下して接触するのを防止するためのヒータカバー、117は冷却器110を収容する冷却室である。
【0005】
次に動作について説明する。
【0006】
冷蔵室102や冷凍室103を冷却する場合は、蒸発器110に冷媒が流通して蒸発器110が冷却される。これと同じくしてファン111の作動により、冷蔵室吸込口107や冷凍室吸込口108から冷蔵室102や冷凍室103の昇温空気を冷却室117に送り蒸発器110で熱交換して冷却されて吐出口109から冷却風を冷蔵室102内に送り、冷蔵室102から図示していない連通口を通って冷凍室103に冷気を送る。
【0007】
ここで、蒸発器110と熱交換する空気は、冷蔵室扉104および冷凍室扉105の開閉による高温外気の流入や冷蔵室102および冷凍室103の保存食品の水分の蒸発等により高湿化された空気であることから、その空気より低温である蒸発器110に空気中の水分が霜となって着霜する。
【0008】
着霜量が増加するにしたがって蒸発器110表面と熱交換する空気との伝熱が阻害されると共に、通風抵抗となって風量が低下するために熱通過率が低下して冷却不足が発生する。
【0009】
そこで、冷却不足となる以前に除霜ヒータ115のニクロム線に通電する。ニクロム線に通電が開始されるとニクロム線から蒸発器110や周辺部品に熱線が放射される。このとき、放射された熱線の一部はヒータカバー116に反射され、その他は蒸発器110やその他の周辺部品に向けて反射される。これにより蒸発器110や桶113や排水口114付近に着いた霜を水に融解する。また、このようにして融解した除霜水は一部は直接桶113に落ち、その他はヒータカバー116により除霜ヒータ115を避けて桶113に落ち排出口114から庫外に排水される。
【特許文献1】特開2004−044899号公報
【特許文献2】特開2002−195735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
可燃性冷媒であるイソブタンの採用にあたっては、冷蔵庫の電機部品では、高温の発熱源を有する除霜ヒータの安全性が重要な課題となっている。
【0011】
そこで、日本電機工業会は、イソブタンの発火温度が494℃であることから、冷却器に付着した霜を融解する除霜ヒータにおいては、その表面温度はこれより100℃低い394℃未満とする自主基準を定め、万一冷媒が漏洩した場合の発火・爆発への危険を防止している。
【0012】
一方、従来のフロン対応のガラス管ヒータの表面温度は564℃と基準値を大きく超えるため、現行品はこれをさらにガラス管で覆う二重ガラス管構造とすることにより放射面積を増やす方法で基準を満たし、ノンフロン冷蔵庫用の除霜ヒータとして使用している。
【0013】
しかし、ガラス管で全面を覆うガラス二重構造では、ガラス管表面温度が十分に効率良く低下しないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
二重ガラス管構造の除霜ヒータは、ヒータ線からの発熱の放射面積を増加させて外側ガラス管の表面温度を低下させようとするが、十分ではない。
【0015】
本発明では、内側ガラス管内に収容されるヒータ線の有効発熱長さのコイル部を外側ガラス管で覆わせ、ヒータ線の両端のいわゆるコールドの直線端線は覆わせず、内側ガラス管両端部からも放熱を促進させることで外側ガラス管の表面温度を低下させたものである。
【0016】
本発明は、外側ガラス管の表面温度を低下させるべく、内側ガラス管と、前記内側ガラス管に挿通したヒータ線と、前記内側ガラス管端部開口を封止する内側封止キャップと、前記内側ガラス管を緩挿してヒータ線のコイル部外周を囲む外側ガラス管と、前記外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓とよりなる家庭用冷蔵庫の除霜ヒータとした。
【0017】
また、本発明は、外側ガラス管内で万一着火爆発があっても火災が外部に伝播しない消炎距離を有するようにすべく、外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓に加熱時の熱膨張空気を放出する開口部を設けた。
【0018】
さらに本発明は、内側ガラス管端部の放熱を促進させ、内側ガラス管中央分の温度を低下させるべく、外側ガラス管に囲まれてない内側ガラス管表面に放熱フィンを設けた。
【0019】
さらにまた、本発明は、放熱効果の顕著な領域を特定すべく、外側ガラス管の長さを内側ガラス管の長さより40mm以上短く設定した。
【0020】
さらにその上に、本発明は、万一可燃性冷媒が外側ガラス管に浸入しても着火、爆発の危険がないようにすべく、内側ガラス管の表面温度を394℃未満とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、外側ガラス管の表面温度を低下させるべく、内側ガラス管と、前記内側ガラス管に挿通したヒータ線と、前記内側ガラス管端部開口を封止する内側封止キャップと、前記内側ガラス管を緩挿してヒータ線のコイル部外周を囲む外側ガラス管と、前記外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓とよりなる家庭用冷蔵庫の除霜ヒータであり、外側ガラス管の表面温度を低下させることができるので、安全であり、その上、従来の二重ガラス管構造の除霜ヒータに比して、外側ガラス管の長さを短くすることができ、さらに、従来の二重ガラス管構造の除霜ヒータではガラス管の軸方向の同一箇所で内側ガラス管と外側ガラス管とを封止させるので、封止キャップの構造が複雑であったが、本発明では、内側ガラス管、外側ガラス管ごとに封止キャップを製作することになるが、封止キャップの構造が単純で小型となり、コストが安く、除霜ヒータを安価に提供できる。
【0022】
また、本発明は、外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓に加熱時の熱膨張空気を放出する開口部を設けたので、外側ガラス管内で万一着火、爆発があっても火災が外部に伝播しない消炎距離を有する。
【0023】
さらに本発明は、外側ガラス管に囲まれてない内側ガラス管表面に放熱フィンを設けたので、内側ガラス管端部の放熱を促進させ、内側ガラス管中央部の温度を低下させる。
【0024】
さらにまた、本発明は、外側ガラス管の長さを内側ガラス管の長さより40mm以上短く設定したので、放熱効果の顕著な領域を特定できる。
【0025】
さらにその上に、本発明は、内側ガラス管の表面温度を394℃未満としたので、万一可燃性冷媒が外側ガラス管に浸入しても着火、爆発の危険がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を添付する図面に示す具体的実施例に基づいて、以下詳細に説明する。
【0027】
本発明は、内側ガラス管と、前記内側ガラス管に挿通したヒータ線と、前記内側ガラス管端部開口を封止する内側封止キャップと、前記内側ガラス管を緩挿してヒータ線のコイル部外周を囲む外側ガラス管と、前記外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓とよりなる家庭用冷蔵庫の除霜ヒータである。
【0028】
本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項1の具体的一実施例を図1に示す。
【0029】
本発明は、内側ガラス管1と、前記内側ガラス管1に挿通したヒータ線2と、前記内側ガラス管1端部開口を封止する内側封止キャップ3と、前記内側ガラス管1を緩挿してヒータ線2のコイル部4外周を囲む外側ガラス管5と、前記外側ガラス管5端部開口を封止する外側封止栓6とよりなる。
【0030】
内側ガラス管1は、熱の透過率の高い石英ガラス管で、外径10.5mmで、肉厚1.0mmのものである。
【0031】
ヒータ線2は、ニクロム線その他の伝熱線で、通常中央部に有効発熱長さのコイル部4を形成し、コイル部4の両端にはいわゆるコールドエンドの直線端部7からなる。
【0032】
内側ガラス管1端部開口を封止する内側封止キャップ3はシリコンゴム製である。
【0033】
外側ガラス管5は、熱透過率の高い石英ガラス管で外径20mmで、肉厚1.5mmのものである。
【0034】
外側ガラス管開口を封止する外側封止栓6は、シリコンゴム製である。
【0035】
本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項2の具体的一実施例を図2に示す。図2は外側封止栓の正面図と断面図との2面図を示す。
【0036】
本発明の請求項2の発明は、外側ガラス管5端部開口を封止する外側封止栓6に加熱時膨張空気を放出する開孔部11を設けた。
【0037】
外側封止栓6は、外側ガラス管6内面と内側ガラス管1外面との間に嵌着するもので、外周に外側ガラス管5を、内周には内側ガラス管1をそれぞれ装着するもので、先端は挿入を容易にするためにテーパ12に形成する。
【0038】
外側封止栓6の外周には、外側ガラス管5内で万一着火、爆発があっても火炎が外部に伝播しない消炎距離を有するように、外端面から内端面に通ずる開孔部11を刻設する。
【0039】
本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項3の具体的一実施例を図3に示す。
【0040】
本発明の請求項3の発明は、外側ガラス管5に囲まれてない内側ガラス管1表面に放熱フィン13を設けた。
【0041】
放熱フィン13は、例えば熱伝導性のよいアルミなどの金属条で内側ガラス管1外表面をスパイラル状に巻くこと等で、内側ガラス管1端部の放熱を促進し、低温化させると同時に内側ガラス管1の中央部温度も低下させる。
【0042】
本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項4の具体的一実施例を図4に示す。
【0043】
本発明の請求項4の発明は、外側ガラス管5の長さを内側ガラス管1の長さより40mm以上短く設定した。
【0044】
外側ガラス管5により覆われてない内側ガラス管1の左側の長さをL1 、外側ガラス管5により覆われてない内側ガラス管1の右側の長さをL2 とすると、外側ガラス管5により覆われてない内側ガラス管1の両端部を均等(L1 =L2 )にすることもできるし、一方の端部を他方の端部より若干長く設定することもできる。内側ガラス管1の端部はある程度以上(L1 +L2 >40mm)の露出長さがないと顕著な放熱効果がない。
【0045】
本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項5の具体的一実施例を図5に示す。
【0046】
本発明の請求項5の発明は、図5に示すように内側ガラス管1の表面温度を394℃未満とした。
【0047】
従来の二重ガラス管構造の除霜ヒータと、本発明のヒータ線のコイル部外周のみを外側ガラス管で覆わせた除霜ヒータとの実測データによるグラフを図6に示す。
【0048】
図6にグラフで、内側ガラス管ヒータのヒータ線コイル部外周のみをガラス管で囲む本発明と、コイル端部の直線部にフィンをさらに設置する本発明と、従来ガラス二重管ヒータの比較説明を行う。
【0049】
図6のグラフは、横軸にヒータ中央からの長さを、縦軸にガラス管表面温度を取ったものである。ヒータの中央部は発熱するコイルの中央部、ヒータコイル端部はコイル末端、コールドエンド中間はコイル直線部の中間である。
【0050】
グラフはヒータ中央部に対して対称に表れるので、分かりやすくするために半分だけを示す。
【0051】
図6から明らかなように、従来二重管ヒータは、内側ガラス管温度は394℃以上となるが、同一条件において本発明ヒータは394℃以下となり、発火、爆発に対する安全性を高めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項1の具体的一実施例の正面図である。
【図2】本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項2の具体的一実施例で、外側封止栓の正面図と断面図との2面図である。
【図3】本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項3の具体的一実施例の正面図である。
【図4】本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項4の具体的一実施例の正面図である。
【図5】本発明の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータの請求項5の具体的一実施例の正面図である。
【図6】従来の二重ガラス管構造の除霜ヒータと、本発明のヒータ線のコイル部外周のみを外側ガラス管で覆わせた除霜ヒータとの実測データのグラフである。
【図7】従来の家庭用冷蔵庫の概要を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…内側ガラス管
2…ヒータ線
3…内側封止キャップ
4…コイル部
5…外側ガラス管
6…外側封止栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側ガラス管と、前記内側ガラス管に挿通したヒータ線と、前記内側ガラス管端部開口を封止する内側封止キャップと、前記内側ガラス管を緩挿してヒータ線のコイル部外周を囲む外側ガラス管と、前記外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓とよりなる家庭用冷蔵庫の除霜ヒータ。
【請求項2】
外側ガラス管端部開口を封止する外側封止栓に加熱時の熱膨張空気を放出する開口部を設けた請求項1記載の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータ。
【請求項3】
外側ガラス管に囲まれてない内側ガラス管表面に放熱フィンを設けた請求項1、請求項2記載の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータ。
【請求項4】
外側ガラス管の長さを内側ガラス管の長さより40mm以上短く設定した請求項1、請求項2、請求項3記載の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータ。
【請求項5】
内側ガラス管の表面温度を394℃未満とした請求項1、請求項2、請求項3、請求項4記載の家庭用冷蔵庫の除霜ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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