説明

家庭用薄葉紙の製造方法及び家庭用薄葉紙

【課題】コットン繊維が短く均一で柔軟性と嵩高さを兼ね備えつつ、水への離解性を有する家庭用薄葉紙の製造方法及び家庭用薄葉紙を提供する。
【解決手段】コットン繊維をロータリーカッター方式の粉砕機で粉砕して、繊維長が1.0〜2.5mmのコットン粉砕体を形成する粉砕工程(ステップS1)と、粉砕工程により形成されたコットン粉砕体を、5〜30重量%配合して抄紙する抄紙工程(ステップS3)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コットンが配合された家庭用薄葉紙の製造方法及び家庭用薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コットンリンターパルプを配合した紙が知られている。コットンリンターパルプは、コットンが除かれた殻から残された繊維を除くため、苛性ソーダを使って蒸解処理をし、シート状にしたものであり、このことでコットンの中空繊維が潰れてしまい、コットンの持つ柔らかさや嵩高さという特徴が損なわれてしまう。
また、綿を含む布帛小片を粉砕したものを用いた紙の製造方法も知られている(特許文献1)。かかる紙の製造方法では、抄紙する繊維長を平均1〜10mm(好ましくは3〜10mm)の範囲で粉砕することが記載されている。
さらに、綿、ウール等よりなる古布を予め粉砕工程を経てなる古布粉砕物15%〜30%に対してパルプ、紙85%〜70%を混合して調整工程、抄造工程、及び仕上げ工程を経るようにした綿入り紙の製造方法も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−324389号公報
【特許文献2】特開2002−194693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2には、コットンの粉砕方法については具体的な記載はなく、一般的に製紙業界で使用されるパルプ用リファイナー等の機械では、カッティングし、すり潰す構造のため、コットンのように柔らかな繊維を細かく粉砕することができず、短くて均一な繊維長を得ることができない。
コットン繊維が長いと、水に離解せずに繊維がよれ、ダマになりやすいという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、コットン繊維が短く均一で柔軟性と嵩高さを兼ね備えつつ、水への離解性を有する家庭用薄葉紙の製造方法及び家庭用薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、家庭用薄葉紙の製造方法において、コットン繊維をロータリーカッター方式の粉砕機で粉砕して、繊維長が1.0〜2.5mmのコットン粉砕体を形成する粉砕工程と、前記粉砕工程により形成された前記コットン粉砕体を、5〜30重量%配合して抄紙する抄紙工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の家庭用薄葉紙の製造方法において、
前記粉砕工程により粉砕されたコットン粉砕体に対して、所定のフィルターを通過させる通過工程を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の家庭用薄葉紙の製造方法において、
コットン繊維に、コットン屑が含まれることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、家庭用薄葉紙において、
繊維長が1.0〜2.5mmに粉砕されたコットン繊維を5〜30重量%配合されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、コットン繊維がロータリーカッター方式の粉砕機で粉砕されて、繊維長が1.0〜2.5mmのコットン粉砕体が形成され、このコットン粉砕体が、5〜30重量%配合されて抄紙されて家庭用薄葉紙が製造されるので、コットン繊維が短く均一になることとなって、柔軟性と嵩高さを兼ね備え、且つ水への離解性を有する家庭用薄葉紙を製造することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、粉砕されたコットン粉砕体が所定のフィルターを通過することとなるため、コットン粉砕体の繊維長をより均一に調整することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、コットン繊維に、コットン屑が含まれるため、利用価値のない廃棄物を有効利用することができ、コストダウンを実現すると共に、パルプの使用量を抑え環境問題を考慮した製品とすることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、製造される家庭用薄葉紙に、繊維長が1.0〜2.5mmに粉砕されたコットン繊維が5〜30重量%配合されることなるため、柔軟性と嵩高さを好適に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における家庭用薄葉紙を示す外観図である。
【図2】本発明の家庭用薄葉紙に用いられる粉砕されたコットン繊維(コットン粉砕体)を説明するための図である。
【図3】本発明の家庭用薄葉紙の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0016】
本実施形態における家庭用薄葉紙として、ティッシュペーパー1を例示して説明する。
ティッシュペーパー1は、例えば、ポップアップ式に重畳されて所定の収納箱に収納され、ティシュペーパー製品などとして使用されるものである。
【0017】
ティッシュペーパー1は、原料素材として、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、等のパルプ繊維や再生繊維、レーヨン等を含んで構成されている。
【0018】
また、ティッシュペーパー1は、コットン繊維を含んで構成されている。
本発明のコットン繊維は、繊維長が1.0〜2.5mmのコットン粉砕体にて構成されている。ここで、繊維長が1.0mm未満であると、パルプ繊維等の原料素材中の繊維とからみにくくなって紙力が弱くなるため、紙粉が多くなってしまう。一方、繊維長が2.5より大きいと、原料素材中の繊維とのからみが良すぎるため、地合不良になり強度が弱くなって均一性のない紙になってしまう。
この繊維長が1.0〜2.5mmのコットン粉砕体は、乾燥状態では中空繊維のため嵩高であってティッシュペーパー1に柔軟性を付与する一方、ヨレやダマがなく水中では離解することができるため、ティッシュペーパー1を水中に廃棄可能とするものである。
【0019】
また、本発明のコットン繊維には、コットン屑を含むこととしても良い。このコットン屑は、例えば、繊維工場などにおける製造工程において必然的に生成されるものであり、このコットン屑を利用可能とすることで廃棄物を削減可能にするものである。
即ち、本実施形態におけるティッシュペーパー1は、利用価値のない廃棄物を有効利用することができ、コストダウンを実現すると共に、パルプの使用量を抑え環境問題を考慮した製品となっている。
【0020】
上記コットン繊維は、ティッシュペーパー1の原料全体に対して5〜30重量%配合されることが好ましい。
配合率が5重量%に満たない場合にはティッシュペーパー1に柔軟性を付与することができず、一方、配合率が30重量%より多い場合には紙粉が多くなるためである。
【0021】
また、ティッシュペーパー1は、例えば、柔軟剤0.5〜3.0kg/t、クレープ率10〜18%となるように設計されている。柔軟剤を併用することで、より柔らかさを付与することができる。
なお、本発明においては、ティシュペーパー1自体の大きさ、紙厚、プライ数などは限定されず、適宜設定可能である。
【0022】
このティッシュペーパー1の製造方法を説明する。
図3に示すように、家庭用薄葉紙の製造方法は、粉砕工程(ステップS1)、通過工程(ステップS2)、抄紙工程(ステップS3)を有している。
【0023】
粉砕工程(ステップS1)は、コットン繊維をロータリーカッター方式の粉砕機で粉砕して、繊維長が1.0〜2.5mmのコットン粉砕体を形成する工程である(図2参照)。
ここで、コットン繊維の特徴を説明すると、コットン繊維はその繊維中に水を通す管状構造を有しており、この管状構造により、乾燥すると中空繊維となって嵩高く柔らかい性質を有している。しかしながら、コットン繊維は、柔らかいためよじれやすく、均一な繊維長とするのは困難で、且つ粉砕に際して管状構造が潰れやすいものである。
ここで、ロータリーカッター方式の粉砕機とは、固定刃及びカッティング刃からなり、カッティングのみ行なうすり潰す工程のない粉砕機械であって、コットン繊維にように柔らかな繊維であっても2.5mm以下の均一な粉砕体に粉砕することが可能である。
具体的に、ロータリーカッター方式の粉砕機は、容器内に固定刃及びカッティング刃が配設されて成る本体を備え、当該本体内にコットン繊維を投入して固定刃及びカッティング刃によってコットン繊維を粉砕する。
このようなロータリーカッター方式の粉砕機を使用することで、繊維を潰すことなく粉砕することが可能である。
なお、このようなロータリーカッター方式の粉砕機として、例えば、株式会社三力製作所製の粉砕機(型番:SF−3)などを用いる。
【0024】
通過工程(ステップS2)は、粉砕工程により粉砕されたコットン粉砕体に対して、所定のフィルターを通過させる工程である。
具体的に、上記フィルターは、一定サイズの粒子のみ通過させる多数の孔を備えており、コットン粉砕体を通過させることでその粒子径を選別して、コットン粉砕体の繊維長を均一に調整することが可能である。また、フィルターの孔の大きさを変えることで、選別されるコットン粉砕体の繊維長の長さを変えることができる。
【0025】
抄紙工程(ステップS3)は、通過工程によりフィルターを通過させたコットン粉砕体を、5〜30重量%配合して抄紙する工程である。
抄紙工程においては、既知の設備および製造工程に従ってティシュペーパー1の原紙が製造されることとなる。
具体的には、抄紙工程は、抄紙原料を実質的に湿紙に形成するワイヤーパート、湿紙を脱水するプレスパート、脱水された湿紙を乾燥するドライヤーパートの少なくとも3つのパートを有し、公知の種々の抄紙機を用いることができる。また、クレープ処理やカレンダー処理を施すこととしても良い。
ここで、抄紙原料として、上記した公知のパルプ繊維等の原料素材に、コットン粉砕体が5〜30重量%配合されたものが使用される。
また、抄紙原料としてコットン粉砕体を配合する段階においては、コットン粉砕体が全体に分散するように混合するようにする。
また、この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0026】
抄紙工程によって製造されたティシュペーパー原紙は、例えば既知のインターホルダーにより折り畳んだ後に、所定の大きさに切断される等の既知の方法を経てティシュペーパー束が形成される。
なお、本発明においては、このティシュペーパー束の高さや大きさ等は特に限定されるものではなく、収容する収納箱の大きさに併せて適宜変更することができるのは勿論である。
【0027】
以上説明したティッシュペーパー及びティッシュペーパーの製造方法によれば、コットン繊維が短く均一になることとなって、柔軟性と嵩高さを兼ね備え、且つ水への離解性を有するティッシュペーパー1を製造することができる。
【0028】
また、上記実施形態によれば、製造工程において、粉砕されたコットン粉砕体が所定のフィルターを通過することとなるため、コットン粉砕体の繊維長をより均一に調整することができる。
【0029】
また、上記実施形態によれば、コットン繊維に、コットン屑が含まれるため、利用価値のない廃棄物を有効利用することができ、コストダウンを実現すると共に、パルプの使用量を抑え環境問題を考慮した製品とすることができる。
【0030】
また、上記実施形態によれば、製造される家庭用薄葉紙に、繊維長が1.0〜2.5mmに粉砕されたコットン粉砕体が5〜30重量%配合されることなるため、柔軟性と嵩高さを好適に付与することができる。
【0031】
なお、上記実施形態においては、家庭用薄葉紙としてティッシュペーパーを例示して説明したが、これ以外にも例えばトイレットペーパー、キッチンペーパーなどにも適用可能である。
また、上記においては、原料素材としてパルプ繊維を使用する場合について説明したが、原料素材は、特に限定されるものではなく、用途に応じて公知のものを適宜使用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ティシュペーパー(家庭用薄葉紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コットン繊維をロータリーカッター方式の粉砕機で粉砕して、繊維長が1.0〜2.5mmのコットン粉砕体を形成する粉砕工程と、
前記粉砕工程により形成された前記コットン粉砕体を、5〜30重量%配合して抄紙する抄紙工程と、
を有することを特徴とする家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項2】
前記粉砕工程により粉砕されたコットン粉砕体に対して、所定のフィルターを通過させる通過工程を有することを特徴とする請求項1記載の家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項3】
コットン繊維に、コットン屑が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項4】
繊維長が1.0〜2.5mmに粉砕されたコットン繊維を5〜30重量%配合されてなることを特徴とする家庭用薄葉紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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