家畜用床敷材
【課題】 稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材および稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材を提供する。
【解決手段】 稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。本発明に係る家畜用床敷材によれば、微生物を抑制することができることから、家畜の飼育場所において、増殖した微生物を起因とする種々の不都合な事象、例えば家畜や作業員の体調不良や感染症などの疾病、悪臭、腐敗、汚れなどの発生を予防することができる。
【解決手段】 稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。本発明に係る家畜用床敷材によれば、微生物を抑制することができることから、家畜の飼育場所において、増殖した微生物を起因とする種々の不都合な事象、例えば家畜や作業員の体調不良や感染症などの疾病、悪臭、腐敗、汚れなどの発生を予防することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用床敷材に関し、詳細には、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材、ならびに稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材に関する。
【背景技術】
【0002】
稚内珪藻頁岩(稚内珪藻土)は、北海道稚内地方の宗谷・天北地域で産出するページ(頁)状岩石であり、海洋性単細胞生物である珪藻プランクトンの死骸が堆積してできた珪藻土が地上に隆起するときに、地圧と地熱による地質的変成を受けて岩石化した非晶質珪酸鉱物である。一般的な珪藻土と比較して細孔の容量が多く、優れた調湿機能や消臭機能を有する(非特許文献1)ほか、除菌能を有することが報告されている(非特許文献2)。また、特許文献1には、内装材として十分な強度を有した、粒径が0.7mm以下の稚内産珪藻土を含む植物繊維ボード(特許文献1)が、特許文献2には、調湿性やガス吸着性に富み、様々な硬さ、柔軟性、風合いを実現可能な、粒径が0.4〜1.5mm程度の稚内層珪藻土を含有する機能性不織布(特許文献2)が、特許文献3には、室内における調湿機能、消臭機能を発揮する、平均粒子径が0.001〜1mmの稚内珪藻土を含有する壁材(特許文献3)が、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23307号公報
【特許文献2】特開2009−7826号公報
【特許文献3】特開2006−291509号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ナトゥア・ジャパン株式会社、”珪藻土革命:藻々太郎”、[online]、[平成23年8月25日検索]、インターネット〈URL:http://natur−j.jp/grah.html〉
【非特許文献2】渡辺ら、寒地技術論文・報告集、第20巻、第380−385頁、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体が、微生物の増殖を抑制することはこれまで知られていなかった。これに対し、特許文献1に記載の植物繊維ボードや特許文献2に記載の機能性不織布は、粒状や粉状ではないうえ、稚内産珪藻土が2枚の植物繊維マットあるいは不織布に挟まれる形で埋没しており、埋没した稚内産珪藻土は微生物の増殖を抑制するという作用・効果を果たし得ない。また、特許文献3に記載の壁材もまた、粒状や粉状でないうえ、乾燥珪藻土が漆喰を主成分とする固化材に混練される形で埋没しており、特許文献1に記載の植物繊維ボードや特許文献2に記載の不織布の場合と同様、埋没した乾燥珪藻土は微生物の増殖を抑制するという作用・効果を果たし得ない。
【0006】
また、非特許文献1に記載の調湿機能は、高湿度下では吸湿し、かつ低湿度下では放湿する機能、同文献に記載の消臭機能はアンモニアを吸着する機能にそれぞれ基づくものであり、本発明における微生物の増殖を抑制する機能とは全く異なるものである。
【0007】
さらに、非特許文献2には、「滅菌作用により除去する(第385頁第一段落)」との記載があり、表10に示されるように、特に、珪藻頁岩粒および珪藻頁岩粉を用いて懸濁液を採取した場合の保温2時間までにおける大腸菌AHU1714の除菌効果に両者で差がないのに対し、珪藻頁岩粉を用いた懸濁液を採取した場合の保温2時間から保温4時間における大腸菌AHU1714の除菌率が高まったとしているが、珪藻頁岩粒を用いた懸濁液を採取した場合の保温2時間から保温4時間における大腸菌AHU1714の除菌率にほぼ差がないこと、珪藻頁岩を含まない20℃の生理食塩水中の、保温2時間から保温4時間における大腸菌AHU1714についてのデータ(コントロールデータ)がないこと、大腸菌AHU1714のような継代培養された菌は、そもそも20℃のような常温では自然死しやすく、生理食塩水のように栄養源のない液中では増殖もなく自然減があること、「微生物吸着」については裏付けとなるデータを取るのが極めて困難であるが、非特許文献2では何ら示されておらず、単なる推測や想像に過ぎないことなどから、非特許文献2に基づいて稚内珪藻頁岩の「微生物吸着能」、「除菌能」、「滅菌効果」をいうことはできず、従って非特許文献2における稚内珪藻土の「微生物吸着能」、「除菌能」、「滅菌効果」に係る発明は未完成であったといえ、非特許文献2は引例適格性に欠けるといえる。さらに、本明細書実施例から明らかなように、本願発明は、「保持しつつ増殖を抑制する」のであり、微生物が本発明に係る微生物増殖抑制材に保持された後に自然死することはあっても、本発明に係る微生物増殖抑制材自体が「滅菌作用」を有するものではなく、やはり本発明における微生物の増殖を抑制する機能とは全く異なるものである。
【0008】
一方、畜舎の床は、家畜の糞尿などにより不衛生な環境となり易く、感染性微生物が増殖して家畜の疾病を引き起こすことが問題となっているため、微生物の増殖を抑制することができる床敷材の開発が望まれているが、家畜用の床敷材は大量かつ長期的に使用されるものであるため、安価、安全であるうえに、微生物の増殖抑制について長期的に高い効果を持続する家畜用床敷材はこれまでになかった。
【0009】
本発明は、これらのような課題を解決するためになされたものであって、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材および稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体が、微生物を保持しつつその増殖を抑制すること、および稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分とすることにより、大量かつ長期的に使用することができ、散布などの取り扱いが容易で、安価、安全であるうえに、畜舎における微生物の増殖抑制について長期的に高い効果を持続する、粒状や粉状の家畜用床敷材を得ることができることを見出し、下記の各発明を完成した。
【0011】
(1)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【0012】
(2)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【0013】
(3)微生物の増殖を抑制する材が、微生物を保持しつつ増殖を抑制する材である、(2)に記載の家畜用床敷材。
【0014】
(4)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒径4mm未満の粒体および/または粉体である、(1)から(3)のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【0015】
(5)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる含水率が22重量%未満の粒体および/または粉体である、(1)から(4)のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る家畜用床敷材によれば、微生物の増殖を抑制することができることから、家畜の飼育場所において、増殖した微生物を起因とする種々の不都合な事象、例えば家畜や作業員の体調不良や感染症などの疾病、悪臭、腐敗、汚れなどの発生を予防することができる。また、本発明に係る家畜用床敷材によれば、微生物のみならず、昆虫、クモ綱、多足類、甲殻類などのいわゆる虫に対する忌避材としても有効である。また、本発明に係る家畜用床敷材によれば、稚内珪藻頁岩は家畜や作業者にとって安全であることから、大量かつ長期的に使用することができ、散布などの取り扱いが容易で、安価、安全であるうえに、畜舎における微生物の増殖抑制効果、あるいは微生物、虫に対する忌避効果を長期的に持続することができる。また、本発明に係る家畜用床敷材は、散布することにより家畜や作業者のスリップによる転倒を防止し、安全な環境をつくることができる。さらに、従来知られているように、稚内珪藻頁岩は調湿機能や消臭機能を有することから、湿気や悪臭の低減にも貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1mm体懸濁液および1mm体を懸濁していないコントロール液のそれぞれの上清中の生菌濃度を示す図である。
【図2】乳牛直腸便の便懸濁液を吸収させた1mm体(サンプルa)および3mm体(サンプルb)、ならびに1mm体および3mm体のいずれにも吸収させていない便懸濁液(コントロールサンプル)のそれぞれにおける生菌濃度を示す図である。
【図3】真珠岩の粉末に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す写真図である。図中、(I)から(IV)の各写真図は2.5秒間隔で撮影したものであり、大腸菌を矢印で示し、大腸菌が観察された位置の軌跡を楕円で示す。
【図4】1mm体に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す写真図である。図中、(I)から(IV)の各写真図は2.5秒間隔で撮影したものであり、大腸菌および1mm体を矢印で示し、大腸菌が観察された位置を円で示す。
【図5】二酸化ケイ素水和化合物の粉末に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す写真図である。図中、(I)から(IV)の各写真図は2.5秒間隔で撮影したものであり、大腸菌および二酸化ケイ素水和化合物の粉末を矢印で示し、大腸菌が観察された位置の軌跡を円で示す。
【図6】1mm体に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す図である。図中、右側の連続写真は約30秒の間に一定の間隔で撮影したものであり、楕円および矢印で大腸菌が観察された位置を示す。左側の拡大写真は、連続写真において左側の楕円で示す、1mm体に保持された大腸菌を拡大して撮影したものである。
【図7】1mm体に緑濃菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する緑濃菌の運動の様子を示す図である。図中、(I)から(IV)を付した各写真は2.5秒間隔で撮影したものであり、矢印で緑濃菌および1mm体を示し、楕円で緑濃菌が観察された位置を示す。
【図8】1mm体に黄色ブドウ球菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する黄色ブドウ球菌の運動の様子を示す図である。図中、(I)から(IV)を付した各写真は2.5秒間隔で撮影したものであり、矢印で黄色ブドウ球菌および1mm体を示し、円で黄色ブドウ球菌が観察された位置を示す。
【図9】1mm体にレンサ球菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在するレンサ球菌の運動の様子を示す図である。図中、(I)から(IV)を付した各写真は2.5秒間隔で撮影したものであり、矢印でレンサ球菌および1mm体を示し、楕円でレンサ球菌が観察された位置を示す。
【図10】1mm体を塗布した場合と塗布しない場合の、培養後の大腸菌のコロニーを示す図である。
【図11】含水率が0〜24重量%の1.38mm体からなる家畜用床敷材を、牛床用ゴムマット上に散布した時の状態を示す図である。図中、各写真の上部に、散布した家畜用床敷材が含む1.38mm体の含水率を示す。
【図12】1mm体と真珠岩2mm体とを混合してなる家畜用床敷材を散布して飼育した乳牛(処理群)および散布せずに飼育した乳牛(無処理群)のそれぞれの乳頭における、一般細菌、大腸菌、ウベリスおよびフェーカリスの生菌濃度を示す図である。
【図13】1mm体、1.38mm体、2mm体、3mm体および4mm体からなる家畜用床敷材を散布して飼育した乳牛(処理群)および散布せずに飼育した乳牛(無処理群)のそれぞれの乳頭における、一般細菌および大腸菌の生菌濃度を示す図である。図中、後列は無処理群の生菌濃度を100%とし、前列は処理群の生菌濃度を、無処理群の生菌濃度に対する割合(%)として、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る家畜用床敷材について詳細に説明する。本発明に係る家畜用床敷材の一の態様は、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材である。
【0019】
「家畜用床敷材」は、一般に、衛生的環境の維持や危険防止などを目的として、畜舎の床などに敷くものをいう。本発明に係る家畜用床敷材を散布する場所としては、例えば、家畜の飼育場所の床や地面を挙げることができ、より具体的には、牛舎の牛床や通路、出入り口、カウハッチ、馬小屋の床や出入り口、豚舎の豚房や通路、出入り口、鶏舎のケージや通路、出入り口などを挙げることができる。ここで、本発明における家畜としては、牛や豚、ウマ、ヤギ、羊、ウサギ、ロバ、ラバ、ラクダ、ラマ、アジアゾウ、アルパカ、トナカイ(カリブー)、ゼブウ(コブウシ)、スイギュウ、ヤク、ミンク、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、烏骨鶏、シチメンチョウ、チャボ、ウズラ、ダチョウ、バリケン、ドバト、キジ、ウミウなどの、動物の生産物(乳、肉、卵、毛、皮、毛皮、労働力など)を利用するために飼育するほ乳類や家禽のほか、ミツバチやカイコなどの昆虫、イヌやネコ、インコなどの愛玩動物(ペットや鑑賞用の動物)、マウス、ハムスター、ラット、モルモットなどの実験動物も含む。なお、本発明において「散布する」は「敷く」、「撒く」、「撒布する」、「まき散らす」、「拡散させる」、「ばらまく」、「振りまく」などと交換可能に用いられる場合がある。
【0020】
本発明における粒体や粉体の形状は、粒状や粉状(粉末状)であれば、不定形、球状、棒状、楕円状、球状、立方体や三角柱、四角錐などの多面体状、円柱状、円錐状など、どのような形状でもよい。
【0021】
本発明に係る家畜用床敷材の異なるもう一の態様は、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材である。
【0022】
本発明における「微生物」としては、大腸菌や黄色ブドウ球菌、緑濃菌、レンサ球菌などの細菌やカンジダ菌、アスペルギルス菌、クリプトコッカス菌、ムコール菌、白癬菌などの真菌のみならず、例えば、ウイルス、ウイロイド、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、スピロヘータ、原虫、蠕虫などを挙げることができる。
【0023】
本発明における稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体は、後述する実施例で示すように、微生物を保持しつつ増殖を抑制することができることから、本発明に係る「微生物の増殖を抑制する材」は、微生物を保持しつつ増殖を抑制する材であってもよい。ここで、前記「微生物を保持しつつ増殖を抑制する材」が微生物を保持する態様はどのようなものでもよく、例えば、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体によって微生物全体を覆うように取り囲んで保持してもよく、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体中や粉体中に存在する孔に微生物を嵌め込ませるようにして保持してもよく、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体に微生物の体の一部、例えば鞭毛や繊毛などをひっかけるようにして保持してもよい。この場合において、保持された微生物は、完全に運動ができない状態でもよく、ある程度運動ができる状態でもよい。
【0024】
なお、本発明において「増殖を抑制する」は、「増殖を阻害する」、「増殖を阻止する」、「増殖を予防する」と交換可能に用いられる場合がある。
【0025】
本発明における稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の大きさとしては、例えば、粒径1mm以下、1.38mm未満、1.38mm以下、2mm未満、2mm以下、3mm未満、3mm以下、4mm未満、4mm以下、5mm未満、5mm以下、7mm未満、7mm以下、1cm未満、1cm以下などを挙げることができるが、粒径4mm未満が好ましい。
【0026】
本発明における稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の含水率は、本発明に係る粒状および/または粉状の家畜用床敷材としての特徴を損なわない限り、特に限定されず、例えば、30重量%、29重量%、28重量%、27重量%、26重量%、25重量%、24重量%、23重量%、22重量%、21重量%、20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、15重量%、14重量%などを挙げることができるが、これらのうち22重量%未満が好ましい。なお、含水率とは、一般に、物質に含まれる水分の割合を百分率で示した数値をいう。含水率は、常法に従い測定することができ、簡便には、市販の水分計(含水率計)を用いて測定することができる。
【0027】
また、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の含水率は、稚内珪藻頁岩あるいは稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を、天日乾燥やヒーター、燃焼機などの機械を用いて乾燥させることにより、あるいは水分を補充することにより、適宜設定することができる。
【0028】
本発明に係る家畜用床敷材には、本発明に係る粒状および/または粉状の家畜用床敷材としての特徴を損なわない限り、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体、あるいは本発明に係る微生物の増殖を抑制する材以外のものが含まれてもよく、例えば、真珠岩、真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体、着色材、塗料、消臭材、抗菌材、緩衝材、防湿材、滑り止め資材、害虫に対する忌避資材などが含まれていてもよい。また、本発明に係る微生物の増殖を抑制する材にも、本発明に係る微生物の増殖を抑制する材の特徴を損なわない限り、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体以外のものが含まれてもよく、例えば、骨材や結合材、着色材、塗料、硬化材、接着材、害虫に対する忌避資材などが含まれていてもよい。
【0029】
本発明に係る家畜用床敷材に真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体を含む場合、その混合比としては、例えば、重量比で、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体:真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体=50:50〜99:1、55:45〜99:1、60:40〜99:1、65:35〜99:1、70:30〜99:1、75:25〜99:1、80:20〜99:1、85:15〜99:1、90:10〜99:1、95:5〜99:1などを挙げることができるが、70:30〜99:1が好ましい。なお、本発明における真珠岩は、「パーライト」、「発泡体」、「真珠石」と交換可能に用いられる場合がある。すなわち、本発明における真珠岩としては、例えば、真珠岩原石のほか、真珠岩系パーライト、松脂岩系パーライト、珪藻土系パーライト、黒曜石系パーライトなどを挙げることができる。
【0030】
以下、本発明に係る家畜用床敷材について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例】
【0031】
<実施例1>稚内珪藻頁岩の保持能の検討
(1)黄色ブドウ球菌に対する保持能
稚内珪藻頁岩を粉砕した後、1mmメッシュを用いて篩い分けることにより粒径1mm以下の稚内珪藻頁岩の粒体や粉体(以下、「1mm体」という。)を得た。この1mm体3gをリン酸生理食塩水(PBS)27mLに加えて懸濁することにより1mm体懸濁液を調製した。また、1mm体を加えていないPBS27mLをコントロール液とした。1mm体懸濁液およびコントロール液に黄色ブドウ球菌をそれぞれ終濃度105Colony forming unit(CFU)/mLとなるように加え、10分間転倒混和した後に15分間静置した。続いて、1000rpmで1秒間遠心分離を行うことにより1mm体を沈澱させて、上清を回収した。回収した上清について、血液寒天培地を用いて10倍段階希釈し、37℃、好気条件下で一晩培養した後、コロニーを数えることにより生菌濃度を計測した。その結果を図1に示す。
【0032】
図1に示すように、1mm体懸濁液の上清における生菌数は、コントロール液の上清における生菌数と比較して約1/67であり、顕著に少なかった。これらの結果から、1mm体は、黄色ブドウ球菌を保持することができることが明らかになった。
【0033】
(2)乳牛直腸便に存在する微生物に対する保持能
稚内珪藻頁岩を粉砕した後、1mmメッシュを用いて篩い分けることにより1mm体を得た。一方、篩上に残った、1mm体より大きい稚内珪藻頁岩の粉砕物について、さらに3mmメッシュを用いて篩い分けることにより、粒径が1mm以上、3mm以下の稚内珪藻頁岩の粒体や粉体(以下、「3mm体」という。)を得た。次に、乳牛2頭から直腸便を10gずつ採取し混合した。これを180mLのリン酸緩衝液に加えて混和し、便懸濁液を調製した。便懸濁液を0.5mLずつ計3つの容器に入れて、サンプルa、サンプルbおよびコントロールサンプルとした。サンプルaには1mm体を、サンプルbには3mm体を、それぞれ十分量加えて便懸濁液を吸収させた。コントロールサンプルには何も加えなかった。
【0034】
次に、サンプルaおよびサンプルbから、便懸濁液を吸収していない1mm体および3mm体を除去した後、サンプルa、サンプルbおよびコントロールサンプルにリン酸緩衝液を加えることにより終容量を30mLとした。続いて、1000rpmで1秒間遠心分離を行うことにより1mm体および3mm体を沈澱させて、上清を回収した。回収した上清について、さらに3000rpmで10分間遠心分離を行うことにより微生物を沈澱させて、沈殿物を回収した。回収した沈殿物に0.95mLのリン酸緩衝液を加えて懸濁することにより沈殿物懸濁液を調製した。続いて、沈殿物懸濁液を一定量採取し、リン酸緩衝液を加えることにより10倍希釈して、希釈液とした。希釈液100μLを5%トリプトソイ寒天培地に塗布して、37℃、好気条件下で一晩培養した後、コロニーを数えることにより生菌濃度を計測した。サンプルa、サンプルbおよびコントロールサンプルについて、それぞれ2検体ずつ同様の処理をして生菌濃度を計測し、平均値を算出した。その結果を図2に示す。
【0035】
図2に示すように、サンプルaおよびサンプルbでは、コントロールサンプルと比較して生菌濃度が顕著に小さかった。これらの結果から、1mm体や3mm体は、乳牛直腸便に存在する微生物を保持することができることが明らかになった。
【0036】
(3)大腸菌に対する保持能
[3−1]従来技術との比較
約0.5gの真珠岩の粉末、乾燥した1mm体および二酸化ケイ素水和化合物の粉末のそれぞれに、大腸菌をPBSに加えて生菌濃度約106CFU/mLに調製した大腸菌懸濁液50μLを滴下して吸収させた。大腸菌懸濁液を吸収させることにより黒ずんだ色となった箇所をそれぞれ微量ずつスライドグラスに取り、50μLのPBSを加えた後、100倍の対物レンズおよび10倍の接眼レンズを設置した顕微鏡を用いて大腸菌の運動の様子を1000倍の倍率で観察し、カメラを用いて撮影した。真珠岩については図3に、1mm体については図4に、二酸化ケイ素水和化合物については図5に、撮影した結果をそれぞれ示す。
【0037】
図3に示すように、真珠岩においては概ね大腸菌は保持されず、時間の経過とともに自由に運動する様子が観察された。また、図5に示すように、二酸化ケイ素水和化合物においても概ね大腸菌は保持されず、時間の経過とともに自由に運動する様子が観察された。これに対し、図4に示すように、1mm体においては、大腸菌は保持されて自由に運動できない様子が観察された。また、真珠岩および二酸化ケイ素水和化合物においては、大腸菌が保持されているように見える場合でも、その大腸菌が真珠岩および二酸化ケイ素水和化合物から離脱する様子が見られたが、1mm体においては、独立して5回観察を行ったものの、保持されていた大腸菌が1mm体から離脱する様子は見られなかった(データは図示しない)。
【0038】
[3−2]大腸菌が保持されている様子の詳細な観察
乾燥した1mm体について、本実施例1(3)[3−1]に記載の方法により顕微鏡観察を行った。ただし、加える50μLのPBSを微量の大腸菌懸濁液に、カメラを拡大撮影可能な機種に、それぞれ換えて行った。その結果を図6に示す。
【0039】
図6の拡大写真および連続写真における左側の楕円で示すように、1mm体に周囲を囲まれるようにして保持された大腸菌が観察された。なお、拡大写真において、大腸菌の周囲に見られる黒い部分が1mm体である。また、連続写真における右側の楕円で示すように、保持されていない大腸菌も観察された。保持された大腸菌は、1mm体に吸収させた大腸菌懸濁液に含まれていた大腸菌であり、時間が経過しても1mm体から離脱することなく、自由に運動できない様子が観察された。一方、保持されていない大腸菌は、1mm体に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所をスライドグラスに取った後に添加した、微量の大腸菌懸濁液に含まれていた大腸菌であり、時間の経過とともに自由に運動する様子が観察された。
【0040】
これらの結果から、1mm体は、真珠岩の粉末や二酸化ケイ素水和化合物の粉末と比較して、より強力に大腸菌を保持することが明らかになった。
【0041】
(4)各種の微生物に対する保持能
乾燥した1mm体について、本実施例1(3)[3−1]に記載の方法により顕微鏡観察を行った。ただし、大腸菌を緑濃菌、黄色ブドウ球菌およびレンサ球菌に換えて行った。緑濃菌については図7に、黄色ブドウ球菌については図8に、レンサ球菌については図9に、観察した結果をそれぞれ示す。
【0042】
図7に示すように、緑濃菌が1mm体に保持されて、自由に運動できない様子が観察された。時間の経過とともに保持された緑濃菌は上方へ移動したが、1mm体からの離脱は見られなかった。また、図8に示すように、2個の黄色ブドウ球菌が1個の1mm体に保持されて、自由に運動できない様子が観察された。時間の経過とともに保持された黄色ブドウ球菌が多少変形する様子が見られたが、1mm体からの離脱は見られなかった。さらに、図9に示すように、レンサ球菌が1mm体に保持されて、自由に運動できない様子が観察された。時間の経過とともに保持されたレンサ球菌が回転して形状が変化する様子が見られたが、1mm体からの離脱は見られなかった。
【0043】
これらの結果から、1mm体は、大腸菌のみならず、緑濃菌、黄色ブドウ球菌およびレンサ球菌も強力に保持することが明らかになった。すなわち、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体は、微生物を強力に保持することが明らかになった。
【0044】
<実施例2>稚内珪藻頁岩の微生物増殖抑制能の検討
シャーレに作成した寒天培地の全面に大腸菌懸濁液を塗布した後、30mgの1mm体を寒天培地の下半分の面に散布してコンラージ棒で均一になるよう塗り伸ばし、37℃、好気条件下で培養した。培養開始から14時間後および26時間後にコロニーを観察し、26時間後においては図10に示す拡大部分についてコロニーを数えた。その結果を図10に示す。
【0045】
図10に示すように、14時間後では、1mm体を塗布していない部分(以下、「非塗布部」という。)においてコロニーの形成が確認されたが、1mm体を塗布した部分(以下、「塗布部」という。)においてはコロニーの形成が明確には確認されなかった。26時間後では、非塗布部および塗布部のいずれにおいてもコロニーの形成が確認されたが、塗布部は、非塗布部と比較してコロニーの数が少なかった。また、塗布部におけるコロニー1個当たりの直径は、非塗布部と比較しておよそ半分であり、面積は、非塗布部と比較しておよそ1/4であった。なお、塗布部に見られる顕著に大きいコロニーは、写真撮影操作などでシャーレの蓋を開け閉めした際に落下した水滴によるものである。
【0046】
これらの結果から、1mm体は大腸菌の増殖を抑制することが明らかになった。すなわち、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体は、微生物の増殖を抑制することが示された。
【0047】
<実施例3>家畜用床敷材の製造および効果の確認
(1)家畜用床敷材の製造
[1−1]真珠岩を混合してなる家畜用床敷材の製造
1mm体と真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体(以下、「真珠岩2mm体」という。)とを、重量%が1mm体:真珠岩2mm体=70:30、90:10および99:1となるよう混合することにより家畜用床敷材を製造し、それぞれ70%材、90%材および99%材とした。また、真珠岩2mm体を混合せず、1mm体のみからなる家畜用床敷材を用意し、これを100%材とした。なお、70%材、90%材、99%材および100%材に用いた1mm体の含水率を、加熱乾燥式水分計(MX50;エー・アンド・ディ社)を用いて測定したところ、およそ23〜25重量%であった。
【0048】
70%材、90%材、99%材および100%材の触感を握るなどして確認したところ、70%材、90%材および99%材はいずれもさらさらとした触感であり、握った際の形状は維持されずに崩れ落ちる状態であったのに対し、100%材は粘りを有するため、ボロボロとしつつ握った際の形状が塊として残る状態であった。また、70%材、90%材、99%材および100%材を酪農場の牛床にスコップを用いて散布したところ、70%材、90%材および99%材はいずれも適度に拡散し、牛床全体を薄膜状の家畜用床敷材で被うことができたのに対し、100%材はまんべんなく拡散せず、牛床に塊状の家畜用床敷材がばらまかれた状態となった。一方、100%材は、噴霧器を用いて散布したところ、まんべんなく拡散させることができた。
【0049】
これらの結果から、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体と真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体とを混合することにより、散布などの取り扱いが容易で、実用性や利便性に優れる家畜用床敷材を得ることができることが明らかになった。
【0050】
[1−2]稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体からなる家畜用床敷材の製造
北海道稚内地方にて稚内珪藻頁岩を採取した後、天日乾燥させた。これを粉砕した後、1.38、2および4mmメッシュを用いて篩い分けることにより、粒径が1.38、2および4mm以下の稚内珪藻頁岩の粒体や粉体(以下、「1.38mm体」、「2mm体」および「4mm体」という。)を得た。これらのうち、加熱乾燥式水分計(MX50;エー・アンド・ディ社)を用いて1.38mm体の含水率を測定したところ、25重量%であった。続いて、100℃に設定したロータリーキルン式燃焼機に1.38mm体を投入して3分間滞留させることにより、乾燥処理を行った。この乾燥処理を、0回(すなわち自然乾燥)、1回、1.5回、2回、2.5回、3回、6回、10回、20回行うことにより、含水率が0〜24重量%の1.38mm体からなる家畜用床敷材を製造した。
【0051】
続いて、製造した家畜用床敷材について、拡散テスト、粉塵テストおよび握りテストを行った。拡散テストは、牛床用ゴムマット上にスコップを用いて家畜用床敷材を散布した時の拡散の状態を、粉塵テストは、同様に散布した時の粉塵の量および舞い散る範囲を、握りテストは、家畜用床敷材を手で握った時およびその手を開いた時の状態を、それぞれ観察して、表2に示す基準により評点をつけた。各家畜用床敷材を散布した時の拡散の状態を図11に、評点を表1に、それぞれ示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1および図11に示すように、1.38mm体の含水率が22および24重量%の場合、粉塵テストの評点は高く、拡散テストおよび握りテストの評点は低いのに対して、0〜21重量%の場合、粉塵テストの評点は比較的低いものの、拡散テストおよび握りテストの評点は高かった。すなわち、1.38mm体の含水率が0〜21重量%の場合、家畜用床敷材は塊状になりにくく、まんべんなく拡散させることができることが明らかになった。これらの結果から、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなり、散布などの取り扱いが容易で、かつ実用性や利便性に優れる粒状や粉状の家畜用床敷材を得ることができることが示された。また、当該家畜用床敷材において、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の含水率が22重量%未満である場合、散布などの取り扱いがより容易となることが示された。
【0055】
(2)家畜用床敷材の効果の確認
[2−1]真珠岩を混合してなる家畜用床敷材の効果の確認
北海道豊富町の3戸の酪農場(酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cとする)において、それぞれ乳牛30頭からなる処理群と無処理群とを設定した。処理群が飼育されている牛床には、本実施例3(1)[1−1]の90%材70kgを、3日の間に適宜分割して散布した。無処理群が飼育されている牛床には何も散布しなかった。3日間飼育した後、処理群および無処理群からそれぞれ10頭ずつ無作為に選定し、乳頭表面を、予め緩衝液で浸潤させた綿棒を用いて拭き取ることによって菌を採取した。菌を採取した綿棒は速やかに冷蔵保存して運搬した後、常法に従ってコロニーカウント法を行うことにより、一般細菌、大腸菌、ならびに環境性乳房炎起因菌であるウベリスおよびフェーカリスについて生菌濃度を計測し、平均値を算出した。また、菌が検出された頭数について、10頭すべてで検出された場合を100%として検出率を求めた。その結果を図12に示す。
【0056】
図12に示すように、一般細菌の生菌濃度の平均値は、酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cのいずれにおいても、処理群は無処理群と比較して小さく、特に、酪農場Cにおいては顕著に小さかった。また、大腸菌の生菌濃度の平均値については、酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cのいずれにおいても処理群は無処理群と比較して小さく、特に、酪農場Aおよび酪農場Cにおいては顕著に小さかった。また、ウベリスの生菌濃度の平均値については、酪農場Aにおける処理群は無処理群と比較して顕著に小さかった。さらに、フェーカリスの生菌濃度の平均値については、酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cのいずれにおいても、処理群は無処理群と比較して小さく、特に、酪農場Cにおいては、顕著に小さかった。
【0057】
これらの結果を総合すると、処理群の乳牛の乳頭では、無処理群と比較して、大腸菌、一般細菌、ウベリスおよびフェーカリスのいずれについても、生菌濃度の平均値が小さいことが明らかになった。すなわち、90%材を散布して飼育すると、家畜に付着する微生物の数を抑制することができることが示されたことから、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体と真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体とを混合してなる家畜用床敷材は、畜舎における微生物の数を抑制することができることが示された。
【0058】
[2−2]稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体からなる家畜用床敷材の効果の確認
北海道長沼町および由仁町の5戸の酪農場(酪農場D、酪農場E、酪農場F、酪農場Gおよび酪農場Hとする)において、それぞれ乳牛5頭からなる処理群と無処理群とを設定し、本実施例3(2)[2−1]に記載の方法により、一般細菌および大腸菌の生菌濃度を測定した。ただし、処理群の牛床に散布する家畜用床敷材は、酪農場D、酪農場E、酪農場F、酪農場Gおよび酪農場Hについて、それぞれ、含水率が18%の1mm体、1.38mm体、2mm体、3mm体および4mm体からなる家畜用床敷材とした。また、散布量は1頭につき500g/日とし、生菌濃度の測定は全頭(乳頭4本/頭)について行った。続いて、測定結果について、酪農場毎に、処理群の生菌濃度の平均値を、無処理群の生菌濃度の平均値に対する百分率で表し、これを生菌濃度割合とした。その結果を図13に示す。
【0059】
図13に示すように、処理群の一般細菌の生菌濃度割合は、酪農場D〜Hのいずれにおいても、100%より小さかった。すなわち、1mm体、1.38mm体、2mm体、3mm体および4mm体からなる家畜用床敷材 を散布して飼育すると、家畜に付着する一般細菌の数を抑制することができることが明らかになった。また、処理群の大腸菌の生菌濃度割合は、酪農場D〜Gにおいて100%より小さく、酪農場Hにおいて100%より大きかった。すなわち、1mm体、1.38mm体、2mm体および3mm体からなる家畜用床敷材を散布して飼育すると、家畜に付着する大腸菌の数を抑制することができることが明らかになった。これらの結果から、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材は、畜舎における微生物の数を抑制することができることが示された。また、当該家畜用床敷材において、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の粒径が4mm未満である場合、微生物の数をより効果的に抑制することができることが示された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用床敷材に関し、詳細には、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材、ならびに稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材に関する。
【背景技術】
【0002】
稚内珪藻頁岩(稚内珪藻土)は、北海道稚内地方の宗谷・天北地域で産出するページ(頁)状岩石であり、海洋性単細胞生物である珪藻プランクトンの死骸が堆積してできた珪藻土が地上に隆起するときに、地圧と地熱による地質的変成を受けて岩石化した非晶質珪酸鉱物である。一般的な珪藻土と比較して細孔の容量が多く、優れた調湿機能や消臭機能を有する(非特許文献1)ほか、除菌能を有することが報告されている(非特許文献2)。また、特許文献1には、内装材として十分な強度を有した、粒径が0.7mm以下の稚内産珪藻土を含む植物繊維ボード(特許文献1)が、特許文献2には、調湿性やガス吸着性に富み、様々な硬さ、柔軟性、風合いを実現可能な、粒径が0.4〜1.5mm程度の稚内層珪藻土を含有する機能性不織布(特許文献2)が、特許文献3には、室内における調湿機能、消臭機能を発揮する、平均粒子径が0.001〜1mmの稚内珪藻土を含有する壁材(特許文献3)が、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23307号公報
【特許文献2】特開2009−7826号公報
【特許文献3】特開2006−291509号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ナトゥア・ジャパン株式会社、”珪藻土革命:藻々太郎”、[online]、[平成23年8月25日検索]、インターネット〈URL:http://natur−j.jp/grah.html〉
【非特許文献2】渡辺ら、寒地技術論文・報告集、第20巻、第380−385頁、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体が、微生物の増殖を抑制することはこれまで知られていなかった。これに対し、特許文献1に記載の植物繊維ボードや特許文献2に記載の機能性不織布は、粒状や粉状ではないうえ、稚内産珪藻土が2枚の植物繊維マットあるいは不織布に挟まれる形で埋没しており、埋没した稚内産珪藻土は微生物の増殖を抑制するという作用・効果を果たし得ない。また、特許文献3に記載の壁材もまた、粒状や粉状でないうえ、乾燥珪藻土が漆喰を主成分とする固化材に混練される形で埋没しており、特許文献1に記載の植物繊維ボードや特許文献2に記載の不織布の場合と同様、埋没した乾燥珪藻土は微生物の増殖を抑制するという作用・効果を果たし得ない。
【0006】
また、非特許文献1に記載の調湿機能は、高湿度下では吸湿し、かつ低湿度下では放湿する機能、同文献に記載の消臭機能はアンモニアを吸着する機能にそれぞれ基づくものであり、本発明における微生物の増殖を抑制する機能とは全く異なるものである。
【0007】
さらに、非特許文献2には、「滅菌作用により除去する(第385頁第一段落)」との記載があり、表10に示されるように、特に、珪藻頁岩粒および珪藻頁岩粉を用いて懸濁液を採取した場合の保温2時間までにおける大腸菌AHU1714の除菌効果に両者で差がないのに対し、珪藻頁岩粉を用いた懸濁液を採取した場合の保温2時間から保温4時間における大腸菌AHU1714の除菌率が高まったとしているが、珪藻頁岩粒を用いた懸濁液を採取した場合の保温2時間から保温4時間における大腸菌AHU1714の除菌率にほぼ差がないこと、珪藻頁岩を含まない20℃の生理食塩水中の、保温2時間から保温4時間における大腸菌AHU1714についてのデータ(コントロールデータ)がないこと、大腸菌AHU1714のような継代培養された菌は、そもそも20℃のような常温では自然死しやすく、生理食塩水のように栄養源のない液中では増殖もなく自然減があること、「微生物吸着」については裏付けとなるデータを取るのが極めて困難であるが、非特許文献2では何ら示されておらず、単なる推測や想像に過ぎないことなどから、非特許文献2に基づいて稚内珪藻頁岩の「微生物吸着能」、「除菌能」、「滅菌効果」をいうことはできず、従って非特許文献2における稚内珪藻土の「微生物吸着能」、「除菌能」、「滅菌効果」に係る発明は未完成であったといえ、非特許文献2は引例適格性に欠けるといえる。さらに、本明細書実施例から明らかなように、本願発明は、「保持しつつ増殖を抑制する」のであり、微生物が本発明に係る微生物増殖抑制材に保持された後に自然死することはあっても、本発明に係る微生物増殖抑制材自体が「滅菌作用」を有するものではなく、やはり本発明における微生物の増殖を抑制する機能とは全く異なるものである。
【0008】
一方、畜舎の床は、家畜の糞尿などにより不衛生な環境となり易く、感染性微生物が増殖して家畜の疾病を引き起こすことが問題となっているため、微生物の増殖を抑制することができる床敷材の開発が望まれているが、家畜用の床敷材は大量かつ長期的に使用されるものであるため、安価、安全であるうえに、微生物の増殖抑制について長期的に高い効果を持続する家畜用床敷材はこれまでになかった。
【0009】
本発明は、これらのような課題を解決するためになされたものであって、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材および稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体が、微生物を保持しつつその増殖を抑制すること、および稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分とすることにより、大量かつ長期的に使用することができ、散布などの取り扱いが容易で、安価、安全であるうえに、畜舎における微生物の増殖抑制について長期的に高い効果を持続する、粒状や粉状の家畜用床敷材を得ることができることを見出し、下記の各発明を完成した。
【0011】
(1)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【0012】
(2)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【0013】
(3)微生物の増殖を抑制する材が、微生物を保持しつつ増殖を抑制する材である、(2)に記載の家畜用床敷材。
【0014】
(4)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒径4mm未満の粒体および/または粉体である、(1)から(3)のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【0015】
(5)稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる含水率が22重量%未満の粒体および/または粉体である、(1)から(4)のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る家畜用床敷材によれば、微生物の増殖を抑制することができることから、家畜の飼育場所において、増殖した微生物を起因とする種々の不都合な事象、例えば家畜や作業員の体調不良や感染症などの疾病、悪臭、腐敗、汚れなどの発生を予防することができる。また、本発明に係る家畜用床敷材によれば、微生物のみならず、昆虫、クモ綱、多足類、甲殻類などのいわゆる虫に対する忌避材としても有効である。また、本発明に係る家畜用床敷材によれば、稚内珪藻頁岩は家畜や作業者にとって安全であることから、大量かつ長期的に使用することができ、散布などの取り扱いが容易で、安価、安全であるうえに、畜舎における微生物の増殖抑制効果、あるいは微生物、虫に対する忌避効果を長期的に持続することができる。また、本発明に係る家畜用床敷材は、散布することにより家畜や作業者のスリップによる転倒を防止し、安全な環境をつくることができる。さらに、従来知られているように、稚内珪藻頁岩は調湿機能や消臭機能を有することから、湿気や悪臭の低減にも貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1mm体懸濁液および1mm体を懸濁していないコントロール液のそれぞれの上清中の生菌濃度を示す図である。
【図2】乳牛直腸便の便懸濁液を吸収させた1mm体(サンプルa)および3mm体(サンプルb)、ならびに1mm体および3mm体のいずれにも吸収させていない便懸濁液(コントロールサンプル)のそれぞれにおける生菌濃度を示す図である。
【図3】真珠岩の粉末に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す写真図である。図中、(I)から(IV)の各写真図は2.5秒間隔で撮影したものであり、大腸菌を矢印で示し、大腸菌が観察された位置の軌跡を楕円で示す。
【図4】1mm体に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す写真図である。図中、(I)から(IV)の各写真図は2.5秒間隔で撮影したものであり、大腸菌および1mm体を矢印で示し、大腸菌が観察された位置を円で示す。
【図5】二酸化ケイ素水和化合物の粉末に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す写真図である。図中、(I)から(IV)の各写真図は2.5秒間隔で撮影したものであり、大腸菌および二酸化ケイ素水和化合物の粉末を矢印で示し、大腸菌が観察された位置の軌跡を円で示す。
【図6】1mm体に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する大腸菌の運動の様子を示す図である。図中、右側の連続写真は約30秒の間に一定の間隔で撮影したものであり、楕円および矢印で大腸菌が観察された位置を示す。左側の拡大写真は、連続写真において左側の楕円で示す、1mm体に保持された大腸菌を拡大して撮影したものである。
【図7】1mm体に緑濃菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する緑濃菌の運動の様子を示す図である。図中、(I)から(IV)を付した各写真は2.5秒間隔で撮影したものであり、矢印で緑濃菌および1mm体を示し、楕円で緑濃菌が観察された位置を示す。
【図8】1mm体に黄色ブドウ球菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在する黄色ブドウ球菌の運動の様子を示す図である。図中、(I)から(IV)を付した各写真は2.5秒間隔で撮影したものであり、矢印で黄色ブドウ球菌および1mm体を示し、円で黄色ブドウ球菌が観察された位置を示す。
【図9】1mm体にレンサ球菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所に存在するレンサ球菌の運動の様子を示す図である。図中、(I)から(IV)を付した各写真は2.5秒間隔で撮影したものであり、矢印でレンサ球菌および1mm体を示し、楕円でレンサ球菌が観察された位置を示す。
【図10】1mm体を塗布した場合と塗布しない場合の、培養後の大腸菌のコロニーを示す図である。
【図11】含水率が0〜24重量%の1.38mm体からなる家畜用床敷材を、牛床用ゴムマット上に散布した時の状態を示す図である。図中、各写真の上部に、散布した家畜用床敷材が含む1.38mm体の含水率を示す。
【図12】1mm体と真珠岩2mm体とを混合してなる家畜用床敷材を散布して飼育した乳牛(処理群)および散布せずに飼育した乳牛(無処理群)のそれぞれの乳頭における、一般細菌、大腸菌、ウベリスおよびフェーカリスの生菌濃度を示す図である。
【図13】1mm体、1.38mm体、2mm体、3mm体および4mm体からなる家畜用床敷材を散布して飼育した乳牛(処理群)および散布せずに飼育した乳牛(無処理群)のそれぞれの乳頭における、一般細菌および大腸菌の生菌濃度を示す図である。図中、後列は無処理群の生菌濃度を100%とし、前列は処理群の生菌濃度を、無処理群の生菌濃度に対する割合(%)として、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る家畜用床敷材について詳細に説明する。本発明に係る家畜用床敷材の一の態様は、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材である。
【0019】
「家畜用床敷材」は、一般に、衛生的環境の維持や危険防止などを目的として、畜舎の床などに敷くものをいう。本発明に係る家畜用床敷材を散布する場所としては、例えば、家畜の飼育場所の床や地面を挙げることができ、より具体的には、牛舎の牛床や通路、出入り口、カウハッチ、馬小屋の床や出入り口、豚舎の豚房や通路、出入り口、鶏舎のケージや通路、出入り口などを挙げることができる。ここで、本発明における家畜としては、牛や豚、ウマ、ヤギ、羊、ウサギ、ロバ、ラバ、ラクダ、ラマ、アジアゾウ、アルパカ、トナカイ(カリブー)、ゼブウ(コブウシ)、スイギュウ、ヤク、ミンク、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、烏骨鶏、シチメンチョウ、チャボ、ウズラ、ダチョウ、バリケン、ドバト、キジ、ウミウなどの、動物の生産物(乳、肉、卵、毛、皮、毛皮、労働力など)を利用するために飼育するほ乳類や家禽のほか、ミツバチやカイコなどの昆虫、イヌやネコ、インコなどの愛玩動物(ペットや鑑賞用の動物)、マウス、ハムスター、ラット、モルモットなどの実験動物も含む。なお、本発明において「散布する」は「敷く」、「撒く」、「撒布する」、「まき散らす」、「拡散させる」、「ばらまく」、「振りまく」などと交換可能に用いられる場合がある。
【0020】
本発明における粒体や粉体の形状は、粒状や粉状(粉末状)であれば、不定形、球状、棒状、楕円状、球状、立方体や三角柱、四角錐などの多面体状、円柱状、円錐状など、どのような形状でもよい。
【0021】
本発明に係る家畜用床敷材の異なるもう一の態様は、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材である。
【0022】
本発明における「微生物」としては、大腸菌や黄色ブドウ球菌、緑濃菌、レンサ球菌などの細菌やカンジダ菌、アスペルギルス菌、クリプトコッカス菌、ムコール菌、白癬菌などの真菌のみならず、例えば、ウイルス、ウイロイド、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、スピロヘータ、原虫、蠕虫などを挙げることができる。
【0023】
本発明における稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体は、後述する実施例で示すように、微生物を保持しつつ増殖を抑制することができることから、本発明に係る「微生物の増殖を抑制する材」は、微生物を保持しつつ増殖を抑制する材であってもよい。ここで、前記「微生物を保持しつつ増殖を抑制する材」が微生物を保持する態様はどのようなものでもよく、例えば、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体によって微生物全体を覆うように取り囲んで保持してもよく、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体中や粉体中に存在する孔に微生物を嵌め込ませるようにして保持してもよく、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体に微生物の体の一部、例えば鞭毛や繊毛などをひっかけるようにして保持してもよい。この場合において、保持された微生物は、完全に運動ができない状態でもよく、ある程度運動ができる状態でもよい。
【0024】
なお、本発明において「増殖を抑制する」は、「増殖を阻害する」、「増殖を阻止する」、「増殖を予防する」と交換可能に用いられる場合がある。
【0025】
本発明における稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の大きさとしては、例えば、粒径1mm以下、1.38mm未満、1.38mm以下、2mm未満、2mm以下、3mm未満、3mm以下、4mm未満、4mm以下、5mm未満、5mm以下、7mm未満、7mm以下、1cm未満、1cm以下などを挙げることができるが、粒径4mm未満が好ましい。
【0026】
本発明における稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の含水率は、本発明に係る粒状および/または粉状の家畜用床敷材としての特徴を損なわない限り、特に限定されず、例えば、30重量%、29重量%、28重量%、27重量%、26重量%、25重量%、24重量%、23重量%、22重量%、21重量%、20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、15重量%、14重量%などを挙げることができるが、これらのうち22重量%未満が好ましい。なお、含水率とは、一般に、物質に含まれる水分の割合を百分率で示した数値をいう。含水率は、常法に従い測定することができ、簡便には、市販の水分計(含水率計)を用いて測定することができる。
【0027】
また、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の含水率は、稚内珪藻頁岩あるいは稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を、天日乾燥やヒーター、燃焼機などの機械を用いて乾燥させることにより、あるいは水分を補充することにより、適宜設定することができる。
【0028】
本発明に係る家畜用床敷材には、本発明に係る粒状および/または粉状の家畜用床敷材としての特徴を損なわない限り、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体、あるいは本発明に係る微生物の増殖を抑制する材以外のものが含まれてもよく、例えば、真珠岩、真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体、着色材、塗料、消臭材、抗菌材、緩衝材、防湿材、滑り止め資材、害虫に対する忌避資材などが含まれていてもよい。また、本発明に係る微生物の増殖を抑制する材にも、本発明に係る微生物の増殖を抑制する材の特徴を損なわない限り、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体以外のものが含まれてもよく、例えば、骨材や結合材、着色材、塗料、硬化材、接着材、害虫に対する忌避資材などが含まれていてもよい。
【0029】
本発明に係る家畜用床敷材に真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体を含む場合、その混合比としては、例えば、重量比で、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体:真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体=50:50〜99:1、55:45〜99:1、60:40〜99:1、65:35〜99:1、70:30〜99:1、75:25〜99:1、80:20〜99:1、85:15〜99:1、90:10〜99:1、95:5〜99:1などを挙げることができるが、70:30〜99:1が好ましい。なお、本発明における真珠岩は、「パーライト」、「発泡体」、「真珠石」と交換可能に用いられる場合がある。すなわち、本発明における真珠岩としては、例えば、真珠岩原石のほか、真珠岩系パーライト、松脂岩系パーライト、珪藻土系パーライト、黒曜石系パーライトなどを挙げることができる。
【0030】
以下、本発明に係る家畜用床敷材について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例】
【0031】
<実施例1>稚内珪藻頁岩の保持能の検討
(1)黄色ブドウ球菌に対する保持能
稚内珪藻頁岩を粉砕した後、1mmメッシュを用いて篩い分けることにより粒径1mm以下の稚内珪藻頁岩の粒体や粉体(以下、「1mm体」という。)を得た。この1mm体3gをリン酸生理食塩水(PBS)27mLに加えて懸濁することにより1mm体懸濁液を調製した。また、1mm体を加えていないPBS27mLをコントロール液とした。1mm体懸濁液およびコントロール液に黄色ブドウ球菌をそれぞれ終濃度105Colony forming unit(CFU)/mLとなるように加え、10分間転倒混和した後に15分間静置した。続いて、1000rpmで1秒間遠心分離を行うことにより1mm体を沈澱させて、上清を回収した。回収した上清について、血液寒天培地を用いて10倍段階希釈し、37℃、好気条件下で一晩培養した後、コロニーを数えることにより生菌濃度を計測した。その結果を図1に示す。
【0032】
図1に示すように、1mm体懸濁液の上清における生菌数は、コントロール液の上清における生菌数と比較して約1/67であり、顕著に少なかった。これらの結果から、1mm体は、黄色ブドウ球菌を保持することができることが明らかになった。
【0033】
(2)乳牛直腸便に存在する微生物に対する保持能
稚内珪藻頁岩を粉砕した後、1mmメッシュを用いて篩い分けることにより1mm体を得た。一方、篩上に残った、1mm体より大きい稚内珪藻頁岩の粉砕物について、さらに3mmメッシュを用いて篩い分けることにより、粒径が1mm以上、3mm以下の稚内珪藻頁岩の粒体や粉体(以下、「3mm体」という。)を得た。次に、乳牛2頭から直腸便を10gずつ採取し混合した。これを180mLのリン酸緩衝液に加えて混和し、便懸濁液を調製した。便懸濁液を0.5mLずつ計3つの容器に入れて、サンプルa、サンプルbおよびコントロールサンプルとした。サンプルaには1mm体を、サンプルbには3mm体を、それぞれ十分量加えて便懸濁液を吸収させた。コントロールサンプルには何も加えなかった。
【0034】
次に、サンプルaおよびサンプルbから、便懸濁液を吸収していない1mm体および3mm体を除去した後、サンプルa、サンプルbおよびコントロールサンプルにリン酸緩衝液を加えることにより終容量を30mLとした。続いて、1000rpmで1秒間遠心分離を行うことにより1mm体および3mm体を沈澱させて、上清を回収した。回収した上清について、さらに3000rpmで10分間遠心分離を行うことにより微生物を沈澱させて、沈殿物を回収した。回収した沈殿物に0.95mLのリン酸緩衝液を加えて懸濁することにより沈殿物懸濁液を調製した。続いて、沈殿物懸濁液を一定量採取し、リン酸緩衝液を加えることにより10倍希釈して、希釈液とした。希釈液100μLを5%トリプトソイ寒天培地に塗布して、37℃、好気条件下で一晩培養した後、コロニーを数えることにより生菌濃度を計測した。サンプルa、サンプルbおよびコントロールサンプルについて、それぞれ2検体ずつ同様の処理をして生菌濃度を計測し、平均値を算出した。その結果を図2に示す。
【0035】
図2に示すように、サンプルaおよびサンプルbでは、コントロールサンプルと比較して生菌濃度が顕著に小さかった。これらの結果から、1mm体や3mm体は、乳牛直腸便に存在する微生物を保持することができることが明らかになった。
【0036】
(3)大腸菌に対する保持能
[3−1]従来技術との比較
約0.5gの真珠岩の粉末、乾燥した1mm体および二酸化ケイ素水和化合物の粉末のそれぞれに、大腸菌をPBSに加えて生菌濃度約106CFU/mLに調製した大腸菌懸濁液50μLを滴下して吸収させた。大腸菌懸濁液を吸収させることにより黒ずんだ色となった箇所をそれぞれ微量ずつスライドグラスに取り、50μLのPBSを加えた後、100倍の対物レンズおよび10倍の接眼レンズを設置した顕微鏡を用いて大腸菌の運動の様子を1000倍の倍率で観察し、カメラを用いて撮影した。真珠岩については図3に、1mm体については図4に、二酸化ケイ素水和化合物については図5に、撮影した結果をそれぞれ示す。
【0037】
図3に示すように、真珠岩においては概ね大腸菌は保持されず、時間の経過とともに自由に運動する様子が観察された。また、図5に示すように、二酸化ケイ素水和化合物においても概ね大腸菌は保持されず、時間の経過とともに自由に運動する様子が観察された。これに対し、図4に示すように、1mm体においては、大腸菌は保持されて自由に運動できない様子が観察された。また、真珠岩および二酸化ケイ素水和化合物においては、大腸菌が保持されているように見える場合でも、その大腸菌が真珠岩および二酸化ケイ素水和化合物から離脱する様子が見られたが、1mm体においては、独立して5回観察を行ったものの、保持されていた大腸菌が1mm体から離脱する様子は見られなかった(データは図示しない)。
【0038】
[3−2]大腸菌が保持されている様子の詳細な観察
乾燥した1mm体について、本実施例1(3)[3−1]に記載の方法により顕微鏡観察を行った。ただし、加える50μLのPBSを微量の大腸菌懸濁液に、カメラを拡大撮影可能な機種に、それぞれ換えて行った。その結果を図6に示す。
【0039】
図6の拡大写真および連続写真における左側の楕円で示すように、1mm体に周囲を囲まれるようにして保持された大腸菌が観察された。なお、拡大写真において、大腸菌の周囲に見られる黒い部分が1mm体である。また、連続写真における右側の楕円で示すように、保持されていない大腸菌も観察された。保持された大腸菌は、1mm体に吸収させた大腸菌懸濁液に含まれていた大腸菌であり、時間が経過しても1mm体から離脱することなく、自由に運動できない様子が観察された。一方、保持されていない大腸菌は、1mm体に大腸菌懸濁液を吸収させ、その吸収させた箇所をスライドグラスに取った後に添加した、微量の大腸菌懸濁液に含まれていた大腸菌であり、時間の経過とともに自由に運動する様子が観察された。
【0040】
これらの結果から、1mm体は、真珠岩の粉末や二酸化ケイ素水和化合物の粉末と比較して、より強力に大腸菌を保持することが明らかになった。
【0041】
(4)各種の微生物に対する保持能
乾燥した1mm体について、本実施例1(3)[3−1]に記載の方法により顕微鏡観察を行った。ただし、大腸菌を緑濃菌、黄色ブドウ球菌およびレンサ球菌に換えて行った。緑濃菌については図7に、黄色ブドウ球菌については図8に、レンサ球菌については図9に、観察した結果をそれぞれ示す。
【0042】
図7に示すように、緑濃菌が1mm体に保持されて、自由に運動できない様子が観察された。時間の経過とともに保持された緑濃菌は上方へ移動したが、1mm体からの離脱は見られなかった。また、図8に示すように、2個の黄色ブドウ球菌が1個の1mm体に保持されて、自由に運動できない様子が観察された。時間の経過とともに保持された黄色ブドウ球菌が多少変形する様子が見られたが、1mm体からの離脱は見られなかった。さらに、図9に示すように、レンサ球菌が1mm体に保持されて、自由に運動できない様子が観察された。時間の経過とともに保持されたレンサ球菌が回転して形状が変化する様子が見られたが、1mm体からの離脱は見られなかった。
【0043】
これらの結果から、1mm体は、大腸菌のみならず、緑濃菌、黄色ブドウ球菌およびレンサ球菌も強力に保持することが明らかになった。すなわち、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体は、微生物を強力に保持することが明らかになった。
【0044】
<実施例2>稚内珪藻頁岩の微生物増殖抑制能の検討
シャーレに作成した寒天培地の全面に大腸菌懸濁液を塗布した後、30mgの1mm体を寒天培地の下半分の面に散布してコンラージ棒で均一になるよう塗り伸ばし、37℃、好気条件下で培養した。培養開始から14時間後および26時間後にコロニーを観察し、26時間後においては図10に示す拡大部分についてコロニーを数えた。その結果を図10に示す。
【0045】
図10に示すように、14時間後では、1mm体を塗布していない部分(以下、「非塗布部」という。)においてコロニーの形成が確認されたが、1mm体を塗布した部分(以下、「塗布部」という。)においてはコロニーの形成が明確には確認されなかった。26時間後では、非塗布部および塗布部のいずれにおいてもコロニーの形成が確認されたが、塗布部は、非塗布部と比較してコロニーの数が少なかった。また、塗布部におけるコロニー1個当たりの直径は、非塗布部と比較しておよそ半分であり、面積は、非塗布部と比較しておよそ1/4であった。なお、塗布部に見られる顕著に大きいコロニーは、写真撮影操作などでシャーレの蓋を開け閉めした際に落下した水滴によるものである。
【0046】
これらの結果から、1mm体は大腸菌の増殖を抑制することが明らかになった。すなわち、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体は、微生物の増殖を抑制することが示された。
【0047】
<実施例3>家畜用床敷材の製造および効果の確認
(1)家畜用床敷材の製造
[1−1]真珠岩を混合してなる家畜用床敷材の製造
1mm体と真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体(以下、「真珠岩2mm体」という。)とを、重量%が1mm体:真珠岩2mm体=70:30、90:10および99:1となるよう混合することにより家畜用床敷材を製造し、それぞれ70%材、90%材および99%材とした。また、真珠岩2mm体を混合せず、1mm体のみからなる家畜用床敷材を用意し、これを100%材とした。なお、70%材、90%材、99%材および100%材に用いた1mm体の含水率を、加熱乾燥式水分計(MX50;エー・アンド・ディ社)を用いて測定したところ、およそ23〜25重量%であった。
【0048】
70%材、90%材、99%材および100%材の触感を握るなどして確認したところ、70%材、90%材および99%材はいずれもさらさらとした触感であり、握った際の形状は維持されずに崩れ落ちる状態であったのに対し、100%材は粘りを有するため、ボロボロとしつつ握った際の形状が塊として残る状態であった。また、70%材、90%材、99%材および100%材を酪農場の牛床にスコップを用いて散布したところ、70%材、90%材および99%材はいずれも適度に拡散し、牛床全体を薄膜状の家畜用床敷材で被うことができたのに対し、100%材はまんべんなく拡散せず、牛床に塊状の家畜用床敷材がばらまかれた状態となった。一方、100%材は、噴霧器を用いて散布したところ、まんべんなく拡散させることができた。
【0049】
これらの結果から、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体と真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体とを混合することにより、散布などの取り扱いが容易で、実用性や利便性に優れる家畜用床敷材を得ることができることが明らかになった。
【0050】
[1−2]稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体からなる家畜用床敷材の製造
北海道稚内地方にて稚内珪藻頁岩を採取した後、天日乾燥させた。これを粉砕した後、1.38、2および4mmメッシュを用いて篩い分けることにより、粒径が1.38、2および4mm以下の稚内珪藻頁岩の粒体や粉体(以下、「1.38mm体」、「2mm体」および「4mm体」という。)を得た。これらのうち、加熱乾燥式水分計(MX50;エー・アンド・ディ社)を用いて1.38mm体の含水率を測定したところ、25重量%であった。続いて、100℃に設定したロータリーキルン式燃焼機に1.38mm体を投入して3分間滞留させることにより、乾燥処理を行った。この乾燥処理を、0回(すなわち自然乾燥)、1回、1.5回、2回、2.5回、3回、6回、10回、20回行うことにより、含水率が0〜24重量%の1.38mm体からなる家畜用床敷材を製造した。
【0051】
続いて、製造した家畜用床敷材について、拡散テスト、粉塵テストおよび握りテストを行った。拡散テストは、牛床用ゴムマット上にスコップを用いて家畜用床敷材を散布した時の拡散の状態を、粉塵テストは、同様に散布した時の粉塵の量および舞い散る範囲を、握りテストは、家畜用床敷材を手で握った時およびその手を開いた時の状態を、それぞれ観察して、表2に示す基準により評点をつけた。各家畜用床敷材を散布した時の拡散の状態を図11に、評点を表1に、それぞれ示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1および図11に示すように、1.38mm体の含水率が22および24重量%の場合、粉塵テストの評点は高く、拡散テストおよび握りテストの評点は低いのに対して、0〜21重量%の場合、粉塵テストの評点は比較的低いものの、拡散テストおよび握りテストの評点は高かった。すなわち、1.38mm体の含水率が0〜21重量%の場合、家畜用床敷材は塊状になりにくく、まんべんなく拡散させることができることが明らかになった。これらの結果から、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなり、散布などの取り扱いが容易で、かつ実用性や利便性に優れる粒状や粉状の家畜用床敷材を得ることができることが示された。また、当該家畜用床敷材において、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の含水率が22重量%未満である場合、散布などの取り扱いがより容易となることが示された。
【0055】
(2)家畜用床敷材の効果の確認
[2−1]真珠岩を混合してなる家畜用床敷材の効果の確認
北海道豊富町の3戸の酪農場(酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cとする)において、それぞれ乳牛30頭からなる処理群と無処理群とを設定した。処理群が飼育されている牛床には、本実施例3(1)[1−1]の90%材70kgを、3日の間に適宜分割して散布した。無処理群が飼育されている牛床には何も散布しなかった。3日間飼育した後、処理群および無処理群からそれぞれ10頭ずつ無作為に選定し、乳頭表面を、予め緩衝液で浸潤させた綿棒を用いて拭き取ることによって菌を採取した。菌を採取した綿棒は速やかに冷蔵保存して運搬した後、常法に従ってコロニーカウント法を行うことにより、一般細菌、大腸菌、ならびに環境性乳房炎起因菌であるウベリスおよびフェーカリスについて生菌濃度を計測し、平均値を算出した。また、菌が検出された頭数について、10頭すべてで検出された場合を100%として検出率を求めた。その結果を図12に示す。
【0056】
図12に示すように、一般細菌の生菌濃度の平均値は、酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cのいずれにおいても、処理群は無処理群と比較して小さく、特に、酪農場Cにおいては顕著に小さかった。また、大腸菌の生菌濃度の平均値については、酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cのいずれにおいても処理群は無処理群と比較して小さく、特に、酪農場Aおよび酪農場Cにおいては顕著に小さかった。また、ウベリスの生菌濃度の平均値については、酪農場Aにおける処理群は無処理群と比較して顕著に小さかった。さらに、フェーカリスの生菌濃度の平均値については、酪農場A、酪農場Bおよび酪農場Cのいずれにおいても、処理群は無処理群と比較して小さく、特に、酪農場Cにおいては、顕著に小さかった。
【0057】
これらの結果を総合すると、処理群の乳牛の乳頭では、無処理群と比較して、大腸菌、一般細菌、ウベリスおよびフェーカリスのいずれについても、生菌濃度の平均値が小さいことが明らかになった。すなわち、90%材を散布して飼育すると、家畜に付着する微生物の数を抑制することができることが示されたことから、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体と真珠岩を粉砕して得られる粒径2mm以下の粒体や粉体とを混合してなる家畜用床敷材は、畜舎における微生物の数を抑制することができることが示された。
【0058】
[2−2]稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体からなる家畜用床敷材の効果の確認
北海道長沼町および由仁町の5戸の酪農場(酪農場D、酪農場E、酪農場F、酪農場Gおよび酪農場Hとする)において、それぞれ乳牛5頭からなる処理群と無処理群とを設定し、本実施例3(2)[2−1]に記載の方法により、一般細菌および大腸菌の生菌濃度を測定した。ただし、処理群の牛床に散布する家畜用床敷材は、酪農場D、酪農場E、酪農場F、酪農場Gおよび酪農場Hについて、それぞれ、含水率が18%の1mm体、1.38mm体、2mm体、3mm体および4mm体からなる家畜用床敷材とした。また、散布量は1頭につき500g/日とし、生菌濃度の測定は全頭(乳頭4本/頭)について行った。続いて、測定結果について、酪農場毎に、処理群の生菌濃度の平均値を、無処理群の生菌濃度の平均値に対する百分率で表し、これを生菌濃度割合とした。その結果を図13に示す。
【0059】
図13に示すように、処理群の一般細菌の生菌濃度割合は、酪農場D〜Hのいずれにおいても、100%より小さかった。すなわち、1mm体、1.38mm体、2mm体、3mm体および4mm体からなる家畜用床敷材 を散布して飼育すると、家畜に付着する一般細菌の数を抑制することができることが明らかになった。また、処理群の大腸菌の生菌濃度割合は、酪農場D〜Gにおいて100%より小さく、酪農場Hにおいて100%より大きかった。すなわち、1mm体、1.38mm体、2mm体および3mm体からなる家畜用床敷材を散布して飼育すると、家畜に付着する大腸菌の数を抑制することができることが明らかになった。これらの結果から、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体を有効成分として含んでなる、粒状や粉状の家畜用床敷材は、畜舎における微生物の数を抑制することができることが示された。また、当該家畜用床敷材において、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体や粉体の粒径が4mm未満である場合、微生物の数をより効果的に抑制することができることが示された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【請求項2】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【請求項3】
微生物の増殖を抑制する材が、微生物を保持しつつ増殖を抑制する材である、請求項2に記載の家畜用床敷材。
【請求項4】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒径4mm未満の粒体および/または粉体である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【請求項5】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる含水率が22重量%未満の粒体および/または粉体である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【請求項1】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【請求項2】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体を有効成分として含有する微生物の増殖を抑制する材を含んでなる、粒状および/または粉状の家畜用床敷材。
【請求項3】
微生物の増殖を抑制する材が、微生物を保持しつつ増殖を抑制する材である、請求項2に記載の家畜用床敷材。
【請求項4】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒径4mm未満の粒体および/または粉体である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【請求項5】
稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる粒体および/または粉体が、稚内珪藻頁岩を粉砕して得られる含水率が22重量%未満の粒体および/または粉体である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の家畜用床敷材。
【図1】
【図2】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−78306(P2013−78306A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207355(P2012−207355)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(511229628)株式会社クリーンあい (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(511229628)株式会社クリーンあい (1)
【Fターム(参考)】
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