説明

家禽用給餌装置

【課題】供給される飼料を家禽の視界に入れることができると共に、必要に応じて多量の飼料が供給でき、且つ、供給量の調整が容易な家禽用給餌装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る家禽用給餌装置10は、家禽に飼料を与える家禽用給餌装置において、上部に前記飼料を導入する導入口18と下部に該飼料を排出する排出口20とを有する筒状の落下フード12と、前記落下フード12の下方に配設されて、前記落下フード12から排出される前記飼料を貯留して前記家禽に与える給餌皿14とを備え、前記落下フード12は、さらに側面に前記飼料を排出する開口部19が設けられており、スライド移動によって該開口部を開閉する調整板21が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽に飼料を与える家禽用給餌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロイラー等の家禽を飼養するための給餌方法として、飼料タンクに蓄えられた飼料を飼料給餌ラインに通し、給餌ライン上に取り付けた給餌装置に供給する方法が知られている。当該給餌方法において、運ばれた飼料は給餌ラインの給餌口から給餌装置の落下フード内に導入され、落下フードの排出口から排出されて、落下フード下方に設けられた給餌皿上に分配される。
【0003】
上記の給餌方法に用いられる従来の家禽用給餌装置の例として、特許文献1に開示された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−267827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に例示される構成においては、給餌皿内に貯留される飼料が家禽の視界に入りづらく、飼料の存在を視覚的に示して家禽を引き寄せる効果が低いという課題があった。
【0006】
また、餌付け時や出荷前等、給餌皿に多量の飼料の供給が必要となる場合があるが、そのような場合において、多量の飼料の供給を可能にすると共に、供給量の調整を容易に行うことが可能な家禽用給餌装置が求められていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、供給される飼料を家禽の視界に入れることができると共に、必要に応じて多量の飼料が供給でき、且つ、供給量の調整が容易な家禽用給餌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係る家禽用給餌装置は、家禽に飼料を与える家禽用給餌装置において、上部に前記飼料を導入する導入口と下部に該飼料を排出する排出口とを有する筒状の落下フードと、前記落下フードの下方に配設されて、前記落下フードから排出される前記飼料を貯留して前記家禽に与える給餌皿と、を備え、前記落下フードは、さらに側面に前記飼料を排出する開口部が設けられており、スライド移動によって該開口部を開閉する調整板が設けられていることを特徴とする。これによれば、落下フード下部の排出口に加えて落下フード側面に設けられた開口部から飼料を供給することができるため、多量の飼料を給餌皿に供給することができると共に、当該飼料を家禽の視界に入れることができる。また、開口部の開口量を調整することができる。
【0010】
また、本発明において、前記落下フードは、前記開口部よりも下方位置の外周面が下端に近づくにつれて外径が大きくなる傾斜面として形成されていることが好ましい。これによれば、傾斜面があることによって、給餌皿内から開口部の位置まで連続的に且つ幅広に飼料を積み上げることができる。
【0011】
また、本発明において、前記調整板には、板面を貫通する調整穴が設けられており、前記調整板をスライド移動させて、前記開口部と前記調整穴との重なり範囲をずらすことにより該開口部の開口量が調整されることが好ましい。これによれば、調整板をスライド移動させるだけで、開口部の開口量を容易に調整することができ、飼料の供給量を容易に調整することができる。
【0012】
また、本発明において、前記開口部は、前記落下フードの周方向に沿って複数設けられており、前記調整板は、筒状に形成されて前記落下フードに外嵌されると共に、前記調整穴が前記開口部に対応する位置に設けられていることが好ましい。これによれば、開口部が周方向に沿って、すなわち全周に渡って複数個設けられているため、全方位の家禽に対して飼料を視界に入れることができると共に、飼料供給量を大幅に増加させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記開口部および前記調整穴は、少なくとも一方が、水平方向に対して傾斜角を有する傾斜辺を備えた三角形もしくは台形に形成されていることが好ましい。これによれば、開口部もしくは調整穴が、水平方向に対して傾斜角を有する傾斜辺を備えているため、調整板を一定量スライドさせた際の、開口部の開口量の変化量を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る家禽用給餌装置によれば、供給される飼料を家禽の視界に入れることができる。また、必要に応じて多量の飼料が供給できると共に、供給量の調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る家禽用給餌装置の例を示す概略図(斜視図)である。
【図2】図1に示す家禽用給餌装置の概略図(正面断面図)である。
【図3】図1に示す家禽用給餌装置の調整板の例を示す概略図(斜視図)である。
【図4】図1に示す家禽用給餌装置の開口部の開口量調整作用を説明する説明図である。
【図5】図1に示す家禽用給餌装置の開口部から飼料が供給される様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
図1は、本実施形態に係る家禽用給餌装置10の例を示す斜視図であり、図2は、家禽用給餌装置10の正面断面図(図1におけるA−A線断面図)である。本実施形態の家禽用給餌装置10は、落下フード12を通して供給される飼料を給餌皿14に貯留して家禽に与える装置であり、食用あるいは採卵用等となる家禽の飼養に用いられる。ここで、当該家禽の種類としては特に限定されるものではなく、一例として、鶏(例えばブロイラー、レイヤー、種鶏、地鶏等)、鴨、ウズラ、アヒル等が挙げられる。
【0018】
本実施形態に係る落下フード12は、図1、2に示すように、筒状に形成されており、より具体的には上位部分が筒状の円筒部12aに形成され、下位部分が筒状の円錐部12bに形成されて、当該円筒部12aと円錐部12bとが連通するように接続された構造を有している。ここで、上部すなわち円筒部12aの上部には飼料を導入する導入口18が設けられ、下部すなわち円錐部12bの下部には導入された飼料を排出する排出口20が設けられている。これによって、搬送された飼料が、導入口18から落下フード12内に導入され、筒状の落下フード12内を通過して、排出口20から排出されて、落下フード12の下方に設けられた給餌皿14上に貯留される作用が得られる。なお、本実施形態においては、飼料タンク(図示せず)から飼料が搬送される搬送パイプ(図示せず)に取り付けるためのアダプター13が落下フード12の上部に連結されているが、当該構成に限定されるものではない。
【0019】
また、本実施形態に係る給餌皿14は、落下フード12の下方に設けられ、排出口20から排出された飼料を貯留するものである。より具体的には、給餌皿14は、図1、2に示すように、中央部分を上方へ円錐状に隆起させて落下フード12内(ここでは排出口20内)に進入する突起部14aを有する形状に形成されている。これによって、導入口18から落下フード12内に導入された飼料が円錐状の突起部14aに衝突して放射状に分配されて排出口20から排出される作用が生じる。したがって、排出口20から排出される飼料が給餌皿14内の周方向に均等に分配されて貯留される効果が得られる。
【0020】
なお、給餌皿14は、ガード16によって支持されて落下フード12に固定されている。より具体的には、ガード16は、図1、2に示すように、落下フード12の外周に嵌合される環状の上部係合部16aと給餌皿14に固定される環状の下部係合部16cとを有すると共に、上部係合部16aと下部係合部16cとを連結する複数のアーム部16bを有している。一例として、アーム部16bは板状部材を用いて形成されているが、これに限定されるものではなく、棒状部材を用いて形成してもよい。
【0021】
ここで、本実施形態に特徴的な構成として、落下フード12には、下部の排出口20に加え、さらに側面部分に飼料を排出する開口部19が設けられている。また、開口部19には、スライド移動によって当該開口部19を開閉する調整板21が設けられている。
【0022】
本実施形態に係る調整板21は、図3に示すように円筒状に形成されており、図1、2に示すように落下フード12に外嵌されて、スライド移動可能に固定される構成となっている。また、円筒状の板面を貫通する調整穴22が、落下フード12の各開口部19に対応する位置に複数個設けられている。
なお、落下フード12の開口部19および調整板21の調整穴22は、後述の理由により、少なくとも一方が、水平方向に対して傾斜角を有する傾斜辺を備えた三角形もしくは台形に形成されていることが好適である。本実施形態においては、落下フード12の開口部19および調整板21の調整穴22を共に、水平方向に対して傾斜角を有する傾斜辺22aを備えた台形として、同一形状に形成している。
【0023】
この構成によれば、調整板21をスライド移動させて、落下フード12の開口部19と調整板21の調整穴22との重なり範囲をずらすことにより当該開口部19の開口量を調整することが可能となる。具体的な調整作用について図4を用いて説明する。図4(a)は、開口部19と調整穴22とが一致した状態、すなわちそれぞれの開口位置が重なっている状態の図である。このとき開口部19が全開の状態となるため、開口部19から排出される飼料の量が最大となる。次に、図4(b)は、調整板21を落下フード12に対して矢印方向にスライド移動させた状態の図である。図4(a)と比較すると、開口部19の一部が調整穴22の周辺部で塞がれて、開口部19の開口量が小さくなり、開口部19から排出される飼料の量を絞ることができる。次に、図4(c)は、調整板21を落下フード12に対してさらに矢印方向にスライド移動させた状態の図である。図4(b)と比較すると、開口部19の一部が調整穴22の周辺部でさらに塞がれて、開口部19の開口量がさらに小さくなり、開口部19から排出される飼料の量をさらに絞ることができる。次に、図4(d)は、調整板21を落下フード12に対してさらに矢印方向にスライド移動させた状態の図である。図4(c)と比較すると、開口部19の一部が調整穴22の周辺部でさらに塞がれて、開口部19の開口量がさらに小さくなり、開口部19から排出される飼料の量をさらに絞ることができる。次に、図4(e)は、調整板21を落下フード12に対してさらに矢印方向にスライド移動させて、開口部19と調整穴22とが不一致となった状態、すなわち開口位置の重なりが全く無い状態の図である。このとき開口部19が全閉の状態となるため、開口部19からの飼料の排出を停止させることができる。
【0024】
なお、調整板21を周方向に固定する方法は、調整板21の内周面の下部に設けられた係合突起21aを、落下フード12における対応位置に形成された複数の係合溝17のうち所望の係合溝17に係合させることによって行われる。また、調整板21を周方向にスライド移動させる方法は、落下フード12に対して調整板21を上方に少し浮かせて係合突起21aと係合溝17との係合を解除した状態で、ツマミ21bを周方向に移動させることによって行われる。
【0025】
上記の構成を備えることにより、調整板21をスライド移動させて、落下フード12の開口部19と調整板21の調整穴22との重なり範囲をずらすことにより当該開口部19の開口量を容易に調整することができ、飼料の供給量を容易に調整することができる。特に、開口部19および調整穴22が、水平方向に対して傾斜角を有する傾斜辺22aを備えているため、一定のスライド量で調整できる範囲を大きくする効果が得られる。
【0026】
また、餌付け時や出荷前等、給餌皿14に多量の飼料の供給が必要となる場合があるが、そのような場合において、開口部19を全開の状態(図4(a)参照)とすることによって、落下フード12下部の排出口20に加えて当該開口部19からも飼料を供給することが可能となるため、多量の飼料を供給することが可能となる。特に、開口部19が複数個設けられているため、飼料供給量を大幅に増加させることが可能となる。また上記の通り、飼料の供給量の微調整も容易に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態に係る家禽用給餌装置1に特徴的な構成として、落下フード12は、開口部19よりも下方位置の外周面が下端に近づくにつれて外径が大きくなる傾斜面として形成されている(図1、2参照)。本実施形態では、落下フード12の円錐部12bの外周面が当該傾斜面を構成している。
【0028】
この構成によれば、図5(開口部19から飼料40が供給される様子を示す概略図である)に示すように、落下フード12に上記傾斜面があることによって、給餌皿14内から開口部19の位置まで連続的に且つ幅広に飼料40を積み上げることが可能となる。
その結果、給餌皿14の内部を家禽が覗き込まなくても、供給される飼料40を家禽の視界に入れることができるため、飼料40の存在を視覚的に示して家禽を引き寄せる効果が高まり、飼料40のついばみを促進する効果が得られる。特に、給餌皿14から水平方向に離れた位置にいる家禽からも飼料40が見える点で非常に有効である。また、本実施形態においては、開口部19が周方向に沿って、すなわち全周に渡って複数個設けられているため、全方位の家禽に対して上記効果を奏することができる。
【0029】
以上説明した通り、開示の家禽用給餌装置によれば、必要に応じて開口部を開口することによって、落下フード下部の排出口に加えて当該開口部からも飼料を供給することが可能となるため、多量の飼料を給餌皿に供給することが可能となる。
【0030】
また、調整板をスライド移動させるだけで、開口部の開口量を容易に調整することができ、飼料の供給量を容易に調整することができる。
【0031】
また、開口部から飼料を供給することによって、当該飼料を家禽の視界に入れることができるため、飼料の存在を視覚的に示して家禽を引き寄せる効果が高まり、飼料のついばみを促進する効果が得られる。
【0032】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。特に、本発明に係る家禽用給餌装置は家禽用として最も好適に用いることができるが、家禽以外の動物に適用することも当然に可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 家禽用給餌装置
12 落下フード
13 アダプター
14 給餌皿
16 ガード
16a 上部係合部
16b アーム部
16c 下部係合部
17 係合溝
18 導入口
19 開口部
20 排出口
21 調整板
22 調整穴
40 飼料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽に飼料を与える家禽用給餌装置において、
上部に前記飼料を導入する導入口と下部に該飼料を排出する排出口とを有する筒状の落下フードと、
前記落下フードの下方に配設されて、前記落下フードから排出される前記飼料を貯留して前記家禽に与える給餌皿と、を備え、
前記落下フードは、さらに側面に前記飼料を排出する開口部が設けられており、スライド移動によって該開口部を開閉する調整板が設けられていること
を特徴とする家禽用給餌装置。
【請求項2】
前記落下フードは、前記開口部よりも下方位置の外周面が下端に近づくにつれて外径が大きくなる傾斜面として形成されていること
を特徴とする請求項1記載の家禽用給餌装置。
【請求項3】
前記調整板には、板面を貫通する調整穴が設けられており、
前記調整板をスライド移動させて、前記開口部と前記調整穴との重なり範囲をずらすことにより該開口部の開口量が調整されること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の家禽用給餌装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記落下フードの周方向に沿って複数設けられており、
前記調整板は、筒状に形成されて前記落下フードに外嵌されると共に、前記調整穴が前記開口部に対応する位置に設けられていること
とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の家禽用給餌装置。
【請求項5】
前記開口部および前記調整穴は、少なくとも一方が、水平方向に対して傾斜角を有する傾斜辺を備えた三角形もしくは台形に形成されていること
とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の家禽用給餌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−106546(P2013−106546A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252795(P2011−252795)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【特許番号】特許第4972223号(P4972223)
【特許公報発行日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(000150453)株式会社中嶋製作所 (8)
【Fターム(参考)】