説明

容器表面線量率測定装置

【課題】 放射性廃棄物の取扱者の被ばくを防止し、かつ容器の表面線量率を容易に測定できるようにする。
【解決手段】 放射性廃棄物を入れた容器11の外周にプラスチックシンチレーションファイバ13をらせん状に巻いて筒状とした検出部を配置し、プラスチックシンチレーションファイバの両端に放射線の入射により発生した光を電気信号に変換する光電子増倍管14A,14Bを取り付け、変換された2つの電気信号の時間差により放射線の出た位置を測定し、また強度分布を評価する構成を特徴とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、原子力施設等で発生する放射性廃棄物を収容した容器から放射される放射線の放射位置を測定する容器表面線量率測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射性廃棄物はカートンボックス,ドラム缶等の容器の中に入れ、この容器をコンクリート製の貯蔵庫に収納していた。このため、放射性廃棄物を入れた容器の表面線量率を測定する手段としては、測定物をステップ的に回転したり、上下にステップ的に移動したりの回転上下運動をさせながら容器表面線量率を測定していた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の放射線の測定手段では、放射性廃棄物の取扱者や放射線測定者が放射性廃棄物に接近するために被ばくして放射線障害を受けたり、測定に手数がかかるという問題点があった。
【0004】
また、容器から放射される放射線の表面線量率と分布とを連続して測定できないという問題点もあった。
【0005】
本考案は、上記の問題点を解決するためになされたもので、測定者が放射性廃棄物に接近したり、容器を回転上下運動させることなく測定可能な容器表面線量率測定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案は、放射性廃棄物を測定する容器の外周または内周に位置し、プラスチックシンチレーションファイバをらせん状に巻いて筒状とした検出部と、このプラスチックシンチレーションファイバの両端に光電変換器を取り付け、容器内の放射性廃棄物から発生した放射線がプラスチックシンチレーションファイバに入射して発光し、この発光した光が両端の光電変換器に到達した時間差により放射線の出た位置を測定する容器表面線量率測定装置であって、測定装置内で被測定物を回転したり、上下に動かすということを必要とせず、取扱者や測定者が被ばくして障害を受けることがなく、さらに表面線量率およびその分布を連続して測定することを可能としたものである。
【0007】
【考案の実施の形態】
本考案の容器表面線量率測定装置は、測定部,計測部,解析部により構成されている。測定部では、貯蔵庫内に放射性廃棄物を入れたカートンボックス,ドラム缶等の外側に、プラスチックシンチレーションファイバをらせん状に巻いて筒状とした検出部を配置し、プラスチックシンチレーションファイバの両端に光電変換器を取り付け、放射線入射によるプラスチックシンチレーションファイバ内での発光を検出する。
【0008】
計測部では、放射線入射によりプラスチックシンチレーションファイバ内で発光した光が一端と他端へ到達する時間T1 ,T2 の時間差により放射線の出た位置を飛行時間法(TOF法)により測定する。
【0009】
解析部ではパーソナルコンピュータにより線量当量スペクトル表示と最大線量当量表示が行われる。
【0010】
機器としては、プラスチックシンチレーションファイバ,ビン電源,高圧モジュール,アナログディジタルコンバータ(ADC)/マルチチャンネルアナライザ(MCA)ボード,パーソナルコンピュータ(PC)等により構成されている。
【0011】
〔第1実施例〕
図1は、本考案の第1実施例を示す構成図である。原子力施設で発生する放射性廃棄物から放射される放射線を測定するための本考案にかかる容器表面線量率測定装置は、大別して測定部1,計測部2,解析部3からなる。測定部1において、放射性廃棄物を入れるカートンボックスまたはドラム缶等の容器11をコンクリート等の貯蔵庫12内に収納してある。測定に際しては貯蔵庫12の蓋をとり、プラスチックシンチレーションファイバ(以下単にファイバという)13Aを図2の斜視図に示すようにらせん状に筒状支持体13Bの外周面全体を覆うように巻き付けて構成した検出部13を容器11の外側に配置し、ファイバ13Aの両端部にはそれぞれ光電子増倍管14A,14Bおよび図示しないブリーダ抵抗,コンデンサが内蔵されたプローブ15A,15Bを取り付け、放射線入射によるファイバ13A内での発光をそれぞれファイバ13Aの両端において検出する。この場合、容器11にあらかじめ付してある原点の表示と、検出部13の原点とが一致するように、検出部13を容器11に図1のようにかぶせるものとする。
【0012】
図3は、ファイバ13Aの両端で放射線を検出する原理を示す説明図で、ファイバ13A内で放射線(γ線)を受けて点Pで発光した光が左端,右端へ到達する時間T1 ,T2 の時間差により放射線の出た位置を測定する飛行時間法(TOF法)により行われる。
【0013】
図4は、図1の実施例の計測部2と解析部3の構成を詳細に示した図で、電気系統部分はブロック図で示してある。なお、図1と同一符号は同一部分を示す。
【0014】
計測部2は、コンスタントフラクションディスクリミネータ(Constant-Fraction Discriminator 以下、CFDという)16A,16Bと、光電子増倍管14A,14Bへ電力を提供する高圧電源(HV)17と、タイムツーアンプリチュードコンバータ(Time-to-Amplitude Converter 以下、TACという)18とを備えている。
【0015】
解析部3は、アナログディジタルコンバータ(以下、ADCという)20と、マルチチャンネルアナライザ(以下、MCAという)21とからなるI/O拡張ユニット19と、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)22とを備えている。
【0016】
次に、動作について説明する。放射線が容器11内の放射性廃棄物から発生してファイバ13AのP点に入射したとすると(図3参照)、このP点で発生した光は、ファイバ13Aの両端の光電子増倍管14A,14Bで電気信号に変換される。このとき各光電子増倍管14A,14Bに到達した光の入射タイミングは、図3に示すようにその線路長が異なるため時間T1 ,T2 による時間差を生じる。次いで、計測部2のCFD16A,16Bに入力された光電子増倍管14A,14Bからの電気信号は、ノイズと信号とに分離(区別)される。すなわち、図5(a),(b)の波形図に示すように、入力された信号のうち、図5(a)
のように設定されたディスクリレベルLを越えた信号のみが出力され、図5(b)のように整形された波形となる。なお、ディスクリレベルLの設定方法としては、リーディングエッジ型,コンスタントフラクション型とあるが、どちらでも使用可能である。これらの設定方法は公知であるので、その詳細は省略する。
【0017】
次いで、CFD16A,16Bの出力は、次段のTAC18へ送られる。
【0018】
TAC18では、CFD16A,16Bの一方からの電気信号(パルス)で時間の計測を開始し、CFD16B,16Aの他方からの電気信号(パルス)で計測をストップする。この信号は解析部3のI/O拡張ユニット19のADC20とMCA21に送られる。
【0019】
すなわち、ADC20は入力されたアナログパルスの波高に対応した、ディジタル出力を行う装置であり、MCA21はADC20より出力されたディジタル出力を記憶するものである。そして、計測された時間差から放射線の入射した位置,信号の繰り返し回数からその強度分布を評価する。
【0020】
次いで、PC22では性能試験用ソフトにより線量当量スペクトル表示および最大線量当量表示が行われる。そして、この動作は放射性廃棄物から放射線が発生する毎に行われる。
【0021】
〔第2実施例〕
図6は、本考案の第2実施例を示す構成図である。図4の第1実施例との相違点は、図4ではTAC18を用いているのに対し、図6ではタイムツーディジタルコンバータ(TDC)23を用い、図4中の解析部3からADC20とMCA21を取り去った点である。これは、TDC23の場合には、その中にADC20,MCA21を内蔵しているからである。
【0022】
本実施例においては、CFD16A,16Bから出力を出す迄の動作は、図4の第1実施例と同じであるので、その説明は省略する。CFD16A,16Bから出力が出ると、TDC23においては、スタートパルス(CFD16A,16Bのどちらか一方から出力されるパルス)が入力した時より、ストップパルス(CFD16B,16Aのどちらか一方)が入力するまでの時間を測定し、その計測時間に比例したクロック数のディジタル信号を出力する。その出力を直接PC22に読み込ませる。この動作が、放射性廃棄物から放射線が発生する毎に行われる。
【0023】
なお、上記第1,第2実施例において、CFD16A,16Bの出力が同時に発せられる場合もあることは云うまでもない。そして、放射性廃棄物から発生するγ線の発生時間間隔はマイクロ秒のオーダーであるのに対し、光の伝搬速度は、ナノ秒のオーダであるので、十分にγ線の入射位置の識別が可能である。また、ファイバ13Aは筒状支持体13Bに巻回して検出部13を構成したが、筒状支持体13Bを用いなくともファイバ13A自体で筒体を構成した場合は、筒状支持体13Bは必ずしも必要でない。そして、ファイバ13Aは容器11の外側に配置したが、これは内側であってもよい。さらに、らせん状に巻き付けられたファイバ13Aの隣接間は光学的に絶縁して光のリークがないようにすることは云うまでもない。また、光電変換器として光電子増倍管14A,14Bを用いたが、本考案はこれに限定されるものではない。
【0024】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案は放射性廃棄物を測定する容器の外周または内周にプラスチックシンチレーションファイバをらせん状に巻いて筒状とした検出部を配置し、このプラスチックシンチレーションファイバの両端に光電変換器を取り付け、容器から発生した放射線がプラスチックシンチレーションファイバに入射したとき発光させ、この発光した光が両端の光電変換器に到達した時間差を用いて放射線の出た位置を測定する容器表面線量率測定装置であるので、放射性廃棄物の取扱者や放射線測定者が放射性廃棄物に近接する必要がないため、被ばくによる放射線障害を受けることがなく、また、表面線量率およびその分布を連続して測定できる等の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の第1実施例を示す概略構成図である。
【図2】図1のプラスチックシンチレーションファイバの巻き付けた態様を示す斜視図である。
【図3】放射線を検出する原理を示す説明図である。
【図4】図1の実施例の構成を詳細に示した図である。
【図5】電気信号の分離された態様を示す波形図である。
【図6】本考案の第2実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 測定部
2 計測部
3 解析部
11 容器
12 貯蔵庫
13 検出部
13A プラスチックシンチレーションファイバ
13B 筒状支持体
14 光電子増倍管
15 プローブ
16 CFD
18 TAC
20 ADC
21 MCA
22 PC
23 TDC

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 放射性廃棄物を測定する容器と、この容器の外周または内周に位置し放射線の入射により発光するプラスチックシンチレーションファイバをらせん状に巻いて筒状とした検出部と、このプラスチックシンチレーションファイバの両端にそれぞれ設けられ、前記プラスチックシンチレーションファイバで発光した光を電気信号に変換する光電変換器と、この光電変換器の出力信号のうちディスクリレベルを越えた信号のみを出力するコンスタントフラクションディスクリミネータと、このコンスタントフラクションディスクリミネータで得られた信号のうち、前記両光電変換器の一方の信号の発生時から他方の信号が発生するまでの時間を計測するタイムツーアンプリチュードコンバータと、このタイムツーアンプリチュードコンバータからの前記計測時間に比例した波高をもつ信号をディジタル信号に変換するアナログディジタルコンバータと、前記ディジタル出力信号を記憶するマルチチャンネルアナライザとを備えたことを特徴とする容器表面線量率測定装置。
【請求項2】 放射性廃棄物を測定する容器と、この容器の外周または内周に位置し放射線の入射により発光するプラスチックシンチレーションファイバをらせん状に巻いて筒状とした検出部と、このプラスチックシンチレーションファイバの両端にそれぞれ設けられ、前記プラスチックシンチレーションファイバで発光した光を電気信号に変換する光電変換器と、この光電変換器の出力信号のうちディスクリレベルを越えた信号のみを出力するコンスタントフラクションディスクリミネータと、このコンスタントフラクションディスクリミネータで得られた信号のうち、前記両光電変換器の一方の信号の発生時から他方の信号が発生するまでの時間を計測し、この計測時間に比例したクロック数のディジタル信号に変換して記憶するタイムツーディジタルコンバータとを備えたことを特徴とする容器表面線量率測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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