説明

容器

【課題】容器の収容室の湿度を確実に低く保つ。
【解決手段】内容物が収容される収容室Aを有する容器1であって、その壁部11には、収容室Aを囲繞若しくは画成する第1樹脂組成物層12と、第1樹脂組成物層12を収容室Aの反対側から囲繞する第2樹脂組成物層13と、が備えられ、第1樹脂組成物層12は、第2樹脂組成物層13より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、第2樹脂組成物層13は、第1樹脂組成物層12より吸水可能量が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器の収容室に密封された収容体は、密封後から需要者が容器を開封するまでの間に、湿気に起因して品質が劣化することがある。そのため従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、容器の壁部に、吸湿剤が配合された樹脂組成物層を配設した構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記従来の容器では、前記樹脂組成物層が収容室のみならず外気中に含まれる水分をも吸収することで、収容室の湿度を低く保つことが困難になるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、容器の収容室の湿度を確実に低く保つことができる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の容器は、内容物が収容される収容室を有する容器であって、その壁部には、前記収容室を囲繞若しくは画成する第1樹脂組成物層と、該第1樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する第2樹脂組成物層と、が備えられ、前記第1樹脂組成物層は、第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第2樹脂組成物層が、第1樹脂組成物層を収容室の反対側から囲繞しているので、外気の湿気が容器の壁部の外表面を透過しても、第2樹脂組成物層に吸収されて第1樹脂組成物層に到達するのを抑制することができる。しかも、第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きいので、例えば、密封後から開封までの期間が長くなったり、あるいはこの容器が湿度の高い環境下に置かれたりしても、多量の湿気を第2樹脂組成物層に吸収させることが可能になり、第1樹脂組成物層に外気の湿気が到達するのを確実に抑えることができる。
したがって、前記除湿能力が第2樹脂組成物層より高い第1樹脂組成物層に、外気の湿気を吸収させ難くして、容器の収容室内の湿気を集中して吸収させることが可能になり、収容室の湿度を確実に低く保つことができる。
【0008】
ここで、前記第1樹脂組成物層は、第2樹脂組成物層より単位重量当たりの前記除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より単位重量当たりの吸水可能量が大きくてもよい。
【0009】
この場合、第1樹脂組成物層が、第2樹脂組成物層より単位重量当たりの前記除湿能力が高く、第2樹脂組成物層が、第1樹脂組成物層より単位重量当たりの吸水可能量が大きいので、第1樹脂組成物層および第2樹脂組成物層それぞれの重量の増大や、容器の大型化を抑えて、前述の作用効果を奏功させることができる。
【0010】
また、前記第1樹脂組成物層にはモレキュラーシーブが配合されてもよい。
【0011】
この場合、前述の作用効果が確実に奏功される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器の収容室の湿度を確実に低く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した容器の一部縦断面図である。
【図2】本発明に係る他の実施形態として示した容器の一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る容器1は、図1に示されるように、内容物が収容される収容室Aを有するとともに、壁部11は、収容室Aを囲繞する第1樹脂組成物層12と、第1樹脂組成物層12を収容室Aの反対側から囲繞する第2樹脂組成物層13と、を備えている。さらに図示の例では、壁部11は、第2樹脂組成部層13を収容室Aの反対側から囲繞する最外層15、および収容室Aを画成する最内層14を備えている。
ここで、容器1の壁部11は有底筒状に形成されていて、第1樹脂組成物層12、第2樹脂組成物層13、最外層15および最内層14も有底筒状に形成されている。
最外層15および最内層14はそれぞれ、吸湿剤を含有しない例えばポリエチレン、若しくはポリプロピレン等で形成される。
【0015】
第1樹脂組成物層12は、第1吸湿剤が配合された第1基材樹脂により形成され、第2樹脂組成物層13は、第2吸湿剤が配合された第2基材樹脂により形成されている。
第1基材樹脂および第2基材樹脂としては、例えばポリエチレン、若しくはポリプロピレン等が挙げられる。
第1吸湿剤および第2吸湿剤としては、例えばモレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、シリカゲル、酸化カルシウム、塩化カルシウム、およびシリカアルミナゲルのうちの1つ若しくは複数の混合物が挙げられる。
これらのうち、モレキュラーシーブは、結晶性ゼオライトであって次の一般式(1)で表される。
2/nO・Al・xSiO・yHO・・・(1)
但し、M:金属カチオン、n:原子価
なお、Mとして例えばナトリウム等を採用することができる。
【0016】
そして本実施形態では、第1樹脂組成物層12は、第2樹脂組成物層13より同一容積の空間に対する除湿能力が高くなっている。なおこの除湿能力は、同一容積の空間の湿度をより低く下げて維持できることをいう。また、第2樹脂組成物層13は、第1樹脂組成物層12より吸水可能量が大きくなっている。なおこの吸水可能量は、吸収することが可能な水の量である。
さらに本実施形態では、第1樹脂組成物層12は、第2樹脂組成物層13より単位重量当たりの前記除湿能力が高く、第2樹脂組成物層13は、第1樹脂組成物層12より単位重量当たりの吸水可能量が大きくなっている。
【0017】
このような第1樹脂組成物層12は例えば、第1基材樹脂として第2基材樹脂と同材質の樹脂材料を採用し、かつ第1吸湿剤として第2吸湿剤よりも単位重量当たりの前記除湿能力が高い材質を採用することで得られ、また第2樹脂組成物層13は例えば、第2基材樹脂として第1基材樹脂と同材質の樹脂材料を採用し、かつ第2吸湿剤として第1吸湿剤よりも単位重量当たりの吸水可能量が大きい材質を採用することで得られる。
さらにこのような第1樹脂組成物層12は例えば、第1基材樹脂として低密度ポリエチレンを採用し、かつ第1吸湿剤としてモレキュラーシーブを採用することで得られ、また第2樹脂組成物層13は例えば、第2基材樹脂として低密度ポリエチレンを採用し、かつ第2吸湿剤として硫酸マグネシウムを採用することで得られる。
【0018】
なお、モレキュラーシーブが50重量%配合された低密度ポリエチレン(以下、第1材料という)、および硫酸マグネシウムが20重量%配合された低密度ポリエチレン(以下、第2材料という)で形成した互いに同形同大の各試験片を、同一の容積で湿度および温度が同等の密閉空間に各別に収容し、約30日間保管した後に、各試験片の重量を測定したところ、第1材料で形成した試験片では1g当たり0.1gの水を吸収し、また、第2材料で形成した試験片では、1g当たり0.2gの水を吸収することが確認された。
さらに、モレキュラーシーブが20重量%配合された低密度ポリエチレン(以下、第3材料という)、および前記第2材料で形成した互いに同形同大の各試験片を、同一の容積で湿度および温度が同等の密閉空間に各別に収容し、一週間保管したときの密封空間内の湿度を測定したところ、前記第3材料で形成した試験片が保管された方では10%以下であったのに対し、前記第2材料で形成した試験片が保管された方では約30%であることが確認された。
【0019】
以上説明したように、本実施形態による容器1によれば、第2樹脂組成物層13が、第1樹脂組成物層12を収容室Aの反対側から囲繞しているので、外気の湿気が容器1の壁部11の外表面を透過しても、第2樹脂組成物層13に吸収されて第1樹脂組成物層12に到達するのを抑制することができる。しかも、第2樹脂組成物層13は、第1樹脂組成物層12より吸水可能量が大きいので、例えば、密封後から開封までの期間が長くなったり、あるいはこの容器1が湿度の高い環境下に置かれたりしても、多量の湿気を第2樹脂組成物層13に吸収させることが可能になり、第1樹脂組成物層12に外気の湿気が到達するのを確実に抑えることができる。
したがって、前記除湿能力が第2樹脂組成物層13より高い第1樹脂組成物層12に、外気の湿気を吸収させ難くして、容器1の収容室A内の湿気を集中して吸収させることが可能になり、収容室Aの湿度を確実に低く保つことができる。
【0020】
また、第1樹脂組成物層12が、第2樹脂組成物層13より単位重量当たりの前記除湿能力が高く、第2樹脂組成物層13が、第1樹脂組成物層12より単位重量当たりの吸水可能量が大きいので、第1樹脂組成物層12および第2樹脂組成物層13それぞれの重量の増大や、容器1の大型化を抑えて、前述の作用効果を奏功させることができる。
【0021】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0022】
例えば、前記実施形態では最内層14を配設したが、図2に示されるように、最内層14を有さず、第1樹脂組成物層12により収容室Aが画成された容器2にも適用可能である。
また、第1樹脂組成物層12と第2樹脂組成物層13との間に、例えば吸湿剤を含有しない中間層等を介在させてもよい。
さらに、壁部11に、水分バリア性に優れた樹脂材料で形成されたバリア層を備えさせ、このバリア層により第1樹脂組成物層12を収容室Aの反対側から囲繞させてもよい。
この場合、外気の湿気が第1樹脂組成層12に到達することをより確実に防止する。
さらにまた、前記バリア層により第1樹脂組成物層12のみならず第2樹脂組成物層13をも収容室Aの反対側から囲繞させてもよい。
また、このバリア層を形成する樹脂材料は、例えばオレフィン系樹脂等、第1基材樹脂および第2基材樹脂よりも水分バリア性に優れた材質であってもよい。
【0023】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
容器の収容室の湿度を確実に低く保つことができる。
【符号の説明】
【0025】
1、2 容器
11 壁部
12 第1樹脂組成物層
13 第2樹脂組成物層
A 収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される収容室を有する容器であって、
その壁部には、
前記収容室を囲繞若しくは画成する第1樹脂組成物層と、
該第1樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する第2樹脂組成物層と、
が備えられ、
前記第1樹脂組成物層は、第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きいことを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1記載の容器であって、
前記第1樹脂組成物層は、第2樹脂組成物層より単位重量当たりの前記除湿能力が高く、 前記第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より単位重量当たりの吸水可能量が大きいことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の容器であって、
前記第1樹脂組成物層にはモレキュラーシーブが配合されていることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246181(P2011−246181A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123154(P2010−123154)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】