説明

容器

【課題】紫外線を受けても異臭の発生を抑えることができる容器を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器であって、前記樹脂材料に、ヒンダードアミン系光安定剤が配合されている。配合するヒンダードアミン系光安定剤の分子量は、1000以上(高分子量タイプ)好ましくは2000以上となっている。本発明に係る容器は、紫外線を受けても、例えば3−ヘプタノン等のケトン類の生成が抑えられ、異臭の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば食品や医薬品等を収容する容器として、従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3122242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の容器では、例えば太陽光や蛍光灯等からの紫外線を受けることで、例えば3−ヘプタノン等のケトン類が生成され、異臭を発生するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、紫外線を受けても異臭の発生を抑えることができる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の容器は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器であって、前記樹脂材料に、ヒンダードアミン系光安定剤が配合されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料に、ヒンダードアミン系光安定剤が配合されているので、紫外線を受けても、例えば3−ヘプタノン等のケトン類の生成が抑えられ、異臭の発生を抑制することができる。
【0008】
ここで、前記容器は、ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂材料で形成されてもよい。
【0009】
この場合、容器がポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂材料で形成されているので、異臭の発生を確実に抑えることができる。
【0010】
また、前記ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が1000以上であってもよい。
【0011】
この場合、ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が1000以上であるので、異臭の発生を確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紫外線を受けても異臭の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る容器は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成され、この樹脂材料に、ヒンダードアミン系光安定剤が配合されている。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、あるいはプロピレンを主体とした共重合体を使用でき、またこれらのポリオレフィン系樹脂を主体としたブレンド材を採用してもよい。なお、容器を積層構造にした場合には、少なくとも最外層を形成する樹脂材料に、ヒンダードアミン系光安定剤を配合してもよい。
前記樹脂材料に配合するヒンダードアミン系光安定剤の分子量は、1000以上(高分子量タイプ)好ましくは2000以上となっている。
ヒンダードアミン系光安定剤は、例えば、分子量が2000〜3100とされ、20℃での比重が1.0とされ、25℃での蒸気圧が6×10−10Paとなっている。このようなヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のキマソーブ944を採用してもよい。また、ヒンダードアミン系光安定剤を0.1wt%以下、好ましくは0.05wt%〜0.1wt%配合してもよい。
なお、この容器に食品や医薬品等を収容する場合には、米国食品医薬局(FDA)に認可されているヒンダードアミン系光安定剤を使用する必要がある。
【0014】
以上説明したように、本実施形態による容器によれば、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料に、ヒンダードアミン系光安定剤が配合されているので、紫外線を受けても、例えば3−ヘプタノン等のケトン類の生成が抑えられ、異臭の発生を抑制することができる。
また、容器がポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂材料で形成されているので、異臭の発生を確実に抑えることができる。
さらに、ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が1000以上であるので、異臭の発生を確実に抑えることができる。
【0015】
次に、以上説明した作用効果の検証試験について説明する。
【0016】
従来例として、ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつ光安定剤や紫外線吸収剤が配合されていない樹脂材料で形成した容器を採用し、比較例として、ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつ紫外線吸収剤としてチヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)が0.1wt%配合された樹脂材料で形成した容器を採用し、実施例1として、ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつキマソーブ944(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)が0.05wt%配合された樹脂材料で形成した容器を採用し、実施例2として、ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつキマソーブ944(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)が0.10wt%配合された樹脂材料で形成した容器を採用した。
なお、比較例の容器で採用したチヌビン326の分子量は316となっている。
【0017】
そして、これらの実施例1、2、比較例、および従来例の各容器を、夏季に室内で直射日光の当る場所に、二週間放置した後に、実際に臭いを嗅ぐ官能評価と、例えばガスクロマトグラフィー法等を適用して、臭気成分である例えば3−ヘプタノン等のケトン類の有無を調べる機器分析評価と、を行った。
その結果、実施例1、2の各容器では、無臭でありケトン類も検出されず、従来例および比較例の各容器では、臭気を発生していてケトン類も検出されたことが確認された。
【0018】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
前記容器としては、例えばボトル、カップ、チューブ等、種々の形態のものを採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
紫外線を受けても異臭の発生を抑えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器であって、
前記樹脂材料に、ヒンダードアミン系光安定剤が配合されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1記載の容器であって、
ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂材料で形成されていることを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の容器であって、
前記ヒンダードアミン系光安定剤の分子量が1000以上であることを特徴とする容器。

【公開番号】特開2012−116523(P2012−116523A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267680(P2010−267680)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】