説明

容器

【課題】キャップを容器本体の口部に螺着する際の操作性を阻害することなく、気密性を改善させた容器を提供すること。
【解決手段】口部3のうち上端部15の内径は、上端部15に上端部15の下方から連設された基部16の内径よりも大きく、上端部15の内周面と基部16の内周面とは、段部17を介して連結され、キャップ4が、口部3内に配設されたインナーリング部23を有し、インナーリング部23の下端部には、外径が下端から上方に向かうにしたがって漸次大きくなるテーパ部26が形成されており、インナーリング部23が、基部16と段部17との接続部分に密接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器本体の口部にキャップを螺着する機構として、口部及びキャップのそれぞれに形成されると共に互いに螺合するネジ部が多条ネジとされた容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような容器では、口部及びキャップそれぞれに形成されたネジ部が多条ネジとなっているので、キャップを容器本体に着脱する際に、キャップを容器本体に対して容器軸回りに1回転未満回転させるだけで着脱できる。そのため、着脱時の操作性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4262239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような容器では、容器本体の口部にキャップを螺着したときの気密性に対して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、キャップを容器本体の口部に螺着する際の操作性を阻害することなく、気密性を改善させた容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の容器は、内容物を収容した容器本体と、前記容器本体の口部に着脱自在に螺着されて前記口部の上端開口を閉塞する有頂筒状のキャップと、を備え、前記口部及び前記キャップのそれぞれに形成されると共に互いに螺合するネジ部が多条ネジとされた容器において、前記口部のうち上端部の内径は、該上端部に該上端部の下方から連設された基部の内径よりも大きく、前記上端部の内周面と前記基部の内周面とは、段部を介して連結され、前記キャップが、前記口部内に配設されたインナーリング部を有し、前記インナーリング部の下端部には、外径が下端から上方に向かうにしたがって漸次大きくなるテーパ部が形成されており、前記インナーリング部が、前記基部と前記段部との接続部分に密接していることを特徴とする。
【0007】
この発明では、インナーリング部が口部における基部と段部との接続部分に密接しているので、容器本体の気密性が向上する。また、口部のうち上端部の内径が基部の内径よりも大きく、キャップを容器本体の口部に螺着するときに、当初からインナーリング部が口部の内周面に強く当接することを抑制できる。また、インナーリング部の下端部にテーパ部が形成されていることによっても、この下端部が口部の内周面に強く当接することが抑制される。このため、この螺着時にキャップと容器本体との間に生ずる抵抗を抑制できる。したがって、キャップを容器本体の口部に螺着する際の操作性を阻害することなく、気密性を改善することができる。
【0008】
また、本発明の容器では、前記段部の内周面が、内径が下端から上方に向かうにしたがって漸次大きくなるテーパ状をなしてもよい。
この場合では、段部がテーパ状をなすことにより、キャップを容器本体の口部に螺着するときに、インナーリング部のテーパ部が段部に引っ掛かることを抑制でき、このテーパ部を基部と段部との接続部分に確実に到達させることができる。
【0009】
また、本発明の容器では、前記インナーリング部には、第1係合部が形成されており、前記口部の上端部には、前記第1係合部と係合する第2係合部が形成されてもよい。
この場合では、第1係合部と第2係合部とが係合することにより、容器本体に対してキャップを上方に引き上げる力がキャップに対してかかってもキャップが容器本体から離脱することを抑制できる。また、第1係合部と第2係合部とが係合及び係合解除する際に発生する音や衝撃により、キャップが容器本体に対して着脱されたことを認識させることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる容器によれば、インナーリング部を基部と段部との接続部分に密接させることで容器本体の気密性を向上させると共に、キャップの螺着時に当初からインナーリング部が口部の内周面に強く当接することを抑制することで、螺着する際の操作性を阻害することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における容器を示す軸方向断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1のキャップを容器本体に螺着する動作を説明する軸方向断面図である。
【図4】同じく、キャップを容器本体に螺着する動作を説明する軸方向断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】本発明を適用可能な他の容器を示す部分拡大図である。
【図7】本発明を適用可能なさらに他の容器を示す部分拡大図である。
【図8】図1から図5に示す容器の変形例を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における容器の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0013】
本実施形態における容器1は、図1に示すように、内容物を収容する有底円筒状の容器本体2と、容器本体2の口部3に着脱自在に螺着される有頂円筒状のキャップ4と、を備えている。
ここで、容器本体2及びキャップ4それぞれの中心軸は、共通軸上に位置している。以下、この共通軸を中心軸Oとし、中心軸Oに沿ってキャップ4側を上側、容器本体2側を下側と称し、中心軸Oに直交する方向を径方向、中心軸O回りの方向を周方向と称する。
【0014】
容器本体2は、有底円筒状の胴部11と、胴部11の上端に上方に向けて突設された円筒状の口部3と、胴部11を径方向外側から囲繞する円筒状の被覆筒部12と、を備えている。
口部3の外周面には、図1及び図2に示すように、多条ネジである雄ネジ部(ネジ部)13が形成されている。雄ネジ部13は、径方向外方に向けて突設された複数の第1突条部14を有している。これら第1突条部14は、周方向に間隔をあけて配設されており、上方から下方に向かうにしたがって漸次周方向の一方側に向けて延在している。なお、本実施形態では、上記一方側は、容器本体2を上方から見た平面視で時計回り方向となっている。
また、口部3の上端部15の内径は、この上端部15に対して上端部15の下方から連設された基部16の内径よりも大きく、上端部15の内周面と基部16の内周面とは、段部17を介して接続されている。上記雄ネジ部13は、基部16の外周面に形成されている。
【0015】
上端部15の内周面には、径方向外方に向けて陥没する係合溝部(第2係合部)18が全周にわたって形成されている。
段部17の内周面は、径方向外側から内側に向かうにしたがって漸次下方に向かって延びるテーパ状をなしている。また、段部17は、雄ネジ部13より上方に位置している。
被覆筒部12の上端部は、平面視で円環板状の接続壁部19を介して胴部11と口部3との接続部分に連設されており、被覆筒部12の下端は、胴部11の底面よりも下方に突出している。
【0016】
キャップ4は、平面視で円板状の天壁部21と、天壁部21の外周縁から下方に向けて突設された円筒状の周壁部22と、周壁部22よりも径方向内側に配設された円筒状のインナーリング部23と、を備える。
天壁部21の外周縁部は、中央部分よりも上方に向けて突出している。
周壁部22の内周面には、口部3の雄ネジ部13に螺合する多条ネジである雌ネジ部(ネジ部)24が形成されている。雌ネジ部24は、雄ネジ部13と同様に、径方向内方に向けて突設された複数の第2突条部25を有している。これら第2突条部25は、周方向に間隔をあけて配設されており、上方から下方に向かうにしたがって漸次周方向の上記一方側に向けて延在している。
【0017】
インナーリング部23は、口部3の上端部15内に挿入されている。また、インナーリング部23の下端部には、外径が下端から上方に向かうにしたがって漸次大きくなるテーパ部26が形成されている。テーパ部26の中心軸Oに対する傾斜角は、段部17の中心軸Oに対する傾斜角よりも小さくなっている。
そして、インナーリング部23は、基部16の上端部及び段部17に圧接されており、その外周面形状が基部16の上端部の内周面及び段部17に倣って圧縮変形されている。本実施形態では、インナーリング部23のうちテーパ部26が基部16の上端部及び段部17に圧接されている。なお、インナーリング部23の外径は、上端部15の内径以下、好ましくは上端部15の内径未満となっている。
また、インナーリング部23においてテーパ部26よりも上方に位置する部分には、上端部15に形成された係合溝部18と係合する複数の係合突出部(第1係合部)27が周方向に間隔をあけて径方向外方に向けて突設されている。
【0018】
次に、以上のような構成の容器1において容器本体2に対するキャップ4の着脱方法について説明する。
容器本体2の口部3にキャップ4を螺着する場合には、まず、図3に示すように、容器本体2の口部3の上端部を径方向外側から囲繞するようにキャップ4を配置し、図3の矢印Aに示すように、天壁部21の中央部分を下方に押し込む。すると、キャップ4は、周壁部22の雌ネジ部24を形成する第2突条部25の下面が口部3の雄ネジ部13を形成する第1突条部14の上面に沿って案内されながら、容器本体2に対して中心軸O回り(本実施形態では容器本体2を上方から見た平面視で時計回り)に回転しつつ下方に移動する。このとき、インナーリング部23の係合突出部27は、図4及び図5に示すように、口部3の上端部15の上端縁上に位置している。
ここで、インナーリング部23の外径が上端部15の内径以下、好ましくは上端部15の内径未満となっているので、両者間に生ずる摩擦力が抑えられ、キャップ4は、過大な力をかけることなく容器本体2に対して中心軸O回りに回転しつつ下方に移動する。
【0019】
この状態でキャップ4の天壁部21をさらに下方に押し込むと、インナーリング部23の係合突出部27は、上端部15の内周面に沿って摺動し、上端部15の係合溝部18と係合する。これにより、容器本体2に対して上方に引き上げるような力がキャップ4に対して不意にかけられた場合であっても、容器本体2からキャップ4が離脱しにくくなる。また、インナーリング部23の外周面は、少なくとも基部16と段部17との接続部分の内周面に圧接される。これにより、容器本体2内の気密性が確保される。このとき、段部17がテーパ状をなしていると共に、中心軸Oに対するテーパ部26の内周面の傾斜角が段部17の内周面の傾斜角よりも小さいので、テーパ部26が段部17に引っ掛かることが抑制される。
また、容器本体2内の空気は、周方向で隣り合う2つの係合突出部27間の間欠部分と上端部15の内周面との間の空隙を通って容器1の外部に逃がされる。
以上のようにして、キャップ4を容器本体2に螺着する。
【0020】
容器本体2からキャップ4を取り外す場合には、キャップ4を容器本体2に対して中心軸O回り(本実施形態では容器本体2を上方から見た平面視で反時計回り)に回転させる。すると、キャップ4は、周壁部22の雌ネジ部24が口部3の雄ネジ部13に沿って案内されながら、容器本体2に対して上方に移動する。このとき、インナーリング部23の係合突出部27と上端部15の係合溝部18との係合が解除される。そして、キャップ4を容器本体2に対してさらに回転させて、周壁部22の雌ネジ部24と口部3の雄ネジ部13との係合を解除する。
以上のようにして、キャップ4を容器本体2から取り外す。
【0021】
以上のような構成の容器1によれば、インナーリング部23を基部16と段部17との接続部分に圧接させることによって、容器本体2の気密性が向上する。ここで、キャップ4を螺着する際に当初からインナーリング部23が口部3の内周面に強く当接することを抑制することによって、螺着する際の操作性を阻害せずに容器本体2の気密性を向上させることができる。また、段部17がテーパ状をなしており、テーパ部26が段部17に引っ掛かることが抑制されるので、テーパ部26を基部16と段部17との接続部分に確実に到達させることができる。
さらに、キャップ4を容器本体2の口部3に螺着したときにインナーリング部23の係合突出部27と上端部15の係合溝部18とが係合するので、容器本体2に対して不意な外力がキャップ4に対してかかっても、容器本体2からキャップ4が離脱することを防止できると共に、係合突出部27と係合溝部18とが係合する際及び係合解除する際に発生する音や衝撃によって聴覚や触覚で着脱が容易に識別できる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、係合突出部は、インナーリング部から周方向に間隔をあけて突設されているが、例えば図6に示すように、インナーリング部23’の全周にわたって突設された係合突出部27’であってもよい。この場合、口部3’の上端部15’の内周面には、径方向外方に向けて陥没する溝部15A’が上下方向に延在するように形成されていることが好ましい。この溝部15A’は、上端において上方に向けて開口している。これにより、キャップ4’を容器本体2’に螺着する際に容器本体2’内の空気をこの溝部15A’を通じて容器1’の外部に逃がすことができる。
【0023】
また、インナーリング部に形成された係合突出部と口部の上端部に形成された係合溝部とを係合させているが、例えば図7に示すような構成の容器1”など、他の構成を採用してもよい。キャップ4”は、インナーリング部23”よりも径方向外側に配設される円筒状の係合筒部28を有しており、この係合筒部28の下端部の内周面には、径方向内方に向けて陥没する係合溝部27”が形成されている。また、容器本体2”における口部3”の上端部15”には、係合溝部27”と係合する係合突出部18”が径方向外方に向けて突設されている。これにより、インナーリング部23”が基部16の上端部及び段部17に圧接されることによってインナーリング部23”の下端部が径方向内側に湾曲しても、係合溝部27”と係合突出部18”との間の係合が解除されやすくなることを防止できる。
【0024】
また、インナーリング部のうちテーパ部の内周面を基部と段部との接続部分に圧接しているが、例えば図8に示すように、インナーリング部23のうちテーパ部26よりも上方に位置する部分の内周面を基部16と段部17との接続部分に圧接した構成の容器1Aとしてもよい。
インナーリング部は、基部と段部との接続部分に密接されて容器本体の気密性を向上していれば、圧接されていなくてもよい。
【0025】
第1係合部及び第2係合部は、係合突出部及び係合溝部に限らず、他の形状であってもよく、形成されなくてもよい。
段部の形状は、テーパ状に限らず、上方を向く平面状など他の形状であってもよい。
係合突出部は、インナーリング部において周方向で間欠的に形成されているが、容器本体の口部にキャップを螺着できれば、インナーリング部の全周にわたって形成されてもよい。
キャップの天壁部の中央部分を押し下げることによってキャップを容器本体の口部に螺着しているが、キャップを容器本体に対して回転させることによってキャップを容器本体の口部に螺着するなど、他の螺着方法であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明によれば、キャップを容器本体の口部に螺着する際の操作性を阻害することなく、気密性を改善させた容器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0027】
1,1’,1”,1A 容器、2,2’,2” 容器本体、3,3’,3” 口部、4,4’,4” キャップ、13 雄ネジ部(ネジ部)、15,15’,15” 上端部、16 基部、17 段部、18 係合溝部(第2係合部)、18” 係合突出部(第2係合部)、22 周壁部、23,23’,23” インナーリング部、24 雌ネジ部(ネジ部)、26 テーパ部、27 係合突出部(第1係合部)、27” 係合溝部(第2係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容した容器本体と、前記容器本体の口部に着脱自在に螺着されて前記口部の上端開口を閉塞する有頂筒状のキャップと、を備え、
前記口部及び前記キャップのそれぞれに形成されると共に互いに螺合するネジ部が多条ネジとされた容器において、
前記口部のうち上端部の内径は、該上端部に該上端部の下方から連設された基部の内径よりも大きく、前記上端部の内周面と前記基部の内周面とは、段部を介して連結され、
前記キャップが、前記口部内に配設されたインナーリング部を有し、
前記インナーリング部の下端部には、外径が下端から上方に向かうにしたがって漸次大きくなるテーパ部が形成されており、
前記インナーリング部が、前記基部と前記段部との接続部分に密接していることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記段部は、径方向外側から内側に向かうにしたがって漸次下方に向かって延びるテーパ状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記インナーリング部には、第1係合部が形成されており、
前記口部の上端部には、前記第1係合部と係合する第2係合部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−232773(P2012−232773A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101985(P2011−101985)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】