説明

容積算出方法、容積算出装置、及び冷媒漏れ試験装置。

【課題】採寸によって算出された槽内の容積値に頼ることなく、対象空間の空間容積を算出することができる容積算出方法等を提供する。
【解決手段】対象空間Atに所定量の濃度測定用ガスを注入したときの濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、対象空間Atに予め容積(Vb)が求められている既知容積物を投入し、対象空間Atに所定量の濃度測定用ガスを注入したときの濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、数式「Vx×C1=(Vx−Vb)×C2」を用いて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積算出方法、容積算出装置、及び冷媒漏れ試験装置に関し、特に対象空間の空間容積を高精度に算出できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
対象空間の空間容積(Vx)を算出するための方法としては、例えば下記非特許文献1に記載されているものが知られている。対象空間の空間容積(Vx)としては、例えば、試験品を配置したときの試験槽内の実質的空間容積であり、この対象空間の空間容積(Vx)に基づいて試験品から漏れ出る冷媒量を試験することが考えられている。ここで、対象空間の空間容積(Vx)は、試験槽の容積(V)から試験品の実質的容積(V1)を差し引いた容積(V−V1)で求められる。
【0003】
従来の空間容積(Vx)の算出方法では、まず、試験品を除いた状態で試験槽内に濃度測定用ガスを注入し、当該試験槽内の濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定する。そして、試験槽内に試験品を配置した状態で上記と同量の濃度測定用ガスを試験槽内に注入し、当該試験槽内の濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定する。
【0004】
試験槽の容積(V)、対象空間の空間容積(Vx)、第1の濃度(C1)、及び第2の濃度(C2)は下記数式1の関係を満たすことから、当該数式1から対象空間の空間容積(Vx)を求める。
【0005】
(数1)
V×C1=Vx×C2
V×C1=(V−V1)×C2
ここで、試験槽の容積(V)は、下記非特許文献1によれば、採寸に基づく算術計算で求めることができるため、上記数式1に基づいて試験品の容積(V1)を求め、試験槽の容積(V)から試験品の容積(V1)を差し引くことで対象空間の空間容積(Vx)を算出することができる。
【非特許文献1】“欧州冷媒規制に関する冷媒漏れ測定手法について−GCによる測定検討結果の報告−”2004年9月、株式会社島津製作所
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、試験槽内には試験品以外に、配管やケーブル等の試験を行うために必要な部材が配置されており、中には内部にガス冷媒が進入し得る空間容積を保持するものもあるため、現実の試験槽の容積(V)は、採寸に基づいて算出しても正確な容積値を求めることは困難である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、採寸によって算出された槽内の容積値に頼ることなく、対象空間の空間容積を算出することができる容積算出方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出方法であって、対象空間に所定量の濃度測定用ガスを注入したときの濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、第1のガス濃度(C1)の測定と前後して、対象空間に予め容積(Vb)が求められている既知容積物を投入し、対象空間に所定量の濃度測定用ガスを注入したときの濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、下記数式1の関係に基づいて対象空間の空間容積(Vx)を算出することを特徴としている。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【0009】
請求項3の発明では、対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出装置であって、対象空間内に所定量の濃度測定用ガスを注入するガス注入手段と、対象空間内の濃度測定用ガスのガス濃度を検出する濃度検出手段と、対象空間内に収められるものであり、予め容積(Vb)が求められている既知容積物と、ガス濃度及び既知容積物の容積(Vb)に基づいて対象空間の空間容積(Vx)を算出する容積算出手段を備え、濃度検出手段は、既知容積物が収められていないときの濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、既知容積物が対象空間内に収められているときの濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、容積算出手段は、下記数式1の関係に基づいて対象空間の空間容積(Vx)を算出することを特徴としている。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【0010】
請求項1及び請求項3の発明によれば、対象空間の空間容積(Vx)を、予め容積が求められている既知容積物の容積(Vb)により求めることができる。この既知容積物としては、矩形箱体等の容積算出が容易な容積物とすることが望ましい。これにより、採寸に基づいて算出した試験槽の容積値に頼ることなく対象空間の空間容積(Vx)を高精度に求めることができる。
【0011】
請求項2の発明では、容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)が互いに異なる複数の既知容積物を用いて、複数の既知容積物を個別に対象空間内に投入したときの第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、複数の既知容積物について空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、それぞれの空間容積(Vxn)に基づいて既知容積物の容積(Vb)をゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出することを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明では、容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)が互いに異なる複数の既知容積物を有しており、濃度検出手段は、複数の既知容積物を個別に対象空間内に投入したときの第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、容積算出手段は、複数の既知容積物の容積(Vbn)について空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、それぞれの空間容積(Vxn)に基づいて既知容積物の容積(Vb)をゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出する推定空間容積算出手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項2及び請求項4の発明では、既知容積物が投入されていないとしたときの対象空間の空間容積を求めるものであり、このようにすれば、既知容積物の影響が排除された真の空間容積を算出することができる。
【0014】
請求項5の発明では、請求項3又は請求項4に記載の容積算出装置を用いた冷媒漏れ試験装置であって、冷媒を封入した試験品が納められ、内部に対象空間が形成されている試験槽と、対象空間内の状態、及び空間容積(Vx)もしくは推定空間容積(Vn)に基づいて試験品からの冷媒漏れを測定する測定手段とを備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明によれば、上記発明によって算出された対象空間の空間容積を利用して冷媒漏れを測定するようにしているため、測定量の測定精度を高精度化することができる。
【0016】
請求項6の発明では、対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出方法であって、対象空間に外部からの制御により容積(Vb)を略0から所定容積まで変更可能な容積可変物を投入し、対象空間内に所定量の濃度測定用ガスを注入し、容積可変物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、第1のガス濃度(C1)の測定と前後して、可変容積物の容積(Vb)を任意の容積としたときの濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、下記数式1の関係に基づいて対象空間の空間容積(V)を算出することを特徴としている。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【0017】
請求項8の発明では、対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出装置であって、対象空間内に所定量の濃度測定用ガスを注入するガス注入手段と、対象空間内の濃度測定用ガスのガス濃度を検出する濃度検出手段と、対象空間内に収められるものであり、外部からの制御により容積(Vb)を略0から所定容積まで変更可能な容積可変物と、ガス濃度及び可変容積物の容積(Vb)に基づいて対象空間の空間容積(Vx)を算出する容積算出手段を備え、濃度検出手段は、可変容積物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、可変容積物の容積(Vb)を任意の容積としたときの濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、容積算出手段は、下記数式1の関係に基づいて対象空間の空間容積(Vx)を算出することを特徴としている。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【0018】
請求項6及び請求項8の発明によれば、請求項1及び請求項3の発明による効果に加え、以下の効果が得られる。即ち、第1のガス濃度及び第2のガス濃度を測定するにあたって、対象空間内への容積物を出し入れする必要がない。このため、一旦対象空間内に濃度測定用ガスを注入すれば、両ガス濃度を測定できるため、注入する濃度検出用ガスの注入量のばらつきに起因する空間容積の算出精度の低下を防止し、高精度に空間容積を算出できる。
【0019】
請求項7の発明では、可変容積物の容積(Vb)を複数種類の容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)に任意に変更し、各容積(Vbn)における第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、複数種類の容積(Vbn)について空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、それぞれの空間容積(Vxn)に基づいて可変容積物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出することを特徴としている。
【0020】
請求項9の発明では、可変容積物の容積(Vb)を、複数種類の容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)に変更し、濃度測定手段は、複数種類の容積(Vbn)における第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、容積算出手段は、複数種類の容積(Vbn)について空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、それぞれの空間容積(Vxn)に基づいて可変容積物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出する推定空間容積算出手段を備えたことを特徴としている。
【0021】
請求項7及び請求項9の発明によれば、請求項2及び請求項4の効果、請求項6及び請求項8の効果が相乗的に働くため、空間容積の算出精度を一層高精度化することができる。
【0022】
請求項10の発明では、請求項8又は請求項9に記載の容積算出装置を用いた冷媒漏れ試験装置であって、冷媒を封入した試験品が納められ、内部に対象空間が形成されている試験槽と、対象空間内の状態、及び空間容積(Vx)もしくは推定空間容積(V0)に基づいて試験品からの冷媒漏れを測定する測定手段とを備えたことを特徴としている。
【0023】
請求項10の発明によれば、上記発明によって算出された対象空間の空間容積を利用して冷媒漏れを測定するようにしているため、測定量の測定精度を高精度化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施形態>
本発明の実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。本実施形態は、冷凍サイクルを構成するコンプレッサ100を試験品とする冷媒漏れ試験装置に関し、その全体構成を図1に示す。
【0025】
試験槽1は、内部に試験品であるコンプレッサ100からの冷媒漏れを試験するための密閉空間Aを形成しており、当該密閉空間A内には、コンプレッサ100を駆動するための駆動用モータ200、及びその付属品300が収容されているとともに、試験に必要な配管等の部材が配されている。このように試験に必要な部材等が配置された状態でコンプレッサ100が密閉空間A内に配置される。また、試験槽1には、密閉空間Aを定温・定圧に維持するための機能が備えられている。
【0026】
冷凍サイクルのうち試験対象外となっているコンデンサ400、エバポレータ500等の構成要素は試験槽1外に配されており、配管を介してコンプレッサ100と接続された状態となっている。本実施形態ではコンプレッサ100のみが試験対象となっているが、コンプレッサ100以外の構成要素を試験対象に含めても良い。その場合には、試験対象となる構成要素を試験槽1の密閉空間Aに収容することとなる。
【0027】
また、試験槽1内には、各種センサが配置されており、例えば密閉空間A内部の圧力や温度を検出する圧力センサ、温度センサが配置されている。
【0028】
ガスクロマトグラフ2(濃度測定手段)は、周知のものであり、本実施形態では試験槽1内の冷媒濃度を測定するために用いる。当該ガスクロマトグラフ2は、測定した冷媒濃度に関する情報を後述するコントローラ3(容積算出手段、測定手段)に送信する。
【0029】
コントローラ3は、各種センサにより検出された物理量及びガスクロマトグラフ2から送信された冷媒濃度に関する情報に基づいてコンプレッサ100からの冷媒漏れ量mを算出する。冷媒漏れ量mの算出式は下記数式2により求めることができる。
【0030】
【数2】

【0031】
R−134a:R134aモル質量=102(kg/kmol) R:気体定数=8.314(kJ/(kmol・K)) Vshed:試験槽容積(m) VMAC:試験品合算容積(m) Pshed:試験槽内圧力(kPa) Tshed:試験槽内温度(K) CR−134ae:R134a終期濃度(ppm) CR−134ai:R134a初期濃度(ppm) te:終了時刻(sec) ti:開始時刻(sec)
【0032】
上記数式1に示したように、コンプレッサ100からの冷媒漏れ量mは、密閉空間Aの空間容積Vshedから試験品容積VMACを差し引いた空間(対象空間At)の実質的な空間容積(Vx)により表される。従って、この対象空間Atの空間容積(Vx)を高精度に求めることが冷媒漏れ量mを高精度に測定することに繋がる。
【0033】
以下、対象空間Atの空間容積(Vx)算出のための構成とその方法について説明する。本実施形態では、濃度測定用ガスを試験槽1の密閉空間A内に注入するためのガス注入装置4(ガス注入手段)が備えられている。このガス注入装置4は、上述したコントローラ3からの指令によって、所定量の濃度測定用ガスを密閉空間A内に注入する。
【0034】
ガスクロマトグラフ2は、冷媒濃度を測定する他に、密閉空間A内における濃度測定用ガスのガス濃度を検出する。当該クロマトグラフ2が検出するガス濃度は第1のガス濃度(C1)と第2のガス濃度(C2)の2種類のガス濃度であり、これらのガス濃度(C1),(C2)に関する情報をコントローラ3に対して送信する。
【0035】
また、2種類のガス濃度(C1),(C2)を測定するにあたって、第2のガス濃度(C2)を測定する際には、密閉空間A内に既知容積物5を収容しておく。この既知容積物5は、容積(Vb)が予め求められているものであり、例えば矩形箱体形状により構成されている。
【0036】
コントローラ3は、上述した2種類のガス濃度(C1),(C2)、及び予め記憶しておいた既知容積物5の容積(Vb)に基づいて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出する。以下、空間容積(Vx)の算出方法について、図2又は図3を参照して説明する。
【0037】
まず、試験槽1の密閉空間A内を実際に空間容積(Vx)を求めたい空間状態に設定するために、即ち、対象空間Atを形成するために、コンプレッサ100、駆動用モータ200、その付属品300や必要な部材を収容する(ステップS100)。
【0038】
この後、作業者がコントローラ3に付属するコンソール等の操作手段(図示せず)により所定の操作を行ったことを条件として、コントローラ3はガス注入装置4に作動信号を送信する。ガス注入装置4はコントローラ3からの作動信号を受けて試験槽1内に所定量の濃度測定用ガスを注入する(ステップS110)。試験槽1内に注入された濃度測定用ガスの拡散方法としては、自然放散により行ってもよいし、試験槽1内にファン等の攪拌装置があればこれを用いてガスを拡散させるようにしてもよい。
【0039】
所定時間経過後、コントローラ3からガスクロマトグラフ2に対して測定信号を送信する。当該ガスクロマトグラフ2はコントローラ3からの測定信号を受けて試験槽1内の濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、この第1のガス濃度(C1)に基づく情報をコントローラ3に対して送信する(ステップS120。以上、図2(A)参照)。
【0040】
続いて、試験槽1を開放して密閉空間A内に既知容積物5を収容するとともに、試験槽1内の密閉空間A内に残留している濃度測定用ガスをパージする(ステップS130)。ガスパージの方法としては、自然放散による方法のほかに排気ファンによって試験槽1内の濃度測定用ガスを強制的に槽外に排出するようにしても良い。ガスパージの終了後は、試験槽1を閉じる。
【0041】
このときの密閉空間A内の空間容積は、対象空間Atの空間容積(Vx)から既知容積物5の容積(Vb)を差し引いた容積(Vxa(Vx−Vb))となる。
【0042】
そして、作業者がコントローラ3の操作手段により所定の操作がなされたときには、コントローラ3はガス注入装置4に作動信号を送信し、ガス注入装置4はコントローラ3からの作動信号を受けて試験槽1内に上述と同様に所定量の濃度測定用ガスを注入する(ステップS140)。
【0043】
所定時間経過後、コントローラ3からガスクロマトグラフ2に対して測定信号を送信する。当該ガスクロマトグラフ2はコントローラ3からの測定信号を受けて試験槽1内の濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、この第2のガス濃度(C2)に関する情報をコントローラ3に対して送信する(ステップS150。以上図2(B)参照)。
【0044】
最後に、コントローラ3は、取得した第1のガス濃度(C1)、第2のガス濃度(C2)、及び予め記憶されている既知容積物5の容積(Vb)を用いて、下記数式3に基づいて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出する(ステップS160)。
【0045】
(数3)
Vx×C1=Vxa×C2
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
Vx×C1=Vx×C2−Vb×C2
Vx(C2−C1)=Vb×C2
Vx=Vb×C2/(C2−C1)
Vx=Vb/(1−C1/C2)
【0046】
上記数式3によれば、対象空間Atの空間容積(Vx)が、第1のガス濃度(C1)、第2のガス濃度(C2)、及び既知容積物5の容積(Vb)により表されることが判る。
【0047】
従来方法では、試験槽1内の密閉空間Aの空間容積Vshedを採寸による算術計算で求め、この空間容積Vshedを用いて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出していた。しかし、現実には、密閉空間A内に駆動用モータ200やその付属品300、さらには試験に必要な配管等の必要な部材が配置されており、さらには、これらの部材等の中には内部にガスが進入しえる空間容積を有するものもあるため、これらの事情を考慮して算術計算により密閉空間A内の空間容積Vshedを正確に求めることは困難である。
【0048】
本実施形態では、予め容積(Vb)が求められている既知容積物5を用いて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出するようにしているため、密閉空間A内に試験品以外の機材が配置されていたとしても、対象空間Atの空間容積(Vx)を高精度に求めることができる。
【0049】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について図4又は図5を参照して説明する。本実施形態は、容積(Vbn)(n=1,2,3)が互いに異なる3つの既知容積物51,52,53を個別に試験槽1の内部空間V内に投入したときの第2のガス濃度C2nをそれぞれ測定して、各既知容積物51,52,53に基づいて対象空間Atの空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、これらの空間容積(Vxn)から既知容積物の容積をゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出し、この推定空間容積(V0)を上記数式3に適用して冷媒漏れ量mを算出するものである。
【0050】
第1のガス濃度C1の測定については上記第1の実施形態と同様であるから説明を省略し、第2のガス濃度C2nの測定について以下に説明する。
【0051】
用意した3つの既知容積物51,52,53のうち、はじめに既知容積物51を内部空間V内に投入し、このときの第2のガス濃度C21を測定する(図4(A)参照)。続いて、既知容積物51に代えて既知容積物52を内部空間V内に投入し、このときの第2のガス濃度C22を測定する(図4(B)参照)。最後に、既知容積物52に代えて既知容積物53を内部空間V内に投入し、このときの第2のガス濃度C23を測定する(図4(C)参照)。従って、図3において、ステップS130〜S150の手順を3回づつ実行することとなる。
【0052】
そして、各既知容積物51,52,53について上記数式3を基本として、下記数式4〜6を用いて空間容積(Vx1)〜(Vx3)をそれぞれ算出する。
【0053】
(数4)
Vx1=Vb1/(1−C1/C21)
(数5)
Vx2=Vb2/(1−C1/C22)
(数6)
Vx3=Vb3/(1−C1/C23)
【0054】
ここで、コントローラ3(推定空間容積算出手段)は、算出された対象空間Atの空間容積(Vx1)〜(Vx3)から既知容積物の容積をゼロとしたときの対象空間Atの推定空間容積(V0)を算出する。その方法としては、図5に示すように、各既知容積物51,52,53の容積(Vb1)〜(Vb3)において算出された対象空間Atの空間容積(Vx1)〜(Vx3)をプロットし、各プロット点を直線近似する。そして、近似直線と容積ゼロとの交点における対象空間Atの空間容積値を推定空間容積(V0)として求めることができる。
【0055】
本実施形態によれば、既知容積物5の容積(Vb)をゼロとしたときの対象空間Atの空間容積(V0)を求めることができるため、既知容積物5の影響を排除して高精度に空間容積を算出することができる。
【0056】
<第3の実施形態>
本発明に係る第3の実施形態について図6又は図7を参照して説明する。本実施形態では、容積(Vb)を変更可能な可変容積物6を用いて、対象空間Atの空間容積(Vx)を算出するようにしている。
【0057】
本実施形態で用いられる可変容積物6は、例えば、内部に所定の空間容積を確保することができる風船状の容積物や、蛇腹状の容積物を用いることができる。この可変容積物6は、外部から注入されるガスによって、その容積を増大させることができる。この可変容積物6内にガスを注入するためには、例えば、注入すべきガス量を種々変更することができるコンプレッサ等のガス注入手段を用いればよい。ここで、ガス注入前の可変容積物6の初期容積は、略ゼロとみなす。ガスの注入タイミング及び注入量は作業者の操作により決定しても良く、あるいはコントローラからの指示により決定するようにしても良い。
【0058】
このような可変容積物6を用いて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出する方法をについて、説明する。まず、上記実施形態と同様に、試験槽1内の密閉空間Aを実際に空間容積(Vx)を求めたい空間状態に設定するために、コンプレッサ100、駆動用モータ200、その付属品300や必要な部材を収容する(ステップS200)。
【0059】
この後、作業者がコントローラ3に付属する操作手段により所定の操作を行ったことを条件として、コントローラ3はガス注入装置4に作動信号を送信する。ガス注入装置4はコントローラ3からの作動信号を受けて試験槽1内に所定量の濃度測定用ガスを注入する。このとき、可変容積物6内へのガス注入量をゼロとしておく(ステップS210)。
【0060】
所定時間経過後、コントローラ3からガスクロマトグラフ2に対して測定信号を送信する。当該ガスクロマトグラフ2はコントローラ3からの測定信号を受けて密閉空間A内の濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、この第1のガス濃度(C1)に関する情報をコントローラ3に対して送信する(ステップS220。以上、図6(A)参照)。
【0061】
続いて、可変容積物6を試験槽1内に投入したままの状態で、当該可変容積物6内に所定量のガスを注入し、当該可変容積物6の容積を所定容積(Vb)に増大させる(ステップS230)。従って、密閉空間A内の空間容積は、対象空間Atの空間容積(Vx)から可変容積物6のガス注入後の容積(Vb)を差し引いた容積(Vxa(Vx−Vb))となる。
【0062】
この後、コントローラ3からガスクロマトグラフ2に対して測定信号を送信し、当該ガスクロマトグラフ2はコントローラ3からの測定信号を受けて密閉空間A内の濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、この第2のガス濃度(C2)に関する情報をコントローラ3に対して送信する(ステップ240。以上、図6(B)参照)。
【0063】
最後に、コントローラ3は、取得した第1及び第2のガス濃度C1,C2及び予め記憶されている可変容積物6の初期容積(略ゼロ)及びガス注入後の容積(Vb)を用いて、上記数式3に基づいて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出する(ステップS250)。
【0064】
このように本実施形態によれば、可変容積物6を用いて対象空間Atの空間容積(Vx)を算出するようにしているため、第1のガス濃度(C1)及び第2のガス濃度(C1)を測定するにあたって、密閉空間A内への容積物の出し入れの必要がない。このため、一旦密閉空間A内に濃度測定用ガスを注入すれば、両ガス濃度(C1),(C2)を連続して測定できるため、注入する濃度検出用ガスの注入量のばらつきに起因する空間容積(Vx)の算出精度の低下を防止し、高精度に空間容積(Vx)を算出できる。さらには、容積物の出し入れを行う必要がないので測定時間を短縮化することができる。
【0065】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について図8又は図9を参照して説明する。本実施形態では、可変容積物6の容積(Vb)を2以上の容積(Vbn)(n=1,2,3)に変更し、各容積(Vbn)において第2のガス濃度C2nをそれぞれ測定して、各容積(Vbn)に基づいて対象空間Atの空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、各空間容積(Vxn)に基づいて可変容積物6の容積(Vb)を略ゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出し、この推定空間容積(V0)を用いて冷媒漏れ量mを算出するものである。
【0066】
第1のガス濃度C1の測定については、、上記実施形態と同様であるからその説明を省略し、第2のガス濃度C2nの測定について以下に説明する。
【0067】
本実施形態では、可変容積物6の容積を第1の容積(Vb1)、第2の容積(Vb2)、及び第3の容積(Vb3)(Vb1<Vb2<Vb3)の3パターンに変更する。
【0068】
まず、初期容積とされている可変容積物6内にガスを注入し、その容積を第1の容積(Vb1)に増大させ、このときの第2のガス濃度(C21)を測定する(図8(A)参照)。そして、可変容積物6内にさらにガスを追加注入して容積を第2の容積(Vb2)に増大させ、このときの第2のガス濃度(C22)を測定する(図8(B)参照)。最後に、可変容積物6内にさらにガスを追加注入して容積を第3の容積(Vb3)に増大させ、このときの第2のガス濃度(C23)を測定する(図8(C)参照)。従って、図7において、ステップS230、S240の手順を3回づつ実行することとなる。
【0069】
次に、可変容積物6の3つの容積(Vb1)〜(Vb3)について、対象空間Atの空間容積(Vx1)〜(Vx3)を上記数式4〜6に基づいてそれぞれ算出する。
【0070】
そして、図9に示すように、算出された対象空間Atの空間容積(Vx1)〜(Vx3)から可変容積物6の容積をゼロとしたときの対象空間Atの推定空間容積(V0)を、上記実施形態1と同様にして算出する。
【0071】
本実施形態によれば、可変容積物6が投入されていないとしたときの対象空間Atの空間容積(V0)を求めることができるため、可変容積物6の影響が排除された真の空間容積(V0)を算出することができる。
【0072】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0073】
上記実施形態では、第1のガス濃度(C1)を先に測定し、その後に第2のガス濃度(C2)を測定する順番であったが、第2のガス濃度(C2)を先に測定し、その後に第1のガス濃度(C1)を測定するようにしてもよい。
【0074】
第2の実施形態では、既知容積物を3つ用いた例を示したが、用いる既知容積物の数は3つに限らず、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0075】
また、第4の実施形態では、可変容積物6の容積を3種類に変更し、それぞれの容積に基づいて算出された空間容積の基づいて推定空間容積(V0)を算出するものであったが、可変容積物6の容積は2種類または4種類以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る冷媒漏れ試験装置の全体構成を示した概略図である。
【図2】対象空間の空間容積算出の手順を示した概念図であり、(A)は、第1のガス濃度の測定方法を示した概念図である。(B)は、第2のガス濃度の測定方法を示した概念図である。
【図3】空間容積算出方法の手順を示したフローチャートである。
【図4】第2の実施形態において、各既知容積物について第2のガス濃度の測定方法を示した概念図である。
【図5】推定空間容積の算出方法を示した概念図である。
【図6】第3の実施形態において、対象空間の空間容積算出の手順を示した概念図であり、(A)は、第1のガス濃度の測定方法を示した概念図である。(B)は、第2のガス濃度の測定方法を示した概念図である。
【図7】空間容積算出方法の手順を示したフローチャートである。
【図8】第4の実施形態において、可変容積物の各容積について第2のガス濃度の測定方法を示した概念図である。
【図9】推定空間容積の算出方法を示した概念図である。
【符号の説明】
【0077】
1…試験槽
2…ガスクロマトグラフ(濃度検出手段)
3…コントローラ(容積算出手段、推定空間容積算出手段)
4…ガス注入装置(ガス注入手段)
5,51,52,53…既知容積物
6…可変容積物
100…コンプレッサ
C1…第1のガス濃度
C2,C21,C22,C23…第2のガス濃度
A…密閉空間
At…対象空間
Vb,Vb1,Vb2,Vb3…容積
Vx…対象空間の空間容積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出方法であって、
前記対象空間に所定量の濃度測定用ガスを注入したときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、
前記第1のガス濃度(C1)の測定と前後して、前記対象空間に予め容積(Vb)が求められている既知容積物を投入し、前記対象空間に前記所定量の濃度測定用ガスを注入したときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、
下記数式1の関係に基づいて前記対象空間の空間容積(Vx)を算出することを特徴とする容積算出方法。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【請求項2】
前記容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)が互いに異なる複数の前記既知容積物を用いて、複数の前記既知容積物を個別に前記対象空間内に投入したときの前記第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、複数の前記既知容積物について前記空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、それぞれの前記空間容積(Vxn)に基づいて前記既知容積物の容積(Vb)をゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出することを特徴とする請求項1に記載の容積算出方法。
【請求項3】
対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出装置であって、
前記対象空間内に所定量の濃度測定用ガスを注入するガス注入手段と、
前記対象空間内の前記濃度測定用ガスのガス濃度を検出する濃度検出手段と、
前記対象空間内に収められるものであり、予め容積(Vb)が求められている既知容積物と、
前記ガス濃度及び前記既知容積物の容積(Vb)に基づいて前記対象空間の空間容積(Vx)を算出する容積算出手段を備え、
前記濃度検出手段は、前記既知容積物が収められていないときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、前記既知容積物が前記対象空間内に収められているときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、
前記容積算出手段は、下記数式1の関係に基づいて前記対象空間の空間容積(Vx)を算出することを特徴とする容積算出装置。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【請求項4】
前記容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)が互いに異なる複数の前記既知容積物を有しており、
前記濃度検出手段は、複数の前記既知容積物を個別に前記対象空間内に投入したときの前記第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、
前記容積算出手段は、複数の前記既知容積物の容積(Vbn)について前記空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、
それぞれの前記空間容積(Vxn)に基づいて前記既知容積物の容積(Vb)をゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出する推定空間容積算出手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の容積算出装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の容積算出装置を用いた冷媒漏れ試験装置であって、
冷媒を封入した試験品が納められ、内部に前記対象空間が形成されている試験槽と、
前記対象空間内の状態、及び前記空間容積(Vx)もしくは前記推定空間容積(V0)に基づいて前記試験品からの冷媒漏れを測定する測定手段とを備えたことを特徴とする冷媒漏れ試験装置。
【請求項6】
対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出方法であって、
前記対象空間に外部からの制御により容積(Vb)を略0から所定容積まで変更可能な容積可変物を投入し、
前記対象空間内に所定量の濃度測定用ガスを注入し、
前記容積可変物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、
前記第1のガス濃度(C1)の測定と前後して、前記可変容積物の容積(Vb)を任意の容積としたときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、
下記数式1の関係に基づいて前記対象空間の空間容積(V)を算出することを特徴とする容積算出方法。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【請求項7】
前記可変容積物の容積(Vb)を複数種類の容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)に任意に変更し、各容積(Vbn)における前記第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、前記複数種類の容積(Vbn)について前記空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、それぞれの前記空間容積(Vxn)に基づいて前記可変容積物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出することを特徴とする請求項6に記載の容積算出方法。
【請求項8】
対象空間の空間容積(Vx)を算出するための容積算出装置であって、
前記対象空間内に所定量の濃度測定用ガスを注入するガス注入手段と、
前記対象空間内の前記濃度測定用ガスのガス濃度を検出する濃度検出手段と、
前記対象空間内に収められるものであり、外部からの制御により容積(Vb)を略0から所定容積まで変更可能な容積可変物と、
前記ガス濃度及び前記可変容積物の容積(Vb)に基づいて前記対象空間の空間容積(Vx)を算出する容積算出手段を備え、
前記濃度検出手段は、前記可変容積物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第1のガス濃度(C1))を測定し、前記可変容積物の容積(Vb)を任意の容積としたときの前記濃度測定用ガスのガス濃度(第2のガス濃度(C2))を測定し、
前記容積算出手段は、下記数式1の関係に基づいて前記対象空間の空間容積(Vx)を算出することを特徴とする容積算出装置。
(数1)
Vx×C1=(Vx−Vb)×C2
【請求項9】
前記可変容積物の容積(Vb)を、複数種類の容積(Vbn)(n=1,2,3・・・)に変更し、
前記濃度測定手段は、前記複数種類の容積(Vbn)における前記第2のガス濃度(C2n)をそれぞれ測定し、
前記容積算出手段は、前記複数種類の容積(Vbn)について前記空間容積(Vxn)をそれぞれ算出し、
それぞれの前記空間容積(Vxn)に基づいて前記可変容積物の容積(Vb)を略ゼロとしたときの推定空間容積(V0)を算出する推定空間容積算出手段を備えたことを特徴とする請求項8に記載の容積算出装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の容積算出装置を用いた冷媒漏れ試験装置であって、
冷媒を封入した試験品が納められ、内部に前記対象空間が形成されている試験槽と、
前記対象空間内の状態、及び前記空間容積(Vx)もしくは前記推定空間容積(V0)に基づいて前記試験品からの冷媒漏れを測定する測定手段とを備えたことを特徴とする冷媒漏れ試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−51561(P2008−51561A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225800(P2006−225800)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)