説明

密度センサ

【課題】本発明は、振動子の周囲の温度が変化しても測定物の密度を正確に測定することができる密度センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の密度センサは、振動子11の共振周波数よりも低周波の初期信号を発生させる初期信号波出力手段26の初期信号波とAM復調器30の信号波とを比較する比較回路31を設けた構成としたものである。これにより、振動子の周囲の温度が変化しても測定物の密度を正確に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、気体あるいは液体の密度を検出する密度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の密度センサは図7、図8に示すような構成となっていた。
【0003】
図7、図8において、1は振動子、2はリード棒で、このリード棒2は信号変換回路3と電気的に接続され、そして、この信号変換回路3は、発振回路4、基準信号発生回路5、周波数測定回路6、周波数気圧変換回路7および表示駆動回路8により構成していた。
【0004】
以上のように構成された従来の密度センサについて、次に、その動作を説明する。
【0005】
従来の密度センサは、大気中に置かれた振動子1の周囲の気体密度が気圧に比例するため、その気圧に応じた周波数の変化を発振回路4により検出し、そして、この発振信号を入力として基準信号発生回路5と周波数測定回路6とにより周波数の変化を検出し、さらに、周波数気圧変換回路7および表示駆動回路8を介して表示情報を表示部9に出力することにより、大気圧の変化量を検出するものであった。
【0006】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】実開昭61−167537号公報(実願昭60−50673号のマイクロフィルム)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の密度センサの構成では、振動子1の周囲の気体密度に応じた周波数の変化を発振回路4により検出するものであるため、振動子1の周囲の温度が変化すると振動子1の縦弾性係数が変化することになり、これにより、振動子1の共振周波数が変化するため、空気の密度を正確に測定することができなくなってしまうという課題を有していた。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、振動子の周囲の温度が変化しても測定物の密度を正確に測定することができる密度センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明は、振動子と、この振動子の共振により発生する出力信号から搬送波を生成する搬送波発生回路と、前記振動子の共振により発生する出力信号を復調することにより信号波を出力するAM復調器と、前記振動子の共振周波数よりも低周波の初期信号波を発生させる初期信号波出力手段と、この初期信号波出力手段からの初期信号波と前記搬送波発生回路からの出力信号とを変調して合成した変調信号を駆動信号として前記振動子に入力するAM変調器とを備え、前記初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波とを比較する比較回路を設けたもので、この構成によれば、初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波とを比較する比較回路を設けているため、初期信号波出力手段の初期信号波とAM変調器の信号波は同一の温度条件で比較されることになり、これにより、振動子の周囲の温度が変化することにより振動子の縦弾性係数が変化し、そして振動子の共振周波数が変化しても測定物(空気)の密度を正確に測定できるという作用効果を有するものである。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、比較回路で、初期信号波出力手段の初期信号波とAM変調器の信号波との位相差を比較するようにしたもので、この構成によれば、初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波との位相差が共に、振動子の温度変化による縦弾性係数の変化の影響を受けないため、振動子の周囲の温度が変化しても、測定物(空気)の密度をさらに正確に測定できるという作用効果を有するものである。
【0012】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、搬送波発生回路にAGC回路を設けるとともに、比較回路で、初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波との振幅差を比較するようにしたもので、この構成によれば、搬送波発生回路にAGC回路を設けるとともに、比較回路で、初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波との振幅差を比較するようにしているため、振動子の周囲の温度が変化して、振動子の縦弾性係数が変化しても、AGC回路により、搬送波発生回路で生成される搬送波の振動の振幅を一定にすることができ、これにより、振動子の周囲の温度が変化しても、測定物(空気)の密度をさらに正確に測定できるという作用効果を有するものである。
【0013】
本発明の請求項4に記載の発明は、特に、振動子を密度測定物質中で振動駆動させたときに、振動子における共振周波数での位相特性よりもπ/4rad位相が偏移する点の周波数での位相差を比較回路により比較するようにしたもので、この構成によれば、π/4rad位相が偏移する点の周波数での位相差は、振動子の周囲の気体の密度により大きく変化するため、密度測定の感度が向上するという作用効果を有するものである。
【0014】
本発明の請求項5に記載の発明は、特に、振動子の振幅が所定の振幅になった際にAM変調器が動作するように、AM変調器に動作スイッチを設けたもので、この構成によれば、振動子の振幅が所定の振幅になった際にAM変調器が動作するように、AM変調器に動作スイッチを設けているため、振動子の振幅が所定の振幅になる前は、AM変調器は動作しないことになり、これにより、共振周波数以外での共振をすることはなくなり、不正確な出力信号を出力することもないため、出力信号の信頼性が向上するという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の密度センサは、振動子と、この振動子の共振により発生する出力信号から搬送波を生成する搬送波発生回路と、前記振動子の共振により発生する出力信号を復調することにより信号波を出力するAM復調器と、前記振動子の共振周波数よりも低周波の初期信号波を発生させる初期信号波出力手段と、この初期信号波出力手段からの初期信号波と前記搬送波発生回路からの出力信号とを変調して合成した変調信号を駆動信号として前記振動子に入力するAM変調器とを備え、前記初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波とを比較する比較回路を設けているため、初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波は同一の温度条件で比較されることになり、これにより、振動子の周囲の温度が変化することにより振動子の縦弾性係数が変化し、そして振動子の共振周波数が変化しても測定物(空気)の密度を正確に測定することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態における密度センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態における密度センサの回路図、図2は同密度センサにおける振動子の斜視図である。
【0018】
図1、図2において、11は振動子で、この振動子11は四角柱状の水晶製の駆動電極振動体12と、四角柱状の水晶製のモニタ電極振動体13と、水晶製の接続部14とにより構成されている。そして、前記駆動電極振動体12は4つの側面に金からなる駆動電極15aおよび15bを設けている。また前記モニタ電極振動体13は駆動電極振動体12と平行に設けられており、その表面および裏面に金からなるモニタ電極16を設けている。19は搬送波発生回路で、この搬送波発生回路19は前記振動子11のモニタ電極16の電荷を入力する増幅器20と、この増幅器20の出力信号を入力するバンドパスフィルタ21と、このバンドパスフィルタ21の出力信号を入力する整流器22と、この整流器22の出力信号を入力する平滑回路23とにより構成されている。24はAGC回路で、このAGC回路24は前記搬送波発生回路19における平滑回路23の出力信号を入力し、前記バンドパスフィルタ21の出力信号を増幅あるいは減衰させるものである。25は駆動制御回路で、この駆動制御回路25は前記AGC回路24の出力信号を入力するとともに、振動子11における共振周波数からなる搬送波を出力信号として出力するものである。26は初期信号波出力手段で、この初期信号波出力手段26は、振動子11の共振周波数よりも低周波の初期信号波を出力するものである。27はAM変調器で、このAM変調器27は前記搬送波発生回路19における搬送波からなる出力信号と初期信号波出力手段26からの初期信号波とを変調して合成した変調信号を前記振動子11における駆動電極15aに入力するものである。28は反転アンプで、この反転アンプ28は前記AM変調器27からの変調信号を反転させた後、振動子11における駆動電極15bに入力するものである。29は動作スイッチで、この動作スイッチ29は前記AM変調器27の動作を切り替えるものである。
【0019】
上記したように本発明の一実施の形態においては、振動子11の振幅が所定の振幅になった際にAM変調器27が動作するように、AM変調器27に動作スイッチ29を設けているため、振動子11の振幅が所定の振幅になる前は、AM変調器27が動作するということはなくなり、これにより、共振周波数以外での共振を防止することができ、そして不正確な出力信号を出力することもないため、出力信号の信頼性が向上するという効果が得られるものである。
【0020】
また、図1、図2において、30はAM復調器で、このAM復調器30は前記モニタ電極振動体13におけるモニタ電極16に電気的に接続されるとともに、このモニタ電極16から出力される出力信号を復調することにより、搬送波分の信号を除去した出力信号を出力するものである。31は比較回路で、この比較回路31は初期信号波出力手段26からの初期信号波とAM復調器30からの信号波とを比較して演算することにより、振動子11の周辺の密度を検出するものである。
【0021】
上記のように本発明の一実施の形態においては、初期信号波出力手段26の初期信号波とAM復調器30の信号波とを比較する比較回路31を設けているため、初期信号波出力手段26の初期信号波とAM復調器30の信号波は同一の温度条件で比較されることになり、これにより、振動子11の共振周波数の変化による影響を受けることはなくなるため、振動子11の周囲の温度が変化することにより振動子11の縦弾性係数が変化し、そして振動子11の共振周波数が変化しても測定物(空気)の密度を正確に測定できるという効果が得られるものである。
【0022】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における密度センサについて、次にその動作を説明する。
【0023】
振動子11の駆動電極15aおよび15bに交流電圧を加えると前記振動子11が共振し、振動子11のモニタ電極16に電荷が発生する。そしてこのモニタ電極16に発生した電荷は、搬送波発生回路19における増幅器20に入力され、正弦波形の出力電圧として出力される。そしてこの増幅器20の出力電圧はバンドパスフィルタ21に入力され、振動子11の共振周波数のみを抽出し、ノイズ成分を除去し、図3(a)に示すような正弦波形が出力される。また、前記バンドパスフィルタ21の出力信号を整流器22に入力することにより、負電圧成分は正電圧に変換されて図3(b)に示すような出力信号が出力される。そして、この出力信号を平滑回路23に入力することにより、図3(c)に示すような直流電圧信号に変換される。そしてまた、AGC回路24は前記平滑回路23の直流電圧信号が大の場合には前記バンドパスフィルタ21の出力信号を減衰させるような信号を、一方、前記平滑回路23の直流電圧信号が小の場合には前記バンドパスフィルタ21の出力信号を増幅させるような信号を駆動制御回路25に入力し、前記振動子11の振動を一定振幅になるように調整している。この後、AM変調器27により、図3(d)に示す駆動制御回路25からの出力信号と、図3(e)に示す初期信号波出力手段26からの初期信号波とを変調して合成することにより、図3(f)に示すような変調信号を振動子11における駆動電極15aに入力するとともに、この変調信号を反転アンプ28により反転させた後、振動子11における駆動電極15bに入力し、振動子11における駆動電極振動体12を振動駆動させる。そして、この振動は接続部14を伝わってモニタ電極振動体13に伝わり、水晶の分極に応じて、モニタ電極16に電荷が発生する。この電荷を増幅器(図示せず)により、出力信号として出力する。この出力信号は、図3(g)に示すように、振動子11における駆動電極15aおよび15bに入力される図3(f)の信号よりも位相がずれている。この位相のずれは、振動子11の周囲の気体が抵抗となって発生するものであり、気体の密度が大きい程、位相のずれも大きくなる。そして、モニタ電極振動体13におけるモニタ電極16からの出力信号をAM復調器30により復調して、図3(h)に示す出力信号を出力し、比較回路31により、図3(e)に示す初期信号波出力手段26からの初期信号波と比較して演算することにより、振動子11の周囲の気体の密度としての出力信号を外部に出力するものである。
【0024】
この場合、初期信号波出力手段26の初期信号波とAM復調器30の信号波との位相差は共に、振動子11の温度変化による縦弾性係数の変化の影響を受けないため、振動子11の周囲の温度が変化しても、測定物(空気)の密度をさらに正確に測定できるという効果が得られるものである。
【0025】
ここで、例えば、密度センサの高低の位置により、気体密度が気圧に比例することを利用して気圧の変化を検出する場合を考えて見ると、図4に示すように、密度センサを低地等の気圧の高い場所で使用して、AM復調器30の出力信号波と初期信号波出力手段26の初期信号波との位相差がπ/4radとなる周波数を記憶しておき、そして、高地等の気圧の低い場所に密度センサを移動させて、前述した周波数での位相を測定すると、気圧の低い場所では、位相差が低く出力されるものである。
【0026】
そして、π/4rad位相が偏移する点の周波数での位相差は、振動子11の周囲の気体の密度により大きく変化するため、密度測定の感度が向上するという効果が得られるものである。
【0027】
また、同様に、密度センサの振幅特性を測定すると、図5に示すように、振動子11の周囲の気体の密度が低いときに比較して、周囲の気体の密度が高い場合には、振幅は小さくなるものであり、したがって、振幅を比較することによっても、密度を検出することができるものである。
【0028】
すなわち、搬送波発生回路19にAGC回路24を設けるとともに、比較回路31で、初期信号波出力手段26の初期信号波とAM復調器30の信号波との振幅差を比較するようにしているため、振動子11の周囲の温度が変化して、振動子11の縦弾性係数が変化しても、AGC回路24により、搬送波発生回路19で生成される搬送波の振動を振幅を一定にすることができ、これにより、振動子11の周囲の温度が変化しても、測定物(空気)の密度をさらに正確に測定できるという効果が得られるものである。
【0029】
なお、上記本発明の一実施の形態における密度センサにおいては、振動子11として、水晶製の圧電型振動子を使用したものについて説明したが、図6に示すように、駆動電極32および検出電極33を設けた静電容量型振動子34を使用しても、上記本発明の一実施の形態における密度センサと同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る密度センサは、振動子の周囲の温度が変化しても測定物の密度を正確に測定することができるという効果を有するものであり、気体あるいは液体の密度を検出する密度センサとして有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態における密度センサの回路図
【図2】同密度センサにおける振動子の斜視図
【図3】(a)〜(h)同密度センサが動作したときの出力信号を示す波形図
【図4】同密度センサが動作したときの位相特性を示す図
【図5】同密度センサが動作したときの振幅特性を示す図
【図6】本発明の他の実施の形態の密度センサにおける振動子の側断面図
【図7】従来の密度センサの側面図
【図8】同密度センサの回路図
【符号の説明】
【0032】
11 振動子
19 搬送波発生回路
26 初期信号波出力手段
27 AM変調器
29 動作スイッチ
30 AM復調器
31 比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、この振動子の共振により発生する出力信号から搬送波を生成する搬送波発生回路と、前記振動子の共振により発生する出力信号を復調することにより信号波を出力するAM復調器と、前記振動子の共振周波数よりも低周波の初期信号波を発生させる初期信号波出力手段と、この初期信号波出力手段からの初期信号波と前記搬送波発生回路からの出力信号とを変調して合成した変調信号を駆動信号として前記振動子に入力するAM変調器とを備え、前記初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波とを比較する比較回路を設けた密度センサ。
【請求項2】
比較回路で、初期信号波出力手段の初期信号波とAM変調器の信号波との位相差を比較するようにした請求項1記載の密度センサ。
【請求項3】
搬送波発生回路にAGCを設けるとともに、比較回路で、初期信号波出力手段の初期信号波とAM復調器の信号波との振幅差を比較するようにした請求項1記載の密度センサ。
【請求項4】
振動子を密度測定物質中で振動駆動させたときに、振動子における共振周波数での位相特性よりもπ/4rad位相が偏移する点の周波数での位相差を比較回路により比較するようにした請求項2記載の密度センサ。
【請求項5】
振動子の振幅が所定の振幅になった際にAM変調器が動作するように、AM変調器に動作スイッチを設けた請求項1記載の密度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−58211(P2008−58211A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237227(P2006−237227)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)