説明

寝床用マット

【課題】 体圧分散効果に優れ、寝床内温湿度を快適に保ち、特に床ずれ軽減効果が期待できる寝床用マットを提供する。
【解決手段】 表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された少なくとも50%圧縮応力が異なる立体編物Aおよび立体編物Bが積層された寝床用マットであって、立体編物Aの50%圧縮応力が10N以上、180N以下、立体編物Bの50%圧縮応力が20N以上、190N以下、両者の立体編物の圧縮応力比が1.1以上、19.0以下であり、かつ、厚みが20mm以上200mm以下であることを特徴とする寝床用マット。
ただし、立体編物の圧縮応力比=(立体編物Bの50%圧縮応力)/(立体編物Aの50%圧縮応力)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝床用マット特に介護用敷マットとして好適に用いられる寝床用マットに関するものであり、特に床ずれ軽減効果が期待できる寝床用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
寝床用マットとしては、綿やポリエステルといった綿状の繊維を固めた芯材を織編物でカバーした、いわゆる敷き布団が一般的であるが、人体が臥床した場合、人体内部に骨突起がある特定部位では大きな圧迫感を感じる場合があり、必ずしも寝心地は良好ではない。
最近では圧迫を感じさせないウレタンフォームを芯材として用いたウレタンマットが使われる様になってきており、特に、床ずれに悩まされる人に多く使われている。床ずれは長時間の皮膚組織圧迫による血液循環阻害とそれに伴う組織壊死によって生ずると考えられており、特定部位を圧迫しないわゆる体圧分散効果が必要といわれている。ウレタンマットは体圧分散効果に優れてはいるものの、ウレタンフォームは水分を非常に吸収しやすく、一旦吸収するとなかなか乾燥できない。そのため、失禁等で汚れた場合などは洗濯をすることができず、防水性の生地でカバーされるのが一般的である。しかし、この防水カバーにより発汗等で発生した水分が身体との間で蓄積されやすく、皮膚組織の抵抗力が低減し、床ずれ発生する場合があった。
【0003】
ハニカム状立体編物が複数枚積層された寝床用シート状物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、文献では立体編物の圧縮特性に関しては特に限定されおらず、寝床用シート状物としの厚に関しても何ら記載されていない。また、寝床用シート状物の仙骨部体圧は記載されているものの、体圧を測定した被験者の身長や体重が記載されていないため、開示されている仙骨部の体圧値も具体性に欠けるものであった。
【特許文献1】特許第2846370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、寝床用マット特に介護用敷マットとして好適に用いられる寝床用マットに関するものであり、体圧分散効果に優れ、寝床内温湿度を快適に保ち、特に床ずれ軽減効果が期待でき、寝心地に優れた寝床用マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために、先ず床ずれ軽減に効果がある体圧分散効果と寝床内温湿度軽減に着目し、寝床用マットを構成するクッション材の種類や圧縮特性、その積層の組合わせ、更には寝床用マットの厚みについて鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、寝床用マット特に介護用敷マットとして好適に用いられる寝床用マットであり、体圧分散効果に優れ、寝床内温湿度を快適に保ち、特に床ずれ軽減効果が期待できる寝床用マットである。
本発明のベッドシーツは、皺が発生しにくいベッドシーツであり、快適性に優れ、床ズレ発生を軽減する効果が期待できるベッドシーツである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された少なくとも50%圧縮応力が異なる立体編物Aと立体編物Bが積層された寝床用マットであって、立体編物Aの50%圧縮応力が10N以上、180N以下、立体編物Bの50%圧縮応力が20N以上、190N以下、両者の立体編物の圧縮応力比が1.1以上、19.0以下であり、かつ厚みが20mm以上、200mm以下であることを特徴とする寝床用マット。
ただし、立体編物の圧縮応力比=(立体編物Bの50%圧縮応力)/(立体編物Aの50%圧縮応力)
(2)立体編物Aおよび立体編物Bが、それぞれ2層以上、15層以下、かつ交互あるいはランダムに積層されていることを特徴とする上記(1)に記載の寝床用マット。
(3)該立体編物A及びBの連結糸がモノフィラメント糸で構成されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の寝床用マット。
(3)該立体編物A及びBの連結糸のモノフィラメント糸がポリトリメチレンテレフタレート繊維であることを特徴とする上記(3)記載の寝床用マット。
(4)介護用敷マットであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の寝床用マット。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の寝床用マットとは、敷き寝具として用いられるものをいい、敷布団やベッド用マットレス、更には、これらの上に用いられるオーバーレイタイプのパッド等を包含する。また、本発明の効果が達成できれば市販されている敷布団やマットレス、オーバーレイタイプのパッドと組合わせて使用してもよく、シーツ等で覆って使用しても構わない。
【0009】
本発明の寝床用マットは少なくとも特定の圧縮特性を有する表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸からなる立体編物の2種で構成されていることが重要である。本発明の効果が達成できればこれ以外の圧縮特性を有する立体編物、織編物布帛、ウレタンフォーム、繊維綿でできたシート状物等が積層されていても構わず、これらの積層の順番も特に限定されるものではない。本発明の立体編物Aと立体編物Bの積層方法としては、例えば、A−A−B−B、A−B−A−B、A−B−B−A等の如何なるものでもよいが、立体編物Aのトータルの厚みは、立体編物Bのトータルの厚みに比べて大きい方が好ましい。逆の場合、体圧分散性が劣る場合がある。
【0010】
また、本発明の少なくとも2種の立体編物を積層したものに、本発明の効果が達成できれば、該積層物を織編物布帛等で作成したカバー材で覆っても構わない。立体編物AおよびBの積層数は、それぞれ2〜15枚が好ましい。本発明の寝床用マットは、厚みが20mm以上、200mm以下であることが重要であり、好ましくは、30mm以上、150mm以下、より好ましくは40mm以上、100mm以下である。
厚みは体圧分散圧力の観点から20mm以上であり、臥床したときの安定感および寝返りし易さの観点から200mm以下である。
本発明の積層した該2種の立体編物トータルの厚みが、寝床用マットの厚みに対して50%以上占めていることが好ましく、より好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。体圧分散性や湿度軽減効果の観点から50%以上である。
【0011】
本発明の寝床用マットの体圧分散圧力は6.666kPa以下であることが好ましく、1.111kpa以上5.333kPa以下、より好ましくは2.222kPa以上4.266kPa以下であることが好ましい。圧迫感、毛細血管等の圧迫により血流阻害、また床ずれなどの観点から上記範囲内が好ましい。
また、寝床用マットの4.266kPaの圧力下での圧縮変位量が10mm以上、150mm以下であることが好ましく、より好ましくは15mm以上、100mm以下、さらに好ましくは20mm以上、50mm以下である。10mm以上で人体の体圧分散効果があり、150mm以下で湿度軽減効果が得られ、寝返りが非常に行い易い。
【0012】
さらに、寝床用マットの4.266kPaでの圧縮回復率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。70%以上では長期間使用した場合の体圧分散圧力が好適であり、床ずれは発生しにくい。
本発明の寝床用マットは50%圧縮応力が10N以上180N以下の立体編物A、50%圧縮応力が20N以上、190N以下の立体編物Bで構成され、両者の立体編物の圧縮応力比が1.1以上、19.0以下であることが必要である。この範囲内で体圧分散性が優れる。
【0013】
ここで、2種の立体編物の圧縮応力比とは、下記式で計算されるものである。
立体編物の圧縮応力比=(立体編物Aの50%圧縮応力)/(立体編物Bの50%圧縮応力)
尚、上記の各種特性値の好ましい範囲は各々以下の通りである。
立体編物Aの50%圧縮応力は10N以上、120N以下が好ましく、より好ましくは15N以上、100N以下、更に好ましくは20N以上、50N以下である。
立体編物Bの50%圧縮応力は20N以上、150N以下が好ましく、より好ましくは30N以上、120N以下、更に好ましくは50N以上、100N以下である。
立体編物のAと立体編物Bの圧縮応力比は1.2以上、5.0以下が好ましく、より好ましくは1.3以上、3.0以下である。従って、立体編物Aは立体編物Bより50%圧縮応力は小さいものである。
この様な50%圧縮応力の異なる立体編物を得るには、連結糸の太さ、編機のゲージ、厚み、生地密度や仕上セットでの経緯の引張り率を調整することで達成できる。
【0014】
本発明の立体編物は、表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸により構成されていることが重要である。ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、横編機等を用いて立体編物を編成する場合、表裏の編地を連結する連結糸は、必ずどちらかの方向に湾曲した状態で編み込まれる。その連結糸に、厚み方向から力を加えると、既に湾曲している状態から更に湾曲し、力を取り除くと元の状態に戻る。この際に生じる連結糸の曲げと回復の挙動が立体編物の反発感のあるクッション性に大きく影響するため、連結糸には曲げ剛性の高いモノフィラメントを用いることが好ましい。従って、立体編物の連結糸は全てモノフィラメントであることが好ましいが、必要に応じて、モノフィラメント以外の繊維を編成時に交編させてもよい。その場合のモノフィラメント以外の繊維は、連結糸における重量混率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下である。例えば、マルチフィラメントの仮撚糸を交編すると、圧縮時にモノフィラメント同士が擦れて発生する耳障りな音を低減できるので好ましい。
【0015】
本発明の立体編物の連結糸に用いるモノフィラメントは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材の繊維を用いることができるが、この内ポリトリメチレンテレフタレート繊維を連結糸に用いると、繰り返し又は長時間圧縮後の回復性が良好となるので好ましい。
立体編物の表裏二層の編地に用いる繊維として、特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエステル系エラストマー繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維、その他、任意の繊維を用いることができる。
繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。繊維の形態も、未加工糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを採用してもよい。
【0016】
本発明の立体編物において、好ましく用いられるポリトリメチレンテレフタレート繊維は、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、40〜55%がさらに好ましい。弾性率は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0018】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイド等)してもよい
複合紡糸に関しては、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報等に例示されるような、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロンを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯シースコア型に複合紡糸したものがあり、特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましく、特に、特開2000−239927号公報に例示されるような極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、低粘度側が高粘度側を包み込むように接合面形状が湾曲しているサイドバイサイド型に複合紡糸したものが、高度のストレッチ性と嵩高性を兼備するものであり特に好ましい。
【0019】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
【0020】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート繊維の紡糸については、例えば国際公開第99/27168号パンフレット等があり、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延伸する方法、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。
【0021】
また、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントは、例えば、国際公開WO第01/75200号パンフレットに記載された方法により製造することができる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレートを紡口から吐出し、冷却浴中で急冷した後第1ロールで巻き取り、次いで、温水中又は乾熱雰囲気下で延伸しながら第2ロールで巻き取った後、乾熱雰囲気下又は湿熱雰囲気下において、オーバーフィードでリラックス処理し、第3ロールで巻き取る方法等で製造することができる。
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。断面においては丸型が立体編物の圧縮耐久性を向上させる上で好ましい。
【0022】
連結糸に用いるモノフィラメントの繊度は、限定されるものではなく、所望の圧縮応力となる様に任意に設定すればよく、通常、20〜1500dtexである。立体編物に弾力感のあるより優れたクッション性を付与する上からは、モノフィラメントの太さは50〜1000dtexが好ましく、より好ましくは100〜800dtexである。表裏の編地に用いるマルチフィラメント等の繊維には、通常、50〜2000dtexの太さのものを用いることができ、所定の表裏の編地以外で用いる繊維の単糸繊度は任意に設定できる。
【0023】
本発明の立体編物は、相対する2列の針床を有するダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成できるが、寸法安定性のよい立体編物を得るには、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。編機のゲージは9ゲージから28ゲージまでが好ましく用いられる。
立体編物の表裏の編地は4角、6角等のメッシュ編地、マーキゼット編地等複数の開口部を有する編地にして軽量性及び通気性を向上させてもよく、表面を平坦な組織にして肌触りを良好にしてもよい。表面を起毛することにより肌触りの良好なものが得られる。
連結糸は、表裏の編地中にループ状の編目を形成してもよく、表裏編地に挿入組織状に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。
【0024】
本発明の立体編物の表裏の編地は連結糸で用いたモノフィラメント糸が露出しない様にすることがざらつき感と光沢によるギラツキを抑えることができるので好ましい。モノフィラメント糸の露出を抑える方法としては、モノフィラメント糸の繊度に比較しマルチフィラメント糸の繊度を大とする、モノフィラメント糸の給糸張力をマルチ糸の給糸張力より大にする、マルチ糸の給糸を通常のフィード率よりオーバーフィード側で給糸する、マルチ糸のフィラメント数を増やす、ダブルラッセル編機で編成する場合はモノフィラメント糸とマルチ糸の針に対するオーバーラップ方向を少なくとも同一方向で給糸する等の方法により編成することが好ましい。
【0025】
また、表面の編地の同一編目におけるマルチ糸の総繊度D(デシテックス)と、連結糸の繊度d(デシテックス)の関係がD/dの値が1.1以上であることが好ましく、より好ましくは1.5〜15.0である。
D/d<1.1の場合は、マルチ糸によるモノフィラメント糸の均一な被覆性が低下し、編地表面のざらつき感と光沢によるギラツキを抑えることができず、さらには表面の滑らかな肌触りが得られないケースも生じる。
更に、表裏面を構成する繊維の被覆率を上げればよく、表面を構成するマルチフィラメント糸に仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いることが好ましく、特にセルロース系繊維の仮撚加工糸やW型等の異型断面ポリエステル系合成繊維の仮撚加工糸が好ましい。
【0026】
連結糸の密度については、立体編物2.54cm平方(6.45cm)の面積中にある連結糸の本数をN(本/6.45cm)、連結糸のdtexをT(g/1×106 cm)、連結糸の比重をρ0 (g/cm)とした時、立体編物6.45cmの面積中にある連結糸の総断面積(N・T/1×10・ρ0 )が0.01〜0.3cmが好ましい。この範囲に設定することによって、本発明の特定の50%圧縮応力を持つ立体編物が得られる。
連結糸は、表裏の編地中にループ状の編目を形成してもよく、表裏編地に挿入組織状に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。
【0027】
又、立体編物は、表裏の少なくとも一方の編地のタテ方向及び/又はヨコ方向に挿入糸(モノフィラメント糸及び又はマルチフィラメント糸)が直線状に挿入されていてもよい。立体編物の表裏の編地は、編組織は同一である必要は無く、異なる編組織でもよく、4角、6角等のメッシュ編地、マーキゼット編地等複数の開口部を有する編地にして軽量性、通気性を向上させてもよく、平坦な組織にして肌触りを良好にしても構わないが、表裏面共にメッシュ状等の開口部を有する編地とすることにより通気性を高め、蒸れを改善したものが好ましい。
【0028】
立体編物の厚みは任意に設定できるが、厚みは寝床内温湿度を快適に保つ観点から2mm以上であり、圧縮後の回復性の観点から20mm以下が好ましく、特に2〜18mmが好ましく、さらに5〜15mmが好ましい。
本発明の立体編物は圧縮後の回復率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
本発明の立体編物は、経及び緯方向の4.9N/cm荷重での伸度は3以上、60%以下であることが好ましく、より好ましくは、5以上、30%以下、最も好ましくは5以上、20%以下である。
伸度は、体圧分散圧力を下げることから3%以上であり、マットの形態安定性の観点から60%以下である。
【0029】
本発明の立体編物の表裏編地または連結糸に用いる繊維は、未着色でもよく、着色されていてもよい。着色方法は、未着色の糸をかせやチーズ状で糸染めする方法(先染め)、紡糸前の原液に顔料、染料等を混ぜて着色する方法(原液着色)、立体編物状で染色したりプリントする方法等によって着色することができるが、立体編物状で染色すると立体形状を維持するのが困難であったり加工性が悪いため、先染めや原液着色が好ましい。
【0030】
立体編物の仕上げ加工方法としては、生機を精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができるが、先染め糸や原液着色糸を使用した立体編物や用途として意匠性が要求されない場合は、精練や染色工程を省いて生機をすぐにヒートセットのみで仕上げることも可能である。
又、仕上げセット時には本発明の目的を損なわなければ、通常、繊維加工に用いられている樹脂加工、吸水加工、制電加工、抗菌加工、撥水加工、難燃加工などの仕上げ加工が適用できる。
【0031】
本発明の圧縮特性の異なる立体編物で寝床用マットを作成する場合、裁断すると端部から連結糸がほつれてくる場合がある。そのため、融着、縫製、樹脂加工、パイピング等の手段で端部を処理することが好ましい。特に、パイピングは複数枚を重ね合わせて縫製することができ、端部処理の工程を省略できるので好ましい。パイピング材は縫製部の厚み、連結糸の飛出し、使用時の耐久性を考慮して任意に選定すればよい。また、パイピング部は洗濯等で破損しないようにダブルステッチ等で縫製することが好ましい。
また、この様に端部処理した立体編物を積層するに当っては、各々がずれないように全面又は一部的を固定することが好ましい。固定する方法としては、特に限定するものではなく、縫製、キルティング、樹脂接着、ホック等での固定すればよい。
【実施例】
【0032】
本発明について以下具体的に説明する。
(1)固有粘度[η]の測定
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリマーの稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0033】
(2)糸の強伸度特性
東洋ボールドウィン社製のテンシロンを用い、試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で、引張強度(cN/dtex)、伸度(%)、初期弾性率(cN/dtex)を測定した。
(3)糸の弾性回復率
繊維を、チャック間距離20cmに0.0294cN/dtexの初荷重をかけて引張試験機に取り付け、伸長率10%まで引っ張り速度20cm/分で伸長し、1分間放置した。その後、再び同じ速度で収縮させ、応力−歪み曲線を描く。収縮中、応力がゼロになった時の伸度を残留伸度(A)とする。弾性回復率は下記の式に従って求めた。
10%伸長時の弾性回復率(%)={(10−A)/10}×100
【0034】
(4)編地及び寝床用マットの厚み
JIS−L−1018の厚みの測定方法に準拠して測定した。
(5)50%圧縮時の圧縮応力(N)
島津オートグラフAG−B型((株)島津製作所製)を用い、直径100mmの円盤状圧縮治具により、平滑剛体面上に置いた15cm角、厚みT0(mm)の立体編物を、10mm/minの速度で50%の厚み(1/2T0mm)になるまで圧縮し、最大応力を求めた。
【0035】
(6)圧縮回復率
圧縮回復率は立体織編物の厚み(Amm)が半分(A/2mm)になる用に荷重を加えて5分間放置し,除重して10分後の厚み(Bmm)を測定し、下記式により算出する。
圧縮回復率(%)=B/A×100
(7)編地伸度
JIS−L−1018の定荷重時伸び率に準拠してグラブ法で測定して緯及び経方向を測定した。尚、サンプル2.5cm幅当りの荷重は12.25Nとした。
【0036】
(8)寝床用マットの体圧分散圧力
介護用ベッドにパラマウントベッド(株)社製のパラケアマットレスを装着し、その上に実施例及び比較例で作成した寝床用マットを置き、さらにその上部に体圧分散測定装置Xセンサー(型式X2:XSENSER Technology社製)を配置する。この上に伸長170cm、65kg男性が仰臥位で安静にし、臀部の体圧分散を1秒間に1回の速度で10回計測して平均化し、臀部中の最も高い圧力値を示した値を体圧分散圧力とした。
(9)寝床用マットの圧縮変位量
島津オートグラフAG−B型((株)島津製作所製)を用い、直径100mmの円盤状圧縮治具により、平滑剛体面上に置いた厚みT0(mm)の寝床用マットを、10mm/minの速度で4.266kPaの圧力となるまで圧縮し、その変位量(mm)を測定した。
【0037】
(10)寝床用マットの圧縮回復率
圧縮回復率は寝床用マット(厚み(Amm))に4.226kPaの圧力となる様に加圧(加圧面は直径100mm)を加えて5分間放置し、除重して10分後の厚み(Bmm)を測定し、下記式により算出する。
寝床用マットの圧縮回復率(%)=B/A×100
【0038】
(11)寝床用マットの寝心地、寝返りのし易さ評価
介護用ベッドに介護用ベッドにパラマウントベッド(株)社製のパラケアマットレスを装着し、その上に実施例及び比較例で作成した寝床用マットを置きクッション材としてパラマウントベッド(株)社製のパラケアマットレスを用いた介護用ベッドに、実施例並びに比較例のベッドシーツを敷き、綿100%のパジャマを着用した男性を仰臥させた状態で寝心地の官能評価し、その後、寝返りを数回繰り返し、寝返りのし易さを官能評価した。10人の男性が同様に評価し、その平均点で評価した。尚、10人の男性の伸長は170〜175cm、体重は65〜70kgであった。
「寝心地」
3点:圧迫感を殆ど感じず、身体の適度な沈み込みがあって、快適である。
2点:圧迫感をやや感じる又は身体の体沈み込み量がやや大きく、やや不快である。
1点:部分的に強い圧迫感を強く感じる又は身体の沈み込み量が非常に大きく、不快である。
「寝返りのし易さ」
3点:容易に寝返りができる。
2点:やや寝返りがし難い。
1点:非常に寝返りがし難い。
【0039】
(12)寝床用マットの蒸れ評価
室温28±1℃、湿度65±5%RHの環境下で(11)の評価で用いた介護用ベッドとマットレス上に、実施例及び比較例にて作成した寝床用マットを敷き、綿100%のパジャマを着用した男性を仰臥位にて60分間覚醒状態で安静にしてもらい、以下の通り蒸れ感を数値化した。10人の男性が同様に評価し、その平均点で評価した。尚、10人の男性の伸長は170〜175cm、体重は65〜70kgであった。
尚、試験中、(株)良品計画社製の綿パイルタオルケットを首から足先まで掛けて実施した。
3点:蒸れ感がない。
2点:蒸れ感をやや感じる。
1点:蒸れ感を非常に感じる。
【0040】
<ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントの製造>
(製造例1〜4)
固有粘度[η]=0.9のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃で紡口から吐出し、40℃の冷却浴中に導いて冷却しつつ16.0m/分の速度の第1ロール群で引張り細化して未延伸モノフィラメントを製造した。次いで、温度55℃の延伸浴中で5倍に延伸しながら80.0m/分の第2ロール群によって引張った。その後、120℃のスチーム浴中で弛緩熱処理を施しながら、72.0m/分の第3ロール群を経た後、第3ロール群と同速の巻取機で巻き取り、56dtex、110dtex、180dtex、300dtexの延伸モノフィラメントを製造した。得られた延伸糸物性は表1に示した。
【0041】
<立体編物の製造>
(製造例5)
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間13mmのダブルラッシェル機を用い、表側の編地を形成する2枚の筬(L1、L2)及び裏側の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)に330デシテックス/96フィラメントのポリエチレテレフタレート繊維仮撚加工糸(旭化成せんい社製、ポリエステル)を、連結糸を形成する二枚の筬(L3、L4)に製造例1の56デシテックスのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント糸を、L1、L3、L5ガイドに1イン1アウトの配列で、L2、L4、L6ガイドに1アウト1インの配列で供給し、打ち込み17.5コース/2.54cmで、以下に示す編組織で、表裏メッシュの立体編物を編成した。
得られた生機を乾熱ヒートセットして、立体編物表面の編地密度が、18.0コース/2.54cm、8.0ウェール/2.54cmとなるように仕上げた。得られた編地物性は表2に示した。
【0042】
(編組織)
L1:1011/1211/1011/1211/1011/1222/2322/2122/2322/2122/2322/2111/
L2:2322/2122/2322/2122/2322/2111/1011/1211/1011/1211/1011/1222/
L3:2121/2323/2121/4545/2121/2323/3434/3232/3434/1010/3434/3232/
L4:3434/3232/3434/1010/3434/3232/2121/2323/2121/4545/2121/2323/
L5:1110/1112/1110/1112/1110/1112/2223/2221/2223/2221/2223/2221/
L6:2223/2221/2223/2221/2223/2221/1110/1112/1110/1112/1110/1112/
【0043】
(製造例6〜8)
製造例5において、釜間及び連結糸を表1の通り変更した以外は同様にして製造例6〜8の立体編物を得た。得られた各々の編地物性は表2に示した。
【0044】
(製造例9)
製造例8において、立体編物表面の編地密度が、18.0コース/2.54cm、7.5ウェール/2.54cmとなるように仕上げた以外は製造例8と同様にして立体編物を得た。得られた各々の編地物性は表2に示した。
【0045】
(製造例10)
製造例5において、180dtexのナイロン66繊維モノフィラメント糸(旭化成せんい社製)に変更した以外は同様にして立体編物を得た。得られた各々の編地物性は表2に示した。
【0046】
(製造例11)
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間4.2mmのダブルラッセル編機を用い、表面の編地を形成する2枚の筬(L1、L2)に167dtex/48fのW型断面のポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸(旭化成せんい株式会社製、商標「テクノファイン」仮撚加工糸)をいずれもオールインの配列で供給し、裏面の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)にも同一の仮撚加工糸をいずれも3イン1アウトの配列で供給し、連結糸を形成するL3の筬に56dtexのナイロン66繊維モノフィラメント糸(旭化成せんい社製)をオールインの配列で供給して、表面の編地の密度が33.3コース/2.54cm、24.8ウェール/2.54cmの立体編物の生機を下記組織で編成した。
L1:2422/2022/
L2:2022/4644/
L3:0220/2002/
L5:4420/2224/2220/2242/4468/6664/6668/6646/
L6:4468/6664/6668/6646/4420/2224/2220/2242/
得られた生機を常法に従い精練後、乾熱ヒートセットして、表面の編地が平坦な組織で、裏面の編地がメッシュ組織の立体編物を得た。
得られた立体編物の表面の編地密度は、35.0コース/2.54cm、22.2ウェール/2.54cm、であり、その他の編地物性は表2に示した。
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0047】
[実施例1]
製造例6を3枚、製造例7を2枚をそれぞれ1枚ずつベッドのサイズに裁断後、端部をパイピング縫製した。次いで、下層から立体編物B2枚、立体編物A2枚の順に積層し、寝床用マットを得た。尚、積層したものがずれない様、隅にホックを取り付けて一体化させた。
得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果に優れていた。
【0048】
[実施例2]
実施例1で得られた寝床用マットを表裏逆にして特性評価を行った結果を表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果に優れていた。
【0049】
[実施例3]
下層から製造例6を3枚、製造例10を2枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果のあるものであったが、長期間使用するとやや底つき感がある傾向にあった。
【0050】
[実施例4]
下層から製造例6を1枚、製造例7を1枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果のあるものであった。
【0051】
[実施例5]
下層から製造例6を6枚、製造例7を7枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果のあるものであった。
【0052】
[実施例6]
下層から製造例7を3枚、製造例9を2枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果のあるものであった。
【0053】
[実施例7]
下層から製造例6を2枚、製造例9を3枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果のあるものであった。
【0054】
[実施例8]
下層から製造例6を3枚、製造例7を2枚となるように実施例1と同様に1枚毎にパイピング縫製を行い、この積層物を製造例11の立体編物でフラット面が表となるように作成したボックスタイプのカバーで覆い、寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が良好で、寝返りも容易であり、蒸れ感も殆ど感じない、体圧分散性に優れたものであり、床ずれ軽減効果のあるものであった。また、製造例11の立体編物は表面の平滑性に優れているので、肌触りも良好なものであった。
【0055】
[比較例1]
下層から製造例5を2枚、製造例8を1枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が不良で、寝返りがし難く、蒸れ感を感じ、体圧分散性が劣る、床ずれ軽減効果のないものであった。
【0056】
[比較例2]
下層から製造例11を1枚、製造例7を1枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは厚みが無いため、寝心地が不良で、蒸れ感を感じ、体圧分散性が劣る、床ずれ軽減効果のないものであった。
【0057】
[比較例3]
下層から製造例6を15枚、製造例9を4枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは厚みが厚く、寝返りがし難く、身体の沈み込み量が大きいため圧迫感は感じないものの寝心地は不快なものであった。
【0058】
[比較例4]
下層から製造例6が3枚となるように実施例1と同様にして寝床用マットを作成した。得られた寝床用マットの特性評価結果は表3に示す。この寝床用マットは寝心地が不良で、寝返りもし難く、蒸れ感も感じ、体圧分散性も劣る、床ずれ軽減効果のないものであった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、体圧分散効果に優れ、寝床内温湿度を快適に保ち、特に床ずれ軽減効果が期待できる寝床用マットであり、介護用敷マットとして好適に用いられ、一般の病院用ベッド、宿泊施設、家庭での普通のベッドや敷布団の敷き具として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成された少なくとも50%圧縮応力が異なる立体編物Aおよび立体編物Bが積層された寝床用マットであって、立体編物Aの50%圧縮応力が10N以上、180N以下、立体編物Bの50%圧縮応力が20N以上、190N以下、両者の立体編物の圧縮応力比が1.1以上、19.0以下であり、かつ、厚みが20mm以上、200mm以下であることを特徴とする寝床用マット。
ただし、立体編物の圧縮応力比=(立体編物Bの50%圧縮応力)/(立体編物Aの50%圧縮応力)
【請求項2】
立体編物Aおよび立体編物Bが、それぞれ2層以上、15層以下、かつ交互あるいはランダムに積層されていることを特徴とする請求項1に記載の寝床用マット。
【請求項3】
立体編物A及び立体編物Bの連結糸が、モノフィラメント糸で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の寝床用マット。
【請求項4】
立体編物A及び立体編物Bの連結糸のモノフィラメント糸が、ポリトリメチレンテレフタレート繊維であることを特徴とする請求項3に記載の寝床用マット。
【請求項5】
介護用敷マットであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の寝床用マット。

【公開番号】特開2006−102316(P2006−102316A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295084(P2004−295084)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】