説明

対象物加工システム

【課題】対象物が不定形物である場合でも、加工の際の対象物間での加工部位のばらつきを抑制できるようにする。
【解決手段】らっきょう切断加工システム10は、コンベア14と、ロボット16と、らっきょう12を検知する3次元センサ18と、らっきょう12の姿勢を検知するカメラ20と、コントローラ28とを有し、コントローラ28は、3次元センサ18の検知結果に基づきらっきょう12の吸着目標部位の設定を行う第1画像処理部281と、吸着パッド166をらっきょう12の吸着目標部位に接触させ当該らっきょう12を持ち上げつつ所定の位置へ移動させるように、ロボット16を制御する第1制御部2861と、カメラ20の検知結果に基づきらっきょう12の加工目標部位の設定を行う第2画像処理部283と、らっきょう12の加工目標部位が切断装置22の刃2221の位置へ導かれるように、ロボット16を制御する第2制御部2862とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、対象物に対し加工を行う対象物加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に対し加工を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術においては、搬送装置(ベルトコンベア)が設けられており、搬送装置の近傍には2つの加工装置が設けられている。搬送装置の走行方向に対し、2つの加工装置の上流側には、搬送装置と2つの加工装置との間で対象物(ワーク)を授受させるために三次元運動のできるロボット(三次元ロボット)が設けられている。
【0003】
対象物は、搬送装置により搬送され、ロボットにより一方の加工装置に渡されて、一方の加工装置で加工が行われた後にロボットにより再び搬送装置上に載せられる。そして、他方の加工装置の位置まで搬送されると、同様にしてロボットが介入して他方の加工装置で加工が行われ、搬送装置上に載せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば野菜や果物といった自然物や、複数種類が混在した状態の人工物(工業製品)等、個体間で形状が不定な不定形物を対象物として加工を行う場合、上記従来技術においては、ロボットが、搬送されてくる対象物を加工を行う位置へ移動させようとしても、対象物間の形状にばらつきがあるため、対象物にツールを接触させることができず対象物を持ち上げられなかったり、対象物にツールを接触させても接触位置が悪く対象物を持ち上げられなかったり、持ち上げても移動途中で落下させてしまう等により、ロボットにより対象物を加工を行う位置へ移動させることができないおそれがあった。また、対象物を加工を行う位置へ移動させることができても、上述のように対象物間の形状にばらつきがあり、一般に各対象物ごとに加工目標部位の設定を細かく行うことはできないため、加工の際に対象物間で加工部位のばらつきが生じるおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、対象物が不定形物である場合でも、加工の際の対象物間での加工部位のばらつきを抑制できる対象物加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、対象物を搬送する搬送装置と、前記対象物を持ち上げ可能なツールを備えたロボットと、を有し、前記対象物に対し所定の加工を行う対象物加工システムであって、前記搬送装置により搬送経路上を搬送されてくる前記対象物を検知する第1センサと、前記第1センサの検知結果に基づき、前記搬送経路上を搬送されてくる前記対象物の接触目標部位の設定を行う第1設定手段と、前記対象物が前記ツールの可動範囲内に搬送されてきたとき、前記ツールを前記対象物の前記接触目標部位に接触させ当該対象物を持ち上げつつ所定の位置へ移動させるように、前記ロボットを制御する第1制御手段と、前記所定の位置に移動した前記対象物の姿勢を検知する第2センサと、前記第2センサの検知結果に基づき、前記ロボットの前記ツールにより持ち上げられた前記対象物の加工目標部位の設定を行う第2設定手段と、前記ツールにより持ち上げられた前記対象物の前記加工目標部位が前記加工を行う位置へ導かれるように、前記ロボットを制御する第2制御手段と、を有する対象物加工システムが適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の対象物加工システムによれば、対象物が不定形物である場合でも、加工の際の対象物間での加工部位のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施の形態のらっきょう切断加工システムの全体構成を模式的に表す上面図である。
【図2】らっきょう切断加工システムの全体構成を模式的に表す側面図である。
【図3】コントローラの機能構成を表す機能ブロック図である。
【図4】らっきょう切断加工システムの動作の一例を説明する説明図である。
【図5】らっきょう切断加工システムの動作の一例を説明する説明図である。
【図6】らっきょう切断加工システムの動作の一例を説明する説明図である。
【図7】らっきょう切断加工システムの動作の一例を説明する説明図である。
【図8】らっきょう切断加工システムの動作の一例を説明する説明図である。
【図9】らっきょう切断加工システムの動作の一例を説明する説明図である。
【図10】らっきょう切断加工システムの動作の一例を説明する説明図である。
【図11】カメラを正面側が上向きになるように設置する変形例における、らっきょう切断加工システムの全体構成を模式的に表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態のらっきょう切断加工システム10(対象物加工システム)は、らっきょう12(対象物)に対し、根毛部12a及び茎部12bを切除して球根部12cを抽出する切断加工(所定の加工)を行うシステムである。らっきょう12は、球根野菜、すなわち自然物であり、個体間の形状(例えば、根毛部12a、茎部12b、及び球根部12cの位置、大きさ、及び範囲等)にばらつきがあって、個体間の形状が不定な不定形物の一例である。このらっきょう切断加工システム10は、コンベア14(搬送装置)と、3次元センサ18(第1センサ)と、複数のロボット16と、コントローラ28とを有している。なお、コンベア14、3次元カメラ18、及び各ロボット16と、コントローラ28とは、相互通信可能に接続されている。
【0012】
コンベア14は、搬送面に載置されたらっきょう12を一方向(図1中の右側から左側、図2中の紙面奥行き側から紙面手前側)へ搬送する装置であり、モータ142と、コンベア駆動部144(駆動部)と、エンコーダ146とを備えている。モータ142は、回転力を発生する。コンベア駆動部144は、モータ142に連結されており、当該モータ142の回転力により回転駆動される。エンコーダ146は、コンベア駆動部144に連結されており、当該コンベア駆動部144の回転位置を検出する。エンコーダ146の検出結果、すなわちコンベア駆動部144の回転位置情報は、コントローラ28へ出力される。
【0013】
3次元センサ18は、レーザ光源及びカメラを備えており、コンベア14による搬送経路の上流側において、当該搬送経路の上方に位置すると共にレーザ光源及びカメラが下方を向くように、床部に固定された略逆L字状の支持部材32に固定されている。具体的には、レーザ光源は、コンベア14の搬送面における所定の位置に、コンベア14の搬送方向と直交する方向に長いスリット状(線状)のレーザ光(以下適宜、「レーザスリット光」と称する)を連続して照射(投光)するように配向されている。カメラは、レーザ光源によるレーザ光スリット照射経路とは異なる光路の反射光(入射光に対し所定の角度を有する反射光)を受光するように配向されており、レーザ光源によるレーザスリット光照射位置及びその近傍を連続的に撮像する。
【0014】
この3次元センサ18は、搬送経路上を所定の速度で連続して続々と搬送されてくる、すなわち、検知領域が設定された下方を通過していくらっきょう12にレーザ光源からレーザスリット光を照射し、そのレーザスリット光の反射光をカメラで撮像して、下方を通過していくらっきょう12を走査する。そして、カメラの撮像画像に基づき、三角測量の原理を用いて上記走査したらっきょう12までの距離を算出して、当該らっきょう12の3次元形状を検知する。3次元センサ18の検知結果、すなわち3次元センサ18のカメラの撮像画像及びその撮像画像上の距離情報は、コントローラ28へ出力される。
【0015】
各ロボット16は、3次元センサ18よりも搬送経路の下流側において、当該搬送経路に沿って各ロボット16同士がある程度(例えば1m程度)離間するように、搬送経路の幅方向一方側(図1中の上側、図2中の左側)領域及び他方側(図1中の下側、図2中の右側)領域に亘ってそれぞれ設置されている。また、複数のロボット16のうち搬送経路の最も上流側のロボット16Aは、後述の吸着パッド166aにより、搬送経路上を搬送されてくるらっきょう12を持ち上げる領域が、3次元センサ18の固定位置、具体的には3次元センサ18によるらっきょう12の検知領域、から搬送経路の下流側に、当該搬送経路に沿って所定の距離S(らっきょう12が3次元センサ18の検知結果から後述の距離画像を取得するための処理にかかる処理時間に搬送される距離。例えば1m)以上離間するように、設置されている。
【0016】
これら各ロボット16は、この例では垂直多関節ロボットであり、基台162と、旋回ベース163と、アーム164と、吸着パッド166(吸着装置、ツール)とを備えている。基台162は、図示しない床部に固定された台座30の天側に対し固定されている。旋回ベース163は、基台162に対し旋回自在に取り付けられている。アーム164は、複数の部材から構成されており、各部材同士が回転自在に取り付けられている。吸着パッド166は、アーム164の先端に取り付けられており、図示しない真空装置により真空状態にされることで、らっきょう12を吸着により持ち上げ可能に構成されている。また、各ロボット16の周囲には、カメラ20(撮像装置、第2センサ)、切断装置22、廃棄ボックス24、及び投入ボックス26がそれぞれ設置されている。なお、各カメラ20と、コントローラ28とは、相互通信可能に接続されている。
【0017】
このような各ロボット16は、旋回ベース163及びアーム164を協調動作することで、搬送経路上を搬送されてくるらっきょう12(詳細には、後述のようにらっきょう12の球根部12cの部分)に吸着パッド166aを接触させ、吸着パッド166aによる真空吸着により当該らっきょう12を持ち上げつつ、周囲の後述のカメラ20のレンズ201の視野内の撮像撮像位置へ移動させる。そして、吸着パッド166aにより持ち上げているらっきょう12を、周囲の後述の切断装置22の円形カッタ222の刃2221の位置へ移動させ、当該切断装置22により上記切断加工を行わせる。その後、吸着パッド166aにより持ち上げている、上記切断加工により根毛部12a及び茎部12bが切除されたらっきょう12の球根部12cを、周囲の投入ボックス26の上方へ移動させ、当該投入ボックス26へ投入する(詳細は後述)。
【0018】
各カメラ20は、レンズ201と、レンズ201の周囲にリング状に配置された複数のLEDで構成された照明202とを正面側に備えており、背面側がコンベア14の側面側に向くと共に、レンズ201の視野が、周囲のロボット16の吸着パッド166の可動範囲内に位置するように、各ロボット16の近傍にそれぞれ設置されている。各カメラ20を正面側が上方に向かないように設置することで、上方から落下してくる水滴よりレンズ201を守ることができる。また、各カメラ20のレンズ201の正面側には、図示しないバックライトが設置されている。そして、これら各カメラ20は、上記のように、周囲のロボット16によってらっきょう12がレンズ201の視野内の上記撮像位置に移動させられたとき、レンズ201を介して当該視野内を撮像することで、撮像位置に移動させられたらっきょう12を撮像して、当該らっきょう12の形状及び姿勢を検知する。各カメラ20の検出結果、すなわち各カメラ20の撮像画像は、コントローラ28へ出力される。
【0019】
各切断装置22は、らっきょう12に対し上記切断加工を行う刃2221を外周に備えた、周方向に回転する円形カッタ222を有しており、円形カッタ222の刃2221の位置(加工を行う位置)がロボット16の吸着パッド166の可動範囲内に位置するように、各ロボット16の近傍にそれぞれ設置されている。
【0020】
各廃棄ボックス24は、切断装置22で切断されたらっきょう12の根毛部12a及び茎部12bを廃棄するための天側が開放した箱であり、各切断装置22の下方にそれぞれ設置されている。
【0021】
各投入ボックス26は、切断装置22で根毛部12a及び茎部12bが切除されたらっきょう12の球根部12cを投入するための天側が開放した箱であり、各ロボット16の近傍にそれぞれ設置されている。
【0022】
コントローラ28は、3次元カメラ18、各ロボット16、及び各カメラ20等の動作を制御するための、入力装置、表示装置、記憶装置、及び演算装置等を備えたコンピュータで構成されている。このコントローラ28は、図3に示すように、第1画像処理部281(第1設定手段)と、第2画像処理部283(第2設定手段)と、ロボット選択部285と、ロボット制御部286とを備えている。
【0023】
第1画像処理部281は、3次元センサ18より入力した当該3次元センサ18のカメラの撮像画像及びその撮像画像上の距離情報に基づき、3次元センサ18との距離を画像上に表した距離画像(3次元情報)を生成する。そして、その生成した距離画像に基づき、3次元センサ18の下方を通過したらっきょう12(以下適宜、「特定のらっきょう12」と称する)の3次元形状を検出して、当該特定のらっきょう12の吸着目標部位(接触目標部位)の設定を行う(詳細は後述)。吸着目標部位は、ロボット16の吸着パッド166による真空吸着(接触)の目標となる部位(吸着パッド166で吸着できそうな部位)である。
【0024】
第2画像処理部283は、カメラ20より入力した当該カメラ20の撮像画像に基づき、カメラ20で撮像された特定のらっきょう12の形状及び姿勢を検出して、当該特定のらっきょう12の加工目標部位の設定を行う(詳細は後述)。加工目標部位は、上記刃2221による切断開始位置及びそこからの切断角度を含む切断部分全体の目標となる部位である。
【0025】
ロボット選択部285は、複数のロボット16のうち、特定のらっきょう12を処理するロボット16の選択を行う。例えば、予め設定された順番(例えば3次元センサ18に近い順に順位付けした順番)に沿ってロボット16を選択する。又は、処理を行っていない(処理を終了している)ロボット16を優先順位の高いロボット16(例えば、3次元センサ18に近い順に順位付けした順番が早いロボット16や、処理を終了したタイミングが早いロボット16等)から選択してもよい。又は、処理を行っていない(処理を終了している)ロボット16をランダムに選択してもよい。又は、3次元センサ18より入力した当該3次元センサ18のカメラの撮像画像に基づき、特定のらっきょう12の搬送位置(コンベア14の幅方向の位置)を検出して、その検出した位置側(例えば、コンベア14の幅方向一方側)に設置されているロボット16を選択してもよい。
【0026】
ロボット制御部286は、ロボット16の動作を制御する部分であり、第1制御部2861(第1制御手段)と、第2制御部2862(第2制御手段)とを備えている。
【0027】
第1制御部2861は、コンベア14のエンコーダ146より入力したコンベア駆動部144の回転位置情報に基づき、搬送経路上を搬送されるらっきょう12の移動量を算出する。そして、その算出したらっきょう12の移動量、及び、上記第1画像処理部281で設定されたらっきょう12の吸着目標部位の位置に基づき、特定のらっきょう12がロボット16の吸着パッド166の可動範囲内に搬送されてくるタイミング、言い換えれば特定のらっきょう12の吸着目標部位を吸着パッド166で吸着して持ち上げるためのロボット16の動作開始タイミングを算出する。また、第1制御部2831は、上記算出した動作開始タイミングになったときに旋回ベース163及びアーム164を協調動作し、吸着パッド166を特定のらっきょう12の吸着目標部位に接触させ、吸着により当該特定のらっきょう12を持ち上げつつ、周囲のカメラ20のレンズ201の視野内の撮像位置に移動させるように、各ロボット16の動作を制御する(詳細は後述)。
【0028】
第2制御部2862は、旋回ベース163及びアーム164を協調動作し、吸着パッド166により持ち上げられた特定のらっきょう12の上記第2画像処理部283で設定された加工目標部位が、上記刃2221の位置(加工を行う位置)へ導かれるように、各ロボット16の動作を制御する(詳細は後述)。
【0029】
以下、図4〜図10を用いて、らっきょう切断加工システム10の動作の一例を説明する。
【0030】
まず、図4に示すように、搬送経路の上流側を所定の速度で連続して続々と搬送されるらっきょう12が、3次元センサ18の下方を通過するとき、3次元センサ18により検知される。そして、その検知結果、すなわち3次元センサ18のカメラの撮像画像及びその撮像画像上の距離情報が、コントローラ28へ出力される。すると、コントローラ28が、上記第1画像処理部281で、3次元センサ18より入力した当該3次元センサ18のカメラの撮像画像及びその撮像画像上の距離情報に基づいて、上記距離画像を生成する。図5(a)(b)に、生成された距離画像の一例をモデル化した模式図を示す。なお、図5(a)(b)に示す距離画像は、互いに同じ情報を別視点でモデル化したものである。図5(a)(b)に示すように、生成された距離画像には、3次元センサ18の下方を通過した上記特定のらっきょう12の形状が3次元で表されており、第1画像処理部281では、この距離画像に基づいて、特定のらっきょう12の3次元形状を検出して、当該特定のらっきょう12の上記吸着目標部位の設定を行う。本実施形態では、生成した距離画像に表された特定のらっきょう12の球根部12cにおける、吸着パッド166による真空吸着の障害物(例えば根毛部12aの根毛や茎部12aの葉等)が上方に存在しておらず、かつ、所定の面積(例えば1cm)以上の平坦面積を備える最も高い位置に存在する部位(図5(a)及び図5(b)に示す例では符号31で示す部位)を検出して、その検出した部位を、特定のらっきょう12の吸着目標部位として設定する。
【0031】
その後、図6に示すように、上記ロボット選択部285で選択されたロボット16が、上記ロボット制御部286の第1制御部2861の制御により、当該第1制御部2861で算出された動作開始タイミングに基づいて旋回ベース163及びアーム164を協調動作し、搬送経路上を搬送されてくる特定のらっきょう12の上記設定された吸着目標部位(図6に示す例では符号31で示す部位)に吸着パッド166を接触させる。そして、図7に示すように、吸着パッド166による真空吸着により特定のらっきょう12を持ち上げ、予め定められた所定の撮像姿勢となるように旋回ベース163及びアーム164を協調動作することで、吸着パッド166で持ち上げている特定のらっきょう12を、周囲のカメラ20のレンズ201の視野内の上記撮像位置に移動させる。
【0032】
すると、カメラ20で、レンズ201の視野内の、撮像姿勢となっているロボット16、及び、撮像位置に移動させられた特定のらっきょう12が撮像される。そして、その撮像画像が、コントローラ28へ出力される。図8(a)に、コントローラ28がカメラ20より入力した当該カメラ20の撮像画像の一例をモデル化した模式図を示す。図8(a)に示すように、カメラ20の撮像画像には、ロボット16及び特定のらっきょう12の形状及び姿勢が2次元で表されており、コントローラ28は、上記第2画像処理部283で、この撮像画像に基づいて、カメラ20で撮像された特定のらっきょう12の形状及び姿勢を検出して、当該特定のらっきょう12の加工目標部位の設定を行う。本実施形態では、まず、図8(a)に示すようなカメラ20の撮像画像に表されたロボット16の画像16′を除外した画像を生成する。その後、図8(b)に示すように、その生成した画像に表された特定のらっきょう12の画像12′の最大内接円(図8(b)に示す例では符号33で示す円)を算出し、その算出した最大内接円の中心位置を求め、その位置を特定のらっきょう12の画像12′の重心(図8(b)に示す例では符号34で示す位置)とする。次に、図9(a)に示すように、上記求めた特定のらっきょう12の画像12′の重心の、一方側の所定の範囲(図9(a)に示す例では符号35で示す範囲)の面積と、他方側の所定の範囲(図9(a)に示す例では符号36で示す範囲)の面積とを比較し、面積が大きい側(図9(a)に示す例では符号35で示す範囲側)を根毛部12a側、面積が小さい側(図9(a)に示す例では符号36で示す範囲側)を茎部12b側と判断する。そして、図9(b)に示すように、上記求めた特定のらっきょう12の画像12′の重心から茎部12b側の幅(太さ)を計測して幅が所定の値以下になった部位(図9(b)に示す例では符号37で示す部位)と、上記求めた特定のらっきょう12の画像12′の重心から根毛部12a側の幅(太さ)を計測して幅が所定の値以下になった部位(図9(b)に示す例では符号38で示す部位)とを、特定のらっきょう12の加工目標部位として設定する。
【0033】
その後、図10に示すように、ロボット16が、上記ロボット制御部286の第2制御部2862の制御により、旋回ベース163及びアーム164を協調動作し、吸着パッド166で持ち上げている特定のらっきょう12の上記設定された加工目標部位(図10に示す例では符号37,38で示す部位)を、上記刃2221の位置へ導く。そして、旋回ベース163及びアーム164を協調動作し、吸着パッド166で持ち上げている特定のらっきょう12を刃2221で加工目標部位に沿って切断させる。これにより、根毛部12a及び茎部12bが球根部12cより切り離され落下することで、刃2221の下方の上記廃棄ボックス24内へ入る。そして、ロボット16が、ロボット制御部286制御により、旋回ベース163及びアーム164を協調動作し、吸着パッド166で持ち上げている特定のらっきょう12の球根部12cを、周囲の投入ボックス26の上方へ移動させ、そこで吸着パッド166による真空吸着を解除することで、特定のらっきょう12の球根部12cを投入ボックス26へ投入する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のらっきょう切断加工システム10においては、ロボット16が、コンベア14で吸着パッド166の可動範囲内に搬送されてきたらっきょう12に吸着パッド166を接触させ、らっきょう12を持ち上げて、切断装置22の円形カッタ222の刃2221の位置へ移動させ、そこでらっきょう12の切断加工が行われる。
【0035】
ここで、前述した不定形物であるらっきょう12に対し切断加工を行う場合、ロボット16が、搬送されてくるらっきょう12を上記刃2221の位置へ移動させようとしても、らっきょう12の個体間の形状にばらつきがあるため、らっきょう12に吸着パッド166を接触させることができずらっきょう12を持ち上げられなかったり、らっきょう12に吸着パッド166を接触させても接触位置が悪くらっきょう12を持ち上げられなかったり、持ち上げても移動途中で落下させてしまう等により、ロボットによりらっきょう12を上記刃2221の位置へ移動させることができないおそれがあった。また、らっきょう12を上記刃2221の位置へ移動させることができても、上述のようにらっきょう12の個体間の形状にばらつきがあり、各らっきょう12ごとに加工目標部位の設定を細かく行うことはできないため、加工の際にらっきょう12の個体間で切断加工部位のばらつきが生じるおそれがあった。
【0036】
そこで本実施形態においては、3次元センサ18が、コンベア14により搬送経路上を搬送されてくるらっきょう12を検知し、コントローラ28が、第1画像処理部281で、3次元センサ18の検知結果に基づき、3次元センサ18の下方を通過した上記特定のらっきょう12の吸着目標部位の設定を行う。その後、特定のらっきょう12が吸着パッド166の可動範囲内に搬送されてきたとき、ロボット16が、コントローラ28の第1制御部2861の制御により、吸着パッド166を特定のらっきょう12の上記設定された吸着目標部位に接触させ、特定のらっきょう12を持ち上げつつ上記撮像位置へ移動させる。これにより、らっきょう12に対し切断加工を行う場合でも、ロボット16によりらっきょう12を上記刃2221の位置へ確実に移動させることができる。そして、カメラ20が、上記撮像位置に移動した特定のらっきょう12の姿勢を検知し、コントローラ28が、第2画像処理部283で、カメラ20の検知結果に基づき、ロボット16の吸着パッド166で持ち上げられた特定のらっきょう12の加工目標部位の設定を行う。その後、ロボット16が、コントローラ28の第2制御部2862の制御により、吸着パッド166で持ち上げた特定のらっきょう12の上記設定された加工目標部位を上記刃2221の位置へ導く。これにより、らっきょう12に対し切断加工を行う場合でも、らっきょう12の加工目標部位を上記刃2221の位置へと導くことができるので、加工の際のらっきょう12の個体間での加工部位のばらつきを確実に抑制することができ、加工精度を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、上述のように、3次元センサ18によりらっきょう12を検知した後、カメラ20により再度らっきょう12の姿勢を検知する。これにより、3次元センサ18により検知した後の搬送においてらっきょう12の姿勢が変わったとしても、カメラ20により再度らっきょう12の姿勢を確認してから、らっきょう12の加工を行うことができ、これによっても加工精度を向上できる効果がある。
【0038】
また、本実施形態では特に、コンベア14が、モータ142と、モータ142により回転駆動されるコンベア駆動部144と、コンベア駆動部144に連結され当該コンベア駆動部144の回転位置を検出するエンコーダ146とを備えている。そして、コントローラ28が、ロボット制御部286の第1制御部2861で、エンコーダ146の検出結果に基づき、ロボット16の動作開始タイミングを算出する。これにより、コンベア14によるらっきょう12の搬送動作と確実に連動しつつ、らっきょう12をロボット16により確実に持ち上げることができる。
【0039】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得ることができる。すなわち、コンベア14による搬送経路の上流側にカメラを設置して、そのカメラの撮像画像に基づいてらっきょう12の形状(2次元形状)を判断する場合、例えば、コンベア14の搬送面を構成する部材を光透過性の材質で構成し、搬送面の下側かららっきょう12に対しバックライトを照射する等して、カメラ周辺の光学条件を厳格に管理してらっきょう12を鮮明に撮像する必要があり、設備に対するコストの増大を招く。そこで本実施形態においては、コンベア14による搬送経路の上流側に3次元カメラ18を設置して、コントローラ28が、第1画像処理部281で、その3次元カメラ18の検知結果に対応する距離画像に基づき、らっきょう12の接着目標部位の設定を行う。3次元センサ18の検知結果に対応する距離画像に基づいてらっきょう12の形状(3次元形状)判断する場合、3次元センサ18周辺の光学条件を、カメラを設置する場合ほど厳格に管理する必要はない。したがって、設備に対するコストを低減することができる。また、らっきょう12の3次元形状に基づいてらっきょう12の接触目標部位の設定を行うことができるので、ロボット16が吸着パッド166を確実に接触させることができる部位、上記の例ではらっきょう12における所定の面積以上の平坦面積を備える最も高い位置に存在する部位を判断することができる。この結果、らっきょう12の接触目標部位の設定をさらに高精度に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得ることができる。上記所定の位置に移動したらっきょう12の姿勢を検知するセンサとしては、ロボット16の吸着パッド166の可動範囲内であれば、周辺の光学条件を厳格に管理(例えば、周辺にバックライトを設置する等)可能な位置に設置できる。したがって、当該センサをカメラで構成しても、らっきょう12を鮮明に撮像することができる。そこで本実施形態においては、上記所定の位置に移動したらっきょう12の姿勢を検知するセンサをカメラ20で構成して、コントローラ28が、第2画像処理部283で、そのカメラ20の撮像画像に基づき、らっきょう12の加工目標部位の設定を行う。これにより、上記所定の位置に移動したらっきょう12の姿勢を検知するセンサを高価な3次元センサで構成しなくても、カメラ20の撮像画像に基づき、らっきょう12の姿勢や重心等を求めることで、らっきょう12の加工を行うべき部位を判断することができ、らっきょう12の加工目標部位の設定を高精度に行うことができる。
【0041】
また、本実施形態では特に、ロボット16が、アーム164の先端にらっきょう12を吸着により持ち上げ可能な吸着パッド166を備えている。そして、コントローラ28が、第1画像処理部281で、吸着パッド166による真空吸着の吸着目標部位の設定を行う。これにより、吸着パッド166の真空吸着力により、搬送されてくるらっきょう12を迅速かつ確実に持ち上げることができる。
【0042】
また、本実施形態では特に、らっきょう12に対し切断加工を行う刃2221を備えた切断装置22を有している。そして、コントローラ28が、ロボット制御部286の第2制御部2862で、ロボット16の吸着パッド166により持ち上げられたらっきょう12の加工目標部位が刃2221の位置に導かれるように、ロボット16を制御する。これにより、ロボット16の吸着パッド166により持ち上げられたらっきょう12の加工目標部位を切断装置22の刃2221の位置に確実に導くことができるので、らっきょう12の切断加工を高精度に行うことができる。
【0043】
なお、実施の形態は、上記内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、図11に示すように、各カメラ20を正面側(レンズ201及び照明202が備えられている側)が上方を向くように設置してもよい。本変形例によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、カメラ20を正面側が上方に向くように設置することで、ロボット16がらっきょう12をレンズ201の視野内の上記撮像位置に迅速に移動させることが可能となるので、ロボット16のサイクルタイムを短縮することができる。
【0044】
また以上では、コントローラ28が、第1画像処理部281と、第2画像処理部283と、第1制御部2861及び第2制御部2862を備えたロボット制御部286とを有しており、各種の演算及び処理を一括して行っていたが、これに限られない。すなわち、これら各種の演算及び処理をコントローラ28とは別の装置が分担して行ってもよい。例えば、第1画像処理装置、第2画像処理装置、及びロボットコントローラを設け、第1画像処理装置が第1画像処理部281と同様の演算及び処理を行い、第2画像処理装置が第2画像処理部283と同様の演算及び処理を行い、ロボットコントローラがロボット制御部286と同様の演算及び処理を行ってもよい。この場合、第1画像処理装置が、特許請求の範囲に記載の第1設定手段に相当し、第2画像処理装置が第2設定手段に相当し、ロボットコントローラが第1制御手段及び第2制御手段に相当する。
【0045】
また以上では、コンベア14による搬送経路上を搬送されてくるらっきょう12を検知するセンサとして、3次元センサ18を設置していたが、これに限られず、カメラや距離センサ等を設置してもよい。この場合、カメラや距離センサ等が、特許請求の範囲に記載の第1センサに相当する。
【0046】
また以上では、不定形物であるらっきょう12に対し切断加工を行っていたが、これに限られず、らっきょう12以外の野菜や果物といった自然物や、複数種類が混在した状態の人工物(工業製品)等の不定形物に対し加工を行ってもよい。この場合、らっきょう12以外の野菜や果物といった自然物や、複数種類が混在した状態の人工物等の不定形物が、特許請求の範囲に記載の対象物に相当する。また、不定形物に限られず、定形物に対し加工を行ってもよい。この場合、定形物が、特許請求の範囲に記載の対象物に相当する。
【0047】
また以上では、らっきょう12に対し切断加工を行っていたが、これに限られず、らっきょう12に対し、切断加工以外の加工を行ってもよい。
【0048】
また以上では、ロボット16が、アーム164の先端に吸着パッド166を備えていたが、これに限られず、アーム164の先端にらっきょう12を把持することで持ち上げ可能なロボットハンドを備えていてもよい。この場合、ロボットハンドが、特許請求の範囲に記載のツールに相当する。また、アーム164の先端にらっきょう12を刺すことで持ち上げ可能な有刺部材を備えていてもよい。この場合、有刺部材が、特許請求の範囲に記載のツールに相当する。また、鉄等の磁性体からなる対象物に対し加工を行う場合、アーム164の先端に鉄等の磁性体からなる対象物を電磁吸着力により電磁吸着して持ち上げ可能な電磁石を備えていてもよい。この場合、電磁石が、特許請求の範囲に記載の吸着部材及びツールに相当する。
【0049】
また以上では、ロボット16を複数台設置していたが、これに限られず、ロボット16を1台だけ設置してもよい。
【0050】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0051】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0052】
10 らっきょう切断加工システム(対象物加工システム)
12 らっきょう(対象物)
14 コンベア(搬送装置)
16 ロボット
18 3次元カメラ(第1センサ)
20 カメラ(撮像装置、第2センサ)
22 切断装置
28 コントローラ
142 モータ
144 コンベア駆動部(駆動部)
146 エンコーダ
166 吸着パッド(吸着装置、ツール)
222 円形カッタ
281 第1画像処理部(第1設定手段)
283 第2画像処理部(第2設定手段)
286 ロボット制御部
2221 刃
2861 第1制御部(第1制御手段)
2862 第2制御部(第2制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を搬送する搬送装置と、
前記対象物を持ち上げ可能なツールを備えたロボットと、
を有し、
前記対象物に対し所定の加工を行う対象物加工システムであって、
前記搬送装置により搬送経路上を搬送されてくる前記対象物を検知する第1センサと、
前記第1センサの検知結果に基づき、前記搬送経路上を搬送されてくる前記対象物の接触目標部位の設定を行う第1設定手段と、
前記対象物が前記ツールの可動範囲内に搬送されてきたとき、前記ツールを前記対象物の前記接触目標部位に接触させ当該対象物を持ち上げつつ所定の位置へ移動させるように、前記ロボットを制御する第1制御手段と、
前記所定の位置に移動した前記対象物の姿勢を検知する第2センサと、
前記第2センサの検知結果に基づき、前記ロボットの前記ツールにより持ち上げられた前記対象物の加工目標部位の設定を行う第2設定手段と、
前記ツールにより持ち上げられた前記対象物の前記加工目標部位が前記加工を行う位置へ導かれるように、前記ロボットを制御する第2制御手段と、
を有することを特徴とする、対象物加工システム。
【請求項2】
前記搬送装置は、
モータと、
前記モータにより回転駆動される駆動部と、
前記駆動部に連結され当該駆動部の回転位置を検出するエンコーダと、
を備え、
前記第1制御手段は、
前記エンコーダの検出結果に基づき、前記ロボットの動作開始タイミングを算出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の対象物加工システム。
【請求項3】
前記第1センサは、
前記搬送経路上を搬送されてくる前記対象物の3次元形状を検知する3次元センサであり、
前記第1設定手段は、
前記3次元センサの検知結果に対応する3次元情報に基づき、前記対象物の前記接触目標部位の設定を行う
ことを特徴とする、請求項2に記載の対象物加工システム。
【請求項4】
前記第2センサは、
前記所定の位置へ移動した前記対象物を撮像する撮像装置であり、
前記第2設定手段は、
前記撮像装置の撮像画像に基づき、前記対象物の前記加工目標部位の設定を行う
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の対象物加工システム。
【請求項5】
前記ロボットの前記ツールは、
前記対象物を吸着により持ち上げ可能な吸着装置であり、
前記第1設定手段は、
前記対象物の前記接触目標部位として吸着目標部位の設定を行う
ことを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の対象物加工システム。
【請求項6】
前記対象物に対し前記所定の加工として切断加工を行う刃を備えた切断装置をさらに有し、
前記第2制御手段は、
前記ロボットの前記ツールにより持ち上げられた前記対象物の前記加工目標部位が前記加工を行う位置としての前記切断装置の前記刃の位置に導かれるように、前記ロボットを制御する
ことを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の対象物加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−86230(P2013−86230A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230685(P2011−230685)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】