説明

封止筒及び蛍光灯の飛散防止構造

【課題】蛍光灯や防護用カバーのリサイクルも容易である封止筒およびそれを用いた蛍光灯の飛散防止構造を提供する。
【解決手段】弾性を有する素材から軸方向に短寸で径方向に切割部22を有する筒体が成形され、前記筒体の内周21は、棒状の蛍光灯の口金の外周を受容し軸方向の一半部に設けられる口金受容部20aと、ガラス管の外周を受容し軸方向の他半部に設けられるガラス管受容部20bと、前記口金受容部20aと前記ガラス管受容部20bを連絡する傾斜連絡受容部20cとを備え、前記切割部22を弾性に抗して開被して前記口金と前記ガラス管とに被せたときに前記口金受容部20aが前記口金に密着されると同時に前記ガラス管受容部20bが前記ガラス管に密着され、第一のグリップ片23と第二のグリップ片24とが結束領域23b、24bで摩擦結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光灯の防護用カバーを固定する封止筒とそれを用いた蛍光灯の飛散防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯は、蛍光管部分がガラス管で作られているため、地震等の災害時において簡単に破損してしまい、割れたガラス管の破片が飛散することが懸念されている。各種店舗や工場などでは蛍光灯の破損によって製造過程の食品や、調理中の食品にガラス片が降りかかるといった危険性があり、飛散防止、異物混入防止対策が望まれている。
【0003】
そこで、本発明者は、特許文献1に示す蛍光灯用飛散防止具を提案している。この蛍光灯用飛散防止具は、透光性を有して蛍光灯に被せられる筒状部と、この筒状部を挿入するための挿入部を有する蓋状体とを備え、蛍光灯の外周側に筒状部を保持しながら蛍光灯の両端部に装着されることを特徴としている。
【0004】
また、本発明者は、特許文献2に示す蛍光灯防護用カバーを提案している。この蛍光灯防護用カバーは、透光性及び弾性を有する合成樹脂を材料に筒形に形成されるカバー主体が、周面に長さの全長に亘る切割りを有し、使用時には前記切割りを押開き拡径させることで開放される該切割りを通してカバー主体内部に蛍光灯を受入れる。そして、素材の復元力によりこのカバー主体を縮径させて前記開放する切割りを閉塞して、蛍光灯を被覆すると同時にカバー主体の両端部において蛍光灯器具本体に相対向して設けられるソケット部にそれぞれ装着されるキャップを緊締し、蛍光灯器具本体に装着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3418179号公報
【特許文献2】特開2008−311155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す蛍光灯用飛散防止具によれば、蛍光灯をソケットから取り外さなければ蛍光灯用飛散防止具の装着を行うことができない。蛍光灯用飛散防止具を最初に装着する際および取り替える際には、蛍光灯の付け外しの必要がある。
【0007】
特許文献2に示す蛍光灯防護用カバーによれば、蛍光灯とキャップを取付けた状態で蛍光灯防護用カバーを押開き拡径させて取付けることができるので、寿命の短い蛍光灯を取り替える際にカバーの交換は容易となっている。しかし、この蛍光灯防護用カバーは、防水・防湿のために蛍光灯の両端部・ソケット部分に防水・防湿のためのカバーを有する形式の蛍光灯用に開発されているものであり、ソケット部のキャップは湿気の高い環境下では防水・防湿の役割を果たすが、それ以外の一般的な環境下では部材の増加を招き、スペースを消費し、キャップ設置の手間を要する。そのため、この蛍光灯防護カバーはキャップを必要とする湿気の高い環境下での蛍光灯の使用に有効なものとなっている。
【0008】
また一般に、蛍光灯の寿命は1年程度であり、多数の蛍光灯を使用する工場などでは頻繁に蛍光灯の交換を行う必要が生ずる。蛍光灯の飛散防止構造の設置や除去の作業も、そのたびに行う必要があるため、可能な限り容易に行えることが望ましい。
【0009】
本発明は、上述した点に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、蛍光灯10をソケットに取付けたままの状態で取付けることができ、一般の直管型の蛍光灯に幅広く使用でき、取付け、取り外しの作業が容易な封止筒及び蛍光灯の飛散防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の封止筒は、弾性を有する素材から軸方向に短寸で径方向に切割部を有する筒体が成形され、前記筒体の内周は、棒状の蛍光灯の口金の外周を受容し軸方向の一半部に設けられる口金受容部と、ガラス管の外周を受容し軸方向の他半部に設けられるガラス管受容部と、口金からガラス管への傾斜面部を受容し、前記口金受容部と前記ガラス管受容部を連絡する傾斜連絡受容部とを備え、前記切割部は前記口金受容部から外周方向に延長される第一のグリップ片と、該第一のグリップ片と互い違いに前記ガラス管受容部から外周方向に延長される第二のグリップ片と、前記傾斜連絡受容部に沿う第一のグリップ片と第二のグリップ片との間に結束領域とが設けられ、前記切割部を弾性に抗して開被して前記口金と前記ガラス管とに被せたときに前記口金受容部が第一のグリップ片の弾性巻付けにより前記口金に密着されると同時に、前記ガラス管受容部が第二のグリップ片の弾性巻付けにより前記ガラス管に密着され、前記第一のグリップ片と前記第二のグリップ片とが前記結束領域で摩擦結合されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の蛍光灯の飛散防止構造は、請求項1または2に記載の封止筒と、前記蛍光灯を円筒形に覆うカバー主体とを備え、前記カバー主体は透光性と弾性を有する合成樹脂材から円筒形に成形され、周面の長さ方向のカバー切割りと互いに重なり合う一対の結束片を有し、使用時には前記カバー切割りを押開き拡径させることで前記蛍光灯に被せ、前記合成樹脂材の復元力により縮径させて前記開放するカバー切割りを閉塞し、前記カバー主体の両端部において前記封止筒を緊締し、前記蛍光灯から離した状態で被覆することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、封止筒は切割部から開被し、口金受容部を口金に、ガラス管受容部をガラス管に、傾斜連絡受容部を傾斜面部に被せられ、素材の弾性によって蛍光灯を緊締する。
第一、第二のグリップ片は、それぞれが拡開することで口金受容部の径、ガラス管受容部の径を調節する。開被前の径の差とこのグリップ片による調節によって、口金の外周の径と、ガラス管の外周の径の差が吸収され、封止筒は蛍光灯に隙間なく密着する。第一、第二のグリップ片は結束領域に摩擦結合することで、切割部が密着し、封止筒は蛍光灯に被さった状態で保持される。
【0013】
また、カバー主体はカバー切割りを押開いて拡開させて蛍光灯を被い、次に素材の復元力により装着部材に装着され、蛍光灯を取り外すことなく装着される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、封止筒は切割部から開被し、蛍光灯に被せることができるので、蛍光灯をソケットに取付けたままの状態で付け外しすることができる。口金受容部とガラス管受容部と傾斜連絡受容部が、口金とガラス管と傾斜面部をそれぞれの径に応じて被い、第一、第二のグリップ片が各受容部の径を調節するので、封止筒と蛍光灯の密着を保つことができ、蛍光灯からの光の漏れや破損時のガラスの飛散を防止できる。飛散防止構造は、封止筒とカバー主体が共に蛍光灯を設置したまま設置・交換でき、交換も容易である。さらに、飛散防止構造は蛍光灯の径のサイズにある程度対応して装着することができる。蛍光灯の口金とガラス管に装着されるため、他の部材を要さず、一般の直管型の蛍光灯に幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る封止筒の斜視図である。
【図2】図1の封止筒の設置を示す概略図である。
【図3】(a)は図1の封止筒の使用状態の断面図、(b)は図1の封止筒の使用状態を上方から見た概略図である。
【図4】第2の実施形態に係る封止筒の斜視図である。
【図5】図4の封止筒の使用状態を上方から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る封止筒及び蛍光灯の飛散防止構造について、図面を参照して説明する。
【0017】
〔基本的構成〕
まず、封止筒20は、図1に示すように、弾性を有する素材から軸方向に短寸で径方向に切割部22を有する筒体からなる。前記筒体の内周21は、棒状の蛍光灯10の口金11の外周11aを受容し軸方向の一半部に設けられる口金受容部20aと、ガラス管12の外周12bを受容し軸方向の他半部に設けられるガラス管受容部20bと、口金11からガラス管12への傾斜面部13を受容し、前記口金受容部20aと前記ガラス管受容部20bを連絡する傾斜連絡受容部20cとを備える。
【0018】
封止筒20の弾性を有する素材とは、手で軽く力を加える操作によって変形が可能で、手を離すと元の形に戻る程度の弾性を有しているものである。こうした性質の素材としてはゴムが望ましく、特にシリコンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、あるいは合成樹脂などで適度の弾性を持つものも利用できる。硬さとしては硬度20〜80度、特に25〜40度のものが適している。
【0019】
封止筒20は軸方向に短寸の筒体からなり、短寸とは蛍光灯10の端部を覆った際に蛍光灯10の光を遮らないよう、長すぎない意である。筒体の軸方向の長さLは、封止筒20が口金11とカバー主体30に密着でき、閉塞できるような面積を確保している。長さLは口金11の長さの半分から2倍程度までが望ましい。
【0020】
口金受容部20aは、封止筒20が蛍光灯10に被さっていない状態では径D1が口金11の外周11aの径D3と同径であるか、若干小さいことが望ましく、口金11を被嵌したとき、収縮力によって口金11の外周11aに全周密着状態に嵌合することができる。口金11の径D3は蛍光灯によって異なるが、一般的に24〜30mmであるため、口金受容部20aの径D1は目安としてそれと同径かやや小さい22〜30mmが望ましく、特に径D3の最小のものより若干小さい23〜24mmであれば各蛍光灯の径の大きさに対応できる。
ガラス管受容部20bは同様に、径D2がガラス管12の外周12aの径D4と同じかやや小さいことが望ましい。口金11の径D4は一般的に25.5〜32.5mmであるため、ガラス管受容部20bの径D2は目安として23〜32.5mmが望ましく、特にD4の最小のものより若干小さい24〜25.5mmであれば各蛍光灯10の径の大きさに対応できる。
なお、口金受容部20aの長さLaは、口金受容部20aが口金11とソケットSの接触部を覆ってしまうと接触が悪くなるので、口金11の長さより1〜10mm程度短いことが望ましく、特に4〜6mm程度短いのがさらに望ましい。ガラス管受容部20bの長さLbは、ガラス管受容部20bが充分にガラス管12に密着する面積を確保する長さが必要だが、長すぎると蛍光灯10の光を遮るので、10〜20mm程度が望ましい。
口金受容部20aの厚みT、ガラス管受容部20bの厚みtは、カバー主体30とガラス管12との間に隙間を設けられるよう、ある程度の厚みがあることが望ましい。隙間を設けずに、ガラス管12とカバー主体30が密着していると、外部からの衝撃に弱く、またカバー主体30がガラス管12の熱で破損するおそれがある。目安としてガラス管受容部20bの厚みtが1〜10mmである。
【0021】
傾斜連絡受容部20cは、径D1をもつ口金受容部20aと、径D2をもつガラス管受容部20bを連絡する部分である。蛍光灯10の、口金11とガラス管12の径の差に応じて設けられた傾斜面部13を被う。図1、図3(a)に示すように、傾斜連絡受容部20cの内周21cは、垂直に近い傾斜を形成していてもよい。また、斜めに設けられていてもよい。内周21cは平面であると加工しやすく、図3(a)に示すように蛍光灯10の傾斜面部13に密着しない空隙gが生じるので高温による劣化が抑えられ、設置、除去が容易となる。一方で図示しないが、傾斜面部13に沿うような曲面を形成されている場合には、蛍光灯10に密着してより効果的に防護されるという利点が得られる。
【0022】
次に、切割部22は前記口金受容部20aから外周方向に延長される第一のグリップ片23と、該第一のグリップ片23と互い違いに前記ガラス管受容部20bから外周方向に延長される第二のグリップ片24と、前記傾斜連絡受容部20cに沿う第一のグリップ片23と第二のグリップ片24との間に結束領域23b、24bとが設けられてなる。
【0023】
切割部22は、第一、第二のグリップ片23、24と、結束領域23b、24bを設けられるよう、封止筒20を切断する線である。封止筒20は、切割部22によって分断されていることと、その素材の弾性により、C字型に拡開が可能となっている。拡開によって、第一、第二のグリップ片23、24を離間させることができ、手を離せば復帰して筒状に閉じるようになっている。
【0024】
第一、第二のグリップ片23、24は、拡開の程度の差によって径D1、D2の大きさをそれぞれ調節するほか、互いに当接して、後述するように摩擦結合することで、封止筒20を拡開させつつ筒を閉じた状態で保持させる部分である。
結束領域23b、24bは、封止筒20が蛍光灯10を被う際に、第一、第二のグリップ片23、24が当接する面である。結束領域23b、24bは、例えば図に示すように略垂直な傾斜連絡受容部20cに沿うように、垂直に切断するように設けられていてもよい。また、後述する摩擦結合の力が生じやすいよう、凹凸の部位が設けられていてもよいし、凹凸面や皮膜などで摩擦を大きくする表面処理が行われていてもよい。
第一、第二のグリップ片23、24は、結合領域23b、24bが、傾斜連絡受容部20cに沿って設けられていることにより、それぞれ口金受容部20a、ガラス管受容部20bから延長される形で設けられている。このため、第一、第二のグリップ片23、24は、それぞれの拡開の程度の差によって、口金受容部20aの径D1と、ガラス管受容部20bの径D2を調節し、蛍光灯10の外径に対応する。
【0025】
第一、第二のグリップ片23、24の大きさ、すなわち結束領域23b、24bの大きさは、第一、第二のグリップ片23、24が大きければ大きいほど、封止筒20が被う径D3、D4の差を吸収でき、後述する結束領域23b、24bの面積による摩擦結合の力が大きくなるが、グリップ片が大きすぎると、大きく拡開させなければ封止筒20を蛍光灯10に取付けられず、素材の弾力性から大きく拡開させるには力を要する。封止筒20の環の円周の1/6〜1/2までが望ましく、特に硬度25〜40度のシリコンゴムを用いる場合などは、適度な弾力性を持たせる点から1/5〜1/3までがさらに望ましい。
【0026】
切断面23c、24aや切断面23a、24cを形成する切断線の方向はいずれであってもよい。筒体の径方向に対して、平行に近ければ、封止筒20の設置、除去を行いやすく、斜めであれば、蛍光灯10への設置時に切断面23c、24aや切断面23a、24cの間に隙間があっても、切断面同士に重なり部分ができるので、蛍光灯10からの光の外部への漏れを遮断しやすい。
【0027】
次に、封止筒20は、切割部22を弾性に抗して開被して前記口金11と前記ガラス管12とに被せたときに前記口金受容部20aが第一のグリップ片23の弾性巻付けにより前記口金11に密着されると同時に、前記ガラス管受容部20bが第二のグリップ片24の弾性巻付けにより前記ガラス管12に密着され、前記第一のグリップ片23と前記第二のグリップ片24とが前記結束領域23b、24bで摩擦結合される構造となっている。
【0028】
封止筒20を蛍光灯10に被せ、密着させたとき、第一のグリップ片23と第二のグリップ片24とが結束領域23b、24bにおいて当接する。このとき、結束領域23bと24bの当接する面積の大きさと素材のグリップ力に応じて、結束領域23b、24bに摩擦力が生じ、ある程度の力で結束領域23b、24bを結合させ、すなわち摩擦結合する。こうして第一のグリップ片23と第二のグリップ片24とが結合し、封止筒20を筒状に閉じて蛍光灯10を封止することができる。
【0029】
封止筒20を蛍光灯10に被せたとき、図3(b)に示すように、口金受容部20aに生ずる隙間25aと、ガラス管受容部20bに生ずる隙間25bができる。グリップ片23、24の拡開の大きさの差によって、隙間25a、25bの大きさに差を生じることができるので、この差が口金11aの外径とガラス管12の外径との差を吸収する。このため、封止筒20が径の異なる口金11とガラス管12の双方に密着状態に嵌合し得る。
【0030】
カバー主体30は、蛍光灯10を被覆する透光性を有するカバーで、ガラス等の割れやすいガラス管12を保護し、割れた際の飛散を防止するものである。素材は衝撃によって割れにくい合成樹脂が望ましい。透光性を有するとは、透明もしくは半透明であってもよい。カバー主体30の長さは、最低限は蛍光灯10の両端を被覆した封止筒20の間を渡せるだけの長さがあればよい。しかし、蛍光灯10の破損時の飛散防止のため確実に密閉するためには、封止筒20と密着する面積が大きい方がよいため、ガラス管12の長さよりも長いことが望ましい。さらに、蛍光灯10が破損した際に形状を維持できるためにはカバー主体30が口金11の部分も被覆し、支えていることがさらに望ましいので、被覆した際に口金11の略半分を被っていることがさらに望ましく、そのためにはカバー主体30の全長は、蛍光灯10の長さよりも、口金11の長さの1/4〜1/1程度短いものであることがさらに望ましい。しかしながら、蛍光灯10の設置の支障にならないよう、カバー主体30の全長は蛍光灯10の全長よりは短いものである必要がある。
なお、カバー主体30は、封止筒20と共に蛍光灯10を設置したままで取り外しができるようにすることで設置、交換が容易となるので、特許文献2に記載されているように弾性を有する合成樹脂で、切り割り31を形成していることが望ましい。しかし、本構成の封止筒20は、カバー主体30が硬質のものや、特許文献1のように切り割りを有さないものに適用することも可能である。
【0031】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る封止筒20の斜視図、図2(a)〜(c)は封止筒20の設置を示す概略図、図3(a)は封止筒20の使用状態の断面図、(b)は封止筒20の使用状態を上方から見た概略図である。この封止筒20は、結束領域23b、24bが外周方向に沿って、平行に形成されている。
【0032】
封止筒20は、図1、図3に示す例においては、硬度30度のシリコンゴム製で、傾斜連絡受容部20cが、蛍光灯10の外周11a、12bに対して略垂直の傾斜を形成し、内周21a、21bとの間の段差となるように設けられている。
切割部22は、口金受容部20aを径方向に傾斜連絡受容部20cまで切断し、ついで傾斜連絡受容部20cを外周方向に平行に切断し、さらにガラス管結束部20bを径方向に切断することでジグザグ状に切断して設けられている。ジグザグの切断によって互い違いの第一、第二のグリップ片23、24が設けられ、傾斜連絡受容部20cを切断した部分が結束領域23b、24bとなっている。切断面はいずれも、切断しやすいよう封止筒20の厚み方向に対して垂直である。
【0033】
カバー主体30は、図2に示すように、透光性と弾性を有する合成樹脂材から円筒形に成形され、周面の長さ方向のカバー切割り31と互いに重なり合う一対の結束片32を有し、使用時には前記カバー切割り31を押開き拡径させることで前記蛍光灯10に被せ、前記合成樹脂材の復元力により縮径させて前記開放するカバー切割り31を閉塞し、前記カバー主体30の両端部において前記封止筒20を緊締し、前記蛍光灯10から離した状態で被覆する。
【0034】
この実施形態では、カバー主体30の材料としては、略透明な合成樹脂、例えばポリカーボネート等の保形性を有するものが望まれる。ここで言う保形性とは、外部から衝撃が加わっても容易に変形して破れたりしない特性を指し、素材によっても左右されるが、少なくともガラス管12のガラスの破片や外的衝撃等で破損しない程度のものが望まれる。
なお、カバー主体30は紫外線遮蔽性を有することが好ましい。カバー主体30に配合される紫外線防止剤としては、例えばベンゾフェノン系、あるいはベンゾトリアゾール系、あるいはシアノアクリレート系の材料から選ばれることが望ましい。これによって、紫外線は約99%カットされ、褪色抑制や防虫効果を得ることができる。
【0035】
また、この実施形態では、カバー主体30は、使用時の縮径した状態において周方向の長さが切割りの縁同士が重なり合う長さであり、一対の結束片を有するように形成されている。すなわち、使用状態においてこのカバー切割り31が完全に閉塞されるように切割れた縁同士の結束片同士が互いに重なり合う重なり代を形成する。このように重なり代がカバー切割り31の口を塞ぐことにより、確実に蛍光灯10を防護することができる。さらに、切割り31は円滑に重ね合わせることができるよう、結束片の縁が傾斜面に形成されている。
【0036】
上記構成によれば、取付けられた際に径が開いても結束領域23b、24bが密着しており、蛍光灯10の口金11とカバー主体30とを封止することができる。すなわち、口金11の径が封止筒20の内周21における内径よりもやや大きく、グリップ片の縦方向の切断面23aと24c、23cと24aとはそれぞれ離れていても、結束領域23b、24bの密着が確保される。
【0037】
封止筒20が蛍光灯10に全周密着状態に嵌合した状態では、傾斜連絡受容部20cの内周21cに応じて、最小の径D1を持つ部分が口金11部分に、最大の径D2を持つ部分がガラス管12部分に係るように嵌合させる。封止筒20が口金11とガラス管12の双方を覆うことで、それぞれをカバー主体30と密着させることによって、ガラス管12が破損した際に引圧によってガラス管12の構造が崩壊することを防ぐ効果がある。内周21の最小の径D1は、口金11の端部の外周11aの径D3未満であり、内周21の最大の径D2は、前記ガラス管12の端部の外周12aの径D4未満であるため、封止筒20は蛍光灯10に密着する。内周21はガラス管12、口金11、その継ぎ目のそれぞれの外径に密着するように変形し、各変形に応じて変位し略々面一状態ないしは僅かな傾斜状態となる。封止筒20の外面は蛍光灯10の外面に対して略々平行になっている。そのため封止筒20の外面がカバー主体30の両端内周部に嵌合する際において、隙間なく大きな面積で密着することができる。
【0038】
傾斜連絡受容部20cが略垂直に形成されているので、図3(a)に示すように、封止筒20を蛍光灯10に嵌合させた際、内周21aは口金11の外周11aに、内周21bはガラス管12の外面12bに密着するが、ガラス管12の口金11との接続部は曲面をおびていたり、口金11との間に溝があったりするので、傾斜連絡受容部20cの内周21cは蛍光灯10とは密着せず、空隙gができる。この空隙gによって、封止筒20が蛍光灯10で最も高温になる接続部に密着しないことで、長期間の使用によっても、封止筒20の素材の劣化が抑えられる。さらに、封止筒20の設置、除去の際に、空隙gを介して封止筒20と蛍光灯10との間に空気が入りやすく、特に除去が行いやすい。
【0039】
また、カバー主体30が蛍光灯10を取り外すことなく装着できるので、封止筒20と共に蛍光灯10を設置したまま設置・交換できる。また、蛍光灯10を交換する際にも、カバー主体30と封止筒20を取り外した後に、蛍光灯10を取り外すことができるので、カバーごと取り外す場合に比べて蛍光灯10が落下する危険が小さく、安全に設置・交換を行うことができる。そのため、最初に蛍光灯の飛散防止構造40を設置する際や一般的におよそ1年といわれる蛍光灯10の頻繁な交換の際にも、事故の起こる危険性が極めて小さい。
【0040】
この構成の封止筒20を用いたカバー主体30の設置、取外し時について、図2に示して説明する。設置時には、図2(a)に示すように、壁、天井等に固定された蛍光灯ソケットSに固定されたままの状態の蛍光灯10の口金11に対して、封止筒20を下から取付ける。ついで、図2(b)に示すように、カバー切割り31を有するカバー主体30を、その端部を封止筒20に密着させるように下から取付ける。こうして、蛍光灯10をソケットSに固定したままで、図2(c)のように封止筒20とカバー主体30を設置することができる。カバー主体30を取付けた後は、照明を妨げるカバー切割り31が照明側、図では下方に向かないようにカバー主体30を回転させてもよい。取外す時は、(c)〜(a)を逆に行う。
【0041】
また、図示しないが、前記カバー切割り31及び前記カバー主体30の両端部と前記封止筒20との間を、粘着テープによってシールすることもできる。粘着テープは、カバー主体30を封止筒20に装着した状態において、カバー主体30のカバー切割り31の全長に亘って貼着される。また、この粘着テープは、カバー主体30の両端部と前記封止筒20との間に装着することもある。前記粘着テープは、塩化ビニールテープやフッ素テープが好適である。中でも、アルミなどの金属製の粘着テープを用いた場合には、カバー切割り31を上向きにしたとき上部に装着することになることから、粘着テープが反射面を形成することになるので、蛍光灯10の光を反射して光量を増加させることができる。
【0042】
このように、カバー切割り31、そしてカバー主体30の両端部と前記封止筒20との間を粘着テープによって塞ぐようにすると、蛍光灯10の落下時等、強い衝撃が加わった場合でも、粘着テープのせん断力によって、蛍光灯10の飛散を完全に防止することができる。また、封止筒20やカバー主体30に隙間が生じた場合に塞ぐこともできるので、より確実に蛍光灯10を防護することができることになる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
図4は本発明の第2の実施形態に係る封止筒20Aの斜視図、図5は図4の封止筒20Aの使用状態を上方から見た概略図である。この封止筒20Aは、グリップ片23A、24Aの各切断面が、環の厚み方向に対して傾斜面に形成されている。
【0044】
この実施形態では、切断面23d、23eが封止筒20Aの筒体の外側、切断面24d、24eが内側を向くような傾斜面で形成されている。このため、封止筒20Aの分断箇所に隙間25a、25bができ離れている場合でも、切断面同士が重なり、封止筒20Aは蛍光灯10の全周を覆うことができ、カバー主体30の内径の全周に密着できるので、より確実に蛍光灯10が保護される。例えば、封止筒20Aが拡開し、分断された箇所に生ずる隙間25a、25bの間隔が、重なり代の長さc、C未満の距離であればよい。
【0045】
その他の構成は、第1の実施形態に係る封止筒20と相違しないので、同一符号を付して説明を省略する。作用・効果についても、第1の実施形態の場合と同一部分については説明を省略する。
【0046】
〔その他の実施形態〕
本発明は、前記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
10 蛍光灯
11 口金
11a 口金の外周
12 ガラス管
12a ガラス管の外周
13 傾斜面部
20、20A 封止筒
20a 口金受容部
20b ガラス管受容部
20c 傾斜連絡受容部
21、21a、21b、21c 内周
22 切割部
23、23A 第一のグリップ片
23a、24a、23c、24c、23d、24d、23e、24e 切断面
23b、24b 結束領域
24、24A 第二のグリップ片
25a、25b 隙間
30 カバー本体
31 カバー切割り
40 蛍光灯の飛散防止構造
c、C 重なり代の長さ
D1、D2、D3、D4 径
g 空隙
T,t 厚み
L、La、Lb 長さ
S ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する素材から軸方向に短寸で径方向に切割部を有する筒体が成形され、
前記筒体の内周は、棒状の蛍光灯の口金の外周を受容し軸方向の一半部に設けられる口金受容部と、ガラス管の外周を受容し軸方向の他半部に設けられるガラス管受容部と、口金からガラス管への傾斜面部を受容し、前記口金受容部と前記ガラス管受容部を連絡する傾斜連絡受容部とを備え、
前記切割部は前記口金受容部から外周方向に延長される第一のグリップ片と、該第一のグリップ片と互い違いに前記ガラス管受容部から外周方向に延長される第二のグリップ片と、前記傾斜連絡受容部に沿う第一のグリップ片と第二のグリップ片との間に結束領域とが設けられ、
前記切割部を弾性に抗して開被して前記口金と前記ガラス管とに被せたときに前記口金受容部が第一のグリップ片の弾性巻付けにより前記口金に密着されると同時に、前記ガラス管受容部が第二のグリップ片の弾性巻付けにより前記ガラス管に密着され、前記第一のグリップ片と前記第二のグリップ片とが前記結束領域で摩擦結合されることを特徴とする封止筒。
【請求項2】
上記切割部が、外周方向に平行に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の封止筒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の封止筒と、前記蛍光灯を円筒形に覆うカバー主体とを備え、
前記カバー主体は透光性と弾性を有する合成樹脂材から円筒形に成形され、周面の長さ方向のカバー切割りと互いに重なり合う一対の結束片を有し、使用時には前記カバー切割りを押開き拡径させることで前記蛍光灯に被せ、前記合成樹脂材の復元力により縮径させて前記開放するカバー切割りを閉塞し、前記カバー主体の両端部において前記封止筒を緊締し、前記蛍光灯から離した状態で被覆することを特徴とする蛍光灯の飛散防止構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−257613(P2010−257613A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103348(P2009−103348)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(507120773)中川化成株式会社 (4)
【Fターム(参考)】