説明

封水剤組成物

【課題】 排水管や貯水槽の水の蒸散を防ぐ目的で非水性の封止膜を形成する液状の封水剤取扱いと封止効果の完遂を全うするために、新たに水より比重の重い固形物をそれぞれの用途に応じて改変できるものの開発を目的とする。
【解決手段】 そのために本発明は本来の排水液状物をアルカリ炭酸塩と酸性物質の水中中和反応時の二酸化炭素ガスの発生を利用し、且つその媒介物として水不溶性(比重は水より重い)物質を介して固形化(カプセル化、タブレット化、分包化など)した形態を形成させたものである。
これによって、広汎に応用の可能で処理できなかった部分や用途まで効果を完遂することができ、且つ、大きさ、形状などバラエティに変更できるフレキシブリティを有する商品となる可能性を具備することが現実化した。

【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
本発明は、排水管や排水溝、貯水管などの滞留水を、一定期間に揮発蒸散すること封水制限作用をより完全で効率よく維持するための封水性組成物に関し、とくにトイレ、浄水槽の排水管や排水ダクトの滞留水を、水質変化を生じることなく一定に維持するための固形状の組成物に関するものである。
とくに、封水性組成物としては水と油を適量含んだ水性液状物であったものを固形状にしたことに大きな意義を有し、より広汎な用途を展開するものである。
【背景技術】
【0002】
排水管用の貯水蒸散防止(封水)剤としては、元来炭化水素や脂肪酸グリセライド、シリコーンオイルなどの非水系油状物を水中乳化剤、防腐剤、イオン交換物の液状混合物や油型エマルジョンをそのまま注入することが知られ、実用化されている。また、油状物そのものをフィルム上のウエアとして水面を封止することが採用されているものの、いくつかの問題点や不備、不完全の結果、より完全なものが望まれている。
【0003】
液状物は、多くは可燃性やプラスチック膨潤化による変形があったり、水/油の混合物の予想外の変化やビヘビアーが多様化して、水/油の混合比が変化したり定量投入目安が想定しにくいので、ラウールの法則が適用できない。
【0004】
とくに排水管の2つの水面がU字管の様にスパイラル状に設計されているとき、簡単に投入することが困難で、両面に均一の封水層(アクアバリアー層)を正確に設置することは極めて困難である。
つまり現在のものは単なる水/油のソリューションまたはエマルジョンの「混ぜもの」であり、その抜本的な対応が迫られている。
又、水質の酸敗や変質により排水管や貯水管の機能そのものが損傷劣化が避けられない現状にある。
【発明の開示】

【発明の解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の封水剤の封水効果を改良すること、特に常識化されている水/油系の液状物が最も合理的、効率的なものかを検討している中で、封水そのものが不均一のサスペンション体を成していることと、しかも使用する油水物の粘度、比重、沸点、引火点、パラメーター、凝固点、蒸発(気化率)、有害性、臭気など混沌としており、製品としての特化に苦慮することと、常時水との接合面は生物的に微生物の発生が起こりやすく、勢い、強力な殺菌剤や防腐剤の乱用、多用が避けられない。
次に排水管の在水層に投入する場合、出来るだけ混合して均質化(ホモジナス)を図って使用する留意点が派生する。
【0006】
当該水/油の混合液に、水不溶物(水より比重の大なる)を含むと分離沈降するし、水より軽いものは表面にまだら状の薄膜を形成し、アクアバリアーの障害となる。一方、水に溶ける塩類や糖分、あるいはハイドロトロープを含ませると、油との相性がますます制限され組成物混合体の液そのものの状質が不安定になるものもある。
更にまた、分散性を改良するためにキサンタンガム、グアガム、HEC、CMCベントナイト、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、デキストリン、PVA系ポリマーなどを配合すると、同居する油との相溶性に欠けて液自体が商品としての体をなさないことが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、従来の水中心の液状体を採用せず、粉末(固体状)の組成物としての形質をとることによって水系の欠点の解消と共に、積極的に本発明の応用を拡大することを図ることで、封水目的を完遂させるものである。基本的には、従来から入浴剤や義歯洗浄剤などで利用されている構成を用いて、吸油性や固形(粉末)安定性を改良すべく、水不溶性粉体の介在させたものである。
こうすることによって、アルカリ炭酸塩と有機酸の混合物が非水系液状成分を充分に捕捉して担持化させて安全な状況を維持し、しかも水中に投下した場合、比重が水より1.2〜1.5倍多いので、急速に水中に下降して発泡作用を生じるため、非水系液状物が上昇して表面バリヤー層を形成することになる。
【0008】
即ち、主要構成成分の炭酸塩(正確には水溶性アルカリ)が吸収して安定性のすぐれた非水系液状物、当該物は
(1)水より比重が軽いこと(少なくとも0.9(20℃)以下が好ましい)、と同時に氷点下(特に−5℃以下)で凍結しないことも必要である。
(2)水には溶けない完全非水系であって、当該構造の中で−OHや−COOHラジカルを有しない。
有機化合物であると共に、出来るだけ無臭性のものが好ましい。
具体的には、例示すると、アルカン(CnHn+)でn=6〜18の正の整数(ヘキサン、ヘブタン、デカン、ウンデカンなど)、パラフィン系炭化水素(流動パラフィン)、ワセリン、ジアルキルシロキサン系、テルペル系((C)n)炭化水素、有機酸エステル(C〜C)、(コハクサンメチル、炭酸プロピレン、乳酸メチル、酪酸プロピル、プロピオン酸プロピル)、グリコール酸エチル、アジピン酸メチル、グルタル酸エチル、脱臭ケロシン、脱臭テレビン油、脱臭ミネラルスピリットなど。
【0009】
そして、当該化合物に融合する抗菌剤を単独または界面活性剤を用いてなじませる。抗菌剤としては、パラペン系、チアベンダゾール系、トリクロサン系、フェノール系(サリチル酸メチル、イソプロピルメチルフェノール、PCMX)、塩酸ジフェンヒドラミングアニジン系など、多くは化粧品、部外品、食添物として汎用されているものが好ましい。
本発明はかかる非水系の有機化合物(2種類以上の混合系)が最大のポイントであり、骨子を成すものである。
【発明の実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、基本的に第1成分として上記のように、(1)水より比重が軽いこと、(2)水に混合しないこと、(3)高沸点の揮発しにくいものであること、できれば臭気の少ない(ない)ことが必要である。
そして、当該化合物を吸収しやすくする粉末構成体として、
(a)炭酸塩:ソーダ灰、炭酸カリウム、重曹、重炭酸カリウム、セスキ炭酸塩、炭酸アンモニウム
(b)有機酸であって水に溶けにくく、炭酸塩と水和反応して二酸化炭素の発生を生じるもの:コハク酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、酒石酸、シュウ酸、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸、スルファミン酸、粉末硫酸(硫酸水素ナトリウム)
(c)水不溶性の紛体として、粒径が10〜1000ミクロン位の無機質:活性白土、クレー、カオリン、シリカ、滑石、正長石、蛇蚊岩、チタン白、亜鉛華などの粉体が好ましい。
【0011】
これらの混合系粉体は、概ね、
(1)アルカリ炭酸塩が20〜50w%
(2)酸性物質が20〜50w%
(3)水不溶状紛体が5〜20w%
(4)非水性液状物が5〜30w%
の中から特定される。
この場合、(4)の中に抗菌剤を界面活性剤(水溶性でHLBが7以上のものが好ましい)、例えばポリオキシエチレン(EO:7〜10モル)、アルキルエーテル(C12〜C11)、脂肪酸アルカノールアミドエトキシレート(EO:2〜10モル)、ソルビタン脂肪酸エステル(C〜C)、ポリオキシエチレン(EO:7〜12モル)、脂肪酸(C12〜C18)を0.2〜5w%含ませて混合しやすくすることと、必要により水中でキレート作用を発揮するキレート剤として、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸塩、EDTA、NTA、グルコン酸塩、クエン酸塩を適宜、更に着色剤としての水溶性染料や顔料を適量含ませることがある。
【0012】
本発明の混合紛体は、そのまま一定量使用する量を分包(パック)する以外にタブレット化すること、水溶性カプセルに封入する方法などがある。分包タイプでは水溶性フィルム(PVA、PVB)に内包させることもある。
本発明の混合紛体は、その目的用途に応じて1回の量(指定量)や、形状、外観が変更される。とくに貯水槽で一定期間水を貯蔵して、その減少を極力抑えることが出来る。
【0013】
本発明の紛体混合物は、水を介して中和反応により二酸化炭素(CO)を発生し、非水性の液化物が空気との界面に浮上し、形成層を構成することで完成する。
本発明の組成物は、この他に着色を呈示するための染顔料や蛍光物、快適な芳香を醸成するためのアロス化合物(ハッカ類、フィトンチッド、テルペン、木酢液など)、水質の安定性を図るために安全なアルコール類(ソルビトール、ヘキサノール、キシリトール、エタノール、ゲラニオール)、キレート剤としてリン酸塩、けい酸塩、アクリル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、臭素酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、各種アミン塩、第4級アンモニウム塩、液自体に粘性をもたせるために親水性のPVA、CMC、PEO、PEG、ポリアクリル酸塩、キサンタンガム、グアガム、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、トレハロース、PVM/MA、ゼラチングラフター、ウレタン化PVA、グルコマンナン、メトロース、更に非水層自体の抗菌性をキープする為の抗菌剤(フェノキシエタノール、サルチル酸、チアベンダゾール、アセチルアニリン、クロラムフェニコール、塩酸ジフェンヒドラミン)など幾重にもバリエーションを変成することが出来ることも注目である。
【0014】
本発明は各種下水、トイレ、上水、配管水などの一部または空気との界面において、水の蒸散を封止する目的で必要に応じて好んで用いられる。しかし粉体であるので、種々の形状、大きさに応じて加工し易く、それぞれの目的に対応して自由に加工設計できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のごとく今まで液状物として流通していた封水剤を粉末化することで、今まで制限された欠点を解決し、併せて当該用途分野を拡大することが出来ると共に、水または非水の液状物よりも取扱いが良くなった他、次の効果をもたらすこととなった。
(1)配水管などで液体では注入しにくい部分への投入が可能となり、特にタブレットやカプセルとしたものは、水中に投下すれば沈降してから浮上してくるので、確実に非水層を投入面(空気との)に形成することが完全化する。
(2)液状物では混合し難い付加物の加入が自由に選ぶことができる。
(3)水または非水などの液状物引火性、漏洩、変質、容器の選定、物流、在庫など細心の注意を考慮しなければならなくその内容物が限定されることや、使用する分野も大きく制約されることが解消できる。
(4)しかも当該粉末体は水と接すれば自然に化学反応してCOの発生と同時に非水層の形成を営むことができる。
(5)本発明の完成により、今まで封水措置が不可能または困難であった地下、障害物、歪曲化した構造物への利用が可能となり、封水剤の用途が広がってくる。
(6)その他、この物質を応用すれば水の蒸散だけでなく外からの飛散物、飛来物などの侵入が封止できるなど、特有の使用途が実現化する。
このように、極めて大きな成果や効果をもたらすことはいうまでもない。
以上、本発明の具体例を実施例を用いて証明する。
【0016】
次の表からなる試作品を作製し、以下の評価を得た。
【表1】


【評価その1】
(1)水の蒸発テスト
15mmΦの長さ240mmのU字ガラス管に、U字ガラス管の直線部の上(口)から1/3の線まで水を入れてマーキングした(U字管内の水量は約212ml)。
この中に試作品約5%(約10g)の打錠体(タブレット)かゼラチンカプセルに封入して得た固形物を投入し、その状況を視察した。
(ア)溶解度
評価:◎ 10秒以内に完溶して水面に透明薄膜を呈する。
○ 10秒以内に溶けるが懸濁物が分散しているもの。
△ 溶けているが、水面に薄膜がなく均一性がない。
× 溶けきらず、全体が水分散体となるか固形分が沈殿している。
(イ)U字管の水面にマーキングしたものを常温(約15〜20℃)と40℃でそれぞれ1ヶ月露見して、その後水面の状況を観察した。
評価:◎ ほとんど水面に変化がない。
○ わずかに水面の低下が見られる。
△ 約5mm以上の水面の低下が見られる。
× 約5mm以上の水面の低下と懸濁物が分散している(腐敗など)。
(2)水の腐敗テスト
(1)−(イ)の水中の大腸菌の発生状況を簡易バクテスターでチェックした。
評価:◎ 発生なし
○ 少し発生の兆しあるが基本的には差し支えない。異臭あり。
△ 水の腐敗による菌の発生を認める。
× 異常な発生があり、異臭を放つ。
(3)経時変化
それぞれのサンプルをタブレット(10g)とゼラチンカプセルに10g封入して常温と40℃で1ヶ月放置し、その外観の状態を観察した。
評価:◎ 製造時と殆ど変わらない。
○ 少しベトツキあるが、包装状況で解決できるもの。
△ 少しクラック、汗をかいた状況で不完全なもの。
× 崩壊気味。ベトツキあり。
【表2】

(4)抗菌力テスト
それぞれの試作品の1,000ppm、1万ppm水溶液濃度でのMIC(最小発育阻止 濃度)を代表的菌種で調査した。
テスト方法はJIS22911により期間14日、常温でのテストをした。

【0017】
以上の調査結果より、本発明の構成物が封水目的を完遂することはもとより、次代の封水剤の新しい効果を提供し広く公共衛生分野に浸透してゆくものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管や貯水槽の水の蒸散を封止するものとして、
(1)水よりも比重が軽いこと
(2)水と混融しない液状物であること
(3)高沸点の、基本的に揮発しない液状物であること
である要件を満たす排水系物質をアルカリ性炭酸塩と酸性物であってアルカリ性炭酸塩と水中で化学反応して二酸炭素系を発するものの中に媒介物として水不溶性粉状体を含んでなる混合物を一体組成化した封水剤組成物。
【請求項2】
排水管や貯水槽の水の蒸散を封止するものとして、
(1)水よりも比重が軽いこと
(2)水と混融しない液状物であること
(3)高沸点で、引火点が消防法第4−III(69℃)以上であること
の要件を満たした非水性液状物を、且つ
(4)炭酸塩化合物(炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩)
(5)水不溶性の、水より比重の重い粉状物
(6)カルボン酸、(−COOH)、硫酸(HSO)、スルファミン酸(NHSOH)から選ばれた粉末酸性物質に、ヒドロキシカルボン酸を含む易水溶性酸性物質
を混合して一体化し、この中に必要に応じて界面活性剤、色素、抗菌剤、キレート剤を含んでなる封水剤組成物。

【公開番号】特開2010−159382(P2010−159382A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21977(P2009−21977)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(507105013)株式会社日生クリーン (2)