説明

射出成形可能な組成物及びそれから製造されたゴルフボール

【課題】射出成形可能な組成物を使用したゴルフボール及び該ゴルフボールの製造法を提供する。
【解決手段】75重量%を超える射出成形可能ゴムを含む単一成分領域と、前記単一成分領域内に一つ又は複数の別個の硬度の領域とを含むゴルフボール100であって、当該ゴルフボールは、所望により、コア、外側カバー層104、及び一つ又は複数の中間層を含んでいてもよい。75重量%を超える射出成形可能ゴムを含む単一成分領域106と、前記単一成分領域内に一つ又は複数の別個の硬度の領域とを含むゴルフボールの製造法も開示する。それによると、単一成分領域は、ポリアルケナマーゴムの層を順次射出成形した後、得られた構造を同時硬化するか、又はポリアルケナマーゴム組成物の一つ又は複数の対のハーフシェルを射出成形した後、該ハーフシェルを積み重ねてゴルフボール前駆体構造を形成し、その後得られた構造を同時硬化することによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形可能な組成物を使用したゴルフボール及び該ゴルフボールの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成高分子化学のスポーツ用品分野への応用は、多くのスポーツでアスリートの成績に革命をもたらしている。それが特に当てはまる一つのスポーツがゴルフで、特にゴルフボールの性能の進歩及び製造の容易さと関連する。例えば、最初期のゴルフボールは、濡れたフェザーを詰めたレザーカバーからなるものであった。これらの“フェザリー”ゴルフボールはその後、天然のゴム様材料である“ガタパーチャ(gutta percha)”で作られたシングルピースゴルフボールに取って代わられた。1900年代初め、固体ゴム芯の周りにゴム糸を固く巻き付け、ガタパーチャのカバーを被せた糸巻きゴムボールが導入された。
【0003】
より近代的なゴルフボールは、ワンピース、ツーピース、スリーピース又はマルチレイヤー(多層)ゴルフボールに分類することができる。ワンピースボールは、均質な素材から成形され、その上に成形されたディンプルパターンを有する。ワンピースボールは安価で非常に耐久性があるが、比較的高スピンで低速のため飛距離が出ない。ツーピースボールは、固体ゴム芯(コア)の周りにカバーを成形することによって製造される。これらは、現在使用されている最もポピュラーなタイプのボールである。特にそのようなボールの飛距離及びクラブを通じてゴルファーに伝わる打球感に関してボールの性能をさらに修正しようとする試みの中で、基本的なツーピースボールの構造は、コアと外側カバー層との間に追加の層を導入することによってさらに修正されてきた。コアと外側カバー層との間に一つの追加層が導入されると、いわゆる“スリーピースボール”が得られ、同様にコアと外側カバー層との間に二つの追加層が導入されると、いわゆる“フォーピースボール”が得られるなどである。さらに、中心部のゴムコアが二つの別個の合成ゴム材料の区画から作製された、いわゆる“デュアルコア”ボールというのも製造されている。これらの区画はそれぞれ、コンプレッション、レジリエンス、硬度及び耐久性などの性質が異なる。より最近では、デュアルコアも、デュアルコアと外側カバー層との間に追加の薄い中間層も両方とも有するボールが導入されている。
【0004】
近代ゴルフボールのコア組成物に使用されている合成ゴム配合物は、ポリブタジエン、特にシス−1,4−ポリブタジエンに基づく。コアの性質を調整するために、ポリブタジエンにはさらに、硫黄又は過酸化物のような架橋剤(又は照射による)、並びにジアクリル酸亜鉛のような共架橋剤が配合されることも多い。加えて、コアの重量及び硬度は、様々なフィラー材料をゴム配合物に配合することによってさらに調整することもできる。このように、そのような配合化学や様々なゴム組成物及び架橋度に関して大量の文献があるので、所要のコンプレッション、レジリエンス、硬度及び耐久性を備えたコアが製造できる。
【0005】
コアの形成後、中間層(ある場合)及び最後にゴルフボールの外側カバーがコア上に、通常、三つの方法、すなわちキャスティング、射出成形、又は圧縮成形のうちの一つを用いて形成される。射出成形は一般的に一組又は複数組の2個の半球形の金型部分を有する金型を使用する。これは、成形プロセス中、対になって球形のキャビティを形成する。ペアの金型部分は、対になったときにそれらの内部に球形のキャビティを規定するように設計される。ゴルフボールの外側カバー層を成形するのに使用される場合、金型部分は、対になって球形キャビティを形成する内表面に、成形されたカバー層の外表面上にディンプルが形成されるように設計された突起が含まれるように設計することができる。ボールコアのような既存構造上に層を形成するのに使用される場合、金型は、金型部分全体に配置された多数の支持ピンを含む。支持ピンは、球形キャビティの表面に対して垂直にキャビティに出入りする抜き差し自在式(retractable)に設計される。支持ピンは、溶融材料がコアと金型部分の間のキャビティへのゲートに流入する間、コアの位置を維持する。金型自体は冷金型でも熱金型でもよい。
【0006】
一方、ボールカバー又は中間層の圧縮成形は、典型的には、層材料を射出成形用金型に射出成形することによってハーフシェルを製造する初期ステップを必要とする。次に、そのハーフシェルを圧縮成形用金型内のボールコア周囲に配置し、熱及び圧力を用いて該ハーフシェルをコア上の完全層に成形する。架橋のような化学反応は用いることも用いないこともある。圧縮成形は、射出成形後の硬化ステップとして使用することもできる。そのようなプロセスでは、熱硬化性材料の外側層が冷金型内のコア周囲に射出成形される。材料が固化したら、ボールを取り出し、金型に入れる。そこで熱と圧力がボールに印加され、外側層の硬化が誘導される。
【0007】
様々なカバー成形プロセスのうち、射出成形が最も好適である。それは、その使用によって得られる、より迅速なサイクル時間、安価な運転コスト、及びコア周囲により薄い層を作製できる及びあらゆる厚さの変化を厳密に制御できる改良された能力などの効率のためである。この後者の利点は、コアとカバーの間に二つ以上の中間層を有する、従ってより薄い層形成を必要とするマルチレイヤーボールの開発に伴ってますます重要になりつつある。そのようなマルチレイヤーゴルフボールは、硬度、モジュラス及びその他の性質の様々な組合せを生み出すために化学的に異なる層を用いて製造されることが多い。そうすることで、ボール速度、コンプレッション、スピン及び距離などを含む得られる主要性能カテゴリーを調整することができるためである。しかしながら、ゴルフボール製造に時間ががかる、高価である、追加の複雑さを付与するといったことに加えて、それらの化学組成の違いのために、個々の層は、しばしば剪断性能不良として現れる剥離に悩まされることが多い。
【0008】
初期のゴルフボールの外側カバー層に特に使用されていた一つのそのような化学組成物は天然のバラタゴム(balata rubber)であった。バラタの一つの欠陥は、ボールの低耐久性を招く切断又は剪断のし易さである。代替として、合成シス1,4−ポリブタジエンゴムを中心コア周囲の層として又は外側カバー層として組み込もうとするいくつかの初期の試みがあった。例えば、米国特許第3,784,209号は、第一のシス1,4−ポリブタジエン配合物のセンターを形成し、その周りに第二のシス1,4−ポリブタジエン配合物の外側カバー層を形成し、そして最後に得られたゴルフボール前駆体を圧縮成形ステップで硬化することによって製造されたボールを例示している。同じく、米国特許第4,625,964号には、シス1,4−ポリブタジエンから製造された中心コアと、その周りに別のシス1,4−ポリブタジエン配合物から予め製造された2個のハーフシェルを圧縮成形して形成された第二の層を有するゴルフボールが示されている。このボールは、アイオノマーの外側カバー層を射出成形することによって完成されている。米国特許第4,714,253号には、第一のシス1,4−ポリブタジエン配合物から形成された中心コアを有し、その後別のシス1,4−ポリブタジエン配合物から第二の層を形成されたゴルフボールが例示されている。次に、2個の予備形成されたアイオノマーのハーフシェルをツーピースの固体コアの周囲に加圧成形して最終ゴルフボールとなる。米国特許第4,848,770号にはスリーピースの固体ゴルフボールが例示されている。これは、高充填シス1,4−ポリブタジエン配合物から製造されたセンターと、第二の非充填シス1,4−ポリブタジエン配合物から製造された第二の層とを有し、その後2個のアイオノマーのハーフシェルを圧縮成形することによって外側カバー層が形成されたボールである。
【0009】
しかしながら、シス1,4−ポリブタジエン配合物は通常の射出成形温度で比較的高粘度であること、そのような配合物がフィラーも含んでいるとそれがさらに顕著になることのために、これらの配合物は従来の薄層形成射出成形技術に適合しにくい。従って、ゴルフボール技術における現在の進化は、ゴルフボールカバー及び中間層に、現代の薄層射出成形技術にずっと適したアイオノマー又は熱可塑性ポリウレタンのような熱可塑性材料の使用を支持している。
【0010】
ポリブタジエン系合成ゴムの他に、ゴルフボールに使用するために利用できる別の合成ゴムは、いわゆる“ポリアルケナマー(polyalkenamer)”である。これらの合成ゴムは、直鎖ポリマー成分の他に相当割合の環状オリゴマー分子も含有しており、これがそれらの粘度を下げている。このクラスの化合物は、米国特許第3,804,803号、3,974,092号及び4,950,826号の教示に従って製造できる。前記すべての特許の全内容は引用によって本明細書に援用する。
【0011】
今日まで、この材料は主に他のポリマーとのブレンドに利用されてきた。例えば、米国特許第4,183,876号には、樹脂及びゴムの全100重量部あたり15〜95重量部の結晶性ポリオレフィン樹脂及びそれに応じて85〜5重量部の架橋ポリアルケナマーゴムを含む組成物が記載されている。得られた成形可能な熱可塑性組成物は、実質的に非架橋ゴムを含有する類似の組成物よりも改良された強度並びに大きい強靱性及び耐衝撃性を示すとのことであった。米国特許第4,840,993号には、60〜98重量%のポリアミド及び2〜40重量%のポリアルケナマーの混合物からなるポリアミド成形コンパウンドが記載されている。この混合物は高温で0.05〜5重量%の有機ラジカル源で処理されている。そのような組成物をゴルフボールを含むボールに使用することへの言及はない。
【0012】
しかしながら、ポリアルケナマーブレンドの各種ゲームボールへの応用はいくつかある。例えば、米国特許第5,460,367号は、トランス−ポリオクテナマーゴムと、天然ゴム又はその他の合成ゴム、例えばシス−1,4−ポリブタジエン、トランス−ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム又はエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)のブレンドを含む無加圧(pressureless)テニスボールを記載している。
【0013】
また、米国特許第4,792,141号には、コアとカバーを含み、カバーは、組成物中のポリマー100重量部を基にして、約97〜約60部のバラタ及び約3〜約40重量部のポリオクテニレン(polyoctenylene)ゴムを含む組成物から形成されたゴルフボールが記載されている。この特許には、組成物中のポリマー100重量部を基にして約40重量部を超えるポリオクテニレンを使用すると悪影響が生じることがわかったということも開示されている。
【0014】
しかしながら、バラタのようなゴムの柔らかい感触を有しながら、材料の射出成形が可能なほど低粘度の射出成形可能ゴム組成物を得るのは非常に有益であろう。また、そのようなゴム組成物の性質を、コア構造に使用される架橋充填ポリブタジエン組成物の使用を通じて進化してきたのと類似した配合化学によって調整できれば、さらに非常に有益であろう。
【0015】
また、最適なボール性能に必要な所望の硬度及び又は密度勾配を達成する一方で、高いCOR及び、外側カバー層に使用される場合、優れた剪断切断及び剥離抵抗性をも提供するために、異なる硬化パッケージ(cure packages)を有する単一の射出成形可能ゴム組成物に基づくゴルフボールを形成できればなお非常に有益であろう。
【0016】
本開示は、射出成形可能なポリアルケナマーゴム組成物を含むゴルフボールを提供する。当該ゴルフボールは、ゴルフボール中に単一のポリアルケナマーベース樹脂から製造された領域を有し、単一成分領域内には一つ又は複数の硬度の領域を有する。
【0017】
本開示はまた、次の方法によるゴルフボールの製造法も提供する。すなわち、所要の硬化パッケージを有するポリアルケナマーゴム組成物(これらはすべて材料を射出成形可能にするために通常の過酸化物分解温度以下で十分低い粘度を有している)の層を順次射出成形してゴルフボールを形成し、次いで得られたゴルフボール又はゴルフボール前駆体を圧縮成形して、ゴルフボール中にポリアルケナマー成分から製造されているがその単一成分領域内に一つ又は複数の硬度の領域を有する領域を形成させることによる方法である。
【0018】
本開示はまた、次の方法によるゴルフボールの製造法も提供する。すなわち、材料を射出成形可能にするために通常の過酸化物分解温度以下で十分低い粘度を有しているポリアルケナマーゴム組成物のハーフシェルを射出成形してハーフシェルを形成し(これらはすべてベース樹脂としてポリアルケナマーから形成され、各ハーフシェルは異なる硬化パッケージを含む)、次いでゴルフボールコアの周りにそのハーフシェルを組み合わせ、得られたゴルフボール又はゴルフボール前駆体を圧縮成形して、ゴルフボール中に単一のポリアルケナマーベース樹脂から製造されているがその単一成分領域内に一つ又は複数の硬度の領域を有する領域を形成させることによる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第3,784,209号
【特許文献2】米国特許第4,625,964号
【特許文献3】米国特許第4,714,253号
【特許文献4】米国特許第4,848,770号
【特許文献5】米国特許第3,804,803号
【特許文献6】米国特許第3,974,092号
【特許文献7】米国特許第4,950,826号
【特許文献8】米国特許第4,183,876号
【特許文献9】米国特許第4,840,993号
【特許文献10】米国特許第5,460,367号
【特許文献11】米国特許第4,792,141号
【発明の概要】
【0020】
一態様に従って、ゴルフボールであって、幾何学的中心と、外表面と、ゴルフボールの幾何学的中心から外表面までの距離にわたる単一成分領域と、所望により一つ又は複数の中間層とを含み、前記単一成分領域は75重量%を超える射出成形可能ゴムを含むゴルフボールを開示する。
【0021】
別の態様に従って、ゴルフボールであって、幾何学的中心と;内表面及び外表面を有する外側カバー層と;ボールの幾何学的中心から外側カバー層の内表面までの距離にわたる単一成分領域と;所望により一つ又は複数の中間層とを含み、前記単一成分領域は75重量%を超える射出成形可能ゴムを含むゴルフボールを開示する。
【0022】
別の態様に従って、ゴルフボールであって、幾何学的中心及び外表面を有するゴルフボールコアと;内表面及び外表面を有する外側カバー層と;前記ゴルフボールコアの外表面から前記外側カバー層の内表面までの距離にわたる単一成分領域と;所望により一つ又は複数の中間層とを含み、前記単一成分領域は75重量%を超える射出成形可能ゴムを含むゴルフボールを開示する。
【0023】
別の態様に従って、ゴルフボールの製造法であって、前記ゴルフボールは、単一成分領域を含み、前記単一成分領域は約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域は約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域は80重量%を超えるポリアルケナマーを含むゴルフボールの製造法を開示する。該方法は、
1)ポリアルケナマーゴムと第一の架橋パッケージのブレンドを形成し;
2)ステップ1のブレンドを射出成形して所要寸法のポリアルケナマーの初期層を形成し;そして
3)ポリアルケナマーゴムとステップ1で使用したのとは異なる架橋パッケージのブレンドを形成し;
4)ステップ3のブレンドを射出成形して所要寸法のポリアルケナマーの第二の層を形成し;そして
5)所望によりステップ3及び4を必要に応じて繰り返し;
3)ステップ1〜5から得られた構造を同時硬化して、別個の硬度の領域を有する架橋ポリアルケナマー組成物の単一複合領域を形成する
ステップを含む。
【0024】
別の態様に従って、ゴルフボールの製造法であって、前記ゴルフボールは、単一成分領域を含み、前記単一成分領域は約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域は約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域は80重量%を超えるポリアルケナマーを含むゴルフボールの製造法を開示する。該方法は、
1)ポリアルケナマーゴムと第一の架橋パッケージのブレンドを形成し;
2)ステップ1のブレンドを射出成形して所要寸法の1対のハーフシェルを形成し;そして
3)ポリアルケナマーゴムとステップ1で使用したのとは異なる架橋パッケージのブレンドを形成し;
4)ステップ3のブレンドを射出成形して所要寸法の第二の対のハーフシェルを形成し;そして
5)所望によりステップ3及び4を必要に応じて繰り返し;
6)ステップ1)〜5)のハーフシェルを一緒に積み重ね;そして
7)ステップ1)及び2)から得られた構造を同時硬化して、別個の硬度の領域を有する架橋ポリアルケナマー組成物の単一複合領域を形成する
ステップを含む。
【0025】
上記及びその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら進められる以下の詳細な説明からより一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の単一領域ボールを示す。ここで、単一成分領域は、ゴルフボールの幾何学的中心からボールの外表面までの領域である。
【図2】図2は、本発明の有芯単一領域ボールを示す。ここで、単一成分領域は、コアの外表面からボールの外表面までの領域である。
【図3】図3は、本発明の単一マントルゴルフボールを示す。ここで、単一成分領域は、ゴルフボールの幾何学的中心から外側カバー層の内表面までの領域である。
【図4】図4は、本発明の有芯単一マントルボールを示す。ここで、単一成分領域は、コアの外表面から外側カバー層の内表面までの領域である。
【図5】図5は、本発明の有芯三マントルボールを示す。ここで、単一成分領域は、コアの外表面から外側カバー層の内表面までの領域で、前記単一成分領域内に3個の別個の硬度の領域、DHR、DHR、及びDHRがある。
【図6】図6は、任意の内側及び外側中間層を有する本発明の有芯単一マントルボールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
理解を容易にするために、本明細書中で使用されている下記用語について、以下でさらに詳細に説明する。
【0028】
“(メト)アクリル酸コポリマー”という用語は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸のコポリマーのことである。
【0029】
“(メト)アクリレート”という用語は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸のエステルのことである。
【0030】
“部分的に中和された”という用語は、中和度が100パーセント未満のアイオノマーのことである。
【0031】
“ヒドロカルビル”という用語は、任意の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール置換脂肪族、アリール置換脂環式、脂肪族置換芳香族、又は脂環式置換芳香族基を含む。脂肪族又は脂環式基は好ましくは飽和されている。同様に、“ヒドロカルビルオキシ”という用語は、ヒドロカルビルとヒドロカルビルが結合している炭素原子との間に酸素連結基を有するヒドロカルビル基を意味する。
【0032】
“二峰性ポリマー(bimodal polymer)”という用語は、二つの主要画分を含むポリマーのことである。さらに詳しくはポリマーの分子量分布曲線の形態、すなわちポリマーの重量分率のその分子量の関数としてのグラフの外観を示す。これらの画分由来の分子量分布曲線を、得られた総ポリマー生成物の分子量分布曲線に重ね合わせると、その曲線は、個別画分の曲線と比べて二つのピークを示すか又は少なくとも明らかに広幅化している。そのようなポリマー生成物のことを二峰性と呼ぶ。本明細書では二つの画分の化学組成は異なっていてもよいことにも注意する。
【0033】
同様に、“単峰性ポリマー(unimodal polymer)”という用語は、一つの主要画分を含むポリマーのことである。さらに詳しくはポリマーの分子量分布曲線の形態、すなわち総ポリマー生成物の分子量分布曲線が単一のピークしか示さないということである。
【0034】
“ポリアルケナマー”という用語は、本明細書中では“ポリアルケナマーゴム”という用語と互換的に使用され、4〜20個の環炭素原子を有する一つ又は複数のシクロアルケンのゴム状ポリマーを意味する。ポリアルケナマーは、米国特許第3,492,245号及び3,804,803号に記載されているように、有機金属触媒の存在下、一つ又は複数のシクロアルケンの開環メタセシス重合によって製造することができる。前記2特許の全内容は引用によって本明細書に援用する。
【0035】
本明細書においては、本明細書中に記載のように使用されているゴム組成物に対して適用される“射出成形可能”という用語は、典型的な熱可塑性樹脂と共に使用するために設計された射出成形装置で使用できる材料のことを言う。一例において、本開示中で使用される非架橋ゴムに対して適用される射出成形可能な組成物という用語は、動的機械分析器(Dynamic Mechanical Analyzer,DMA)及びASTM D4440を用いて200℃で測定された粘度が約5,000Pa−sec未満、好ましくは約3,000Pa−sec未満、さらに好ましくは約2,000Pa−sec未満、及びなおさらに好ましくは約1,000Pa−sec未満、そしてまた、動的機械分析器(DMA)及びASTM D4065、及びASTM D4440を用いて25℃、及び1Hzで測定された1Hzにおける貯蔵弾性率(G’)が約1×10dyn/cmより大、好ましくは約1.5×10dyn/cmより大、さらに好ましくは約1×10dyn/cmより大、最も好ましくは約2×10dyn/cmより大の組成物を意味する。
【0036】
本明細書において“固体コア”という用語は、ゴルフボールの弾性中心のことを言う。これは、幾何学的中心と外表面を有する固体球で、弾性(resilient)ポリマーを含み、単一構造を有する。
【0037】
本明細書において“コアの外表面”という用語は、固体コアの外表面のことを言う。
【0038】
本明細書において“外側カバー層”という用語は、ゴルフボールの最外カバー層のことを言い、該層は、1)ゴルフボール表面上の塗料及び/又はインクと直接接触し、その上にディンプルパターンが形成される層である外側カバー層の外表面と、2)ゴルフボールの外表面から幾何学的中心に向かって内側に間隔を置いて配置された外側カバー層の内表面とを有する。
【0039】
本明細書において“ゴルフボールの外表面”という用語は、塗料及び/又はインクと直接接触し、その上にディンプルパターンが配置されるゴルフボールの表面のことである。ゴルフボールが外側カバー層を有する場合、外側カバー層の外表面もゴルフボールの外表面である。
【0040】
本明細書において“単一成分領域(Single Component Region)”(SCR)という用語は、ポリマーの化学組成が(SCR中のポリマー成分の重量を基にして)70を超える、好ましくは75を超える、さらに好ましくは80を超える、なおさらに好ましくは85を超える、最も好ましくは90wt%を超える射出成形可能なゴム成分を含むゴルフボールの領域のことを言う。誤解を避けるために言うと、この重量分率は、SCRのポリマー含有量に基づいてのみ計算されており、SCRの全組成又は最終重量に基づいた重量パーセントではない。SCRは多量のフィラー及びその他の架橋パッケージの成分、例えばジアクリル酸亜鉛及び酸化亜鉛を含みうるので、それを重量分率計算の基礎として含めると、ポリアルケナマーのようなポリマー成分の有効濃度を著しく下げることになる。フィラー及び架橋パッケージの全成分を含めた場合、射出成形可能なゴム成分は、単一成分領域の最終重量を基にして、30を超える、好ましくは35を超える、さらに好ましくは40wt%を超える量で存在することになろう。
【0041】
本明細書において“別個の硬度の領域(Discrete Hardness Region)”(DHR)という用語は、ゴルフボールの幾何学的中心から外表面の方向に横向きに測定して約0.01〜約0.84、好ましくは約0.015〜約0.825、さらに好ましくは約0.02〜約0.5、なおさらに好ましくは約0.02〜約0.20、最も好ましくは約0.02〜約0.1インチの厚さを有する、ゴルフボールのSCR内の領域を意味する。ここで、そのような別個の硬度の領域内においては、領域中の任意の点におけるショアーD硬度は、5未満、好ましくは4未満、さらに好ましくは3ショアーD未満しか変動しない。本発明のゴルフボールの別個の硬度の領域は、約25を超える、好ましくは約30を超える、さらに好ましくは約40を超える、最も好ましくは約50を超えるショアーD単位の硬度も有しうる。各DHRは、ゴルフボール中の少なくとも一つの他のDHRと比べて異なる硬度を有しうる。各DHRは、ゴルフボール中の隣接するDHRと比べて異なる硬度を有しうる。
【0042】
ゴルフボールの別個の硬度の領域は、約5〜約500、好ましくは約15〜約400、さらに好ましくは約20〜約300、なおさらに好ましくは約25〜約200、最も好ましくは約30〜約100kpsiの曲げ弾性率も有しうる。
【0043】
ゴルフボールの別個の硬度の領域は、それぞれ約0.95〜約1.40、好ましくは約1.00〜約1.35、さらに好ましくは約1.05〜約1.30の比重も有しうる。
【0044】
SCR中に二つ以上の別個の硬度の領域を有するボールの場合、該領域はボールの中心に対するそれらの配置を記述することによって区別できる。内側中間層、外側の内側中間層、外側中間層などの用語を使用するか、あるいは番号順に割り振って最小番号をボールの中心に近い領域とするなどによる。
【0045】
従って、例えばSCR中に二つの別個の硬度の領域を有するボールの場合、コアに近い方の一つは、本明細書中では内側別個の硬度の領域又は別個の硬度の領域1(“DHR”)と規定され、コアから遠い方の一つは外側別個の硬度の領域又は別個の硬度の領域2(“DHR”)と規定される。SCR中に三つの別個の硬度の領域を有するボールの場合、コアに近い方の一つは、本明細書中では内側別個の硬度の領域又は別個の硬度の領域1(“DHR”)と規定され、コアから遠い方の一つは外側別個の硬度の領域又は別個の硬度の領域3(“DHR”)と規定され、その間の一つは、中間別個の硬度の領域又は別個の硬度の領域2(“DHR”)と規定される。四つ以上の中間別個の硬度の領域を有するボールの場合、数字による表示を維持するのが勧められる。あるいは、ゴルフボールの中心に対するそれらの位置に応じて、内側及び外側中間別個の硬度の領域として同様に区別してもよい。誤解を避けるために言うと、ゴルフボールコアの場合、その中心はSCR中に含まれ、SCRは内側別個の硬度の領域を含むことになろう。
【0046】
具体的に図1を参照する。本明細書において、用語“単一領域ボール”100は、SCR(斜線領域)106が、ゴルフボールの幾何学的中心102からボールの外表面104までの距離にわたるボールである。ボールは、1〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜5、なおさらに好ましくは2〜4、最も好ましくは2〜3の別個の硬度の領域をSCR内に有する。従って、さらに例を挙げると、SCRがゴルフボールの幾何学的中心102からボールの外表面104までの距離にわたり、SCR中に単一の別個の硬度の領域を有する場合、それは“単一領域ボール”と呼ばれ、ボールがSCR中に三つの別個の硬度の領域を有する場合、それは“三領域ボール”と呼ばれる。
【0047】
具体的に図2を参照する。本明細書において、用語“有芯(Cored)単一領域ボール”200は、SCR(斜線領域)210がコアの外表面206からボールの外表面208までの距離にわたり、従ってゴルフボールの幾何学的中心202とゴルフボールのコア204はどちらもSCRから除外されているボールである。ボールは、1〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜5、なおさらに好ましくは2〜4、最も好ましくは2〜3の別個の硬度の領域を有する。従って、例を挙げると、SCRがゴルフボールの幾何学的中心202とゴルフボールのコア204を両方とも除外し、SCR中に単一の別個の硬度の領域を有する場合、それは“有芯単一領域ボール”と呼ばれ、ボールがSCRからゴルフボールの幾何学的中心202とゴルフボールのコア204を両方とも除外し、SCR中に三つの別個の硬度の領域を有する場合、それは“有芯三領域ボール”と呼ばれる。
【0048】
具体的に図3を参照する。本明細書において、用語“単一マントルボール”300は、外側カバー層308を有するボールで、前記外側カバー層は、内表面304と外表面306を有する。該ボールにおいてSCR(斜線領域)310は、ゴルフボールの外側カバー層308を除外するので、ゴルフボールの幾何学的中心302から外側カバー層の内表面304までの距離にわたる。ボールは、1〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜5、なおさらに好ましくは2〜4、最も好ましくは2〜3の別個の硬度の領域を有する。従って、例を挙げると、そのようなボールがSCRから外側カバー層308を除外し、SCR中に単一の別個の硬度の領域を有する場合、それは“単一マントルボール”と呼ばれ、そのようなボールがSCRから外側カバー層308を除外し、SCR中に三つの別個の硬度の領域を有する場合、それは“三マントルボール”と呼ばれる。
【0049】
具体的に図4を参照する。本明細書において、用語“有芯単一マントルボール”400は、SCR(斜線領域)414がゴルフボールのコア404と外側カバー層412を除外し、外側カバー層は内表面408と外表面410を有しているので、SCR414は、ゴルフボールのコアの外表面406から外側カバー層の内表面408までの距離にわたるボールである。ボールは、1〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜5、なおさらに好ましくは2〜4、最も好ましくは2〜3の別個の硬度の領域を有しうる。従って、例を挙げると、そのようなボールがSCRからゴルフボールのコア404と外側カバー層412を除外し、SCR中に単一の別個の硬度の領域を有する場合、それは“有芯単一マントルボール”と呼ばれ、そのようなボールがSCRからゴルフボールのコア404と外側カバー層412を除外し、SCR中に三つの別個の硬度の領域を有する場合、それは“有芯三マントルボール”と呼ばれる。
【0050】
具体的に図5を参照する。有芯三マントルボール500は、SCR(斜線領域)514を有する。これはゴルフボールのコア504と外側カバー層512を除外し、外側カバー層は内表面508と外表面510を有しているので、SCR514は、ゴルフボールのコアの外表面506から外側カバー層の内表面508までの距離にわたる。該ボールは、SCR中に三つの別個の硬度の領域も有しており、コアに近い方の一つは、本明細書中では内側別個の硬度領域又は別個の硬度領域1(“DHR”)と規定され、コアから遠い方の一つは外側別個の硬度領域又は別個の硬度領域3(“DHR”)と規定され、その間の一つは、中間別個の硬度領域又は別個の硬度領域2(“DHR”)と規定される。すべての距離は横平面516に規定されている。
【0051】
具体的に図6を参照する。この図は、本発明のゴルフボール中に追加の任意の中間層の配置可能性を示している。有芯単一マントルボール600はSCR(斜線領域)608を有し、これはゴルフボールのコア604と外側カバー層612を除外している。SCRからは、二つの追加の中間層、すなわちSCR(斜線領域)608と外側カバー層612の間に配置された外側中間層610、及びSCR(斜線領域)608とゴルフボールのコア604の間に配置された第二の内側中間層606も除外されている。
【0052】
単数形の用語“a”、“an”、及び“the”は、文脈が明らかに他の場合を示していない限り、複数形の指示対象も含む。“comprise(含む)”という語は“include(含む)”を示す。さらに、化合物に対して与えられているすべての分子量又は分子質量の値は概数であり、説明のために提供されたものであることは理解されるべきである。材料、方法、及び例は、例示だけを目的としたものであって、制限を目的としていない。別途記載のない限り、化学命名法における成分の記述は、記述中で明記された何らかの組合せに添加された時の成分のことを言っているが、ひとたび混合されたら混合物の成分間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではない。
【0053】
本明細書において“マントル”という用語は、ボールの幾何学的中心と外側カバー層の内表面の間に配置されたゴルフボールの単一成分領域を記述することを意図している。
【0054】
本明細書において“中間層”という用語は、SCRから除外された層のことで、従ってマントルとは区別される。本発明のゴルフボールは、SCRから除外された一つ又は複数の追加の層を有しうる。それらは、ゴルフボールのコアの外表面とSCRの間に間置されて内側中間層と表示されるか、又はSCRの外表面と外側カバー層の内表面の間に間置されて内側中間層と表示されるかのいずれかである。
【0055】
本開示の組成物は任意の所望サイズのゴルフボールを形成するのに使用できる。USGAによる“ゴルフ規則(The Rules of Golf)”には、競技用ゴルフボールのサイズは直径が少なくとも1.680インチでなければならないと指示されているが、レジャーゴルフプレーには任意のサイズのゴルフボールが使用できる。ゴルフボールの好適な直径は、約1.670インチ〜約1.800インチ、又は約1.680インチ〜約1.800インチである。さらに好適な直径は約1.680インチ〜約1.760インチである。約1.680インチ〜約1.740インチの直径が最も好適である。しかしながら、1.70〜約2.0インチの範囲内のいずれかの直径が使用できる。約1.760インチ以上〜2.75インチもの大きさの直径を有する特大ゴルフボールも本開示の範囲内である。
【0056】
本明細書中で引用された任意の数値は、任意の低値と任意の高値の間に少なくとも2単位の隔たりがある場合、低値から高値までのすべての値を1単位の増分で含む。例えば、成分の量又はプロセス変数の値が1〜90、好ましくは20〜80、さらに好ましくは30〜70と記述されている場合、本明細書では15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などのような値が明示的に列挙されているものとする。1単位未満の差しか持たない値の場合、1単位は必要に応じて0.1、0.01、0.001、又は0.0001とみなされる。従って、本明細書中で列挙された最低値と最高値の間の数値のあらゆる可能な組合せが本願では明示的に記述されていると考えられる。
【0057】
上記用語の説明は読者を補助するためだけに提供されたものであって、当業者によって理解される範囲未満の範囲を有するとか、添付のクレームの範囲を制限と解釈されるべきでない。
【0058】
本発明のゴルフボールにおいて、SCRは射出成形可能な合成ゴムで構成される。本発明のゴルフボールのSCRに使用するための一つの射出成形可能な合成ゴムはポリアルケナマーゴムで、米国特許第3,492,245号及び3,804,803号に記載されているように、有機金属触媒の存在下、一つ又は複数のシクロアルケンの開環メタセシス重合によって製造することができる。前記2特許の全内容は引用によって本明細書に援用する。適切なポリアルケナマーゴムの例は、ポリブテナマーゴム、ポリペンテナマーゴム、ポリヘキセナマーゴム、ポリヘプテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリノネナマーゴム、ポリデセナマーゴム、ポリウンデセナマーゴム、ポリドデセナマーゴム、ポリトリデセナマーゴムである。ポリアルケナマーゴムに関する更なる詳細については、Rubber Chem.& Tech.,Vol.47,ページ511−596,1974(引用によって本明細書に援用する)参照。ポリオクテナマーゴムは、ドイツ・マールのHuls AG社から、及び米国におけるその販売業者であるニュージャージー州サマセットのCreanova Inc.社を通じて商業的に入手でき、商標VESTENAMER(登録商標)の名の下に販売されている。二つの等級のVESTENAMER(登録商標)トランス−ポリオクテナマーが市販されている。VESTENAMER 8012は、トランス含有量約80%(及びシス含有量20%)、融点約54℃の材料、VESTENAMER 6213は、トランス含有量約60%(シス含有量40%)、融点約30℃の材料を示す。これらのポリマーのどちらも、環内の8番目の炭素原子ごとに二重結合を有している。
【0059】
本開示で使用されるポリアルケナマーゴムは、それらのシャープな融点より高い温度では優れた溶融加工性を示し、主成分としての様々なゴム添加剤と結晶化度の劣化なく(このことがひいては射出成形を容易にする)高い混和性を示す。従って、ゴルフボールのコア製造に通常使用されている合成ポリブタジエンゴムとは異なり、ポリアルケナマーをベースにしたコンパウンドの射出成形部品が製造できる。これはさらに、高温で部分又は完全架橋させることもできる。架橋ポリアルケナマーコンパウンドは高弾性で、それらの機械的及び物理的性質は配合を調整することによって容易に変更することができる。
【0060】
ポリアルケナマー組成物は、驚くべきことに、本発明のゴルフボールのSCRに使用するための組成物の有効性に関連する広範な性質にわたって優れた特徴を示す。例えば、該組成物は、予め決められた硬度範囲(例えばショアーD硬度約15〜約85、好ましくは約40〜約80、さらに好ましくは約40〜約75)で優れた衝撃耐久性及び反発係数(Coefficient of Restitution,COR)を示す。さらに詳しくは、本明細書中に開示された組成物は、COR又は加工性を著しく損ねることなく優れた硬度調整性を示す。
【0061】
ポリアルケナマーゴムは、他のポリマー内にブレンドすることもでき、特に好適なブレンドは、ポリアルケナマーとポリアミドのブレンドである。ポリアルケナマーゴムに関するさらに完全な記述は、米国特許第7,528,196号及び2009年3月31日出願の同時係属米国出願第12/415,522号に開示されている。いずれもHyun Kimらの名前での出願で、これら二つの全内容は引用によって本明細書に援用する。
【0062】
ポリアルケナマーゴムは、好ましくは、トランス形にその二重結合の約50〜約99、好ましくは約60〜約99、さらに好ましくは約65〜約99、なおさらに好ましくは約70〜約90パーセントを含有する。好適なポリアルケナマーの形態はトランス含有量が約80%であるが、ポリアルケナマーのその他の比率のシス及びトランス異性体形を有する化合物も、組成物製造に使用するための入手可能な製品をブレンドすることによって得ることができる。
【0063】
ポリアルケナマーゴムは、約10,000〜約300,000、好ましくは約20,000〜約250,000、さらに好ましくは約30,000〜約200,000、なおさらに好ましくは約50,000〜約150,000の分子量(GPCによる測定)を有する。
【0064】
ポリアルケナマーゴムは、約5〜約70、好ましくは約6〜50、さらに好ましくは約6.5〜約50%、なおさらに好ましくは約7〜約45%の結晶化度(DSC二次融合による測定)を有する。
【0065】
さらに好ましくは、ポリアルケナマーゴムは、シクロオクテンを重合してトランス−ポリオクテナマーゴムを直鎖及び環状高分子の混合物として形成することによって製造されたポリマーである。
【0066】
本発明で使用されるポリアルケナマーゴム又はその他の合成ゴム組成物は、ゴルフボールに使用する前に、下記の一つ又は複数のブレンド成分をさらに配合することができる。
【0067】
A.架橋剤
本発明で使用される合成ゴム組成物は、ゴムの架橋に通常使用される任意の架橋又は硬化系を含むことができる。満足のいく架橋系は、硫黄−、過酸化物−、アジド−、マレイミド−又は樹脂−加硫剤に基づくものなどで、これらは加硫促進剤と合わせて使用できる。満足のいく架橋系成分の例は、酸化亜鉛、硫黄、有機過酸化物、アゾ化合物、酸化マグネシウム、ベンゾチアゾールスルフェンアミド促進剤、ベンゾチアジルジスルフィド、フェノール系硬化樹脂、m−フェニレンビス−マレイミド、チウラムジスルフィド及びジペンタメチレン−チウラムヘキサスルフィドである。
【0068】
より好適な架橋剤は、過酸化物、硫黄化合物、並びにこれらの混合物などである。適切な架橋剤の非制限的例は、第一級、第二級、又は第三級の脂肪族又は芳香族有機過酸化物などである。2個以上のペルオキシ基を含有する過酸化物、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン及び1,4−ジ−(2−tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが使用できる。対称及び非対称過酸化物、例えば過安息香酸tert−ブチル及びtert−ブチルクミルペルオキシドのどちらも使用できる。カルボキシル基を組み込んだ過酸化物も適切である。開示組成物中の架橋剤として使用される過酸化物の分解は、熱エネルギー、剪断、照射、他の化学物質との反応、又はこれらのいずれかの組合せを適用することによって引き起こすことができる。均等及び不均等分解された過酸化物のどちらも使用できる。適切な過酸化物の非制限的例は、過酸化ジアセチル;ジ−tert−ブチルペルオキシド;過酸化ジベンゾイル;過酸化ジクミル;2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン;1,4−ビス−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;t−ブチルペルオキシベンゾエート;2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、例えばオハイオ州アクロンのAkrochem Corp社から市販されているTrigonox 145−45B;1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、例えばコネチカット州ノーウォークのR.T.Vanderbilt Co.,Inc.社から市販されているVarox 231−XL;及びジ−(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシドなどである。
【0069】
架橋剤は、本発明に使用される合成ゴム組成物100部あたり約0.1部〜約10部、さらに好ましくは約0.4〜約6、最も好ましくは約0.8部〜約4部の総量でブレンドできる。架橋剤は、合成ゴム組成物に直接混合しても、又は、架橋剤を合成ゴム成分と予備混合して濃縮コンパウンドを形成した後、本発明に使用される合成ゴム組成物のバルクに配合してもよい。
【0070】
各過酸化物架橋剤は、その温度に所定時間(t1/2)当てると架橋剤の50%が分解する特徴的な分解温度を有している。例えば、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンはt1/2=0.1時間で138℃の分解温度を有し、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3はt1/2=0.1時間で182℃の分解温度を有している。同じt1/2で異なる特徴的分解温度を有する二つ以上の架橋剤を組成物にブレンドすることもできる。例えば、少なくとも一つの架橋剤が150℃未満の第一の特徴的分解温度を有し、少なくとも一つの架橋剤が150℃より高い第二の特徴的分解温度を有している場合、第一の特徴的分解温度を有する少なくとも一つの架橋剤対第二の特徴的分解温度を有する少なくとも一つの架橋剤の組成重量比は、5:95〜95:5、又はさらに好ましくは10:90〜50:50の範囲が可能である。
【0071】
化学的架橋剤を使用するほか、本発明に使用される合成ゴム組成物を放射線に暴露することも架橋剤としての役割を果たしうる。放射線は、マイクロ波又はガンマ線、又は電子ビーム装置を用いることを含む任意の公知法によって合成ゴム組成物に適用することができる。合成ゴム組成物の放射線誘導架橋を改良するために添加剤を使用してもよい。
【0072】
B.共架橋剤
本発明に使用される合成ゴム組成物には共架橋剤をブレンドすることもできる。これは不飽和カルボン酸、又はその金属塩でありうる。これらの例は、3〜8個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びフマル酸、パルミチン酸の亜鉛及びマグネシウム塩などで、アクリル酸及びメタクリル酸の亜鉛塩が最も好適である。不飽和カルボン酸の金属塩は合成ゴム組成物に、予備形成された金属塩としてブレンドしても、又はα,β−不飽和カルボン酸と金属の酸化物又は水酸化物を合成ゴム組成物中に導入し、それらを反応させて金属塩を形成させることによってブレンドしてもよい。不飽和カルボン酸の金属塩は任意の所望量でブレンドできるが、好ましくは、合成ゴム組成物100部あたり約5〜約160、さらに好ましくは約10〜約150、最も好ましくは約20〜約140部の量である。
【0073】
C.しゃく解剤(peptizer)
本発明で使用される合成ゴム組成物には、一つ又は複数のいわゆる“しゃく解剤”を配合することもできる。しゃく解剤は、好ましくは有機硫黄化合物及び/又はその金属もしくは非金属塩を含む。そのような有機硫黄化合物の例は、チオフェノール、例えばペンタクロロチオフェノール、4−ブチル−o−チオクレゾール、4−t−ブチル−p−チオクレゾール、及び2−ベンズアミドチオフェノール;チオカルボン酸、例えばチオ安息香酸;4,4−ジチオジモルホリン;並びにスルフィド、例えばジキシリルジスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド;ジベンゾチアジルジスルフィド;ジ(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド;ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBDD)、及びアルキル化フェノールスルフィド、例えばペンシルバニア州フィラデルフィアのAtofina Chemicals,Inc.社から市販されているVULTACなどである。好適な有機硫黄化合物は、ペンタクロロチオフェノール及びジベンズアミドジフェニルジスルフィドなどである。
【0074】
有機硫黄化合物の金属塩の例は、上記チオフェノール及びチオカルボン酸のナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セシウム及び亜鉛塩などで、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩が最も好適である。
【0075】
有機硫黄化合物の非金属塩の例は、上記チオフェノール及びチオカルボン酸のアンモニウム塩などで、そのアンモニウムカチオンは一般式[NRを有し、式中、R、R、R及びRは、水素、C−C20脂肪族、脂環式又は芳香族部分、並びにそのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれる。最も好適なのは、ペンタクロロチオフェノールのNH塩である。
【0076】
追加のしゃく解剤は、一つ又は複数のヘテロ原子、例えば窒素、酸素及び/又は硫黄を含む芳香族又は複合(conjugated)しゃく解剤などである。より典型的には、そのようなしゃく解剤は、少なくとも一つのヘテロ原子、及びおそらくは複数のヘテロ原子を有するヘテロアリール又はヘテロサイクリック化合物である。複数のヘテロ原子は同じでも異なっていてもよい。そのようなしゃく解剤は、インドールしゃく解剤、キノリンしゃく解剤、イソキノリンしゃく解剤、ピリジンしゃく解剤、プリンしゃく解剤、ピリミジンしゃく解剤、ジアジンしゃく解剤、ピラジンしゃく解剤、トリアジンしゃく解剤、カルバゾールしゃく解剤のようなしゃく解剤、又はそのようなしゃく解剤の組合せなどである。
【0077】
適切なしゃく解剤は、一つ又は複数の追加の官能基、例えば、ハロゲン、特に塩素;チオール(官能基はスルフヒドリル(−SH))、チオエーテル(官能基は−SR)、ジスルフィド(RS−SR)などによって例示される硫黄含有部分;及び官能基の組合せを含んでいてもよい。そのようなしゃく解剤は、Hyun Kimらの名前で2005年12月20日に出願されている同時係属中の米国出願第60/752,475号にさらに十分に開示されており、前記出願の全内容は引用によって本明細書に援用する。最も好適な例は2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール(TCPT)である。
【0078】
しゃく解剤は、本発明のゴルフボールの製造に使用される合成ゴム配合物に使用される場合、合成ゴム成分100重量部あたり約10まで、約0.1〜約10、好ましくは約0.5〜約8、さらに好ましくは約1〜約6重量部の量で存在する。
【0079】
D.促進剤
本発明で使用される合成ゴム組成物は、一つ又は複数のクラスの一つ又は複数の促進剤を含むこともできる。促進剤は、加硫速度を増大及び/又は加硫温度を低下させるために不飽和ポリマーに添加される。促進剤は、ゴム加工で知られている任意のクラスのものでよい。例えば、メルカプト−、スルフェンアミド−、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオカルバミル−スルフェンアミド、キサンテート、グアニジン、アミン、チオウレア、及びジチオホスフェート促進剤などである。具体的な市販品の促進剤は、2−メルカプトベンゾチアゾール及びその金属又は非金属塩、例えばドイツ・レバークーゼンのBayer AG社より販売されているVulkacit Mercapto C、Mercapto MGC、Mercapto ZM−5、及びZM、東京のOuchisinko Chemical Industrial Company,Ltd.社(大内新興化学工業株式会社)より販売されているNocceler M、Nocceler MZ、及びNocceler M−60、並びにオハイオ州アクロンのAkrochem Corporation社より販売されているMBT及びZMBTなどである。市販促進剤のより完全なりストは、The Vanderbilt Rubber Handbook: 13版(1990,R.T.Vanderbilt Co.),pp.296−330、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.12(1970,John Wiley & Sons),pp.258−259、及びRubber Technology Handbook(1980,Hanser/Gardner Publications),pp.234−236に示されている。好適な促進剤は2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)及びその塩などである。
【0080】
合成ゴム組成物には、合成ゴム100重量部あたり約0.1部〜約10重量部の促進剤をさらに配合することもできる。さらに好ましくは、ボール組成物には、合成ゴム100重量部あたり約0.5部〜約8部、最も好ましくは約1部〜約6重量部の促進剤をさらに配合することもできる。
【0081】
追加のポリマー成分
本発明のゴルフボールは、ゴルフボールの製造に有用であると一般的に考えられている下記の一つ又は複数の追加のポリマーを、追加のブレンド成分として、又はゴルフボールの外側カバー層及び中間層を含む本発明のゴルフボールの一つ又は複数の成分として含んでいてもよい。これらのポリマーは、合成及び天然ゴム、熱硬化性ポリマー、例えばその他の熱硬化性ポリウレタン又は熱硬化性ポリウレア、並びに熱可塑性ポリマー、例えば熱可塑性エラストマー、例えば熱可塑性ポリウレタン又は熱可塑性ポリウレア、メタロセン触媒ポリマー、単峰性エチレン/カルボン酸コポリマー、単峰性エチレン/カルボン酸/カルボキシレートターポリマー、二峰性エチレン/カルボン酸コポリマー、二峰性エチレン/カルボン酸/カルボキシレートターポリマー、ポリアミド、コポリアミド、ポリエステル、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、例えばハロゲン化ポリエチレン[例えば塩素化ポリエチレン(CPE)]、ハロゲン化ポリアルキレン化合物、ポリアルケナマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ジアリルフタレートポリマー、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド−アイオノマー、ポリウレタン−アイオノマー、ポリビニルアルコール、ポリアリーレート、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、耐衝撃性改質ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸(S/MA)ポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)を含むスチレン系ブロックコポリマー、スチレン系ターポリマー、ヒドロキシル化官能化スチレン系コポリマー、及びターポリマーを含む官能化スチレン系ブロックコポリマー、セルロース系ポリマー、液晶ポリマー(LCP)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン−プロピレンコポリマー、プロピレンエラストマー(Kimらによる米国特許第6,525,157号に記載されているようなもの、前記特許の全内容は引用によって本明細書に援用する)、エチレン酢酸ビニル及びポリシロキサン、並びにそれらのいずれか及びすべての組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明のゴルフボールの外側カバー層及び/又は中間層の成分として使用できる一つの好適な材料は、アイオノマーとブロックコポリマーのブレンドを含む。そのようなブロックコポリマーの例は、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)を含むスチレン系ブロックコポリマーなどである。官能化スチレン系ブロックコポリマーもそれに含まれる。例えば、ブロックコポリマーが、芳香族ビニル化合物を有する第一のポリマーブロック、共役ジエン化合物を有する第二のポリマーブロック、及びブロックコポリマー上に位置するヒドロキシル基を組み込んでいるもの、又はその水素化生成物などである。ブロックコポリマー対アイオノマーの比率は、重量で5:95〜95:5、さらに好ましくは重量で約10:90〜約90:10、さらに好ましくは重量で約20:80〜約80:20、さらに好ましくは重量で約30:70〜約70:30、最も好ましくは重量で約35:65〜約65:35の範囲である。好適な官能化スチレン系ブロックコポリマーはSEPTON HG−252である。そのようなブレンドは、同一出願人による米国特許第6,861,474号及び米国特許公開第2003/0224871号により詳細に記載されている。これらはいずれも引用によってそれらの全体を本明細書に援用する。
【0083】
本発明のゴルフボールの外側カバー層及び/又は中間層のための別の好適な材料は、成分A、B、及びCとして識別される少なくとも三つの材料を一緒にブレンドし、これらの成分を溶融加工して、擬似架橋ポリマーネットワークを組み込んだポリマーブレンド組成物を現場形成することによって製造される組成物である。そのようなブレンドは、同一出願人による米国特許第6,930,150号(Kimら)により詳細に記載されており、その内容は引用によってその全体を本明細書に援用する。成分Aは、少なくとも5重量パーセントの少なくとも一つのタイプの酸性官能基を組み込んだモノマー、オリゴマー、プレポリマー又はポリマーである。使用に適したそのようなポリマーの例は、エチレン/(メト)アクリル酸コポリマー及びエチレン/(メト)アクリル酸/アルキル(メト)アクリレートターポリマー、又はエチレン及び/又はプロピレン無水マレイン酸コポリマー及びターポリマーなどであるが、これらに限定されない。市販されているそのようなポリマーの例は、Exxon社から販売されているEscor(登録商標)5000、5001、5020、5050、5070、5100、5110及び5200シリーズのエチレン−アクリル酸コポリマー、及びミシガン州ミッドランドDow Chemical Company社から販売されているPRIMACOR(登録商標)1321、1410、1410−XT、1420、1430、2912、3150、3330、3340、3440、3460、4311、4608及び5980シリーズのエチレン−アクリル酸コポリマー、及びDuPont社から販売されているエチレン−アクリル酸コポリマーNucrel 599、699、0903、0910、925、960、2806、及び2906 エチレン−メタクリル酸コポリマーなどであるが、これらに限定されない。米国特許第6,562,906号に記載されている二峰性エチレン/カルボン酸ポリマーも含まれる。前記特許の内容は引用によって本明細書に援用する。これらのポリマーは、エチレン/α,β−エチレン性不飽和C3−8カルボン酸高コポリマー(high copolymers)、特にエチレン(メト)アクリル酸コポリマー、及びエチレン、アルキル(メト)アクリレート、(メト)アクリル酸ターポリマーを含み、約80,000〜約500,000の分子量を有する。これを分子量約2,000〜約30,000を有するエチレン/α,β−エチレン性不飽和C3−8カルボン酸コポリマー、特にエチレン/(メト)アクリル酸コポリマーと溶融ブレンドする。
【0084】
成分Bは、好ましくは前述の重量範囲の成分A中に存在するものより少ない重量パーセンテージのアニオン性官能基を有する、及び最も好ましくはそのような官能基を含まない任意のモノマー、オリゴマー、又はポリマーでありうる。成分Bとして使用される材料の例は、ブロックコポリマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)を含むスチレン系ブロックコポリマーなどである。官能化スチレン系ブロックコポリマーもそれに含まれる。例えば、ブロックコポリマーが、芳香族ビニル化合物を有する第一のポリマーブロック、共役ジエン化合物を有する第二のポリマーブロック、及びブロックコポリマー上に位置するヒドロキシル基を組み込んでいるもの、又はその水素化生成物などである。市販品の例は、日本の倉敷にあるKuraray Company社(株式会社クラレ)から販売されているSEPTON;Kumho Petrochemical Co.,Ltd.社のTOPRENE及びKraton Polymers社から販売されているKRATONなどである。
【0085】
成分Cは、成分Aの酸性官能基を中和できる塩基であり、金属カチオンを有する塩基である。これらの金属は、周期表のIA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、VIIB及びVIIIB族に属するものである。これらの金属の例は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マンガン、タングステン、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、ハフニウム、銅、亜鉛、バリウム、ジルコニウム、及びスズなどである。成分Cの供給源として使用される適切な金属化合物は、例えば、金属塩、好ましくは金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩、金属酢酸塩である。
【0086】
組成物は、好ましくは、上記材料を、分散混合機構、分配混合機構、又はこれらの組合せのいずれかを使用することによって相互に徹底的に混合することによって製造される。これらの混合法は、ポリマーブレンドの製造では周知である。この混合の結果、成分Aのアニオン性官能基は混合物全体に均等に分散される。最も好ましくは、成分AとBを、成分Cなしで一緒に溶融混合し(上記予備混合は行っても行わなくてもよい)、二つの成分の溶融混合物を製造する。その後、成分Cを別に成分AとBのブレンドに混合する。この混合物を溶融混合して反応生成物を製造する。この二段階混合は単一プロセスで実施することもできる。例えば、適切なバレル長又はスクリュー構成を用い、マルチ供給システムも備えた押出プロセスなどである。
【0087】
本発明のゴルフボールの外側カバー層及び/又は一つ又は複数の中間層のための別の好適な材料は、改質されたホモポリアミド又はコポリアミドとグラフト化された無水マレイン酸基を含むポリマーとのブレンドである。
【0088】
本発明のゴルフボールの外側カバー層及び/又は中間層の成分として使用できる別の好適な材料は、ポリウレタン又はポリウレアのファミリーで、これらは典型的には、ジイソシアネートをポリオールと(ポリウレタンの場合)又はポリアミンと(ポリウレアの場合)反応させることによって製造される。熱可塑性ポリウレタン又はポリウレアは、この初期混合物だけから成るものであってもよいし、熱可塑性樹脂の硬度などの性質を変えるために連鎖延長剤とさらに組み合わせてもよい。熱硬化性ポリウレタン又はポリウレアは、典型的には、ジイソシアネート、及びそれぞれポリオール又はポリアミン、及び追加の架橋剤を反応させ、材料を架橋又は硬化して熱硬化性樹脂にすることによって形成される。
【0089】
ワンショット法(one-shot process)として知られている方法では、三つの反応物、ジイソシアネート、ポリオール又はポリアミン、及び所望により連鎖延長剤又は硬化剤が一段階で混合される。あるいは、二段階プロセスも行われうる。その場合、第一段階でジイソシアネートとポリオール(ポリウレタンの場合)又はポリアミン(ポリウレアの場合)を反応させていわゆるプレポリマーを形成し、次いでそれに連鎖延長剤か硬化剤を加えることができる。この方法はプレポリマー法として知られている。
【0090】
さらに、上では別個のな成分パッケージとして描かれているが、架橋度、ひいては最終組成物の熱可塑性又は熱硬化性の程度を制御することも可能である。それは、ジイソシアネート対連鎖延長剤又は硬化剤の比率だけでなく、初期のジイソシアネート対ポリオール又はポリアミンの比率の化学量論を変えることによっても行われる。当然のことながら、プレポリマー法では、初期のジイソシアネート対ポリオール又はポリアミンの比率は、要求されるプレポリマーの選択で固定されている。
【0091】
別個のな熱可塑性又は熱硬化性材料のほかに、熱可塑性ポリウレタン又はポリウレア組成物を改質することも可能である。すなわち、熱可塑性樹脂の成形後に後硬化を受ける材料を組成物中に導入して、熱硬化性樹脂に類似した性質を持たせることによる。例えば、Kimは、米国特許第6,924,337号(その全内容は引用によって本明細書に援用する)で、所望により連鎖延長剤を含み、さらに過酸化物又は過酸化物混合物も含む熱可塑性ウレタン又はウレア組成物を開示している。これは次いで後硬化を受けて熱硬化性樹脂となりうる。
【0092】
同じく、Kimらは、米国特許第6,939,924号(その全内容は引用によって本明細書に援用する)で、ジイソシアネート及び改質又はブロック化(ブロックト)ジイソシアネート(これは押出後、脱ブロックし、更なる架橋を誘導する)から製造された、所望により連鎖延長剤も含む熱可塑性ウレタン又はウレア組成物を開示している。改質イソシアネートは、好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)ベースのウレトジオン(uretdione)型架橋剤;IPDIのウレトジオン付加物と部分的e−カプロラクタム変性IPDIの組合せ;e−カプロラクタムによって変性されたイソシアネート付加物とカルボン酸官能基の組合せ;カプロラクタム変性Desmodurジイソシアネート;3,5−ジメチルピラゾール変性イソシアネートを有するDesmodurジイソシアネート;又はこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0093】
最後に、Kimらは、米国特許第7,037,985 B2号(その全内容は引用によって本明細書に援用する)で、さらにニトロソ化合物とジイソシアネート又はポリイソシアネートとの反応生成物を含む熱可塑性ウレタン又はウレア組成物を開示している。ニトロソ反応生成物は、分解してニトロソ化合物とジイソシアネート又はポリイソシアネートを再生する特徴的な温度を有している。そこで、加工後の温度を慎重に選択することにより、元は熱可塑性の組成物に更なる架橋を誘導して熱硬化性樹脂様の性質を付与することができる。
【0094】
当業者が入手できるいずれのイソシアネートも、本発明で使用されるポリウレタン又はポリウレアに使用するのに適切である。本発明で使用されるイソシアネートは、1分子あたり2個以上のイソシアネート(NCO)基を有する脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族、それらの任意の誘導体、及びこれらの化合物の組合せなどであるが、これらに限定されない。本明細書において、芳香族脂肪族化合物とは、芳香環を含有し、イソシアネート基は環に直接結合していない化合物と理解されるべきである。芳香族脂肪族化合物の一例は、テトラメチレンジイソシアネート(TMXDI)である。イソシアネートは、有機ポリイソシアネート末端プレポリマー、低遊離イソシアネートプレポリマー(low free isocyanate prepolymer)、及びそれらの混合物でありうる。イソシアネート含有反応性成分は、任意のイソシアネート官能性モノマー、ダイマー、トリマー、又はその高分子付加物、プレポリマー、準プレポリマー(quasi-prepolymer)、又はそれらの混合物などであってもよい。イソシアネート官能性化合物は、二つ以上の何らかのイソシアネート官能基を含むモノイソシアネート又はポリイソシアネートなどでありうる。
【0095】
適切なイソシアネート含有成分は、一般構造:O=C=N−R−N=C=Oを有するジイソシアネートなどである。式中、Rは好ましくは約1〜約50個の炭素原子を含有する環状、芳香族、又は直鎖もしくは分枝炭化水素部分である。イソシアネートは、一つ又は複数の環状基あるいは一つ又は複数のフェニル基を含有していてもよい。多数の環状基又は芳香族基が存在する場合、約1〜約10個の炭素原子を含有する直鎖及び/又は分枝炭化水素が環状基又は芳香族基の間のスペーサーとして存在できる。場合によっては、環状基又は芳香族基は、2−、3−、及び/又は4−位、すなわち、それぞれオルト−、メタ−、及び/又はパラ−位で置換されていてもよい。置換基は、ハロゲン、第一級、第二級、又は第三級炭化水素基、又はそれらの混合物などであるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明で使用できるイソシアネートの例は、置換及び異性体混合物などであるが、これらに限定されない。例えば2,2’−、2,4’−、及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI);トルエンジイソシアネート(TDI);高分子MDI;カルボジイミド変性液体4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;パラフェニレンジイソシアネート(PPDI);メタフェニレンジイソシアネート(MPDI);トリフェニルメタン−4,4’−及びトリフェニルメタン−4,4”−トリイソシアネート;ナフチレン−1,5−ジイソシアネート;2,4’−、4,4’−、及び2,2−ビフェニルジイソシアネート;ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(PMDI)(高分子PMDIとしても知られる);MDIとPMDIの混合物;PMDIとTDIの混合物;エチレンジイソシアネート;プロピレン−1,2−ジイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート;ブチレンジイソシアネート;ビトリレン(bitolylene)ジイソシアネート;トリジンジイソシアネート;テトラメチレン−1,2−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,3−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート;ペンタメチレンジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);オクタメチレンジイソシアネート;デカメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;ドデカン−1,12−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,2−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;ジエチリデンジイソシアネート;メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(HTDI);2,4−メチルシクロヘキサンジイソシアネート;2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート;2,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート;1,3,5−シクロヘキサントリイソシアネート;イソシアナトメチルシクロヘキサンイソシアネート;1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン;イソシアナトエチルシクロヘキサンイソシアネート;ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサンジイソシアネート;4,4’−ビス(イソシアナトメチル)ジシクロヘキサン;2,4’−ビス(イソシアナトメチル)ジシクロヘキサン;イソホロンジイソシアネート(IPDI);ジメチルジイソシアネート、ドデカン−1,12−ジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1−クロロベンゼン−2,4−ジイソシアネート、フルフリリデン(furfurylidene)ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロブタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナト−メチル)シクロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,2,4,4−テトラ−メチルヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4,4−テトラ−トリメチルヘキサン、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、3−イソシアナト−メチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−フェニレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、p、p’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−クロロフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p、p’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、アゾベンゼン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタン4,4’,4”−トリイソシアネート、イソシアナトエチルメタクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジル−イソシアネート、ジクロロヘキサメチレンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、イソシアヌレート変性化合物、及びカルボジイミド変性化合物、並びに上記ポリイソシアネートのビウレット変性化合物など。これらのイソシアネートは単独でも組み合わせても使用できる。これらの組合せイソシアネートは、トリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート及びトリフェニルメタントリイソシアネートのビウレット、及びポリイソシアネート、例えば高分子ジフェニルメタンジイソシアネート、HDIのトリイソシアネート;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネート(TMDI)のトリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI);2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;1,2−、1,3−、及び1,4−フェニレンジイソシアネート;芳香族脂肪族イソシアネート、例えば1,2−、1,3−、及び1,4−キシレンジイソシアネート;メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート(m−TMXDI);パラ−テトラメチルキシレンジイソシアネート(p−TMXDI);任意のポリイソシアネートの三量体化イソシアヌレート、例えばトルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアネートのトリマー、テトラメチルキシレンジイソシアネートのトリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、及びそれらの混合物、任意のポリイソシアネートの二量体化ウレトジオン、例えばトルエンジイソシアネートのウレトジオン、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、及びそれらの混合物;上記イソシアネート及びポリイソシアネートから誘導された変性ポリイソシアネート、及びそれらの混合物などである。
【0097】
現在知られている又は今後開発される任意のポリオールが本発明に従った使用に適切である。本発明で使用するのに適切なポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリジエンポリオール、例えばポリブタジエンポリオールなどであるが、これらに限定されない。
【0098】
ポリウレタン技術分野の当業者が入手できる任意のポリアミンが本発明に従った使用に適切である。本発明の組成物に使用するのに適切なポリアミンは、アミン末端化合物、典型的には、アミン末端炭化水素、アミン末端ポリエーテル、アミン末端ポリエステル、アミン末端ポリカプロラクトン、アミン末端ポリカーボネート、アミン末端ポリアミド、及びそれらの混合物から選ばれるが、これらに限定されない。アミン末端化合物は、ポリテトラメチレンエーテルジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリ(エチレンオキシドキャップ付き(capped)オキシプロピレン)エーテルジアミン、トリエチレングリコールジアミン、プロピレンオキシドベースのトリアミン、トリメチロールプロパンベースのトリアミン、グリセリンベースのトリアミン、及びそれらの混合物から選ばれるポリエーテルアミンであろう。
【0099】
ジイソシアネート及びポリオール又はポリアミン成分は、組み合わせてプレポリマーにした後、連鎖延長剤又は硬化剤と反応させる。任意のそのようなプレポリマーの組合せが本発明での使用に適切である。
【0100】
一つの好適なプレポリマーは、ポリプロピレングリコールを有するトルエンジイソシアネートプレポリマーである。そのようなポリプロピレングリコール末端トルエンジイソシアネートプレポリマーは、コネチカット州ミドルベリーのUniroyal Chemical Company社からADIPRENE(登録商標)LFG963A及びLFG640Dの商品名で入手できる。最も好適なプレポリマーは、コネチカット州ミドルベリーのUniroyal Chemical Company社からADIPRENE(登録商標)LF930A、LF950A、LF601D、及びLF751Dの商品名で入手可能なものを含むポリテトラメチレンエーテルグリコール末端トルエンジイソシアネートプレポリマーである。
【0101】
一態様において、ウレタン又はウレアプレポリマー中の遊離NCO基の数は約14パーセント未満でありうる。好ましくは、ウレタン又はウレアプレポリマーは、当量ベースで、約3パーセント〜約11パーセント、さらに好ましくは約4〜約9.5パーセント、なおさらに好ましくは約3パーセント〜約9パーセントの遊離NCOを有する。
【0102】
ポリオール連鎖延長剤又は硬化剤は、第一級、第二級、又は第三級ポリオールでありうる。これらのポリオールのモノマーの非制限的例は、トリメチロールプロパン(TMP)、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、及び2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールなどである。
【0103】
連鎖延長剤又は硬化剤として機能させるためにジアミン及びその他の適切なポリアミンを本発明の組成物に加えることができる。これらは、2個以上のアミンを官能基として有する第一級、第二級及び第三級アミンを含む。ジアミンの例は、脂肪族ジアミン、例えばテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン;脂環式ジアミン、例えば3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン;又は芳香族ジアミン、例えばジエチル−2,4−トルエンジアミン、4,4”−メチレンビス−(3−クロロ,2,6−ジエチル)−アニリン(ペンシルバニア州アレンタウンのAir Products and Chemicals Inc.社から商品名LONZACURE(登録商標)で入手可能)、3,3’−ジクロロベンジデン;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA);N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン;3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン;N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン;トリメチレン−グリコール−ジ−p−アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、4,4’−メチレンビス−2−クロロアニリン、2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノ−フェニルメタン、p,p’−メチレンジアニリン、p−フェニレンジアミン又は4,4’−ジアミノジフェニル;及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどである。
【0104】
硬化剤は、それらの化学構造によって、遅又は速反応ポリアミン又はポリオールとなりうる。米国特許第6,793,864号、6,719,646号、及び同時係属中の米国特許公開第2004/0201133 A1号(これらすべての内容は引用によって本明細書に援用する)に記載されているように、遅反応ポリアミンは、アミン反応部位に近接した電子求引基又は嵩高い基によって立体的及び/又は電子的に障害を受けたアミン基を有するジアミンである。アミン反応部位の間隔もポリアミンの反応速度に影響するであろう。
【0105】
本発明で使用するのに適切な硬化剤は、遅反応ポリアミングループから選ばれる。例えば、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン;3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン;N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン;トリメチレン−グリコール−ジ−p−アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、及びそれらの混合物などであるが、これらに限定されない。これらのうち、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンと3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミンは異性体で、Ethyl Corporation社からETHACURE(登録商標)300の商品名で販売されている。トリメチレン−グリコール−ジ−p−アミノベンゾエートは、POLACURE 740Mの商品名で、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートはPOLAMINESの商品名でPolaroid Corporation社から販売されている。N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタンは、UOP社からUNILINK(登録商標)の商品名で販売されている。
【0106】
同じく本発明で使用されるポリウレタン又はポリウレア組成物に使用するための硬化剤として含められるのは、Kimらによる2007年5月31日出願の同時係属出願第11/809,432号に記載されているようなジシアンジアミドのファミリーである。前記出願の全内容は引用によって本明細書に援用する。
【0107】
本発明のゴルフボールの外側カバー層及び/又は中間層は、一つ又は複数のアイオノマー樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂の一つのファミリーは、E.I.DuPont de Nemours and Co.社によって1960年代半ばに開発され、SURLYN(登録商標)の商標で販売されている。そのようなアイオノマーの製造は周知である。例えば、米国特許第3,264,272号参照。一般的に言えば、大部分の市販アイオノマーは単峰性で、モノオレフィン、例えばアルケンのポリマーからなり、3〜12個の炭素原子を有する不飽和モノ又はジカルボン酸を有する。モノ又はジカルボン酸エステルの形態の追加のモノマーも、いわゆる“軟化コモノマー”として配合物中に配合してもよい。配合されたカルボン酸基はその後塩基性金属イオン塩によって中和されてアイオノマーを形成する。中和に使用される塩基性金属イオン塩の金属カチオンは、Li、Na、K、Zn2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Pb2+、及びMg2+などであるが、Li、Na、Ca2+、Zn2+、及びMg2+が好適である。塩基性金属イオン塩は、例えば、ギ酸、酢酸、硝酸、及び炭酸、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物、及びアルコキシドなどである。
【0108】
初期の市販アイオノマー樹脂は、酸含有量の増加に従ってこれらのカバー材料の硬度も増大しうるということが一般原則として当時周知であったにもかかわらず、16重量パーセントまでのアクリル酸又はメタクリル酸しか含有していなかった。そこで、1989年1月に発表されたResearch Disclosure 29703で、DuPont社は、15重量パーセントを超える酸含有量を含有するエチレン/アクリル酸又はエチレン/メタクリル酸を基にしたアイオノマーを開示した。この同じ開示物の中で、DuPont社は、そのようないわゆる“高酸アイオノマー”は、著しく改良された剛性及び硬度を有するので、単独で使用しても他のアイオノマーとのブレンドで使用しても、ゴルフボールの製造に都合良く使用できることも教示した。
【0109】
最近では、高酸アイオノマーは、典型的には、ポリマー中に16wt%〜約35wt%のアクリル又はメタクリル酸単位が存在するアイオノマー樹脂と定義されている。一般的に、そのような高酸アイオノマーは、約50,000psi〜約125,000psiの曲げ弾性率を有する。
【0110】
ポリマー中に約10wt%〜約50wt%存在する軟化コノモマーをさらに含むアイオノマー樹脂は、約2,000psi〜約10,000psiの曲げ弾性率を有し、時として“軟質”又は“超低モジュラス”アイオノマーと呼ばれている。典型的な軟化コモノマーは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルなどである。
【0111】
今日、エチレンと(メト)アクリル酸のコポリマー又はエチレンと(メト)アクリル酸と(メト)アクリレートのターポリマーの両方に基づく様々な市販アイオノマー樹脂がある。それらのすべて又はそれらの多くがゴルフボールの成分として使用されている。これらのアイオノマー樹脂の性質は、酸含有量、軟化コモノマー含有量、中和度、及び中和に使用される金属イオンの種類が様々であるために、広く変動しうる。全種類の市販品は、典型的には、一般式E/X/Yポリマーのポリマーのアイオノマーを含む。式中、Eはエチレンであり、XはC〜Cのα,βエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸又はメタクリル酸で、E/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%の量で存在する。Yは、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのようなアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル、ここで前記アルキル基は1〜8個の炭素原子を有する、からなる群から選ばれる軟化コモノマーで、YはE/X/Yコポリマーの0〜約50重量%の範囲である。前記アイオノマー性ポリマー中に存在する酸基は、亜鉛、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる金属で部分的に中和されている。
【0112】
E/X/Yにおいて、Eはエチレンであり、Xはポリマーの0wt%〜約50wt%の量で存在するような軟化コモノマーであり、Yはポリマーの約5wt%〜約35wt%の量で存在し、酸部分は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、スズ、亜鉛又はアルミニウムのようなカチオン、又はそのようなカチオンの組合せで約1%〜約90%中和されてアイオノマーを形成している。
【0113】
アイオノマーは、米国特許第6,562,906号(その全内容は引用によって本明細書に援用する)に記載されているような、いわゆる二峰性アイオノマーでもよい。これらのアイオノマーは、異なる分子量のポリマーを含むブレンドから製造されているため二峰性となる。具体的には、それらは、
a)高分子量成分であって、約80,000〜約500,000の重量平均分子量、Mwを有し、一つ又は複数のエチレン/α,β−エチレン性不飽和C3−8カルボン酸コポリマー、及び/又は一つ又は複数のエチレン、(メト)アクリル酸アルキル、(メト)アクリル酸のターポリマーを含み;前記高分子量成分は、リチウム、ナトリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、及びこれらのいずれかの混合物からなる群から選ばれる金属イオンで部分的に中和されている高分子量成分;及び
b)低分子量成分であって、約2,000〜約30,000の重量平均分子量、Mwを有し、一つ又は複数のエチレン/α,β−エチレン性不飽和C3−8カルボン酸コポリマー、及び/又は一つ又は複数のエチレン、(メト)アクリル酸アルキル、(メト)アクリル酸のターポリマーを含み;前記低分子量成分は、リチウム、ナトリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、及びこれらのいずれかの混合物からなる群から選ばれる金属イオンで部分的に中和されている低分子量成分
を含む二峰性ポリマーブレンド組成物を含む。
【0114】
単峰性及び二峰性アイオノマーのほかに、いわゆる“改質アイオノマー”も含められる。その例は、米国特許第6,100,321号、6,329,458号及び6,616,552号並びに米国特許公開第2003/0158312 A1号に記載されている。これらすべての全内容は引用によって本明細書に援用する。
【0115】
改質単峰性アイオノマーは、
a)アイオノマー性ポリマーであって、エチレン、5〜25重量パーセントの(メト)アクリル酸、及び0〜40重量パーセントの(メト)アクリレートモノマーを含み、前記アイオノマー性ポリマーは、リチウム、ナトリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、及びこれらのいずれかの混合物からなる群から選ばれる金属イオンで中和されているアイオノマー性ポリマー;及び
b)約5〜約40重量パーセント(前記改質アイオノマー性ポリマーの総重量を基にして)の一つ又は複数の脂肪酸又は前記脂肪酸の金属塩であって、前記金属は、カルシウム、ナトリウム、亜鉛、カリウム、及びリチウム、バリウム及びマグネシウムからなる群から選ばれ、前記脂肪酸は好ましくはステアリン酸である一つ又は複数の脂肪酸又は前記脂肪酸の金属塩
を混合することによって製造できる。
【0116】
改質二峰性アイオノマーは、先に記載した二峰性エチレン/カルボン酸ポリマー(米国特許第6,562,906号に記載の通りであり、その全内容は引用によって本明細書に援用する)から誘導されたアイオノマーであるが、
a)高分子量成分であって、約80,000〜約500,000の重量平均分子量、Mwを有し、一つ又は複数のエチレン/α,β−エチレン性不飽和C3−8カルボン酸コポリマー、及び/又は一つ又は複数のエチレン、(メト)アクリル酸アルキル、(メト)アクリル酸のターポリマーを含み;前記高分子量成分は、リチウム、ナトリウム、亜鉛、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びこれらのいずれかの混合物からなる群から選ばれる金属イオンで部分的に中和されている高分子量成分;及び
b)低分子量成分であって、約2,000〜約30,000の重量平均分子量、Mwを有し、一つ又は複数のエチレン/α,β−エチレン性不飽和C3−8カルボン酸コポリマー、及び/又は一つ又は複数のエチレン、(メト)アクリル酸アルキル、(メト)アクリル酸のターポリマーを含み;前記低分子量成分は、リチウム、ナトリウム、亜鉛、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びこれらのいずれかの混合物からなる群から選ばれる金属イオンで部分的に中和されている低分子量成分;及び
c)約5〜約40重量パーセント(前記改質アイオノマー性ポリマーの総重量を基にして)の一つ又は複数の脂肪酸又は前記脂肪酸の金属塩であって、前記金属は、カルシウム、ナトリウム、亜鉛、カリウム、及びリチウム、バリウム及びマグネシウムからなる群から選ばれ、前記脂肪酸は好ましくはステアリン酸である一つ又は複数の脂肪酸又は前記脂肪酸の金属塩
を混合することによって製造される。
【0117】
様々な改質アイオノマーに利用される脂肪酸塩又は蝋状(waxy)酸塩は、約4〜75個の炭素原子(通常偶数)を含有するアルキル基の鎖で構成され、−COOH末端基によって特徴付けられる。酢酸より大きいすべての脂肪酸及び蝋状酸の一般式は、CH(CHCOOHであり、炭素原子のカウントにはカルボキシル基も含まれる。脂肪酸塩又は蝋状酸塩改質剤を製造するのに利用される脂肪酸又は蝋状酸は、飽和でも不飽和でもよく、固体、半固体又は液体形で存在しうる。
【0118】
適切な飽和脂肪酸、すなわちアルキル鎖の炭素原子が単結合によって接続されている脂肪酸の例は、ステアリン酸(C18、すなわちCH(CH16COOH)、パルミチン酸(C16、すなわちCH(CH14COOH)、ペラルゴン酸(C、すなわちCH(CHCOOH)及びラウリン酸(C12、すなわちCH(CH10COOH)などであるが、これらに限定されない。適切な不飽和脂肪酸、すなわちアルキル鎖の炭素原子間に一つ又は複数の二重結合がある脂肪酸の例は、オレイン酸(C13、すなわちCH(CHCH:CH(CHCOOH)などであるが、これに限定されない。
【0119】
様々な改質アイオノマーに使用される脂肪酸塩又は蝋状酸塩の金属塩を製造するのに使用される金属イオン源は、一般的に、脂肪酸のカルボン酸基を様々な程度に中和できる金属イオンを提供する様々な金属塩である。これらは、亜鉛、バリウム、カルシウム及びマグネシウムの硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩及びヒドロキシレート塩などである。
【0120】
脂肪酸塩改質剤は、多数の異なる金属イオンで中和された様々な組合せの脂肪酸を含むので、いくつかの異なるタイプの脂肪酸塩が本発明に利用できる。例えば金属ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、及びパルミチン酸塩などであるが、ステアリン酸カルシウム、亜鉛、ナトリウム、リチウム、カリウム及びマグネシウムが好適で、ステアリン酸カルシウム及びナトリウムが最も好適である。
【0121】
脂肪酸又は蝋状酸あるいは前記脂肪酸又は蝋状酸の金属塩は、改質アイオノマー性ポリマー中に約5〜約40、好ましくは約7〜約35、さらに好ましくは約8〜約20重量パーセント(前記改質アイオノマー性ポリマーの総重量を基にして)の量で存在する。
【0122】
一つ又は複数の脂肪酸又は蝋状酸の金属塩の添加の結果、最終改質アイオノマー性ポリマー組成物中の酸性基の約40〜100、好ましくは約50〜100、さらに好ましくは約70〜100パーセントが金属イオンによって中和される。
【0123】
そのような改質アイオノマー性ポリマーの例は、E.I DuPont de Nemours and Co.Inc.社から入手できるDuPont(登録商標)HPF−1000である。
【0124】
フィラー
本発明のゴルフボールの製造に使用される様々な高分子組成物には、一つ又は複数のフィラーを配合することもできる。そのようなフィラーは、典型的には微粉末形、例えば一般的に約20メッシュ未満、好ましくは約100メッシュ米国標準サイズ未満のサイズである。一般的に細長い形状のファイバー及びフロックはこの限りでない。フィラーの粒度は、所望の効果、コスト、添加の容易性、及びダストへの配慮によって異なる。必要とされるフィラーの適切な量は用途によって異なるが、典型的には過度の実験なしに容易に決めることができる。
【0125】
フィラーは、好ましくは、沈降水和シリカ、石灰石、粘土、タルク、アスベスト、バライト、ガラス繊維、アラミド繊維、雲母、メタケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リトポン、ケイ酸塩、炭化ケイ素、珪藻土、炭酸塩、例えば炭酸カルシウム又はマグネシウム又はバリウム、硫酸塩、例えば硫酸カルシウム又はマグネシウム又はバリウム、金属、例えばタングステン、スチール、銅、コバルト又は鉄、金属合金、炭化タングステン、金属酸化物、金属ステアリン酸塩、及びその他の粒状炭素質材料、並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれる。フィラーの好適な例は、金属酸化物、例えば酸化亜鉛及び酸化マグネシウムなどである。別の好適な側面において、フィラーは連続又は非連続ファイバーを含む。別の好適な側面において、フィラーは、米国特許第6,794,447号及び2003年9月24日出願の同時係属米国特許出願第10/670,090号及び2004年8月25日出願の同時係属米国特許出願第10/926,509号に記載されているような一つ又は複数のいわゆるナノフィラーを含む。前記特許及び出願はそれぞれの全内容を引用によって本明細書に援用する。
【0126】
無機ナノフィラー材料は、一般的に粘土、例えばハイドロタルサイト、フィロケイ酸塩、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、ステベンス石(stevensite)、バーミキュライト、ハロイサイト、雲母、モンモリロナイト、マイカフルオリド(micafluoride)、又はオクトケイ酸塩からできている。ポリマー材料へのナノフィラー材料の配合を容易にするために、ナノ複合材料の製造時又はポリマーベースのゴルフボール組成物の製造時のいずれかに、粘土粒子は一般的に適切な相溶化剤によって被覆又は処理される。相溶化剤は、無機材料と有機材料間の優れた連結を可能にし、そしてまた無機ナノフィラー材料の親水性及びポリマーのおそらくは疎水性の原因となることもできる。相溶化剤は、無機ナノフィラー材料と標的のマトリックスポリマーの両方の性質に応じて、様々に異なる構造を示しうる。非制限的例は、ヒドロキシ−、チオール−、アミノ−、エポキシ−、カルボン酸−、エステル−、アミド−、及びシロキシ−基を含有する化合物、オリゴマー又はポリマーなどである。ナノフィラー材料は、重合の前に特定のモノマー又はオリゴマーに分散させるか、又はマトリックスポリマー中に粒子を溶融配合することによってポリマーに配合することができる。市販ナノフィラーの例は、Southern Clay Products社(テキサス州ゴンザレス)のCloisite級、例えば10A、15A、20A、25A、30B、及びNA+、並びにNanocor,Inc.社(イリノイ州アーリントンハイツ)のNanomer級、例えば1.24TL及びC.30EVAである。
【0127】
ナノフィラーは、ポリアルケナマーゴムのようなマトリックスポリマーに添加される場合、三つの方法で混合することができる。一つのタイプの混合では、マトリックスポリマー内への凝集体構造の分散がある。しかしながら、混合時、マトリックスポリマーと凝集体小板構造(aggregate platelet structure)との相互作用は起こらず、層状(stacked)の小板構造は本質的に維持される。本明細書では、このタイプの混合を“非分散”と定義する。
【0128】
しかしながら、ナノフィラー材料を適正に選ぶと、マトリックスポリマー鎖は凝集体内に侵入して小板を分離する。従って、透過型電子顕微鏡法又はx線回折で見ると、小板の凝集体は膨張している。この時点で、ナノフィラーはマトリックスポリマーの構造内に実質的に均等に分散及び作用していると言われる。この膨張レベルは様々な程度に起こりうる。少量のマトリックスポリマーが個々の小板間に層化された場合、本明細書では、このタイプの混合を“インターカレーション”と呼ぶ。
【0129】
状況によっては、マトリックスポリマー鎖の凝集体構造内への更なる侵入によって小板が分離され、凝集体における小板の層状構造の完全崩壊を招くことがある。従って、透過型電子顕微鏡法(TEM)で見ると、個々の小板はマトリックスポリマー全体に完全に混合されている。本明細書では、このタイプの混合を“剥離(exfoliated)”と呼ぶ。剥離したナノフィラーは、ポリマーマトリックス全体に完全に分散された小板を有する。小板は不均等に分散されていてもよいが、好ましくは均等に分散される。
【0130】
何らかの理論に限定されることは望まないが、そのようなナノフィラーのマトリックスポリマー構造内での分散の程度が様々であることの一つの可能な説明としては、ナノフィラーの小板構造とマトリックスポリマー間の相互作用に及ぼす相溶化剤の表面コーティングの影響が挙げられる。ナノフィラーを注意深く選択することにより、混合時のマトリックスポリマーのナノフィラーの小板構造への侵入を様々に変えることは可能である。従って、ポリマーマトリックスのナノフィラーへの相互作用及び貫入(intrusion)の程度は、ポリマーマトリックス内でのナノフィラーの個々の小板の分離及び分散を制御する。ポリマーマトリックスとナノフィラーの小板構造のこの相互作用は、本明細書ではナノフィラーの“ポリマー構造への作用”と定義され、その後のポリマーマトリックス内での小板の分散は、本明細書ではナノフィラーがポリマーマトリックスの構造内に“実質的に均等に分散されている”と定義される。
【0131】
相溶化剤が粘土のようなフィラーの表面上に存在しない場合、又は粘土のコーティングがポリマーマトリックスにそれを添加した後に試みられる場合、マトリックスポリマーのナノフィラーへの侵入はずっと効率が悪くなり、マトリックスポリマー内での個々の粘土小板の分離はほとんどなく、分散は起こらない。
【0132】
ポリマーの物理的性質はナノフィラーの添加によって変化する。ナノフィラーはポリマーマトリックス内に分散されてナノ複合体(ナノコンポジット)を形成するので、ポリマーの物理的性質はさらに改良されることが期待される。
【0133】
ナノフィラー材料を配合した材料は、従来フィラーを配合したものよりもずっと低い密度でこのような性質の改良を提供できる。例えば、カンザス州ウィチタのRTP Corporation社によって製造されているナイロン−6ナノ複合材料は、3%〜5%の粘土配合量を使用し、引張強さ11,800psi及び比重1.14を有する。一方、従来の30%のミネラルを充填した材料は、引張強さ8,000psi及び比重1.36を有する。従来フィラーより無機材料の配合量の少ないナノ複合材料の使用で同じ性質が提供されるので、ナノ複合体フィラーを含む製品は、従来フィラーの製品よりも、これらの性質を維持しつつ、軽量化が可能となる。
【0134】
ナノ複合材料は、ポリマーのような有機材料の構造内に作用してインターカレーション又は剥離を通じて実質的に分散されたナノフィラーを約20%まで、又は約0.1%〜約20%、好ましくは約0.1%〜約15%、最も好ましくは約0.1%〜約10%配合している材料であり、得られた複合体に、強度、温度耐性、及びその他の性質の改良を提供する。特定のナノ複合材料及びそれらの製造についての記述は、Ellsworthによる米国特許第5,962,553号、Maxfieldらによる米国特許第5,385,776号及びOkadaらによる米国特許第4,894,411号に見出すことができる。現在市販されているナノ複合材料の例は、日本・大阪のUnitika Limited(ユニチカ株式会社)によって製造されているM1030D、及びニューヨーク州ニューヨークのUBE America社によって製造されている1015C2などである。
【0135】
ナノ複合材料を他のポリマー系とブレンドする場合、ナノ複合材料は一種のナノフィラーコンセントレートと見なすことができる。しかしながら、ナノフィラーコンセントレートは、より一般的にはナノフィラーが混合されたポリマーと言える。ナノフィラーコンセントレートは、ナノフィラーが担体ポリマー内に作用及び/又は均等分散する必要がない。
【0136】
ナノフィラー材料は、ポリマーマトリックスの構造内に作用してインターカレーション又は剥離を通じて実質的に分散された約20wt%まで、約0.1%〜約20%、好ましくは約0.1%〜約15%、最も好ましくは約0.1%〜約10重量%(ポリマーマトリックス材料の最終重量を基にして)のナノフィラーの量で添加される。
【0137】
所望であれば、本発明のゴルフボールの製造に使用される様々なポリマー組成物は、さらに、その他の従来添加剤、例えば可塑剤、顔料、抗酸化剤、UV吸収剤、蛍光増白剤、又はプラスチック配合物やゴルフボールの製造に一般的に使用される任意のその他の添加剤を含有することもできる。
【0138】
本発明のゴルフボールの製造に使用される様々なポリマー組成物に使用するための別の特に良く適した添加剤は、一般式:
(RN)−R’−(X(O)(OR)
を有する化合物などである。式中、Rは、水素、又はC−C20脂肪族、脂環式又は芳香族系であり;R’は、一つ又は複数のC−C20直鎖又は分枝脂肪族又は脂環式基、又は置換直鎖又は分枝脂肪族又は脂環式基、又は芳香族基、又は12個までの反復単位を有するオリゴマー、例えば、これに制限されないが、12個のアミノ酸までのアミノ酸配列から誘導されたポリペプチドを含む架橋基であり;XはC又はS又はPであるが、ただし、X=Cの場合、n=1及びy=1であり、X=Sの場合、n=2及びy=1であり、X=Pの場合、n=0又は1及びy=2又は4である。そしてまたm=1〜3である。これらの材料については、2005年7月14日出願の同時係属米国特許出願第11/182,170号にさらに十分に記載されている。前記出願の全内容は引用によって本明細書に援用する。
【0139】
好ましくは、該材料は、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルアミン)カルバメート(コネチカット州ノーウォークのR.T.Vanderbilt Co.社からDiak(登録商標)4の商品名で市販されている)、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、イプシロン−カプロラクタム;オメガ−カプロラクタム、及びそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれる。
【0140】
特に好適な側面において、本発明のゴルフボールのナノフィラー添加剤成分は、一般式:
(RN)−R’−(X(O)OR
を有する前述の化合物を含む相溶化剤で表面改質されている。最も好適な側面は、12−アミノドデカン酸を含むアミノ酸で表面改質されたナノフィラー粘土材料を含むフィラーであろう。そのようなフィラーは、Nanonocor Co社からNanomer 1.24TLの商品名で入手できる。
【0141】
フィラーは、様々な有効量でブレンドできる。例えば、ベースゴム100重量部あたり0より大〜少なくとも約80部、さらに典型的には約10部〜約80重量部の量である。所望であれば、ゴム組成物はさらに、有効量の可塑剤、抗酸化剤、及びゴルフボールの製造に一般的に使用される任意のその他の添加剤を含有することもできる。
【0142】
本発明のゴルフボールの成分として使用されるポリマー組成物は、Hyun Kimらの名前で2006年11月1日出願の同時係属出願第11/592,109号に記載されているように、モノマーの脂肪族及び/又は芳香族アミドの添加によってさらに改質されていてもよい。前記出願の全内容は引用によって本明細書に援用する。
【0143】
本発明の範囲に含まれるゴルフボールは、ゴルフボール組成物に一般的に使用される一つ又は複数の追加成分を適切な量で含むこともできる。特定機能を達成するために供給される薬剤、例えば添加剤及び安定剤が存在していてもよい。適切な成分の例は、着色剤、抗酸化剤、着色剤、分散剤、離型剤、加工助剤、フィラー、及びそれらの任意の及びすべての組合せなどである。必要ではないが、置換ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールのようなUV安定剤、又は光安定剤を本発明に利用して、最終組成物のUV安定性を増強することもできる。市販のUV安定剤の例は、Ciba Geigy Corporation社からTINUVINの商品名で販売されている安定剤である。
【0144】
ゴルフボールの組成及び構造
上述のように、本発明の単一又は多領域あるいは単一マントル又は多マントルボールは、ゴルフボールの幾何学的中心を含むSCRを有し、別個の及び別個のコアは持たない。本発明の有芯単一又は有芯多領域あるいは有芯単一マントル又は有芯多マントルボールは、別個及び別個のなゴルフボールコアを確実に含む。一態様において、本発明のゴルフボールのコアは、存在する場合、多数のコア層を含んでいてもよい。コア及び任意のコア層は、ゴルフボールのコアを製造するのに通常使用される材料から製造できる。例えば、シス1,4−ポリブタジエンゴム、syn1,2−ポリブタジエンゴム、ポリアルケナマーゴム、アイオノマー、熱可塑性及び熱硬化性ポリウレタン及びポリウレアなどであるが、これらに限定されない。好適な材料はシス1,4−ポリブタジエンである。様々なコア層(中心コアを含む)は、それぞれ異なる硬度を示してよい。中心硬度と隣接層の硬度間の差並びに様々なコア層間の硬度差は、ショアーDの単位で2より大、好ましくは5より大、最も好ましくは10より大でありうる。一つの好適な態様において、中心及び一続きの各層の硬度は、中心から外側コア層に向かって外向きに漸増する。別の好適な態様において、中心及び一続きの各層の硬度は、外側コア層から中心に向かって内向きに漸減する。
【0145】
本発明のゴルフボールのコアは、存在する場合、約0.5〜約1.62、好ましくは約0.7〜約1.60、さらに好ましくは約1〜約1.58、なおさらに好ましくは約1.15〜約1.54、最も好ましくは約1.20〜約1.50インチの直径を有しうる。
【0146】
本発明のゴルフボールのコアは、存在する場合、約10〜約200、好ましくは約20〜約185、さらに好ましくは約30〜約180、最も好ましくは約40〜約120のPGAコンプレッションも有しうる。別の態様において、ボールのコアは、約20〜約100、好ましくは約25〜約90、さらに好ましくは約30〜約80のPGAコンプレッションを有しうる。
【0147】
同じく前述のように、本発明の単一マントル又は多マントルあるいは有芯単一マントル又は有芯多マントルボールは、別個の及び別個の外側カバー層を有する。ボールの外側カバー層は、約0.01〜約0.10、好ましくは約0.015〜約0.08、さらに好ましくは約0.02〜約0.06インチの厚さを有しうる。
【0148】
ボールの外側カバー層は、約40〜約70、好ましくは約45〜約70又は約50〜約70、さらに好ましくは47〜約68又は約45〜約70、最も好ましくは約50〜約65のショアーD硬度を有しうる。
【0149】
本発明の有芯単一又は多領域ボール、単一マントル又は多マントルあるいは有芯単一マントル又は有芯多マントルボールは、SCRからは除外されるが、ゴルフボールのコアの外表面とSCRの内表面との間及び/又はSCRの外表面と外側カバー層の内表面との間に間置された追加の層も有しうる。いずれの場合も、これらは中間層と呼ばれる。本発明のゴルフボールは、0〜5、好ましくは0〜4、さらに好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4個のそのような中間層を含みうる。
【0150】
本発明のゴルフボールのCORは、125ft/秒の入射速度(inbound velocity)で約0.760より大、好ましくは約0.780より大、さらに好ましくは0.790より大、最も好ましくは約0.795より大、特に0.800より大でありうる。別の態様において、ゴルフボールのCORは、143ft/秒の入射速度で約0.760より大、好ましくは約0.780より大、さらに好ましくは0.790より大、最も好ましくは約0.795より大、特に0.800より大でありうる。
【0151】
ゴルフボールの製造法
初めのポリアルケナマーゴム組成物は、一般的に使用されている任意の混合法によって形成することができる。例えば、ポリアルケナマーゴム組成物、及び架橋剤、フィラーなどは、それらを溶融して又は溶融せずに一緒に混合することができる。タンブルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、又は二本ロールミルのような乾式ブレンディング装置が組成物の混合に使用できる。ポリアルケナマーゴム組成物は、ミル、密閉式ミキサー、例えばバンバリー(Banbury)又はファレル(Farrel)連続ミキサー、押出機又はこれらの組合せを用いて混合することもできる。溶融を起こすための熱エネルギーは加えても加えなくてもよい。様々な成分は架橋剤と共に混合されてもよいし、各添加剤をミル粉砕された不飽和ポリマーに適切な順序で加えてもよい。別の製造法では、架橋剤及びその他の成分を乾式ブレンディング、ロール粉砕、又は溶融混合を用いて不飽和ポリマーにコンセントレートの一部として加えることができる。
【0152】
本明細書中に記載の組成物は、二軸スクリュー押出機を用いることによって製造することもできる。押出機に投入する前の予備混合はしてもしなくてもよい。ブレンドするためのバレル温度は約140℃〜約300℃、さらに好ましくは約160℃〜約280℃、最も好ましくは約180℃〜約260℃であろう。コンパウンドされた材料は射出成形を用いてゴルフボールコアの周りに容易に配置できる。射出成形のためのバレル温度は約160℃〜約280℃、さらに好ましくは約180℃〜約260℃、最も好ましくは約200℃〜約260℃であろう。
【0153】
射出成形され、その後圧縮成形によって硬化されるか又は実際射出成形プロセス中に硬化されるポリアルケナマーゴム組成物の能力は、それ自体、個々のゴルフボール成分の製造にかなりの柔軟性を提供する。
【0154】
従って、単一成分領域を含むゴルフボールは、所要寸法及び架橋パッケージのポリアルケナマー組成物の初期層を射出成形し、その後異なる架橋パッケージを有するポリアルケナマー組成物の追加層を射出成形することによって製造できる。必要な量の層が形成されたら、得られた構造を次に同時硬化して架橋ポリアルケナマー組成物の単一成分領域を形成できる。その領域内には硬度及び/又は比重の異なる別個の硬度の領域が存在する。様々な硬度及び/又は比重は、異なる架橋パッケージを使用することによって及び/又は異なる加工条件を使用することによって得ることができる。
【0155】
単一成分領域を含むゴルフボールは、最初に所要寸法及び架橋パッケージのポリアルケナマー組成物のハーフシェルを必要数射出成形し、その後異なる架橋パッケージを有するポリアルケナマー組成物の追加のハーフシェルを射出成形することによっても製造できる。必要数のハーフシェルが形成されたら、そのハーフシェルを一緒に積み重ね、得られた構造を次に同時硬化して架橋ポリアルケナマー組成物の単一成分領域を形成する。その領域内には硬度及び/又は比重の異なる別個の硬度の領域が存在する。
【0156】
別個の別個のなコア(及び所望により追加のコア層及び中間層)を有するゴルフボールの場合、最初に予備形成された固体のコアを射出成形用のキャビティに配置し、その後ポリアルケナマーゴム組成物をコア上に順次均等射出して所要厚の層を作製し、最終的に所要直径のゴルフボールにすることによって製造できる。ここでも加熱された射出成形用金型を使用すると、材料の部分又は完全架橋に十分なように温度を制御でき、所望の層特性を得ることが可能となる。材料が部分硬化の場合、追加の圧縮成形又は照射ステップを所望により採用して硬化プロセスを完了させれば、所望のSCR特性を得ることができる。
【0157】
あるいは、SCRはコア又は中間層の周りに次のようにして形成することもできる。すなわち、最初にポリアルケナマーゴム組成物を射出成形してハーフシェルを形成し、その後該ハーフシェルをコア又は中間層の周りに圧縮成形して最終ボール中の層の硬化を実行する。
【0158】
あるいは、SCRはコア又は中間層の周りに次のようにして形成することもできる。最初にポリアルケナマーゴム組成物を射出成形してハーフシェルを形成し、ここでもまた加熱された射出成形用金型を使用する。これにより、材料の部分又は完全架橋に十分なように温度を制御できるので、所望のハーフシェル特性及び層特性を得ることが可能となる。得られた完全又は部分硬化されたハーフシェルは、次いでコア又はコア+中間層の周りに圧縮成形できる。ここでもハーフシェルが部分硬化の場合、追加の圧縮成形又は照射ステップを所望により適応して硬化プロセスを完了させれば、所望のSCR特性を得ることができる。
【0159】
さらに、照射を架橋剤として使用する場合、不飽和ポリマー及びその他の添加剤を含む混合物への照射は、混合後、あるいはボールのコア、中間層、又は外側カバーなどの部品を形成している最中、あるいはそのような部品の形成後に行うことができる。
【0160】
さらに、本開示は、前述のような、層及びハーフシェルの射出成形の組合せによる製造法にも関する。
【0161】
最後に、外側カバー層及び追加の中間層(ある場合)も、ゴルフボールの製造に一般的に使用されている従来の成形技術、例えば、これらに限定されないが、射出成形、キャスティング及び圧縮成形を用いて形成することができる。
【実施例】
【0162】
以下に実施例を提供するが、例示を目的としたものであって、制限を目的としたものではない。実施例で使用された材料は次の通りである。
【0163】
VESTENAMER 8012は、ドイツ・マールのHuls AG社の商品名であり、同社及び米国におけるその販売業者であるニュージャージー州サマセットのCreanova Inc.社を通じて商業的に入手できる。トランス含有量約80%及び融点約54℃のトランス−ポリオクテナマーである。
【0164】
Surlyn(登録商標)8150は、DuPont社から市販されているアイオノマーのグレードで、エチレン/メタクリル酸ポリマーのナトリウムアイオノマーである。
【0165】
Surlyn(登録商標)9150は、DuPont社から市販されているアイオノマーのグレードで、エチレン/メタクリル酸ポリマーの亜鉛アイオノマーである。
【0166】
NdBR40は、希土類触媒を用いて製造されたシス−1,4−ポリブタジエンゴムであり、Enichem社から市販されている。
【0167】
ZnOは、Akrochem社(オハイオ州アクロン)から購入したゴムグレードの酸化亜鉛である。
【0168】
ZDAはジアクリル酸亜鉛で、Sartomer社からSR416、及びSR638の商品名で、又はJinyang Chemical社からZDA12の商品名で商業的に購入した。
【0169】
テトラクロロチオピリジンは、Jinyang Chemical社から商業的に購入した。
【0170】
BaSOは、Cinbar社から購入したPoliwhite 200硫酸バリウムである。
【0171】
NHPCTPは、ペンタクロロチオフェノールのアンモニウム塩である。
【0172】
Varox 231−XLは、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン架橋開始剤(**40%活性過酸化物)である。これは、R.T.Vanderbilt社から市販されており、Atofina社によって製造されている。
【0173】
Trigonox 145は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン架橋開始剤(**45%活性過酸化物)である。これはAkzo Nobel社から市販されている。
【0174】
TAICはトリアリルイソシアヌレートで、Akrochem社から市販されている。
【0175】
Nanomer 1.24TLは、表面処理された粘土ナノフィラーで、Nanonocor Co.社から市販されている。
【0176】
カラーコンセントレートは、バインダとしてアイオノマーを有するTiOである。
【0177】
材料及び得られたボールに対する引張強さ、引張伸び、曲げ強さ、曲げ弾性率、PGAコンプレッション、C.O.R、ショアーD硬度の性質は、以下に規定された試験法を用いて実施された。
【0178】
コア又はボールの直径は、標準の線形カリパス又はサイズゲージを用いて測定した。
【0179】
比重は、ASTM D−792を用い、電子比重計により測定した。
【0180】
コンプレッションは、ニュージャージー州ユニオンシティのAtti Engineering Company社製の手動式装置(“Attiゲージ”)を用い、試験されるゴルフボールの中心、ゴルフボールのコア、又はゴルフボールにバネ荷重式の力を加えることによって測定する。この装置は、連邦ダイヤルゲージ(Federal Dial Gauge)、Model D81−Cを備え、既知の荷重下で較正されたバネを使用している。試験される球体をこのバネに対して0.2インチ(5mm)の距離押しつける。その結果、バネが0.2インチ圧縮すると、コンプレッションは100と評価され、バネが0.1インチ圧縮されるとコンプレッション値は0と評価される。従って、より圧縮可能で柔らかい材料は、硬くて圧縮されにくい材料よりも低いAttiゲージ値を有することになる。この装置を用いて測定されたコンプレッションは、PGAコンプレッションとも呼ばれる。Atti又はPGAコンプレッションとRiehleコンプレッション間に存在する近似関係は、
(Atti又はPGAコンプレッション)=(160−Riehleコンプレッション)
と表すことができる。従って、100のRiehleコンプレッションは60のAttiコンプレッションと同じである。
【0181】
ゴルフクラブで打撃後のゴルフボールの初速は、米国ゴルフ協会(“USGA”)によって規制されている。USGAは、規定のゴルフボールは初速が250フィート/秒±2%又は255フィート/秒を超えないことを求めている。USGAの初速制限は、ボールが飛びうる最終距離(280ヤード±6%)に関連しており、反発係数(“COR”)とも関連している。反発係数は、二つの物体間の直接衝撃後の相対速度 対 衝撃前の相対速度の比率である。結果として、CORは0〜1の間で変動し得、1は完全弾性衝突に相当し、0は完全塑性又は完全非弾性衝突に相当する。ボールのCORは、クラブ打撃後のボールの初速及び飛距離に直接影響するので、ゴルフボール製造業者は、ゴルフボールの設計及び試験に関してこの特性に関心を持っている。CORを測定するための一つの従来技術は、ゴルフボール又はゴルフボールの部分組立品(サブアセンブリ)、空気砲、及び静止スチールプレートを使用する。スチールプレートは約100ポンド又は約45キログラムの重量の衝撃面を提供する。ボール速度を測定する1対の弾道ライトスクリーン(ballistic light screen)を、間隔をあけて空気砲とスチールプレートの間に配置する。ボールは、空気砲からスチールプレートに向け、50ft/s〜180ft/secの試験速度範囲にわたって発射される。ボールがスチールプレートに向かって飛ぶと、それが各ライトスクリーンを活性化し、各ライトスクリーンにおける時間が測定される。これは、ボールの入射速度(incoming velocity)に比例する入射時間を提供する。ボールはスチールプレートに当たり、ライトスクリーンを通って跳ね返ってくる。これで再度ライトスクリーン間の通過に要した時間が測定される。これは、ボールの出射速度(outgoing velocity)に比例する出射通過時間を提供する。反発係数は、出射通過時間の入射通過時間に対する比率によって計算できる。COR=Tout/Tin
“ムーニー”粘度は、生ゴム又は未加硫ゴムの可塑性を測定するために使用される単位である。ムーニー単位における可塑性は、100℃の温度のゴムを含有し、毎分2回転で回転する容器中の円板にかかる、任意目盛で測定されたトルクに等しい。ムーニー粘度の測定は、ASTM D−1646に従って規定されている。
【0182】
材料のショアーD硬度はASTM Test D2240に従って測定された。層の硬度はボール上で測定され、外表面上の場合、ディンプルの間のランド部分に垂直に測定された。材料の硬度が規定されていない限り、すべての硬度はボール上で測定されている。
【0183】
ボールの性能はロボットドライバーテスト(Robot Driver Test)を用いて測定できる。これは、市販のスウィングロボットを光学系と組み合わせて利用したもので、規定通りにゴルフボールをチタンドライバー又は標準の8番アイアンで打った後のボール速度、打ち出し角、及びバックスピンを測定する。このテストでは、クラブをスウィングロボットに取り付け、スウィング速度及びパワープロフィール並びにティーの位置及びクラブのライ角を、下記のセットアップ条件と基準ボールを用いて以下の値が得られるようにセットアップする。
175mph:Titleist ProV1x、ボール速度:175mph、打ち出し角:12度、バックスピン:2600rpm
160mph:TaylorMade TP Red、ボール速度:160mph、打ち出し角:12度、バックスピン:2600rpm
8番アイアン:TaylorMade TP Red、ボール速度:110mph、打ち出し角:20度、バックスピン:7100rpm
次に基準ボールをテストボールに替えて、175mphドライバースピン及びドライバー速度、160mphドライバースピン及びドライバー速度、並びに8番アイアンスピンについての対応値を測定する。
【0184】
耐剪断性は、制御された速度でピッチングウェッジで打撃した後のボールを検査し、それぞれ1(優)から5(不良)までの数値で分類し、所定のボールタイプについての結果を平均することによって決定した。このテストでは各例につき3個のサンプルを使用した。各ボールを2回打ち、1個のボールにつき2個の衝撃データポイントを集めた。次に、各ボールに、衝撃ごとに一つずつ、1(目に見える損傷なし)〜5(材料の実質的変位)までの二つの数値スコアを割り当てた。次にこれらのスコアを各例について平均し、以下の耐剪断性の数値を得た。これらの数値は、同じテスト条件下における市販ボールTaylor Made TP Blackの対応数値(1.62の評価を有する)と直接比較できる。
【0185】
引張強さは、ASTM Test D368に従って測定した。
【0186】
引張伸びは、ASTM Test D368に従って測定した。
【0187】
曲げ弾性率は、ASTM Test D790に従って測定した。
【0188】
以下に本発明の実施例を、制限のためではなく例示のために提供する。
【0189】
実施例1〜6
コア製造− 一連の単一固体ゴルフボールコアを、NdBR40ポリブタジエン、酸化亜鉛、SR638ジアクリル酸亜鉛、アンモニウムペンタクロロチオフェノール及びVarox 231L過酸化物を混合することによって製造し、直径1.48インチ、重量30.4g、PGAコンプレッション49及びCOR 0.809を有するコアを得た。
【0190】
SCR製造
内側別個の硬度の領域(“DHR”)− 次に、Vestenamer 8012と他の成分を共に含む組成物をポリブタジエンゴムのコア上に射出成形した。実施例1〜3の場合、実施例4〜6と比べてわずかに少ない量のZDAを使用した。これは、この2組の実施例の内側別個の硬度の領域の硬度の差に反映されている。
【0191】
外側別個の硬度の領域(“DHR”)− 次に、Vestenamer 8012と表1にまとめてあるような他の成分を共に含む第二の組成物からハーフカップを製造することによってゴルフボールを完成させた。ハーフカップは、先に形成されたコア/内側別個の硬度の領域の前駆体を囲むのに十分な大きさに射出成形することによって形成された。ボール構造は、必要なディンプルパターン付きの圧縮金型に、ハーフカップを被せたコア/内側別個の硬度の領域の前駆体を入れ、180℃で12分間架橋して、SCR及びディンプル付きボール表面を形成することによって完成させた。
【0192】
表1のデータは、実施例1〜6の場合、別個の硬度の領域上の硬度が広範囲にわたる有芯二領域ボールが製造できることを示している。すべて優れた剪断性能を示し、従って剥離もほとんどないほか、125ft/sで0.8を超えるCOR値から分かるように、高いボール速度も示している。
【0193】
【表1】

【0194】
実施例7
コア製造− 単一固体ゴルフボールコアを、NdBR40ポリブタジエン、酸化亜鉛、SR638ジアクリル酸亜鉛、アンモニウムペンタクロロチオフェノール及びVarox 231L過酸化物を混合することによって製造し、表2にまとめてあるような大きさ及び性質のコアを得た。
【0195】
SCR製造
内側別個の硬度の領域− 次に、Vestenamer 8012と他の成分を共に含む組成物をポリブタジエンゴムのコア上に射出成形した。割合及び得られた性質は表2にまとめてある。
【0196】
中間別個の硬度の領域− 次に、Vestenamer 8012と他の成分を共に含む組成物をポリブタジエンゴムのコア上に射出成形した。割合及び得られた性質は表2にまとめてある。
【0197】
外側別個の硬度の領域− ゴルフボールカバーをVestenamer 8012と他の成分を共に含む組成物からハーフカップを製造することにより製造した。ハーフカップは、先に形成されたコア/内側/中間別個の硬度の領域の前駆体を囲むのに十分な大きさのハーフカップを射出成形することによって製造した。ボール構造は、必要なディンプルパターン付きの圧縮金型に、ハーフカップを被せたコア/内側別個の硬度の領域の前駆体を入れ、180℃で12分間架橋して、SCR及びディンプル付きボール表面を完成させることによって完成させた。割合及び得られたボールの性質は表2にまとめてある。
【0198】
表2のデータは、単一成分領域中に三つの別個の硬度の領域を有する有芯三領域ボールが製造できることを示している。該ボールは、優れた剪断性能を示し、従って剥離もほとんどないほか、125ft/sで0.8を超えるCOR値から分かるように、高いボール速度も示している。
【0199】
【表2】

【0200】
実施例8及び9
コア製造− 一連の単一固体ゴルフボールコアを、NdBR40ポリブタジエン、酸化亜鉛、ZDA12ジアクリル酸亜鉛、硫酸バリウム、ピリジンテトラクロロチオフェノール及びVarox 231L過酸化物を混合することによって製造し、表3にまとめてあるような大きさ及び性質のコアを得た。
【0201】
SCR製造
内側別個の硬度の領域(“DHR”)− 次に、Vestenamer 8012と他の成分を共に含む組成物をポリブタジエンゴムのコア上に射出成形した。割合及び得られた性質は表3にまとめてある。
【0202】
外側別個の硬度の領域(“DHR”)− 次に、Vestenamer 8012と他の成分を共に含む組成物をポリブタジエンゴムのコア上に射出成形した後、得られた前駆体を圧縮金型に入れて180℃で12分間架橋することによって同時硬化し、SCR及びDHRを完成させた。割合及び得られた性質は表3にまとめてある。
【0203】
外側中間層− 次に、二つのアイオノマー、Surlyn 8150及び9150の50/50wt%ブレンドの中間層を、先に形成されたコア/内側/外側別個の硬度の領域の前駆体の周りに射出成形した。割合及び得られた性質は表3にまとめてある。
【0204】
外側カバー層− ボールの構造は、熱硬化性ウレタンカバーを、先に形成されたコア/内側/外側別個の硬度の領域/外側中間層の前駆体の周りにキャスティングすることによって完成させた。使用された配合物は、トルエンジイソシアネート/PTMEGプレポリマーに基づくもので、ジアミン系硬化混合物で硬化され、金型は必要なディンプルパターンを有していた。割合及び得られたボールの性質は表3にまとめてある。
【0205】
【表3−1】

【0206】
【表3−2】

【0207】
表3のデータは、単一成分領域中に二つの別個の硬度の領域、並びに外側中間層及び外側カバー層を有する有芯二マントルボールが製造できることを示している。該ボールは、優れた8番アイアンスピンを示したほか、125ft/sで0.8を超えるCOR値から分かるように、高いボール速度も示している。
【0208】
本開示の原理が適用されうる多数の可能な態様に鑑み、例示された態様は単に好適な例であって、本発明の範囲の制限と見なすべきでないことは認識されるはずである。
【0209】
[本発明の態様]
[1] ゴルフボールであって、
A)幾何学的中心と;
B)外表面と;
C)ゴルフボールの幾何学的中心から外表面までの距離にわたる単一成分領域と;そして、
D)所望により一つ又は複数の中間層と
を含み、前記単一成分領域は75重量%を超える射出成形可能ゴムを含むゴルフボール。
【0210】
[2] 前記単一成分領域が約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域が80重量%を超えるポリアルケナマーを含む、1に記載のゴルフボール。
【0211】
[3] 前記単一成分領域が約2〜約8の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.015〜約0.825インチの厚さを有し、前記単一成分領域が85重量%を超える、ポリブテナマーゴム、ポリペンテナマーゴム、ポリヘキセナマーゴム、ポリヘプテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリノネナマーゴム、ポリデセナマーゴム、ポリウンデセナマーゴム、ポリドデセナマーゴム、ポリトリデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、1に記載のゴルフボール。
【0212】
[4] 前記単一成分領域が約2〜約5の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.02〜約0.5インチの厚さを有し、前記単一成分領域が90重量%を超える、ポリペンテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリドデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、3に記載のゴルフボール。
【0213】
[5] ゴルフボールであって、
A)幾何学的中心と;
B)内表面及び外表面を有する外側カバー層と;
C)ボールの幾何学的中心から外側カバー層の内表面までの距離にわたる単一成分領域と;
D)所望により一つ又は複数の中間層と;
を含み、前記単一成分領域は75重量%を超える射出成形可能ゴムを含むゴルフボール。
【0214】
[6] 前記単一成分領域が約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域が80重量%を超えるポリアルケナマーを含む、5に記載のゴルフボール。
【0215】
[7] 前記単一成分領域が約2〜約8の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.015〜約0.825インチの厚さを有し、前記単一成分領域が85重量%を超える、ポリブテナマーゴム、ポリペンテナマーゴム、ポリヘキセナマーゴム、ポリヘプテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリノネナマーゴム、ポリデセナマーゴム、ポリウンデセナマーゴム、ポリドデセナマーゴム、ポリトリデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、5に記載のゴルフボール。
【0216】
[8] 前記単一成分領域が約2〜約5の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.02〜約0.5インチの厚さを有し、前記単一成分領域が90重量%を超える、ポリペンテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリドデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、7に記載のゴルフボール。
【0217】
[9] ゴルフボールであって、
A)幾何学的中心及び外表面を有するゴルフボールコアと;
B)内表面及び外表面を有する外側カバー層と;
C)前記ゴルフボールコアの外表面から前記外側カバー層の内表面までの距離にわたる単一成分領域と;そして
D)所望により一つ又は複数の中間層と;
を含み、前記単一成分領域は75重量%を超える射出成形可能ゴムを含むゴルフボール。
【0218】
[10] 前記単一成分領域が約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域が80重量%を超えるポリアルケナマーを含む、9に記載のゴルフボール。
【0219】
[11] 前記単一成分領域が約2〜約8の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.015〜約0.825インチの厚さを有し、前記単一成分領域が85重量%を超える、ポリブテナマーゴム、ポリペンテナマーゴム、ポリヘキセナマーゴム、ポリヘプテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリノネナマーゴム、ポリデセナマーゴム、ポリウンデセナマーゴム、ポリドデセナマーゴム、ポリトリデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、9に記載のゴルフボール。
【0220】
[12] 前記単一成分領域が約2〜約5の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.02〜約0.5インチの厚さを有し、前記単一成分領域が90重量%を超える、ポリペンテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリドデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、11に記載のゴルフボール。
【0221】
[13] 前記外側カバー層又は前記一つ又は複数の中間層が、熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレア、熱可塑性ポリウレア、単峰性アイオノマー、二峰性アイオノマー、改質単峰性アイオノマー、改質二峰性アイオノマー;並びにそれらのいずれか及びすべての組合せ又は混合物を含む、9に記載のゴルフボール。
【0222】
[14] 前記外側カバー層が、
A)一つ又は複数のトリブロックコポリマー;又は
B)一つ又は複数の、トリブロックコポリマーの水素化生成物;又は
C)一つ又は複数の水素化ジエンブロックコポリマー
とブレンドされた一つ又は複数のアイオノマーを含むブレンド組成物を含み、
各トリブロックコポリマーは、
(i)芳香族ビニル化合物を含む第一のポリマーブロックと、
(ii)共役ジエン化合物を含む第二のポリマーブロックと
を含み、
各水素化ジエンブロックコポリマーは、50,000〜600,000のポリスチレン換算数平均分子量を有し、
(i)A−Bブロックコポリマー、ここでAはアルケニル芳香族化合物ポリマーブロックであり、Bは、
(1)共役ジエンホモポリマーブロック、ここで共役ジエン部分のビニル含有量は60%より多い、又は
(2)アルケニル芳香族化合物−共役ジエンランダムコポリマーブロック、ここで共役ジエン部分のビニル含有量は15〜60%である
のいずれか、又は
(ii)A−B−Cブロックコポリマー、ここでA及びBは前述の定義の通りであり、Cはアルケニル芳香族化合物の割合が漸増するアルケニル芳香族化合物−共役ジエンコポリマーテーパード(tapered)ブロックである、又は
(iii)A−B−Aブロックコポリマー、ここでA及びBは前述の定義の通りである、の水素化生成物であり、
各水素化ジエンブロックコポリマーにおいて、アルケニル芳香族化合物対共役ジエンの重量割合は5/95〜60/40であり、少なくとも一つのブロックA中の結合アルケニル芳香族化合物の含有量は少なくとも3重量%であり、二つのブロックA又はブロックAとブロックC中の結合アルケニル芳香族化合物の総含有量は総モノマーを基にして5%〜25重量%であり、共役ジエン部分の二重結合不飽和の少なくとも80%は水素化によって飽和されている、9に記載のゴルフボール。
【0223】
[15] 外側カバー層が、
A)少なくとも5重量%の少なくとも一つのタイプの官能基を含むモノマー、オリゴマー、又はプレポリマー、又はポリマーを含む少なくとも一つの成分A;
B)少なくとも一つの成分Aのアニオン性官能基の重量パーセンテージよりも少ない重量パーセンテージのアニオン性官能基を含むモノマー、オリゴマー、又はプレポリマー、又はポリマーを含む少なくとも一つの成分B;及び
C)金属カチオンを含む少なくとも一つの成分C
の反応生成物を含み、
前記反応生成物は、少なくとも一つの成分Bの存在下で少なくとも一つの成分Aの擬似架橋ネットワークを含む、9に記載のゴルフボール。
【0224】
[16] 前記一つ又は複数の中間層が、単峰性アイオノマー、二峰性アイオノマー、改質単峰性アイオノマー、又は改質二峰性アイオノマーを含み、前記一つ又は複数の中間層が、
1)前記コアと前記単一成分領域との間;又は
2)前記単一成分領域と前記外側カバー層との間;又は
3)1)及び2)の任意の組合せ
に配置される、9に記載のゴルフボール。
【0225】
[17] 単一成分領域を含むゴルフボールの製造法であって、ここで前記単一成分領域は約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域は約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域は80重量%を超えるポリアルケナマーを含み、該方法は、
1)ポリアルケナマーゴムと第一の架橋パッケージのブレンドを形成し;
2)ステップ1のブレンドを射出成形して所定寸法のポリアルケナマーの初期層を形成し;そして
3)ポリアルケナマーゴムとステップ1で使用したのとは異なる架橋パッケージのブレンドを形成し;
4)ステップ3のブレンドを射出成形して所定寸法のポリアルケナマーの第二の層を形成し;そして
5)所望によりステップ3及び4を必要に応じて繰り返し;
3)ステップ1〜5から得られた構造を同時硬化して、別個の硬度の領域を有する架橋ポリアルケナマー組成物の単一複合領域を形成する
ことを含む方法。
【0226】
[18] 単一成分領域を含むゴルフボールの製造法であって、ここで前記単一成分領域は約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域は約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域は80重量%を超えるポリアルケナマーを含み、該方法は、
1)ポリアルケナマーゴムと第一の架橋パッケージのブレンドを形成し;
2)ステップ1のブレンドを射出成形して所定寸法の1対のハーフシェルを形成し;そして
3)ポリアルケナマーゴムとステップ1で使用したのとは異なる架橋パッケージのブレンドを形成し;
4)ステップ3のブレンドを射出成形して所定寸法の第二の対のハーフシェルを形成し;そして
5)所望によりステップ3及び4を必要に応じて繰り返し;
6)ステップ1)〜5)のハーフシェルを一緒に積み重ね;そして
7)1)及び2)から得られた構造を同時硬化して、別個の硬度の領域を有する架橋ポリアルケナマー組成物の単一複合領域を形成する
ことを含む方法。
【0227】
[19] 射出成形のステップが、金型を、ポリアルケナマーゴムの架橋が本質的に起こらないような温度に維持することを含み、同時硬化のステップが、射出成形から得られた層を、ポリアルケナマーゴム組成物の所望の架橋度を実行するのに十分な時間、温度及び圧力で圧縮成形することを含む、17に記載の方法。
【0228】
[20] 射出成形のステップが、金型を、ポリアルケナマーゴムの架橋が本質的に起こらないような温度に維持することを含み、同時硬化のステップが、射出成形から得られた層を、ポリアルケナマーゴム組成物の所望の架橋度を実行するのに十分な時間、温度及び圧力で圧縮成形することを含む、18に記載の方法。
【符号の説明】
【0229】
100 単一領域ボール
102 幾何学的中心
104 ボールの外表面
106 SCR
200 有芯単一領域ボール
202 幾何学的中心
204 コア
206 コアの外表面
208 ボールの外表面
210 SCR
300 単一マントルボール
302 幾何学的中心
304 外側カバー層の内表面
306 外側カバー層の外表面
308 外側カバー層
310 SCR
400 有芯単一マントルボール
402 幾何学的中心
404 コア
406 コアの外表面
408 外側カバー層の内表面
410 外側カバー層の外表面
412 外側カバー層
414 SCR
500 有芯三マントルボール
502 幾何学的中心
504 コア
506 コアの外表面
508 外側カバー層の内表面
510 外側カバー層の外表面
512 外側カバー層
514 SCR
516 横平面
600 有芯単一マントルボール
602 幾何学的中心
604 コア
606 第二の内側中間層
608 SCR
610 外側中間層
612 外側カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールであって、
A)
A-1)幾何学的中心と、外表面;
A-2)幾何学的中心と、内表面及び外表面を有する外側カバー層;又は
A-3)幾何学的中心と、外表面を有するゴルフボールコアと、内表面及び外表面を有する外側カバー層
B)下記の距離にわたる単一成分領域と
B-1)上記A-1)の場合にはゴルフボールの幾何学的中心から外表面まで;
B-2)上記A-2)の場合にはボールの幾何学的中心から外側カバー層の内表面まで;又は
B-3)上記A-3)の場合には前記ゴルフボールコアの外表面から前記外側カバー層の内表面まで
並びに、
C)所望により一つ又は複数の中間層と
を含み、前記単一成分領域は75重量%を超える射出成形可能ゴムを含むゴルフボール。
【請求項2】
前記単一成分領域が約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域が80重量%を超えるポリアルケナマーを含む、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記単一成分領域が約2〜約8の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.015〜約0.825インチの厚さを有し、前記単一成分領域が85重量%を超える、ポリブテナマーゴム、ポリペンテナマーゴム、ポリヘキセナマーゴム、ポリヘプテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリノネナマーゴム、ポリデセナマーゴム、ポリウンデセナマーゴム、ポリドデセナマーゴム、ポリトリデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記単一成分領域が約2〜約5の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域が約0.02〜約0.5インチの厚さを有し、前記単一成分領域が90重量%を超える、ポリペンテナマーゴム、ポリオクテナマーゴム、ポリドデセナマーゴム並びにそれらのいずれか及びすべての組合せからなる群から選ばれるポリアルケナマーゴムを含む、請求項3に記載のゴルフボール。
別個の硬度の領域別個の別個の硬度の領域別個の別個の硬度の領域別個の別個の硬度の領域別個の別個の硬度の領域別個の別個の硬度の領域別個の
【請求項5】
前記外側カバー層又は前記一つ若しくは複数の中間層が、熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレア、熱可塑性ポリウレア、単峰性アイオノマー、二峰性アイオノマー、改質単峰性アイオノマー、改質二峰性アイオノマー;並びにそれらのいずれか及びすべての組合せ又は混合物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記外側カバー層が、
A)一つ又は複数のトリブロックコポリマー;又は
B)一つ又は複数の、トリブロックコポリマーの水素化生成物;又は
C)一つ又は複数の水素化ジエンブロックコポリマー
とブレンドされた一つ又は複数のアイオノマーを含むブレンド組成物を含み、
各トリブロックコポリマーは、
(i)芳香族ビニル化合物を含む第一のポリマーブロックと、
(ii)共役ジエン化合物を含む第二のポリマーブロックと
を含み、
各水素化ジエンブロックコポリマーは、50,000〜600,000のポリスチレン換算数平均分子量を有し、
(i)A−Bブロックコポリマー、ここでAはアルケニル芳香族化合物ポリマーブロックであり、Bは、
(1)共役ジエンホモポリマーブロック、ここで共役ジエン部分のビニル含有量は60%より多い、又は
(2)アルケニル芳香族化合物−共役ジエンランダムコポリマーブロック、ここで共役ジエン部分のビニル含有量は15〜60%である
のいずれか、又は
(ii)A−B−Cブロックコポリマー、ここでA及びBは前述の定義の通りであり、Cはアルケニル芳香族化合物の割合が漸増するアルケニル芳香族化合物−共役ジエンコポリマーテーパード(tapered)ブロックである、又は
(iii)A−B−Aブロックコポリマー、ここでA及びBは前述の定義の通りである、の水素化生成物であり、
各水素化ジエンブロックコポリマーにおいて、アルケニル芳香族化合物対共役ジエンの重量割合は5/95〜60/40であり、少なくとも一つのブロックA中の結合アルケニル芳香族化合物の含有量は少なくとも3重量%であり、二つのブロックA又はブロックAとブロックC中の結合アルケニル芳香族化合物の総含有量は総モノマーを基にして5%〜25重量%であり、共役ジエン部分の二重結合不飽和の少なくとも80%は水素化によって飽和されている、請求項1〜5のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記外側カバー層が、
A)少なくとも5重量%の少なくとも一つのタイプの官能基を含むモノマー、オリゴマー、又はプレポリマー、又はポリマーを含む少なくとも一つの成分A;
B)少なくとも一つの成分Aのアニオン性官能基の重量パーセンテージよりも少ない重量パーセンテージのアニオン性官能基を含むモノマー、オリゴマー、又はプレポリマー、又はポリマーを含む少なくとも一つの成分B;及び
C)金属カチオンを含む少なくとも一つの成分C
の反応生成物を含み、
前記反応生成物は、少なくとも一つの成分Bの存在下で少なくとも一つの成分Aの擬似架橋ネットワークを含む、請求項1〜6のいずれに記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記一つ又は複数の中間層が、単峰性アイオノマー、二峰性アイオノマー、改質単峰性アイオノマー、又は改質二峰性アイオノマーを含み、前記一つ又は複数の中間層が、
1)前記コアと前記単一成分領域との間;又は
2)前記単一成分領域と前記外側カバー層との間;又は
3)1)及び2)の任意の組合せ
に配置される、請求項1〜7のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項9】
単一成分領域を含むゴルフボールの製造法であって、ここで前記単一成分領域は約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域は約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域は80重量%を超えるポリアルケナマーを含み、該方法は、
1)ポリアルケナマーゴムと第一の架橋パッケージのブレンドを形成し;
2)ステップ1のブレンドを射出成形して所定寸法のポリアルケナマーの初期層を形成し;そして
3)ポリアルケナマーゴムとステップ1で使用したのとは異なる架橋パッケージのブレンドを形成し;
4)ステップ3のブレンドを射出成形して所定寸法のポリアルケナマーの第二の層を形成し;そして
5)所望によりステップ3及び4を必要に応じて繰り返し;
3)ステップ1〜5から得られた構造を同時硬化して、別個の硬度の領域を有する架橋ポリアルケナマー組成物の単一複合領域を形成する
ことを含む方法。
【請求項10】
単一成分領域を含むゴルフボールの製造法であって、ここで前記単一成分領域は約1〜約10の別個の硬度の領域を含み、各別個の硬度の領域は約0.01〜約0.84インチの厚さを有し、前記単一成分領域は80重量%を超えるポリアルケナマーを含み、該方法は、
1)ポリアルケナマーゴムと第一の架橋パッケージのブレンドを形成し;
2)ステップ1のブレンドを射出成形して所定寸法の1対のハーフシェルを形成し;そして
3)ポリアルケナマーゴムとステップ1で使用したのとは異なる架橋パッケージのブレンドを形成し;
4)ステップ3のブレンドを射出成形して所定寸法の第二の対のハーフシェルを形成し;そして
5)所望によりステップ3及び4を必要に応じて繰り返し;
6)ステップ1)〜5)のハーフシェルを一緒に積み重ね;そして
7)1)及び2)から得られた構造を同時硬化して、別個の硬度の領域を有する架橋ポリアルケナマー組成物の単一複合領域を形成する
ことを含む方法。
【請求項11】
射出成形のステップが、金型を、ポリアルケナマーゴムの架橋が本質的に起こらないような温度に維持することを含み、同時硬化のステップが、射出成形から得られた層を、ポリアルケナマーゴム組成物の所望の架橋度を実行するのに十分な時間、温度及び圧力で圧縮成形することを含む、請求項9又は10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−136160(P2011−136160A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−272447(P2010−272447)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(502330377)テイラー メイド ゴルフ カンパニー, インコーポレーテッド (15)