説明

射出成形用硬化性組成物

【目的】射出成形に適しているばかりでなく、充分な機械的特性を有する硬化物となる硬化性組成物を提供する。
【構成】硬化性組成物の主成分は、(A)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)シリカ微粉末、及び(E)貯蔵安定性改良剤である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒドロシリル化反応によって硬化する硬化性組成物であって、射出成形によって硬化物を成形する組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、硬化してゴム状物質を生成する硬化性液状組成物としては、各種のものが開発されている。例えば、特開平 3-95266号公報で開示されたヒドロシリル化反応を利用した硬化性組成物は、速硬化性であり、かつ深部硬化性に優れていることが知られている。然しながら、この硬化性組成物では機械的特性が充分に得らず、また射出成形用材料に適した流動特性を持っていないという問題があった。
【0003】硬化してゴム状物質を生成する硬化性液状組成物の射出成形としてはシリコーン樹脂が既に知られており、硬化前の液状物をポンプ移送で射出成形機へ導き成形するシステムで、射出成形は省力化、高品質化、多用性のある商品化等他の成形法に比べて幾つかの長所を持っている。然しながら、シリコーン樹脂では、その特性から使用範囲が限られるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、速硬化性であり、かつ深部硬化性に優れ、充分な機械的特性を有する射出成形用硬化性組成物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の射出成形用硬化性組成物は、下記の5成分である(A)〜(E)を主成分とするものである。
(A)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)シリカ微粉末、及び(E)貯蔵安定性改良剤。
【0006】本発明の(A)成分である分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体は、主鎖が主としてオキシプロピレンからなる重合体であって、線状でも枝分れでもよく、数平均分子量が500〜50,000であるのが好ましく、1,000〜20,000であるのが特に好ましい。数平均分子量が500未満であると、本発明の組成物を硬化物とした場合に充分な機械的特性が得られない。然し、分子量があまり大き過ぎると硬化が不充分となり、充分な機械的特性が得られない。このポリオキシプロピレン系重合体が有するアルケニル基としては、特に制限はないが、式(I):H2 C=C(−R1 )− (I)
(式中、R1 は水素又はメチル基)で示されるアルケニル基が好適である。
【0007】本発明の(A)成分である分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体としては、具体的には、次のような式で示される重合体を挙げることができる。まず、次の式(II)で示される重合体がある。
[H2 C=C(−R1 )−R2 −O]a 3 (II)
【0008】(式中、R1 は水素又はメチル基、R2 は炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基で1個以上のエーテル基が含まれていてもよく、R3 はポリオキシプロピレン系重合体であり、aは正の整数である。)このR2 としては、具体的には、−CH2 −、−CH2 CH2 −、−CH2 CH2 CH2 −、−CH2 CH(CH3 )CH2 −、−CH2 CH2 CH2 CH2 −、−CH2 CH2 OCH2 CH2 −、−CH2 CH2 OCH2 CH2 CH2 −を挙げることができるが、合成上の容易さからは−CH2 −が好ましい。次に、次の式(III)で示されるエステル結合を有する重合体がある。
[H2 C=C(−R1 )−R2 −O−C(=O)]a 3 (III)
(式中、R1 、R2 、R3 、及びaは前記と同様である。)また、次の式(IV)で示される重合体がある。
[H2 C=C(−R1 )]a 3 (IV)
(式中、R1 、R3 、及びaは前記と同様である。)更に、次の式(V)で示されるカーボネート結合を有する重合体がある。
[H2 C=C(−R1 )−R2 −OC(=O)O]a 3 (V)
(式中、R1 、R2 、R3 、及びaは前記と同様である。)
【0009】本発明の(A)成分としてポリオキシプロピレン系重合体にアルケニル基を導入する方法については、種々提案されている方法を用いることができるが、例えば、末端、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基等の官能基を有するポリオキシプロピレン系重合体に、上記の官能基に対して反応性を示す活性基及びアルケニル基を有する有機化合物を反応させることによって、アルケニル基を末端、主鎖あるいは側鎖に導入することができる。
【0010】上記の官能基に対して反応性を示す活性基及びアルケニル基を有する有機化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド等のC2 〜C20の不飽和脂肪酸、酸ハライド、酸無水物や、アリルクロロホルメート、アリルブロモホルメート等のC3 〜C20の不飽和脂肪酸置換炭酸ハライド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1-ブテニル(クロロメチル)エーテル、1-ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0011】本発明の(B)である分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物としては、特に制限はないが、ヒドロシリル基を含む基を具体的に例示すると次のような基が挙げられる。
【0012】例えば、−Si(H)n (CH3 3-n 、−Si(H)n (C2 5 3-n 、−Si(H)n (C4 6 3-n 、[n=1〜3]、−SiH3 (C6 12)等の珪素原子1個だけを含有するヒドロシリル基、−Si(CH3 2 Si(CH2 2 H、−Si(CH3 2 CH2 CH2 Si(CH3 2 H、−Si(CH3 2 SiCH3 2 、−Si(CH3 2 −Ph−Si(CH3 2 H[Phはp-フェニレン基]、−Si(CH3 2 NHSi(CH3 2 H、−Si(CH3 2 N[Si(CH3 2 H]2 、−Si(CH3 2 OC(CH3 )=NSi(CH3 2 H、−Si(CH3 2 N=C(CH3 )OSi(CH3 2 H等の珪素原子を2個含む基、−(−SiR2 −O−)m −(−SiR2 −O−)n
【0013】[式中、RはH、−OSi(CH3 3 及び炭素原子数が1〜10の有機基から選ばれる基であり、各々のRは同じでも異なっていてもよく、m及びnは正の整数で、かつ2≦m+n≦50である。]、−SiR[(−O−SiHR−)m −R][−(−O−SiHR−)n R]
[式中、R、m及びnは上記と同じである。]
−SiR[(−O−SiHR−)m −(−O−SiR2 −)p R][(−O−SiHR−)n −(−O−SiR2 −)q R]
[式中、Rは上記と同じ、mは正の整数、n、p及びqは0又は正の整数で、かつ1≦m+n+p+q≦50である。]
【0014】
【化1】


[式中、Rは上記と同じ、mは正の整数、nは0又は正の整数で、かつ2≦m+n≦50である。]等で示される鎖状、枝分れ状、環状の各種の多価ハイドロジェンシロキサンから誘導された基等が挙げられる。
【0015】これらの各種のヒドロシリル基のうち、本発明のヒドロシリル基含有化合物の(A)成分に対する相溶性を損なう可能性が少ないという点から、ヒドロシリル基を構成する基の部分の分子量は500以下であることが望ましく、更にヒドロシリル基の反応性も考慮すると、次に挙げる基が好ましい。
【0016】
【化2】


[式中、pは正の整数、qは0又は正の整数で、かつ2≦p+q≦4である。]
【0017】
【化3】


【0018】本発明の(B)成分化合物において、同一分子中にヒドロシリル基含有基が2個以上存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。(B)成分中に含まれるトータルのヒドロシリル基の個数については、少なくとも1分子中に2個あればよいが、2〜15個であることが好ましく、3〜12個であることが特に好ましい。本発明のヒドロシリル基含有化合物[(B)成分]をヒドロシリル化触媒の存在下で、アルケニル基を有する重合体[(A)成分]と混合してヒドロシリル化反応によって硬化させる場合には、該ヒドロシリル基の個数が2より少ないと硬化不良を起こす場合が多い。また、該ヒドロシリル基の個数が15より多くなると(B)成分の安定性が悪くなり、そのうえ硬化後も多量のヒドロシリル基が硬化物中に残存して、ボイドやクラックの原因となる。
【0019】本発明の(B)成分のヒドロシリル基含有化合物としては特に制限はないが、低分子量のものから重合体に至る各種の化合物を用いることができる。これらを具体的に例示する。式(VI)
【0020】
【化4】


【0021】[式中、Xは上記のヒドロシリル基を1個以上有する基であり、R1 、R2 及びR3 は式(II)におけるR1 、R2 及びR3 とそれぞれ同じで、aは整数である。]で表わされるエーテル結合を有する化合物、式(VII)
【0022】
【化5】


【0023】[式中、Xは上記のヒドロシリル基を1個以上有する基であり、R1 、R2 及びR4 は式(III)におけるR1 、R2 及びR4 とそれぞれ同じで、aは整数である。]で表わされるエステル結合を有する化合物、式(VIII)
【0024】
【化6】


【0025】[式中、Xは上記のヒドロシリル基を1個以上有する基であり、R1 及びR5 は式(III)におけるR1 及びR5 とそれぞれ同じで、aは整数である。]で表わされる炭化水素系の化合物、式(IX)
【0026】
【化7】


【0027】[式中、Xは上記のヒドロシリル基を1個以上有する基であり、R1 、R2 及びR6 は式(V)におけるR1 、R2 及びR6 とそれぞれ同じで、aは整数である。]で表わされるカーボネート結合を有する化合物を挙げることができる。
【0028】本発明の(B)成分として有機重合体を用いる場合、重合体は線状でも枝分れ状でもよく、分子量は500〜50,000の任意のものが好適に使用できるが、500〜20,000のものが特に好ましい。(B)成分に含まれるヒドロシリル基は分子末端にあっても分子中にあっても良いが、本発明の組成物を用いてゴム状硬化物を作製する場合には、分子末端にある方が有効網目鎖長が長くなるので好ましい。
【0029】本発明の(B)成分化合物の製造方法としては特に制限はなく、任意の方法を用いることができる。例えば、 (i)分子内にSi−Cl基を持つ有機化合物をLiAlH4 、NaBH4 等の還元剤で処理して該化合物のSi−Cl基をSi−H基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基Xを持つ有機化合物と分子内に上記官能基と反応する官能基Y及びヒドロシリル基を同時に持つ化合物とを反応させる方法、 (iii)アルケニル基を持つ有機化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基を持つポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することによって反応後もヒドロシリル基を該化合物の分子中に残存させる方法等が考えられる。このうち (iii)の方法が特に好ましい。
【0030】本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の単体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2 =CH2 2 (PPh3 2 Pt(CH2 =CH2 2 Cl2 )、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Ptn (ViMe2 SiOSiMe2 Vi)m 、Pt[(MeViSiO)4 m )、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3 4 、Pt(PBu3 4 )、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3 4 )、[式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、m、nは整数を表す]、ジカルボニルジクロロ白金、またアシュビー(Ashby) の米国特許第 3,159,601号及び 3,159,662号明細書に記載された白金−炭化水素複合体、並びにラモロー(Lamoreaux) の米国特許第 3,220,972号明細書に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。更に、モディック(Modic) の米国特許第 3,516,946号明細書に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0031】また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3 3 、RhCl3 、RhAl2 3 、RuCl3 、IrCl3 、FeCl3 、AlCl3 、PdCl2 ・2H2 O、NiCl2 ,TiCl4 等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用しても良く、2種以上併用することもできる。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アセチルアセトネート錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。
【0032】本発明の(C)成分である触媒の量としては、特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、10-1〜10-8モルの範囲で用いるのが良い。好ましくは10-3〜10-6モルの範囲で用いるのが良い。10-8モルより少ないと硬化が十分に進行しない。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスが大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10-1モル以上用いないほうが良い。
【0033】本発明においては、貴金属触媒を用いた、アルケニル基に対するSi−H基の付加反応によって硬化性組成物が硬化するので、硬化速度が非常に速く、ライン生産を行う上で好都合である。
【0034】本発明の(D)成分であるシリカ微粉末としては、珪酸ソーダの加水分解による湿式製造法等から得られる含水シリカ、及び四塩化珪素等のハロゲン化珪素あるいは有機珪素化合物の熱分解による乾式製造法等から得られる無水シリカを用いることができる。含水シリカとしては、例えば、日本シリカ工業(株)のニップシールVN3、ニップシールAQ、ニップシールLP、ニップシールER、ニップシールNS、ニップシールNS−T、ニップシールNA、ニップシールL300、ニップシールN300A、ニップシールE、Monsanto社のSantocel FRC、Santocel CS 、PPG Ind社のHi-Sil 233、Hi-Sil X-303、Philadelphia Quarts 社のQuso F-20 等が挙げられる。
【0035】無水シリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)のアエロジル130 、アエロジル200 、アエロジル200V、アエロジル200CF 、アエロジル300 、アエロジル300CF 、アエロジル380 、アエロジルOX50、アエロジルTT600 、アエロジルMOX80 、アエロジルMOX170、アエロジルCOK84 、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR202、アエロジルR805、アエロジルR812、Cobot 社のCab-O-Sil MS-5、Cab-O-Sil MS-7、Cab-O-Sil HS-5、Cab-O-Sil HS-7等が挙げられる。
【0036】これらのうちでは、組成物に水分が多く含まれると硬化反応時に副反応等が起こる可能性があるため、無水シリカが特に好ましい。更に、無水シリカの表面を疎水処理したもの(例えば、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR202、アエロジルR805、アエロジルR812等)が、射出成形に適した流動性を発現し易いため特に好ましい。
【0037】シリカ微粉末の添加量は、射出成形に適した粘度を調整するため、(A)成分100重量部に対して1〜100重量部であることが好ましく、10〜60重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎると充分な強度が得られなくなるおそれがあり、また粘度が低くなり過ぎて射出成形できなくなるおそれがある。また、添加量が多過ぎると粘度の上昇が大きく射出成形できなくなるおそれがある。
【0038】本発明組成物が射出成形に適したものであるために、その粘度が、剪断速度1000L/秒において200〜20,000ポイズであることが好ましく、更に500〜5,000ポイズであることが特に好ましい。組成物の粘度を、この範囲に調整するためにはシリカ微粉末の添加量によって調整することができる。
【0039】本発明の(E)成分である貯蔵安定性改良剤は、本組成物の貯蔵安定性を改良するために添加するものであり、(B)成分の貯蔵安定剤として知られている通常の安定剤で所期の目的を達成するものであれば良く、特に限定されるものではない。具体的には、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機燐化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、錫系化合物、有機過酸化物等を好適に用いることができる。具体的には、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、2-ペンテンニトリル、2,3-ジクロロプロペン等が挙げられ、特にポットライフ/速硬化性の両立という点でチアゾール、ベンゾチアゾールが好ましいが、これらに限定されるわけではない。貯蔵安定性改良剤の使用量は、(A)成分及び(B)成分に均一に分散する限りにおいてほぼ任意に選ぶことができるが、(B)成分のSi−H基含有化合物1モルに対し、10-6〜10-1モルの範囲で用いることが好ましい。この量が10-6未満では(B)成分の貯蔵安定性が充分に改良されず、また10-1モルを超えると硬化を阻害することがあるからである。貯蔵安定性改良剤は単独で用いても、また2種以上を混合して用いても良い。
【0040】更に、本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、その他の充填剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤等を適宜添加することができる。この充填剤の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、珪藻土、硫酸バリウム、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0041】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明組成物を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例1この例では、特開昭 53-134095号公報に開示された方法に従って、末端にアリル型オレフィン基を有するポリオキシプロピレンを合成した。
【0042】平均分子量3000のポリオキシプロピレングリコールと粉末苛性ソーダを60℃で撹拌し、ブロモクロロメタンを加えて反応を行い、分子量を増大させた。次に、アリルクロライドを加えて、110℃で末端をアリルエーテル化した。これを珪酸アルミニウムで処理して、精製末端アリルエーテル化ポリオキシプロピレンを合成した。
【0043】このポリエーテルの数平均分子量は7960であり、沃素価から末端の92%がオレフィン基であった。E型粘度計による粘度は130ポイズ(40℃)であった。
合成例2
【0044】200mLの4つ口フラスコに3方コック付冷却管を、均圧滴下漏斗、温度計、マグネチック・チップ、ガラスストッパーを取付けたものを用意した。窒素雰囲気下で、次の式
【0045】
【化8】


【0046】で表わされる環状ポリハイドロジェンシロキサン(信越化学株式会社製、 LS 8600)の12.30g(50ミリモル)及びトルエン20mLをフラスコ内に仕込んだ。1,9-デカジエン2.76g(20ミリモル)、塩化白金酸触媒溶液(H2 PtCl6 ・6H2 Oの1gをエタノール1g及び1,2-ジメトキシエタン9gに溶かした溶液)20μL をトルエン30mLに溶解したものを滴下漏斗内へ仕込んだ。フラスコを50℃のオイルバスにつけ、窒素雰囲気下で該トルエン溶液をフラスコ内へ2時間かけて滴下した。滴下終了後50℃で更に1時間反応させた時点で、IRスペクトルを測定したところ、1640cm-1付近のオレフィンの吸収が完全に消失していたので、この時点で反応を終了した。反応が終了した該トルエン溶液を塩化アンモニウム飽和水溶液(100mL×2)、イオン交換水(100mL×1)で洗浄後、Na2 SO4 で乾燥した。Na2 SO4 を濾過して取り除き、ベンゾチアゾール(13μL 、0.12ミリモル)を加え、揮発分をエバポレートして除去後、80℃で減圧脱気することにより、9.11gの無色透明の液体を得た。該炭化水素系化合物中のヒドロシリル基は2170cm-1の強い吸収として確認された。また、300MHzのNMRでSi−とSi−C3 とのプロトンの強度比(実測値=0.216)と計算状の強度比とを比較することによって、該化合物は平均して次の構造式
【0047】
【化9】


【0048】を有する混合物[n=1(MW=998)が53%、n=2(MW=1377)が47%]であることが判った。これをもとに単位重量中のSi−H基の数を計算すると0.769モル/100gであった。
合成例3
【0049】ビスフェノールA114g(0.5モル)、5N水酸化ナトリウム水溶液250mL(1.25モル)及びイオン交換水575mLをよく混合した。次に、相間移動触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド
【0050】
【化10】


【0051】の7.78g(25ミリモル)を加えた。該水溶液にアリルブロマイド242g(2.0モル)をトルエン300mLに溶解した溶液を、滴下漏斗から徐々に滴下した。80℃で2時間撹拌しながら反応させた。この時点で水層の pHを測定すると酸性になっていたので、加熱撹拌を止めた。重曹水で有機層を洗浄した後、更にイオン交換水で洗浄し、Na2 SO4 で乾燥した。エバポレーションによって揮発分を除去後、80℃で2時間減圧乾燥することにより、淡黄色の粘稠な液体146g(収率95%)を得た。この粘稠な液体は、元素分析、300MHz1H−NMR、IRスペクトル等の同定により、ビスフェノールAのジアリルエーテルであることが確認された。
【0052】IR(neat)cm-1、3070(m,ν=C−H)、3030(m)、2960(s)、2920(s)、(ν=C−H)、1645(m,ν=C−H)、1620(s)、1520(s)、1290(s)、1235(s)、1180(s)、1025(s)、1000(s)、920(s)、825(s)
元素分析:計算値 C:81.78%、 H:7.84%実測値 C:81.9 %、 H:7.96%合成例4撹拌棒、滴下漏斗、温度計、3方コック、冷却管を備え付けた200mLの4つ口フラスコを準備した。次に、窒素雰囲気下で次の式
【0053】
【化11】


【0054】で表わされる環状ハイドロジェンポリシロキサン(信越化学株式会社製、 LS 8600)の12.03g(50ミリモル)及びトルエン20mLをフラスコ内に仕込んだ。合成例3で合成したビスフェノールAジアリルエーテル6.16g(20ミリモル)、塩化白金酸触媒溶液(H2 PtCl6 ・6H2 Oの1.0gをエタノール/1,2-ジメトキシエタン(1/9v/v)9gに溶解したもの)41μL をトルエン50mLに溶解し、よく混合した後、滴下漏斗内へ仕込んだ。70℃で該トルエン溶液をフラスコ内に1.5時間かけて滴下した。更に80℃で5時間反応させた時点で、IRスペクトルを取ったところ1645cm-1付近のオレフィンに由来する吸収が完全に消失していたので、この時点で反応を終了した。反応混合物にジメチルアセチレンジカルボキシレート(34μL 、0.24ミリモル)を添加した後、トルエンを減圧留去後、80℃で1時間減圧乾燥することにより12.0gの淡黄色の粘稠な液体が得られた。この粘稠な液体は、300MHz1H−NMR、IRスペクトル等の同定により、次の構造式
【0055】
【化12】


を有するSi−H基含有エーテル系化合物であることが判った。Si−H基の数を計算すると0.52モル/100gであった。
合成例5200mLの4つ口フラスコに、3方コック付冷却管、均圧滴下漏斗、温度計、回転子、ガラスストッパーを取付けたものを用意した。窒素雰囲気下、次の式
【0056】
【化13】


【0057】で表わされる環状ハイドロジェンポリシロキサン(信越化学株式会社製、 LS 8600)の12.03g(50ミリモル)及びトルエン20mLをフラスコ内に仕込んだ。次の式
【0058】
【化14】


【0059】で表わされるジエチレングリコールジアリルカーボネート(三井石油化学株式会社製、 RAV-7N )5.49g(20ミリモル)、塩化白金酸触媒溶液(H2 PtCl6 ・6H2 Oの1.0gをエタノール/1,2-ジメトキシエタン(1/9v/v)9gに溶解したもの)41μL をトルエン50mLに溶解したものを滴下漏斗内に仕込んだ。フラスコを50℃のオイルバスにつけ、窒素雰囲気下で該トルエン溶液をフラスコ内へ1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、IRスペクトルを測定したところ、1640cm-1付近のオレフィンの吸収が完全に消失していたので、この時点で撹拌を終了した。反応混合物にジメチルアセチレンジアリルカルボキシレート(34μL 、0.24ミリモル)を添加した後、エバポレートして揮発分を除去することにより、少し粘稠な淡黄色液体10.2gを得た。該カーボネート系化合物のヒドロシリル基はIRスペクトルで2170cm-1の強い吸収として確認された。また、300MHzのNMRでSi−とSi−C3 とのプロトンの強度比(実測値=0.181)と計算状の強度比とを比較することによって、該化合物は平均して次の構造式
【0060】
【化15】


を有することが判った。これをもとに単位重量中のSi−H基の数を計算すると0.47モル/100gであった。
実施例1〜7、比較例
【0061】合成例1で得た有機重合体、合成例2、4又は5で得られたSi−H基含有化合物、シリカ微粉末(日本アエロジル(株)製)、貯蔵安定性改良剤、酸化防止剤(イルガノックス1010)及び触媒として塩化白金酸触媒溶液(H2 PtCl6・6H2 Oの1.0gをエタノール/1,2-ジメトキシエタン(1/9v/v)99gに溶解したもの)を表−1に示すように計量し、混合してサンプルを調製した。
【0062】名機製作所製の射出成形機(M−32型)を使用し、金型はJIS K6301ダンベル3号型のものを用いた。スクリューの回転速度は50 rpmとし、温度は23〜30℃に制御した。金型温度は120℃として10分間ホールドで成形物を得た。得られた成形物のダンベル引張り特性(測定はJIS K6301に準じた)、硬さを測定した。また、硬化前のサンプルの流動特性に関し高化式不ローにより剪断速度1000L/秒における粘度を測定した。これらの結果は、表−2に示す通りである。なお、比較例においては、射出成形時の粘度が低過ぎるためスクリューによる押出しができず、別途、金型を使用して注形法により硬化物を得て、その硬化物について測定したものである。
【0063】
【表1】


【0064】
【表2】


以上の結果を検討すると、本発明の硬化性組成物は、充分な機械的特性を有する硬化物を提供すると共に、射出成形に適していることが判った。
【0065】
【発明の効果】本発明の硬化性組成物は、充分な機械的特性を有する硬化物を提供できると共に、射出成形に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)シリカ微粉末、及び(E)貯蔵安定性改良剤を主成分とする射出成形用硬化性組成物。
【請求項2】 該硬化性組成物の粘度が剪断速度1000L/秒において200〜20,000である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体の数平均分子量が、500〜50,000である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】 シリカ微粉末が無水シリカである請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】 貯蔵安定性改良剤がジメチルマレート、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、2-ペンテンニトリル、ベンゾチアゾール、チアゾール、2,3-ジクロロプロペン、キノリンの少なくとも1種である請求項1に記載の硬化性組成物。