説明

射撃訓練装置

【課題】訓練の繰り返しによっても馴れが生じにくく、複雑で高度な射撃訓練ができる射撃訓練装置を提供する。
【解決手段】隠顕動作可能な標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、前記標的を搭載する台車1と、台車1に搭載された台車1及び標的2を動作させるための電源供給用の充電可能なバッテリー14と、台車1が走行する移動用軌道33と、台車1及び標的2の運行、動作を制御するためのコンピューター20と、台車1に設置され、コンピューター20との間で信号を送受信し、台車1及び標的2の運行、動作を制御する制御部12と、コンピュータ20と接続され移動用軌道33に設置されるアンテナ51とを備え、制御部12とコンピューター20との通信を無線回線にて接続し、台車1がコンピュータ20の制御により前後、左右及び斜方に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射撃訓練装置に関し、例えば警察官や自衛官の実弾射撃訓練のために使用される射撃訓練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
標的台車に標的支柱を介して標的を取り付け、標的台車が移動用軌道にそって、射撃手に対して往復運動(前後移動)する射撃訓練装置は、特許文献1に示されている。
【0003】
また、標的が射撃手に対し直線的に移動、または二次元的にジグザグ状または蛇行状に移動する射撃訓練装置が、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平9−318299号公報
【特許文献2】特開平11−101597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、射撃訓練において標的が前後方向または左右方向の一方向にのみ移動もしくは、蛇行している移動用軌道に沿ってのみ移動するだけなので、標的の動きが単調になる、もしくは射撃手が軌道の蛇行パターンを覚えてしまい、実践的な射撃訓練ができないという課題があった。
【0005】
また別の課題として、標的を搭載した台車と射撃訓練システム本体のコンピューター側との信号の送受信は有線回線を用いて行っていたため、有線回線が邪魔をして台車が射撃手に対して前後、左右及び斜方に自由に動くことができない構造になっていた。
【0006】
本発明は、従来の課題を解決するもので、射撃訓練において、標的が前後、左右及び斜方の複雑なパターンで移動することにより高度な射撃訓練を行う射撃訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の課題を解決するために、隠顕動作可能な標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、前記標的を搭載する台車と、前記台車に搭載された前記台車及び前記標的を動作させるための電源供給用の充電可能なバッテリーと、前記台車が走行する移動用軌道と、前記台車及び前記標的の運行、動作を制御するためのコンピューターと、
前記台車に設置され、前記コンピューターとの間で信号を送受信し、前記台車及び前記標的の運行、動作を制御する制御部と、前記コンピュータと接続され前記移動用軌道に設置されるアンテナと、を備え、前記制御部と前記コンピューターとの通信を無線回線にて接続し、前記台車が前記コンピュータの制御により前後、左右及び斜方に移動することを特徴としたものである。
【0008】
また、本発明は、隠顕動作可能な標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、前記標的を搭載する台車と、前記台車下部に設けられ、床下の移動用軌道の下面を走行する走行車輪と、前記台車側面部に設けられ、床下の移動用軌道の側面に接して走行する誘導車輪と、前記台車がコーナー部を走行するとき前記誘導車輪を圧接させる誘導レールと、前記台車及び前記標的の運行、動作を制御するためのコンピューターと、前記台車は、該台車の走行を制御する制御部と前記コンピューターと通信を行う通信部と充電可能なバッテリーとを有し、前記コンピューターにより、前記標的の隠顕動作、前後移動、左右移動及び斜方移動を制御することを特徴としたものである。
【0009】
また、本発明は、隠顕動作可能な標的と、該標的を搭載する台車と、該台車が走行する移動用軌道とを備え、前記標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、前記移動用軌道は、該移動用軌道側面にコーナー部を案内走行するための誘導レールを有し、前記台車は、前記移動用軌道下面を走行する走行車輪とコーナー部を曲がる際前記誘導レールに圧接して走行する誘導車輪を有することを特徴としたものである。
【0010】
また、本発明は、隠顕動作可能な標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、前記標的を搭載する台車と、前記台車下部に設けられ、床下の移動用軌道の下面を走行する走行車輪と、前記台車側面部に設けられ、床下の移動用軌道の側面に接して走行する誘導車輪と、前記台車がコーナー部を走行するとき前記誘導車輪を圧接させる誘導レールと、前記台車の走行を管理する管理PCと、を備え、前記台車は、該台車の走行を制御する制御部と前記管理PCと通信を行う通信部と充電可能なバッテリとを有し、前記管理PCにより、前記標的の隠顕動作、前後移動、左右移動及び斜方移動を制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の射撃訓練システムによれば、標的が前後左右方向に複雑なパターンで移動することにより高度な射撃訓練が行うことができるほか、標的を搭載した台車と射撃訓練システムのコンピューターとの通信に無線回線を用いると、メンテナンス性に優れた射撃訓練システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の射撃訓練装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例における射撃訓練システムの台車及び標的についての断面図であり、台車の進行方向に対しての断面図を示すものである。
【0014】
図1において、両側及び下面をコンクリートスラブ15で覆われ、上面を床板16で覆われている移動用軌道33の内部を台車1が走行する。標的2は標的支柱3によって固定
されており、標的支柱3は、台車1に搭載の隠顕動作用モーター32までつながり隠顕動作を行う。また標的支柱3は標的支持部4でささえられており、標的2がぶれることを防いでいる。また標的支持部4は台車1に固定されている。
【0015】
標的支柱3と標的支持部4との関係をわかりやすく説明すると、標的支柱3は標的支持部4の中では図示省略のベアリングでささえられており、標的支持部4が動かない状態であっても、台車1に搭載の隠顕動作用電動機32の動きと連動して、動く(回転する)構造になっている。
【0016】
台車1の隠顕動作用モーター32を台車1の移動中、停止中にかかわらず動作させ、標的2を回転させることにより射撃手23に対して見えたり、隠れたりする隠顕動作をさせることができる。標的支持部4は隠顕動作用モーター32と直接接続されていないので、隠顕動作中であっても動くことはない。
【0017】
図4は、標的2の隠顕動作の説明を示した図であり、射撃手23から見た状態を表している。ここで、図4の(a)位置は、射撃手23に対して標的2が見える状態であり、(a)の位置に対して90°だけ回転している状態である(c)位置は、射撃手に対して標的が隠れている状態を表す。(b)位置は、(a)⇒(c)、(c)⇒(a)の位置に回転する途中の状態を示している。
【0018】
台車1には走行車輪5が付いており、走行車輪5を走行モーター13の動力により回転することで移動用軌道33の下面(地面)上を走行できる構造になっている。
【0019】
また台車1の左右に誘導車輪支持部9があり、誘導車輪支持部9の先端に誘導車輪6が付いている。誘導車輪6は前記移動用軌道の側面のコンクリートスラブ15を押さえて、台車1が安定して直進するようにしている。誘導車輪6は、コーナー部31で曲がるとき、左右どちらかの誘導車輪支持部9が上昇すると、コーナー誘導レール10の内面に接触しながらコーナーを進行することになり、コーナー誘導レール10に沿って台車1がコーナーを曲がって走行することになる。
【0020】
一方直進する場合には、左右両方の誘導車輪支持部9を下げておくことにより、左右の誘導車輪6はコーナー誘導レール10の下側を通過して、走行方向を変更することなくそのまま直進することになる。
【0021】
図2は、射撃場を天面から見た図であり、移動用軌道33が射撃方向に対して前後、左右及び斜方に設置されている。射撃方向に対して前進(射撃手23に向かっての移動)は26の方向、後退(射撃手23から遠ざかる方向への移動)は25の方向、射撃方向と垂直な方向で射撃手から見て左への移動は28の方向、右への移動は27の方向で示されている。射撃手23に対して斜方の移動は、例えば41、42の方向で示される。射撃手23に対して移動用軌道33の斜方の移動は、前後の方向(25−26の方向)、左右の方向(27−28の方向)に対して、それぞれコーナー部31での交わりの角度はいくらであってもよい。但し後述のように台車1がコーナー部31で曲がれる角度には制限がある。
【0022】
1つの移動用軌道33が他の移動用軌道33と交わる31はコーナー部であり、図3に拡大したコーナー部31を示すもので、床板16を省略して示した図である。
【0023】
図3を用いてコーナーでの台車1の走行動作について説明する。台車1の進行方向を変えるには、コーナー部への進入時(a位置)において左右どちらかの誘導車輪支持部9を上昇させる。図1の誘導車輪6とコーナー誘導レール10の位置関係を参照することでわかるように、右曲がりの時は、右側の誘導車輪6はコーナー誘導レール10の内側に入り込んで、コーナー誘導レール10の内面に沿って誘導(b位置)され台車1の走行方向をを右方向に曲げて方向変更し右方向へ(c位置)走行する。(a位置)から(c位置)までの射撃手23からの標的2の見え方は、標的2を台車1に固定したままだと図4のようになり、標的2が隠れてしまうことになる。そこで、コーナーを進むに応じて隠顕動作用モーター33をコーナー31での台車の1回転角度と標的2が常に射撃手に対して同じ状態を示すように同期して回転する。すなわち、標的2の方向は、台車1が図3の(a)、(b)、(c)位置に関わりなく、図5のように射撃手23に対して標的2の向きを一定に保つことになり、前後動作から左右動作に変化する動きでの射撃訓練が行える。
【0024】
またこれとは別に、コーナー部31で台車1が進行方向を変えるときに標的2が隠顕動作するようにすることもできる。
【0025】
この図5の場合の例は、前述のコーナー部31で台車1が進行方向を変えるとき、射撃手23に対して標的2の方向が常に同一の状態を示す場合であり、台車1がコーナー部31で回転する角度と、標的2が射撃手23に対して隠顕動作をするよう標的2の回転動作を同期させるようコンピューター20が制御を行う。即ち、コンピューター20が台車1に搭載の隠顕動作用モーター32に制御指令を出すことで、台車1がコーナー部31を回転するときにも自然な状態で隠顕動作を行うことが可能である。
【0026】
コーナー部31での台車1が進行方向を変える場合には条件があり、36の進行方向変えの場合、コーナー部31で台車1の回転角度は90°であり、曲がることができる構造になっている。すなわち、コーナー誘導レール10が設置されている。
【0027】
ここで補足であるが、コーナー部31での台車1の回転角度は、あくまでも台車の進行方向に対しどれだけの角度で回転したかを表しているのである。例えば36の進行方向変えの場合、台車1が26の方向に進行していて、28の方向に進行方向を変えた場合、台車の進行方向は90°回転したわけであるので、回転角度は90°ということになる。説明の為だけに話をするが、仮にコーナー部31で進行方向が25−26の方向で逆になるのであれば、180°の回転ということになるが、現実的はこのようなことはありえない。
【0028】
37の進行方向変えの場合、コーナー部31での台車1の回転角度は90°未満であり、曲がることができる構造になっている。すなわち、コーナー誘導レール10が設置されている。
【0029】
38の進行方向変えの場合、コーナー部31での台車1の回転角度は90°を超えており、台車1の曲がるときに支障が出るので、曲がれない構造になっている。すなわち、コーナー誘導レール10が設置されていない。
【0030】
以上のコーナー部31での台車1の進行方向の変更について、台車1の回転角度が90°以下であれば曲がることができ(36、37の例)、台車1の回転角度が90°を超える場合、曲がれない構造になっている。(38の例)
38の例のように台車1の回転角度が90°を超える場合、回転できない構造になっているのは、物理的にはコーナー誘導レール10を設置していないことによるが、コーナー誘導レール10を設置していない理由は、台車1に設置している誘導車輪6の台車1の前と後の誘導車輪の間隔によって、コーナー誘導レール10に沿って回転できなくなることがあるため、回転角度が90°の点で区切って、90°を超える場合回転できない構成にしている。
【0031】
標的2を隠顕動作させるための隠顕動作用モーター32、台車1を走行させる走行モーター13及び制御部12の電力については、移動用軌道33に設置された集電レール7から供給を受ける方式の他、台車1にバッテリー14を設置して電源供給を受ける方式及び前記2つの方式を併用した方式がある。ここでは各々の方式について詳細に説明をする。
【0032】
まず、集電レール7から集電を受ける方式を説明する。台車1には集電端子8が、台車1の進行方向に対し左右方向に1以上具備しており、集電レール7より、集電端子8を経由して台車1で消費する電力を供給する仕組みになっている。集電端子8は複数具備することにより、台車1の走行中に接触不良等で集電不良になることを防ぐことができる。また、集電端子8は、台車1の左右両方に具備することにより、コーナーを曲がる途中で片方の集電端子8が集電レール7から離れても、もう片方の集電端子8より電力の供給を得られる。また集電レール7は全ての移動用軌道33で両側に設けられていて、コーナー部31においてはコーナー誘導レール10に沿って設置されている。
【0033】
また、集電レール7から集電を受けると共に、バッテリー14を搭載している方式は、前述のように台車1は常に集電レール7によって常に電力の供給を受けているが、接触不良、その他の予期せぬ理由によって電力が供給されなくなることも推定される。このような場合にも対処し得るもので、台車1に搭載されているバッテリー14により電力の供給を受けて運転できる構成になっている。台車1が集電レール7から集電端子8により集電できる状態になったときには、バッテリー14からの電源供給は中止され、集電レール7からの電源供給となる。
【0034】
そして、バッテリー14からのみ電源供給を受ける方式は、集電レール7を用いる方式では、移動用軌道33に集電レール7を設置する必要があるほか、台車1にも集電端子8を設置する必要があり、工事が大掛かりで高価になるので、バッテリー駆動方式とするものである。この方式では、台車1にはバッテリー14を搭載して、台車1の走行モーター13、標的2を隠顕動作させる隠顕動作用モーター32及び制御部12の電源に利用する。台車1には集電端子8は取り付けず、移動用軌道33には集電用レールを一切取り付けないことにより、構造が簡潔になり、工期も短くて済み、工費も安く上がるという利点がある。
【0035】
バッテリー14から電源供給を受ける方式の場合、長時間駆動のためにはバッテリー14の容量が大容量になり、容積も大きくなり、重量も重くなるという欠点がある。この欠点を補うために移動用軌道33の任意の場所に、図示省略の充電器を設置しておき、適宜台車1が充電器のある場所で、図示省略の台車1の充電部によりバッテリー14の充電を行うことができる方式になっている。
【0036】
台車1には、制御部12、通信部11が具備されており、通信部11は図2のコンピューター20からの通信を受信して制御部12へコンピューター20からの指示を伝える。制御部12は、コンピューター20の指示に従って台車1の制御を行い、走行動作や標的2の隠顕動作を行う。制御部12と通信部11を独立して記載しているが、制御部12の中に通信部を含める構成も当然可能である。
【0037】
図1、図2に示すように、移動用軌道33内には、複数の小型の通信アンテナ51が設置されており、コンピューター20と有線回線或いは無線回線で接続されている。通信アンテナ51は台車1の通信部11と有線回線を使わない方式、すなわち無線方式で通信を行う構造になっている。ここでの無線方式は、PHS方式、FM方式等、適切なものであればどのような方式のものを用いてもよい。
【0038】
もちろん、線処理の問題があるが、有線で接続する有線回線を使用して構成することも、可能である。
【0039】
アンテナ51と移動する台車1の通信部11との間を無線にしているが、更に、コンピュータ20とアンテナ51間も無線で接続する構成にして、配線工事やその後の配線の変更をなくして融通性を高めることができる。
【0040】
なお、移動用軌道33内に複数個設置された通信アンテナ51は、無線で用いる電波の指向性を考慮して、どの台車1がどこにあっても通信アンテナ51と通信部11間の電波が遮られて通信に不具合が発生しないように(コンクリートスラブ15が通信アンテナ51と通信部11間の電波の遮蔽物にならないように)その設置位置が考慮されている。
【0041】
通信アンテナ51の移動用軌道33への設置場所については、図1に示すように床板16の下に設置してあり、直接弾丸17が命中しない場所に設置してある。
【0042】
また、各々の台車1の通信部11と通信アンテナ51との間の無線による通信においては、各々の台車1ごとに異なる周波数の電波が割り当てられており、他の台車1との混信による台車1及び標的2の誤動作を防ぐ仕組みになっている。
【0043】
無線方式にすると、台車1の移動を、図2に示す軌道上にて自由な方向で制御できる。通信部11とアンテナ51間を有線方式で接続すると、台車1の移動が有線での配線により制限される場合も発生する。従って、コンピュータ20が制御する台車1の移動に係る制御パターンの自由度を向上でき、種々の制御パターンにて射撃訓練ができる。
【0044】
バッテリー14から電力の供給を受ける方式の場合、台車1にはバッテリー14が搭載されており、バッテリー14からの電力の供給を受けることで、台車1の移動、標的2の隠顕動作及びコンピューター20との通信ができるようになっている。バッテリー14の充電残量が無くなれば、台車1は移動することができなくなり、標的2についても隠顕動作を行うことができなくなるので、バッテリー14の充電残量が少なくなって来た場合には、コンピューター20にその情報を送信し、表示装置52で射撃手23が確認できる仕組みになっている。また、台車1に生じた不具合についても台車1の制御部12で認識を行い不具合箇所の情報をコンピューター20に送信し、表示装置52で射撃手23が確認できる構造になっている。
【0045】
射撃訓練時に射撃手23が所持している拳銃22より発射した図示省略の弾丸は、図2において射撃方向で射場の外側にある図示省略の防弾板で吸収するほか、標的2でも吸収される。一方、標的2においては吸収されず兆弾して移動用軌道33に落ち込んだり、床板16の上に落ちたり、その他で兆弾して同様に落ち込んだり、床板16の上に散乱したりする。技能が未熟な射撃手23の場合には、直接移動用軌道33に弾丸17を打ち込む可能性がある。
【0046】
床板16の上に散乱した弾丸17は台車1の走行上直接影響はないが、移動用軌道33の底面に散乱した弾丸17は台車1が走行時に走行車輪5で踏むことになり、それによって標的2が揺れるなどの動作が起こり、安定したレベルでの射撃訓練ができなくなる。
【0047】
このため定期的に移動用軌道33の底面に散乱した弾丸17を回収する必要があり、人が移動用軌道33内に入って回収作業をするのは大変な作業になるため、台車1の底面には弾丸吸引機18及び吸引口43が具備されており、移動用軌道33の底面に散乱した弾丸17を回収することができる構造になっている。
【0048】
弾丸吸引機18は電気的に強力な磁界を発生させることができる構造になっており、台車1が移動用軌道33内を走行中に弾丸17を磁力の力で吸い付けることができる構造になっている。磁界は電気的なものであるので、入、切ができる構造になっており、射撃訓練の終了後、台車1を図2の最も射撃手23側の移動用軌道33に移動させ、そこで電気を切ることで磁界をなくし、弾丸17を落とし人が回収することができる。
【0049】
また吸引口43は、強力なエアーで吸引することで、散乱した弾丸17を回収し台車の中に貯めておき、射撃訓練の終了時に同様に台車1を図2の最も射撃手23側の移動用軌道33に移動させ、そこで弾丸17を人が回収することができる。
【0050】
射撃訓練で使用した弾丸17を回収することは、メンテナンスや清掃のためには行われなければならない作業であり、これを自動で行えることはメンテナンスにおいて効率がよい。
【0051】
コンピューター20は、あらかじめ登録された射撃訓練パターンに沿って台車1を運行制御する。
【0052】
ここでいう射撃訓練パターンとは、台車1の移動及び隠顕動作について一連の動きを予めコンピューター20に記憶しておき、射撃訓練時にランダムに射撃訓練パターンを呼び出し、それに応じて台車1の移動及び隠顕動作を行うものである。
【0053】
射撃訓練パターンを複数(例えば100個程度)用意しておく理由は、射撃手23が台車1の移動のパターン及び標的2の隠顕動作のパターンを覚えてしまい、真剣な射撃訓練にならないことが懸念される他、射撃手の技能の度合いに応じて、台車1の移動速度、移動の複雑さ、隠顕動作の頻繁度合いが異なる射撃パターンで訓練を行うことにより、射撃手の技能の向上にもつながる。
【0054】
以上射撃訓練パターンをまとめると、射撃手の技能の度合いに応じて、10段階程度のレベルがあり、また同じレベルの中でも10種類程度の異なる移動、隠顕のパターンが記憶されており、同じレベルの中では、ランダムに射撃訓練パターンが選択され、射撃手23にはどの射撃訓練パターンが当るかわからない仕組みになっており、より実戦に即した射撃訓練が可能な構造になっている。
【0055】
また別の仕様として、射撃手23がどこで標的2が見える状態になるかを確認するために、コンピューター20で選んだパターンの動きを表示装置52で事前に確認することができ、射撃手23は標的2がどこで、どのタイミングで見える状態になるかを把握した上で、射撃訓練に臨むことができるようになっている。
【0056】
図2において、複数の台車1が走行する場合は、台車1同士の衝突を防ぐ必要がある。台車1の存在する位置を検知しながら運行制御するために各コーナーからコーナーの区間の両端に検知器30を設置して台車1が検知エリア29に存在しているか否かを検知する。台車1が検知エリア29に入るときと出るときに検知器30で検知され、検知エリア29内に存在することを管理PCで記憶しておき、他の台車1が台車1の存在する検知エリア29に進入しないように運行制御する。
【0057】
もし、同じ検知エリア29に入る可能性がある場合には、管理PC20より各台車1へ移動方向を切り替えたり、停止させるなどの指示を出して衝突を防止する。
【0058】
検知器30は、光電センサーやレーザーセンサー、メカ的なリミットスイッチなどの検知器が考えられる。また、IDカードなどの識別データを持ったものを検知器30の替わりに設置して、台車1にその識別データの読み取り器を設置し、台車がどの位置を通過したかを検知することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる射撃訓練装置は、標的が前後左右方向に複雑なパターンで移動することにより高度な射撃訓練を行うことができる効果を有し、警察官や自衛官の実弾射撃訓練のために使用される射撃訓練装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例1における射撃訓練装置の台車及び標的についての断面図
【図2】本発明の実施例1における射撃訓練装置の射撃場全体配置図
【図3】本発明の実施例1における射撃訓練装置の床板を除いたコーナー部拡大図
【図4】本発明の実施例1における射撃訓練装置の射撃手から見た標的の正面図
【図5】本発明の実施例1における射撃訓練装置の射撃手から見た標的の他の正面図
【符号の説明】
【0061】
1 台車
2 標的
3 標的支柱
4 標的支持部
5 走行車輪
6 誘導車輪
7 集電レール
8 集電端子
9 誘導車輪支持部
10 コーナー誘導レール
11 通信部
12 制御部
13 走行モーター
14 バッテリ
15 コンクリートスラブ
16 床板
17 弾丸
18 弾丸吸引機
20 コンピューター
22 拳銃
23 射撃手
25 前進方向
26 後進方向
27 右進方向
28 左進方向
29 検知エリア
30 検知器
31 コーナー部
32 隠顕動作用モーター
33 移動用軌道
36、37、38 進行方向変え
41、42 斜め方向
43 吸引口
51 通信アンテナ
52 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠顕動作可能な標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、
前記標的を搭載する台車と、
前記台車に搭載された前記台車及び前記標的を動作させるための電源供給用の充電可能なバッテリーと、
前記台車が走行する移動用軌道と、
前記台車及び前記標的の運行、動作を制御するためのコンピューターと、
前記台車に設置され、前記コンピューターとの間で信号を送受信し、前記台車及び前記標的の運行、動作を制御する制御部と、
前記コンピュータと接続され前記移動用軌道に設置されるアンテナと、
を備え、
前記制御部と前記コンピューターとの通信を無線回線にて接続し、前記台車が前記コンピュータの制御により前後、左右及び斜方に移動することを特徴とする射撃訓練装置。
【請求項2】
隠顕動作可能な標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、
前記標的を搭載する台車と、
前記台車下部に設けられ、床下の移動用軌道の下面を走行する走行車輪と、
前記台車側面部に設けられ、床下の移動用軌道の側面に接して走行する誘導車輪と、
前記台車がコーナー部を走行するとき前記誘導車輪を圧接させる誘導レールと、
前記台車及び前記標的の運行、動作を制御するためのコンピューターと、
前記台車は、該台車の走行を制御する制御部と前記コンピューターと通信を行う通信部と充電可能なバッテリーとを有し、
前記コンピューターにより、前記標的の隠顕動作、前後移動、左右移動及び斜方移動を制御することを特徴とする射撃訓練装置。
【請求項3】
前記移動用軌道は、該移動用軌道側面にコーナー部を案内走行するための誘導レールを有し、
前記台車は、前記移動用軌道下面を走行する走行車輪とコーナー部を曲がる際前記誘導レールに圧接して走行する誘導車輪を有することを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の射撃訓練装置。
【請求項4】
前記コンピューターは、前記標的が前後移動、左右移動及び斜方移動する射撃訓練パターンを複数有し、当該射撃訓練パターンに基づいて前記標的の移動を制御することを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の射撃訓練装置。
【請求項5】
前記コンピューターは、前記移動用軌道の所定の箇所に取り付けられた台車検知器の情報を受け、前記標的台車が存在するエリアを認識して運行を管理することを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の射撃訓練装置。
【請求項6】
前記台車は、前記移動用軌道の内面に設置された集電レールから供給される電力又は前記台車に内蔵したバッテリーの電力により動作することを特徴とする請求項2に記載の射撃訓練装置。
【請求項7】
前記誘導車輪は、前記台車の左右に取り付けられた誘導車輪支持部の先端部に取り付けられ、前記移動用軌跡のコーナー部に設置されるコーナー誘導レールを通過して前記台車の進行方法を変更することを特徴とする請求項2に記載の射撃訓練装置。
【請求項8】
前記台車は、前記移動用軌道に対向する該台車の下部に移動用軌道に対向する磁石を有し、前記移動用軌道の底面に落ちた弾丸を吸着して該弾丸を回収することを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の射撃訓練装置。
【請求項9】
射撃訓練開始前に、射撃訓練パターンに基づく標的の隠顕動作の動きを表示する表示装置を備えたことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の射撃訓練装置。
【請求項10】
隠顕動作可能な標的と、該標的を搭載する台車と、該台車が走行する移動用軌道とを備え、前記標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、
前記移動用軌道は、該移動用軌道側面にコーナー部を案内走行するための誘導レールを有し、
前記台車は、前記移動用軌道下面を走行する走行車輪とコーナー部を曲がる際前記誘導レールに圧接して走行する誘導車輪を有することを特徴とする射撃訓練装置。
【請求項11】
隠顕動作可能な標的を射撃手に対して移動させる射撃訓練装置において、
前記標的を搭載する台車と、
前記台車下部に設けられ、床下の移動用軌道の下面を走行する走行車輪と、
前記台車側面部に設けられ、床下の移動用軌道の側面に接して走行する誘導車輪と、
前記台車がコーナー部を走行するとき前記誘導車輪を圧接させる誘導レールと、
前記台車の走行を管理する管理PCと、
を備え、
前記台車は、該台車の走行を制御する制御部と前記管理PCと通信を行う通信部と充電可能なバッテリとを有し、
前記管理PCにより、前記標的の隠顕動作、前後移動、左右移動及び斜方移動を制御することを特徴とする射撃訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−200879(P2006−200879A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351690(P2005−351690)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】