説明

導光体およびバックライトシステム

【課題】細かい最適設計を必要とせずに、均一な面内輝度と高い指向性を実現した導光体を提供する。
【解決手段】本発明に係る導光体1は、エッジライト方式の導光体であって、導光板2と、導光板2の出射面側に設けられた薄膜13とを備えている。薄膜13は、出射面6に頂部を密着させた複数の凸形状を構成する凸部を備えている。また、導光板2における背面7側の面には、導光板2の厚さ方向に対して90度より小さく75度以上の傾斜角度の傾斜面を有するパターン12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどを面照明するために、側部から内部に導入された光を内部で方向転換し、出射面から出射する導光体およびバックライトシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、電子装置、たとえば携帯電話機、デジタルカメラ、携帯ゲーム機器、カーナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータ、および薄型テレビジョンなどに設けられる。液晶表示装置は、自発光機能を持たない表示装置であるので、背面から光を照らすバックライトシステムと一体に用いられる。バックライトシステムとしては、光源を導光板のエッジ部に設けるエッジライト型バックライトと、光源を表示画面の直下に設ける直下型バックライトとが用いられる。
【0003】
エッジライト型バックライトは、冷陰極管またはLED(Light Emitting Diode)などの光源を用い、導光板のエッジ部から入射される光を、導光板によって表示領域内で均一になるように拡散させて、導光板の対面する2つの主面のうち一つの主面から出射させる方式である。このようなエッジライト型バックライトは、導光板の他方の主面側に反射シートが積層され、光を出射する主面である出射面側に、1枚またはプリズムパターンの方向が直交する2枚のプリズムシートが積層される構成、さらには拡散シートが導光板とプリズムシートとの間、またはプリズムシートの上に積層される構成である。
【0004】
第1の従来の技術としてのバックライトシステムに用いられる面照明装置は、高均一性かつ高輝度を実現するため、導光板の光反射面および光出射面に、酸化チタン粒子のごとき拡散反射率の大きな顔料を含有した塗料をドット状に印刷してなる光散乱層が設けられる。この光散乱層のパターンは、導光板の面内で輝度が均一になるように調整されている。さらに、この面照明装置は、導光板内部で拡散させてランダムに出射させる光を、その出射面側に積層させたプリズムシートを用いて正面方向に集光している(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
第2の従来の技術として、マイクロプリズムアレイを導光体に密着させたバックライトが提案されており、第1の従来の技術と比較してプリズムシートや拡散シートなどを必要とせず、部品点数を削減することができる。バックライトとして面内の輝度を均一にするために、マイクロプリズムのピッチを略連続的に変化させるなどの工夫が施されている(たとえば特許文献2参照)。
【0006】
第3の従来の技術では、バックライトは第2の構成と類似しているが、面内の輝度を均一にするために、マイクロプリズムのピッチを変化させるのではなく、凸部の密着面積を光源に近い部分では小さく、光源から離れた部分では大きくなるように変化していることを特徴としている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−320487号公報(1996年12月3日公開)
【特許文献2】特開2001−312913号公報(2001年11月9日公開)
【特許文献3】特開2000−66030号公報(2000年3月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第1の従来の技術は、プリズムシートを用いて集光しているが、プリズムシートの特性上、光が正面に向かず非常に浅い角度で出射される成分が残るため、正面輝度を向上することができず、指向性を高くすることができないという問題がある。
【0009】
また、第2、第3の従来の技術は、面内の輝度を均一にするために、ピッチを略連続的に変化させる、あるいは密着面積を変化させるといった分布をもたせる必要があるため、液晶表示装置の大きさやバックライトの厚み、導光体の材質、光源の種類や配置などの違いによって都度分布を最適化しなければならないという問題がある。特に第3の技術は、接着する面積によって輝度が変化するため、正確に接着面積を制御しなければならない。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成によって輝度の均一性を向上させることができ、より望ましくは指向性の高い光を出射することができる導光体およびバックライトシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る導光体は、上記課題を解決するために、少なくとも一方の端面から入射された光を少なくとも一方の主面から出射する導光板と、上記導光板のいずれか一方の上記主面である第1主面に設けられた薄膜とを備えており、上記薄膜は、上記第1主面に頂部を密着させ、かつ上記第1主面から出射される光を当該第1主面の正面方向に向かわせる複数の凸部を形成しており、上記導光板における上記第1主面の反対側の上記主面である第2主面には格子状の凹凸部が形成されており、上記凹凸部がなす傾斜面は、上記導光板の厚み方向に対して90度より小さく75度以上に傾斜していることを特徴としている。
【0012】
上記構成では、導光板の第1主面には、当該出射面に頂部を密着させた複数の凸部が配置されている。凸部は、第1主面から出射される光を当該第1主面の正面方向に向かわせる傾斜を有している。
【0013】
一方、導光板の第2主面には格子状の凹凸部が形成されている。凹凸部は、導光板の厚さ方向に対して90度より小さく75度以上である浅い傾斜角度の傾斜面を有している。
【0014】
上記構成によれば、端面から導光板の内部に入射された光は、1回〜複数回、凹凸部の傾斜面に到達し、導光板内で全反射を繰り返しつつ導光板内を進行する。この光は、凹凸部の傾斜面に到達することによって、導光板の厚さ方向に対する角度が徐々に小さくなっていく。
【0015】
導光板内を進行する光は、導光板内の第1主面に到達した際、凸部との界面以外に到達したのであれば導光板内に再度反射する。一方、凸部との界面に到達したのであれば凸部側に出射される。これにより凸部内に入射した光は、凸部の傾斜面で反射することによって第1主面の正面方向に向かって導光体から出射する。
【0016】
本発明に係る導光体では、導光板内を進行する光について、その導光板の厚さ方向に対する角度が徐々に小さくなるため、光が入射された端面から離れた他の端面近辺において光量が減ることを防ぐことができる。これによって、面内輝度の均一性が向上する。
【0017】
さらに、本発明に係る導光体は、導光板を進行する光について急激な角度変化が起こることはないため、出射光の指向性に優れている。
【0018】
したがって、本発明に係る導光体によれば、導光板に凹凸部を形成するという簡便な設計によって、面内輝度の均一性を向上し、さらに指向性の高い光を出射することができる。
【0019】
また、本発明に係る導光体において、上記薄膜は、隣り合う上記凸部の間に配置され、かつ上記凸部に対応する複数の凹部を形成しており、上記凹部は、上記導光板の材料よりも低い屈折率を有する材料から成り、上記凸部は、上記凹部の材料よりも高い屈折率を有する材料から成ることを特徴とすることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、導光板内を進行する光が導光板内の第1主面に到達した際、凹部との界面において光を全反射し、凸部に選択的に入射させることが可能になる。これによって、導光体からの出射光の集光性を高めることができる。
【0021】
また、本発明に係る導光体において、上記凹凸部は、四角錐もしくはその断面形状が台形である四角錐の一部の形状、または当該形状を上記厚み方向に垂直な平面に対して反転した形状の周期的な繰り返し構造を構成していることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、凹凸部が周期的な繰り返し構造を構成していることによって、導光板内を進行する光の角度を、同一の角度および同一の割合で段階的に変えることができる。これによって、出射光の指向性をより高めることができる。
【0023】
また、凹凸部が四角錐またはその断面形状が台形である四角錐の一部の形状であることによって、導光板の作製時、導光板の背面側となる平面上において、V字バイトを用いて直交する2方向から等ピッチで加工を施すことによって、凹凸部を製作することができる。もしくは、凹凸部が上記形状を導光体の厚み方向に垂直な平面に対して反転した形状であることによって、導光板の作製時、V字バイトを用いて平面に直交する2方向から等ピッチで加工した金型を使用して、凹凸部を製作することができる。よって、凹凸部がこれらの形状のいずれかであれば、当該凹凸部を非常に簡便かつ高精度に製作することができる。
【0024】
また、本発明に係る導光体において、上記凹部の複数の凹形状は円形または多角形の開口を有しており、当該凹形状の深さは1μm以上200μm以下であり、上記複数の凸部は、上記厚み方向に垂直な平面に対して1μm以上200μm以下の周期で周期的に配置されていることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る導光体において、上記凹凸部の高さは、0.5μm以上20μm以下であり、上記凹凸部の構成する周期的な繰り返し構造の周期は、0.2mm以下であることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、一般的な樹脂材料から作製され、2インチから8インチ程度の主にモバイル用途で用いられる導光体に対して、好適に適用することができる。
【0027】
また、本発明に係るバックライトシステムは、上記いずれかの導光体と、上記導光板の少なくとも一方の端面から光を入射する光源と、上記第1主面または上記第2主面に対向して設けられた反射シートとを含むことを特徴としている。
【0028】
上記構成によれば、他の光学シートを必要とせず、正面輝度が向上し、指向性の高い光を出射することのできるバックライトシステムを、簡単な設計によって実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る導光体は、少なくとも一方の端面から入射される光を出射面から出射する導光板と、上記導光板の出射面に設けられた薄膜とを備えており、上記薄膜は、上記出射面に頂部を密着させ、かつ上記出射面から出射される光を当該出射面の正面方向に向かわせる複数の凸部を形成しており、上記導光板における上記出射面の反対側の表面には格子状の凹凸部が形成されており、上記凹凸部がなす傾斜面は、上記導光板の厚み方向に対して90度より小さく75度以上に傾斜しているため、簡便な設計によって、面内輝度の均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の一形態である導光体の斜視図である。
【図2】導光体を備えるバックライトシステムの分解状態を模式的に示す斜視図である。
【図3】凹部および凸部の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】凹部および凸部一部を拡大して示す平面図である。
【図5】他の態様の凹部および凸部の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】他の態様の凹部および凸部の一部を拡大して示す断面図である。
【図7】導光板に形成されるパターンの一つを拡大して示す断面図である。
【図8】導光板に形成されるパターンの一つを拡大して示す平面図である。
【図9】バックライトシステムの正面輝度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図10】バックライトシステムの角度輝度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】バックライトシステムの角度輝度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】本発明の実施の一形態である携帯電話機を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態では、対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0032】
(バックライトシステム30の構成)
図1は、本発明の実施の一形態である導光体1の断面図である。図2は、導光体1を備えるバックライトシステム30を分解した状態で模式化して示す斜視図である。
【0033】
本実施形態に係るバックライトシステム30は、導光体1、光源3、および反射シート4を含んで構成される。バックライトシステム30は、導光体1の側部(端面)5に対向して光源3が設けられるエッジライト式のバックライトシステムである。
【0034】
光源3は、少なくとも1つの発光素子(図示せず)および発光素子を支持する支持部とを備える。光源3が備える発光素子は、図示しない電源によって与えられる電力に基づいて、導光体1の側部5に向けて放射状に光を出射する。発光素子は、たとえば発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称LED)によって実現される。支持部(図示せず)は、発光素子が光を出射する領域を除く残余の部分の外方を覆って設けられる。支持部は、発光素子を導光体1の側部5の予め定める位置に位置決めして固定するために用いられる。発光素子の出射面は、導光体1の側部5に対向するように配置される。
【0035】
発光素子は、半導体素子(図示せず)と、これを被覆する透光性樹脂(図示せず)とを有しており、透光性樹脂は、半導体素子から発生する光を吸収して、その吸収した光とは異なる波長の光を発生する蛍光体を含有させることができる。半導体素子から発生する光が紫外線の場合は、この紫外線によって励起されて紫外線または可視光を発生する蛍光体を用いることができる。可視光の発光が可能な半導体素子を用いてもよく、半導体素子からの可視光を吸収してそれよりも長波長の可視光が発光可能な蛍光物質とを組み合わせてもよい。半導体素子を蛍光体と組み合わせて用いると、様々な色調の混合色を発光させることが可能となる。
【0036】
半導体素子としては、たとえば窒化物系化合物半導体であって、一般式「IniGajAlkN」が好適に用いられる。ここで、変数i、jおよびkは、それぞれIn、GaおよびAlの原子比を表し、それぞれ0以上の値であり、i+j+k=1を満足する値である。
【0037】
窒化物系化合物半導体としては、InGaNおよび各種不純物がドープされたGaNをはじめ、種々のものがある。この半導体素子は、MOCVD法などによって基板上にInGaNおよびGaNなどの半導体を発光層として成長させることによって形成される。半導体素子の構造としては、MIS接合、PIN接合ならびにpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造およびダブルヘテロ構造のものが挙げられる。この窒化物半導体層は、材料および混晶度によって発光波長を選択することができる。半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜で形成した単一量子井戸構造および多量子井戸構造とすることもできる。
【0038】
蛍光物質は、発光素子からの光の波長を変換させるものであり、発光素子を被覆する透光性樹脂に蛍光物質を含有させることによって、外部へ出射される光を変換可能である。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、ペリレン形誘導体、ZnCdS:Cu、ならびにYAG:Ceなどの有機蛍光体、およびEuならびにCrの少なくともいずれか1つで付活された窒素含有CaO−Al2O3−SiO2などの無機蛍光体などに用いられる。特に、YAG:Ce蛍光体を利用した場合は、その含有量によって青色発光を有する発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる黄色系が発光可能となり、白色系が比較的簡単に信頼性良く形成することができるため好ましい。同様に、無機蛍光体を用いた場合は、その含有量によって青色光と、その光を一部吸収して補色となる赤色系が発光可能であるため、白色系が比較的簡単に信頼性よく形成することができ好ましい。
【0039】
導光体1は、透光性を有し、平板状であって、その厚み方向に垂直な仮想平面であるXY平面における断面形状が略矩形状、より詳細には略長方形状である。導光体1は、その厚み方向両側の表面が2つの主面である。導光体1は、側部5から入射される光を拡散させて、2つの主面のうちの一方の主面から出射する。以下、導光体1の2つの主面のうち、光が出射する面を出射面6とし、出射面6と反対側の主面を背面7とする。
【0040】
導光体1は、平板状の導光板2と、導光板2の出射面6側に積層された薄膜13とから構成される。導光板2と薄膜13については後述にて詳細に説明する。なお、導光板2は導光体1と同様の2つの主面を備えるものであり、以下の説明では、導光板2の2つの主面のうち、光が導光板2の内側から初めに出射する面を導光板2の出射面(第1主面)といい、導光板2の出射面と反対側の主面を導光板2の背面(第2主面)という。
【0041】
ここで、導光体1の厚み方向に平行な方向をZ方向と定義し、Z方向に垂直であって導光体1の短手方向に平行な方向をX方向と定義し、Z方向およびX方向に垂直であって導光体1の長手方向に平行な方向をY方向と定義する。各図において、これらX、Y、Z方向を矢符X、Y、Zで表す。
【0042】
反射シート4は、図2に示すように、導光体1の背面7に対向して設けられる。反射シート4は、導光体1の背面7から出射される光を、導光体1の内部に反射するような光反射性を有する。反射シート4は、入射する光に対して、ほぼ1.0に近い反射率を有するように形成される。反射シート4の材料としては、光反射性が高く、反射率が1.0に近い材料が用いられ、このような材料としては、たとえば銀(Ag)およびアルミニウム(Al)などが挙げられる。反射シート4は、たとえば反射率が1.0に近い薄膜によって実現される。このような反射シート4を設けることによって、背面7側から光が漏れて出射することを防ぐことができる。
【0043】
(薄膜13の構成)
次に、導光体1の備える薄膜13の構成について図3〜6を参照して詳細に説明する。図1に示すように、導光板2の出射面の全域にわたって薄膜13が積層されている。薄膜13は、複数の凹部10および複数の凸部11を形成している。
【0044】
図3は、凹部10および凸部11の一部を拡大して示す導光体1の断面図である。図4は、凹部10の一部を拡大して示す導光体1の平面図である。
【0045】
図3に示すように、凹部10は導光板2上に層状に積層されており、円形の開口部を有している。上記開口部の底部は、導光板2の出射面まで達している。凹部の深さは1μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0046】
なお、凹部10の開口部は、円形に限られず、多角形または円形もしくは多角形の一部であってもよい。
【0047】
また、図4に示すように、凹部10は、導光板2の出射面全域にわたって形成されている。導光板2の出射面に平行な方向において、凹部10のピッチはできる限り密に形成されることが望ましく、1μm以上200μm以下であることが好ましい。隣り合う二つの凹部10のギャップは、開口部の径に対して2割以下、好ましくは1割以下であることが好ましい。
【0048】
一方、凸部11は、凹部10の開口部を埋める形状に作成されている。凸部11の兆部は導光板2の出射面に密着している。凸部11と凹部10との界面は、導光板2の出射面から出射される光を、導光体1の出射面6の正面方向に向かわせる傾斜角度を形成しており、XY平面に対して60度以上の斜面を主成分とすることが好ましい。
【0049】
凹部10、凸部11、および導光板2の屈折率の関係について説明する。
【0050】
凹部10の屈折率Naは、導光板2の屈折率Nbと異なるように構成される。凹部10の屈折率Naは導光板2の屈折率Nbよりも低いことが好ましく、屈折率Nbに対して以下の式1を満たすことがさらに好ましい。さらには、凹部10の屈折率Naは、導光板2の屈折率Nbとの差が大きいほど好適である。
【0051】
【数1】

【0052】
一方、凸部11の屈折率Ncは、凹部10の屈折率Naと異なるように構成される。凸部11の屈折率Ncは凹部10の屈折率Naよりも高いことが好ましく、また、導光板2の屈折率Nbよりも低いことが好ましい。
【0053】
凹部10、凸部11、および導光板2が上述の屈折率を満たすように構成されれば、導光板2内を導かれた光は、凹部10との界面では全反射され、凸部11に対して選択的に入射する。凸部11に入射した光は、凹部10と凸部11との界面に形成された斜面によって進行方向をZ方向に変えられ、導光体1の出射面6から垂直に出射される。
【0054】
凹部10および凸部11は成形技術を用いて作製することができる。例えば、凹部10を作成するためには、モールド(型)と基板となる導光板2とで樹脂を挟み込むなどのパターン転写技術を用いることができる。また、凸部11は、凹部10を形成した導光板2上に樹脂を塗布して硬化させることによって形成される。
【0055】
上記作製方法において使用される樹脂は光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂であり、例えば光硬化性樹脂は樹脂に含まれるモノマー(オリゴマー)成分が重合反応によって高分子化することによって硬化する材料である。光硬化性樹脂を使用する場合には、スピンコートやバーコート等を使用する塗布法、ならびに基板上にディペンスする滴下法のいずれかの方法を用いることが好ましい。
【0056】
凹部10を作成するためのモールド(型)としては、金属製のものでもガラス製のものでもよく、凹部10を反転させた形状のパターンを形成したものであればよい。例えば、フォトリソグラフィー技術を利用して作製する場合には、まず、EBリソグラフィ等を用いて円形のレジストパターンを描画したマスクを使用し、露光を行う際に焦点をぼかして円形の縁の露光量を調整することによって、凹部10の斜面の形状を形成する。この斜面を形成したパターンを用いてNi電鋳を行うことによって、凸形状に反転したモールドを作製することができる。ただし、本手法はほんの一例にすぎず、バイト加工やレーザ加工などの直接的な機械加工や、EBリソグラフィ等で直接凹凸を作製しても良い。
【0057】
凹部10および凸部11の材料としては、少なくとも光透過性を有し、好ましくは成形性に優れた材料、たとえばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン樹脂、およびファンクショナルノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂などの透光性樹脂などの透光性材料を用いることができる。好ましくは、熱硬化性、あるいはUV硬化性の材料が導光体1表面に形成しやすさからも適している。
【0058】
(導光板2の構成)
次に、導光体1の備える導光板2の構成について図7および図8を参照して詳細に説明する。
【0059】
導光板2は、平板状であって、その背面7側には、格子状のパターン(凹凸部)12が形成されている。パターン12は、図4に示すように、導光板2の背面7の全域にわたって形成されている。パターン12は、導光体1のZ方向に向かって複数の凸形状を有しており、パターン12をY方向外方から見ると、パターン12の各凸形状は略三角形状を形成している。
【0060】
図7は、パターン12の一部を拡大して示す導光体1の断面図である。図8は、パターン12の一部を拡大して示す導光体1の平面図である。なお、図7では紙面上方が背面7側であり、紙面下方が出射面6側である。図8では、背面7側から見た導光体1が示されている。
【0061】
図7に示すように、パターン12の各凸形状はZ方向に交差する傾斜面20によって形成される。傾斜面20はZ方向に対して傾斜角度α1を有している。側部5から導光板2の内部に導かれる光は、傾斜面20に達することによって、傾斜面20にて全反射される光と、傾斜面20から出射される光とに分かれるが、傾斜角度α1は、このときの傾斜面20から出射される光の割合が導光板2の側部5から他側部14に向かって増えるようにが設定されていればよい。すなわち、傾斜角度α1は、導光板2の背面7側と光学的な境界をなす層(例えば空気層)により決定される全反射角よりも小さくなるように設定されていればよく、その具体的な角度は、90度より小さく75度以上である。
【0062】
傾斜角度α1は、導光板2に用いられる材料の特性および導光体1のサイズによって最適な角度に決められる。例えば、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂等の一般的な材料からなる導光板2について、サイズが主にモバイル用途として用いられる大きさの2インチから8インチ程度である場合、傾斜角度α1は90度未満80度以上に設定されることが好ましい。
【0063】
パターン12の各凸形状は、四角錐、すなわちピラミッド状に形成されることが好ましく、当該四角錐の頂角は150度以上180度未満に設定されることが好ましい。また、パターン12の各凸形状は、互いに等しい形状および大きさであり、XY平面にマトリクス状、すなわち周期的な繰り返し構造を構成するように形成されることが好ましい。これによって、導光板2の作製時、導光板2となる平板のXY平面上に、V字バイトを用いて直交する2方向から等ピッチで加工を施すことによって、パターン12を非常に簡便かつ高精度に製作することができる。
【0064】
具体的には、パターン12の高さは100μm以下であることが好ましい。例えば、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂等の一般的な材料からなる導光板2について、サイズが主にモバイル用途として用いられる大きさの2インチから8インチ程度である場合、パターン12の高さは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10μm以下である。
【0065】
また、パターン12のピッチは、0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下、さらに好ましくは75μm以下に設定される。このように設定することによって、パターン12の連続的なピッチに起因する輝度むらを防止することができる。さらに、反射シート4に形成される凹凸のピッチに対して、整数倍または整数分の1倍の寸法に設定されることが好ましい。
【0066】
また、導光板2の材料としては、少なくとも光透過性を有し、好ましくは成形性に優れた材料、たとえばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン樹脂、およびファンクショナルノルボルネン系樹脂などの透光性樹脂などの透光性材料を用いることができる。これらの導光板2の材料はそれぞれ屈折率が異なるが、導光板2に形成されるパターン12の形状、数および角度等を選定することによって、光の進む方向を制御することができるため、本発明は導光板2の材料の屈折率によって制約を受けることはない。例えば導光体1がアクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂から成る場合、導光体1の屈折率は1.49〜1.59程度である。
【0067】
(バックライトシステム30における光の出射)
次に、バックライトシステム30における光の出射について説明する。
【0068】
バックライトシステム30では、光源3から出射された光は、側部5から導光板2の内部に入射される。導光板2内に入射された光は、1回〜複数回、パターン12の傾斜面20に到達し、導光板2内で全反射を繰り返しつつ次第に角度を変化させながら導光板2内を進行する。
【0069】
導光板2内を進行する光は、導光板2内で全反射を繰り返しつつ、パターン12によって次第に導光板2のZ方向に対する光の角度が小さくなる。ここで、パターン12の各凸形状の高さおよびピッチが互いに等しく形成されることによって、導光板2内を通過する光の角度は、同一の角度および同一の割合で段階的に変化する。すなわち、導光板2では、導光板2内を進行する光についてZ方向に対する角度が徐々に小さくなるため、光が入射された側部5から離れた他側部14近辺において光量が減ることを防ぐことができる。さらに、導光板2を通過する光では、急激な角度変化が起こることはないため、出射光の指向性に優れている。
【0070】
また、上述したように、導光板2内の出射面に到達した光は、凹部10との界面に到達した場合には全反射し、凸部11との界面到達した場合には凸部11側に出射される。凸部11に入射した光は、凸部11と凹部10との界面による斜面で反射することによって、進行方向をZ方向と平行に変えられ、導光体1の出射面6から垂直に出射される。
【0071】
したがって、バックライトシステム30は、均一な面内輝度を実現し、導光体1から出射する光についての高い集光性および正面輝度を実現することができる。
【0072】
なお、導光板2内を通過する光は、全反射を繰り返しつつ段階的に角度が変えられる際、パターン12の対向する両側の斜面のいずれで反射するかによって反射方向が逆になる。このため、導光板2内を通過する光は、全反射を繰り返すたびにZ方向に対する角度が小さくなる(起される)のではなく、Z方向に対する角度が大きくなる(寝かされる)こともある。よって、単純にパターン12の傾斜角度を大きくすれば、光が導光板2の出射面から出射しやすくなるわけではない。また、パターン12の四角錐(ピラミッド形状)の頂角の角度が同じであれば、ピッチ(上記四角錐の底辺の長さに対応)を変えても、効果はほとんど変わらない。
【0073】
(傾斜角度の変化)
次に、パターン12の傾斜角度α1と、導光板2の特性のとの関係について説明する。ここで、導光板2の特性とは、具体的には、光源3の光軸方向(Y方向)における導光板2の長さ、導光板2の厚み、および導光板2の材質などであり、使用する導光板2毎にこれらの特性はそれぞれ異なる。そこで、パターン12の傾斜角度α1については、導光板2の特性のパラメータに従って決定することが好ましい。
【0074】
以下に、導光板2の特性と傾斜角度の変化量との関係を示す。ここで説明する「傾斜角度の変化量」とは、導光板2の厚み方向に直交する平面(XY平面)に対する傾斜面20の角度の変化を意味している。
【0075】
例えば、ある導光板2に対して最適な傾斜角度α1を設定した上で、特性の異なる他の導光板2を用いるときに、以下の式により計算される「傾斜角度の変化量」を考慮して、最適な傾斜角度α1を新たに設定すればよい。
【0076】
まず、傾斜角度α1は、側部5から入射された光が伝わる方向の導光板2の長さに影響されるため、傾斜角度の変化量は、次式(2)によって算出され、好ましくは次式(3)によって算出される。
【0077】
傾斜角度の変化量(度)=0.012〜0.022×導光体の長さ(mm)・・・(2)
傾斜角度の変化量(度)=0.015×長さ(mm)・・・(3)
また、傾斜角度の変化量は、導光板2の厚みに対しても比例関係を示すため、次式(3)によって算出され、好ましくは、次式(4)によって算出される。
【0078】
傾斜角度の変化量(度)=−4.5〜−5.5×導光体の厚さ(mm) …(3)
傾斜角度の変化量(度)=−5×厚み(mm) …(4)
さらに、傾斜角度の変化量は、導光板2の屈折率に対しても比例関係を示すとみなすことができるため、次式(5)によって算出され、好ましくは、次式(6)によって算出される。
【0079】
傾斜角度の変化量(度)=−8〜−9×導光体の屈折率 …(5)
傾斜角度の変化量(度)=−8.47×屈折率 …(6)
上述算出式に基づくことによって、導光板2の特性が傾斜角度α1に与える影響を容易に算出することができ、この影響を傾斜角度α1に反映することができる。
【0080】
さらに、導光板2に関する特性について、側部5から入射された光が伝わる方向の導光体1の長さ、導光体1の厚さ、および導光体1の屈折率のうち、2つまたは3つを任意に組み合わせて、これら導光板2の特性による影響を傾斜角度α1に反映することができる。
【0081】
なお、上述した式(1)〜(6)は、近似式として例示されるものであり、その適用範囲にはそれぞれ±10%程度の幅を有していてもよい。上述した算出式によって算出された傾斜角度と完全に等しい角度を実現せずともよく、整数部分、あるいは小数点第一位で丸めた角度を採用しても大きな問題はない。
【0082】
また、上述した式(1)〜(6)は、主にモバイル用途に使用される中小型液晶用バックライトシステムの導光体に適用され、特に8インチ以下に、好ましくは2〜5インチの液晶パネル用バックライトシステムの導光体に適用される。
【0083】
(他の構成)
本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、以下のような構成を有するものであってもよい。
【0084】
例えば、上述した実施の形態では、光源3として線状化LEDを用いたが、これに限定されるものではなく、たとえば個別のLEDを複数台並べた構成、あるいは冷陰極管を用いる構成も可能である。導光体1の側部5は、平坦状に限らず、光源3の出射形態に応じて側部5に凹凸を形成して、輝度むらをさらに削減するようにしてもよい。さらに、導光体1の背面7は、用途に応じて任意の形状、たとえば斜面が曲線からなる多数のレンズ列にて構成してもよい。
【0085】
また例えば、上述した実施の形態では、凹部10の開口部および凸部11の凸形状を出射面6の全域にわたるように形成しているが、必ずしも全域の必要はなく、一部の領域に形成されるものであってもよい。例えば、出射面6の外周縁に近接する部分を除く残余の90%以上の領域にわたるように上記開口部および上記凸形状を形成すれば、これらを全域に形成したものと同等の作用および効果を実現することができる。
【0086】
また、凸部11の高さは、図3に示すように凹部10と同じ高さでもよく、図5に示すように凹部10を完全に埋め込むように凹部10の高さよりも高くてもよく、あるいは図6に示すように凹部の高さよりも低くてもよい。
【0087】
さらに、凸部11における凹部10と接する面以外の表面には、微細な凹凸形状を付与し、拡散効果を持たせてもよい。図6のように凹部10が出射面6側に露出している場合には、凹部10の表面に微細な凹凸形状を付与し、拡散効果を持たせても良い。
【0088】
また例えば、上述した実施の形態では、凹部10の開口部および凸部11の凸形状を略半球形状としてが、多角錐形状、あるいは多角錐の各辺に丸みを持たせた形状、あるいはその一部を切り落とした形状としてもよい。
【0089】
また例えば、上述した実施の形態では、背面7の全域にパターン12を形成したが、必ずしも全域に形成する必要はなく、一部の領域に形成されるものであってもよい。例えば、背面7の外周縁に近接する部分を除く残余の90%以上の領域にパターン12を形成すれば、これを全域に形成したものと同等の作用および効果を実現することができる。
【0090】
さらに、光源3付近、あるいは導光板2の周縁付近に形成するパターンについては、上述したパターンに限定されず、鏡面もしくはドット状のパターンまたはランダムパターンなどを用いることも可能である。導光板2の周縁は、導光体1、光源3、反射シート4および拡散シート(図示しない)などを収納するフレーム、あるいはこれらを接合する遮光テープと接する部分である。その他の構成要素、例えば光源3の指向特性、入射部のパターン、遮光テープ、または導光板保持用フレームなどが特殊なものである場合には、その構成に合わせて適宜パターンを選択すればよい。
【0091】
また例えば、上述した実施の形態では、パターン12の凸形状をピラミッド形状として説明したが、本発明はこれに限られず、ピラミッド形状の頂部分を平面状に切り落とした台形の形状としてもよい。あるいは、ピラミッド形状、またはその頂部分を平面状に切り落とした形状を、XY平面に対して反転した形状としてもよい。なお、パターンを上記のようにXY平面に対して反転した形状とした場合であっても、導光板の作製時、V字バイトを用いて直交する2方向から等ピッチで加工した金型を使用して、パターンを非常に簡便かつ高精度に製作することができる。
【0092】
また、上述の説明では、反射シート4を導光板2の背面側に配置しているが、導光板2の出射面側、すなわち薄膜13の上側に配置してもよい。この場合、一度、導光板2の出射面側の凸部で正面に立ち上げられた光は、反射シートで反射され、上記出射面から導光板2に再入射し、導光板2の背面側から出射する。このため、導光体1の主面のどちらに反射シートを配置するかに従って、導光体1の出射面を選択することができる。
【0093】
また、上述した導光板2の他に、薄膜13上に第2の導光体を載置してもよい。
【0094】
本実施形態に係るバックライトシステム30は、対象物を照明光によって照明するための面発光装置であって、たとえば透過型の液晶表示装置に備えられ、液晶表示パネルを照明するバックライト装置として用いられる。液晶表示装置においてバックライトシステム30は、液晶表示パネルに対向して設けられ、液晶表示装置の操作者が表示画面を見る側とは反対側から、対象物である液晶表示パネルを照明する。バックライトシステム30は、液晶表示パネルの照明に限定されず、他の対象物の照明またはイルミネーションなどに使用してもよい。
【0095】
例えば、本実施形態に係るバックライトシステム30は、例えば図8に示すような携帯電話機100のバックライトシステムとして利用できる。図8は、本発明の実施の一形態である携帯電話機100の外観図である。携帯電話機100は、バックライトシステム30を備えることによって、液晶パネルから指向性の高い光を出射することができる。
【0096】
バックライトシステム30は、携帯電話機100だけに限定して利用されるものではなく、中小型の液晶パネルを備える他の機器に幅広く利用することができる。具体的には、携帯電話のほか、携帯ゲーム機器および携帯オーディオ機器などのモバイル機器、さらには、カーナビゲーション装置、携帯DVDプレーヤ、携帯ワンセグ機器、ならびに電子辞書など、幅広く挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
バックライトシステム30の実施例1として、2.4インチの携帯電話機などのモバイル機器に搭載される液晶用のバックライトシステムを作製した。
【0099】
実地例1に用いる導光板2の寸法は、Y方向を約55mm、X方向を約39mm、およびZ方向を約0.6mmとした。導光板2の材質はポリエチレンナフタレートとし、導光板2の屈折率は1.64であった。導光板2の側部5は、光源3近傍の輝度むらを十分に緩和することができるようにするために平坦状にした。
【0100】
凹部10の寸法については、導光板2の出射面からの高さを約5μmとした。凹部10の開口部について、開口径を約6μmとし、各開口部間の間隔を約1μmとして最密に配置した。凹部10の材料には、UV光で硬化する光硬化性樹脂を使用し、そこに数nm〜数100nmの粒径の中空シリカ微粒子を混入させることで低い屈折率1.24を実現させた。
【0101】
凹部10の形成のためには、まず導光板2の出射面に、光硬化性樹脂をスピンコートによって約3μmの高さで均一に塗布し、その後、凸型のNi電鋳モールドを押し付け、導光板2側からUVを照射させて、光硬化性樹脂の硬化後にモールドを剥離した。なお、このときに場合によっては、反応性イオンエッチング(RIE)等によって残膜除去を行ってもよい。
【0102】
凸部11は、導光板2に凹部10を形成した後に作製した。UV光で硬化する光硬化性樹脂を凹部10の上から滴下し、凹部10の出射面6側の頂からさらにプラス3μmの高さになるようにスピンコートによって均一に塗布した。次に、塗布面の上からUVを照射して、光硬化性樹脂を硬化させた。凸部11の材料である光硬化性樹脂には、アクリル系のUV硬化性樹脂を使用し、その屈折率は1.49であった。
【0103】
パターン12について、例えばある初期値から上記算出式を考慮すると傾斜角度の変化は3度となり、パターン12のZ方向に対する傾斜角度α1を87度に設定した。
【0104】
すなわち、パターン12は頂角が174度のピラミッド形状を形成するものとした。
【0105】
また、パターン12のピッチを縦横ともに60μmとした。パターン12のピラミッド形状については、導光板2の背面7側の面において、V字バイトを用いてX方向およびY方向の2方向から60μmの等ピッチで均一に加工した。
【0106】
光源3には、1.5cdの発光素子を4灯並べたタイプの線状光源を用い、反射シート4には、住友スリーエム社製反射シート(商品名:ESR反射シート)を用いた。導光板2の背面7側に反射シート4を積層した後、光源3、導光体1、および反射シート4を、NITTODENKO社製の遮光・反射両面接着テープによってパッケージした。
【0107】
また、従来例のバックライトシステムとしては、実施例1の光源3と同様の光源を用い、導光体の背面側に反射シートが積層され、かつ導光体の出射面側に、導光体側から順に、拡散シート、プリズムシート、およびプリズムシートが積層積層されたものを用いた。これらの光源、ならびに導光体、プリズムシート2枚、反射シートおよび拡散シートは、NITTODENKO社製の遮光・反射両面接着テープによってパッケージされている。また、導光体は反射シートが配置される側に光学シミュレーションによって最適にパターニングされたシボ形状を持つポリカーボネート樹脂製の薄板であり、2枚のプリズムシートはそれぞれ、拡散シートと反対側にある面に、稜線がX方向・Y方向のプリズムパターンが形成されている。光源は、1.5cdの発光素子を8灯並べたタイプの線状光源を用いた。反射シートには、住友スリーエム社製反射シート(商品名:ESR反射シート)を用い、プリズムシートには、住友スリーエム製社プリズムシート(商品名:ThinBEF)を用いた。拡散シートには、ツジデン社製光拡散フィルムD150SIIIを用いた。
【0108】
実施例1および従来例を用いて、バックライトシステムの輝度測定を行った。輝度測定では、実施例1および従来例の各バックライトシステムを、出射面6において5箇×5箇所のマトリクス状に配置される25箇所の測定点に分けて測定した。
【0109】
実施例1および従来例における正面輝度の結果を図9〜11に示している。図9において、横軸は25箇所の測定点あり、縦軸は正面輝度である。図10および図11では、横軸は、出射面6に垂直な方向に対する出射光の傾斜角度(度)であり、縦軸は正面輝度である。正面輝度の単位は、cd/mである。
【0110】
なお、図10と図11では、バックライトシステムの長辺を横向きに置いた場合において、0度の真正面から見たとき、あるいは斜め±90度の方向から見たときの明るさとをそれぞれ示している。図11がバックライトシステムを横または斜めから見たときの明るさを示すグラフであり、図10がバックライトシステムを上または下から真正面に見たときの明るさを示すグラフである。バックライトシステムでは、できるだけ横に抜ける光を減らして、正面からの光にもってくることによって、輝度を稼げるため、消費電力を抑えることができる。
【0111】
図9によれば、実施例1は、出射面6のどの測定点においても従来例よりも高い正面輝度を実現できることが分かった。
【0112】
また図10および図11によれば、実施例1は、従来例よりも高い指向性を有する出射光を実現できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、例えば透過型の液晶表示装置に備えられ、液晶表示パネルを照明するバックライト装置に適用できる。
【符号の説明】
【0114】
1 導光体
2 導光板
3 光源
4 反射シート
5 側部
6 出射面
7 背面
10 凹部
11 凸部
12 パターン
20 傾斜面
30 バックライトシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の端面から入射された光を少なくとも一方の主面から出射する導光板と、
上記導光板のいずれか一方の上記主面である第1主面に設けられた薄膜とを備えており、
上記薄膜は、上記第1主面に頂部を密着させ、かつ上記第1主面から出射される光を当該第1主面の正面方向に向かわせる複数の凸部を形成しており、
上記導光板における上記第1主面の反対側の上記主面である第2主面には格子状の凹凸部が形成されており、
上記凹凸部がなす傾斜面は、上記導光板の厚み方向に対して90度より小さく75度以上に傾斜していることを特徴とする導光体。
【請求項2】
上記薄膜は、隣り合う上記凸部の間に配置され、かつ上記凸部に対応する複数の凹部をさらに形成しており、
上記凹部は、上記導光板の材料よりも低い屈折率を有する材料から成り、
上記凸部は、上記凹部の材料よりも高い屈折率を有する材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の導光体。
【請求項3】
上記凹凸部は、四角錐もしくはその断面形状が台形である四角錐の一部の形状、または当該形状を上記厚み方向に垂直な平面に対して反転した形状の周期的な繰り返し構造を構成していることを特徴とする請求項1または2に記載の導光体。
【請求項4】
上記凹部の構成する凹形状は、円形または多角形の開口を有しており、当該凹部の深さは、1μm以上200μm以下であり、
上記凸部の構成する凸形状は、上記厚み方向に垂直な平面に対して1μm以上200μm以下の周期で周期的に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の導光体。
【請求項5】
上記凹凸部の高さは0.5μm以上20μm以下であり、
上記凹凸部の構成する周期的な繰り返し構造の周期は0.2mm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の導光体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の導光体と、
上記導光板の少なくとも一方の端面から光を入射する光源と、
上記第1主面または上記第2主面に対向して設けられた反射シートとを含むことを特徴とするバックライトシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−225562(P2010−225562A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74753(P2009−74753)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】