説明

導光板の製造方法、導光板、エッジライト型面光源装置及び透過型画像表示装置

【課題】インクジェット法により導光板の反射ドットを形成する場合において、形成される反射ドットの均一性を高めること。
【解決手段】粘着層21を有する保護フィルム2を、樹脂板11から剥離する工程と、樹脂板11の粘着層21が貼合されていた表面S2を親水化処理する工程と、親水化処理された表面S2に、インクジェット法によってインク10をドット状にパターン印刷する工程と、パターン印刷されたインク10から反射ドット12を形成させる工程と、を備える、導光板1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板の製造方法、導光板、エッジライト型面光源装置及び透過型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の透過型画像表示装置は、一般に、バックライトとしての面光源装置を有している。エッジライト型面光源装置は、導光板及びその端面に光を供給する光源とから構成される。導光板の端面から入射した光が、導光板の背面側に設けられた反射ドット等の反射手段によって反射し、導光板の出射面から画像表示用の面状の光が供給される。
【0003】
導光板の反射ドット(配光パターン)を形成する方法として、インクジェット法が検討されている(特許文献1)。インクジェット法によれば、設計された所望のパターンを構成する反射ドットを簡易に形成できることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−240294号公報
【特許文献2】特開2006−136867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導光板の表面上にインクジェット法により反射ドットを形成すると、局所的に印刷の状態が異なる印刷ムラが発生して、高い均一性で反射ドットを形成できない場合があるという問題があった。反射ドットを所望のパターン通りに高い均一性で形成することは、導光板を製造する上で非常に重要である。
【0006】
そこで、本発明は、インクジェット法により導光板の反射ドットを形成する場合において、形成される反射ドットの均一性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材フィルムと該基材フィルム上に設けられ樹脂板の表面に貼合されている粘着層とを有する保護フィルムを、樹脂板から剥離する工程と、樹脂板の粘着層が貼合されていた表面を親水化処理する工程と、親水化処理された表面に、インクジェット法によってインクをドット状にパターン印刷する工程と、パターン印刷されたインクから反射ドットを形成させる工程と、を備える、導光板の製造方法に関する。
【0008】
上記本発明に係る製造方法によれば、均一性の高い反射ドットを有する導光板をインクジェット法により製造することができる。保護フィルムの粘着層が貼合されていた表面には、粘着層の粘着剤が少量残存している箇所があり、残存した粘着剤に起因して、インクジェット印刷の際の印刷ムラが発生し易いと考えられる。インクをパターン印刷する前に、樹脂板の表面を親水化処理しておくことにより、粘着剤の影響が抑制され、その結果、形成される反射ドットの均一性を高くすることが可能になったと考えられる。
【0009】
親水化処理は、好ましくは紫外線照射、アルコールとの接触、又はプラズマ処理である。反射ドットの均一性向上の効果がより高められる。同様の観点から、インクは好ましくは紫外線硬化インクである。
【0010】
本発明はまた、上記本発明に係る製造方法によって得ることのできる導光板に関する。本発明に係る導光板は、均一性の高い反射ドットを有する。反射ドットの均一性が高いことから、本発明に係る導光板によれば、外観品位が高く、また、均一性の高い面状の光を出射することができる。
【0011】
本発明に係るエッジライト型面光源装置は、上記本発明に係る導光板と、導光板の端面に光を供給する光源と、を備える。本発明に係る透過型画像表示装置は、エッジライト型面光源装置と、エッジライト型面光源装置の導光板と対向配置された透過型画像表示部と、を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェット法により導光板の反射ドットを形成する場合において、形成される反射ドットの均一性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】面光源装置を備える透過型画像表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】導光板の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、面光源装置を備える透過型画像表示装置の一実施形態を示す断面図である。図1に示す透過型画像表示装置100は、面光源装置20と、透過型画像表示部30とから主として構成される。面光源装置20は、樹脂板11を有する導光板1と、樹脂板11の端面S3に沿って設けられた光源3とを備えるエッジライト型面光源装置である。樹脂板11は出射面S1及びその反対側の背面S2を有しており、導光板1は、背面S2側に設けられた反射ドット12を更に有している。透過型画像表示部30は、導光板1の出射面S1側において導光板1と対向配置されている。透過型画像表示部30は、例えば、液晶セルを有する液晶表示部である。
【0016】
光源3から照射された光は、端面S3から樹脂板11に入射する。樹脂板11に入射した光は、反射ドット12において乱反射することにより、主として出射面S1から出射される。出射面S1から出射した面状の光は画像表示部30に供給される。均一な面状の光が効率的に出射面S1から出射されるように、反射ドット12のパターンが設計される。
【0017】
光源3は、LED等の点状光源であることが好ましい。この場合、樹脂板11の矩形の主面を構成する4辺のうち少なくとも1辺に沿って、複数の点状光源が配列される。
【0018】
図2は、導光板の製造方法の一実施形態を示す工程図である。本実施形態に係る製造方法は、基材フィルム25と基材フィルム25上に設けられ樹脂板11の表面に貼合されている粘着層21とを有する保護フィルム2を、樹脂板11から剥離する工程と、樹脂板11の粘着層21が貼合されていた表面S2を親水化処理する工程と、親水化処理された表面S2に、インクジェット法によってインク10をドット状にパターン印刷する工程と、パターン印刷されたインク10から反射ドット12を形成させる工程とから主として構成される。この方法により、樹脂板11及び樹脂板11上に設けられた反射ドット12を有する導光板1が製造される。
【0019】
図2の(a)に示されるように、樹脂板11は、その表面に保護フィルム2が貼合された状態で供給される。保護フィルム2の粘着層21は、例えば、エラストマーであるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有している。このエチレン−酢酸ビニル共重合体は、好ましくは、酢酸ビニルに由来する単量体単位8〜20質量%と、エチレンに由来する単量体単位80〜92質量%とを含む。粘着層21は、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外の他の成分を含有していてもよい。好ましくは、粘着層21は、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂及びインデン樹脂から選ばれる、被着体(樹脂板11)に対する濡れ性を向上させる材料を含有する。ロジン系樹脂は、例えば、ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジン変性物、及び、ロジン又は水添ロジンのグリセリンエステル又はペンタエリスリットエステルから選ばれる。これらのなかでも水添ロジンが好ましい。
【0020】
基材フィルム25は、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂フィルムである。ポリオレフィン系樹脂フィルムは、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリオレフィン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂を含む。基材フィルム25は、単層のフィルムであってもよいし、2層以上から構成される多層のフィルムであってもよい。
【0021】
樹脂板11は、透光性の樹脂シートである。具体的には、樹脂板11は、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル樹脂シート、ポリスチレンシート又はポリカーボネート系樹脂シートであることが好ましい。これらの中でも、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂シートが特に好ましい。
【0022】
樹脂板11の表面、特に背面S2に保護フィルムが貼合されていることにより、背面S2における傷及び汚れの発生が防止される。背面S2に傷があったり、汚れが付着していたりすると、インクの濡れ拡がり方が不均一となり、このことが反射ドット12の均一性が低下する原因となり得る。ただし、保護フィルムを樹脂板11から剥離した際に、保護フィルムの粘着剤が背面S2上にわずかに残る場合がある。残った粘着剤に起因して、パターン印刷されたインクにおけるスジ状の欠陥が生じたり、ムラが生じたりすることがある。しかし、本実施形態のように背面S2を親水化処理することにより、粘着剤の影響が低減され、背面S2に保護フィルムが貼合されていた場合であっても、反射ドット形成用のインクを高い均一性でパターン印刷することができる。
【0023】
保護フィルム2を樹脂板11から剥離して、樹脂板11の一方の主面である表面(背面)S2を露出させる(図1の(b))。保護フィルム2を剥離する方法は特に限定されない。
【0024】
露出した樹脂板11の表面(背面S2)に対して、インクのパターン印刷の前に親水化処理15が施される。通常、樹脂板の表面の水との接触角は、親水化処理によって小さくなる。親水化処理された樹脂板の表面の水との接触角は、好ましくは30度以上80度未満である。一般に、親水化処理される前の樹脂板の表面の水との接触角は80度以上である場合が多い。
【0025】
親水化処理は、例えば、紫外線照射、アルコールとの接触、及びプラズマ処理から選ばれる。紫外線照射は、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いて行うことができる。紫外線照射は、空気雰囲気下で行ってもよいし、オゾン雰囲気下で行ってもよい。アクリル樹脂板の表面とアルコールとの接触は、例えば、アルコールを浸み込ませたウエス等の繊維基材を用いてアクリル樹脂板の表面を拭く方法により行うことができる。アルコールとして、例えばイソプロピルアルコール(IPA)が用いられる。プラズマ処理としては、コロナ処理がある。
【0026】
次いで、図2の(c)に示されるように、粘着層21が貼合されていた表面S2に対して、反射ドット形成用のインク10がドット状にパターン印刷される。インク10は、インクジェットヘッド5から液滴状に吐出される。インクジェット法による印刷は、インクジェットヘッドを備える通常のインクジェット印刷装置を用いて行うことができる。インクジェットヘッドの走査速度は、好ましくは100mm/秒以上800mm/秒以下である。
【0027】
インク10は、硬化又は乾燥により反射ドットを形成するインクであればよく、例えば、紫外線硬化インク、水性インク又は溶剤インクが用いられる。これらのなかでも、環境対策の容易さなどの観点から、紫外線硬化インク及び水性インクが好ましい。紫外線硬化インクを用いる場合、印刷されたインク10に対してランプ7により紫外線を照射してインク10を硬化する工程を経て、硬化したインクからなる反射ドット12が形成される。紫外線硬化インクを用いることにより、紫外線照射により短時間で硬化することから、樹脂板の表面上における過剰な濡れ拡がりを防ぎ易い。硬化のための紫外線ランプの走査速度は、好ましくは100mm/秒以上800mm/秒以下である。これにより、低粘度の未硬化のインクが濡れ拡がる前にインクを硬化して、より良好な形状を有する反射ドットを形成することができる。水性インク又は溶剤インクを用いる場合、乾燥装置によりインクが乾燥されて、反射ドットが形成される。いずれの種類のインクも、酸化チタン粒子等の顔料を含んでいてもよいし、必要に応じて、微粒子を含まない透明なものであってもよい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
1.導光板の作製
実施例1
粘着層を有する保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板(40インチサイズ)を準備した。片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、UVランプを用いて積算光量50〜100mJ/cmの紫外線を照射した。紫外線が照射されたPMMA板表面に対して、インクジェットヘッドを用いて、紫外線硬化樹脂のインクをドット状に印刷した。印刷されたインクを、UVランプを用いた紫外線照射により硬化して、反射ドットを形成させた。以上の手順により、反射ドットを有する導光板を得た。形成された反射ドットを目視により観察したところ、印刷面全体にわたって印刷ムラは認められず、良好な均一性で反射ドットが形成されることが確認された。
【0030】
導光板の作成に用いたものと同様の、保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板から100mm角のサンプルを切り出した。このサンプルの片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、UVランプを用いて積算光量50〜100mJ/cmの紫外線を照射した。紫外線照射されたPMMA板表面の水との接触角を、接触角測定装置を用いて測定したところ、83度であった。
【0031】
実施例2
粘着層を有する保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板(40インチサイズ)を準備した。片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、UVランプを用いて積算光量350〜400mJ/cmの紫外線を照射した。これ以外は実施例1と同様の手順により、インクジェット法により反射ドットを形成させて、反射ドットを有する導光板を得た。形成された反射ドットを目視により観察したところ、印刷面全体にわたって印刷ムラは認められず、良好な均一性で反射ドットが形成されることが確認された。
【0032】
導光板の作成に用いたものと同様の、保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板から100mm角のサンプルを切り出した。このサンプルの片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、上記と同様の条件で紫外線処理を施した。紫外線照射されたPMMA板表面の水との接触角を、接触角測定装置を用いて測定したところ、70度であった。
【0033】
実施例3
粘着層を有する保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板(40インチサイズ)を準備した。片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、搬送速度5.0m/分でPMMA板を搬送しながら、表面から7〜9mmの距離をおいた位置からプラズマ処理を施した。プラズマ処理されたPMMA板表面に対して、実施例1と同様の手順により、インクジェットヘッド法により反射ドットを形成させた。以上の手順により、反射ドットを有する導光板を得た。形成された反射ドットを目視により観察したところ、印刷面全体にわたって印刷ムラは認められず、良好な均一性で反射ドットが形成されることが確認された。
【0034】
導光板の作成に用いたものと同様の、保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板から100mm角のサンプルを切り出した。このサンプルの片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、上記と同様の条件でプラズマ処理を施した。プラズマ処理されたPMMA板表面の水との接触角を、接触角測定装置を用いて測定したところ、61度であった。
【0035】
実施例4
粘着層を有する保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板(40インチサイズ)を準備した。片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、イソプロピルアルコールを浸み込ませた紙製のウエスを軽く擦り付けた。その後、その表面上に、実施例1と同様の手順により、インクジェットヘッド法により反射ドットを形成させた。以上の手順により、反射ドットを有する導光板を得た。形成された反射ドットを目視により観察したところ、印刷面全体にわたって印刷ムラは認められず、良好な均一性で反射ドットが形成されることが確認された。
【0036】
導光板の作成に用いたものと同様の、保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板から100mm角のサンプルを切り出した。このサンプルの片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、上記と同様の条件でアルコールとの接触による親水化処理を施した。アルコールとの接触により親水化処理されたPMMA板表面の水との接触角を、接触角測定装置を用いて測定したところ、74度であった。
【0037】
比較例1
粘着層を有する保護フィルムが両面に貼合されたPMMA板(長さ100mm、幅100mm、厚み4mm)を準備した。片方の保護フィルムを剥離し、露出したPMMA板表面に対して、実施例1と同様の手順により、インクジェットヘッド法により反射ドットを形成させた。以上の手順により、反射ドットを有する導光板を得た。インクを印刷する前のPMMA板表面の水との接触角を、接触角測定装置を用いて測定したところ、85度であった。形成された反射ドットを目視により観察したところ、印刷ムラが多く発生していることが確認された。
【0038】
【表1】

【符号の説明】
【0039】
1…導光板、2…保護フィルム、3…光源、5…インクジェットヘッド、7…ランプ、11…樹脂板、12…反射ドット、20…面光源装置、21…粘着層、25…基材フィルム、30…透過型画像表示部、100…透過型画像表示装置(液晶表示装置)、S1…出射面、S2…背面、S3…端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと該基材フィルム上に設けられ樹脂板の表面に貼合されている粘着層とを有する保護フィルムを、前記樹脂板から剥離する工程と、
前記樹脂板の前記粘着層が貼合されていた表面を親水化処理する工程と、
親水化処理された前記表面に、インクジェット法によってインクをドット状にパターン印刷する工程と、
パターン印刷された前記インクから反射ドットを形成させる工程と、
を備える、導光板の製造方法。
【請求項2】
前記親水化処理が紫外線照射、アルコールとの接触、又はプラズマ処理である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記インクが紫外線硬化インクである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって得ることのできる導光板。
【請求項5】
請求項4に記載の導光板と、
前記導光板の端面に光を供給する光源と、
を備えるエッジライト型面光源装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエッジライト型面光源装置と、
前記エッジライト型面光源装置の導光板と対向配置された透過型画像表示部と、
を具備する透過型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−101783(P2013−101783A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243921(P2011−243921)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】