説明

導水管コイルを巻き取る方法

【課題】導水管コイル、とくに排水性舗装用導水管コイルの施工において、コイルが絡んだ状態になることを防止して長尺化を可能にし、さらに長尺の導水管コイルの巻き取りを容易にし、さらに短尺の端部を重ねて接続する材料ロスと手間を省くことのできる、施工性の良い、導水管コイルの巻き取り方法を提供すること。
【解決手段】導水管コイルをドラムに巻き付ける際、導水管コイル単体の表面に、またはドラムに巻き付けたコイル段ごとの表面に、表皮層を設けて、導水管コイルをドラムに巻き取る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導水管コイル、とくに排水性舗装用導水管コイルをドラムに巻き取る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排水性舗装道路の側辺に埋設する導水管としては、当初金属製コイルからなる導水管(特許文献1、特許文献2、特許文献3)が、広まっているが、その構造がコイル状であるため、輸送時や施工取り扱い時において導水管コイルが絡むという問題がある。そのため導水管を5m程度しか長尺化することができず、短尺故に、端部を重ねて接合することを繰り返して舗装全長を配管施工するという、材料のロスと手間のロスを余儀なくされている。一方、後に開発された樹脂モノフィラメントを編組した樹脂導水管(特許文献4)では、長尺で施工性に優れるものの、金属製と比較すれば耐熱および耐押圧力に劣り、結果的に、実使用においては、金属製コイルは交通量が多く、さらに重貨物の割合が高い重交通道路で使用され、樹脂製コイルはそれ以外の道路に使用されるなどの用途による棲み分けがなされている。
【特許文献1】実公平5−33522号公報(請求の範囲)
【特許文献2】特開平6−2601号公報(請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−93041号公報(請求の範囲)
【特許文献4】特開平8−184012号公報(請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消したものであり、導水管コイル、とくに排水性舗装用導水管コイルの施工において、コイルが絡んだ状態になることを防止して長尺化を可能にし、さらに長尺の導水管コイルの巻き取りおよび巻き出しを容易にし、さらに短尺の端部を重ねて接続する材料ロスと手間を省くことのできる、施工性の良い、導水管コイルの巻き取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的は、導水管コイルをドラムに巻き付ける際、導水管コイル単
体の表面に、またはドラムに巻き付けたコイル段ごとの表面に、表皮層を
設けて、導水管コイルをドラムに巻き取る方法を提供することによって達
成される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、導水管コイルが絡んだ状態になることを防止することができるので、長尺の導水管コイルの巻き取りが可能であり、そのために短尺の端部を重ねて接続する材料ロスと手間を省くことができ、さらに巻き取った導水管を容易に配管することができるため、施工性が極めて良好な導水管コイル、とくに排水性舗装用導水管コイルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明を図面により説明する。
図1および図2は、本発明の一例を示すものであり、コイル1がドラム2に巻き付けられた導水管コイルの状態を示している。図1は、表皮層3を、コイルの長手方向の両側からコイル表面を巻き込むか、またはらせん状に巻き付けたコイルをドラムに巻きつけた構造の断面図であり、図2は、コイルがドラム幅に見合う幅に多周に巻き付けた段を成し、コイル段ごとの表面に表皮層4を設けた構造の断面図である。
【0007】
本発明の導水管コイル1は、とくに排水性舗装用導水管に有用であり、コイルのピッチ空隙や管内空隙が雨水などの導水路となるものである。したがって、舗装埋設時において表皮層は離型されることが好適である。また、コイルの材質として求められるものは、160℃以上の舗装温度の下で形状保持されることであり、これに耐えるあらゆる金属と耐熱性の高い樹脂材質が使用可能であるが、経済性を考慮すると、金属では、鉄線、ステンレス線、メッキ鉄線、が好適であり、樹脂では、ポリエステル線、ナイロン線、およびガラス繊維に代表される補強材によって耐熱性を向上させた樹脂線が好適である。
さらには、導水管コイルが、排水性舗装に使用される場合は、舗装の表面から出ないこと、および構成される舗装礫材がコイル内に入り込まないこと、という要件から、コイル形態は、外径が8mm〜55mmの範囲にあり、コイルのらせん間隔(ピッチ)が20mm以下であることが実用的な範囲であり望ましい。また、導水管コイルの長さは5m以上の長尺であることが好適である。
【0008】
図3は、コイル1の側面図であり、このコイルに表皮層3、4を設けないで、巻き取り、さらに巻き出しすると、図4に示されるように、コイルのネジレや重なりによってコイル空隙にコイル芯材が嵌り込み、絡んだ状態5になる。本発明において表皮層3または4を使用することにより、これらの欠点を解消することができる。表皮層の材質としては、あらゆる種類のシート材質が使用可能であるが、コイルへの形状追随性およびリサイクル性を考慮すると、紙、織布、不織布が好適であり、とくにシワ加工した再生紙(通称クレープ紙)、セルロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフイン(ポリエチレン、ポリプロピレン)などの天然または合成繊維製の不織布が好適なものとして挙げられる。
【0009】
コイル単体の表面に表皮層3を設ける方法としては、コイル外周に、帯状に裁断した表皮層3を連続的にらせん状に巻き付けるか、または、コイルの長手方向の両側からコイルを連続的に巻き込む方法、たとえば海苔巻き状に巻き付ける方法があげられる。このうち、連続的に海苔巻き状に巻き付ける方法が、被覆生産性が高く、また施工時の離型性が極めて容易であることから好適である。
【0010】
また、ドラム幅に見合う幅に巻き付けたコイル段ごとの表面に表皮層4を設ける方法としては、コイル段の表面上に表皮層4を巻きつけ、さらにその上にコイルを巻きつけてコイル段を形成し、その上にさらに表皮層4を巻きつける方法、すなわちコイル段とコイル段との間に表皮層4を設ける方法があげられる。しかしながら、この方法では、コイル左右間に表皮層がないため、輸送および保管状態によっては、コイルの絡みを防止する効果が損なわれる場合があるため、前記したコイル単体の表面を表皮層3で覆う方法が好適である。
【0011】
本発明においては、表皮層は、導水管コイルの単体の表面、またはドラムに巻き付けたコイル段ごとの表面に、直接接着して接合されることなく、被覆されており、巻き出しする場合、表皮層が容易に剥離するように設けられていることが好適である。
【0012】
ドラム2は、施工時において長尺コイルをリール式に巻き取り、巻き出すためのものであり、さらには、表皮層3または段ごとの表皮層4と組み合わせることにより、輸送および保管時の絡みも防止し、収納のコンパクト化を可能にするためのものである。
【実施例1】
【0013】
次に、本発明の実施例を示す。
線径1.5mm、外径18mm、ピッチ3.0mmの亜鉛メッキ付き鋼線コイル(排水性舗装用導水管コイル)を、幅60mmのクレープ紙で海苔巻き被覆しながら、ドラムの巻き芯径80mm、巻き幅有効長450mmのドラムに、24周1段で6段、長さ60m巻き付けた。
【実施例2】
【0014】
線径1.5mm、外径18mm、ピッチ3.0mmの亜鉛メッキ付き鋼線コイル(排水性舗装用導水管コイル)を、ドラムの巻き芯径80mm、巻き幅有効長450mmのドラムに、24周で1段巻き付けるごとに幅450mmのクレープ紙を表皮層として段外周を包み、6段で長さ60mを巻き付けた。
【0015】
比較例1
線径1.5mm、外径18mm、ピッチ3.0mmの亜鉛メッキ付き鋼線コイル(排水性舗装用導水管コイル)を、ドラムの巻き芯径80mm、巻き幅有効長450mmのドラムに、1段24周で6段、長さ60mを直接巻き付け、比較例1とした。
【0016】
上記の実施例1、実施例2および比較例1で得た、ドラムに巻き付けた導水管コイルを、ドラム外径に見合うように等しく梱包し、岐阜〜浜松間で輸送実験をした。その後、梱包を開封し、長尺コイルが絡まないことで手早く巻き出せるか、表皮剥離の手間はどうか、という施工性(作業性)の改善効果を確認した。
【0017】
本発明の輸送実験後の確認結果を下記に示す。
実施例1は、導水管コイルを絡ませずに良好に巻き出すことができ、同時にクレープ紙の剥離も行うことが可能であり、最も施工性(作業性)に優れていた。
実施例2は、輸送中での導水管コイル絡みは見られなかったが、段外周を包むクレープ紙を剥離してからコイルの左右間で軽く重なる現象が見られ、実施例1と比較した場合、若干施工性(作業性)に劣っていた。
比較例1は、輸送途中において上下段の間で重なり部が多発し、巻き出すことが非常に困難であり実用に適さなかった。
このように、本発明によれば、排水性舗装用導水管コイルの施工性を著しく改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、道路の側辺に導水管コイルを埋設する場合に有用である。導水管を配設したあと、その上にアスフアルト舗装、とくに透水性舗装を行い、舗装道路とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】導水管コイル単体の表面に表皮層3を海苔巻き状またはらせん状に巻き付けたコイルをドラムに巻き付けた構造の断面図である。
【図2】ドラムに巻き付けたコイル段ごとの表面に表皮層4を巻き付けた構造の断面図である。
【図3】導水管コイル1の側面図である。
【図4】図3の導水管コイルに表皮層を設けないで、巻き取り、さらに巻き出した場合、コイル空隙にコイルが嵌り込み、絡んだ状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 導水管コイル
2 ドラム
3 導水管コイル単体ごとの表皮層
4 導水管コイル段ごとの表皮層
5 導水管コイルの絡んだ状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導水管コイルをドラムに巻き付ける際、導水管コイル単体の表面に、またはドラムに巻き付けたコイル段ごとの表面に、表皮層を設けて、導水管コイルをドラムに巻き取る方法。
【請求項2】
表皮層が、導水管コイル単体の表面、または、ドラムに巻き付けたコイル段ごとの表面に、直接接着して接合されることなく、被覆され、容易に剥離が可能な状態に設けられている請求項1記載の導水管コイルをドラムに巻き取る方法。
【請求項3】
表皮層が、コイルの長手方向の両側からコイル表面を巻き込むように、またはらせん状にコイル表面を巻き付けるように設けられている請求項1または2記載の導水管コイルをドラムに巻き取る方法。
【請求項4】
表皮層が、紙、織布および不織布から選ばれる薄膜材である請求項1〜3のいずれかに記載の導水管コイルをドラムに巻き取る方法。
【請求項5】
導水管コイルの長さが、5m以上の長尺である請求項1〜4のいずれかに記載の導水管コイルをドラムに巻き取る方法。
【請求項6】
導水管コイルが、金属または樹脂製導水管コイルである請求項1〜5のいずれかに記載の導水管コイルをドラムに巻き取る方法。
【請求項7】
導水管コイルが、排水性舗装舗装用導水管コイルである請求項1〜6のいずれかに記載の導水管コイルをドラムに巻き取る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−176264(P2006−176264A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370749(P2004−370749)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)
【出願人】(592127921)沢根スプリング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】