説明

導電性シート

【課題】
カレンダー成形、押出成形のような溶融賦形法による成形方法から得られるシートでも良好な導電性を発揮する導電性シートを提供することである。
【解決手段】
上記目的を達成する本発明の導電性シートは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電性繊維20〜100重量部と粒子A20〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融賦形法により成形してなり、上記粒子Aが上記溶融賦形法による成形中に形状を保持している導電性シートとしたことであり、上記熱可塑性樹脂組成物から導電性繊維と粒子Aを除いた樹脂組成物の成形温度における溶融粘度が3000Pa・S以下としたことであり)、上記粒子Aが架橋した熱可塑性樹脂製の粒子としたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IT工場、病院の手術室、コンピューター室等の静電気による障害(電算機の誤作動、塵埃の付着等)を防止するために使用する導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性シートに関する検討は多くなされている。例えば、熱可塑性樹脂に導電性酸化亜鉛、導電性酸化チタン、導電性酸化スズ等の導電性酸化物を70〜90重量%含有させたシートとカーボン繊維層を積層したシートが提案されている(特許文献1)。このシートは表面抵抗が10〜10Ωと電気性能に優れたものである。また、導電性繊維を含有した導電性樹脂ペーストを海成分とし導電性または非導電性チップを島成分とした導電性シートが提案されている(特許文献2)。このシートは電気性能に優れ、海成分と島成分の色調を変えることができるため意匠性に富んだものである。
【特許文献1】特開昭60−6454
【特許文献2】特開平4−289373
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のシートは、多量の導電性酸化物を含有するためシート成形時の加工性が劣っている。特許文献2のシートは、導電性繊維を含有した導電性樹脂ペーストをコーティング加工しその上に合成樹脂ペレットを散布し押圧・固化させるので生産性(生産速度)が劣っていた。また、導電性樹脂ペーストと合成樹脂ペレットをカレンダー成形、押出成形のような溶融賦形法による成形方法で行うと導電性樹脂ペーストと合成樹脂ペレットはともに成形加工温度で溶融し均一になり、溶融した樹脂と共に導電性繊維も成形方向に配向するため、導電性繊維同士のつながりが少なくなり電気性能が劣るという問題点があった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、カレンダー成形、押出成形のような溶融賦形法による成形方法から得られるシートでも良好な導電性を発揮する導電性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成する本発明の導電性シートは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電性繊維20〜100重量部と粒子A20〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融賦形法により成形してなり、上記粒子Aが上記溶融賦形法による成形中に形状を保持している導電性シートとしたことであり(請求項1)、上記熱可塑性樹脂組成物から導電性繊維と粒子Aを除いた樹脂組成物の成形温度における溶融粘度が3000Pa・S以下としたことであり(請求項2)、上記粒子Aが架橋した熱可塑性樹脂製の粒子としたことである(請求項3)。
【発明の効果】
【0005】
本発明の導電性シートは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電性繊維20〜100重量部と粒子A20〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融賦形法により成形してなり、上記粒子Aが上記溶融賦形法による成形中に形状を保持している導電性シートとしたことにより、粒子Aの近傍では、導電性繊維の流れ方向が変化し、絡み合う状態になるので導電性繊維同士がより繋がり易くなり良好な電気性能が得られる。また、上記熱可塑性樹脂組成物から導電性繊維と粒子Aを除いた樹脂組成物の成形温度における溶融粘度を3000Pa・S以下とすることにより、導電性繊維の流れ方向の変化が大きくなり、電気性能がより向上する。更に、粒子Aを架橋した熱可塑性樹脂製の粒子とすることにより、粒子Aの形状保持性が高くなり電気性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の導電性シートは、熱可塑性樹脂、導電性繊維、粒子Aを含有してなる熱可塑性樹脂組成物を溶融賦形法により成形して得られるものである。
【0007】
本発明で云う溶融賦形法とは、熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融し混練して賦形後冷却固化する成形方法で、押出成形、カレンダー成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形等が挙げられる。加熱溶融混練の過程を含まないペースト等液状樹脂のコーティング法、粉体樹脂の焼結法は含まない。これらコーティング法、焼結法では電気特性の向上は図れない。
本発明では、導電性繊維、粒子Aを含有しているため加工性を考慮すると、溶融賦形法の中でも、押出成形、カレンダー成形が好ましい。
【0008】
溶融賦形法の成形によって熱可塑性樹脂は溶融し、その熱可塑性樹脂中に導電性繊維、粒子Aが存在している状態である。成形時に熱可塑性樹脂の流動の影響を受けて熱可塑性樹脂とともに導電性繊維は成形方向に配向しようとするが、熱可塑性樹脂の成形温度では粒子Aは流動せず、熱可塑性樹脂の配向を阻害する作用を及ぼす。このことにより、導電性繊維は、図1のように互いに繋がり表面抵抗値、体積固有抵抗値等の電気特性が向上する。
【0009】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、エチレンプロピレンゴム、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、スチレン系共重合体[例えば、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(SES)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等]、水素添加スチレン系共重合体[例えば、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等]、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。これらを1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0010】
粒子A近傍では、熱可塑性樹脂は粒子Aを包むように流動し、その影響で導電性繊維は成形方向と直角の厚み方向に向きを変えやすくなる。その結果、成形方向に配向した導電性繊維と厚み方向に配向した導電性繊維の絡み合いが多くなり表面抵抗値、体積固有抵抗値等の電気特性が向上する。この際、熱可塑性樹脂の溶融粘度を低くすることにより熱可塑性樹脂の流動性が増し、導電性繊維は方向を変えやすくなり成形方向と垂直方向(厚み方向)の導電性繊維の絡み合いが増加して電気特性がより向上する。
導電性繊維と粒子Aを除いた樹脂組成物の成形温度での溶融粘度は、3000Pa・S以下が好ましく、2000Pa・S以下がより好ましい。溶融粘度の下限としては加工性との兼ね合いで400Pa・S程度である。
溶融粘度の測定は東洋精機社製キャピログラフを使用し、測定温度としては樹脂組成物の適正な成形加工温度(概ね140〜200℃前後)で、せん断速度としては12.16sec−1で実施した。
【0011】
本発明で使用する導電性繊維としては、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、銅繊維等の各種金属の繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられ、さらにこれらの表面をインジウムドープ酸化スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の導電性材料で被覆されたものも使用することができる。また、ガラス繊維、ポリエステル繊維等の繊維の材質自体には導電性を持たない繊維にITO、ATO等の導電性材料を被覆したものも使用できる。これらを1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。取り扱い性、加工性の面から導電性繊維はステンレス繊維、炭素繊維が好ましい。
導電性繊維は、繊維径0.005〜1mm、繊維長さ0.1〜5mm、アスペクト比(繊維長さ/繊維径)5〜1000のものが使用でき、成形加工中での分散性、絡み易さの面から繊維径0.01〜0.1mm、繊維長さ0.5〜2mm、アスペクト比20〜200のものが好ましい。導電性繊維の絡み易さの面から形状はカールしているものが好ましい。
導電性繊維の添加量は20〜100重量部であり、20重量部未満であると導電性繊維同士の繋がりが少なくなるため導電性が劣り、100重量部を超えると加工性が悪くなる。導電性繊維の添加量は、導電性、加工性の面から20〜80重量部が好ましい。
【0012】
本発明でいう粒子Aとは、本発明で使用する熱可塑性樹脂組成物の溶融賦形法による成形中に形状、大きさをほぼ保持している粒子のことであり、形状、大きさが多少変化してもよい。例えば、1辺が2mmの立方体の粒子が成形加工中に角の部分が少し丸くなる程度であれば粒子Aであるが、溶融してしまい導電性繊維よりも小さい大きさになるものは粒子Aには該当しない。粒子Aとしては、前述した本発明に用いられる熱可塑性樹脂と同種のものからなる粒子、架橋された樹脂(例えば、架橋塩化ビニル樹脂、部分架橋アクリル樹脂、完全架橋アクリル樹脂等)からなる粒子、ゴム(天然ゴム、NBR、SBR、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム等)からなる粒子、加硫したゴムからなる粒子、木粉、天然繊維(セルロース繊維、バナナ繊維等)、熱可塑性樹脂製繊維(ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維等)、ポリエステルチップなどが挙げられ、熱可塑性樹脂との密着性の面から好ましくは熱可塑性樹脂と組成的に近似した成分のものがよい。例えば、熱可塑性樹脂として、塩化ビニル樹脂100重量部(重合度700)に可塑剤のDOP50〜70重量部を添加した塩化ビニル系樹脂(1)を使用する場合、粒子Aとしては、塩化ビニル樹脂(重合度1300)100重量部に可塑剤のDOP20〜30重量部を添加した塩化ビニル系樹脂(2)から得られる粒子が好適に使用できる。塩化ビニル系樹脂(1)の成形加工温度は150〜160℃であり、この温度では成形温度が180〜190℃である塩化ビニル系樹脂(2)は成形中に溶融しずらく形状を保持することができる。また、熱可塑性樹脂が塩化ビニル系樹脂の場合、粒子Aとしては、架橋塩化ビニル樹脂からなる粒子、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)からなる粒子がよい。粒子Aは、ベースとなる熱可塑性樹脂の成形温度で溶融しないものを選定する必要がある。
【0013】
粒子Aの形状は球形、円柱形、円錐形、多角柱状、多面体、板状、フィルム状、不定形など特に限定されることはない。粒子Aの大きさは、JIS Z 8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に規定される公称目開き11.2mmを通過し、公称目開き1mmを通過しないものがよい。公称目開き1mmを通過するもの(公称目開き1mmよりも小さいもの)では導電性繊維の向きを変え難くなり、公称目開き11.2mmを通過しないもの(公称目開き11.2mmより大きい)では加工性が悪くなる。粒子Aが球形、円柱形、円錐形、多角柱状、多面体、不定形の場合、公称目開き4mmを通過し1.0mmを通過しないものが好ましく、粒子Aが板状、フィルム状の場合は公称目開き8mmを通過し4.75mmを通過しないものが好ましい。
【0014】
粒子Aの添加量は20〜100重量部がよく、電気性能、加工性の面から好ましくは30〜80重量部である。20重量部未満の場合は導電性繊維の配向を阻害する部分が少ないため導電性繊維の絡んでいる部分が少なくなり電気性能が劣り、100重量部を超えると加工性が悪くなる。
【0015】
粒子Aには電気性能を向上させるために導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等)、ITO、ATO等の導電材料を被覆することもできる。
【0016】
本発明の導電性シートにはカーボンブラック、ケッチェンブラック等の導電性材料を配合してなる層の上に積層することができ、さらに意匠性を向上させるためにエンボスを施すことができる。
【0017】
本発明の導電性シートには性能を害さない範囲で可塑剤、顔料、各種充填材(炭酸カルシウム、タルク、マイカ、水酸化マグネシウム等)、各種安定剤(光安定剤、加工助剤、帯電防止剤等)を添加することができる。
【実施例】
【0018】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
表1は本発明に係る導電性シートを形成する配合成分を示し、表2は比較例として配合成分を示す。配合成分の配合割合を示す数字の単位は、重量部である。
【0019】
【表1】








【0020】
【表2】

【0021】
尚、表1〜2に示す各配合成分は以下のものを使用した。
<熱可塑性樹脂>
(1)PVC 品名:TH−1000(P=1000) 大洋塩ビ社製
(2)EVA 品名:UE−631(MFR=1.5) 東ソー社製
<導電性繊維>
(3)炭素繊維 (径:0.013mm 長さ:0.7mm)
(4)炭素繊維 (径:0.013mm 長さ:1.5mm)
(5)ステンレス繊維 (径:0.015mm 長さ:0.15mm)
(6)ステンレス繊維 (径:0.070mm 長さ:0.80mm)
<粒子A>
(7)粒子:厚み0.3mmの架橋PVC樹脂製のシートを粉砕機で粉砕して得られた不定形の粒子のうち、公称目開き4mmのふるいを通過し公称目開き1mmのふるいを通過しないもの。
(8)粒子:厚み0.01mmのPET(PET樹脂 融点:265℃ 成形加工温度:280℃)樹脂製フィルムを粉砕機で粉砕して得られたフィルム状粒子のうち、公称目開き8mmのふるいを通過し公称目開き4.75mmのふるいを通過しないもの。
(9)粒子:厚み0.05mmのPP[ホモポリプロピレン MFR(230℃)=3.0g/min 成形加工温度:230℃]樹脂製フィルムを粉砕機で粉砕して得られたフィルム状粒子のうち、公称目開き2.8mmのふるいを通過し公称目開き1mmのふるいを通過しないもの。
(10)粒子:厚み0.3mmのPVC製シート[PVC樹脂(P=1300)100重量部、DOP30重量部、Ba−Zn系安定剤3重量部からなる配合 成形加工温度:200℃]を粉砕機で粉砕して得られた不定形粒子のうち、公称目開き9.5mmのふるいを通過し公称目開き2mmのふるいを通過しないもの。
(11)粒子:厚み0.3mmのPVC製シート[PVC樹脂(P=1000)100重量部、DOP50重量部、Ba−Zn系安定剤3重量部からなる配合 成形加工温度:160℃]を粉砕機で粉砕して得られた不定形粒子のうち、公称目開き4mmのふるいを通過し公称目開き1mmのふるいを通過しないもの。
【0022】
<実施例1>
表1に示すNo1の配合組成を180℃の温度でカレンダー成形して、幅1900mm、厚み0.5mmの導電性シートを得た。
【0023】
<実施例2>
表1に示すNo1の配合組成を190℃の温度でカレンダー成形して、幅1900mm、厚み0.5mmの導電性シートを得た。
【0024】
<実施例3>
表1に示すNo1配合にさらにカーボンブラック200重量部を添加した配合組成を180℃の温度でカレンダー成形し、幅1500mm、厚み1.6mmのシートを得、さらに、No2の配合組成を180℃の温度で0.4mmにカレンダー成形するとともに得られた上記シートの上に積層して幅1500mm、厚み2.0mmの積層シートを形成した。形成した該積層シートに200メッシュのエンボス模様を施し、導電性シートを得た。
【0025】
<実施例4>
表1に示すNo1配合にさらにカーボンブラック200重量部を添加した配合組成を180℃の温度でカレンダー成形し、幅1500mm、厚み1.6mmのシートを得、さらに、No3の配合組成を180℃の温度で0.4mmにカレンダー成形するとともに得られた上記シートの上に積層して幅1500mm、厚み2.0mmの積層シートを形成した。形成した該積層シートに200メッシュのエンボス模様を施し、導電性シートを得た。
【0026】
<実施例5>
表1に示すNo1配合にさらにカーボンブラック200重量部を添加した配合組成を180℃の温度でカレンダー成形し、幅1500mm、厚み1.6mmのシートを得、さらに、No4の配合組成を140℃の温度で0.4mmにカレンダー成形するとともに得られた上記シートの上に積層して幅1500mm、厚み2.0mmの積層シートを形成した。形成した該積層シートに200メッシュのエンボス模様を施し、導電性シートを得た。
【0027】
<実施例6>
表1に示すNo1配合にさらにカーボンブラック200重量部を添加した配合組成を180℃の温度でカレンダー成形し、幅1500mm、厚み1.6mmのシートを得、さらに、No4の配合組成を180℃の温度で0.4mmにカレンダー成形するとともに得られた上記シートの上に積層して幅1500mm、厚み2.0mmの積層シートを形成した。形成した該積層シートに200メッシュのエンボス模様を施し、導電性シートを得た。
【0028】
<実施例7>
表1に示すNo5の配合組成を160℃の温度でカレンダー成形して、幅1100mm、厚み0.5mmのシートを形成し、形成した該シートに200メッシュのエンボス模様を施し、導電性シートを得た。
【0029】
<実施例8>
表1に示すNo5の配合組成を160℃の温度で押出成形して、幅1100mm、厚み0.5mmのシートを形成し、形成した該シートに200メッシュのエンボス模様を施し、導電性シートを得た。
【0030】
<比較例1>
表2に示すNo6の配合組成を190℃の温度でカレンダー成形して、幅1900mm、厚み0.5mmの導電性シートを得た。
【0031】
<比較例2〜4>
表1に示すNo1配合にさらにカーボンブラック200重量部を添加した配合組成を180℃の温度でカレンダー成形し、幅1500mm、厚み1.6mmのシートを得、さらに、No7〜No9の配合組成をそれぞれ180℃の温度で0.4mmにカレンダー成形するとともに得られた上記シートの上にそれぞれ積層して幅1500mm、厚み2.0mmの積層シートを形成した。形成した該シートに200メッシュのエンボス模様を施し、導電性シートを得た。
【0032】
実施例及び比較例における各導電性シートの評価は、電気性能、加工性(カレンダー成形、押出成形)、密着性について以下の方法、基準で行った。その結果を表3、表4に示す。
[電気性能]
電気性能の評価はIEC61340−4−1に準じた方法で行い以下の基準で評価した。
◎:印加電圧10Vで測定し、表面抵抗値が1.0×10以上、1×10未満。
○:印加電圧10Vで測定し、表面抵抗値が1.0×10以上、1×10未満。
△:印加電圧100Vで測定し、表面抵抗値が1.0×10以上、1×1010未満。
×:印可電圧100Vで測定し、表面抵抗値が1.0×1010以上。
[加工性(カレンダー成形)]
加工性の評価はカレンダー成形状態を目視で観察し評価した。
○:バンク回りが安定し加工が容易である。
△:バンク回りが少し不安定であるが加工上問題にならない。
×:バンク回りが不安定であり、加工上問題である。
[加工性(押出成形)]
加工性の評価は押出成形状態を目視で観察し評価した。
○:吐出が安定し加工が容易である。
△:吐出が少し不安定であるが加工上問題にならない。
×:吐出が不安定であり、加工上問題である。
[密着性]
密着性の評価は成形したシートを180°に折り曲げた時のシートの割れについて目視で観察し評価した。
○:割れが見られない
△:割れが少し見られる
【0033】
尚、溶融粘度は、各配合組成物からの導電性繊維、粒子Aを除いた樹脂組成物を180℃に設定した2本ロールで10分間混練して厚み0.4mmのシートを作製し、東洋精機社製キャピログラフを使用して表3、4に示す測定温度で、せん断速度を12.16sec−1として測定した。









【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
表3、表4から実施例2の方が比較例1よりも電気性能が良いことが理解される。
比較例1は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維10重量部、粒子A30重量部を含有しているが導電性繊維の添加量が少ないため電気性能が悪い。実施例2は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維20重量部、粒子A20重量部を含有しており導電性繊維の添加量が適正範囲である効果である。
【0037】
表3、表4から実施例3の方が比較例2よりも電気性能が良いことが理解される。比較例2は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維60重量部、粒子A10重量部を含有しているが粒子Aの添加量が少ないため電気性能が悪い。実施例3は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維70重量部、粒子A80重量部を含有しており粒子Aの添加量が適正範囲である効果である。
【0038】
表3、表4から実施例3の方が比較例3よりも加工性が良いことが理解される。比較例3は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維60重量部、粒子A120重量部を含有しているが粒子Aの添加量が多すぎるため加工性が悪い。実施例3は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維70重量部、粒子A80重量部を含有しており粒子Aの添加量が適正範囲である効果である。
【0039】
表3、表4から実施例4の方が比較例4よりも電気性能が良いことが理解される。比較例4は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維30重量部、(11)粒子80重量部を含有し、実施例4は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維60重量部、(10)粒子50重量部を含有しており比較例、実施例とも熱可塑性樹脂、導電性繊維、粒子[比較例4では、(11)粒子は粒子Aには該当しない]の添加量は適正範囲である。しかし、比較例4で使用する(11)粒子の成形加工温度は160℃であり、配合No9の成形加工温度は180℃であるため、成形加工中に(11)粒子が溶融してしまい熱可塑性樹脂の配向を阻害する物が存在しなくなる。そのため、導電性繊維の絡み合いが少なく電気性能が悪くなる。実施例4は粒子Aの組成が適正であるため形状及び大きさを保持しており、その結果電気性能が向上する。
【0040】
表3の実施例4の方が実施例3よりも密着性が良いことが理解される。実施例3は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維70重量部、粒子A80重量部を含有しているが実施例4は熱可塑性樹脂100重量部、導電性繊維60重量部、粒子A50重量部を含有しておりさらに粒子Aに使用している樹脂が上記熱可塑性樹脂と近い成分であることからより密着性が向上することがわかる。
【0041】
表3の実施例1と実施例2から、導電性繊維、粒子Aを除いた樹脂組成物の成形加工温度での溶融粘度が実施例1は3021Pa・S、実施例2は2369Pa・Sであり、3000Pa・S以下の方が電気性能が向上することがわかり、さらに実施例5と実施例6からは、導電性繊維、粒子Aを除いた樹脂組成物の成形加工温度での溶融粘度が実施例5は2540Pa・S、実施例6は687Pa・Sであり、2000Pa・S以下の方がより電気性能が向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の導電性シートは、カレンダー成形または押出成形により製造しても、良好な電気性能が得られるため、IT工場、病院の手術室、コンピューター室等で床、壁、間仕切り、テーブルトップ、トレーなどの用途に広範に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の導電性シートの1実施形態を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 導電性シート
2 導電性繊維
3 粒子A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電性繊維20〜100重量部と粒子A20〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融賦形法により成形してなり、上記粒子Aが上記溶融賦形法による成形中に形状を保持していることを特徴とする導電性シート。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂組成物から導電性繊維と粒子Aを除いた樹脂組成物の成形温度における溶融粘度が3000Pa・S以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性シート。
【請求項3】
上記粒子Aが架橋した熱可塑性樹脂製の粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性シート

【図1】
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【公開番号】特開2009−217986(P2009−217986A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58069(P2008−58069)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】