説明

導電性布帛

【課題】布帛本体と接続部材との接続部分が、布帛本体から浸入する水によって腐食してしまうことを防止する導電性布帛を提供すること。
【解決手段】導電糸11を含む布帛本体10と、前記導電糸11に接触する電線211を含む接続部材30とを備え、前記電線を211介して前記導電糸11に通電可能な導電性布帛であって、前記接続部材20は、前記布帛本体10の側縁部およびその側縁の外側で露出した前記導電糸11の端部を前記布帛本体10の厚み方向に挟み込むように取り付けられており、この接続部材20における前記厚み方向における一方側に位置する部分と他方側に位置する部分の間の空間Sには、撥水性材料40が充填されている導電性布帛1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電されることによって発熱する導電糸を含む布帛本体を有する導電性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、導電糸が織り込まれた布帛本体(加熱帯)と、布帛本体に取り付けられた接続部材(平面接続手段)と、を備える導電性布帛(表面加熱部材)が記載されている。導電性部材(電線)を有する接続部材は、電源等と電気的に接続されており、この接続部材を介して導電糸に通電され、導電糸が発熱する。つまり、この導電糸を含む布帛本体がシート状のヒータ部材として機能するものであり、例えば車両用シートを温めるヒータ装置として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用シートのヒータ装置として使用される場合、乗員が濡れたままシートに着座したり、乗員の汗などによって布帛本体が濡れてしまうことがある。布帛本体にしみこんだ水(液体)は、金属部分が露出している布帛本体(導電糸)と接続部材(電線)の電気的な接続部分(両者の接触部分)に浸入し、当該接続部分の露出した金属の腐食(金属の溶出や塩化物の析出)を招き、通電不良が発生するおそれがある。布帛本体に海水や汗などの塩類を多く含む水がしみこんだ場合には、かかる問題はさらに顕著となる。特許文献1に記載の導電性布帛では、導電糸などに防水処理(絶縁処理)が施されていることなどが記載されている。しかし、かかる防水処理は表面的なものに過ぎず、金属が露出していなければならない接続部分を確実に保護することができない。
【0005】
上記実情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、布帛本体と接続部材との接続部分が、布帛本体から浸入する水によって腐食してしまうことを防止する導電性布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、導電糸を含む布帛本体と、前記導電糸に接触する電線を含む接続部材とを備え、前記電線を介して前記導電糸に通電可能な導電性布帛であって、前記接続部材は、前記布帛本体の側縁部およびその側縁の外側で露出した前記導電糸の端部を前記布帛本体の厚み方向に挟み込むように取り付けられており、この接続部材における前記厚み方向の一方側に位置する部分と他方側に位置する部分の間の空間には、撥水性材料が充填されていることを要旨とする。
【0007】
上記本発明では、接続部材は、布帛本体の側縁部およびその側縁の外側で露出した導電糸の端部を挟み込むように取り付けられており、その挟み込んだ部分同士の間の空間に撥水性材料が充填されている。したがって、布帛本体にしみこんだ水が布帛本体(導電糸)と接続部材(電線)の接続部分(接触部分)まで浸入することはない。また、直接外部から接続部分に浸入しようとする水も確実に遮断される。したがって、接続部分における導電糸や電線の腐食による通電不良を防止できる。
【0008】
またこの場合、前記接続部材には、前記空間に前記撥水性材料を注入するための内側注入孔が形成されていればよい。
【0009】
このように接続部材に内側注入孔が形成されていれば、布帛本体に接続部材を取り付けた後、上記空間に撥水性材料を注入する作業が容易となる。
【0010】
さらにこの場合、前記接続部材は、前記電線と非導電性材料で形成された糸で織り込まれた織物であり、前記内側注入孔は、前記接続部材における前記電線が配されていない部分に形成されていればよい。
【0011】
接続部材を構成する電線は、布帛本体の導電糸と電源等を電気的に接続するために織物の糸として配された部材である。仮に、この電線が配された部分に内側注入孔が形成されるとすれば、内側注入孔が形成された部分の電線は切断されてしまうため、導電糸と電源等を電気的に接続するための部材として機能を果たし得ない。したがって、内側注入孔は、接続部材における電線が配されていない部分、すなわち非導電性材料で形成された糸によって構成された部分に形成すれば十分である。つまり、内側注入孔によって切断されてしまう部分に相対的に高価である導電性材料で形成された電線が配されておらず、電気的な接続機能を発揮する部分にのみ電線が配された構成となるから、無駄な電線が用いられることによるコストの増加が抑えられる。
【0012】
また、前記接続部材の外側を覆う絶縁性材料で構成された絶縁部材をさらに備え、この絶縁部材には、前記空間に前記撥水性材料を注入するための外側注入孔が形成されていればよい。
【0013】
短絡などを防止する接続部材の外側を覆う絶縁部材を用いる場合において、この絶縁部材に上記のような外側注入孔が形成されていれば、接続部材の外側を覆うように絶縁部材を取り付けた後、上記空間に撥水性材料を注入する作業が容易となる。
【0014】
また、前記接続部材は、点接合によって前記布帛本体に取り付けられていればよい。なお、ここでいう「点接合」とは、布帛本体と接続部材や、接続部材同士が複数の点状の接合部分で接合(固定)されているものをいう。この点接合の例としては、縫製(糸が通った部分が点状の接合点となる)や、所定の間隔で点状に溶着(超音波溶着など)されたものが挙げられる。
【0015】
このように接続部材が点接合によって布帛本体に取り付けられていれば、(カシメなどによって面状に(面接触した状態で)接合した場合と比較して)布帛本体および接続部材が相対的に動きうる。したがって、柔軟性に富み、使い勝手のよい導電性布帛となる。本願発明者は、このような接続部材の取付構造を採用した場合であっても、布帛本体(導電糸)と接続部材(電線)の良好な電気的な接続状態を維持しつつ、両者の接続部分において優れた防水性能を発揮する導電性布帛となることを確認した。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる導電性布帛によれば、布帛本体(導電糸)と接続部材(電線)の接続部分(接触部分)に水が浸入することが確実に防止される。したがって、当該接続部分における導電糸や電線の腐食による通電不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態にかかる導電性布帛の平面図である。
【図2】図1に示した導電性布帛における布帛本体と接続部材の接続部分の断面図(図1におけるA−A線断面図)である。
【図3】接続部材の導電部の断面を模式的に示した図である。
【図4】内側注入孔が形成された導電性布帛の平面図である。
【図5】図4に示した導電性布帛における布帛本体と接続部材の接続部分の断面図(図4におけるB−B線断面図)である。
【図6】外側注入孔が形成された導電性布帛における布帛本体と接続部材の接続部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に幅方向とは図示したX軸方向をいい、単に高さ方向(上下方向)とは図示したY軸方向をいい、単に厚み方向とは図示したZ軸方向(布帛本体10の厚み方向)をいう。
【0019】
本発明の実施形態にかかる導電性布帛1は、図1および図2に示すように、導電糸11を含む布帛本体10と、導電糸11に接触する電線211を含む接続部材20とを備える。この導電性布帛1は、例えば車両用シートの着座面側に内蔵されるヒータ装置として用いられる。
【0020】
布帛本体10は、金属製の導電糸11が織り込まれた織物である。導電糸11を構成する好ましい材質としては、樹脂(ポリアミド樹脂等)コーティングされたステンレスが例示できる。織物を構成する導電糸11以外の糸は、非導電性材料で形成されている。この非導電性材料としては、PETが例示できる。導電糸11は、上下方向に所定の間隔をおいて幅方向に延びるように織り込まれている。この導電糸11の両端部は、布帛本体10の幅方向両側縁から所定長さ露出している。この導電糸11の露出した部分は、樹脂コーティングが除去され、詳細を後述する接続部材20を構成する電線211が電気的に接続される。この布帛本体10は、導電糸11への通電により導電糸11が発熱することによって、面状のヒータ部材として機能する部材である。
【0021】
接続部材20は、布帛本体10の導電糸11とこの導電糸11に通電するための電源等とを電気的に接続するための部材であって、その少なくとも一部に導電性材料で形成された電線211を含む導電部21を有する。導電部21は、導電性材料で形成された電線211と、絶縁性材料(非導電性材料)で形成された非導電性線材212とが織り込まれた織物で構成される。その具体的な構成としては、例えば、縦糸(経糸)に電線211を用い、横糸(緯糸)に非導電性線材212を用いた図3に示すような構成が例示できる。これにより、表面に電線211が露出した面状の導電部21を有する接続部材20となる。電線211を構成する好ましい材質としては銅が例示でき、非導電性線材212を構成する好ましい材質としては、PETが例示できる。接続部材20における導電部21以外の部分22は、この非導電性線材212のみによって構成される。なお、導電部21は、布帛本体10の導電糸11が接続(接触)する側の面の方が、その反対側の面よりも露出する電線211の割合が大きくなるように構成するとよい。
【0022】
この接続部材20は、厚み方向における布帛本体10の一方側および他方側に設けられる。以下、この二つの接続部材20を区別して、布帛本体10の一方側に位置する接続部材を第一の接続部材20aと称し、布帛本体10の他方側に位置する接続部材を第二の接続部材20bと称することもある。この第一の接続部材20aおよび第二の接続部材20bは、布帛本体10の幅方向両側縁部およびその側縁の外側で露出した導電糸11を厚み方向で挟み込むように取り付けられている。なお、一つの接続部材20が、布帛本体10の幅方向両側縁部およびその側縁の外側で露出した導電糸11を厚み方向で挟み込むように(当該一つの接続部材20の断面が略「U」字状になるように)取り付けられた構成としてもよい。
【0023】
本実施形態では、布帛本体10の側縁部で第一の接続部材20aおよび第二の接続部材20bの両方が布帛本体10に接合され、導電糸11が露出した部分において第一の接続部材20aと第二の接続部材20b(接続部材20同士)が接合されている。これにより、接続部材20の導電部21(電線211)と露出した導電糸11は接触し、両者は電気的に接続された状態にある。接続部材20は、「点接合」によって布帛本体10に接合されている。本発明でいう「点接合」とは、第一の接続部材20aおよび第二の接続部材20bと布帛本体10との接合部分や、接続部材20同士の接合部分が、(厚み方向で見て)点状である接合をいう。このような「点接合」による接合方法の例としては、縫製(縫合)や、所定の間隔で点状に溶着(例えば超音波溶着等)する方法が挙げられる。縫製の場合、糸が布帛の厚み方向に通った(貫通した)部分が点状の接合点Jとなる。溶着の場合、点状の溶着点が接合点Jとなる。このように接続部材20が「点接合」によって布帛本体10に取り付けられているため、(カシメなどによって面状に(面接触した状態で)接合した場合と比較して)布帛本体10と接続部材20が相対的に動きうる。したがって、柔軟性に富み、使い勝手のよい導電性布帛1となる。
【0024】
このようにして布帛本体10に取り付けられた第一の接続部材20aと第二の接続部材20bの間の空間Sには、撥水性材料40が充填されている。第一の接続部材20aと第二の接続部材20bの間には、露出した布帛本体10の導電糸11が位置するから、この導電糸11における接続部材20(導電部21)と接触した部分以外の部分は、当該空間Sに充填された撥水性材料40に覆われた状態にある。つまり、導電性布帛1の外部から入り込んだ水によって、導電糸11が濡れてしまうことはほぼない。この撥水性材料40は、水に溶解しにくいものであれば適宜選択可能である。車両用シートに用いられることを考慮すれば、耐熱性、化学安定性、難燃性に優れたものが好ましい。具体的には、シリコンオイル、変性シリコンオイル、シリコーンレジン、シリコーンエマルジョンなどが例示できる。
【0025】
本実施形態にかかる導電性布帛1は、接続部材20の外側を覆う絶縁性材料で構成された絶縁部材30をさらに備える。絶縁部材30は、接続部材20を挟み込むようにして断面略「U」字状になるように接続部材20に接着されている。このような絶縁部材30を設けることにより、接続部材20と他の外部機器との短絡等が防止される。この絶縁部材30は、上記空間Sに充填された撥水性材料40が外部に漏出しないように、撥水性材料40を遮断する材質で構成されているとよい。具体的には、フッ素系の樹脂フィルムなどが例示できる。このように、本実施形態において絶縁部材30は、接続部材20と他の外部機器との短絡等を防止するという電気的な遮蔽機能だけでなく、撥水性材料40の漏出を防止する物理的な遮蔽機能を発揮する。なお、撥水性材料40は、接続部材20と絶縁部材30の間の空間に入り込んでいてもよい。
【0026】
このような構成を備える導電性布帛1によれば、上記第一の接続部材20aと第二の接続部材20bの間の空間Sに撥水性材料40が充填されているから、布帛本体10にしみこんだ水が布帛本体10(導電糸11)と接続部材20の導電部21(電線211)との接続部分(接触部分)まで浸入することはない。また、直接外部(接続部材20側)から接続部分に浸入しようとする水も確実に遮断される。したがって、接続部分における導電糸11や電線211の腐食による通電不良を防止できる。
【0027】
なお、布帛本体10にしみこんだ水が接続部分に到達することを防止するためであれば、布帛本体10の端部に撥水性材料40を含浸させた構成としてもよい。
【0028】
次に、導電性布帛1における撥水性材料40の充填方法例(およびその充填方法を適用するための各部材の構造)について説明する。ただし、以下で説明する方法はあくまで好適な例を列挙したものであり、導電糸11を覆うのに十分な撥水性材料40を上記空間Sに充填することができるものであれば、以下で説明する方法以外の方法を採用して上記導電性布帛1を得てもよい。
【0029】
第一の方法は、布帛本体10に接続部材20(第一の接続部材20aおよび第二の接続部材20b)を取り付けた後、上記空間Sに撥水性材料40を注入する方法である。この方法を採用する場合、接続部材20が織物であることを利用し、撥水性材料40を接続部材20の外側(外面)から内側(内面)に向けて浸透させることによって、撥水性材料40を上記空間Sに充填させてもよいし、第一の接続部材20aおよび第二の接続部材20bの少なくともいずれか一方に、撥水性材料40を注入するための孔(以下、内側注入孔221と称する)を形成し、この内側注入孔221より上記空間Sに撥水性材料40を注入するようにしてもよい(なお、図5には、第一の接続部材20aにのみ内側注入孔221が形成された構成を示した)。この撥水性材料40注入後に、絶縁部材30を接続部材20の外側を覆うように取り付ける。これにより、接続部材20は絶縁部材30に覆われた状態となるから、撥水性材料40が織物である接続部材20内部を浸透してしみ出ることはない。また、内側注入孔221を形成した場合であっても、内側注入孔221より撥水性材料40が漏れ出ることはない。
【0030】
接続部材20に内側注入孔221を形成する場合、内側注入孔221は接続部材20における電線211が配されていない部分、すなわち導電部21以外の部分22に形成される。このように導電部21以外の部分22に内側注入孔221が形成されるのは、仮に導電部21に内側注入孔221が形成されるとすれば、その内側注入孔221によって導電部21を構成する電線211の少なくとも一部が切断されてしまうからである。このように切断された電線211は、導電糸11と電源等とを電気的に接続するための部材としての機能を果たさず、無駄となるため、導電部21以外の部分22(非導電性材料で形成された糸によって構成された部分)に内側注入孔221を形成すればよい。このようにすれば、相対的に高価な電線211を無駄に使用せずに済むため、導電性布帛1(接続部材20)のコストの増加を抑えられる。
【0031】
このような接続部材20における導電部21以外の部分22に内側注入孔221が形成された構成としては、図4および図5に示すものが例示できる。かかる構成は、上下方向に延びる導電部21が二列に分割され、その二列の導電部21の間に存在する導電部21以外の部分22に、上下方向に等間隔に並ぶ内側注入孔221が形成されたものである。かかる場合、図5に示すように、第一の接続部材20aの外側の導電部21と第二の接続部材20bの外側の導電部21同士が点接合により接続され、第一の接続部材20aの内側の導電部21と第二の接続部材20bの内側の導電部21同士が点接合により接続された構成にするとよい。そうすれば、第一の接続部材20aおよび第二の接続部材20bにおける導電部21(電線211)と、布帛本体10の導電糸11とが密着し、両者の電気的な接続状態が良好なものとなる。
【0032】
第二の方法は、布帛本体10に接続部材20(第一の接続部材20aおよび第二の接続部材20b)を取り付け、その接続部材20の外側を覆うように絶縁部材30を取り付けた後、上記空間Sに撥水性材料40を注入する方法である。図6に示すように、この方法を採用する場合、絶縁部材30には、撥水性材料40を注入するための孔(以下、外側注入孔31と称する)が形成されていればよい。外側注入孔31は、例えば、内側注入孔221と同様に上下方向に等間隔に並ぶように形成すればよい。接続部材20に絶縁部材30を取り付けた後、この外側注入孔31より撥水性材料40を注入すると、織物である接続部材20内部を浸透したり、第一の接続部材20aの先端と第二の接続部材20bの先端との間を通ったりすることによって撥水性材料40が上記空間Sに入り込み、導電糸11が撥水性材料40に覆われた状態となる。なお、この場合、接続部材20と絶縁部材30の間にも撥水性材料40が入り込む。また、図6には、外側注入孔31が厚み方向における絶縁部材30の一方側(図6における上側)に形成されたものを示したが、一方側および他方側(図6における下側)に形成されたものとしてもよい。また、かかる第二の方法を採用する場合であっても、接続部材20に上記内側注入孔221を形成した構成としてもよい。そうすれば、外側注入孔31から注入された撥水性材料40が、上記空間Sに入り込みやすい。
【0033】
第三の方法は、布帛本体10に接続部材20を取り付け、接続部材20の外面を絶縁部材30で覆った後、布帛本体10と接続部材20(第一の接続部材20aと第二接続部材)の接合部側より撥水性材料40を浸透させて充填する方法である。すなわち、布帛本体10の幅方向両側縁部から外側に向かって撥水性材料40を浸透させる方法である(図2に示した矢印Cで示す部分から浸透させる)。このように、絶縁部材30によって接続部材20の外面を覆った後であっても、布帛本体10や接続部材20が織物であることによる撥水性材料40の浸透性を利用して、上記空間Sに撥水性材料40を充填することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について説明する。布帛本体として、PET繊維にポリアミド樹脂にてコーティングしたステンレス線(導電糸)を織り込んだ織物を用いた。赤外線レーザによって布帛本体の側縁部からPET繊維およびポリアミド樹脂を取り除き、ステンレス線を露出させた。接続部材として、縦糸(経糸)に錫メッキした銅線を配し、横糸(緯糸)にPET繊維を用いた織物を用いた。布帛本体と接続部材は、縫合(点接合)により接続した。接続部材の外側は、絶縁部材であるポリテトラフルオロエチレンフィルムで覆い絶縁した。この段階で布帛本体(導電糸)と接続部材(電線)の接続抵抗(電気抵抗)を測定すると2.9Ωであった。
【0035】
この後、撥水性材料であるシリコンオイル(信越シリコーン社製KF−96A)を充填した。シリコンオイルは、布帛本体と接続部材(第一の接続部材と第二接続部材)の接合部側より浸透させて充填した(上記第三の方法を採用した)。シリコンオイルを充填した後、上記と同様の方法で布帛本体(導電糸)と接続部材(電線)の接続抵抗を測定すると2.9Ωであった。また、布帛本体と接続部材の接続部分を変形(屈曲)させた後、接続抵抗を測定したが、変わらず2.9Ωであった。
【0036】
以上より、布帛本体と接続部材の接続部分に撥水性材料を充填したとしても、両者の間の接続抵抗が変化しないことが分かった。つまり、電気的特性を低下させることなく、接続部分への水の浸入が防止できる導電性布帛が得られることが分かった。また、縫合(点接合)によって接合された布帛本体と接続部材の接続部分は、撥水性材料を充填しても容易に変形すること(柔軟性に富むこと)が確認された。具体的には、シート形状に沿った形に自在に変形することが求められる車両用シートにも適用可能であることが確認された。また、接続部分を変形させたとしても電気的特性が変化しないことが確認された。
【0037】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 導電性布帛
10 布帛本体
11 導電糸
20 接続部材
21 導電部
211 電線
221 内側注入孔
30 絶縁部材
31 外側注入孔
40 撥水性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電糸を含む布帛本体と、前記導電糸に接触する電線を含む接続部材とを備え、前記電線を介して前記導電糸に通電可能な導電性布帛であって、
前記接続部材は、前記布帛本体の側縁部およびその側縁の外側で露出した前記導電糸の端部を前記布帛本体の厚み方向に挟み込むように取り付けられており、
この接続部材における前記厚み方向の一方側に位置する部分と他方側に位置する部分の間の空間には、撥水性材料が充填されていることを特徴とする導電性布帛。
【請求項2】
前記接続部材には、前記空間に前記撥水性材料を注入するための内側注入孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性布帛。
【請求項3】
前記接続部材は、前記電線と非導電性材料で形成された糸で織り込まれた織物であり、
前記内側注入孔は、前記接続部材における前記電線が配されていない部分に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の導電性布帛。
【請求項4】
前記接続部材の外側を覆う絶縁性材料で構成された絶縁部材をさらに備え、
この絶縁部材には、前記空間に前記撥水性材料を注入するための外側注入孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の導電性布帛。
【請求項5】
前記接続部材は、点接合によって前記布帛本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導電性布帛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54905(P2013−54905A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192255(P2011−192255)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】