説明

導電性微粒子

【課題】 電極間の接続に使用した際に個々の粒子が十分な導電性を発現し、しかも液晶画像にムラを生じさせることもない導電性微粒子を提供する。
【解決手段】 樹脂微粒子の表面に導電層が形成され、下記式(1)で定義されるK値が20℃において500kgf/mm以下であって、かつ、圧縮変形後の回復率が20℃において5〜25%である導電性微粒子。式(1)中、F、Sはそれぞれ導電性微粒子の10%圧縮変形における荷重値(kgf)、圧縮変位(mm)であり、Rは導電性微粒子の半径(mm)である。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子における微細な電極間の接続に好適に使用される導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子においては、対をなす電極間を電気的に接続するために、樹脂粒子やガラス粒子の表面に金属層が形成された導電性微粒子が使用されている。このような導電性微粒子としては、例えば特許文献1に、球体の硬さを表す値であるK値が特定の範囲にあり、かつ、圧縮変形後の回復率が特定の範囲であるものが開示されている。
【特許文献1】特公平7−95165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示の導電性微粒子を用いた従来の液晶表示素子においては、個々の導電性微粒子の電気抵抗が大きいために、一定の導電性を達成するためには多数の導電性微粒子を使用する必要があった。このように多数の導電性微粒子を使用することはコスト的に有利ではないし、導電性微粒子の配置密度が高まるために粒子同士が凝集して電気的にショートしやすくなり、液晶表示素子の製造歩留まりが低下するなどのおそれもあった。
さらに、特許文献1に開示の導電性微粒子を使用した液晶表示素子では、液晶画像にムラが生じやすいという問題もあった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、電極間の接続に使用した際に個々の粒子が十分な導電性を発現し、しかも液晶画像にムラを生じさせることもない導電性微粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、個々の導電性微粒子は、約30%の圧縮変形率で変形した状態で電極間に挟まれた際に、非常に高い導電性を発現することを見出した。また、高い導電性を発現させるべく、導電性微粒子をこのように変形させた状態で電極間に配置した際には、導電性微粒子の圧縮変形後の回復率を低く制御することが、液晶画像のムラを低減するために重要であることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の導電性微粒子は、樹脂微粒子の表面に導電層が形成され、下記式(1)で定義されるK値が20℃において500kgf/mm以下であって、かつ、圧縮変形後の回復率が20℃において5〜25%であることを特徴とする。
【数1】

(式(1)中、F、Sはそれぞれ導電性微粒子の10%圧縮変形における荷重値(kgf)、圧縮変位(mm)であり、Rは導電性微粒子の半径(mm)である。)
前記K値が20℃において100〜450kgf/mmであって、かつ、前記回復率が20℃において5〜20%であることが好ましい。
粒径は2.5〜7.5μmであることが好ましい。
サンプル数300以上の場合における粒径の標準偏差Sと粒径の平均値Davとが下記式(2)を満たすことが好ましい。
S≦Dav×0.05・・・(2)
前記樹脂微粒子は、ビニル系単量体を乳化重合して得られたシード粒子に、さらにビニル系単量体をラジカル重合させたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極間の接続に使用した際に個々の粒子が十分な導電性を発現し、しかも液晶画像にムラを生じさせることもない導電性微粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性微粒子は、下記式(1)で定義されるK値が20℃において500kgf/mm以下であって、かつ、圧縮変形後の回復率が20℃において5〜25%のものである。
【数2】

式(1)中、F、Sはそれぞれ導電性微粒子の10%圧縮変形における荷重値(kgf)、圧縮変位(mm)であり、Rは導電性微粒子の半径(mm)である。
【0009】
ここでK値とは、例えば、ランダウーリフシッツ理論物理学教程「弾性理論」(東京図書1972年発行)などに記載されているように、球体の硬さを表す値であって、硬い球体ほど大きな値となる。
このK値が20℃において500kgf/mm以下である導電性微粒子を、液晶表示素子の電極間の接続に使用すると、各導電性微粒子は十分な導電性を発現する。そのため、多数の導電性微粒子を使用しなくても一定の導電性を確保でき、コスト的に有利である。また、導電性微粒子の配置密度を低くできるために粒子同士の凝集が抑制され、電気的なショートも起こりにくくなり、液晶表示素子の製造歩留まりが低下することもない。導電性微粒子のより好ましい20℃でのK値は、100〜450kgf/mmである。
【0010】
このように20℃でのK値が500kgf/mm以下である導電性微粒子が十分な導電性を発現する理由は、次のように考えられる。
すなわち、本発明者らは、電極間に挟まれた状態の各導電性微粒子の電気抵抗は、導電性微粒子の圧縮変形率に伴って図1のように変化し、圧縮変形率30%付近で電気抵抗が最小となることを見出した。よって、導電性微粒子は、圧縮変形率が30%程度となる程度に圧縮変形した状態で電極間に配置されることが、導電性の点から好適であることが明らかとなった。K値が20℃で500kgf/mm以下の導電性微粒子であれば、容易に30%程度まで圧縮変形でき、高い導電性を発現できると考えられる。
なお、導電性微粒子の電気抵抗は圧縮変形率30%付近で最小となるが、それは、圧縮変形率30%付近までは、圧縮変形されるに従って導電性微粒子と電極との接触面積が増すために導電性が向上し電気抵抗が低下していくが、圧縮変形率がそれよりも大きくなると、粒子表面の導電層に亀裂が生じ、その結果、電気抵抗が増加し始めるためと考えられる。
【0011】
ここで仮に、20℃でのK値が500kgf/mmを超える導電性微粒子を圧縮変形率30%程度まで圧縮変形させようとすると、非常に高いプレス圧が必要となり液晶表示素子の生産性に劣るうえ、導電性微粒子を挟んでいる電極を傷付けてしまうおそれがある。また、電極間の距離(ギャップ)が不均一となり、液晶表示にムラが生じやすくなる。
【0012】
導電性微粒子のK値は、次のようにして求められる。
まず、微小圧縮試験機を使用して、1つの導電性微粒子に対して圧縮荷重を加えていくとともにその際の圧縮変位を検出して、圧縮荷重−圧縮変位曲線を作製する。ついで、この曲線から10%圧縮変形における荷重値F、圧縮変位Sをそれぞれ求める。そして、これらの値と、導電性微粒子の半径Rとを式(1)に代入することにより、K値が求められる。
微小圧縮試験機では、圧縮荷重を電磁力として、圧縮変位を作動トランスによる変位として電気的に検出することができる。このような微小圧縮試験機としては、例えば島津製作所製のPCT−200型などがあり、この試験機は、対象物を圧縮する手段として、直径50μmのダイヤモンド製の円柱を備えている。なお、圧縮は定負荷速度圧縮方式で行い、荷重を増加させる割合は毎秒0.27gfとし、試験荷重は最大で10gfとした。
【0013】
また、本発明の導電性微粒子は、圧縮変形後の回復率が20℃において5〜25%のものである。
ここでいう圧縮変形後の回復率とは、導電性微粒子に対して1gfまでの圧縮荷重を加えて圧縮変形させた後、圧縮荷重を0.1gfまで減らした際の回復率であって、荷重の基点(原点荷重値)を0.1gf、最大荷重(反転荷重値)を1gfとした際の回復率である。
具体的な測定方法としては、K値を求める際と同様に微小圧縮試験機を使用して、1つの導電性微粒子に対して1gfまで圧縮荷重を加えていき、その後、荷重を0.1gfまで減らしていく。その際の圧縮変位を検出することで、図2のような圧縮荷重−圧縮変位曲線を作製する。図2中、(a)が圧縮荷重を増加させた際の曲線で、(b)が圧縮荷重を減少させた際の曲線である。そして、圧縮荷重を増加させた際の最大荷重までの変位Lと、圧縮荷重を減少させた際の荷重の基点までの変位Lとの比(L/L)を%で表したものが回復率となる。
【0014】
圧縮変形後の回復率が20℃で5〜25%である導電性微粒子を電極間の接続に使用すると、液晶画像のムラや接触不良などがない高品質の液晶表示素子を製造できる。また、導電性微粒子が変形回復することにより電極を傷付けてしまうおそれもない。
ここで圧縮変形後の回復率が25%を超える導電性微粒子では、導電性微粒子が変形回復することで電極間の距離(ギャップ)が不均一となり、液晶画像のムラが生じやすいとともに、導電性微粒子が電極を傷付ける可能性がある。一方、5%未満では、導電性微粒子と電極との間に隙間が生じやすく、接触不良を起こすおそれがある。すなわち、導電性微粒子は、通常、熱硬化性樹脂に分散したペーストの状態で電極間に充填され、その後熱硬化性樹脂が硬化することで電極間を接続する。この際、熱硬化性樹脂は、硬化時の加熱により膨張し、室温への冷却により収縮するため、体積が変動する。一方、その間、回復率が5%未満の導電性微粒子はほとんど変形回復しない。よって、導電性微粒子と電極との間に隙間が生じ、接触不良となりやすい。導電性微粒子のより好ましい回復率は5〜20%である。
【0015】
導電性微粒子としては、上述したようなK値と圧縮変形後の回復率とを共に備え、樹脂微粒子の表面に導電層が形成されたものであればその材質には制限はないが、樹脂微粒子としては、ビニル系単量体を乳化重合して得られたシード粒子に、さらにビニル系単量体をラジカル重合させたものであることが好ましい。また、樹脂微粒子の材質としては、ジビニルベンゼンとスチレンとの共重合体が好ましい。このような共重合体からなる樹脂微粒子の製造方法としては、まず、スチレンを主成分とするビニル系単量体を乳化重合してシード粒子を得て、ついで、このシード粒子に、ジビニルベンゼンとスチレンからなるビニル系単量体をラジカル重合する方法が好適である。
共重合体を製造する際のジビニルベンゼンとスチレンとのモル比は、ジビニルベンゼン1molに対して8mol以下が好ましく、より好ましくは0.5〜4.0molである。このような範囲であると、上述のK値と回復率とを備えた導電性微粒子が得られやすい。
【0016】
樹脂微粒子の表面に形成される導電層としては特に制限はないが、ニッケルメッキからなる内層と金メッキからなる外層とから構成されていると、より安定な導電性を発現できる。このような導電層は、無電解ニッケルメッキを実施した後、金置換反応を行うことによって形成できる。
その他の導電層としては、ニッケル、金、銀、銅、コバルト錫、インジウムや、これらを主成分とする合金から形成されたものなどが例示でき、その形成方法としては、無電解メッキ方法の他、金属微粉を含むペーストを樹脂微粒子にコーティングする方法、真空蒸着法、イオンプレーディング法、イオンスパッタリング法などの物理的蒸着法などが挙げられる。
【0017】
導電性微粒子の粒径としては特に制限はなく、用途に応じて適宜設定できるが、2.5〜7.5μmの範囲内であると、薄型の液晶表示素子における電極間の接続に好適に使用できる。
また、サンプル数を300以上とした場合における粒径の標準偏差Sと粒径の平均値Davとが下記式(2)を満たすものであれば、粉体としての粒径の均一性に優れ、液晶表示素子の電極間の接続により好適に使用できる。なお、各導電性微粒子の粒径としては、その電子顕微鏡写真から測定した値を採用する。
S≦Dav×0.05・・・(2)
また、導電性微粒子における樹脂微粒子と導電層との比率にも制限はないが、導電性微粒子中における導電層の含有割合は、通常、30〜80質量%の範囲である。
【0018】
このような導電性微粒子を電極間の接続に使用する場合には、例えば次のようにすればよい。
まず、熱硬化性樹脂からなる絶縁性のバインダーに数質量%程度の濃度となるように導電性微粒子を加え、均一に分散させる。この分散体を、対を成している電極の一方の表面に塗布する。塗布は、スクリーン印刷法などの印刷方法やディスペンサーを用いた方法などで行えばよい。ついで、分散体が塗布された表面に他方の電極を重ね合わせ、これらを加圧する。ここでの加圧は、導電性微粒子が圧縮変形率30%程度まで圧縮変形するように行うことが導電性の点から好適である。ついで、導電性微粒子の圧縮変形状態を維持したまま加熱し、バインダーを硬化させる。このような方法により、電極間を導電性微粒子で電気的に接続することができる。
【0019】
このような方法で接続される電極の種類としては特に制限はなく、ガラス板上にITO薄膜やアルミニウム薄膜などが形成された電極、プラスチックフィルム上に銅シートが貼り付けられた後エッチングして得られた電極、プラスチックフィルム上に銀ペーストやカーボンブラックなどを印刷して得られた電極などが挙げられる。
以上説明した導電性微粒子は、電極間の接続に使用した際に個々の粒子が十分な導電性を発現し、しかも液晶画像にムラを生じさせることもないので、液晶表示素子をはじめとした電子部品における電極間の接続に好適に使用できる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。なお、以下「部」、「%」とあるのは、いずれも質量基準である。
[製造例]
(シード粒子の製造)
攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、スチレン19.5部、アクリル酸0.5部、純水80部、過硫酸カリウム0.2部を入れ、窒素気流下において80℃で6時間重合を行った。
得られた重合混合物を水酸化アンモニウムで中和後、200メッシュの濾布でろ過し、ろ液としてエマルションを得た。
一方、メタクリル酸ラウリル5部、ラウリル硫酸ナトリウム5部、純水250部をIKA社製の高圧ホモジナイザーで分散させた後、先に得られたエマルション25部を加え、一昼夜撹拌してシード粒子を含む混合液を得た。
【0021】
[実施例1]
(導電性微粒子の製造)
攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、ジビニルベンゼン420部、スチレン580部、75%過酸化ベンゾイル3.3部、アゾビスイソバレロニトリル3部、水2300部、ラウリル硫酸ナトリウム20部、シード粒子を含む混合液67部を入れ、一昼夜撹拌した。
ついで、さらに亜硫酸ナトリウム4部、硫酸ナトリウム10部、5%ポリビニルアルコール水溶液500部、水500部を加え、窒素気流下において65℃で3時間、80℃で1時間、90℃で1時間重合を行った。
その後、これを洗浄、乾燥後、分級して、粒径の平均値が7.03μm、標準偏差が0.29μmの樹脂微粒子を得た。
そして、この樹脂微粒子に無電解ニッケルメッキを行った後、金置換反応を行い、ニッケルメッキ層、金メッキ層が表面に順次形成された導電性微粒子を得た。
この導電性微粒子について電子顕微鏡写真を撮り、サンプル数300として粒径の平均値Davと標準偏差Sを求めたところ、Dav=7.21μm、S=0.29μmであった。
【0022】
(導電性微粒子の分析)
この導電性微粒子を分析したところ、金含有量は25.0質量%、ニッケル含有量は20.0質量%であり、導電性微粒子中における導電層の含有割合は45.0質量%であった。
また、微小圧縮試験機として島津製作所製のPCT−200型を使用し、得られた導電性微粒子から無作為に選択した1つの導電性微粒子に対して圧縮荷重を加えていくとともにその際の圧縮変位を検出して、圧縮荷重−圧縮変位曲線を作製し、ついで、この曲線から10%圧縮変形における荷重値F:2.35×10−4kgf、圧縮変位S:7.21×10−4mmを得て、これらの値と、導電性微粒子の半径Rとを式(1)に代入することにより、K値=429kgf/mmを得た。なお、圧縮は定負荷速度圧縮方式で行い、荷重を増加させる割合は毎秒0.27gfとし、試験荷重は最大で10gfとした。
また、同じ微小圧縮試験機を使用して、同様に1つの導電性微粒子に対して1gfまで圧縮荷重を加えていき、その後、荷重を0.1gfまで減らしていった際の圧縮変位を検出することで、図2のような圧縮荷重−圧縮変位曲線を作製して、圧縮荷重を増加させた際の最大荷重までの変位L:3.10μmと、圧縮荷重を減少させた際の荷重の基点までの変位L:0.56μmとの比(L/L)を求め、%で表し、回復率18%を得た。
【0023】
(導電性微粒子の電気抵抗と圧縮変形率との関係)
このようにして得られた導電性微粒子について、種々の圧縮変形率で圧縮変形した際の導電性微粒子1つ当たりの電気抵抗をそれぞれ求めた。圧縮変形率、電気抵抗を表1に示す。
具体的には、まず、導電性微粒子0.001g、エポキシ樹脂1g、ガラスロッドスペーサー0.2g、硬化剤0.64gを良く混合してペーストを製造した。ついで、幅Wが0.5mm、厚さTが0.5μmの金線が片面に形成されたガラス板を2枚用意し、これら2枚のガラス板を金線が形成された面が対向し、かつ、金線が直交するように配置した。そして、金線の間に上述のペーストを充填し、500gの荷重をかけて熱板上で200℃、120秒の条件で硬化させ、テストピースを作製した。
【0024】
この際、使用するガラスロッドスペーサーの直径を変化させることにより、導電性微粒子の圧縮変形率を調整した。すなわち、ガラスロッドスペーサーは500gの荷重により圧縮変形しないので、ガラスロッドスペーサーとして直径dのものを使用すると、金線の間隔がdのテストピースを作製することができ、その場合、金線間に挟まれた導電性微粒子の圧縮変形率は、下記式(3)により求められる。なお、このテストピースの作製に際しては、ペースト中における導電性微粒子の濃度は0.05%と極少なく設定されているため、ペーストを硬化した後に導電性微粒子が形状回復して金線の間隔を押し広げることはないと見なすことができる。
圧縮変形率[%]=(2R−d)×100/2R・・・(3)
【0025】
そして、このテストピースに電流を流して、硬化したペースト全体としての電気抵抗Aを求めた。
一方、金線が形成されていないガラス板を使用した以外は上記テストピースの作製と同じ工程により参照用ピースを得て、このペーストにおける導電性微粒子の単位面積あたりの配置密度Bを測定した。
そして、テストピースにおけるペースト中の導電性微粒子の配置密度として、参照用ピースにおけるペースト中の導電性微粒子の配置密度Bを採用するとともに、テストピースにおけるペーストの接合面積Cを実測し、下記式(4)により導通に関与する導電性微粒子の数Nを求め、さらに下記式(5)から、導電性微粒子1つ当たりの電気抵抗Aを算出した。
N=C×B・・・(4)
=N×A・・・(5)
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示すように、導電性微粒子1つ当たりの電気抵抗Aはガラスロッドスペーサーの直径dに依存し、特にd=5μmの場合に最小となることが明らかとなった。d=5μmの場合、導電性微粒子の圧縮変形率=30.7[%]である。
このことから、導電性微粒子1つ当たりの電気抵抗Aはその圧縮変形率に応じて変化し、圧縮変形率が30%程度の際に最小となることが示された。
【0028】
[実施例2〜3および比較例1〜2]
ジビニルベンゼンとスチレンの使用量を表2のように変えた以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子を調製し、粒径の標準偏差が粒径の平均値の5%以下になるように分級し、さらに同様に導電層を形成して、表2に示すような導電性微粒子を得た。
ついで、得られた導電性微粒子を使用して、実施例1と同様にしてテストピースを作製した。ただし、ここでは、ガラスロッドスペーサーとしてd=5μmのものを使用した1種類のテストピースのみを作製した。
【0029】
以上各例で得られた導電性微粒子、テストピースについて、以下の評価を行った。
[信頼性評価]
各例でd=5μmのガラスロットスペーサーを使用して得られたテストピースについて、それぞれ下記の信頼性評価(耐湿試験および耐熱試験)を実施した。
耐湿試験:テストピースを65℃、相対湿度90%の環境に500時間保存し、その前後の導電性微粒子1つ当たりの電気抵抗を測定した。実測値を表3に示す。試験後の電気抵抗が試験前の1.2倍以下である場合に耐湿信頼性良好と判定し、表4中○で示した。1.2倍を超える場合は×とした。
耐熱試験:テストピースを110℃の環境に500時間保存し、その前後の導電性微粒子1つ当たりの電気抵抗を測定した。実測値を表3に示す。試験後の電気抵抗が試験前の1.2倍以下である場合に耐熱信頼性良好と判定し、表4中○で示した。1.2倍を超える場合は×とした。
【0030】
[プレス生産性評価]
各例で得られた導電性微粒子0.055g、エポキシ樹脂1g、d=5μmのガラスロッドスペーサー0.2g、硬化剤0.64gを良く混合してペーストを製造し、2枚のガラス板の間に挟み、プレス圧1kg/cm、150℃、30分の条件で硬化させた。
冷却後、2枚のガラス板の間隔を測定し、その値が5.05μm以下の場合にプレス生産性良好と判定し、表4中○で示した。一方、その値が5.05μmを超える場合は、圧縮変形率30%程度まで圧縮変形させるにはより高いプレス圧力が必要であると判断できるため、その場合にはプレス生産性不良と判定し×で示した。
【0031】
[液晶画像のムラ]
各例で得られた導電性微粒子0.055部、エポキシ樹脂1部、d=5μmのガラスロッドスペーサー0.2部、硬化剤0.64部をよく混合してペーストを製造し、液晶表示素子における電極間の接続に使用した。そして、得られた液晶表示素子における画像ムラの有無を目視で判定した。結果を表4に示す。なお、その際、電極としては、配向膜が形成されたITO薄膜−ガラス板からなるものを用いた。また、液晶の封入、偏光フィルターの配置、バックライトのマウントを常法により実施した。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
このように各実施例で得られた導電性微粒子は、耐湿試験前および耐熱試験前における1つあたりの電気抵抗(初期の電気抵抗)が比較例のものより小さく、高い導電性を備えていた。また、導電性微粒子と電極との接触面積が大きいまま維持されるためか、耐湿信頼性および耐熱信頼性が優れていた。さらに、各実施例で得られた導電性微粒子は低いプレス圧でも圧縮変形するためにプレス生産性が良好であるうえ、液晶表示素子に使用した場合にも液晶画像のムラが認められなかった。
一方、比較例1のものでは、圧縮変形後の回復率が小さいため、導電性微粒子と電極との間に隙間が生じ接触不良を起こしたと考えられ、初期の電気抵抗が悪く、また、耐熱信頼性が非常に悪かった。
また、比較例2のものでは、K値が大きいために、圧縮変形させようとすると高いプレス圧が必要となりプレス生産性に劣ることが示唆された。なお、プレス生産性評価の際に、ペースト硬化後のガラス板の間隔は5.08μmであった。また、初期の電気抵抗が大きいとともに、耐湿信頼性および耐熱信頼性も悪かった。これは、圧縮変形後の回復率が大きいために、導電性微粒子が徐々に変形回復してしまった結果と推測できる。さらに、液晶表示にはムラが生じたが、これはK値および圧縮変形後の回復率がともに大きいために、電極間の距離が不均一になったためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】導電性微粒子の電気抵抗と圧縮変形率との関係を示すグラフである。
【図2】導電性微粒子の圧縮荷重と圧縮変位との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂微粒子の表面に導電層が形成され、下記式(1)で定義されるK値が20℃において500kgf/mm以下であって、かつ、圧縮変形後の回復率が20℃において5〜25%であることを特徴とする導電性微粒子。
【数1】

(式(1)中、F、Sはそれぞれ導電性微粒子の10%圧縮変形における荷重値(kgf)、圧縮変位(mm)であり、Rは導電性微粒子の半径(mm)である。)
【請求項2】
前記K値が20℃において100〜450kgf/mmであって、かつ、前記回復率が20℃において5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項3】
粒径が2.5〜7.5μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性微粒子。
【請求項4】
サンプル数300以上の場合における粒径の標準偏差Sと粒径の平均値Davとが下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の導電性微粒子。
S≦Dav×0.05・・・(2)
【請求項5】
前記樹脂微粒子は、ビニル系単量体を乳化重合して得られたシード粒子に、さらにビニル系単量体をラジカル重合させたものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の導電性微粒子。









【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−12378(P2007−12378A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190255(P2005−190255)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】