説明

導電性情報を有する真偽判別媒体及びその作製方法

【課題】基材上に金属コロイド粒子含有インキを使用した導電性不可視情報を有する記録媒体及びインキ皮膜と基材を傷つけることなく導電性情報を有する真偽判別媒体を作製する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基材上に非導電性領域と少なくとも二以上の導電性領域から成り、二以上の導電性領域は各導電性領域毎に異なる抵抗値を有し、非導電性領域と導電性領域が等色であることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体と、基材に金属コロイド粒子含有インキによるインキ皮膜を印刷する工程と、乾燥後のインキ皮膜にエネルギー線を照射し、エネルギー線を照射した部位に導電性不可視情報を形成する照射工程とから成ることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録後に加熱又は加圧することなく導電性を発現し、紙やプラスチック等の耐熱性の低い基材にも導電性不可視情報を形成することができる導電性情報を有する真偽判別媒体及びその作製方法を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー等のディジタル機器の発展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。その対策の一つとして、従来からホログラムや磁気記録媒体又は導電性インキにより作製した不可視情報を付与した記録媒体とその製造方法がある。
【0003】
導電性インキを使用して基材に不可視情報を作製する方法としては、例えば、貴金属コロイド粒子を基材に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を加熱して塗膜中のコロイド粒子を融着させて成る導電性薄膜の作製方法、真空蒸着、スパッタリング又はCVD法等の薄膜形成法等がある。
【0004】
その一例として、金属コロイド粒子が媒体中に分散しているインク組成物を用いて塗被膜を基材上に形成する工程と、塗被膜を乾燥させる工程と、塗被膜に100kg/cmと成ることを特徴とする導電性記録物の形成方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、基材に酸化銀粒子を含む組成物を膜状に加工する工程と、膜を部分的に加熱又は部分的に750〜900nmの範囲の波長を有する赤外レーザ光を照射する工程から成り、膜に導電性を付与することを特徴とする導電性画像作製方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、基材にノニオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤を含有する金属ナノコロイドにミクロ相分離を誘発させて得られる金属ナノ微粒子を含む塗工液を基材に塗布して塗工膜を生成する工程と、塗工膜を常温で乾燥させる工程から成り、塗工膜に導電性を付与することを特徴とするシートの作製方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−175832号公報
【特許文献2】特開2006−56740号公報
【特許文献3】特開2004−285106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2004−175832号公報は、基材に形成したインキ薄膜に100kg/cm程度の加圧を施して導電性情報を形成する必要があるため、加圧により基材を傷つけるおそれがあるとともに、インキ薄膜の加圧した場所を視認されるおそれがある。
【0009】
また、特開2006−56740号公報は、基材に付与したインキ薄膜に導電性を発現させるためには100℃〜200℃の加熱温度が必要であり、基材に紙や耐熱性の低いプラスチックを使用した場合は加熱により基材を劣化させるおそれがある。また、使用しているインキは銀を含有しているため、加熱による熱反応で銀が還元して黒くなることにより導電性を付与した部分を視認されるおそれがある。
【0010】
また、特開2004−285106号公報は、インキ皮膜の乾燥後に導電性を付与するものではなく、あらかじめ導電性を付与する部分を印刷するため偽造防止を目的としたものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材上に金属コロイド粒子を含有する複数の導電性領域が形成された真偽判別媒体であって、複数の導電性領域のうち、少なくと二つの導電性領域は異なる電気抵抗値を有し、異なる電気抵抗値を有する二つの導電性領域が所定の範囲内に並列して配置され、かつ、等色であることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体である。
【0012】
また、本発明は、異なる電気抵抗値を有する二つの導電性領域の周囲に、異なる電気抵抗値を有する二つの導電性領域と等色の非導電性領域を有していることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体である。
【0013】
また、本発明は、導電性領域及び非導電性領域が、金属コロイド粒子を含有したインキにより形成されていることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体である。
【0014】
また、本発明は、基材上に金属コロイド粒子を含有する所定の物質を形成する加工工程と、所定の物質が乾燥した後にその所定の物質にエネルギー線を照射して導電性領域を形成する照射工程とから成ることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法である。
【0015】
また、本発明における金属コロイド粒子を含有する所定の物質が、印刷インキであることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法である。
【0016】
また、本発明におけるエネルギー線が、フラッシュ光又は赤外レーザ光であることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体は、インキ皮膜における各導電性領域ごとに異なる抵抗値を有するため偽造することは困難である。また、本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体に電流を流したことによる出力信号の有無により真偽判別することもできる。
【0018】
本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法は、基材上に金属コロイド粒子含有インキを印刷し、塗布したインキの乾燥後に形成されたインキ皮膜に低エネルギー線を照射するだけでインキ皮膜に導電性を発現させることができるため、基材が紙や耐熱性の低いプラスチック等の耐熱性の低い材料であっても基材を傷つけることなく容易に不可視情報をインキ皮膜に付与することができる。
【0019】
また、前述のインキ皮膜は、一度導電性を発現した場合には導電性をなくすことができないため、当該情報のみを消去して新しい情報を付加することができず、当該情報の書換えは不可能である。さらに、インキ皮膜に形成した導電性不可視情報を消去又は再使用を防止したい場合は、インキ皮膜全体にエネルギー線を照射し、インキ皮膜全体に導電性を生じさせることによりインキ皮膜に付与した情報を消去、又は再使用を防止にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による導電性情報を有する真偽判別媒体、導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法について説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の色々な実施の形態が含まれる。
【0021】
図1は、本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体の一例を示す概略図である。図1(a)に示すように、本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体A1は、基材1上に金属コロイド粒子を含有する導電性領域及び非導電性領域を有している。なお、本発明を実施するための最良の形態においては、金属コロイド粒子を含有する物質をインキとして説明するが、以下のとおり異なる電気抵抗値を有することができる物質であればこれに限定することはない。
【0022】
前述のとおり金属コロイド粒子を含有する物質をインキとしていることから、基材上にはインキ皮膜2を有している。また、インキ皮膜2は、非導電性領域3と導電性領域4を有し、更に導電性領域4は、抵抗値がそれぞれ異なる第一導電性領域4a、第二導電性領域4b及び第三導電性領域4cの三つの領域を有している。
【0023】
図1(a)の非導電性領域3は、10-6〔Ω〕程度の電気抵抗を有しているためほとんど電流を流すことがなく、非導電性の性質、すなわち、一般的に絶縁体的な性質を示すマイクロ波等の電磁波を与えても出力電圧が生じることはない。したがって、非導電性領域3は、インキ皮膜にマイクロ波等の電磁波を与えて生じた導電性領域4の出力電圧に影響を与えることはない。
【0024】
一方、図1(a)の導電性領域4は、第一導電性領域4aの電気抵抗は8〔Ω〕、第二導電性領域4bの電気抵抗は6〔Ω〕、第三導電性領域4cの電気抵抗は5〔Ω〕であり、各領域とも数〔Ω〕程度の電気抵抗であるため、インキ皮膜にマイクロ波等の電磁波を与えた場合は領域ごとに出力電圧が異なる数値を示す。なお、図1(b)に示すように、インキ皮膜にマイクロ波を照射した場合には、第一導電性領域4a、第二導電性領域4b及び第三導電性領域4cの領域ごとに異なる出力電圧が生じる。なお、本明細書において、導電性領域は三つであるが、導電性領域の数は二以上であれば特に限定されるものではない。次に、本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法について説明する。
【0025】
本発明の導電性不可視情報の作製方法は、基材上に金属コロイド粒子を含有する物質を形成する加工工程と、その物質が乾燥した後にエネルギー線を照射して導電性領域を発現させて導電性情報を有する真偽判別媒体を形成する照射工程とから成ることを特徴としている。なお、金属コロイド粒子を含有した物質としては、好ましくは印刷インキであり、その形成方法としては印刷工程となる。したがって、以下印刷インキを用いた作製方法を説明する。
【0026】
図2は、本発明の導電性不可視情報の作製方法の一例を示すフロー図である。例えば、印刷工程においては、スクリーン印刷方式により市販の上質紙等に金属コロイド粒子含有インキをベタ刷りする。次に、上質紙等に印刷した金属コロイド粒子含有インキは、自然乾燥させてインキ皮膜を形成する。次に、照射工程では、インキ皮膜にフラッシュ光を照射して導電性不可視情報を形成する。
【0027】
図3(a)から(c)までは、本発明の導電性不可視情報の作製方法の一例を示す概略図である。図3(a)は、印刷工程における概略図である。図3(a)に示すように、印刷工程においては、例えば、スクリーン印刷により基材1に金属コロイド粒子含有インキを印刷してインキ皮膜2を形成する。次に、図3(b)に示すように基材1に印刷したインキ皮膜2を乾燥した後、例えば、図3(b)の照射工程においては、インキ皮膜2上に紙等によりマスク5をセットし、ストロボ6により導電性領域を形成する照射領域7にフラッシュ光を照射する。図3(c)に示すように、インキ皮膜2には、フラッシュ光を照射した部分に導電性領域4が形成され、フラッシュ光を照射しない部分は非導電性領域となる。なお、図面において導電性領域の作製は一つだけであるが、2以上の導電性領域を作製する場合には、領域ごとにフラッシュ光の光量を異ならせて照射することにより形成する。
【0028】
本発明に用いられる金属コロイド粒子含有インキは、金属ナノ粒子が分散しているインキである。なお、金属ナノ粒子を形成する金属は、導電性を得る目的から金、銀又は白金が好ましい。
【0029】
また、本発明に用いられる基材は、基材自体に導電性を有さなければ特に限定されず、紙や耐熱性の低いプラスチック等の基材であっても導電性を付与することができる。なお、インキ皮膜と基材との密着性を考慮した場合は、平滑性が高い上質紙やプラスチック等がより好ましい。
【0030】
印刷工程において、基材への金属コロイド粒子含有インキの印刷は、金属コロイド粒子含有インキに、公知の有機及び無機の顔料や染料、分散剤、溶剤、消泡剤等を導電性を阻害しない程度に混合し、オフセット印刷、スクリーン印刷又はインキジェットプリンタ等の公知の印刷方法により設けることができる。また、基材に印刷する絵柄は、特に限定されず、文字、図形及び記号等を設けることができる。
【0031】
なお、インキ組成物を公知の印刷方式を使用して印刷する場合において、高分子の顔料や分散剤等を含まない金属コロイド粒子のみの金属量は、インキ組成物全量に対して5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%である。金属コロイド粒子が5重量%未満では、形成したインキ皮膜の導電性が不十分となることがあるからである。一方、金属コロイド粒子が、60重量%を超えると基材との密着性が低下し、インキ皮膜が基材から剥離及び脱落することがあるからである。また、インキ組成物をインキジェット方式に適用する場合には、粘度が25℃において1.0〜80mPa・s、かつ、表面張力が20〜80mN/mであることが好ましい。粘性率と表面張力が上記範囲にない場合には、ノズルの目詰まり、再現性の低下等の問題を生ずるおそれがあるからである。
【0032】
また、基材に印刷した金属コロイド粒子含有インキを乾燥する方法は、酸化重合等による自然乾燥が好ましいが、短時間で乾燥させる場合は、電子線硬化剤や紫外線硬化剤等を使用し、電子線や紫外線を照射して乾燥させることもできる。ただし、電子線や紫外線を照射して金属コロイド粒子含有インキを乾燥させる場合は、金属コロイド粒子含有インキに導電性を発現しない程度の低いエネルギーを使用することが好ましい。金属コロイド粒子含有インキは、一度導電性を発現した場合には導電性を無くすことはできないからである。
【0033】
照射工程において、インキ皮膜に照射するエネルギー線は、市販のストロボ等のフラッシュ光又は赤外レーザ光等の低エネルギー線を使用することができる。例えば、赤外レーザ光をインキ皮膜に照射する場合は、インキ皮膜の特定部位を半導体レーザ等により照射することができる。また、フラッシュ光を照射する場合は、インキ皮膜の特定部位にのみ光を照射できるようにするため、インキ皮膜にマスク処理を行い、市販のストロボ等によるフラッシュ光を照射することができる。
【0034】
なお、照射光は、市販のストロボであればガイドナンバー(以下「GNo」という。)をGNo10からGNo20程度に調整し、照射時間を5×10-2秒〜1×10-3秒程度にしてインキ皮膜に密着又は5mm程度離して照射することが好ましい。GNoを照射エネルギー[W・S]に換算することは、ストロボの核拡散板等により変化するため困難であるが、一般的にはGNo10ではストロボの照射エネルギーは約6[W・S]程度であり、GNo20であれば約10[W・S]程度であるといわれる。本発明において、GNo20以上の場合は、照射エネルギーが大きいためにインキ皮膜が変色し、導電性不可視情報の存在を視認されるからである。一方、GNo10未満では、照射エネルギーが小さく、インキ皮膜に導電性が発現されないことがあるからである。なお、GNoとインキ皮膜の導電性の関係を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
上記の表1は、サンパック社製ストロボB3000S(GNo22)を使用してインキ皮膜にフラッシュ光を照射した場合のインキ皮膜の導電性とインキ皮膜の変色の関係を示したものである。なお、光源からインキ皮膜の距離を5mm離し、フィルム感度であるISOを100一定とした。
【0037】
また、照射光にレーザ光を使用する場合は、低出力の半導体レーザを使用することが好ましい。高出力のレーザを使用した場合は、インキ皮膜が変色して導電不可視情報の存在が視認されるからである。なお、低出力の半導体レーザを使用する場合は、照射するエネルギーを以下に調節することが好ましい。低出力の場合には、インキ皮膜に導電性が発現しないか、又は導電性が低いことがあるからである。
【0038】
また、インキ皮膜の厚さは、特に限定されないが、微小な粒径を有する金や銀等の貴金属から成る金属ナノ粒子を含有するものであることから、0.1〜1.0μm程度の薄膜にすることが好ましい。インキ皮膜が厚い場合は、コストが高額となるからである。
【0039】
なお、導電性領域の抵抗値の有無の確認は、電磁波等による非接触電子計測計又はテスター等の導通の有無を判断するのに通常用いられる市販の機器を使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、上記の本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体とその作製方法について具体的な実施例を用いて詳細に説明する。
【0041】
(実施例1)
基材である市販の上質紙に金属コロイド粒子含有インキを印刷してインキ皮膜を形成する印刷工程と、乾燥後のインキ皮膜にフラッシュ光を照射して導電性領域を形成する照射工程から成る、導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法を例にして説明する。なお、金属コロイド粒子に使用した金属は、Auである。
【0042】
金属コロイド粒子含有インキを以下のとおり配合した。
[金属コロイド粒子含有スクリーンインキの組成]
金属コロイド粒子 30〜50 重量部
ワニス 55〜70 重量部
助剤 1〜10 重量部
【0043】
印刷工程においては、スクリーン印刷機を使用して上質紙に上記スクリーンインキをベタ刷りした印刷物を作製し、上記印刷物を10分間放置してベタ刷りした部分を乾燥させてインキ皮膜を形成した。
【0044】
照射工程においては、上記インキ皮膜にマスクパターンを有する型紙によりマスク処理を行い、サンパック社製ストロボB3000SのGNoを11に合わせてフラッシュ光をインキ皮膜に照射して導電性領域を形成した。
【0045】
インキ皮膜にフラッシュ光を照射した部分は、市販のテスターを使用して抵抗値を測定した。フラッシュ光照射前のインキ皮膜の抵抗値は、約2×10〔Ω〕(約2MΩ)の絶縁体程度の抵抗値を有していた。当該インキ皮膜に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、0.75〔μA〕程度の微弱な電流しか流れておらず、非導電性を確認することができた。一方、フラッシュ光を照射した部分のインキ皮膜の導電性領域の抵抗値は、約5Ωであった。当該導電性領域に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、約0.3〔A〕程度の電流を確認することができた。なお、フラッシュ光を照射していない部分のインキ皮膜、すなわち、非導電性領域の抵抗値は、フラッシュ光を照射する前の抵抗値と変わらず約2MΩであった。よって、フラッシュ光を照射したインキ皮膜の部分に形成された導電性領域は、抵抗値が減少することによる導電性を確認した。
【0046】
(実施例2)
次に、実施例1の上記スクリーンインキにより作製した印刷物のインキ皮膜にレーザ光を照射した場合について説明する。なお、印刷工程は、上記実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0047】
インキ皮膜の乾燥後、上記インキ皮膜の上に、波長830nmの半導体レーザ(最大出力600mW、ビーム径25μm)を用いて、照射エネルギーが250mJ/cmになるよう出力を調節してインキ皮膜にレーザ光を照射して導電性領域を形成した。
【0048】
インキ皮膜にレーザ光を照射した部分は、市販のテスターを使用して抵抗値を測定した。レーザ光照射前のインキ皮膜の抵抗値は、約2×10〔Ω〕(約2MΩ)の絶縁体程度の抵抗値を有していた。当該インキ皮膜に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、約0.75〔μA〕程度の微弱な電流しか流れておらず、非導電性を確認することができた。一方、レーザ光を照射した部分のインキ皮膜の導電性領域の抵抗値は約4Ωであった。当該導電性領域に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、約0.4〔A〕程度の電流を確認することができた。なお、レーザ光を照射していない部分のインキ皮膜、すなわち、非導電性領域の抵抗値は、レーザ光を照射する前の抵抗値と変わらず2MΩであった。よって、レーザ光を照射したインキ皮膜の部分に形成された導電性領域は、抵抗値が減少することによる導電性を確認した。
【0049】
(実施例3)
次に、基材である市販の上質紙に金属コロイド粒子含有インキをインキジェットプリンタにより塗布してインキ皮膜を形成する印刷工程と、乾燥後のインキ皮膜にフラッシュ光を照射して導電性領域を形成する照射工程とから成る、導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法を例にして説明する。なお、金属コロイド粒子に使用した金属は、Auである。
【0050】
金属コロイド粒子含有インキを以下のとおり配合した。
[金属コロイド粒子含有インキジェットインキの組成]
金属粒子 40〜70 重量部
エタノール 20〜40 重量部
助剤 1〜10 重量部
【0051】
上記インキジェットプリンタ用インキを使用して市販の上質紙に、市販のプリンタを使用してベタ刷りによりインキ皮膜を印刷し、上記インキ皮膜を風乾した。
【0052】
照射工程においては、乾燥後のインキ皮膜にマスクパターンを有する型紙によりマスク処理を行い、サンパック社製ストロボB3000SのGNoを11に合わせてフラッシュ光をインキ皮膜に照射した。
【0053】
インキ皮膜にフラッシュ光を照射した部分は、市販のテスターを使用して抵抗値を測定した。フラッシュ光照射前のインキ皮膜の抵抗値は、約2×10〔Ω〕(約2MΩ)の絶縁体程度の抵抗値を有していた。当該インキ皮膜に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、0.75〔μA〕程度の微弱な電流しか流れておらず、非導電性を確認することができた。一方、フラッシュ光を照射した部分のインキ皮膜の導電性領域の抵抗値は、約5Ωであった。当該導電性領域に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、約0.3〔A〕程度の電流を確認することができた。なお、フラッシュ光を照射していない部分のインキ皮膜、すなわち、非導電性領域の抵抗値は、フラッシュ光を照射する前の抵抗値と変わらず約2MΩであった。よって、フラッシュ光を照射したインキ皮膜の部分に形成された導電性領域は、抵抗値が減少することによる導電性を確認した。
【0054】
(実施例4)
次に、実施例3の上記インキジェットプリンタ用インキにより作製した印刷物のインキ皮膜にレーザ光を照射した場合について説明する。なお、印刷工程は、上記実施例3と同様であるため説明を省略する。
【0055】
照射工程においては、乾燥のインキ皮膜に波長830nmの半導体レーザ(最大出力600mW、ビーム径25μm)を用いて、照射エネルギーが250mJ/cmになるように出力を調節してインキ皮膜にレーザ光を照射して導電性領域を形成した。
【0056】
インキ皮膜にレーザ光を照射した部分は、市販のテスターを使用して抵抗値を測定した。レーザ光照射前のインキ皮膜の抵抗値は、約2×10〔Ω〕(約2MΩ)の絶縁体程度の抵抗値を有していた。当該インキ皮膜に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、約0.75〔μA〕程度の微弱な電流しか流れておらず、非導電性を確認することができた。一方、レーザ光を照射した部分のインキ皮膜の導電性領域の抵抗値は、約4Ωであった。当該導電性領域に1.5〔V〕の電圧をかけて電流値を測定したところ、約0.4〔A〕程度の電流を確認することができた。なお、レーザ光を照射していない部分のインキ皮膜、すなわち、非導電性領域の抵抗値は、レーザ光を照射する前の抵抗値と変わらず2MΩであった。よって、レーザ光を照射したインキ皮膜の部分に形成された導電性領域は、抵抗値が減少することによる導電性を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の導電性不可視情報の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法の工程図である。
【図3】本発明の導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法の各工程の概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1 基材
2 金属コロイド粒子含有インキによるインキ皮膜
3 非導電性領域
4 導電性領域
4(a) 第一導電性領域
4(b) 第二導電性領域
4(c) 第三導電性領域
5 マスク
6 ストロボ
7 照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属コロイド粒子を含有する複数の導電性領域が形成された真偽判別媒体であって、前記複数の導電性領域のうち、少なくと二つの導電性領域は異なる電気抵抗値を有し、前記異なる電気抵抗値を有する二つの導電性領域が所定の範囲内に並列して配置され、かつ、等色であることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体。
【請求項2】
前記異なる電気抵抗値を有する二つの導電性領域の周囲に、前記異なる電気抵抗値を有する二つの導電性領域と等色の非導電性領域を有していることを特徴とする請求項1記載の導電性情報を有する真偽判別媒体。
【請求項3】
前記導電性領域及び前記非導電性領域は、前記金属コロイド粒子を含有したインキにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性情報を有する真偽判別媒体。
【請求項4】
基材上に金属コロイド粒子を含有する所定の物質を形成する加工工程と、前記所定の物質が乾燥した後に前記所定の物質にエネルギー線を照射して導電性領域を形成する照射工程とから成ることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法。
【請求項5】
前記所定の物質が印刷インキであることを特徴とする請求項4記載の導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法。
【請求項6】
前記エネルギー線がフラッシュ光又は赤外レーザー光であることを特徴とする請求項4又は5記載の導電性情報を有する真偽判別媒体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−126475(P2008−126475A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312869(P2006−312869)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】