説明

導電性接着剤

【構成】 一般式AgxCuy(0.01≦x≦0.30、0.70≦y≦0.99、x+y=1、xおよびyは原子比)で表され、粉体表面の銀濃度が平均濃度より高くなっている銅合金粉末、および硬化性樹脂組成物よりなる導電性接着剤において、硬化性樹脂中にポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂またはゴム変性エポキシ樹脂のいずれか1種またはその混合物を含むことを特徴とする導電性接着剤。
【効果】 本発明では、従来の導電性接着剤に比べて銅箔等の金属面との接着強度を向上させることできるため、実装基板の信頼性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は配線回路上に各種の電子部品を固着接合するための導電性接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子部品を配線回路上に固着接合する方法として、従来のはんだ付け法にかわり、導電性接着剤を用いる方法が検討されている。この方法は鉛を用いないことで廃棄物に対する特別な処置が不要になることや、溶融過程を経由しないために狭ピッチ実装におけるブリッジング等の問題を生じず高密度実装に適していること、更にはんだ付け温度に比べ低温で硬化できるなどが利点として挙げられる。
【0003】これまで検討された導電性接着剤は、銀粉と硬化性樹脂よりなる銀ペーストおよび銅粉と硬化性樹脂よりなる銅ペーストがある。銀ペーストを用いた場合、エレクトロマイグレーションが高いため、長期加湿時に短絡を起こしやすい。銅ペーストを用いた場合、耐環境試験において導電性の低下が起こり易い。このような欠点を有しない導電性粉末としては、銀を含む銅合金粉末で銀の粉体表面濃度が平均濃度よりも高い構造を有する粉末を用いた導電性接着剤がすでに公知である(特開平4−268381号報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の銅合金粉末を用いた導電性接着剤においては、部品のサイズの小型化にともない接着面が小さくなり実質的な固着力が低下し、接合の信頼性が低下する傾向にあり、従来より固着強度の高い導電性接着剤が求められている。そこで、本発明の目的は銅箔等の金属面への固着強度の高い導電性接着剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため鋭意検討した結果、従来より公知の組成に各種の熱可塑性樹脂を添加する効果を鋭意検討した結果、特にポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂あるいはゴム変性エポキシ樹脂を加えると、他の一般的な熱可塑性樹脂に比べ金属面への著しい接着性の向上が達成できることを見いだし本発明に至った。つまり本発明は、一般式AgxCuy(0.01≦x≦0.30、0.70≦y≦0.99、x+y=1、xおよびyは原子比)で表され、粉体表面の銀濃度が平均濃度より高くなっている銅合金粉末、および硬化性樹脂組成物よりなる導電性接着剤において、硬化性樹脂中にポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂またはゴム変性エポキシ樹脂のいずれか1種またはその混合物を含むことを特徴とする導電性接着剤に関するものである。
【0006】本発明の導電性接着剤を用いる実装部品としては特に制限がなく、各種の表面実装用部品(SMD)が最も適しているが、ピン挿入型の部品固着にも使用できる。本発明で用いるポリビニルアセタール樹脂は、ポリマー骨格中のポリビニルアルコールの重合度が100以上であり、かつガラス転移点が0℃以上であれば、使用できる。異なる重合度、ガラス転移点のポリビニルアセタール樹脂を混合して使用しても差し支えない。耐熱性という点からは、前述の重合度が200以上が好ましく、重合度500以上が特に好ましい。接着強度という点からは、分子中に残っている水酸基のモル%が5%以上が好ましく、25%以上が特に好ましい。また、前述のガラス転移点は50℃以上が特に好ましい。
【0007】アセタール化に使用するアルデヒドの構造は要求特性に合わせ任意に選択できる。例えば、アルキル基であれば、メチル、エチル、ブチル基のもの、あるいはそれらの混合物を使用することができる。アルキル基以外のアリール基、あるいは不飽和の骨格を有する置換基を導入したものも使用できる。特にブチルアルデヒドでアセタール化したブチラール樹脂は効果が大きく好ましい。
【0008】本発明で用いるポリアミド樹脂は、ガラス転移点がー10℃以上であり、アルコール可溶性であれば、差し支えない。例えば、樹脂中のアミド骨格の−NH基のプロトンをアルコキシル化し、アルコール可溶にしたものを用いることができる。また、アルコール可溶性にするため、樹脂中にアミド骨格以外のポリマー骨格を導入したものでも構わない。この場合、アミド骨格のモル%が30%以上が好ましく、50%以上が特に好ましい。アミド骨格を形成するポリアミンは脂環式であっても芳香族であっても構わない。また、ポリカルボン酸の骨格も、脂環式であっても、芳香族であっても差し支えない。
【0009】本発明で用いるゴム変性エポキシ樹脂は、液状ゴムとエポキシ樹脂を混合したもの、あるいは、液状ゴムとエポキシ樹脂が一部反応したものを用いることができる。ブレンド樹脂中のゴム成分の重量部としては5〜60%が好ましく、10〜50%が特に好ましい。ゴム配合量が5%未満では、充分な剪断強度が得られず、60%を越えると充分な耐熱性が得られるない。
【0010】ゴム変性エポキシ樹脂に使用するゴム成分は分子量が500〜2500のものが好ましく、分子量800〜2000のものが特に好ましい。ゴムの種類としては、ポリブチレン、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、あるいは、シリコンゴムの中から選ばれた1種類以上のゴムを用いることができる。また、ゴムの末端あるいは分子中にカルボキシル基を導入した骨格を有するものが特に好ましい。ゴム変性エポキシ樹脂に使用するエポキシ樹脂は公知のものを使用することができる。例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などがあげられる。
【0011】ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂あるいはゴム変性エポキシ樹脂をそれぞれ単独で用いても良いし、必要に応じて混合して用いても良い。硬化性樹脂組成物中の含有率は2〜40重量%が好ましく、さらに10〜30重量%がより好ましい。2重量%未満であると充分な接着強度が得られず、40重量%を越えると充分な硬化膜強度が得られない。
【0012】本発明の導電性接着剤に用いる銅合金はすでに公知の方法で得ることができる(特開平1−205561号公報)。中でも特に不活性ガスアトマイズ法が好ましい。開示内容によれば所定の組成の銀粒子と銅粒子を黒鉛るつぼ中で融解し、不活性ガス雰囲気中で融液をアトマイズし、微粉末化するものである。本発明で使用できる銅合金粉末は銀量xが0.01〜0.4(原子比)であるが、0.01未満の場合は粒子表面の同成分の酸化で電極との接点抵抗が不安定になる。xが0.4を越えると電極間での銀マイグレーションによるショートが発生しやすくなる。粒子表面の銀濃度は、平均の銀濃度より高く、1.8倍以上が好ましい。1.8倍未満である場合には粒子表面の耐酸化性が十分でない。本発明で用いられる銀濃度とはXPS(X線光電子分光分析装置:XSAM800、KRATOS社製)を用いて測定したものである。
【0013】本発明で用いる導電性粒子の平均粒径は、0.1〜50μmの範囲が好ましく1〜10μmがより好ましい。粒径が0.1μm未満であると、粉体の表面が活性になり耐酸化性が低下する。粒径が50μmを越えるとペースト中での沈降が大きくなり安定性が低下する。粒径分布は広い方が、一般的に硬化物中での粉末の充填密度が高くなり、導電性が良く好ましい。
【0014】本発明の硬化性組成物に用いられる有機バインダーとして、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂をあげることができ、必要に応じて熱可塑性樹脂を添加して用いても良い。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂およびその硬化剤、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等が挙げられ、単独で用いても良いし、混合して用いても良い。また各種のエポキシ系反応性希釈剤を用いても良い。エポキシ硬化剤はイミダゾール系やジシアンジアミドなど各種のものが使用可能であるが、イミダゾール誘導体とエポキシ化合物との反応により形成された潜在性硬化剤などが好ましい。
【0015】紫外線硬化型樹脂を用いる場合は重合性オリゴマー、硬化性モノマー、光重合開始剤等が組み合わされて用いられる。重合性オリゴマーとしてはエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。重合性モノマーとしてはアクリロイル基やメタクリロイル基を1分子中に1個または2個以上有するものであり、通常は官能基数の異なるモノマーの混合系で用いられる。光開始剤は光でラジカル重合を開始するものが一般的であり、アセトフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、パーオキサイド系など公知のものが使用できる。
【0016】硬化性樹脂組成物中には、銅の酸化膜除去剤、例えば各種の有機カルボン酸やアルキルアミンなどが添加可能であり、表面処理剤として各種のシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤などが添加可能である。樹脂組成の粘性を調整するなどの目的で必要に応じて溶剤を用いても良く、溶解性と乾燥性が要求特性を満足するものであれば特に制限はない。例えばメチルカルビトール、エチルカルビトール、及びそれらのアセテート、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、及びそれらのアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、ベンジルアルコール等が挙げられる。乾燥および硬化時に気泡の発生を少なくするため、溶剤の添加量は少ないほど好ましい。
【0017】上記の導電性接着剤を用いて電子部品を固着接合する方法は、基板および電子部品の形状等の条件により最適なものを選ぶことができる。例えば表面実装用の部品を固着接合する場合は、配線基板の部品接続部(パッド部)にあらかじめスクリーン印刷法やディスペンサー法等により導電性接着剤ペーストを塗布する。塗布したペーストの上から電子部品の接合電極部を押しつけるようにしてパッド上に粘着させ、必要に応じて乾燥を行った後に加熱硬化させる事により実装基板を得ることができる。乾燥温度は用いた溶媒の沸点等により最適温度を選定できるが、40〜90℃の範囲が一般的である。熱硬化性の場合の硬化温度は用いる熱硬化性樹脂の最適条件に選定できるが、150〜220℃が一般的である。また電子部品の接合電極部にあらかじめ印刷またはディップなどにより導電性接着剤ペーストを塗布し、必要に応じて乾燥しておいたものを、上記の同様の手順で配線パッド部に塗布された導電性接着剤ペースト上に粘着させて固着接続しても良く、接着強度がさらに良好で好ましい。この場合は部品端子部に導電性接着剤で電極が形成されるため、従来の端子電極を形成するめっき等の工程を省略することが可能である。乾燥は緩やかな条件で行った方がボイドの発生を抑制できて好ましい。さらに乾燥後の予備的な硬化の後に導通等のチェックを行い、もし不良が発見された場合は部品を剥離して再度接続し直すことが可能である。さらに硬化後に接続不良が発見された場合にも剥離して接続し直すことが可能である。
【0018】配線基板の導体は、銅箔をパターニングして形成した配線回路でも良いし、銀粉や銅粉および上記の銅合金などを用いた導電性ペーストで形成された配線回路でも良い。
銅合金粉末作成例銅粒子(純度99.9重量%以上)603g、銀粒子(純度99.9重量%以上)54gを混合して、黒鉛るつぼ中1700℃まで窒素雰囲気加熱溶融した。融液をるつぼ先端より窒素雰囲気中に噴出し、噴出と同時に、50Kg/cm2Gの窒素ガス(純度99.9重量%以上)を融液に対して噴出し、アトマイズした。得られた導電性粉末は球状で平均粒子系は10μmであった。気流分級機(日清エンジニアリング社製 TC−15N)を用いて20μm以下の粒径範囲で分級した。平均粒子径は5μmであった。表面銀濃度は0.55であった。平均銀濃度は0.05であり表面の銀濃度は平均の銀濃度の11倍であった。
【0019】
【実施例1】上記作成例で得られた銅合金粉末を50g、レゾール系フェノール樹脂58g、水添ビスA型エポキシ樹脂5.6g、ブチラール樹脂13g(BM−1、積水化学社製)、トリエタノールアミン1.5g、シラン系カップリング剤1.5g、ベンジルアルコール8gを混合し、三本ロールにて混練して導電性ペースト(1)を得た。
【0020】ガラスエポキシ銅張積層基板をパターニングして得た配線のパッド部(2×2mm2 、パッド間隔2mm)にスクリーン印刷により銅合金粉を用いた導電性ペースト(1)を塗布した。その上に表面実装用のチップ抵抗を圧着して粘着仮固定した。50℃で30分乾燥した後170℃で30分加熱し硬化させた。チップ抵抗とパッド部との接続抵抗は13mΩであり使用可能な範囲であった。チップ抵抗の接着強度は2Kgで充分なものであった。また90℃、80%相対湿度の環境で1000時間、直流50Vを負荷し続けても短絡は起きず良好な耐マイグレーション性を示した。この時の接続抵抗は15mΩであり良好な耐環境性を示した。
【0021】
【実施例2】上記作成例で得られた銅合金粉末を50g、レゾール系フェノール樹脂58g、水添ビスA型エポキシ樹脂5.6g、ポリアミド樹脂13g(T−8、ユニチカ社製)、トリエタノールアミン1.5g、シラン系カップリング剤1.5g、ベンジルアルコール8gを混合し、三本ロールにて混練して導電性ペースト(2)を得た。
【0022】実施例1と同様にして基板に部品を固着したのち、接続抵抗、接着強度、耐マイグレーション性、接続抵抗の耐環境性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0023】
【実施例3】上記作成例で得られた銅合金粉末を50g、レゾール系フェノール樹脂58g、水添ビスA型エポキシ樹脂5.6g、ゴム変性エポキシ樹脂13g、トリエタノールアミン1.5g、シラン系カップリング剤1.5g、ベンジルアルコール8gを混合し、三本ロールにて混練して導電性ペースト(3)を得た。
【0024】実施例1と同様にして基板に部品を固着したのち、接続抵抗、接着強度、耐マイグレーション性、接続抵抗の耐環境性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0025】
【比較例1】上記作成例で得られた銅合金粉末を50g、レゾール系フェノール樹脂71g、水添ビスA型エポキシ樹脂5.6g、トリエタノールアミン1.5g、シラン系カップリング剤1.5g、ベンジルアルコール8gを混合し、三本ロールにて混練して導電性ペースト(4)を得た。
【0026】実施例1と同様にして基板に部品を固着したのち、接続抵抗、接着強度、耐マイグレーション性、接続抵抗の耐環境性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0027】
【比較例2】上記作成例で得られた銅合金粉末を50g、レゾール系フェノール樹脂58g、水添ビスA型エポキシ樹脂5.6g、ポリエステル樹脂(ファインディックM−8710、大日本インキ化学工業社製)13g、トリエタノールアミン1.5g、シラン系カップリング剤1.5g、ベンジルアルコール8gを混合し、三本ロールにて混練して導電性ペースト(5)を得た。
【0028】実施例1と同様にして基板に部品を固着したのち、接続抵抗、接着強度、耐マイグレーション性、接続抵抗の耐環境性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0029】
【比較例3】平均粒径10μmの電解銅粉を50g、レゾール系フェノール樹脂71g、水添ビスA型エポキシ樹脂5.6g、トリエタノールアミン1.5g、シラン系カップリング剤1.5g、ベンジルアルコール8gを混合し、三本ロールにて混練して導電性ペースト(6)を得た。
【0030】実施例1と同様にして基板に部品を固着したのち、接続抵抗、接着強度、耐マイグレーション性、接続抵抗の耐環境性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0031】
【比較例4】平均粒径7μmの鱗片化銀粉を50g、レゾール系フェノール樹脂71g、水添ビスA型エポキシ樹脂5.6g、トリエタノールアミン1.5g、シラン系カップリング剤1.5g、ベンジルアルコール8gを混合し、三本ロールにて混練して導電性ペースト(7)を得た。
【0032】実施例1と同様にして基板に部品を固着したのち、接続抵抗、接着強度、耐マイグレーション性、接続抵抗の耐環境性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0033】
【表1】


【0034】
【表2】


【0035】
【発明の効果】本発明では、従来の導電性接着剤に比べて銅箔等の金属面との接着強度を向上させることできるため、実装基板の信頼性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式AgxCuy(0.01≦x≦0.30、0.70≦y≦0.99、x+y=1、xおよびyは原子比)で表され、粉体表面の銀濃度が平均濃度より高くなっている銅合金粉末、および硬化性樹脂組成物よりなる導電性接着剤において、硬化性樹脂中にポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂またはゴム変性エポキシ樹脂のいずれか1種またはその混合物を含むことを特徴とする導電性接着剤。