説明

導電性被接合部材の接合方法

【課題】接合体の厚さが不均一になるのを防止することができる導電性被接合部材の接合方法を提供する。
【解決手段】 複数の導電性被接合部材2、4が積層されて形成された積層体8をその周囲をダイで包囲せずに積層方向にパンチ32で加圧し、積層体8における互いに隣接する被接合部材2、4同士を放電プラズマ焼結法により接合する。この接合方法では、パンチ32の加圧面32aと当接する積層体8の表面8aがパンチ32の加圧面32aよりも相対的に大きく設定されている。そして、積層体8の表面8aにその外周縁部がパンチ32の加圧面32aからパンチ32の全周に亘ってはみ出るようにパンチ32の加圧面32aを当接させた状態で、パンチ32で積層体8を加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性被接合部材を放電プラズマ焼結法により接合する導電性被接合部材の接合方法、及び絶縁基板用積層材の製造方法に関する。
【0002】
なお本明細書では、「板」の語は「箔」を含む意味で用いられる。
【背景技術】
【0003】
例えば積層された2個の金属部材同士を接合する方法として、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)法を用いた接合方法が知られている(例えば特許文献1参照)。なお、この放電プラズマ焼結法は、SPS接合法、パルス通電圧接法(Pulsed Current Hot Pressing:PCHP)等とも呼ばれている。
【0004】
図11に示すように、従来、積層された2個の金属板101、102同士を放電プラズマ焼結法により接合する場合には、これらの金属板101、102が積層されて形成された積層体103をその積層方向(即ち積層体103の厚さ方向)に上下一対の導電性パンチ132、132で加圧しつつ、両パンチ132、132間にパルス電流を通電することにより、金属板101、102同士を積層状に接合している。これにより、両金属板101、102が互いに接合されて形成された接合体が得られる。なお、同図に示した接合方法では、接合の際に積層体103の周囲は導電性筒状ダイで包囲されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−59270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の放電プラズマ焼結法では、上パンチ132の加圧面132aと当接する積層体103の表面(即ち積層体103の上面103a)は、上パンチ132の加圧面132aよりも小さく設定されており、また同じく、下パンチ132の加圧面132aと当接する積層体103の表面(即ち積層体103の下面103b)は、下パンチ132の加圧面132aよりも小さく設定されている。そして、積層体103を両パンチ132、132で加圧する際には、各パンチ132の加圧面132aの外周縁部が積層体103の上下各面103a、103bからはみ出るように、各パンチ132の加圧面132aが積層体103の上下各面103a、103bに当接される。そのため、同図中に二点鎖線で示すように、積層体103への加圧時に上パンチ132(又は下パンチ132)が加圧軸Qに対して傾いてしまい、その結果、得られる接合体の厚さが不均一になるという問題が発生する。
【0007】
さらに、積層体103への加圧時において各パンチ132の加圧面132aの外周縁部は積層体103の上下各面103a、103bからはみ出ているので、両パンチ132、132の加圧面132a、132aのはみ出し部132z、132z間で不慮の放電や電気的短絡が発生することがあった。その結果、良好な接合を安定して行うことが困難であった。
【0008】
さらに、各金属板101、102の外周縁には各金属板101、102の切断時に生じたバリが形成されていることがある。この場合、このバリの影響で接合不良が発生することがあった。
【0009】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、接合体の厚さが不均一になるのを防止することができ、更に、良好な接合を安定して行うことができる導電性被接合部材の接合方法、及び、絶縁基板用積層材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1] 複数の導電性被接合部材が積層されて形成された積層体をその周囲をダイで包囲せずに積層方向にパンチで加圧し、積層体における互いに隣接する被接合部材同士を放電プラズマ焼結法により接合する導電性被接合部材の接合方法であって、
パンチの加圧面と当接する積層体の表面がパンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで積層体を加圧することを特徴とする導電性被接合部材の接合方法。
【0012】
[2] 複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
複数の積層体のうちパンチの加圧面と当接するとともに最外側に配置された最外側積層体の表面が、パンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
最外側積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する前項1記載の導電性被接合部材の接合方法。
【0013】
[3] 離型部材と隣接する積層体の表面にその外周縁部が離型部材の離型面から離型部材の全周に亘ってはみ出るように離型部材の離型面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する前項2記載の導電性被接合部材の接合方法。
【0014】
[4] 複数の被接合部材は、半導体モジュールの絶縁基板を構成する複数の層を形成する複数の金属板である前項1〜3のいずれかに記載の導電性被接合部材の接合方法。
【0015】
[5] 複数の金属板が積層されて形成された積層体をその周囲をダイで包囲せずに積層方向にパンチで加圧し、積層体における互いに隣接する金属板同士を放電プラズマ焼結法により接合する絶縁基板用積層材の製造方法であって、
パンチの加圧面と当接する積層体の表面がパンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで積層体を加圧することを特徴とする絶縁基板用積層材の製造方法。
【0016】
[6] 複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
複数の積層体のうちパンチの加圧面と当接するとともに最外側に配置された最外側積層体の表面が、パンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
最外側積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する前項5記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【0017】
[7] 離型部材と隣接する積層体の表面にその外周縁部が離型部材の離型面から離型部材の全周に亘ってはみ出るように離型部材の離型面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する前項6記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下の効果を奏する。
【0019】
前項[1]記載の導電性被接合部材の接合方法では、積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで積層体を加圧するので、積層体への加圧時にパンチが加圧軸に対して傾くのを防止することができる。これにより、複数の導電性被接合部材が接合されて形成された接合体の厚さが不均一になるのを防止することができる。
【0020】
さらに、パンチの加圧面の外周縁部が積層体の表面からはみ出ていないので、不慮の放電や電気的短絡を防止することができる。さらに、被接合部材の外周縁に形成されるバリの影響による接合不良を防止することができる。そのため、良好な接合を安定して行うことができる。
【0021】
前項[2]記載の接合方法では、最外側積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧することにより、接合体を大量に製造することができる。
【0022】
前項[3]記載の接合方法では、離型部材と隣接する積層体の表面にその外周縁部が離型部材の離型面から離型部材の全周に亘ってはみ出るように離型部材の離型面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧することにより、接合体の厚さが不均一になるのを確実に防止することができる。
【0023】
前項[4]記載の接合方法では、半導体モジュールの絶縁基板を構成する複数の層を形成する複数の金属板を接合することができる。
【0024】
前項[5]記載の絶縁基板用積層材の製造方法では、上記[1]記載の接合方法と同様の理由により、積層材の厚さが不均一になるのを防止することができるし、更に、不慮の放電や電気的短絡を防止することができ、しかも、金属板の外周縁に形成されるバリの影響による接合不良を防止することができる。そのため、良好な接合を安定して行うことができる。
【0025】
前項[6]記載の製造方法では、上記[2]記載の接合方法と同様の理由により、積層材を大量に製造することができる。
【0026】
前記[7]記載の製造方法では、上記[3]記載の接合方法と同様の理由により、積層材の厚さが不均一になるのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、半導体モジュールの側面図である。
【図2】図2は、同半導体モジュールの絶縁基板の断面図である。
【図3】図3は、同絶縁基板の積層材を、本発明の第1実施形態に係る導電性被被接合部材の接合方法により製造する製造工程の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、互いに積層された導電性被接合部材としてのNi層とTi層とを接合する第1接合工程を示す断面図である。
【図5】図5は、図4の第1接合工程を示す斜視図である。
【図6】図6は、互いに積層されたTi層とAl層とろう材層とを同時に接合する第2接合工程を示す断面図である。
【図7】図7は、第1接合工程の一変形形態を示す断面図である。
【図8】図8は、第2接合工程の一変形形態を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係る導電性被接合部材の接合方法を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の第3実施形態に係る導電性被接合部材の接合方法を示す断面図である。
【図11】図11は、積層された2個の金属部材同士を従来の放電プラズマ焼結法により接合する場合を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0029】
なお、以下の説明において、各図面の上下を上下というものとする。また、各図面には、全図面を通じて同一部材には同一の符号が付されている。
【0030】
図1において、20は半導体モジュールである。この半導体モジュール20は、IGBTモジュール、MOSFETモジュール、サイリスタモジュール、ダイオードモジュール等であり、半導体素子21と絶縁基板15と放熱部材17とを備えている。絶縁基板15は半導体素子21と放熱部材17との間に配置されており、半導体素子21から発生した熱を放熱部材17に伝達する役割を果たす。そのため、絶縁基板15は、優れた電気絶縁性と高い熱伝導性とを兼ね備えることが要求される。
【0031】
半導体素子21は、IGBTチップ、MOSFETチップ、サイリスタチップ、ダイオードチップ等を有している。
【0032】
放熱部材17は、空冷式又は水冷式のヒートシンクや冷却器などであり、金属製であり、具体的には例えばAl又はAl合金製である。本第1実施形態では、放熱部材17は例えば放熱フィンを有するヒートシンクである。
【0033】
図2に示すように、絶縁基板15は、本発明の第1実施形態に係る導電性被接合部材の製造方法により製造された接合体としての積層材1Aを備えるとともに、更に、セラミック層10、金属ベース層12などを備えている。各層は例えば水平状に配置されている。
【0034】
セラミック層10は、絶縁基板15における電気絶縁層として機能するセラミックで形成されたものであり、好ましくはAlN、Al、Si、Y、CaO、BN及びBeOからなる群より選択される1種又は2種以上のセラミックで形成されたものである。このセラミック層10は、セラミック板から提供されて形成されたものである。セラミック層10の厚さは例えば300〜1000μmである。因みに、セラミック層10を形成するセラミックの融点又は分解点は、AlN:2200℃、Al:2050℃、Si:1900℃、Y:2400℃、CaO:2570℃、BN:3000℃、BeO:2570℃である。なお、セラミック層10の大きさは、電気絶縁性を確実に確保するため他の層よりも若干大きく設定されるのが望ましい。
【0035】
金属ベース層12は、セラミック層10と放熱部材17との間に配置されるものであり、熱応力の緩和を図ることを目的とするものである。この金属ベース層12は、金属板から提供されて形成されたものであり、例えばAl板又はAl合金板から提供されて形成されている。そして、この金属ベース層12がセラミック層10の下面側に積層状にセラミック層10とろう付けにより接合されている。したがって、金属ベース層12とセラミック層10との接合界面には、金属ベース層12とセラミック層10とを接合したろう材層11が形成されている。金属ベース層12の下面側には放熱部材17が金属ベース層12とろう付け等により接合される。
【0036】
本第1実施形態の積層材1Aは、セラミック層10の片面側(本第1実施形態ではセラミック層10の上面側)に積層状にセラミック層10とろう付けにより接合されるものであり、Ni層2、Ti層4、Al層6、ろう材層7などを備えている。各層2、4、6、7は水平状に配置されている。なお図面では、各ろう材層7、11は他の層と区別し易くするためドットハッチングで図示されている。
【0037】
Ni層2は、その表面2a(上面)に半導体素子21がはんだ付けにより接合されるものである。このNi層2は、Ni又はNi合金で形成されており、詳述すると、導電性第1被接合部材としてのNi板又はNi合金板から提供されて形成されたものである。
【0038】
Ti層4は、Ni層2の表面2a側とは反対側(即ち下側)に積層状に配置されている。そして、Ni層2とTi層4とが放電プラズマ焼結法により接合されている。このTi層4は、Ti又はTi合金で形成されており、詳述すると、導電性第2被接合部材としてのTi板又はTi合金板から提供されて形成されたものである。
【0039】
さらに、Ni層2とTi層4との接合界面には、Ni層2のNiとTi層4のTiとが合金化してなる第1合金層3が形成されている。この第1合金層3は、Ni層2とTi層4とを放電プラズマ焼結法により接合した時に形成されたものであり、Ni−Ti系超弾性合金相を含んでいる。さらに、この第1合金層3は、NiとTiとの組成比が厚さ方向に徐々に変化する傾斜材料構造を採る。そのため、この第1合金層3は、熱応力(熱歪み)を確実に緩和・吸収する役割を果たす。これにより、積層材1Aの接合界面での割れや剥離の発生及び積層材1AのNi層2の表面2aの変形(凹凸)の発生を確実に防止することができる。Ni−Ti系超弾性合金相は、詳述すると例えばNiTi超弾性合金相である。
【0040】
Al層6は、Ti層4のNi層2配置側とは反対側(即ち下側)に積層状に配置されている。そして、Ti層4とAl層6とが放電プラズマ焼結法により接合されている。このAl層6は、Al又はAl合金で形成されており、詳述すると、導電性第3被接合部材としてのAl板又はAl合金板から提供されて形成されたものである。特に、このAl層6は、絶縁基板15の配線層として機能するとともに応力緩和機能を有するものであり、そのため純度4N以上(即ち純度99.99質量%以上)の純アルミニウムで形成されるのが良い。
【0041】
さらに、Ti層4とAl層6との接合界面には、Ti層4のTiとAl層6のAlとが合金化してなる第2合金層5が形成されている。この第2合金層5は、Ti層4とAl層6とを放電プラズマ焼結法により接合した時に形成されたものであり、Ti−Al系合金相を含んでいる。
【0042】
ここで、上述したように第1合金層3はNi−Ti系超弾性合金相を含んでおり、このNi−Ti系超弾性合金相は熱応力を緩和・吸収する。しかし、Ni−Ti系超弾性合金の熱伝導率は12.1W/m・Kであり、この値はAlの熱伝導率236W/m・Kと比べて著しく低い。したがって、第1合金層3の厚さはなるべく薄い方が積層材1A(更には絶縁基板15)の熱伝導率の低下を防止できる点で望ましく、特に7μm以下であることが良い。第1合金層3の厚さの下限は限定されるものではないが、特に2μmであることが熱応力を確実に緩和・吸収しうる点で特に望ましい。
【0043】
第2合金層5の厚さはなるべく薄い方が積層材1A(更には絶縁基板15)の接合界面での割れや剥離の発生を防止できる点で望ましく、特に5μm以下であることが良い。第2合金層5の厚さの下限は限定されるものではないが、特に0.8μmであることが特に望ましい。
【0044】
Ni層2及びTi層4の厚さは限定されるものではない。しかし、Niの熱伝導率は90.7W/m・K、Tiの熱伝導率は21.9W/m・Kであり、これらの熱伝導率はAlの熱伝導率236W/m・Kと比べて著しく低い。したがって、Ni層2及びTi層4の厚さはなるべく薄い方が、積層材1A(更には絶縁基板15)の熱伝導率の低下を防止できる点で望ましい。そこで、Ni層2の厚さは150μm以下、及び、Ti層4の厚さは100μm以下であることが特に望ましい。一方、Ni層2の厚さの下限は5μm、Ti層4の厚さの下限は2μmであることが各層2、4の特性を確実に発揮しうる点で特に望ましい。
【0045】
Al層6の厚さは限定されるものではないが、Al層6を絶縁基板15の配線層及び応力緩和層として確実に機能させるため、なるべく厚い方が望ましい。しかるに、本第1実施形態では、Al層6はTi層4とクラッド接合により接合されるのではなく放電プラズマ焼結法により接合されるので、厚さ0.1〜2.0mmという厚いAl層6をTi層4と接合することができる。そのため、Al層6を配線層及び応力緩和層として確実に機能させることができる。
【0046】
ろう材層7は、積層材1Aとセラミック層10とをろう付けにより接合する際に用いられるものであり、積層材1AのAl層6のTi層4配置側とは反対側(即ち下側)に積層状に配置されている。そして、Al層6とろう材層7とが放電プラズマ焼結法により接合されている。このろう材層7は、導電性第4被接合部材としてのAl系ろう材板(例:Al−Si系合金のろう材板)から提供されて形成された層であることが望ましい。このろう材層7の厚さは限定されるものではないが、積層材1Aとセラミック層10とをろう付けにより確実に接合できるようにするため、更には、熱伝導率の低下を防止するため、10〜70μmの範囲に設定されるのが特に望ましい。
【0047】
次に、本第1実施形態の積層材及び絶縁基板の製造方法の一例について、図3〜6を参照して以下に説明する。
【0048】
ここで、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)法は、一般に、粉体を焼結するため又は部材同士を接合するために適用されるものであり、本第1実施形態では部材同士を接合するために適用されている。なお、このような放電プラズマ焼結法は、「SPS接合法」、「パルス通電圧接法(Pulsed Current Hot Pressing:PCHP)」等とも呼ばれている。図3において、「SPS法」とは放電プラズマ焼結法を意味している。
【0049】
この放電プラズマ焼結法は、接合される部材の周囲を導電性筒状ダイで包囲して接合を行う方法と、接合される部材の周囲をダイで包囲しないで接合を行う方法とがある。後者の方法には、接合の開始時における部材のセッティング作業及び接合後における取り出し作業を容易に行うことができ、そのため、接合作業を迅速に行うことができるし、放電プラズマ焼結装置30についての設備費の削減を図ることができるという利点がある。そこで、本第1実施形態では、後者の方法、即ちダイを用いない放電プラズマ焼結法で接合を行う。
【0050】
ここで、Alの融点はNi及びTiの融点よりも格段に低い。そのため、Ni層2とTi層4とAl層6とを放電プラズマ焼結法により同時に接合しようとすると、Ni層2とTi層4とが接合されるようにこれらの層2、4、6をAl層6の融点以上の温度に加熱する必要があり、その結果、Al層6が溶融することとなって、設計された(所望する)Al層6の厚さを維持することができなくなるため、これらの層2、4、6を同時に接合することができない。そこで、本実施形態では、Ni層2とTi層4とを接合する工程と、その後でTi層4とAl層6とを接合する工程との2工程に分けて接合が行われている。
【0051】
図3〜5に示すように、Ni板又はNi合金板から形成されたNi層2と、Ti板又はTi合金板から形成されたTi層4とを互いに隣接させて積層状に配置する。これにより、Ni層2とTi層4との積層体8が形成される。この積層体8を説明の便宜上「第1積層体8」という。図4に示すように、この第1積層体8では、Ni層2が上側、Ti層4が下側にそれぞれ配置されている。そして、第1積層体8の周囲をダイで包囲せずに第1積層体8のNi層2とTi層4とを放電プラズマ焼結装置30を用いて放電プラズマ焼結法により接合する。この工程を「第1接合工程」という。また、この第1接合工程によってNi層2とTi層4とが互いに接合されて形成された接合体8Zを、説明の便宜上「第1接合体8Z」という(図3参照)。さらに、この接合によって、Ni層2とTi層4との接合界面に第1合金層3が形成される。
【0052】
放電プラズマ焼結装置30は、図4及び5に示すように、上下一対のパンチ32、32と、両パンチ32、32間にパルス電流を供給する電源(図示せず)とを備えている。両パンチ32、32は互いに同一構成である。パンチ32は導電性を有するものであり、例えば黒鉛製である。さらに、パンチ32の断面形状は円形状である。また、パンチ32はその先端面からなる加圧面32aを有している。この加圧面32aはパンチ32の軸に対して垂直に形成されている。各パンチ32の基部には電極33が電気的に接続されている。
【0053】
第1積層体8において、上パンチ32の加圧面32aと当接する第1積層体8の上面8a、即ちNi層2の表面2aは、上パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されており、また、下パンチ32の加圧面32aと当接する第1積層体8の下面8b、即ちTi層4の下面は、下パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されている。換言すると、上パンチ32の加圧面32aは、第1積層体8の上面8a(即ちNi層2の表面2a)よりも小さく設定されており、また、下パンチ32の加圧面32aは、第1積層体8の下面8b(即ちTi層4の下面)よりも小さく設定されている。
【0054】
第1接合工程で行われる放電プラズマ焼結法について詳述すると、次のとおりである。すなわち、第1積層体8の上面8a(即ちNi層2の表面2a)にその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、第1積層体8の下面8bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させる。そして、この状態で、例えば1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で第1積層体8をその積層方向(即ち第1積層体8の厚さ方向)に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電する(即ち第1積層体8にパルス電流を通電する)ことで第1積層体8を加熱し、これによりNi層2とTi層4とを接合する。
【0055】
第1合金層3は、上述したようにNi−Ti系超弾性合金相を含み、しかもNiとTiとの組成比が厚さ方向に徐々に変化する傾斜材料構造を採る。この第1接合工程では、厚さ7μm以下の第1合金層3が形成されるように放電プラズマ焼結法の接合条件(例:加熱温度、加熱温度の保持時間、昇温速度、加圧力)を設定するのが望ましい。この接合条件について具体的に例示すると、加熱温度は650〜750℃、加熱温度の保持時間は0〜30min、室温から加熱温度への昇温速度は15〜100℃/min、第1積層体8への加圧力は10〜30MPaである。
【0056】
第1積層体8の上下各面8a、8bの外周縁部の、各パンチ32の加圧面32aからのはみ出し量E(図4参照)は、限定されるものではないが、0.1mm以上であることが特に望ましい。はみ出し量Eの上限は6mmであることが特に望ましい。はみ出し量Eがこのような範囲に設定されることにより、第1接合体8Zの厚さが不均一になるのを確実に防止することができる。
【0057】
次いで、図3に示すように、第1接合体8ZのTi層4と、Al層6と、ろう材層7とを放電プラズマ焼結法により積層状に同時に接合する。この工程を「第2接合工程」という。この第2接合工程では、第1接合体8ZのTi層4と、Al層6と、ろう材層7とを、Ti層4とAl層6との接合界面に厚さ5μm以下の第2合金層5が形成されるように放電プラズマ焼結法により接合することが特に望ましい。Ti層4とAl層6とは互いに隣接しており、Al層6とろう材層7とは互いに隣接している。
【0058】
第2接合工程においてTi層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結法により同時に接合する場合には、図6に示すように、まず、第1接合体8ZのTi層4とAl層6とろう材層7とを積層状に配置する。これにより、第1接合体8ZのTi層4とAl層6とろう材層7との積層体9が形成される。この積層体9を説明の便宜上「第2積層体9」という。この第2積層体9において、Ti層4とAl層6とは互いに隣接しており、また、Al層6とろう材層7とは互いに隣接している。そして、第2積層体9の周囲をダイで包囲せずに、Ti層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結装置30を用いて放電プラズマ焼結法により同時に接合する。
【0059】
第2積層体9において、上パンチ32の加圧面32aと当接する第2積層体9の上面9a、即ちNi層2の表面2aは、上述したように上パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されており、また、下パンチ32の加圧面32aと当接する第2積層体9の下面9b、即ちろう材層7の下面は、下パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されている。換言すると、上パンチ32の加圧面32aは、第2積層体9の上面9a(即ちNi層2の表面2a)よりも小さく設定されており、また、下パンチ32の加圧面32aは、第2積層体9の下面9b(即ちろう材層7の下面)よりも小さく設定されている。
【0060】
第2接合工程で行われる放電プラズマ焼結法について詳述すると、次のとおりである。すなわち、第2積層体9の上面9aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、第2積層体9の下面9bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させる。そして、この状態で、例えば1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で第2積層体9をその積層方向(即ち第2積層体9の厚さ方向)に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電する(即ち第2積層体9にパルス電流を通電する)ことで第2積層体9を加熱し、これによりTi層4とAl層6とろう材層7とを同時に接合する。その結果、本第1実施形態の積層材1Aが得られる。
【0061】
第2合金層5は、上述したようにTi−Al系合金相を含んでいる。この第2接合工程では、厚さ5μm以下の第2合金層5が形成されるように放電プラズマ焼結法の接合条件(例:加熱温度、加熱温度の保持時間、昇温速度、加圧力)を設定するのが望ましい。この接合条件について具体的に例示すると、加熱温度は500〜570℃、加熱温度の保持時間は0〜30min、室温から加熱温度への昇温速度は15〜100℃/min、第2積層体9への加圧力は5〜20MPaである。
【0062】
第2積層体9の上下各面9a、9bの外周縁部の、各パンチ32の加圧面32aからのはみ出し量E(図6参照)は、限定されるものではないが、0.1mm以上であることが特に望ましい。はみ出し量Eの上限は6mmであることが特に望ましい。はみ出し量Eがこのような範囲に設定されることにより、積層材1Aの厚さが不均一になるのを確実に防止することができる。
【0063】
この積層材1Aを用いて絶縁基板15が製造される。その製造方法について例示すると次のとおりである。
【0064】
図3に示すように、この積層材1Aとセラミック層10と金属ベース層12とをろう付けにより接合する。これにより、絶縁基板15が得られる。ここで、積層材1Aはろう材層7を備えているので、このろう材層7をろう材として用いることにより積層材1Aとセラミック層10とを容易に接合することができる。なお本発明では、積層材1Aとセラミック層10と金属ベース層12とを炉内ろう付けにより同時に接合しても良い。
【0065】
こうして得られた絶縁基板15では、図1及び2に示すように、その金属ベース層12の下面に放熱部材17がろう付け等により接合されるとともに、Ni層2の表面2aに半導体素子21がはんだ付けにより接合される。これにより半導体モジュール20が得られる。
【0066】
本第1実施形態の積層材1A及びその製造方法は、次の利点を有している。
【0067】
第1接合工程の放電プラズマ焼結法では、第1積層体8の上下各面8a、8bにその外周縁部がパンチ32の加圧面32aからパンチ32の全周に亘ってはみ出るようにパンチ32の加圧面32aを当接させた状態で、両パンチ32、32で第1積層体8を加圧するので、第1積層体8への加圧時に各パンチ32が加圧軸Qに対して傾くのを防止することができる。これにより、第1接合体8Zの厚さが不均一になるのを防止することができる。そのため、高い寸法精度を有する第1接合体8Zを得ることができる。
【0068】
さらに、パンチ32の加圧面32aの外周縁部が第1積層体8の上下各面8a、8bからはみ出ていないので、不慮の放電や電気的短絡を防止することができる。さらに、もしNi層2やTi層4の外周縁にバリが形成されていたとしても、バリの影響による接合不良を防止することができる。そのため、良好な接合を安定して行うことができる。
【0069】
その上、第2接合工程の放電プラズマ焼結法では、第2積層体9の上下各面9a、9bにその外周縁部がパンチ32の加圧面32aからパンチ32の全周に亘ってはみ出るようにパンチ32の加圧面32aを当接させた状態で、両パンチ32、32で第2積層体9を加圧するので、第2積層体9への加圧時に各パンチ32が加圧軸Qに対して傾くのを防止することができる。これにより、積層材1Aの厚さが不均一になるのを防止することができる。そのため、高い寸法精度を有する積層材1Aを得ることができる。
【0070】
さらに、パンチ32の加圧面32aの外周縁部が第2積層体9の上下各面9a、9bからはみ出ていないので、不慮の放電や電気的短絡を防止することができる。さらに、もしTi層4、Al層6又はろう材層7の外周縁にバリが形成されていたとしても、バリの影響による接合不良を防止することができる。そのため、良好な接合を安定して行うことができる。
【0071】
また、本第1実施形態の積層材1Aは、Ni層2を備えているので、はんだ接合性が良好である。したがって、半導体素子21をこのNi層2の表面2aにはんだ付けにより確実に接合することができる。
【0072】
さらに、Ni層2とAl層6との間にTi層4が配置されているので、次の効果を奏する。すなわち、もしNi層2とAl層6との間にTi層4を配置しないでNi層2とAl層6とを直接接合した場合には、Ni層2とAl層6との接合界面に強度の弱い合金層が形成されてしまい、その結果、冷熱サイクルに伴い発生する熱応力(熱歪み)によってこの合金層で割れや剥離が生じ易くなる。これに対して、本第1実施形態の積層材1Aでは、Ni層2とAl層6との間にTi層4が配置されているので、そのような強度の弱い合金層は形成されない。これにより、熱応力による積層材の接合界面での割れや剥離の発生を防止できるし、更にはNi層2の表面2aの変形(凹凸)の発生も防止することができる。
【0073】
しかも、Ni層2とTi層4とを放電プラズマ焼結法により接合することによって、Ni層2とTi層4との接合界面に第1合金層3が形成される。この第1合金層3は、Ni−Ti系超弾性合金相を含み、しかもNiとTiとの組成比が厚さ方向に徐々に変化する傾斜材料構造を採る。したがって、この第1合金層3は、積層材1Aや絶縁基板15に発生する熱応力を確実に緩和・吸収する役割を果たす。
【0074】
ここで、積層材1Aや絶縁基板15に発生する熱応力について具体的に例示すると、次のとおりである。すなわち、絶縁基板15の金属ベース層12と放熱部材17との接合が例えばろう付けにより行われる場合、このろう付けの際に絶縁基板15の温度は室温から約600℃に上昇し、ろう付け後に室温に戻る。また、積層材1AのNi層2の表面2aに半導体素子21がはんだ付けにより接合される際に絶縁基板15の温度は室温から約300℃に上昇し、はんだ付け後に室温に戻る。さらに、半導体モジュール20の動作の際に半導体素子21の温度は室温から150〜300℃程度に上昇し、その動作の停止後に室温に戻る。このような冷熱サイクルによって積層材1Aや絶縁基板15に熱応力(熱歪み)が発生する。しかるに、本第1実施形態の積層材1Aや絶縁基板15では、この熱応力は第1合金層3により緩和・吸収される。これにより、積層材1Aの接合界面での割れや剥離の発生及びNi層2の表面2aの変形の発生を確実に防止することができる。
【0075】
その上、Ni層2とTi層4との接合手段、及び、Ti層4とAl層6とろう材層7との接合手段がいずれも放電プラズマ焼結法であることにより、接合前後の各層の寸法変化を少なくすることができる。これにより、極めて高い寸法精度を有する積層材1Aを得ることができる。
【0076】
さらに、Ti層4とAl層6との接合手段として放電プラズマ焼結法を採用することにより、接合手段としてクラッド接合を採用する場合に比べて、厚さの厚いAl層6をTi層4と接合することが可能となる。具体的に示すと、Ti層4とAl層6との接合手段としてクラッド接合を採用し、厚さ100μm以下のTi層4を用いた場合、安定した接合を行うためにはTi層4の厚さと同じ程度の厚さのAl層6しかTi層4と接合することができない。これに対して、接合手段として放電プラズマ焼結法を採用する場合には、厚さ0.1〜2.0mmという厚いAl層6をTi層4と接合することができる。そのため、Al層6を配線層及び応力緩和層として確実に機能させることができる。
【0077】
さらに、Al層6とろう材層7とが接合されているので、このろう材層7を、積層材1Aとセラミック層10とをろう付けにより接合する際のろう材として用いることができる。そのため、積層材1Aとセラミック層10とを容易に接合することができる。
【0078】
さらに、Ti層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結法により同時に接合することにより、ろう材層7を備えた積層材1Aを作業能率良く得ることができる。
【0079】
ここで、上記第1実施形態の積層材1Aでは全ての層2、4、6、7が導電性を有している。そのため、放電プラズマ焼結用導電性筒状ダイを用いなくても上下両パンチ32、32間の通電を確保し得て、放電プラズマ焼結法による接合を行うことができる。
【0080】
図7は、第1接合工程の一変形例として、第1接合工程において複数の第1積層体8のNi層2とTi層4とを放電プラズマ焼結法により一括して接合する場合を示す断面図である。
【0081】
同図に示した第1接合工程では、第1積層体8を複数準備する。同図では、準備した第1積層体8の個数は例えば3個である。なお本発明では、第1積層体8の個数は3個であることに限定されるものではなく、2〜40個であっても良いし、40個を超えても良い。
【0082】
次いで、複数の第1積層体8を互いに重なり合う各第1積層体8、8間に導電性離型部材としての導電性離型板35を介して積層する。つまり、互いに重なり合う2個の第1積層体8、8の間に導電性離型板35が介在されるように、複数の第1積層体8を積層する。このとき、複数の第1積層体8の周囲はダイで包囲されていない。
【0083】
複数の第1積層体8のうち上パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最上側(即ち最外側)に配置された最上側第1積層体8U(即ち最外側第1積層体8U)の上面8a、即ちNi層2の表面2aは、上パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されており、また、複数の第1積層体8のうち下パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最下側(即ち最外側)に配置された最下側第1積層体8S(即ち最外側第1積層体8S)の下面8b、即ちTi層4の下面は、下パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されている。
【0084】
導電性離型板35は、互いに重なり合う第1積層体8、8同士が接合されないようにする役割を有するものであり、更に、第1積層体8とは接合しないものである。この離型板35は、導電性を有し更に接合時に溶融しない耐熱性を有する板であることが望ましく、例えばカーボン板(グラファイト板・シートを含む)からなるものである。
【0085】
さらに、この離型板35の上面からなる上離型面35aは、離型板35と上側に隣接する上側第1積層体8の下面よりも小さく設定されており、また、離型板35の下面からなる下離型面35bは、離型板35と下側に隣接する下側第1積層体8の上面よりも小さく設定されている。本実施形態では、離型板35の上下各離型面35a、35bの大きさは、各パンチ32の加圧面32aと略等しく設定されている。そして、上側第1積層体8の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の上離型面35aが当接されるとともに、下側第1積層体8の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35bから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の下離型面35bが当接されている。
【0086】
次いで、最外側第1積層体8Uの上面8aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、最下側第1積層体8Sの下面8bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させる。そして、この状態で、真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の第1積層体8をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電する(即ち複数の第1積層体8にパルス電流を通電する)ことで複数の第1積層体8を一括して加熱し、これにより各第1積層体8のNi層2とTi層4とを一括して接合する。また、この接合により、各第1積層体8のNi層2とTi層4との接合界面に第1合金層3が形成される(図3参照)。この接合に適用される接合条件は、上記第1実施形態の第1接合工程で適用した接合条件と同じである。
【0087】
この第1接合工程によれば、複数の第1積層体8のNi層2とTi層4とを放電プラズマ焼結法により一括して接合するので、第1接合体8Zを大量に製造することができる。これにより、積層材1Aの製造コストを引き下げることができる。
【0088】
図8は、第2接合工程の一変形例として、第2接合工程において複数の第2積層体9のTi層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結法により一括して同時に接合する場合を示す断面図である。
【0089】
同図に示した第2接合工程では、第2積層体9を複数準備する。同図では、準備した第2積層体9の個数は例えば3個である。なお本発明では、第2積層体9の個数は3個であることに限定されるものではなく、2〜40個であっても良いし、40個を超えても良い。
【0090】
次いで、複数の第2積層体9を互いに重なり合う各第2積層体9、9間に導電性離型板35を介して積層する。つまり、互いに重なり合う2個の第2積層体9、9の間に導電性離型板35が介在されるように、複数の第2積層体9を積層する。このとき、複数の第2積層体9の周囲はダイで包囲されていない。
【0091】
複数の第2積層体9のうち上パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最上側(即ち最外側)に配置された最上側第2積層体9U(即ち最外側第2積層体9U)の上面9a、即ちNi層2の表面2aは、上パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されており、また、複数の第2積層体9のうち下パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最下側(即ち最外側)に配置された最下側第2積層体9S(即ち最外側第2積層体9S)の下面9b、即ちろう材層7の下面は、下パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されている。
【0092】
導電性離型板35において、離型板35上離型面35aは、離型板35と上側に隣接する上側第2積層体9の下面よりも小さく設定されており、また、離型板35の下離型面35bは、離型板35と下側に隣接する下側第2積層体9の上面よりも小さく設定されている。本実施形態では、上述したように、離型板35の上下各離型面35a、35bの大きさは、各パンチ32の加圧面32aと略等しく設定されている。そして、上側第2積層体9の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の上離型面35aが当接されるとともに、下側第2積層体9の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35bから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の下離型面35bが当接されている。
【0093】
次いで、最外側第2積層体9Uの上面9aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、最下側第2積層体9Sの下面9bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させる。そして、この状態で、真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の第2積層体9をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電する(即ち複数の第2積層体9にパルス電流を通電する)ことで複数の第2積層体9を一括して加熱し、これにより各第2積層体9のTi層4とAl層6とろう材層7とを一括して同時に接合する。また、この接合により、各第2積層体9のTi層4とAl層との接合界面に第2合金層5が形成される(図3参照)。この接合に適用される接合条件は、上記第1実施形態の第2接合工程で適用した接合条件と同じである。
【0094】
この第2接合工程によれば、複数の第2積層体9のTi層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結法により一括して同時に接合するので、積層材1Aを大量に製造することができる。これにより、積層材1Aの製造コストを更に引き下げることができる。
【0095】
図9は、本発明の第2実施形態に係る導電性被接合部材の接合方法を示す断面図である。
【0096】
本第2実施形態では、導電性第1被接合部材としての第1金属板41と、導電性第2被接合部材としての第2金属板42とは互いに隣接して積層状に配置されている。これにより、第1金属板41と第2金属板42との積層体45が形成されている。
【0097】
この積層体45を複数準備する。同図では、準備した積層体45の個数は例えば3個である。なお本発明では、積層体45の個数は3個であることに限定されるものではなく、2〜40個であっても良いし、40個を超えても良い。
【0098】
次いで、複数の積層体45を互いに重なり合う各積層体45、45間に導電性離型板35を介して積層する。つまり、互いに重なり合う2個の積層体45、45の間に導電性離型板35が介在されるように、複数の積層体45を積層する。このとき、複数の積層体45の周囲はダイで包囲されていない。
【0099】
複数の積層体45のうち上パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最上側(即ち最外側)に配置された最上側積層体45U(即ち最外側積層体45U)の上面45aは、上パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されており、また、複数の積層体45のうち下パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最下側(即ち最外側)に配置された最下側積層体(即ち最外側積層体45S)の下面55bは、下パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されている。
【0100】
導電性離型板35において、離型板35の上離型面35aは、離型板35と上側に隣接する上側積層体45の下面よりも小さく設定されており、また、離型板35の下離型面35bは、離型板35と下側に隣接する下側積層体45の上面よりも小さく設定されている。本実施形態では、上述したように、離型板35の上下各離型面35a、35bの大きさは、各パンチ32の加圧面32aと略等しく設定されている。そして、上側積層体45の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の上離型面35aが当接されるとともに、下側積層体45の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35bから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の下離型面35bが当接されている。
【0101】
次いで、最外側積層体45Uの上面45aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、最下側積層体45Sの下面45bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させる。そして、この状態で、真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の積層体45をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電する(即ち複数の積層体45にパルス電流を通電する)ことで複数の積層体45を一括して加熱し、これにより各積層体45の第1金属板41と第2金属板42とを一括して同時に接合する。これにより、第1金属板41と第2金属板42とが接合されて形成された接合体が複数個得られる。
【0102】
この接合方法によれば、複数の積層体45の2つの金属板41、42同士を放電プラズマ焼結法により一括して同時に接合するので、接合体を大量に製造することができる。これにより、接合体の製造コストを引き下げることができる。
【0103】
図10は、本発明の第3実施形態に係る導電性被接合部材の接合方法を示す断面図である。
【0104】
本第3実施形態では、導電性第1被接合部材としての第1金属板51と、導電性第2被接合部材としての第2金属板52と、導電性第3被接合部材としての第3金属板53とは、積層状に配置されている。これにより、第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53との積層体55が形成されている。この積層体55において、第1金属板51と第2金属板52とは互いに隣接しており、また、第2金属板52と第3金属板53とは互いに隣接している。
【0105】
この積層体55を複数準備する。同図では、準備した積層体55の個数は例えば3個である。なお本発明では、積層体55の個数は3個であることに限定されるものではなく、2〜40個であっても良いし、40個を超えても良い。
【0106】
次いで、複数の積層体55を互いに重なり合う各積層体55、55間に導電性離型板35を介して積層する。つまり、互いに重なり合う2個の積層体55、55の間に導電性離型板35が介在されるように、複数の積層体55を積層する。このとき、複数の積層体55の周囲はダイで包囲されていない。
【0107】
複数の積層体55のうち上パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最上側(即ち最外側)に配置された最上側積層体55U(即ち最外側積層体55U)の上面55aは、上パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されており、また、複数の積層体55のうち下パンチ32の加圧面32aと当接するとともに最下側(即ち最外側)に配置された最下側積層体(即ち最外側積層体55S)の下面55bは、下パンチ32の加圧面32aよりも大きく設定されている。
【0108】
導電性離型板35において、離型板35の上離型面35aは、離型板35と上側に隣接する上側積層体55の下面よりも小さく設定されており、また、離型板35の下離型面35bは、離型板35と下側に隣接する下側積層体55の上面よりも小さく設定されている。本実施形態では、上述したように、離型板35の上下各離型面35a、35bの大きさは、各パンチ32の加圧面32aと略等しく設定されている。そして、上側積層体55の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の上離型面35aが当接されるとともに、下側積層体55の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35bから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の下離型面35bが当接されている。
【0109】
次いで、最外側積層体55Uの上面55aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、最下側積層体55Sの下面55bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させる。そして、この状態で、真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の積層体55をその積層方向に一括して加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電する(即ち複数の積層体45にパルス電流を通電する)ことで複数の積層体55を一括して加熱し、これにより各積層体55の第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53とを一括して同時に接合する。これにより、第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53とが接合されて形成された接合体が複数個得られる。
【0110】
この接合方法によれば、複数の積層体55の3つの金属板51、52、53を放電プラズマ焼結法により一括して同時に接合するので、接合体を大量に製造することができる。これにより、接合体の製造コストを引き下げることができる。
【0111】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0112】
また、本発明は、上記第1〜3実施形態で適用した技術的思想を組み合わせて構成して良い。
【実施例】
【0113】
本発明の具体的な幾つかの実施例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0114】
<実施例1>
本第1実施例では、図3に示した上記第1実施形態の積層材1Aを製造した。
【0115】
Ni層2、Ti層4、Al層6及びろう材層7として、それぞれ次の板を準備した。
【0116】
Ni層2 :縦160mm×横160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
Ti層4 :縦160mm×横160mm×厚さ0.02mmの純Ti板
Al層6 :縦160mm×横160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層7:縦160mm×横160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0117】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS(日本工業規格)1種である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層6を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層7を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0118】
次いで、第1接合工程では、図4及び5に示すように、Ni層2とTi層4とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に接合した。この第1接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチ32は、直径150mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0119】
この第1接合工程では、Ni層2とTi層4との第1積層体8の周囲をダイで包囲せずに、第1積層体8の上面8a(即ちNi層2の表面2a)にその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、第1積層体8の下面8b(即ちTi層4の下面)にその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で第1積層体8をその積層方向(即ち第1積層体8の厚さ方向)に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで第1積層体8を加熱し、これによりNi層2とTi層4とを接合した。その結果、Ni層2とTi層4との第1接合体8Zを得た。また、この接合により、Ni層2とTi層4との接合界面にNi層2のNiとTi層4のTiとが合金化してなる厚さ約2μmの第1合金層3が形成された。この第1合金層3は、NiTi超弾性合金相を含み、しかもNiとTiとの組成比が厚さ方向に徐々に変化する傾斜材料構造を採る。
【0120】
この第1接合工程で適用した接合条件は、加熱温度650℃、加熱温度の保持時間20min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0121】
この第1接合工程で得られた第1接合体の厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、第1接合体8Zの厚さは均一であった。
【0122】
次いで、第2接合工程では、図6に示すように、第1接合体8ZのTi層4と、Al層6と、ろう材層7とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に同時に接合した。この第2接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチ32は、第1接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置と同じく、直径150mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0123】
この第2接合工程では、第1接合体8ZのTi層4とAl層6とろう材層7との第2積層体9の周囲をダイで包囲せずに、第2積層体9の上面9a(即ちNi層2の表面2a)にその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、第2積層体9の下面9b(即ちろう材層7の下面)にその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で第2積層体9をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで第2積層体9を加熱し、これにより第2積層体9のTi層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結法により同時に接合した。その結果、所望する積層材1Aを得た(図3参照)。また、この接合により、Ti層4とAl層6との接合界面にTi層4のTiとAl層6のAlとが合金化してなる厚さ約1μmの第2合金層5が形成された。この第2合金層5はTiAl合金相を含んでいる。
【0124】
この第2接合工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間5min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。なお、第2接合工程を行う前に、Al層6が接合されるTi層4の表面をブラシ研磨して当該表面上の酸化皮膜を予め除去した。
【0125】
この第2接合工程で得られた積層材1Aの厚さについて測定位置を変えて7箇所測定したところ、積層材1Aの厚さは均一であった。
【0126】
次いで、図3に示すように、積層材1Aを縦30mm×横30mmの大きさに切断後、積層材1Aとセラミック層10とろう材層11と金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した。この工程を説明の便宜上「ろう付け工程」という。これにより、絶縁基板15を得た。
【0127】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0128】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0129】
<実施例2>
本実施例2では、図3に示した上記第1実施形態の積層材1Aを製造した。
【0130】
Ni層2、Ti層4、Al層6及びろう材層7として、それぞれ次の板を準備した。
【0131】
Ni層2 :縦160mm×横160mm×厚さ0.02mmの純Ni板
Ti層4 :縦160mm×横160mm×厚さ0.02mmの純Ti板
Al層6 :縦160mm×横160mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層7:縦160mm×横160mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0132】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層6を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層7を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0133】
次いで、第1接合工程では、Ni層2とTi層4との第1積層体8を30個準備した。そして、図7に示すように、これらの第1積層体8を互いに重なり合う各第1積層体8、8間に導電性離型板35を介して積層した。導電性離型板35は、直径150mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなるものである。そして、複数の第1積層体8のNi層2とTi層4とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に一括して接合した。この第1接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチは、直径150mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0134】
この第1接合工程では、複数の第1積層体8の周囲をダイで包囲せずに、離型板35と上側に隣接する上側第1積層体8の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の上離型面35aを当接させるとともに、離型板35と下側に隣接する下側第1積層体8の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35から離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の下離型面35bを当接させた。さらに、複数の第1積層体8のうち最上側に配置された最上側第1積層体8Uの上面8aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、複数の第1積層体8のうち最下側に配置された最下側第1積層体8Sの下面8bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の第1積層体8をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで複数の第1積層体8を一括して加熱し、これにより複数の第1積層体8のNi層2とTi層4とを放電プラズマ焼結法により一括して接合した。その結果、Ni層2とTi層4との第1接合体8Zを30個得た。また、この接合により、各第1接合体8ZのNi層2とTi層4との接合界面にNi層2のNiとTi層4のTiとが合金化してなる厚さ約2μmの第1合金層3が形成された。この第1合金層3は、NiTi超弾性合金相を含み、しかもNiとTiとの組成比が厚さ方向に徐々に変化する傾斜材料構造を採る。
【0135】
この第1接合工程で適用した接合条件は、加熱温度650℃、加熱温度の保持時間20min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0136】
この第1接合工程で得られた第1接合体8Zの厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、第1接合体8Zの厚さは均一であった。
【0137】
次いで、第2接合工程では、第1接合体8ZのTi層4とAl層6とろう材層7との第2積層体9を30個準備した。そして、図8に示すように、これらの第2積層体9を互いに重なり合う各第2積層体9、9間に導電性離型板35を介して積層した。導電性離型板35は、直径150mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなるものである。そして、各第2未接合積層体9のTi層4とAl層6とろう材層7とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に一括して同時に接合した。この第2接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチ32は、第1接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置と同じく、直径150mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0138】
この第2接合工程では、複数の第2積層体9の周囲をダイで包囲せずに、離型板35と上側に隣接する上側第2積層体9の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の上離型面35aを当接させるとともに、離型板35と下側に隣接する下側第2積層体9の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35bから離型板35の全周に亘ってはみ出るように離型板35の下離型面35bを当接させた。さらに、複数の第2積層体9のうち最上側に配置された最上側第2積層体9Uの上面9aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘ってはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、複数の第2積層体9のうち最下側に配置された最下側第2積層体9Sの下面9bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘ってはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の第2積層体9をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで複数の第2積層体9を一括して加熱し、これにより複数の第2積層体9のTi層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結法により一括して同時に接合した。その結果、積層材1Aを30個得た。また、この接合により、各積層材1AのTi層4とAl層6との接合界面にTi層4のTiとAl層6のAlとが合金化してなる厚さ約1μmの第2合金層5が形成された。この第2合金層5はTiAl合金相を含んでいる。
【0139】
この第2接合工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間5min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0140】
この第2接合工程で得られた積層材1Aの厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、積層材1Aの厚さは均一であった。
【0141】
次いで、図3に示すように、積層材1Aを縦30mm×横30mmの大きさに切断後、積層材1Aとセラミック層10とろう材層11と金属ベース層12とを炉内ろう付けにより積層状に同時に接合した[ろう付け工程]。これにより、絶縁基板15を得た。
【0142】
このろう付け工程では、セラミック層10としてAlN板(縦30mm×横30mm×厚さ1mm)と、ろう材層11としてAl−8質量%Siのろう材板(縦30mm×横30mm×厚さ0.04mm)と、金属ベース層12として純度が4Nの純Al板(縦30mm×横30mm×厚さ0.6mm)とを用いた。ろう付け工程で適用したろう付け条件は、加熱温度600℃、加熱温度の保持時間15min、印加荷重6g/cmである。
【0143】
次いで、こうして得られた絶縁基板15に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して実施したところ、絶縁基板15の各接合界面での割れや剥離及び絶縁基板15のNi層2の表面2aの変形は発生しなかった。
【0144】
<比較例1>
本比較例1では、Ni層2、Ti層4、Al層6及びろう材層7として、それぞれ次の板を準備した。
【0145】
Ni層2 :縦70mm×横70mm×厚さ0.02mmの純Ni板
Ti層4 :縦70mm×横70mm×厚さ0.02mmの純Ti板
Al層6 :縦70mm×横70mm×厚さ0.6mmの純Al板
ろう材層7:縦70mm×横70mm×厚さ0.04mmのろう材板。
【0146】
Ni層2を形成するNi板の純度はJIS1種である。Ti層4を形成するTi板の純度はJIS1種である。Al層6を形成するAl板の純度は4Nである。ろう材層7を形成するろう材板の組成はAl−8質量%Siである。
【0147】
次いで、第1接合工程では、Ni層2とTi層4とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に接合した。この第1接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチ32は、直径150mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0148】
この第1接合工程では、Ni層2とTi層4との第1積層体8の周囲をダイで包囲せずに、上パンチ32の加圧面32aの外周縁部が第1積層体8の上面8aからはみ出るように上パンチ32の加圧面を第1積層体8の上面8aに当接させるとともに、下パンチ32の加圧面32aの外周縁部が第1積層体8の下面8bからはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを第1積層体8の下面8bに当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で第1積層体8をその積層方向(即ち第1積層体の厚さ方向)に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで第1積層体8を加熱し、これによりNi層2とTi層4とを接合した。これにより、Ni層2とTi層4との第1接合体8Zを得た。また、この接合により、Ni層2とTi層4との接合界面にNi層2のNiとTi層4のTiとが合金化してなる厚さ約2μmの第1合金層3が形成された。また、第1接合体8Zにおいて、Ni層2の外周縁とTi層4の外周縁との接合界面には、各層2、4の外周縁に各層の切断時に形成されたバリの影響により、接合不良が発生していた。
【0149】
この第1接合工程で適用した接合条件は、加熱温度650℃、加熱温度の保持時間20min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。
【0150】
次いで、第2接合工程では、第1接合体8ZのTi層4と、Al層6と、ろう材層7とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に同時に接合した。この第2接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチ32は、第1接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置と同じく、直径150mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0151】
この第2接合工程では、第1接合体8ZのTi層4とAl層6とろう材層7との第2積層体9の周囲をダイで包囲せずに、上パンチ32の加圧面32aの外周縁部が第2積層体9の上面9aからはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを第2積層体9の上面9aに当接させるとともに、下パンチ32の加圧面32aの外周縁部が第2積層体9の下面9bからはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを第2積層体9の下面9bに当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で第2積層体9をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで第2積層体9を加熱し、これにより第2積層体9のTi層4とAl層6とろう材層7とを放電プラズマ焼結法により同時に接合した。その結果、積層材1Aを得た(図3参照)。また、この接合により、Ti層4とAl層6との接合界面にTi層4のTiとAl層6のAlとが合金化してなる厚さ約1μmの第2合金層5が形成された。
【0152】
この第2接合工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間5min、昇温速度35℃/min、加圧力10MPaである。なお、第2接合工程を行う前に、Al層6が接合されるTi層4の表面をブラシ研磨して当該表面上の酸化皮膜を予め除去した。
【0153】
この第2接合工程で得られた積層材1Aの厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、Al層6の変形によって積層材1Aの厚さが不均一になっていた。
【0154】
<実施例3>
本実施例3では、図9に示した上記第2実施形態の接合方法に従って接合体を製造した。
【0155】
第1金属板41及び第2金属板42として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0156】
第1金属板41:直径84mm×厚さ0.1mmの無酸素銅板
第2金属板42:直径84mm×厚さ0.1mmの純Al板。
【0157】
第1無酸素銅板の材質はJIS−C1011である。純Al板の純度は4Nである。
【0158】
次いで、第1金属板41と第2金属板42との積層体45を10個準備した。そして、これらの積層体45を互いに重なり合う各積層体45、45間に導電性離型板35を介して積層した。導電性離型板35は、直径80mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなるものである。
【0159】
そして、複数の積層体45の第1金属板41と第2金属板42とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に一括して接合した。この接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチ32は、直径80mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0160】
この接合工程では、複数の積層体45の周囲をダイで包囲せずに、離型板35と上側に隣接する上側積層体45の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘って均等にはみ出るように離型板35の上離型面35aを当接させるとともに、離型板35と下側に隣接する下側積層体45の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35bから離型板35の全周に亘って均等にはみ出るように離型板35の下離型面35bを当接させた。さらに、複数の積層体45のうち最上側に配置された最上側積層体45Uの上面45aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘って均等にはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、複数の積層体45のうち最下側に配置された最下側積層体45Sの下面45bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘って均等にはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の積層体45をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで複数の積層体45を一括して加熱し、これにより複数の積層体45の第1金属板41と第2金属板42とを放電プラズマ焼結法により一括して接合した。その結果、第1金属板41と第2金属板42との接合体を10個得た。また、この接合により、各接合体の第1金属板41と第2金属板42との接合界面に、第1金属板41のCuと第2金属板42のAlとが合金化してなる厚さ約10μmの合金層が形成されていた。したがって、第1金属板41と第2金属板42とが両パンチ32、32で挟まれた領域全域に亘って拡散接合されていた。
【0161】
この接合工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間5min、昇温速度35℃/min、加圧力20MPaである。
【0162】
こうして得られた接合体の厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、接合体の厚さは均一であった。
【0163】
この接合体は、電気抵抗が小さく、熱伝導率が高いため、例えばリチウムイオン電池用配線層やヒートスプレッタ用素材として好適に用いられる。
【0164】
<実施例4>
本実施例4では、図9に示した上記第2実施形態の接合方法に従って接合体を製造した。
【0165】
第1金属板41及び第2金属板42として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0166】
第1金属板41:直径84mm×厚さ0.1mmのステンレス鋼板
第2金属板42:直径84mm×厚さ0.1mmの純Al板。
【0167】
ステンレス鋼板の材質はSUS304である。純Al板の純度は4Nである。
【0168】
次いで、直径80mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなる導電性離型板35を用いて、上記実施例3と同様に、第1金属板41と第2金属板42との接合体を10個製造した。各接合体の第1金属板41と第2金属板42との接合界面には第1金属板41の構成元素と第2金属板42のAlとが合金化してなる厚さ約1μmの合金層が形成されていた。したがって、第1金属板41と第2金属板42とが両パンチ32、32で挟まれた領域全域に亘って拡散接合されていた。
【0169】
この接合工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力20MPaである。
【0170】
こうして得られた接合体の厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、接合体の厚さは均一であった。
【0171】
この接合体は、ステンレス鋼単板からなるものに比して軽量であり、更に、熱伝導率が高く熱拡散し易いので、例えば調理用鍋や釜の素材として好適に用いられる。
【0172】
<実施例5>
本実施例5では、図10に示した上記第3実施形態の接合方法に従って接合体を製造した。
【0173】
第1金属板51、第2金属板52及び第3金属板53として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0174】
第1金属板51:直径84mm×厚さ0.1mmのステンレス鋼板
第2金属板52:直径84mm×厚さ0.1mmの純Al板
第3金属板53:直径84mm×厚さ0.1mmのステンレス鋼板。
【0175】
各ステンレス鋼板の材質はSUS304である。純Al板の純度は4Nである。
【0176】
次いで、直径80mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなる導電性離型板35を用いて、第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53との積層体55を10個準備した。そして、これらの積層体55を互いに重なり合う各積層体55、55間に導電性離型板35を介して積層した。導電性離型板35は、直径80mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなるものである。
【0177】
そして、複数の積層体55の第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53とを、ダイを用いないで放電プラズマ焼結法により積層状に一括して接合した。この接合工程で用いた放電プラズマ焼結装置30の上下各パンチ32は、直径80mmの断面円形状の黒鉛製のものである。
【0178】
この接合工程では、複数の積層体55の周囲をダイで包囲せずに、離型板35と上側に隣接する上側積層体55の下面にその外周縁部が離型板35の上離型面35aから離型板35の全周に亘って均等にはみ出るように離型板35の上離型面35aを当接させるとともに、離型板35と下側に隣接する下側積層体55の上面にその外周縁部が離型板35の下離型面35bから離型板35の全周に亘って均等にはみ出るように離型板35の下離型面35bを当接させた。さらに、複数の積層体55のうち最上側に配置された最上側積層体55Uの上面55aにその外周縁部が上パンチ32の加圧面32aから上パンチ32の全周に亘って均等にはみ出るように上パンチ32の加圧面32aを当接させるとともに、複数の積層体55のうち最下側に配置された最下側積層体55Sの下面55bにその外周縁部が下パンチ32の加圧面32aから下パンチ32の全周に亘って均等にはみ出るように下パンチ32の加圧面32aを当接させた。そして、この状態で、3Paの真空雰囲気中にて、両パンチ32、32で複数の積層体55をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ32、32間にパルス電流を通電することで複数の積層体55を一括して加熱し、これにより複数の積層体55の第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53とを放電プラズマ焼結法により一括して接合した。その結果、第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53との接合体を10個得た。また、この接合により、各接合体の第1金属板51と第2金属板52との接合界面には第1金属板51の構成元素と第2金属板52のAlとが合金化してなる厚さ約1μmの合金層が形成されており、また、第2金属板52と第3金属板53との接合界面に第2金属板52のAlと第3金属板53の構成元素とが合金化してなる厚さ約1μmの合金層が形成されていた。したがって、第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53とが両パンチ32、32で挟まれた領域全域に亘って拡散接合されていた。
【0179】
この接合工程で適用した接合条件は、加熱温度530℃、加熱温度の保持時間10min、昇温速度35℃/min、加圧力20MPaである。
【0180】
こうして得られた接合体の厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、接合体の厚さは均一であった。
【0181】
この接合体は、ステンレス鋼単板からなるものに比して軽量であり、更に、熱伝導率が高く熱拡散し易いので、例えば調理用鍋や釜の素材として好適に用いられる。
【0182】
<実施例6>
本実施例6では、図10に示した上記第3実施形態の接合方法に従って接合体を製造した。
【0183】
第1金属板51、第2金属板52及び第3金属板53として、それぞれ次の円盤状の板を準備した。
【0184】
第1金属板51:直径84mm×厚さ0.1mmの無酸素銅板
第2金属板52:直径84mm×厚さ0.1mmのステンレス鋼板
第3金属板53:直径84mm×厚さ0.1mmの無酸素銅板。
【0185】
無酸素銅板の材質はJIS−C1011である。各ステンレス鋼板の材質はSUS304である。
【0186】
次いで、直径80mm×厚さ2mmの円盤状のカーボン板からなる導電性離型板35を用いて、上記実施例5と同様に、第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53との接合体を10個製造した。各接合体の第1金属板51と第2金属板52との接合界面には第1金属板51のCuと第2金属板52の構成元素とが合金化してなる厚さ約2μmの合金層が形成されており、また、第2金属板52と第3金属板53との接合界面には第2金属板52の構成元素と第3金属板53のCuとが合金化してなる厚さ約2μmの合金層が形成されていた。したがって、第1金属板51と第2金属板52と第3金属板53とが両パンチ32、32で挟まれた領域全域に亘って拡散接合されていた。
【0187】
この接合工程で適用した接合条件は、加熱温度650℃、加熱温度の保持時間5min、昇温速度35℃/min、加圧力20MPaである。
【0188】
こうして得られた接合体の厚さについて測定位置を変えて全7箇所測定したところ、接合体の厚さは均一であった。
【0189】
この接合体は、電気伝導性が高いので、様々な電気機器用金具の素材として好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、複数の導電性被接合部材を放電プラズマ焼結法により接合する導電性被接合部材の接合方法、及び絶縁基板用積層材の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0191】
1A:積層材(接合体)
2:Ni層(第1被接合部材)
4:Ti層(第2被接合部材)
6:Al層(第3被接合部材)
7:ろう材層(第4被接合部材)
8:第1積層体
8Z:第1接合体
9:第2積層体
15:絶縁基板
30:放電プラズマ焼結装置
32:パンチ
32a:パンチの加圧面
35:導電性離型板(導電性離型部材)
35a:離型板の上離型面
35b:離型板の下離型面
41:第1金属板(第1被接合部材)
42:第2金属板(第2被接合部材)
45:積層体
51:第1金属板(第1被接合部材)
52:第2金属板(第2被接合部材)
53:第3金属板(第3被接合部材)
55:積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性被接合部材が積層されて形成された積層体をその周囲をダイで包囲せずに積層方向にパンチで加圧し、積層体における互いに隣接する被接合部材同士を放電プラズマ焼結法により接合する導電性被接合部材の接合方法であって、
パンチの加圧面と当接する積層体の表面がパンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで積層体を加圧することを特徴とする導電性被接合部材の接合方法。
【請求項2】
複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
複数の積層体のうちパンチの加圧面と当接するとともに最外側に配置された最外側積層体の表面が、パンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
最外側積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する請求項1記載の導電性被接合部材の接合方法。
【請求項3】
離型部材と隣接する積層体の表面にその外周縁部が離型部材の離型面から離型部材の全周に亘ってはみ出るように離型部材の離型面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する請求項2記載の導電性被接合部材の接合方法。
【請求項4】
複数の被接合部材は、半導体モジュールの絶縁基板を構成する複数の層を形成する複数の金属板である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性被接合部材の接合方法。
【請求項5】
複数の金属板が積層されて形成された積層体をその周囲をダイで包囲せずに積層方向にパンチで加圧し、積層体における互いに隣接する金属板同士を放電プラズマ焼結法により接合する絶縁基板用積層材の製造方法であって、
パンチの加圧面と当接する積層体の表面がパンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで積層体を加圧することを特徴とする絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項6】
複数の積層体を互いに重なり合う各積層体間に導電性離型部材を介して積層し、
複数の積層体のうちパンチの加圧面と当接するとともに最外側に配置された最外側積層体の表面が、パンチの加圧面よりも相対的に大きく設定されており、
最外側積層体の表面にその外周縁部がパンチの加圧面からパンチの全周に亘ってはみ出るようにパンチの加圧面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する請求項5記載の絶縁基板用積層材の製造方法。
【請求項7】
離型部材と隣接する積層体の表面にその外周縁部が離型部材の離型面から離型部材の全周に亘ってはみ出るように離型部材の離型面を当接させた状態で、パンチで複数の積層体を積層方向に一括して加圧する請求項6記載の絶縁基板用積層材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−240066(P2012−240066A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110070(P2011−110070)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】