説明

導電性高分子複合構造体、導電性高分子複合構造体の製造方法、及び、アクチュエータ素子

【課題】基体の外側に導電性高分子チューブを接触させるだけで、導電性高分子チューブ全体に電位を到達させることができ、更なる伸縮性や機械的強度、発生力を有し、作業性も良好な導電性高分子複合構造体、及び、前記導電性高分子複合構造体を用いた高速高伸縮率、高発生力を有するアクチュエータ素子を提供する。
【解決手段】基体と導電性高分子チューブとを含む導電性高分子複合構造体であって、前記基体が伸縮性を有する構造体であり、前記基体の外側に接触させて前記導電性高分子チューブを配置することを特徴とする導電性高分子複合構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子複合構造体、導電性高分子複合構造体の製造方法、及び、アクチュエータ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリピロールなどの導電性高分子は、電気化学的な酸化還元によって伸縮する現象である電解伸縮を発現することが知られている。この導電性高分子の電解伸縮は、人工筋肉、ロボットアーム、義手やアクチュエータ等の用途へ適用が近年、注目され、マイクロマシン等の小型の用途だけでなく大型化された用途への適用も注目されている。
【0003】
導電性高分子は、電解重合方法により製造されるのが一般的である。電解重合方法としては、通常は、電解液中にピロール等のモノマー成分を加え、この電解液中に作用電極及び対向電極を設置して、両電極に電圧を印加することで導電性高分子を作用電極上に膜として形成させる方法が行われる(例えば、非特許文献1)。電解重合により得られた導電性高分子は、膜状に成形された導電性高分子に電圧を印加することにより伸縮、屈曲又はねじれの変位をさせることができる。
【0004】
電解重合法により製造された導電性高分子を含む素子(以下、導電性高分子素子)を産業用ロボット等のロボットアーム、義手などの人工筋肉等の大型化した用途の駆動部のアクチュエータに用いる場合には、マイクロマシン等の小型のアクチュエータとして用いられる素子に比べて、より大きな伸縮量や、より大きな発生力を得るために、素子サイズを大きくする必要がある。そのため、電解重合により得られた導電性高分子膜は、サイズを大きくするために、長片化、または複数枚を積層するなどの厚膜化などの加工を施して、サイズの大きな導電性高分子素子とする必要がある。
【0005】
サイズの大きな導電性高分子素子としては、従来の用途に比べて長さ方向、もしくは高さ方向に大きな伸縮を得るために、長さ方向、もしくは高さ方向に大型化した用途での駆動部に用いられる場合もあり、従来の導電性高分子素子よりも長い導電性高分子素子も用いられる。導電性高分子素子の伸縮の変位量は、導電性高分子素子に含まれる導電性高分子やドーパントの種類、印加電圧により決定されることから、用途に応じて導電性高分子やドーパントの種類を選択し、導電性高分子素子の長さを制御することにより、所望の変位量とすることができる。
【0006】
しかし、用途に応じた最適な導電性高分子や、ドーパントの種類を選択した導電性高分子素子を、より大きな変位量で駆動するために、例えば、柱状構造の高さ方向により長く設計された導電性高分子素子を用いることが考えられる。しかし、この場合、電解重合法で得られる導電性高分子の導電率はドープされた状態で、通常10S/cm程度であるため、一方の端部に設置された電極から、もう一方の端部への抵抗は、高くなる傾向にある。また、導電性高分子の導電率は、脱ドープ状態で更に低下するため、素子端部のみでの電圧印加では、十分な電位を全体に印加することが出来ないという問題がある。また、電位を全体的に印加する目的で高さ方向に金属板等の電極を設置した場合には、金属板等の電極が導電性高分子の動作を構造的に阻害し、前記導電性高分子を駆動させることが難しくなるという問題がある。
【0007】
上記問題に対して、特許文献1では、金属製バネ状部材を導電性基体とし、この導電性基体を作用電極として、導電性高分子を作用電極上で、電解重合させて、導電性高分子複合構造体を得ることが記載されている。電解重合において、作用電極である金属製バネ状部材に電圧を印加することにより、導電性基体表面に導電性高分子が重合され、作用電極表面から導電性高分子が成長し、金属製バネ状部材を構成する線材間の空間を埋め、導電性高分子複合構造体を得るものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4048236号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】緒方直哉編 「導電性高分子」、第8版、株式会社サイエンティフィク、1990年2月10日、第70頁〜第73頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような中で、導電性高分子(素子)に更なる伸縮性や機械的強度を有し、作業性も良好な導電性高分子複合構造体、及び、前記導電性高分子複合構造体を用いた高発生力を有するアクチュエータ素子の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは、導電性高分子複合構造体の構成について鋭意検討した結果、下記の導電性高分子複合構造体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の導電性高分子複合構造体は、基体と導電性高分子チューブとを含む導電性高分子複合構造体であって、前記基体が伸縮性を有する構造体であり、前記基体の外側に接触させて前記導電性高分子チューブを配置することを特徴とする。なお、本発明における基体とは、導電性基体または非導電性基体を意味する。
【0013】
本発明の導電性高分子複合構造体は、更に、前記導電性高分子複合構造体の外側に基体を接触させ、前記基体の外側に導電性高分子チューブを接触させて配置することが好ましい。
【0014】
本発明の導電性高分子複合構造体は、その形状が、コイル状、平面ジグザグ状、チェーン状、ニット状、アコーディオン状、及び、ベローズ状からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本発明のアクチュエータ素子は、前記導電性高分子複合構造体を用いたアクチュエータ素子であって、前記導電性高分子チューブの電解伸縮により伸縮、屈曲又はねじれに駆動することが好ましい。
【0016】
本発明の導電性高分子複合構造体の製造方法は、基体と導電性高分子チューブとを含む導電性高分子複合構造体の製造方法であって、前記基体が伸縮性を有する構造体であり、前記導電性高分子チューブを溶剤を用いて膨潤させる工程と、前記膨潤させた導電性高分子チューブの内側に前記基体を挿入する工程と、前記基体を挿入した導電性高分子チューブから溶剤を除去して、前記導電性高分子チューブを前記基体に接触させて導電性高分子複合構造体を形成する工程と、を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の導電性高分子複合構造体の製造方法は、更に、前記製造方法により得られる導電性高分子複合構造体の外側に基体を接触させ、前記基体の外側に導電性高分子チューブを接触させて配置する工程を含むことが好ましい。
【0018】
本発明のアクチュエータ素子は、前記製造方法により得られる導電性高分子複合構造体を用いたアクチュエータ素子であって、前記導電性高分子チューブの電解伸縮により伸縮、屈曲又はねじれ(ねじれ運動するよう)に駆動することが好ましい。
【0019】
本発明のアクチュエータ素子は、前記アクチュエータ素子であって、前記導電性高分子複合構造体の外部及び/又は内部に対極を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導電性高分子複合構造体は、基体(導電性基体または非導電性基体)と導電性高分子チューブを個々に調製することができ、作業性に優れ、前記基体の外側に導電性高分子チューブを接触させるだけで、伸縮性に優れ、基体を用いることにより機械的特性に優れた導電性高分子複合構造体を得ることができる。更に、前記導電性高分子複合構造体の外側に、基体、導電性高分子チューブとを順次、繰り返し接触(被覆)させていくことにより、更に機械的強度を向上させることができ、有効である。また、前記導電性高分子複合構造体を用いたアクチュエータ素子は、駆動させた際に、大きな発生力を得ることができ、有効である。また、使用する導電性高分子チューブには、継ぎ目がないため、駆動時に導電性高分子チューブが裂けることが防止でき、耐衝撃性にも優れている。本発明の導電性高分子複合構造体は、人工筋肉への応用だけでなく、その他の様々な用途に用いることができ、有効である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に使用されるコイル状構造体の状態図である。
【図2】本発明の導電性高分子複合構造体の状態図である。
【図3】本発明の導電性高分子複合構造体にコイル状構造体を接触させた状態図である。
【図4】本発明の導電性高分子複合構造体を複数組み合わせた状態図である。
【図5】本発明の導電性高分子複合構造体の縦断面図の拡大図である。
【図6】本発明の導電性高分子複合構造体を作用電極とし、その外部に円筒形状の対極を配置したアクチュエータ素子の状態図である。
【図7】本発明の導電性高分子複合構造体を作用電極とし、その外部に板形状の対極を配置したアクチュエータ素子の状態図である。
【図8】本発明の導電性高分子複合構造体を作用電極とし、その内部に柱状の対極を配置したアクチュエータ素子の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(導電性高分子複合構造体)
本発明の導電性高分子複合構造体は、基体(導電性基体及び/または非導電性基体)と導電性高分子チューブとを含む導電性高分子複合構造体であって、前記基体が伸縮性を有する構造体であり、前記基体の外側に接触させて前記導電性高分子チューブを配置することを特徴とする。
【0023】
以下に、本発明の導電性高分子複合構造体の形状や本発明の導電性高分子複合構造体に基体が含まれる形態を、図を用いて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0024】
図1は、基体3として伸縮性を有する構造体の一例として、コイル構造体(例えば、金属製バネ状部材や樹脂製バネ状部材)を示している。図2は、前記基体3上に導電性高分子チューブ2を接触(被覆)した導電性高分子複合体1を示している。図3は、前記導電性高分子複合体1上に、前記基体3の外径より大きい内径を有するコイル構造体であり、基体3’を配置した状態を示している。図4は、更に前記基体3’上に、導電性高分子チューブ2’を被覆した導電性高分子複合体1’を示している。図5は、図2の導電性高分子複合構造体1における縦断面の部分拡大図である。
【0025】
前記図5に示すように、導電性高分子複合構造体1は、金属製コイル状部材を構成する線材の外側表面を導電性高分子チューブ2により被覆され、導電性高分子チューブ2と基体3とが複合化されている。この複合化により、アクチュエータ素子としてのサイズを大きくした場合であっても、導電性高分子複合構造体が実用性能として十分な伸縮、屈曲又はねじれの変位を得ることができる。一方、基体と導電性高分子チューブを小さくでき、前記導電性高分子チューブの内部に基体を挿入することができれば、それだけ微小な導電性高分子複合構造体を製造することができ、更にはこれを用いた微小なアクチュエータ素子の製造も可能となる。また、導電性高分子複合構造体1は、金属製コイル状部材を含んでいるので、外側表面に垂直な方向から外力がかかる場合において、金属製コイル状部材の線材が、補強材として機能し得るので、機械的強度の向上も図ることができ、アクチュエータ素子として駆動させた際には、大きな発生力を得ることができる。
【0026】
また、前記図4は、前記図2に示す導電性高分子複合構造体1の外側表面に、更に、基体3’であるコイル状部材を接触させ、更にその外側から導電性高分子チューブ2’を接触させた導電性高分子複合構造体1’を示している。また、導電性高分子複合構造体が伸縮性や屈曲性、ねじれ性(ツイスト性)を示すことが可能であれば、更に基体や導電性高分子チューブを複数被覆することにより、更なる機械的強度の向上を図ることができ、アクチュエータとして駆動させた際に、大きな発生力を得ることができる。上記の導電性高分子複合構造体の外側表面に基体を接することで2層化あるいはその操作を繰り返すことで多層化を実現することが可能である。多層化に際してはより内層の導電性高分子チューブの外径をより外層の導電性高分子チューブの外径を小さくすることが好ましく、導電性高分子チューブの膜厚を薄くすることが好ましい。
【0027】
具体的な、導電性高分子複合体としては、例えば、(i)基体上に導電性高分子チューブを被覆する方法(導電性高分子チューブ+基体)や、(ii)基体上に導電性高分子チューブを被覆し、更に基体を導電性高分子チューブの外側に配置し、更に導電性高分子チューブを被覆する方法(導電性高分子チューブ+基体+導電性高分子チューブ+基体)や、(iii)前記(ii)の構成の内、最内層部の基体を抜き取る方法(導電性高分子チューブ+基体+導電性高分子チューブ)などを用いて、製造することができる。また、基体の少なくとも1つを導電性基体とし、他方を非導電性基体とすることも可能である。
【0028】
(電解重合条件)
本発明で使用する導電性高分子(チューブ)は、導電性高分子単量体を公知の電解重合法を用いることにより得ることができ、例えば、定電位法、定電流法及び電気掃引法のいずれをも用いることができる。例えば、前記電解重合法は、電流密度0.01〜20mA/cm2、反応温度−70〜80℃で行うことができ、良好な膜質の導電性高分子を得るために、電流密度0.1〜2mA/cm、反応温度−40〜40℃の条件下で行うことが好ましく、反応温度が−30〜30℃の条件であることがより好ましい。
【0029】
(ドーパント)
前記導電性高分子の製造方法において、電解重合法に用いられるドーパントとしては、電解重合による溶媒中で溶解する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン、ハロゲン酸、硝酸、硫酸、ヒ酸、アンチモン酸、ホウ酸、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、スルホイミド、スルホメチド等の誘導体や色素化合物が挙げられる。前記化合物としては、具体的には、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロヒ酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、ベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸、3-ヒドロキシ-4-[2-スルホ-4-(4-スルホフェニルアゾ)フェニルアゾ]-2,7-ナフタレンジスルホン酸を例示することができる。これらの対イオンを伴う塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、ヨードニウム塩等の誘導体が挙げられる。前記化合物としては、リチウム塩、ナトリウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、1,3-ジメチルイミダゾリウム塩、4-イソプロピル4’-メチルジフェニルヨードニウム塩を例示することができる。前記ドーパントの中でも、アルキル化されたスルホニル基を有する化合物及びその誘導体が好ましく、特にトリフルオロメタンスルホン酸イオン(もしくはビス(トリフルオメタンスルホニル)イミドイオン)及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンを含むことが好ましい。また、上記ドーパントは2種以上併用することができる。前記電解液を用いて電解重合を行うことにより、電解伸縮において1酸化還元サイクル当たりの伸縮率が優れた導電性高分子を得ることができる。
【0030】
前記トリフルオロメタンスルホン酸イオン(もしくはビス(トリフルオメタンスルホニル)イミドイオン)及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、電解液中の含有量が特に限定されるものではないが、前記アニオン総量が、電解液中に0.1〜30重量%含まれるのが好ましく、1〜15重量%含まれるのがより好ましい。
【0031】
前記トリフルオロメタンスルホン酸イオンは、化学式CFSOで表される化合物である。また、中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、ホウ素、リン、アンチモン及びヒ素等の中心原子に複数のフッ素原子が結合をした構造を有している。中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンとしては、特に限定されるものではないが、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、及びヘキサフルオロヒ酸イオン(AsF)を例示することができる。なかでも、CFSO、BF及びPFが人体等に対する安全性を考慮すると好ましく、CFSO及びBFがより好ましい。前記の中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、1種類のアニオンを用いても良く、複数種のアニオンを同時に用いても良く、さらには、トリフルオロメタンスルホン酸イオンと複数種の中心原子に対しフッ素原子を複数含むアニオンとを同時に用いても良い。
【0032】
(金属電極)
前記導電性高分子チューブの製造方法は、電解重合時に導電性高分子の重合が行われる作用電極として、金属などの電極を用いる。前記作用電極は、棒状の電極であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ITOガラス電極といった非金属電極や、Au、Pt、Ti、Ni、Ta、Mo、Cr、C及びWからなる群より選択される金属元素の単体、もしくは合金の電極を好適に用いることができる。前記得られる導電性高分子の伸縮率及び発生力が大きく、且つ、電極を容易に入手できることから、NiやTiなどの金属元素を含む金属電極を用いることが特に好ましい。なお、前記合金としては、例えば、商品名「INCOLOY alloy 825」、「INCONEL alloy 600」、「INCONEL alloy X−750」(以上、大同スペシャルメタル株式会社製)を用いることができる。
【0033】
(電解液の溶媒)
前記電解重合法は、電解重合時の電解液に含まれる溶媒が特に限定されるものではないが、1酸化還元サイクル当たりの伸縮率が3%以上の導電性高分子を容易に得るために、前記ドーパント以外に、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合あるいは官能基を含む有機化合物及び/またはハロゲン化炭化水素を電解液の溶媒として含むことが好ましく、更に好ましくは、エステル結合をもつ溶媒を1種類以上含むことである。これらの溶媒を2種以上併用することもできる。
【0034】
前記有機化合物としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン(以上、エーテル結合を含む有機化合物)、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸nブチル、酢酸-t-ブチル、1,2−ジアセトキシエタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジル-2-エチルへキシル(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、エチレングリコール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール(以上、ヒドロキシル基を含む有機化合物)、ニトロメタン、ニトロベンゼン(以上、ニトロ基を含む有機化合物)、スルホラン、ジメチルスルホン(以上、スルホン基を含む有機化合物)、及びアセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)を例示することができる。なお、ヒドロキシル基を含む有機化合物は、特に限定されるものではないが、多価アルコール及び炭素数4以上の1価アルコールであることが、導電性高分子の伸縮率が良いため、好ましい。なお、前記有機化合物は、前記の例示以外にも、分子中にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち、2つ以上の結合あるいは官能基を任意の組合わせで含む有機化合物であってもよい。それらは、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−フェノキシエタノールなどである。
【0035】
また、前記導電性高分子の製造方法において、電解液に溶媒として含まれるハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の水素が少なくとも1つ以上ハロゲン原子に置換されたもので、電解重合条件で液体として安定に存在することができるものであれば、特に限定されるものではない。前記ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンを挙げることができる。前記ハロゲン化炭化水素は、1種類のみを前記電解液中の溶媒として用いることもできるが、2種以上併用することもできる。また、前記ハロゲン化炭化水素は、上記有機化合物と混合して用いてもよく、有機溶媒との混合溶媒を前記電解液中の溶媒として用いることもできる。
【0036】
(導電性高分子単量体)
前記導電性高分子の製造方法において、電解重合法に用いられる電解液に含まれる導電性高分子の単量体としては、電解重合による酸化により高分子化して導電性を示す化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばピロール、チオフェン、イソチアナフテン等の複素五員環式化合物及びそのアルキル基、オキシアルキル基等の誘導体が挙げられる。その中でもピロール、チオフェン等の複素五員環式化合物及びその誘導体が好ましく、特にピロール及び/またはピロール誘導体を含む導電性高分子であることが、製造が容易であり、導電性高分子として化学的に安定であるため好ましい。また、上記モノマーは2種以上併用することができる。
【0037】
(その他の添加剤)
本発明に使用される導電性高分子の製造方法において、電解重合法に用いられる電解液には、前記ドーパントを含む電解液中に、導電性高分子の単量体を含むものであり、さらにポリエチレングリコールやポリアクリルアミドなどの公知のその他の添加剤を含むこともできる。
【0038】
(基体)
本発明の導電性高分子複合構造体に含まれる基体(導電性基体及び/または非導電性基体)は、伸縮性を有する構造体である。前記基体と導電性高分子チューブとを複合化した導電性高分子複合構造体は、アクチュエータとして実用可能な伸縮性や、屈曲性、ねじれ性(ツイスト性)に優れた変位を得ることができる。また、前記導電性高分子複合構造体は、基体が前記導電性高分子複合構造体の芯材としても機能し得ることから、機械的強度も向上できる。
【0039】
前記基体としては、その形状は特に制限されないが、例えば、コイル状、平面ジグザグ状、チェーン状、ニット状、ベローズ状、アコーディオン状などの伸縮性を有する構造体を用いることができ、特にコイル状の構造体を用いることが、作製の容易さ等からも、より好ましい。
【0040】
前記基体は、伸縮性を発揮すれば、材質については、特に限定されるものではないが、導電性や機械的強度の観点から、導電性基体が挙げられ、金属や、金属メッキした高分子繊維、炭素材料などが挙げられる。特に、高い導電率を示すものであればより好ましい。前記導電性基体としては、具体的には、Ag、Ni、Ti、Au、Pt、W、Cu等の金属や、NiメッキしたCu、AuメッキしたNi、AuメッキしたCu等や、SUS等の合金を用いることが好ましい。また、Au、Ni等の金属表面にポリピロール等の導電性高分子を被覆したものでも良い。更に、大きな伸縮性能をもつ導電性高分子複合構造体を得るために、Ag、Au、Ni、Pt等の金属単体や、NiメッキしたCu、AuメッキしたNiがより好ましい。また、前記非導電性基体としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを用いることができ、例えば、非導電性基体である樹脂コイル(PVDFコイル等)と、導電性高分子チューブを組み合わせることが可能である。なお、非導電性基体は、電位の到達においては、導電性基体までの効果は期待出来ないが、電位以外に効果のある機械的強度の向上あるいは作業性の向上に有効である。本発明における基体としては、導電性基体を用いることがより好ましい態様である。
【0041】
前記導電性基体の導電率としては、1.0×10S/cm以上が好ましく、より好ましくは、1.0×10S/cm以上であり、特に好ましくは1.0×10S/cm以上である。前記導電率が1.0×10S/cm以上であることにより、さらに、長さ方向または高さ方向にサイズを大きくした導電性高分子複合構造体の場合であっても、伸縮等の変位をするのに十分な電位を素子全体にかけることができ、有効である。
【0042】
(導電性高分子複合構造体の製造方法)
本発明の導電性高分子複合構造体の製造方法は、基体と導電性高分子チューブとを含む導電性高分子複合構造体の製造方法であって、前記基体が伸縮性を有する構造体であり、前記導電性高分子チューブを、溶剤を用いて膨潤させる工程と、前記膨潤させた導電性高分子チューブの内側に前記基体を挿入する工程と、前記基体を挿入した導電性高分子チューブから溶剤を除去して、前記導電性高分子チューブを前記基体に接触させて導電性高分子複合構造体を形成する工程と、を含むことを特徴とする。更に、前記製造方法により得られる導電性高分子複合構造体の外側に基体を接触させ、前記基体の外側に導電性高分子チューブを接触させて配置する工程、を含むことにより、複数層(例えば、1層を基体と導電性高分子チューブ1対とすると、2層や3層以上を指す)のものを得ることができる。
【0043】
以下に、具体的な導電性高分子複合構造体の製造方法を説明する。なお、本発明は下記製造方法に限定されるものではない。
(1)導電性高分子チューブを前記棒状の金属電極上で調製後、電極から剥離する。
(2)次いで、前記導電性高分子チューブをアセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2ピロリドン(NMP)などの前記導電性高分子チューブを膨潤させやすい溶媒A中に、室温で1〜30分間浸漬し、前記導電性高分子チューブを膨潤させる。DMSO、DMF、NMPなどの揮発性の低い溶媒は、アセトンなどの揮発性の高い溶媒に数分から数10分浸漬することで、溶出除去させることが出来る。
(3)前記導電性高分子チューブの内部に、前記膨潤した導電性高分子チューブの内径よりも小さい伸縮性を有する基体であるコイル状構造体(例えば、金属製バネ状部材)を前記溶媒A中で挿入する。
(4)挿入後、乾燥温度−20〜50℃、乾燥時間1〜12時間を乾燥させて導電性高分子複合体を得る。なお、この工程により、大部分の溶媒Aは除去され、導電性高分子チューブ自体が収縮し、基体であるコイル状構造体に密着するように接触(被覆)し、導電性高分子複合構造体を得ることができる。
(5)また、上記導電性高分子複合体の外径より大きな基体を前記導電性高分子複合構造体に接触させて、更に前記基体の外径より大きく膨潤した導電性高分子チューブを接触(被覆)することにより、複数層から構成される導電性高分子複合構造体を得ることができる。
(6)なお、上記高分子複合構造体の外径に略等しい内径のコイル状構造体を作製し、前記高分子複合構造体表面を被覆するように配置させることで、高分子複合構造体を構成する導電性高分子チューブと、コイル状構造体とが、密着した状態にすることができる。
(7)更に、前記乾燥させた導電性高分子複合構造体を、アセトニトリル、プロピレンカーボネート(PC)、水などの単独溶媒もしくは混合溶媒(これら溶媒を、溶媒Bとする。溶媒Bは、溶媒Aより、前記導電性高分子チューブの膨潤度を低くするものを使用することが好ましい。)に、室温で0.5〜2時間浸漬し、アクチュエータ素子を得る。この工程時に用いる溶媒Bとしては、後にアクチュエータ素子を駆動させる際の電解液(動作電解液)と同様のものを用いることが好ましい。
【0044】
(アクチュエータ素子の電解伸縮)
また、上記導電性高分子複合構造体を用いたアクチュエータ素子を動作電解液中で、電気化学的酸化還元により伸縮させる電解伸縮方法により駆動させることができる。前記導電性高分子複合構造体を電解伸縮させることにより、1酸化還元サイクル当たりにおいて優れた伸縮率を得ることができ、特定時間あたりにおいて、高い変位量を得ることができる。
【0045】
なお、アクチュエータ素子を電解伸縮させる方法として、特に制限されないが、たとえば、作用極として、前記導電性高分子と、前記コイル状構造体(基体)からなる前記導電性高分子複合構造体を用い、これに対して、対極として、Pt、Au、Ni、及び、Ti等からなる金属やSUS等の合金、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体等の導電性高分子、カーボン、ITO等を単体、又は、これらを複合化したもの(メッキ等被覆させたものや混合物)を電極として使用することができる。対極の形状は、特に限定されないが、例えば、板状、円筒状、ワイヤー状、スポンジ状、布帛状、蛇腹状、メッシュ状、コイル状等のものを使用することができる。これら作用極と対極に電解液中で、0.1〜10Vの電圧を印加することにより、前記作用極を電解伸縮させることができ、アクチュエータ素子として、活用することができる。
【0046】
なお、本発明のアクチュエータ素子は、上述したように作用極と対極から構成することができ、その配置(構成)はアクチュエータ素子として、伸縮、屈曲又はねじれに駆動するものであれば、特に制限されないが、たとえば、アクチュエータ素子を構成する方法として、前記導電性高分子複合構造体の外部及び/又は内部に、対極を配置することが好ましい。例えば、図6に示すように、作用極20の周りを、円筒形状の対極30により覆うように配置する方法(外部に配置)や、図7に示すように作用極20の近くに板(シート)状の対極30を配置する方法(外部に配置)、図8に示すように作用極20の内部に柱(棒)状の対極30を配置する方法(内部に配置)、更には、作用極の内部に柱(棒)状の対極を配置し、更に、外部に円筒形状や板(シート)状の対極を配置する方法等を用いてアクチュエータ素子10を構成することができる。なお、図6〜8中の正極及び負極は、図面中と異なり、反対であっても構わない。
【0047】
また、前記対極としては、作用極同様に伸縮性を有する構造であっても構わない。
【0048】
前記導電性高分子複合構造体の電解伸縮が行われる電解液である動作電解液は、上述したものに限定されるものではないが、主溶媒である水に電解質を含む液体であることが、濃度調製が容易であるため、好ましい。
【0049】
前記電解伸縮方法に用いる電解液の温度は、特に限定されるものではないが、上記の導電性高分子をより速い速度で電解伸縮させるために、20〜100℃であることが好ましく、さらに好ましくは50〜80℃である。
【0050】
(用途)
本発明の導電性高分子複合構造体は、変位を生じることができるのでアクチュエータ素子として用いることができる。本発明の導電性高分子複合構造体において、例えば、樹脂等による被覆がされていないものについては、電解液中で直線的な変位をすることができるアクチュエータ素子として用いることができる。
【0051】
即ち、前記アクチュエータ素子は、OA機器、アンテナ、ベッドや椅子等の人を乗せる装置、医療機器、エンジン、光学機器、固定具、サイドトリマ、車両、昇降器械、食品加工装置、清掃装置、測定機器、検査機器、制御機器、工作機械、加工機械、電子機器、電子顕微鏡、電気かみそり、電動歯ブラシ、マニピュレータ、マスト、遊戯装置、アミューズメント機器、乗車用シミュレーション装置、車両乗員の押さえ装置及び航空機用付属装備展張装置において、直線的な駆動力を発生する駆動部若しくは円弧部からなるトラック型の軌道を移動するための駆動力を発生する駆動部、または直線的な動作若しくは曲線的な動作をする押圧部として好適に用いることができる。前記アクチュエータ素子は、例えば、OA機器や測定機器等の上記機器等を含む機械全般に用いられる弁、ブレーキ及びロック装置において、直線的な駆動力を発生する駆動部もしくは円弧部からなるトラック型の軌道を移動するための駆動力を発生する駆動部、または直線的な動作をする押圧部として用いることができる。また、前記の装置、機器、器械等以外においても、機械機器類全般において、位置決め装置の駆動部、姿勢制御装置の駆動部、昇降装置の駆動部、搬送装置の駆動部、移動装置の駆動部、量や方向等の調節装置の駆動部、軸等の調整装置の駆動部、誘導装置の駆動部、及び押圧装置の押圧部として好適に用いることができる。また、前記アクチュエータ素子は、関節装置における駆動部として、関節中間部材等の直接駆動可能な関節部または関節に回転運動を与える駆動部に好適に用いることができる。前記アクチュエータ素子は、切替え装置の駆動部、搬送物等の反転装置の駆動部、ワイヤー等の巻取り装置の駆動部、牽引装置の駆動部、及び首振り等の左右方向への旋回装置の駆動部としても好適に用いることができる。
【0052】
前記アクチュエータ素子は、例えば、CAD用プリンター等のインクジェットプリンターにおけるインクジェット部分の駆動部、プリンターの前記光ビームの光軸方向を変位させる駆動部、外部記憶装置等のディスクドライブ装置のヘッド駆動部、並びに、プリンター、複写機及びファックスを含む画像形成装置の給紙装置における紙の押圧接触力調整手段の駆動部として好適に用いることができる。
【0053】
前記アクチュエータ素子は、例えば、電波天文用の周波数共用アンテナ等の高周波数給電部を第2焦点へ移動させるなどの測定部や給電部の移動設置させる駆動機構の駆動部、並びに、車両搭載圧空作動伸縮マスト(テレスコーピングマスト)等のマストやアンテナにおけるリフト機構の駆動部に好適に用いることができる。
【0054】
前記アクチュエータ素子は、例えば、椅子状のマッサージ機のマッサージ部の駆動部、介護用又は医療用ベッドの駆動部、電動リクライニング椅子の姿勢制御装置の駆動部、マッサージ機や安楽椅子等に用いられるリクライニングチェアのバックレスト・オットマンの起倒動自在にする伸縮ロッドの駆動部、椅子や介護用ベッド等における背もたれやレッグレスト等の人を乗せる家具における可倒式の椅子の背もたれやレッグレスト或いは介護用ベッドの寝台の旋回駆動等に用いられる駆動部、並びに、起立椅子の姿勢制御のため駆動部に好適に用いることができる。
【0055】
前記アクチュエータ素子は、例えば、検査装置の駆動部、体外血液治療装置等に用いられている血圧等の圧力測定装置の駆動部、カテーテル、内視鏡装置や鉗子等の駆動部、超音波を用いた白内障手術装置の駆動部、顎運動装置等の運動装置の駆動部、病弱者用ホイストのシャシの部材を相対的に伸縮させる手段の駆動部、並びに、介護用ベッドの昇降、移動や姿勢制御等のための駆動部に好適に用いることができる。
【0056】
前記アクチュエータ素子は、例えば、エンジン等の振動発生部からフレーム等の振動受部へ伝達される振動を減衰させる防振装置の駆動部、内燃機関の吸排気弁のための動弁装置の駆動部、エンジンの燃料制御装置の駆動部、並びにディーゼルエンジン等のエンジンの燃料供給装置の駆動部として好適に用いることができる。
【0057】
前記アクチュエータ素子は、例えば、手振れ補正機能付き撮像装置の校正装置の駆動部、家庭用ビデオカメラレンズ等のレンズ駆動機構の駆動部、スチルカメラやビデオカメラ等の光学機器の移動レンズ群を駆動する機構の駆動部、カメラのオートフォーカス部の駆動部、カメラ、ビデオカメラ等の撮像装置に用いられるレンズ鏡筒の駆動部、光学望遠鏡の光を取り込むオートガイダの駆動部、立体視カメラや双眼鏡等の2光学系を有する光学装置のレンズ駆動機構または鏡筒の駆動部、光通信、光情報処理や光計測等に用いられるファイバ型波長可変フィルタの波長変換のファイバに圧縮力を与える駆動部若しくは押圧部、光軸合せ装置の駆動部、並びに、カメラのシャッタ機構の駆動部に好適に用いることができる。
【0058】
前記アクチュエータ素子は、例えば、ホース金具をホース本体にカシメ固定する等の固定具の押圧部に好適に用いることができる。
【0059】
前記アクチュエータ素子は、例えば、自動車のサスペンションの巻ばね等の駆動部、車両のフューエルフィラーリッドを解錠するフューエルフィラーリッドオープナーの駆動部、ブルドーザーブレードの伸張及び引っ込みの駆動の駆動部、自動車用変速機の変速比を自動的に切り替える為やクラッチを自動的に断接させる為の駆動装置の駆動部に好適に用いることができる。
【0060】
前記アクチュエータ素子は、例えば、座板昇降装置付車椅子の昇降装置の駆動部、段差解消用昇降機の駆動部、昇降移載装置の駆動部、医療用ベッド、電動ベッド、電動テーブル、電動椅子、介護用ベッド、昇降テーブル、CTスキャナ、トラックのキャビンチルト装置、リフター等や各種昇降機械装置の昇降用の駆動部、並びに重量物搬送用特殊車両の積み卸し装置の駆動部に好適に用いることができる。
【0061】
前記アクチュエータ素子は、例えば、食品加工装置の食材吐出用ノズル装置等の吐出量調整機構の駆動部に好適に用いることができる。
【0062】
前記アクチュエータ素子は、例えば、清掃装置の台車や清掃部等の昇降等の駆動部に好適に用いることができる。
【0063】
前記アクチュエータ素子は、例えば、面の形状を測定する3次元測定装置の測定部の駆動部、ステージ装置の駆動部、タイヤの動作特性を検知システム等のセンサー部分の駆動部、力センサーの衝撃応答の評価装置の初速を与える装置の駆動部、孔内透水試験装置を含む装置のピストンシリンダのピストン駆動装置の駆動部、集光追尾式発電装置における仰角方向へ動かすための駆動部、気体の濃度測定装置を含む測定装置のサファイアレーザー発振波長切替機構のチューニングミラーの振動装置の駆動部、プリント基板の検査装置や液晶、PDPなどのフラットパネルディスプレイの検査装置においてアライメントを必要とする場合にXYθテーブルの駆動部、電子ビーム(Eビーム)システム又はフォーカストイオンビーム(FIB)システムなどの荷電粒子ビームシステム等において用いる調節可能なアパーチャー装置の駆動部、平面度測定器における測定対象の支持装置若しくは検出部の駆動部、並びに、微細デバイスの組立をはじめ、半導体露光装置や半導体検査装置、3次元形状測定装置などの精密位置決め装置の駆動部に好適に使用できる。
【0064】
前記アクチュエータ素子は、例えば、電気かみそりの駆動部、並びに、電動歯ブラシの駆動部に好適に用いることができる。
【0065】
前記アクチュエータ素子は、例えば、三次元物体の撮像デバイス或いはCD、DVD共用の読み出し光学系の焦点深度調整用デバイスの駆動部、複数のアクチュエータ素子によって駆動対象面を能動曲面としてその形状を変形させることによって所望の曲面を近似的に形成して焦点位置を容易に可変できる可変ミラーの駆動部、光ピックアップ等の磁気ヘッドの少なくとも一方を有する移動ユニットを直線移動させることが可能なディスク装置の駆動部、リニアテープストレージシステム等の磁気テープヘッドアクチュエータセンブリのヘッド送り機構の駆動部、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリなどに適用される画像形成装置の駆動部、磁気ヘッド部材等の搭載部材の駆動部、集束レンズ群を光軸方向に駆動制御する光ディスク原盤露光装置の駆動部、光ヘッドを駆動するヘッド駆動手段の駆動部、記録媒体に対する情報の記録又は記録媒体に記録された情報の再生を行う情報記録再生装置の駆動部、並びに、回路遮断器(配電用回路遮断器)の開閉操作の駆動部に好適に用いることができる。
【0066】
前記アクチュエータ素子は、例えば、ゴム組成物のプレス成形加硫装置の駆動部、移送される部品について単列・単層化や所定の姿勢への整列をさせる部品整列装置の駆動部、圧縮成形装置の駆動部、溶着装置の保持機構の駆動部、製袋充填包装機の駆動部、マシニングセンター等の工作機械や射出成形機やプレス機等の成形機械等の駆動部、印刷装置、塗装装置やラッカ吹き付け装置等の流体塗布装置の駆動部、カムシャフト等を製造する製造装置の駆動部、覆工材の吊上げ装置の駆動部、無杼織機における房耳規制体等の駆動装置、タフティング機の針駆動システム、ルーパー駆動システム、およびナイフ駆動システム等の駆動部、カム研削盤や超精密加工部品等の部品の研磨を行う研磨装置の駆動部、織機における綜絖枠の制動装置の駆動部、織機における緯糸挿通のための経糸の開口部を形成する開口装置の駆動部、半導体基板等の保護シート剥離装置の駆動部、通糸装置の駆動部、CRT用電子銃の組立装置の駆動部、衣料用縁飾り、テーブルクロスやシートカバー等に用途をもつトーションレースを製造するためのトーションレース機におけるシフターフォーク駆動選択リニア制御装置の駆動部、アニールウィンドウ駆動装置の水平移動機構の駆動部、ガラス溶融窯フォアハースの支持アームの駆動部、カラー受像管の蛍光面形成方法等の露光装置のラックを進退動させる駆動部、ボールボンディング装置のトーチアームの駆動部、ボンディングヘッドのXY方向への駆動部、チップ部品のマウントやプローブを使った測定などにおける部品の実装工程や測定検査工程の駆動部、基板洗浄装置の洗浄具支持体の昇降駆動部、ガラス基板を走査される検出ヘッドを進退させる駆動部、パターンを基板上に転写する露光装置の位置決め装置の駆動部、精密加工などの分野においけるサブミクロンのオーダで微小位置決め装置の駆動部、ケミカルメカニカルポリシングツールの計測装置の位置決め装置の駆動部、導体回路素子や液晶表示素子等の回路デバイスをリソグラフィ工程で製造する際に用いられる露光装置及び走査露光装置に好適なステージ装置の位置決めのための駆動部、ワーク等の搬送あるいは位置決め等の手段の駆動部、レチクルステージやウエハステージ等の位置決めや搬送のための駆動部、チャンバ内の精密位置決めステージ装置の駆動部、ケミカルメカニカルポリシングシステムでのワークピースまたは半導体ウェーハの位置決め装置の駆動部、半導体のステッパー装置の駆動部、加工機械の導入ステーション内に正確に位置決めする装置の駆動部、NC機械やマシニングセンター等の工作機械等、又はIC業界のステッパーに代表される各種機器用のパッシブ除振及びアクティブ除振の除振装置の駆動部、半導体素子や液晶表示素子製造のリソグラフィ工程に使用される露光装置等において光ビーム走査装置の基準格子板を前記光ビームの光軸方向に変位させる駆動部、並びに、コンベヤの横断方向に物品処理ユニット内へ移送する移送装置の駆動部に好適に使用できる。
【0067】
前記アクチュエータ素子は、例えば、電子顕微鏡等の走査プローブ顕微鏡のプローブの位置決め装置の駆動部、並びに、電子顕微鏡用試料微動装置の位置決め等の駆動部に好適に用いることができる。
【0068】
前記アクチュエータ素子は、例えば、自動溶接ロボット、産業用ロボットや介護用ロボットを含むロボットまたはマニピュレータにおけるロボットアームの手首等に代表される関節機構の駆動部、直接駆動型以外の関節の駆動部、ロボットの指のそのもの、ロボット等のハンドとして使用されるスライド開閉式チャック装置の運動変換機構の駆動部、細胞微小操作や微小部品の組立作業等において微小な対象物を任意の状態に操作するためのマイクロマニピュレータの駆動部、開閉可能な複数のフィンガーを有する電動義手等の義肢の駆動部、ハンドリング用ロボットの駆動部、補装具の駆動部、並びにパワースーツの駆動部に好適に用いることができる。
【0069】
前記アクチュエータ素子は、例えば、サイドトリマの上回転刃又は下回転刃等を押圧する装置の押圧部に好適に用いることができる。
【0070】
前記アクチュエータ素子は、例えば、パチンコ等の遊戯装置における役物等の駆動部、人形やペットロボット等のアミューズメント機器の駆動部、並びに、乗車用シミュレーション装置のシミュレーション装置の駆動部に好適に用いることができる。
【0071】
前記アクチュエータは、例えば、上記機器等を含む機械全般に用いられる弁の駆動部に用いることができ、例えば、蒸発ヘリウムガスの再液化装置の弁の駆動部、ベローズ式の感圧制御弁の駆動部、綜絖枠を駆動する開口装置の駆動部、真空ゲート弁の駆動部、液圧システム用のソレノイド動作型制御バルブの駆動部、ピボットレバーを用いる運動伝達装置を組み込んだバルブの駆動部、ロケットの可動ノズルのバルブの駆動部、サックバックバルブの駆動部、並びに、調圧弁部の駆動部に好適に用いることができる。
【0072】
前記アクチュエータ素子は、例えば、上記機器等を含む機械全般に用いられるブレーキの押圧部として用いることができ、例えば、非常用、保安用、停留用等のブレーキやエレベータのブレーキに用いて好適な制動装置の押圧部、並びに、ブレーキ構造もしくはブレーキシステムの押圧部に好適に用いることができる。
【0073】
前記アクチュエータ素子は、例えば、上記機器等を含む機械全般に用いられるロック装置の押圧部として用いることができ、例えば、機械的ロック装置の押圧部、車両用ステアリングロック装置の押圧部、並びに、負荷制限機構及び結合解除機構を合わせ持つ動力伝達装置の押圧部に好適に用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
(1)モノマーであるピロール0.15mol/lと、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラブチルアンモニウム(TBATFSI)とテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBABF4)の混合モル比(9:1)の0.3mol/l混合溶液と、フェノキシエタノールと、フタル酸ジエチル、フタル酸ベンジル−2−エチルへキシル混合溶液(混合体積比50:45:5)にベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸二ナトリウム0.5mmol/lを含む混合溶液を電解液とし、
(2)直径1.5mmのニッケル棒電極上に0.1mA/cm2で、12時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚15μmのポリピロール(PPy)チューブを得た。
(3)得られたPPyチューブをニッケル棒電極から剥離した。
(4)次いで、前記PPyチューブの内部にAuワイヤー(線径0.1mm、ピッチ0.4mm)で構成された外径が1.4mmのコイルをアセトン中で挿入した。
(5)挿入後、乾燥(25℃×12時間)させた後、1mol/lのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)のアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液に室温で1時間浸漬し、アクチュエータ素子を得た。
(6)得られたアクチュエータ素子を、前記LiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液を動作(駆動)電解液として、0.5Hz、1.8Vppの電圧を印加して、電解伸縮を測定した。
【0076】
(実施例2)
(1)モノマーであるピロール0.15mol/lと、TBATFSIとTBABFの混合モル比(9:1)の0.3mol/l混合溶液と、フェノキシエタノールと、フタル酸ジエチル、フタル酸ベンジル−2−エチルへキシル混合溶液(混合体積比50:45:5)にベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸二ナトリウム0.5mmol/lを含む混合溶液を電解液とし、
(2)直径1.5mmのニッケル棒電極上に0.1mA/cm2、12時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚15μmのPPyチューブ(A)を得た。
(3)得られたPPyチューブ(A)をニッケル棒電極から剥離した。
(4)前記PPyチューブ(A)の内部にAuメッキしたNiワイヤー(線径0.1mm、ピッチ0.3mm)で構成された外径が1.4mmのコイルをアセトン中で挿入し、外径1.49mmの導電性高分子複合構造体(B)を得た。
(5)前記導電性高分子複合構造体(B)の外側にAuメッキしたNiワイヤー(線径0.1mm、ピッチ0.5mm)で構成された内径が1.5mmのコイルを被せた。
(6)更に、上記電解液(1)を使用し、直径2.0mmのニッケル棒電極上に0.1mAで、12時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚10μmのPPyチューブ(C)を得た。
(7)そして、前記PPyチューブ(C)の内部に、前記導電性高分子複合構造体(B)をアセトン中で挿入し、外径1.7mmの前記導電性高分子複合構造体(D)を得た。
(8)挿入後、乾燥(25℃×12時間)させた後、1mol/lのLiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液に室温で1時間浸漬し、アクチュエータ素子を得た。
(9)得られたアクチュエータ素子を、前記LiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液を駆動(動作)電解液として、0.5Hz、2.4Vppの電圧を印加して、電解伸縮を測定した。
【0077】
(実施例3)
(1)モノマーであるピロール0.15mol/lと、TBATFSIとTBABFの混合モル比(9:1)の0.3mol/l混合溶液と、フェノキシエタノールと、フタル酸ジエチル、フタル酸ベンジル−2−エチルへキシル混合溶液(混合体積比50:45:5)にベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸二ナトリウム0.5mmol/lを含む混合溶液を電解液とし、
(2)直径1.5mmのニッケル棒電極上に0.1mA/cm2で、6時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚8μmのPPyチューブ(A)を得た。
(3)得られたPPyチューブ(A)をニッケル棒電極から剥離した。
(4)次いで、前記PPyチューブ(A)の内部にAuメッキしたNiワイヤー(線径0.1mm、ピッチ0.2mm)で構成された外径が1.2mmのコイルをアセトン中で挿入し、外径1.26mmの導電性高分子複合構造体(B)を得た。
(5)更に、上記電解液(1)を使用し、直径1.5mmのニッケル棒電極上に0.1mA/cm2で、6時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚8μmのPPyチューブ(C)を得た。
(6)そして、前記PPyチューブ(C)の内部に、前記導電性高分子複合構造体(B)をアセトン中で挿入し、外径1.28mmの前記導電性高分子複合構造体(D)を得た。
(7)挿入後、乾燥(25℃×12時間)させた後、1mol/lのLiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液に室温で1時間浸漬し、アクチュエータ素子を得た。
(8)得られたアクチュエータ素子を、前記LiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液を駆動(動作)電解液として、0.5Hz、2.4Vppの電圧を印加して、電解伸縮を測定した。
【0078】
(実施例4)
(1)モノマーであるピロール0.15mol/lと、TBATFSIとTBABFの混合モル比(9:1)の0.3mol/l混合溶液と、フェノキシエタノールと、フタル酸ジエチル、フタル酸ベンジル−2−エチルへキシル混合溶液(混合体積比50:45:5)にベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸二ナトリウム0.5mmol/lを含む混合溶液を電解液とし、
(2)次いで、直径2.0mmのニッケル棒電極上に0.1mA/cm2で、14時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚25μmのPPyチューブを得た。
(3)得られたPPyチューブをニッケル棒電極から剥離した。
(4)次いで、前記PPyチューブの内部に、PVDFワイヤー(線径0.1mm、ピッチ0.2mm)で構成された外径が1.9mmのコイルをDMSO中で挿入し、外径2.0mmの導電性高分子複合構造体を得た。
(5)前記導電性高分子複合構造体を乾燥(25℃×12時間)させた後、1mol/lのLiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液に室温で1時間浸漬し、アクチュエータ素子を得た。
(6)得られたアクチュエータ素子を、前記LiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液を駆動(動作)電解液として、0.34Hz、3.0Vppの電圧を印加して、電解伸縮を測定した。
【0079】
(実施例5)
(1)モノマーであるピロール0.15mol/l、TBATFSIとTBABFの混合モル比(9:1)の0.3mol/l混合溶液と、フェノキシエタノールと、フタル酸ジエチル、フタル酸ベンジル−2−エチルへキシル混合溶液(混合体積比50:45:5)にベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸二ナトリウム0.5mmol/lを含む混合溶液を電解液とし、
(2)直径2.0mmのニッケル棒電極上に0.1mA/cm2で、13時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚25μmのPPyチューブを得た。
(3)得られたPPyチューブをニッケル棒電極から剥離した。
(4)次いで、前記PPyチューブの内部に、PVDFワイヤー(線径0.1mm、ピッチ0.2mm)で構成された外径が1.9mmのコイルをDMSO中で挿入し、外径2.0mmの導電性高分子複合構造体を得た。
(5)前記導電性高分子複合構造体の外側にAuワイヤー(線径0.1mm、ピッチ0.4mm)で構成された内径が2.05mmのコイルを被せた。
(6)次いで、乾燥(25℃×12時間)させた後、1mol/lのLiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液に室温で1時間浸漬し、アクチュエータ素子を得た。
(7)得られたアクチュエータ素子を、前記LiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液を駆動電解液として、0.34Hz、2.4Vppの電圧を印加して、電解伸縮を測定した。
【0080】
(実施例6)
(1)モノマーであるピロール0.15mol/lと、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラブチルアンモニウム(TBATFSI)とテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBABF4)の混合モル比(9:1)の0.3mol/l混合溶液と、フェノキシエタノールと、フタル酸ジエチル、フタル酸ベンジル−2−エチルへキシル混合溶液(混合体積比50:45:5)にベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸二ナトリウム0.5mmol/lを含む混合溶液を電解液とし、
(2)直径2.0mmのカーボン棒電極上に0.1mA/cm2で、15時間、−10℃、定電流電解重合し、膜厚28μmのポリピロール(PPy)チューブを得た。
(3)得られたPPyチューブをカーボン棒電極から剥離した。
(4)次いで、前記PPyチューブの内部にAuメッキしたNiワイヤー (線径0.1mm、ピッチ0.4mm)で構成された外径が1.9mmのコイルをDMSO中で挿入した。外径2.0mmの導電性高分子複合構造体を得た。
(5)挿入後、乾燥(25℃×12時間)させた後、1mol/lのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)のアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液に室温で1時間浸漬し、アクチュエータ素子を得た。
(6)得られたアクチュエータ素子を、前記LiTFSIのアセトニトリル/水(混合体積比4/6)混合溶液を動作(駆動)電解液として、0.5Hz、3.0Vppの電圧を印加して、電解伸縮を測定した。
【0081】
(比較例1)
コイルをPPyチューブ内部に挿入しない点を除き、上記実施例1と同様の方法で、アクチュエータの性能を評価した。
【0082】
(評価)
〔伸縮性〕
実施例1〜5及び比較例1のアクチュエータ素子を用いて、下記の方法により1酸化還元サイクル当たりの伸縮率を測定した。
【0083】
前記得られたアクチュエータ素子を動作電極とし、動作電極を前記電解液中に保持した。白金プレートを対向電極とし、それぞれ電極の端部に、リードを介して電源と接続して、周波数0.5Hz、電位(1.2〜3.0Vp−p v.s. Ag/Ag)を1サイクル印加して変位量(変位した長さ)を測定した。動作電極が1サイクルの印加(1酸化還元サイクル)で伸長と収縮とをすることにより得られた変位の差とチューブ長から算出された伸縮率を下記基準で評価した。
【0084】
〔発生力〕
本発明における発生力とは、アクチュエータ素子を構成しているPPyチューブが伸張および収縮の運動をする際に、負荷として受けている垂直方向にかかる力のことであり、素子の不可逆的な変形や破断をおこさない値を上限として変化させることが可能である。この発生力の値は、荷重による張力をPPyチューブの断面積の総和で割ることで算出でき、下記式にて得られる。なお、下記式のチューブ外径と膜厚は、コイル挿入前の値で計算している。
(発生力)=(張力)/(断面積)
=(荷重×重力加速度)/[π×(チューブ外径/2)−π×(チューブ外径/2−膜厚)]
【0085】
【表1】

【0086】
表1の結果より、全ての実施例において、導電性高分子チューブと基体(導電性又は非導電性基体)を使用することにより、伸縮率、引張強度、発生力のいずれにおいても優れた結果を有していることが確認できた。また、実施例4、5のように、PVDFのように非導電性基体の使用した場合においても、発生力の低下はあるものの、比較例1のように、伸縮性を有する基体であるコイル状構造体が存在しない場合に比べて、伸縮率に優れることが確認できた。また、作用電極として、実施例1〜5及び比較例1と異なり、非金属電極であるカーボン棒電極を用いた実施例6においても、伸縮率、引張強度、発生力のいずれにおいても優れた結果を有していることが確認できた。
【符号の説明】
【0087】
1、1’ 導電性高分子複合構造体
2、2’ 導電性高分子チューブ
3、3’ 基体(コイル状構造体)
10 アクチュエータ素子
20 作用極
30 対極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と導電性高分子チューブとを含む導電性高分子複合構造体であって、
前記基体が伸縮性を有する構造体であり、
前記基体の外側に接触させて前記導電性高分子チューブを配置することを特徴とする導電性高分子複合構造体。
【請求項2】
更に、請求項1記載の導電性高分子複合構造体の外側に基体を接触させ、前記基体の外側に導電性高分子チューブを接触させて配置することを特徴とする導電性高分子複合構造体。
【請求項3】
前記基体の形状が、コイル状、平面ジグザグ状、チェーン状、ニット状、アコーディオン状、及び、ベローズ状からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性高分子複合構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性高分子複合構造体を用いたアクチュエータ素子であって、
前記導電性高分子チューブの電解伸縮により伸縮、屈曲又はねじれに駆動することを特徴とするアクチュエータ素子。
【請求項5】
基体と導電性高分子チューブとを含む導電性高分子複合構造体の製造方法であって、
前記基体が伸縮性を有する構造体であり、
前記導電性高分子チューブを溶剤を用いて膨潤させる工程と、
前記膨潤させた導電性高分子チューブの内側に前記基体を挿入する工程と、
前記基体を挿入した導電性高分子チューブから溶剤を除去して、前記導電性高分子チューブを前記基体に接触させて導電性高分子複合構造体を形成する工程と、を含むことを特徴とする導電性高分子複合構造体の製造方法。
【請求項6】
更に、請求項5記載の製造方法により得られる導電性高分子複合構造体の外側に基体を接触させ、前記基体の外側に導電性高分子チューブを接触させて配置する工程、を含むことを特徴とする導電性高分子複合構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の製造方法により得られる導電性高分子複合構造体を用いたアクチュエータ素子であって、
前記導電性高分子チューブの電解伸縮により伸縮、屈曲又はねじれに駆動することを特徴とするアクチュエータ素子。
【請求項8】
請求項4又は7記載のアクチュエータ素子であって、
前記導電性高分子複合構造体の外部及び/又は内部に対極を配置することを特徴とするアクチュエータ素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−183740(P2010−183740A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25161(P2009−25161)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(302014860)イーメックス株式会社 (49)