説明

小便器用の目皿

【課題】小便器本体の陶器釉薬層と同一の色及び質感があり、耐薬品性に優れているため塩素系や酸性のトイレ用洗剤を使用しても変色せず、また難燃性で、長期にわたって良好な状態での使用を可能とする目皿の提供。
【解決手段】小便器の排水口部に設けられる着脱可能な目皿であって、前記目皿は排水口の上端部を覆い、本体部がポリ塩化ビニルを主成分とする難燃性樹脂によって形成された小便器用目皿。また、スズ系の安定剤を使用することにより、鉛の含有率が10ppm以下である小便器用目皿。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器の排水口部に設けられる着脱可能な目皿に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗式の小便器には、排水路からの異臭の逆流や害虫等の侵入の防止、排水口から異物等が排水路へ流入することを防止する目的で、着脱可能な目皿を被せて使用されているものが多い。この着脱式の目皿は通常、小便器本体と同じ陶器製であるため、清掃時に手を滑らせて落としたりして、目皿の一部を破損させてしまうことがあった。そのため最近では、目皿の破損を防止するために特許文献1に開示されているメラミン樹脂製の目皿や、ポリブチレンテレフタレート(以下PBT)樹脂製の目皿も利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−41955号公報(第2−6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水洗式の小便器の排水口部及びその周囲を衛生的に清浄に保つための手段として、一般的に市販されているトイレ用洗剤を使用することが多い。しかしながら、例えばメラミン樹脂製の目皿は塩素系や酸性のトイレ用洗剤を長期にわたり使用すると徐々に褐色に変色するといった不具合があった。また一方で、PBT樹脂製の目皿は、耐候性が劣るうえ可燃性であるため、公衆トイレなど屋外での長期にわたる使用において変色しやすく、また燃えやすいといった欠点があった。
【0005】
そこで本発明では、小便器本体の陶器釉薬層と同一の色及び質感があり、耐薬品性に優れているため塩素系や酸性のトイレ用洗剤を使用しても変色せず、また難燃性であるため、長期にわたって良好な状態で使用できることを特徴とする小便器用目皿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、上記課題を解決すべく、小便器の排水口部に設けられる着脱可能な目皿であって、本体部がポリ塩化ビニルを主成分とする難燃性樹脂によって形成されている小便器用目皿を提供する。
【0007】
本発明によれば、目皿の本体部がポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂で形成することにより、陶器製やメラミン樹脂製の目皿と比較して軽くすることができるため、清掃時に手を滑らせて目皿を落とし小便器や目皿を破損する可能性は低くなる。また、清掃時に使用されるであろう塩素系や酸性のトイレ用洗剤によって目皿表面が変色し見栄えが悪くなることがほとんどないことから好適である。さらに、ポリ塩化ビニルは自己消火性であるため、火をつけられるような事態においても目皿自体は燃焼しにくいことも好ましい。
【0008】
本発明の好ましい態様においては、前記難燃性樹脂に加える安定剤としてスズ系の安定剤を使用するようにする。一般に、ポリ塩化ビニルの安定剤としては鉛系の安定剤が主流であるが、生態系や環境への影響から使用しないことが望ましい。スズ系の安定剤を使用することにより、鉛の含有率が10ppm以下である目皿を提供することができ、好適である。また、スズ系の安定剤としては、スズ系の安定化剤としては、有機スズ安定剤が有効に利用でき、例えば、ラウレート系,マレート系、メルカプタイド系の有機スズ安定剤が利用できる。
【0009】
さらに、本発明の好ましい態様においては、前記難燃性樹脂に着色剤を添加するようにする。添加物として顔料などの着色剤を加えることにより、樹脂そのものを自由に着色することができるため、陶器製小便器本体の色に目皿の色を容易にあわせることができる。また、例えば塗装品のように長期間の使用において表面の塗膜が剥がれて見栄えが悪くなることもないので好適である。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、前記難燃性樹脂に抗菌剤として銀や銅を主成分とする化合物を添加するようにする。ポリ塩化ビニルに抗菌剤として銀や銅を主成分とする化合物を添加することにより、細菌の繁殖による汚れ等を防止することができるようになり、清掃も容易になることから好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では陶器と略同一の色及び質感があり、耐薬品性に優れているため塩素系や酸性のトイレ用洗剤によって変色せず、また耐候性と難燃性も優れているため、長期にわたって良好な状態で使用できる小便器用目皿を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。図1は小便器用目皿の一実施態様を示す平面図、図2は図1の縦断面図である。目皿の形状は従来の構造とほぼ同様であるが、これは従来の陶器製及びメラミン樹脂製の目皿からそのまま置き換えが可能であることを目的としている。目皿は小便器底部の立上げ排水管の上端を覆う天面部1と立上げ排水管の外周を囲むようにして配置される筒状の袴部2とが一体で成形されている。前記天面部1には略三角形の突起部3が形成されており、ここにフックを掛けて着脱式の目皿を上方に引き上げて、清掃等のメンテナンスを行うことができるようになっている。なお、天面の一部に水抜き孔4が形成されているが、水抜き孔の存在によって目皿全体の軽量化と排水時の目皿の浮き上がりを防止している。
【0013】
以下に、本発明の他の実施形態を説明する。図3は小便器用目皿の一実施態様を示す平面図、図4は図3の縦断面図である。目皿の形状は従来の構造とほぼ同様であるが、これは従来の陶器製及びメラミン樹脂製の目皿からそのまま置き換えが可能であることを目的としている。目皿は小便器底部の立上げ排水管の上端を覆う天面部5と立上げ排水管の外周を囲むようにして配置される筒状の袴部6とが一体で成形されている。前記天面部5には略三角形の突起部7が形成されており、ここにフックを掛けて着脱式の目皿を上方に引き上げて、清掃等のメンテナンスを行うことができるようになっている。なお、袴部の一部に切り欠き8を設けて、目皿全体の軽量化と排水を効率よくして目皿の浮き上がりを防止している。なお図においては、天面に水抜き孔が形成されていないが、水抜き孔を設けても設けなくてもよい。
【0014】
塩化ビニル樹脂で目皿を形成する方法としては、射出成形が一般的である。成形品表面、特に天面の外観を良好にするためには金型表面温度を160℃〜180℃とすることが好適である。この温度範囲をはずれると、成形品表面にシラケや焼け等の欠点が出ることがあり好ましくない。
【実施例】
【0015】
ポリ塩化ビニル樹脂のベースコンパウンドに適量のスズ系安定剤とあらかじめ調合された着色剤を適量加え、ペレット化したものを用いて、350t射出成形機を使用して、金型温度170℃、射出時間18秒で目皿を射出成形した。
【0016】
比較のために、従来から使用されているメラミン樹脂製の目皿(東陶機器製)とPBT樹脂製の目皿(他社製)を準備した。
【0017】
実施例及び比較用の目皿に対して、トイレ用洗剤による耐薬品性の評価を行った結果を表1、耐候性の評価を行った結果を表2、燃焼性の評価を行った結果を表3に示す。
【0018】
評価に用いたトイレ用洗剤としては、一般に入手しやすい酸性洗剤としてサンポール(大日本除虫菊製)、塩素系洗剤としてドメスト(日本リーバ製)を使用し、40℃にて2週間浸漬し外観観察を行った。また、耐候性評価の条件としては、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)にて紫外線照射60時間、降雨2時間毎18分間、ブラックパネル温度63℃、放射照度180W/mの条件で行い外観観察と色差計による評価を行った。燃焼性評価は、目皿の天面部の端にライターの火を接触させ、燃焼を開始したらライターを離し様子を確認した。
【0019】
表1に示したように、耐薬品性評価において、メラミン樹脂製の目皿(比較1)は変色したが、実施例1の目皿とPBT樹脂製の目皿(比較2)は全く問題なかった。メラミン樹脂が塩素を含有する洗剤で変色することは一般的に知られており、メラミン樹脂の表面に存在する−NH基と洗剤に含まれる塩素が反応し、クロラミンが生成したためと考えられる。
【0020】
【表1】

【0021】
表2に示したように、耐候性評価において、PBT樹脂製の目皿(比較2)はかなり変色したが、実施例1の目皿とメラミン樹脂製(比較1)の目皿は全く問題なかった。
【0022】
【表2】

【0023】
表3に示したように、燃焼性評価において、ライターで点火後に火を離してもPBT樹脂製の目皿(比較2)は燃焼し続けたが、実施例1の目皿及びメラミン樹脂製の目皿(比較1)は即座に消火した。
【0024】
【表3】

【0025】
従って、実施例1の目皿はメラミン樹脂製の目皿(比較1)より耐薬品性に優れており耐候性と燃焼性は同程度であること、PBT樹脂製の目皿(比較2)より耐候性・難燃性において優れており耐薬品性は同程度であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の小便器用目皿の一実施態様を示す平面図である。
【図2】図1の小便器用目皿の縦断面図である。
【図3】本発明の小便器用目皿の他の実施態様を示す平面図である。
【図4】図3の小便器用目皿の縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…天面部
2…袴部
3…突起部
4…水抜き孔
5…天面部
6…袴部
7…突起部
8…切り欠き



【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器の排水口部に設けられる着脱可能な目皿であって、前記目皿は排水口の上端部を覆い、本体部がポリ塩化ビニルを主成分とする難燃性樹脂によって形成されていることを特徴とする小便器用目皿。
【請求項2】
前記難燃性樹脂は、スズ系安定剤と着色剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の小便器用目皿。
【請求項3】
前記難燃性樹脂は、抗菌剤として銀や銅を主成分とする化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の小便器用目皿。
【請求項4】
前記難燃性樹脂は、鉛の含有率が10ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の小便器用目皿。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−299700(P2006−299700A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125004(P2005−125004)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】