説明

小便器用洗浄水供給装置

【課題】構造が簡単で、しかも、決められた容量の洗浄水を長期間にわたり安定して確実に送り出せるようにする。
【解決手段】給水管16と接続可能な給水弁3及び小便器洗浄ノズル21へ続く配管23と接続可能な供給弁5とを備えた洗浄水押し出しシリンダ7内に、第1スプリング27のばね圧で洗浄水押し出しシリンダ7内の洗浄水を押し出す作動位置と給水圧で後退する待機位置とに往復動自在とした第1のピストン9を設ける。また、前記第1のピストン9のピストン面9aの裏面側に設けられた薬液押し出しシリンダ11内に、第2スプリング55のばね圧による後退時の吸引圧で薬液タンク15内の薬液を送り込む待機位置と前記第1のピストン9の後退移動時にストッパ部材59と当接し合い薬液を洗浄水押し出しシリンダ7内へ押し出す作動位置とに往復動自在とした第2のピストン13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器に適する小便器用洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小便器使用後は水を流すことが一般的となっている。通常一回に使用される水の量は4リットルとなっているが、近年節水タイプのものが発売されその使用量は1回あたり1.2〜2リットルとなっている。
【0003】
水の使用量は、節水のことを考えると少ないことが望ましいが、水の使用量を少なくすると、例えば、小便器排水口にあるトラップ(配水管からの臭気の逆流を防ぐ水だまり)に溜まる尿と水の置換率低下によって菌が発生する要因となる。また、確実に流しきれず汚れや尿石発生により配管詰まりや臭気発生要素となりやすく、節水には限界があった。このために、薬液を用いる手段が公知となっている。(特許文献1参照)
薬液を用いる手段の概要は、薬液タンク及び供給タンクからなる薬液供給部と薬液供給部からの薬液と給水管からの水量を調整する開閉弁及び開閉弁を使用量に対応して開閉する制御装置とで水洗式小便器の薬剤溶液注入装置が構成されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−155768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水洗式小便器において薬剤溶液注入装置の薬液供給部は、薬液タンク及び供給タンクの外にポンプを必要とする一方、開閉弁を開閉制御する独立した制御装置を必要とする等装置全体が複雑になると共にコストの面でも望ましくない。
【0005】
そこで、本発明にあっては構造が簡単で、しかも、決められた容量の洗浄水を長期間にわたり安定して確実に送り出せるようにした小便器用洗浄水供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の第1にあっては、給水管と接続可能な給水弁及び小便器洗浄ノズルへ続く配管と接続可能な供給弁とを備えた洗浄水押し出しシリンダと、前記洗浄水押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第1のピストンと、前記第1のピストンのピストン面の裏面側部位に設けられた薬液押し出しシリンダと、前記薬液押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第2のピストンと、前記薬液押し出しシリンダ内へ薬液を送り込むための別体に設けられた薬液タンクとを有し、
前記第1のピストンは、第1スプリングによるばね圧で前進し洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水を供給弁を介して配管へ押し出す作動位置と前記給水弁を介して送り込まれる給水圧で後退する待機位置とに往復動自在に構成される一方、前記第2のピストンは、第2スプリングによるばね圧で後退し後退時の吸引圧で薬液タンク内の薬液が薬液押し出しシリンダ内へ送り込まれる待機位置と前記第1のピストンの後退移動時にストッパ部材と当接して前進し洗浄水押し出しシリンダ内へ薬液を押し出す作動位置とに往復動自在に構成されていることを特徴とする。
【0007】
第2にあっては、給水管と接続可能な給水弁及び小便器洗浄ノズルへ続く配管と接続可能な供給弁とを備えた洗浄水押し出しシリンダと、前記洗浄水押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第1のピストンと、前記第1のピストンのピストン面の裏面側部位に設けられ別体に設けられた薬液タンクと連通し合う薬液押し出し用の電気式駆動ポンプとを有し、
前記第1のピストンは、第1スプリングによるばね圧で前進し洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水を供給弁を介して配管へ押し出す作動位置と前記給水弁を介して送り込まれる給水圧で後退する待機位置とに往復動自在に構成される一方、前記電気式駆動ポンプは、薬液タンク内の薬液を薬液押し出しシリンダ内へ送り込むオンの作動時と薬液の送り込みを停止するオフとにオン・オフ可能で、前記給水弁が開又は閉となった時に一定時間オンの作動状態となることを特徴とする。
【0008】
第3にあっては、給水管と接続可能な給水弁及び小便器洗浄ノズルへ続く配管と接続可能な供給弁とを備えた洗浄水押し出しシリンダと、前記洗浄水押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第1のピストンと、前記第1のピストンのピストン面の裏面側部位に設けられた薬液押し出しシリンダと、前記薬液押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第2のピストンと、前記薬液押し出しシリンダ内へ薬液を送り込むための別体に設けられた薬液タンクとを有し、
前記第1のピストンは、第1スプリングによるばね圧で前進し洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水を供給弁を介して配管へ押し出す作動位置と前記給水弁を介して送り込まれる給水圧で後退する待機位置とに往復動自在に構成される一方、前記第2のピストンは、前記第1のピストンの後退移動時にストッパ部材と当接して前進し、前進時の吸引圧で薬液タンク内の薬液が薬液押し出しシリンダ内へ送り込まれる待機位置と前記第1のピストンの前進移動にともない第2スプリングによるばね圧で後退する後退移動時に薬液押し出しシリンダ内の薬液を小便器洗浄ノズルへ続く配管へ押し出す作動位置とに往復動自在に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1によれば、給水弁が開になると洗浄水押し出しシリンダ内へ水道水が送り込まれると共にその給水圧によって第1のピストンが後退する。その後退移動時にまず第2のピストンのピストン当り面がストッパ部材と当接しその当接により薬液押し出しシリンダ内を前進する第2のピストンによって薬液を洗浄水押し出しシリンダ内へ押し出すことができる。この時、薬液タンクは別体に設けられているため、大きい容量にできるようになり薬液の補充サイクルを延長できるメリットが得られる。
【0010】
また、薬液が送り込まれ水道水と混合した洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水は供給弁の開により給水圧の解除によって洗浄水押し出しシリンダ内を前進する第1のピストンにより小便器洗浄ノズルへ続く配管へ直接送り出すことができる。
【0011】
しかも、第2のピストンは第1のピストンが後退する後退移動時に押し出し作用が働く一方、第1のピストンは第1スプリングのばね圧で押し出すため、従来用いられていたポンプや制御装置等が不要となり、コンパクトで構造簡単にできる。
【0012】
また、洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水はシリンダ径とピストンの関係となるため正確な押し出量となるシリンダ容積の設計が可能となる。加えて、第1スプリングによるばね圧で押し出すため、水道圧の変動に影響されることなく常に正確な量の洗浄水を安定して送り出すことができる。
【0013】
本発明の第2によれば、電気式駆動ポンプによって洗浄水押し出しシリンダ内へ薬液を正確に送り込むことができることは無論として、第1のピストンの内部空間内に電気式駆動ポンプが収納配置された構造によって装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0014】
本発明の第3によれば、前記第1の作用、効果に加えて、少ない量の薬液を小便器洗浄ノズルへ続く配管へ確実に効率よく送り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するにあたって第1に、前記第1のピストンを、待機位置調整手段によってピストンのピストン軸線方向に沿ってそれぞれ異なる待機位置に位置決め可能とすることで、前進させて洗浄水押し出しシリンダのシリンダ容積を小さくできるようにする。また、後退させてシリンダ容積を大きくし、シリンダ容積のコントロールができるようにすることが望ましい。
【0016】
第2に、前記第1スプリングを、ばね圧が強くなる前進とばね圧が弱くなる後退とに前後進可能なスプリング圧調整手段によって支持することで、第1のピストンを押し出す押し出し力の調節が可能となり最適なばね圧による押し出し力が得られるようにすることが望ましい。
【0017】
第3に、前記ストッパ部材を、第2のピストンのピストン当り面へ向かう前進位置とピストン当り面から離れる後進位置とに前後進自在に支持することで、薬液押し出しシリンダ内のシリンダ容積のコントロールができるようにすることが望ましい。
【0018】
第4に、前記第1のピストンは、作動位置と待機位置とに往復動する往復動運動を発電機の発電シャフトに回転動力を与える動力駆動手動を備えるようにすることで、節水を図りながら発電機の発電シャフトに確実な回転動力を与えることができるようにすることが望ましい。
【0019】
以下、図1乃至図6の図面を参照しながら本発明の第1実施形態について具体的に説明する。
【0020】
図1は小便器用洗浄水供給装置の第1のピストンを後退させて待機位置とした概要説明図を示している。
【0021】
小便器用洗浄水供給装置1は、給水弁3及び供給弁5とを備えた洗浄水押し出しシリンダ7と、前記洗浄水押し出しシリンダ7内に配置され前進、後退可能な第1のピストン9と、前記第1のピストン9のピストン面9aの裏面側で中央部位に設けられた薬液押し出しシリンダ11と、前記薬液押し出しシリンダ11内に配置され前進、後退可能な第2のピストン13と、前記薬液押し出しシリンダ11内へ薬液を送り込むための薬液タンク15とを有している。薬液タンク15を除く装置全体は図6に示す如くユニットケース16内に収納配置されている。
【0022】
洗浄水押し出しシリンダ7は、シリンダ頭部7aに前記した給水弁3及び供給弁5とを備えている。供給弁3は常時は閉状態にあって水道等の給水管16に設けられた逆流防止用の逆止弁17と着脱自在に接続される接続部19を有している。供給弁5は常時は閉状態にあって小便器洗浄ノズル21(図6参照)へ続く配管23と着脱自在に接続される接続部25を有している。洗浄水押し出しシリンダ7内を前進、後退する前記第1のピストン9は、第1スプリング27によるばね圧で前進(図1矢印イ)し洗浄水押し出しシリンダ7内の洗浄水を供給弁5を介して配管23へ押し出す作動位置(図2実線)と前記給水弁3を介して送り込まれる給水圧で後退(図1矢印ロ)する待機位置(図1実線)とに往復動自在となっている。
【0023】
第1のピストン9の作動位置(図2実線)は、洗浄水押し出しシリンダ7内の洗浄水を外へ押し出す押し出し完了状態と、第1の検知スイッチS−1をオンとして図外の制御回路を介して前記給水弁3を開とする作用と供給弁5を閉とする作用の検知スイッチ作動位置となっている。
【0024】
第1のピストン9の待機位置(図1実線)は、第1のピストン9が後退してシリンダカバー29に当接した時に位置決めされる状態と、第2の検知スイッチS−2をオンとして前記給水弁3を閉とする検知スイッチ作動位置となっている。
【0025】
第1の検知スイッチS−1は、図1に示す如く後述する薬液シリンダ開閉弁30に設けられた磁石31と洗浄水押し出しシリンダ7のシリンダ頭部7aに設けられた磁力検知部33とからなっている。したがって、第1のピストン9が前進し作動位置(図2実線)になった時に磁石31の磁力を磁力検知部33が検知することでオンとなり給水弁3を開に、供給弁5を閉にそれぞれ作動制御するようになっている。
【0026】
第2の検知スイッチS−2は、図3に示す如くシリンダカバー29に設けられた発光素子35と受光素子37からなる光電スイッチとなっている。したがって、第1のピストン9が後退し待機位置(図1実線)になった時にそのスカート部が発光素子35と受光素子37の間に進入し光を遮断することでオンとなり給水弁3を閉に作動制御するようになっている。供給弁5は図6に示す如くユニットケース16の前面に設けられた人感センサのセンサ窓38からの検知信号で開となり、前記した第1の検知センサS−1からの信号で閉に制御される。
【0027】
シリンダカバー29は、待機位置調整手段38によってシリンダ容積が最大となる待機位置(図1実線)から、シリンダ容積が最小となる待機位置(図4実線)まで調整可能となっている。
【0028】
具体的に説明すると、シリンダカバー29は、前記洗浄水押し出しシリンダ7の外周に沿って配置された取付けスリーブ39内を貫通する取付けねじ41のねじ部41aに嵌挿され、外側のナット43と内側の複数の調整リング45とにより挟みつけられた状態で固定支持されている。
【0029】
したがって、ナット43を弛めることでシリンダカバー29を取付けねじ41から取外すことが可能となるため、例えば、調整リング45を1つ又は2つ同時に取外すことで第1のピストン9の待機位置を例えば、図4に示すように前進させた位置に位置決めすることが可能となる。
【0030】
これにより、第1のピストン9の待機位置を前後動させて位置決めすることで洗浄水押し出しシリンダ7のシリンダ容積(洗浄水を送り出す容量)の調整が必要に応じて行なえるようになっている。
【0031】
第1のピストン9を付勢する前記第1スプリング27は円錐状に形成されている。径が大きくなる第1スプリング27の底辺側は前記第1のピストン9の固定座47に、径が小さくなる第1スプリング27の頂辺側は圧力調整ばね受け49にそれぞれ固定支持され、供給弁5の開により洗浄水押し出しシリンダ7内の吸水圧が開除されることで、そのばね圧によって第1のピストン9を押圧する。
【0032】
圧力調整ばね受け49は、前記シリンダカバー29に固定支持された内部が中空の円筒体51のねじ部51aと螺合し、例えば、圧力調整ばね受け49を右又は左へ回転させることで図1矢印ハの如く前進(ばね圧が強くなる)、あるいは、後退(ばね圧が弱くなる)により第1スプリング27のばね圧力の調整が行えるようになる。
【0033】
薬液押し出しシリンダ11は、前記第1のピストン9のピストン面9aの裏面側で中央部位に設けられ、その内部に前記した前進、後退可能な第2のピストン13が設けられている。
【0034】
薬液押し出しシリンダ11は、そのシリンダ頭部となる第1のピストン9のピストン面9aに前記した薬液シリンダ開閉弁30が設けられている。薬液シリンダ開閉弁30は、常時は付勢ばね53により閉状態となっていて、第2のピストン13のピストン圧によって開状態が確保されるようになっている。
【0035】
第2のピストン13は、第2スプリング55によるばね圧で後退し後退時の吸引圧で薬液タンク15内の薬液がチューブ管57を介して薬液押し出しシリンダ内へ送り込まれる待機位置(図2実線)と前記第1のピストン9の後退移動時にストッパ部材59と当接して前進(図1矢印イ)し洗浄水押し出しシリンダ7内へ薬液を押し出す作動位置(図1実線)とに往復動自在となっている。薬液タンク15から延長されたチューブ管57と薬液押し出しシリンダ11との接続部は、図示していないが逆止弁が設けられ薬液押し出しシリンダ11内の薬液がチューブ管57へ逆戻りしないようになっている。
【0036】
なお、薬液タンク15の薬液は、消臭用薬剤の外に、芳香剤を組合せた組合せ薬液を用いてもよい。
【0037】
また、チューブ管57はシリンダカバー29と薬液押し出しシリンダ11との間において伸縮するところから図示の如く可撓性のコイル状57aとして伸縮に対応できる形状とすることが望ましい。
【0038】
薬液押し出しシリンダ11の第2スプリング55は、薬液押し出しシリンダ11の端面とフランジ状に形成された第2のピストン13のピストン当り面13aとの間に介装され、第2のピストン13を常時待機位置(図2実線)に付勢している。この時、設計値に基づくシリンダ径によって薬液押し出しシリンダ11内のシリンダ容積が決定されると共に、第2のピストン13が後退(図1矢印ロ)する時の吸引圧により前記したチューブ管57を介して薬液タンク15内の薬液が薬液押し出しシリンダ11内へ吸い込まれるようになっている。薬液押し出しシリンダ11内の薬液は、第1のピストン9が後退(図1矢印ロ)した時に第2のピストン13のピストン当り面13aがストッパ部材59に当接することで前進(図1矢印イ)しシリンダ内の薬液を洗浄水押し出しシリンダ7内へ押し出すように作用する。
【0039】
ストッパ部材59は、ボルト状に作られていて、前記シリンダカバー29に設けられた取付け部材61のナット部63に対して前進、後退(図1矢印イ、ロ)自在に螺合し、ボルト頭部となる操作部59aを右回転又は左回転させることでストッパ位置Pの位置決めが可能となっている。
【0040】
このように構成された洗浄水供給装置1によれば、薬液押し出しシリンダ11は第2のピストン13を含めて第1のピストン9内に収まるレイアウト構造となるため薬液タンク15を除く装置全体がユニットケース16内に収納配置されるためコンパクト化が図れると共に、既設の小便器65の取付け壁面66内に対して図6に示す如く容易に取付けることができる。この場合、図6のように前面に張り出した取付け壁面66内へ取付ける埋込型であってもよく、あるいは、図示していないが全体を露出させた露出型であってもよい。
【0041】
また、組付けにあたって操作部59aを操作してストッパ部材59を前進又は後退させることで薬液押し出しシリンダ11内の薬液量の調整が正確に行なえる。また、調整リング45を取付けたり、取外すことで、第1のピストン9の待機位置(図1実線)を前進又は後退することが可能となり、洗浄水押し出しシリンダ7のシリンダ容積、即ち、洗浄水を配管23へ押し出す洗浄水の押し出し量の調整が行なえる。
【0042】
一方、センサ窓38を介して人感センサが人を検知すると供給弁5を開とする。これにより、内部圧が解除され、第1スプリング27のばね圧で薬液が混合された洗浄水は配管23を介して小便器洗浄ノズル21へ供給され洗浄が行われる。洗浄完了後、第1の検知センサS−1が作動し給水弁3を開とする。これにより送り込まれる給水圧によって第1のピストン9は後退する。この後退時に第2のピストン13がストッパ部材59と当接し合うと共にシリンダカバー29と当接し待機位置(図1実線)に位置決めされる、と同時に給水管16から洗浄水押し出しシリンダ7内に送り込まれた水道水は、ストッパ部材59と当接し合う第2のピストン13によって洗浄水押し出しシリンダ7から送り出された薬液と混合し合う待機状態となる動作を繰返す。これら一連の動作において液及び洗浄水は薬液押し出しシリンダ11及び洗浄水押し出しシリンダ7によって制御管理されるため、長期間にわたり、安定した正確な量が得られるようになる。また、薬液タンク15は別体としたため大きな容量に作ることが可能となり、薬液の補充サイクルを延長できるメリットが得られる。
【0043】
図7は薬液を洗浄水押し出しシリンダ7内へ送り込む手段に電気式駆動ポンプとなる電磁ポンプ67を用いた第2実施形態を示している。
【0044】
即ち、前記第1のピストン9のピストン面9aの裏面側で中央部に電気式駆動ポンプ67を設け、第1のピストン9の内部に組込んだ構造となっている。
【0045】
電磁ポンプ67は、電磁コイル69に電流が流れたオンの作動時にポンプ本体71内の電磁弁(図示していない)を閉から開に作動し、オンの作動時間、吐出口73から洗浄水押し出しシリンダ7内へ薬液を吐出するよう作用する。電磁弁は図示していないが電磁コイル69への電流が遮断されたオフになると、コイルばね(図示していない)によって閉位置へ付勢される。この時、電磁弁の閉位置への移動時に吸引圧が発生し、この吸引圧によって薬液タンク15からポンプ本体17内に薬液が送り込まれ、薬液を吐出する待機状態が確保される。
【0046】
電磁ポンプ67は、給水弁3が開となってから一定時間オンの作動状態となり、オンの作動時間が薬液の吐出量となっている。
【0047】
この場合、給水弁3が閉となってから一定時間オンの作動状態となる手段とすることも可能である。
【0048】
電磁ポンプ67のオンの作動時間は、センサ窓38を介して人感センサが人を検知した検知信号と第1の検知センサS−1が検知した検知信号が制御回路部75に入力される、制御回路部75に組込まれたプログラムに基づき設定された薬液量、即ち、一定時間オンの作動状態に制御することが可能となっている。
【0049】
なお、他の構成要素は図1と同一のため同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
したがって、この実施形態によれば、電磁ポンプ67を一定時間オンの作動状態とすることで薬液を洗浄水押し出しシリンダ9内へ正確に吐出させることができる。
【0051】
一方、電磁ポンプ67は第1のピストン9の内部に収納配置される構造となるため装置全体のコンパクト化が図れるようになる。
【0052】
なお、この実施形態では電気式駆動ポンプの一例とし電磁ポンプについて説明したが、圧電素子ポンプ、モーターポンプタイプであってもよい。
【0053】
図8,図9,図10は第3実施形態を示したもので、薬液を洗浄水押し出しシリンダ7内へ送り出すのではなく小便器洗浄ノズル21へ続く配管23へ直接送り込めるようにしたものである。
【0054】
即ち、薬液押し出しシリンダ11の第2のピストン13は、洗浄水押し出しシリンダ7の第1のピストン9の後退移動時にストッパ部材59と当接し前進する一方、前進した第2のピストン13は第2スプリング55によって後退移動することで往復動することは第1実施形態と同一であるが、本実施形態では前進移動時に薬液が送り込まれる待機位置(図8)の状態となる。また、後退移動時に薬液を送り出す作動位置(図10)の状態となっている。
【0055】
具体的には、図9に示す如く第2のピストン13のピストン部13−1の内側(図面左側)で、薬液押し出しシリンダ11にボール状の開閉弁77,79を有する薬液取入口81と薬液送り出し口83がそれぞれ設けられ、薬液取入口81は伸縮可能な可撓性のパイプ部57aが設けられたパイプ57を介して薬液タンク15と接続連通している。薬液送り出し口83は伸縮可能な可撓性のパイプ部85aが設けられたパイプ85を介して小便器洗浄水ノズル21へ続く配管23とそれぞれ接続連通している。
【0056】
薬液取入口81の開閉弁77と薬液送り出し口83の開閉弁79には、シリンダ軸線Xから離れる方向へ付勢する付勢ばね87とシリンダ軸線Xへ向けて付勢する付勢ばね89がそれぞれ作用している。
【0057】
薬液取入口81の開閉弁77は、シリンダ軸線Xと離れる方向へ付勢する付勢ばね87により弁座81aと当接し合い閉の状態を確保している。弁座81は第2のピストン13がストッパ部材59と当接し前進(図9矢印a)する時に薬液押し出しシリンダ11内に働く吸引圧によって付勢ばね87に抗して開閉弁77が弁座81aから離れることで開となり、薬液が薬液押し出しシリンダ11内に送り込まれる。この時、吸引圧は他方の薬液送り出し口81の開閉弁79を弁座83aに対して押し付ける作用となり、付勢ばね89によるばね圧と相俟って閉状態が確保される構造となっている。
【0058】
薬液送り出し口83の開閉弁79は、シリンダ軸線Xへ向けて付勢する付勢ばね89により弁座83aと当接し合い閉の状態を確保している。弁座83aは第1のピストン7が第1スプリング27による前進(図10矢印b)移動にともない第2スプリング55のばね圧で後退する後退移動(矢印C)する時に薬液押し出しシリンダ11内に働く押し出し力(ピストン圧)によって付勢ばね89に抗して開閉弁79が弁座83aから離れることで開となり、薬液が小便器洗浄ノズル21へ続く配管23へ直接送り出される。この時、押し出し力(ピストン圧)は他方の薬液取入口81の開閉弁77を弁座81aに対して押し付ける作用となり、付勢ばね87によるばね圧と相俟って閉状態が確保される構造となっている。
【0059】
なお、他の構成要素は第1実施例と同一のため同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
したがって、この第3実施形態によれば、第2のピストン13が前進した待機位置(図8)の時、吸引圧によって薬液押し出しシリンダ11内に薬液が送り込まれるようになる。
【0061】
また、第2のピストン13が後退した作動位置(図10)の時、押し出し力によって薬液押し出しシリンダ11内の薬液を小便器洗浄ノズル21へ続く配管23へ確実、正確に送り込めるようになる。
【0062】
図11,図12は第4実施形態を示したもので、第1のピストン9の往復動運動を発電機90の動力源として利用できるようにしたものである。
【0063】
即ち、第1のピストン9に作動位置と待機位置とに往復動する往復運動を発電機90の発電シャフト91に回転動力を与える動力駆動手段93を備える手段となっている。
【0064】
動力駆動手段93は、第1のピストン9の中心軸線Yに沿って作動ロッド95が延長され、その作動ロッド95の延長端側にラック96が設けられている。ラック96にはピニオン97が噛み合い、最終の伝達ギヤ98が発電機90の発電シャフト91に設けられたシャフトギヤ99と噛み合う構造となっている。
【0065】
伝達ギヤ98のギヤ軸98aにはワンウェイクラッチ101が設けられ、ワンウェイクラッチ101は図12に示す如く作動ロッド96が外方へ向かって移動した時に動力が伝達されるオン状態となるクラッチ歯とクラッチ爪の関係となっている。したがって、図11に示す如く作動ロッド96が内側へ向かって移動した時に動力が遮断されるオフ状態となり、発電シャフト91には常に一方向の回転動力が与えられるようになっている。
【0066】
なお、他の構成要素は第3実施形態と同一のため同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
したがって、この第4実施形態によれば、第1のピストン9が往復動するたびに発電機90の発電シャフト91に回転動力を与えることができる。この時の発電は水流を利用する発電ではないために水を多量に使うことがないため、節水を図りながら確実な発電動力が得られる。しかも、水流を使う手段と異なり第1のピストン9の動きを利用する手段となるため強いトルクの発電動力が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明にかかる小便器用洗浄水供給装置の第1のピストンを後退させて待機位置状態とした第1実施形態を示す概要説明図。
【図2】小便器用洗浄水供給装置の第1のピストンを前進させて作動位置状態とした概要説明図。
【図3】給水弁及び供給弁を開口制御する第1、第2の検知センサの取付け状態を示した概要説明図。
【図4】小便器用洗浄水供給装置の第1のピストンの待機位置を前方へ調整した状態を示す図1と同様の概要説明図。
【図5】図4の待機位置にある第1のピストンを前進させて作動位置とした図2と同様の概要説明図。
【図6】小便器用洗浄水供給装置を小便器の壁面内部に取付けた状態を示す概要説明図。
【図7】薬液を洗浄水押し出しシリンダ内へ送り込む手段に電磁ポンプを用いた図1と同様の第2実施形態を示す概要説明図。
【図8】第3実施形態を示した図1と同様の概要説明図。
【図9】第3実施形態を示した第2のピストンと薬液押し出しシリンダと開閉弁の関係をした概要説明図。
【図10】第3実施形態を示した図2と同様の概要説明図。
【図11】第1のピストンの往復時の状態を示した第4実施形態の概要説明図。
【図12】第1のピストンの往復時の状態を示した第4実施形態の概要説明図。
【符号の説明】
【0069】
3 給水弁
5 供給弁
7 洗浄水押し出しシリンダ
9 第1のピストン
9a ピストン面
11 薬液押し出しシリンダ
13 第2のピストン
15 薬液タンク
16 給水管
19,25 接続部
21 小便器洗浄ノズル
23 配管
27 第1スプリング
38 待機位置調整手段
49 圧力調整ばね受け(スプリング圧調整手段)
55 第2スプリング
67 電磁ポンプ
69 電磁コイル
71 ポンプ本体
73 吐出口
75 制御回路部
77,79 開閉弁
81 薬液取入口
81a 弁座
83 薬液送り出し口
83a 弁座
87,89 付勢ばね
90 発電機
91 発電シャフト
93 動力駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と接続可能な給水弁及び小便器洗浄ノズルへ続く配管と接続可能な供給弁とを備えた洗浄水押し出しシリンダと、前記洗浄水押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第1のピストンと、前記第1のピストンのピストン面の裏面側部位に設けられた薬液押し出しシリンダと、前記薬液押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第2のピストンと、前記薬液押し出しシリンダ内へ薬液を送り込むための別体に設けられた薬液タンクとを有し、
前記第1のピストンは、第1スプリングによるばね圧で前進し洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水を供給弁を介して配管へ押し出す作動位置と前記給水弁を介して送り込まれる給水圧で後退する待機位置とに往復動自在に構成される一方、前記第2のピストンは、第2スプリングによるばね圧で後退し後退時の吸引圧で薬液タンク内の薬液が薬液押し出しシリンダ内へ送り込まれる待機位置と前記第1のピストンの後退移動時にストッパ部材と当接して前進し洗浄水押し出しシリンダ内へ薬液を押し出す作動位置とに往復動自在に構成されていることを特徴とする小便器用洗浄水供給装置。
【請求項2】
給水管と接続可能な給水弁及び小便器洗浄ノズルへ続く配管と接続可能な供給弁とを備えた洗浄水押し出しシリンダと、前記洗浄水押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第1のピストンと、前記第1のピストンのピストン面の裏面側部位に設けられ別体に設けられた薬液タンクと連通し合う薬液押し出し用の電気式駆動ポンプとを有し、
前記第1のピストンは、第1スプリングによるばね圧で前進し洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水を供給弁を介して配管へ押し出す作動位置と前記給水弁を介して送り込まれる給水圧で後退する待機位置とに往復動自在に構成される一方、前記電気式駆動ポンプは、薬液タンク内の薬液を薬液押し出しシリンダ内へ送り込むオンの作動時と薬液の送り込みを停止するオフとにオン・オフ可能で、前記給水弁が開又は閉となった時に一定時間オンの作動状態となることを特徴とする小便器用洗浄水供給装置。
【請求項3】
給水管と接続可能な給水弁及び小便器洗浄ノズルへ続く配管と接続可能な供給弁とを備えた洗浄水押し出しシリンダと、前記洗浄水押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第1のピストンと、前記第1のピストンのピストン面の裏面側部位に設けられた薬液押し出しシリンダと、前記薬液押し出しシリンダ内に配置され前進、後退可能な第2のピストンと、前記薬液押し出しシリンダ内へ薬液を送り込むための別体に設けられた薬液タンクとを有し、
前記第1のピストンは、第1スプリングによるばね圧で前進し洗浄水押し出しシリンダ内の洗浄水を供給弁を介して配管へ押し出す作動位置と前記給水弁を介して送り込まれる給水圧で後退する待機位置とに往復動自在に構成される一方、前記第2のピストンは、前記第1のピストンの後退移動時にストッパ部材と当接して前進し、前進時の吸引圧で薬液タンク内の薬液が薬液押し出しシリンダ内へ送り込まれる待機位置と前記第1のピストンの前進移動にともない第2スプリングによるばね圧で後退する後退移動時に薬液押し出しシリンダ内の薬液を小便器洗浄ノズルへ続く配管へ押し出す作動位置とに往復動自在に構成されていることを特徴とする小便器用洗浄水供給装置。
【請求項4】
前記第1のピストンは、待機位置調整手段によってピストンのピストン軸線方向に沿ってそれぞれ異なる待機位置に位置決め可能となっていることを特徴とする請求項1,2,3のいずれかに記載の小便器用洗浄水供給装置。
【請求項5】
前記第1スプリングは、ばね圧が強くなる前進とばね圧が弱くなる後退とに前後進可能なスプリング圧調整手段によって支持されていることを特徴とする請求項1,2,3のいずれかは記載の小便器用洗浄水供給装置。
【請求項6】
前記ストッパ部材は、第2のピストンのピストン当り面へ向かう前進位置とピストン当り面から離れる後進位置とに前後進自在に支持されていることを特徴とする請求項1又は3のいずれかに記載の小便器用洗浄水供給装置。
【請求項7】
前記第1のピストンは、作動位置と待機位置とに往復動する往復動運動を発電機の発電シャフトに回転動力を与える動力駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1,2,3のいずれかに記載の小便器用洗浄水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−180071(P2008−180071A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327694(P2007−327694)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(599149821)
【Fターム(参考)】