小便器用薬液供給装置
【課題】容器本体に収納されている固形薬剤は洗浄水に溶解する際に砕けて微細な欠片が生じる場合がある。上記従来のものでは容器本体の形状が下方に向かってすぼまっているので、このように固形薬剤の欠片が生じると、排出口に向かって欠片が移動し、排水口を塞ぐおそれが生じる。薬液は洗浄水の流れが収まってから所定時間かけて徐々に排水することが望ましいが、このように排水口が塞がれると、薬液の排出速度が大幅に変化するという不具合が生じる。
【解決手段】薬剤収納部内の薬液を流水通路へ流す開口部を設け、かつ、この開口部の形状を、排水口を通過できない粒径の固体物を薬剤収納部側から流水通路側へ移動させない形状にした。
【解決手段】薬剤収納部内の薬液を流水通路へ流す開口部を設け、かつ、この開口部の形状を、排水口を通過できない粒径の固体物を薬剤収納部側から流水通路側へ移動させない形状にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器の壁面に取り付けられ、壁面に沿って洗浄水が流される毎に洗浄液やその他の薬液を便器側に排水する小便器用薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置として、例えば下方に向かってすぼまる容器本体の下部に排水口を設け、更に容器本体内に水溶性の固形薬剤を収納し、状便器の壁面に沿って洗浄水が流れ落ちると、洗浄水の一部を容器本体に取り込んで薬液を生成し、洗浄水の流れが弱まった後に薬液を排水口から排水するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−247256号公報(図2,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
容器本体に収納されている固形薬剤は洗浄水に溶解する際に砕けて微細な欠片が生じる場合がある。上記従来のものでは容器本体の形状が下方に向かってすぼまっているので、このように固形薬剤の欠片が生じると、排出口に向かって欠片が移動し、排水口を塞ぐおそれが生じる。
【0004】
薬液は洗浄水の流れが収まってから所定時間かけて徐々に排水することが望ましいが、このように排水口が塞がれると、薬液の排出速度が大幅に変化するという不具合が生じる。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、固形薬剤が砕けて欠片が生じても排水口を塞ぐことなく望ましい速度で薬液を排水することのできる小便器用薬液供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明による小便器用薬液供給装置は、小便器の壁面に取り付けられ、この壁面に沿って上方から流れてくる洗浄水を内部に取り込む取水口を上部または側面に備えた容器本体を有し、容器本体の内部に取り込まれた洗浄水に溶解して薬液を生成する薬剤を収納する薬剤収納部を容器本体に設けると共に、生成された薬液を排水する排水口を容器本体の下部に形成した小便器用薬液供給装置において、容器本体内の薬液の80%を排出するのに要する時間が10秒以上になるように排水速度を設定したことを特徴とする。
【0007】
容器本体内の薬液の80%とは空の状態の容器本体の排水口を閉じた状態で取水口から洗浄水を取り込み、最大水量となった後に排水口を開放した場合に排水される洗浄水の80%に相当する水量である。80%の薬液排出時間を10秒以上、好ましくは15秒以上とすることにより、洗浄水の流れが停止し洗浄水の配管内に残留した洗浄水が完全に流れ終わった後に薬液を排水することが可能になり、効果的に薬液の効能である小便器の壁面や排水トラップ部の洗浄効果や消臭効果を発揮させることができる。
【0008】
そして、上記排水速度は排水口の大きさで設定すると共に、取水口から排水口に至る流水通路に対して薬剤収納部を仕切る隔壁を設け、隔壁に開口部を形成し、この開口部の形状を、排水口を通過できない粒径の固体物を薬剤収納部側から流水通路側へ移動させない形状にする。
【0009】
薬剤の欠片が生じても開口部によって欠片が止められ薬剤収納部側から流水通路側へ移動しない。
【0010】
更に、上記隔壁に形成する開口部を、容器本体の底面から所定の高さに設けると、欠片が薬剤収納部の底に滞留して薬剤収納部側から流水通路側への移動防止効果が向上する。
【0011】
薬剤の比重が水の比重より重い場合には薬剤の破片は底に沈むため、流水通路と薬剤収納部との間に明確な隔壁がない容器の場合は、薬剤収納部と排水口との間に堰を設け、欠片が薬剤収納部から排水口に向かって移動しないようにすることができる。なお、堰によって薬剤収納部側に薬液が残ると、容器本体を取り外す際に、容器本体内に残っている薬液が床等にこぼれて床を汚すといった不具合が生じる。そこで、堰の一部に底面に達するスリット等の水抜きを設けておくことが望ましい。ただし、水抜きの形状は排水口より大きな粒径の欠片が通過しないようにすることが必要である。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、薬剤収納部で薬剤の欠片が生じたとしても薬剤収納部から流水通路側に移動しないので、排水口を欠片が塞ぐことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、Tは小便器である。なお、本図に示した小便器Tは床に接した状態で設置される、上下方向の寸法が長いタイプであるが、床から離して設置される比較的上下寸法の短いタイプの小便器にも適用することができる。この小便器Tの壁面TWに本発明による小便器用薬液供給装置(以下、薬液供給装置という)1が取り付けられる。
【0014】
図2を参照して、樹脂製の容器本体2にはコ字状の吊り手21が取り付けられており、この吊り手21の中央には吸盤22が設けられており、この吸盤22で上記壁面TWに取り付けられる。容器本体の上部には左右2箇所に取水口23が開設されている。この取水口から洗浄水を取り込み、後述する薬剤が溶解した薬液を生成して排水口24から排水する。本実施の形態では、容器本体2の下部に3箇所の排水口24を設けた。なお、26は洗浄水を取り込みすぎた場合にオーバーフローさせる溢水口である。
【0015】
取水口23には、この取水口23に洗浄水を導く取水支持部4が形成されている。容器本体2を小便器Tに取り付けると、この取水支持部4の先端が壁面TWに当接し、更に支持突起25が壁面TWに当接する。このように3点で壁面TWに当接するので、容器本体2はがたつくことなく、安定した姿勢で壁面TWに設置される。
【0016】
取水支持部4の先端が壁面TWに当接するので、その状態で壁面TWに沿って洗浄水が流されると、洗浄水の一部が取水支持部4を通って取水口23に導かれ、取水口23から容器本体2内へ取り込まれる。一方、容器本体2の下部には薬液案内部材3が取り付けられている。この薬液案内部材3には可撓性に優れたフィルム状の案内部31が形成されている。この案内部31は支持突起25の先端よりも更に長く突出しているので、容器本体2を壁面TWに取り付けると案内部31の先端は壁面TWに当接し、更に図3に示すように曲がることになる。
【0017】
図3に示すように、容器本体2内には隔壁5が設けられており、この隔壁5によって容器本体2内が流水通路部51と薬剤収納部52とに区画されている。図示のように、取水支持部4から取水口23を通って取り込まれた洗浄水は流水通路部51を通って排水口24から排水される。ただし、隔壁5には通路口53が形成されているので、取水口23からの洗浄水の取り込み量が多い状態では、洗浄水の一部が流水通路部51から薬剤収納部52へと流れ込む。
【0018】
薬剤収納部52には水溶性の固形薬剤Cが予め収納されており、薬剤収納部52に洗浄水が流入すると、固形薬剤Cの一部が洗浄水に溶解して薬液が生成される。取水口23から取り込まれる洗浄水の量が減少すると、逆に薬剤収納部52内の薬液が通路口53を通って流水通路部51側に流出し、排水口24から容器本体2の外部へと排水される。排水された薬液は上述のように、案内部31を伝って壁面TWに流れる。
【0019】
ところで、通路口53は図4に示すように、排水口24が通過できないような粒径の固形物が薬剤収納部52から流水通路部51側に流出しない大きさに形成されている。洗浄水の流れが弱まり、取水口23から取り込まれる洗浄水の量が所定量まで減少すると、上述のように薬液の排水が始まるが、薬液の排水は所定時間以上継続することが望ましい。本発明では、薬剤収納部52で生成された薬液の80%が流出するまでに10秒以上かかるようにした。具体的には、排水口24の大きさを小さくすることにより薬液の排水速度を減速している。ところが、排水口24の大きさを小さくすると、例えば砕けた固形薬剤Cが排水口24より大きくて排水口24を塞ぐと、薬液の排水速度が大幅に変化するという不具合が生じる。
【0020】
そこで、上述のように、そのような大きさの固形薬剤Cの欠片が流水通路部51に流出しないようにした。なお、固形薬剤Cの欠片が発生しても薬剤収納部52内に留まりやすいように、通路口53を容器本体2の底面より高く設け、通路口53の下部に無口部54を設けた。このように無口部54を設けることにより、固形薬剤Cの欠片が生じても、無口部54で堰き止められ、薬剤収納部52内に留まり、次に洗浄水が流れ込んだ際に溶解しやすいようにした。
【0021】
薬剤収納部の底には堰き止められた薬液と固形薬剤とが長時間接触することを防止するため通路口53の底辺より高い薬剤保持部52aを設けることが望ましい。また、側面にも薬剤保持部52bを設けることにより固形薬剤Cが側壁に接触して溶解が不均一になり、あるいは通路口53と接触して固形薬剤Cにより通路口53が塞がれることを防止するようにした。
【0022】
なお、薬剤収納部52内に常時薬液が溜まり、容器本体2を取り外す際に溜まっている薬液が容器本体2から流出して床等を汚すことを防止するため、隔壁5の下部に水抜き穴を設けることが望ましい。なお水抜き穴の形状は排水口24を塞ぐような粒径の欠片が通過しないようにする必要がある。
【0023】
ところで、上記図2に示したように、薬液は案内部31を伝って壁面TWに流れるが、薬液が流れる範囲を左右に広げる場合には、図5に示すように、壁面TWから浮かせた樋部11とこの樋部11に連なる案内部12とからなる補助具を、薬液供給装置1の下方の左右に配置し、容器本体2から排水される薬液の一部を壁面TWに触れないように樋部11に滴下するようにしてもよい。なお、補助具は幅の狭い案内部12だけで壁面TWに接触しているので洗浄水の流れを阻害することはない。
【0024】
上記取水支持部4の幅寸法も広いと洗浄水が壁面TWに沿って流れなくなる範囲が広がり、洗浄水の流れの勢いによって行われる洗浄効果が低下する。そこで、本発明では取水支持部4の幅寸法を25mm以下にした。なお、狭すぎると取り込む洗浄水の量が減るので、実際には10mmから25mmの間に設定することが望ましい。また、小便器Tの洗浄水の噴出パターンは2種類有り、一方は壁面TWの上部から壁面TWの全域にわたって洗浄水を噴出するもの(シャワー式)と、壁面TWの上部中央から左右に拡がるように洗浄水を噴出するもの(スプレッダー式)がある。
【0025】
本発明による薬液供給装置1は両者共に使用することができるが、シャワー式であれば洗浄水の層厚が薄く、スプレッダー式であれば洗浄水の層厚が厚いという特徴がある。シャワー式であれば取水支持部4の全幅で取水すればよいが、スプレッダー式では取水量が多すぎる場合が生じる。
【0026】
そこで、図6に示すように、取水支持部4の先端に着脱自在のアダプタを取り付けるようにすることが望ましい。シャワー式であれば(a)に示すように取水支持部4の全幅で取水できるようにアダプタ41を取り付け、スプレッダー式であれば(b)に示すように、一部の洗浄水を取水支持部4の下方に逃がすための凹部43を備えたアダプタ42を取り付けるようにすればよい。なお、(b)に示すものでは凹部43を設け、凹部43の両サイドで壁面TWに当接するようにしたが、凹部43の代わりに幅の狭い凸部を形成して、その凸部のみで壁面TWに当接するようにしてもよい。
【0027】
シャワー式のアダプタ41は軟質のプラスチック製として、壁面TWとの接触部を薄い板状に成形することにより壁面TWとの接触を良好にして取水支持部4の幅が狭くても洗浄水を効率よく取り込むことができる。
【0028】
なお、この軟質のアダプタはスプレッダー式のアダプタ42の先端部に被せて使用することにより、シャワー式とスプレッダー式を1つのアダプタで兼用することができる。
【0029】
また、上述のものでは吸盤22で壁面TWに取り付けるようにしたが、図7に示すように、洗浄水の噴出口Hにフック61,62を引っかけて、薬液供給装置1をこれらフック61,62にぶら下げるようにしてもよい。なお、(a)はシャワー式の小便器Tを示し、(b)はスプレッダー式の小便器Tを示している。
【0030】
両フックは金属棒のバネ構造により噴出口Hに取り付けられるが、いたずら等により取り外されないように、バネ構造の根元に、簡単には取り外すことができないよう小型のジグをセットしシャワー式用のフック61ではバネが狭まらないようにし、スプレッダー用のフック62ではバネが拡がらないようにすることが望ましい。
【0031】
また、フック61では洗浄水の噴出口Hの真下に設置されるために、噴出した洗浄水が吊り手に当たって飛散する可能性がある。そこで、噴出口H内に挿入される部分以外は手前側に曲がった構造として、噴出した洗浄水と吊り手が接触しない構造とすることが望ましい。
【0032】
ところで、洗浄水が噴出口Hから勢いよく噴出されると、洗浄水の水流で取水支持部4が下方に押されて、容器本体2が反転する場合が生じる。そこで、図8に示すように、容器本体2の両側に設けた吊り手21用の係合部26の係合穴27を縦長形状にして、容器本体2がある程度傾くとそれ以上傾かないようにした。
【0033】
また、図2に示したものでは支持突起25を形成したが、図9に示すように、3個の排水口24の中央に排水支持部7を形成し、2つの取水支持部4と、この排水支持部7との3点で容器本体2を保持させてもよい。なお、その場合には、排水支持部7の幅寸法を25mm以下にすると共に、両側の排水口24に可撓性を有する案内部71を形成し、薬液がこの案内部71を伝って壁面TWに流れるようにすることが望ましい。
【0034】
また、吸盤ではなくフックで薬液供給装置を吊り下げる際には、引っかけ穴21aがフック63から容易に外れないように、脱落防止用の金具64をフック63に取り付けることが望ましい。この金具64の幅寸法は引っかけ穴21aの内径より若干広く形成されており、そのため、金具64に引っかけ穴21aが干渉して吊り手21をフック63から外すことができない。
【0035】
固形薬剤Cが溶けて補充する際には薬液供給装置1全体を交換することが望ましいが、その際には、ペンチ状の専用工具でつかみ部65を両側から挟み、金具64の幅寸法を縮めればよい。
【0036】
さらに、上記隔壁5は容器本体2に一体に形成したが、図11に示すように、蓋20に一体に形成してもよい。なお、その際には隔壁5のガイド溝2aを容器本体2に形成することが望ましい。また、図12に示すように、取水口23から取水された洗浄水の勢いを緩和するための邪魔板部55を設け、隔壁を設けない構造にすることができる。隔壁がない場合には薬液の一部は洗浄水が流れている最中にも排水口24から流出するが、本発明の容器においてはその流出量が少ないため、洗浄水が流れている場合には勢いのよい洗浄水の流れに乗って濃度は薄いが壁面TWに広く拡散し、洗浄水の流れが終わった後は高濃度の薬液が最も汚れの着きやすい便器の中心部と小便器排水口のトラップ部に溜まることになる利点を有している。
【0037】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】容器本体の形状を示す図
【図3】容器本体内での洗浄水の流れを示す図
【図4】隔壁の細部を示す図
【図5】薬液を左右方向に広げる構造を示す図
【図6】アダプタの形状を示す図
【図7】フックの取り付け方法を示す図
【図8】容器本体の傾斜角度の制限を説明する図
【図9】排水支持部の構造を示す図
【図10】吊り手の脱落防止構造を示す図
【図11】隔壁の他の状態を示す図
【図12】容器本体の他の内部構造を示す図
【符号の説明】
【0039】
1 薬液供給装置
2 容器本体
2a ガイド溝
3 薬液案内部材
4 取水支持部
5 隔壁
7 排水支持部
23 取水口
24 排水口
51 流水通路部
52 薬剤収納部
71 案内部
C 固形薬剤
T 小便器
TW 壁面
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器の壁面に取り付けられ、壁面に沿って洗浄水が流される毎に洗浄液やその他の薬液を便器側に排水する小便器用薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置として、例えば下方に向かってすぼまる容器本体の下部に排水口を設け、更に容器本体内に水溶性の固形薬剤を収納し、状便器の壁面に沿って洗浄水が流れ落ちると、洗浄水の一部を容器本体に取り込んで薬液を生成し、洗浄水の流れが弱まった後に薬液を排水口から排水するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−247256号公報(図2,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
容器本体に収納されている固形薬剤は洗浄水に溶解する際に砕けて微細な欠片が生じる場合がある。上記従来のものでは容器本体の形状が下方に向かってすぼまっているので、このように固形薬剤の欠片が生じると、排出口に向かって欠片が移動し、排水口を塞ぐおそれが生じる。
【0004】
薬液は洗浄水の流れが収まってから所定時間かけて徐々に排水することが望ましいが、このように排水口が塞がれると、薬液の排出速度が大幅に変化するという不具合が生じる。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、固形薬剤が砕けて欠片が生じても排水口を塞ぐことなく望ましい速度で薬液を排水することのできる小便器用薬液供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明による小便器用薬液供給装置は、小便器の壁面に取り付けられ、この壁面に沿って上方から流れてくる洗浄水を内部に取り込む取水口を上部または側面に備えた容器本体を有し、容器本体の内部に取り込まれた洗浄水に溶解して薬液を生成する薬剤を収納する薬剤収納部を容器本体に設けると共に、生成された薬液を排水する排水口を容器本体の下部に形成した小便器用薬液供給装置において、容器本体内の薬液の80%を排出するのに要する時間が10秒以上になるように排水速度を設定したことを特徴とする。
【0007】
容器本体内の薬液の80%とは空の状態の容器本体の排水口を閉じた状態で取水口から洗浄水を取り込み、最大水量となった後に排水口を開放した場合に排水される洗浄水の80%に相当する水量である。80%の薬液排出時間を10秒以上、好ましくは15秒以上とすることにより、洗浄水の流れが停止し洗浄水の配管内に残留した洗浄水が完全に流れ終わった後に薬液を排水することが可能になり、効果的に薬液の効能である小便器の壁面や排水トラップ部の洗浄効果や消臭効果を発揮させることができる。
【0008】
そして、上記排水速度は排水口の大きさで設定すると共に、取水口から排水口に至る流水通路に対して薬剤収納部を仕切る隔壁を設け、隔壁に開口部を形成し、この開口部の形状を、排水口を通過できない粒径の固体物を薬剤収納部側から流水通路側へ移動させない形状にする。
【0009】
薬剤の欠片が生じても開口部によって欠片が止められ薬剤収納部側から流水通路側へ移動しない。
【0010】
更に、上記隔壁に形成する開口部を、容器本体の底面から所定の高さに設けると、欠片が薬剤収納部の底に滞留して薬剤収納部側から流水通路側への移動防止効果が向上する。
【0011】
薬剤の比重が水の比重より重い場合には薬剤の破片は底に沈むため、流水通路と薬剤収納部との間に明確な隔壁がない容器の場合は、薬剤収納部と排水口との間に堰を設け、欠片が薬剤収納部から排水口に向かって移動しないようにすることができる。なお、堰によって薬剤収納部側に薬液が残ると、容器本体を取り外す際に、容器本体内に残っている薬液が床等にこぼれて床を汚すといった不具合が生じる。そこで、堰の一部に底面に達するスリット等の水抜きを設けておくことが望ましい。ただし、水抜きの形状は排水口より大きな粒径の欠片が通過しないようにすることが必要である。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、薬剤収納部で薬剤の欠片が生じたとしても薬剤収納部から流水通路側に移動しないので、排水口を欠片が塞ぐことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、Tは小便器である。なお、本図に示した小便器Tは床に接した状態で設置される、上下方向の寸法が長いタイプであるが、床から離して設置される比較的上下寸法の短いタイプの小便器にも適用することができる。この小便器Tの壁面TWに本発明による小便器用薬液供給装置(以下、薬液供給装置という)1が取り付けられる。
【0014】
図2を参照して、樹脂製の容器本体2にはコ字状の吊り手21が取り付けられており、この吊り手21の中央には吸盤22が設けられており、この吸盤22で上記壁面TWに取り付けられる。容器本体の上部には左右2箇所に取水口23が開設されている。この取水口から洗浄水を取り込み、後述する薬剤が溶解した薬液を生成して排水口24から排水する。本実施の形態では、容器本体2の下部に3箇所の排水口24を設けた。なお、26は洗浄水を取り込みすぎた場合にオーバーフローさせる溢水口である。
【0015】
取水口23には、この取水口23に洗浄水を導く取水支持部4が形成されている。容器本体2を小便器Tに取り付けると、この取水支持部4の先端が壁面TWに当接し、更に支持突起25が壁面TWに当接する。このように3点で壁面TWに当接するので、容器本体2はがたつくことなく、安定した姿勢で壁面TWに設置される。
【0016】
取水支持部4の先端が壁面TWに当接するので、その状態で壁面TWに沿って洗浄水が流されると、洗浄水の一部が取水支持部4を通って取水口23に導かれ、取水口23から容器本体2内へ取り込まれる。一方、容器本体2の下部には薬液案内部材3が取り付けられている。この薬液案内部材3には可撓性に優れたフィルム状の案内部31が形成されている。この案内部31は支持突起25の先端よりも更に長く突出しているので、容器本体2を壁面TWに取り付けると案内部31の先端は壁面TWに当接し、更に図3に示すように曲がることになる。
【0017】
図3に示すように、容器本体2内には隔壁5が設けられており、この隔壁5によって容器本体2内が流水通路部51と薬剤収納部52とに区画されている。図示のように、取水支持部4から取水口23を通って取り込まれた洗浄水は流水通路部51を通って排水口24から排水される。ただし、隔壁5には通路口53が形成されているので、取水口23からの洗浄水の取り込み量が多い状態では、洗浄水の一部が流水通路部51から薬剤収納部52へと流れ込む。
【0018】
薬剤収納部52には水溶性の固形薬剤Cが予め収納されており、薬剤収納部52に洗浄水が流入すると、固形薬剤Cの一部が洗浄水に溶解して薬液が生成される。取水口23から取り込まれる洗浄水の量が減少すると、逆に薬剤収納部52内の薬液が通路口53を通って流水通路部51側に流出し、排水口24から容器本体2の外部へと排水される。排水された薬液は上述のように、案内部31を伝って壁面TWに流れる。
【0019】
ところで、通路口53は図4に示すように、排水口24が通過できないような粒径の固形物が薬剤収納部52から流水通路部51側に流出しない大きさに形成されている。洗浄水の流れが弱まり、取水口23から取り込まれる洗浄水の量が所定量まで減少すると、上述のように薬液の排水が始まるが、薬液の排水は所定時間以上継続することが望ましい。本発明では、薬剤収納部52で生成された薬液の80%が流出するまでに10秒以上かかるようにした。具体的には、排水口24の大きさを小さくすることにより薬液の排水速度を減速している。ところが、排水口24の大きさを小さくすると、例えば砕けた固形薬剤Cが排水口24より大きくて排水口24を塞ぐと、薬液の排水速度が大幅に変化するという不具合が生じる。
【0020】
そこで、上述のように、そのような大きさの固形薬剤Cの欠片が流水通路部51に流出しないようにした。なお、固形薬剤Cの欠片が発生しても薬剤収納部52内に留まりやすいように、通路口53を容器本体2の底面より高く設け、通路口53の下部に無口部54を設けた。このように無口部54を設けることにより、固形薬剤Cの欠片が生じても、無口部54で堰き止められ、薬剤収納部52内に留まり、次に洗浄水が流れ込んだ際に溶解しやすいようにした。
【0021】
薬剤収納部の底には堰き止められた薬液と固形薬剤とが長時間接触することを防止するため通路口53の底辺より高い薬剤保持部52aを設けることが望ましい。また、側面にも薬剤保持部52bを設けることにより固形薬剤Cが側壁に接触して溶解が不均一になり、あるいは通路口53と接触して固形薬剤Cにより通路口53が塞がれることを防止するようにした。
【0022】
なお、薬剤収納部52内に常時薬液が溜まり、容器本体2を取り外す際に溜まっている薬液が容器本体2から流出して床等を汚すことを防止するため、隔壁5の下部に水抜き穴を設けることが望ましい。なお水抜き穴の形状は排水口24を塞ぐような粒径の欠片が通過しないようにする必要がある。
【0023】
ところで、上記図2に示したように、薬液は案内部31を伝って壁面TWに流れるが、薬液が流れる範囲を左右に広げる場合には、図5に示すように、壁面TWから浮かせた樋部11とこの樋部11に連なる案内部12とからなる補助具を、薬液供給装置1の下方の左右に配置し、容器本体2から排水される薬液の一部を壁面TWに触れないように樋部11に滴下するようにしてもよい。なお、補助具は幅の狭い案内部12だけで壁面TWに接触しているので洗浄水の流れを阻害することはない。
【0024】
上記取水支持部4の幅寸法も広いと洗浄水が壁面TWに沿って流れなくなる範囲が広がり、洗浄水の流れの勢いによって行われる洗浄効果が低下する。そこで、本発明では取水支持部4の幅寸法を25mm以下にした。なお、狭すぎると取り込む洗浄水の量が減るので、実際には10mmから25mmの間に設定することが望ましい。また、小便器Tの洗浄水の噴出パターンは2種類有り、一方は壁面TWの上部から壁面TWの全域にわたって洗浄水を噴出するもの(シャワー式)と、壁面TWの上部中央から左右に拡がるように洗浄水を噴出するもの(スプレッダー式)がある。
【0025】
本発明による薬液供給装置1は両者共に使用することができるが、シャワー式であれば洗浄水の層厚が薄く、スプレッダー式であれば洗浄水の層厚が厚いという特徴がある。シャワー式であれば取水支持部4の全幅で取水すればよいが、スプレッダー式では取水量が多すぎる場合が生じる。
【0026】
そこで、図6に示すように、取水支持部4の先端に着脱自在のアダプタを取り付けるようにすることが望ましい。シャワー式であれば(a)に示すように取水支持部4の全幅で取水できるようにアダプタ41を取り付け、スプレッダー式であれば(b)に示すように、一部の洗浄水を取水支持部4の下方に逃がすための凹部43を備えたアダプタ42を取り付けるようにすればよい。なお、(b)に示すものでは凹部43を設け、凹部43の両サイドで壁面TWに当接するようにしたが、凹部43の代わりに幅の狭い凸部を形成して、その凸部のみで壁面TWに当接するようにしてもよい。
【0027】
シャワー式のアダプタ41は軟質のプラスチック製として、壁面TWとの接触部を薄い板状に成形することにより壁面TWとの接触を良好にして取水支持部4の幅が狭くても洗浄水を効率よく取り込むことができる。
【0028】
なお、この軟質のアダプタはスプレッダー式のアダプタ42の先端部に被せて使用することにより、シャワー式とスプレッダー式を1つのアダプタで兼用することができる。
【0029】
また、上述のものでは吸盤22で壁面TWに取り付けるようにしたが、図7に示すように、洗浄水の噴出口Hにフック61,62を引っかけて、薬液供給装置1をこれらフック61,62にぶら下げるようにしてもよい。なお、(a)はシャワー式の小便器Tを示し、(b)はスプレッダー式の小便器Tを示している。
【0030】
両フックは金属棒のバネ構造により噴出口Hに取り付けられるが、いたずら等により取り外されないように、バネ構造の根元に、簡単には取り外すことができないよう小型のジグをセットしシャワー式用のフック61ではバネが狭まらないようにし、スプレッダー用のフック62ではバネが拡がらないようにすることが望ましい。
【0031】
また、フック61では洗浄水の噴出口Hの真下に設置されるために、噴出した洗浄水が吊り手に当たって飛散する可能性がある。そこで、噴出口H内に挿入される部分以外は手前側に曲がった構造として、噴出した洗浄水と吊り手が接触しない構造とすることが望ましい。
【0032】
ところで、洗浄水が噴出口Hから勢いよく噴出されると、洗浄水の水流で取水支持部4が下方に押されて、容器本体2が反転する場合が生じる。そこで、図8に示すように、容器本体2の両側に設けた吊り手21用の係合部26の係合穴27を縦長形状にして、容器本体2がある程度傾くとそれ以上傾かないようにした。
【0033】
また、図2に示したものでは支持突起25を形成したが、図9に示すように、3個の排水口24の中央に排水支持部7を形成し、2つの取水支持部4と、この排水支持部7との3点で容器本体2を保持させてもよい。なお、その場合には、排水支持部7の幅寸法を25mm以下にすると共に、両側の排水口24に可撓性を有する案内部71を形成し、薬液がこの案内部71を伝って壁面TWに流れるようにすることが望ましい。
【0034】
また、吸盤ではなくフックで薬液供給装置を吊り下げる際には、引っかけ穴21aがフック63から容易に外れないように、脱落防止用の金具64をフック63に取り付けることが望ましい。この金具64の幅寸法は引っかけ穴21aの内径より若干広く形成されており、そのため、金具64に引っかけ穴21aが干渉して吊り手21をフック63から外すことができない。
【0035】
固形薬剤Cが溶けて補充する際には薬液供給装置1全体を交換することが望ましいが、その際には、ペンチ状の専用工具でつかみ部65を両側から挟み、金具64の幅寸法を縮めればよい。
【0036】
さらに、上記隔壁5は容器本体2に一体に形成したが、図11に示すように、蓋20に一体に形成してもよい。なお、その際には隔壁5のガイド溝2aを容器本体2に形成することが望ましい。また、図12に示すように、取水口23から取水された洗浄水の勢いを緩和するための邪魔板部55を設け、隔壁を設けない構造にすることができる。隔壁がない場合には薬液の一部は洗浄水が流れている最中にも排水口24から流出するが、本発明の容器においてはその流出量が少ないため、洗浄水が流れている場合には勢いのよい洗浄水の流れに乗って濃度は薄いが壁面TWに広く拡散し、洗浄水の流れが終わった後は高濃度の薬液が最も汚れの着きやすい便器の中心部と小便器排水口のトラップ部に溜まることになる利点を有している。
【0037】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】容器本体の形状を示す図
【図3】容器本体内での洗浄水の流れを示す図
【図4】隔壁の細部を示す図
【図5】薬液を左右方向に広げる構造を示す図
【図6】アダプタの形状を示す図
【図7】フックの取り付け方法を示す図
【図8】容器本体の傾斜角度の制限を説明する図
【図9】排水支持部の構造を示す図
【図10】吊り手の脱落防止構造を示す図
【図11】隔壁の他の状態を示す図
【図12】容器本体の他の内部構造を示す図
【符号の説明】
【0039】
1 薬液供給装置
2 容器本体
2a ガイド溝
3 薬液案内部材
4 取水支持部
5 隔壁
7 排水支持部
23 取水口
24 排水口
51 流水通路部
52 薬剤収納部
71 案内部
C 固形薬剤
T 小便器
TW 壁面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器の壁面に取り付けられ、この壁面に沿って上方から流れてくる洗浄水を内部に取り込む取水口を上部または側面に備えた容器本体を有し、容器本体の内部に取り込まれた洗浄水に溶解して薬液を生成する薬剤を収納する薬剤収納部を容器本体に設けると共に、生成された薬液を排水する排水口を容器本体の下部に形成した小便器用薬液供給装置において、容器本体内の薬液の80%を排出するのに要する時間が10秒以上になるように排水速度を設定したことを特徴とする小便器用薬液供給装置。
【請求項2】
上記排水速度は排水口の大きさで設定すると共に、取水口から排水口に至る流水通路に対して薬剤収納部を仕切る隔壁を設け、隔壁に開口部を形成し、この開口部の形状を、排水口を通過できない粒径の固体物を薬剤収納部側から流水通路側へ移動させない形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項3】
上記隔壁に形成する開口部を、容器本体の底面から所定の高さに設けたことを特徴とする請求項2に記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項1】
小便器の壁面に取り付けられ、この壁面に沿って上方から流れてくる洗浄水を内部に取り込む取水口を上部または側面に備えた容器本体を有し、容器本体の内部に取り込まれた洗浄水に溶解して薬液を生成する薬剤を収納する薬剤収納部を容器本体に設けると共に、生成された薬液を排水する排水口を容器本体の下部に形成した小便器用薬液供給装置において、容器本体内の薬液の80%を排出するのに要する時間が10秒以上になるように排水速度を設定したことを特徴とする小便器用薬液供給装置。
【請求項2】
上記排水速度は排水口の大きさで設定すると共に、取水口から排水口に至る流水通路に対して薬剤収納部を仕切る隔壁を設け、隔壁に開口部を形成し、この開口部の形状を、排水口を通過できない粒径の固体物を薬剤収納部側から流水通路側へ移動させない形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の小便器用薬液供給装置。
【請求項3】
上記隔壁に形成する開口部を、容器本体の底面から所定の高さに設けたことを特徴とする請求項2に記載の小便器用薬液供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−70965(P2010−70965A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238785(P2008−238785)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】
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