説明

小便器

【課題】
使用する人の体格によって適切な的の位置を示すと共に、使用者に飽きさせることなく尿飛散防止効果を維持し、合わせて長期間の動作信頼性を確保することを可能とする。
【解決手段】
本発明では、小便の受け面である後壁面を有する小便器において、前記後壁面には、光透過可能な複数の標的部と、前記標的部の背面に設けられた発光手段と、少なくとも1つ以上の人体検出手段と、前記人体検出手段の検出結果に基づき使用者の身長を判別する身長判別手段とを有し、前記身長判別手段の判別結果に基づき、前記標的部の1つ以上を発光させることをを特徴とする小便器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器からの尿飛散をの防止を目的として、使用者の身長を配慮して放尿すべき位置を指し示すと共に、慣れを防止することに係り、特に色々な年齢構成の方が長期間に渡って継続使用しても、導入時と同じ尿飛散防止効果を持続させることに好適な小便器の尿飛散防止システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の小便器では、小便器周囲への尿飛散が抑制される放尿位置を知らしめるために、弓矢の的やそれに変わる何かしらの的を焼付け、プリント、貼り付けした小便器が存在している。
このような場合、身長を配慮した放尿位置を明確に指示できないため、使用者は放尿位置に対して無理をして背伸びするようなことがあった。そのため、背の高さに応じて、放尿位置を選択できるように複数の的を連続的に形成したもののあった。(例えば、特許文献1参照。)。これらは、常に同一のマーキングであることから、導入当初は目的の尿飛散防止効果があっても、継続的に使用すると使用者に慣れが生じて、当初と同じように尿飛散する状態に戻ってしまうというの問題があった。
【0003】
また、使用者の慣れを防止するために、小便器の接尿面に電極を配して、音階を発生させる小便器もある(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、この場合も電解質を含む尿やトイレ用洗剤との接触によって電極に腐食が発生しやすく、メンテナンスフリーが求められるトイレ機器としては、長期間の信頼性が確保できないという問題があった。
【0004】
また、被尿に伴う電装部品の信頼性を確保し、マーキングによる慣れを抑制し、かつ、放尿位置を示す的の自由度を増すものとして、的を投影する小便器もある(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、この場合も床面を介した被尿や清掃の水に対する配慮や、投影手段を設ける必要のある床面への施工負荷など、長期間の信頼性と簡便な施工性が確保できないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】実開平02−062978号公報
【特許文献2】特開2002−201699号公報
【特許文献3】特開2002−276010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、小便器を使用する人の体格によって適切な放尿的の位置を示すと共に、使用者に飽きさせることなく尿飛散防止効果を維持し、合わせて長期間の動作信頼性を確保することのできる小便器を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明によれば、小便の受け面である後壁面を有する小便器において、
前記後壁面には、光透過可能な複数の標的部と、
前記標的部の背面に設けられた発光手段と、
少なくとも1つ以上の人体検出手段と、
前記人体検出手段の検出結果に基づき使用者の身長を判別する身長判別手段とを有し、
前記身長判別手段の判別結果に基づき、前記標的部の1つ以上を発光させることをを特徴とする。
本発明によれば、通常は、普通の小便器と同じ外観であるが、小便器を使用する際に、小便器を使用する人の身長と放尿位置の衝突角度を配慮して、最も効果的適切な放尿的の位置が発光させることができるため、使用者は、自分の身長にあった放尿的を認識することが可能であると共に、発光手段は、小便器内方に配置されているため尿や清掃時の洗浄液に触れることが無いので、発光手段等の機能部がそれらによって劣化することを防止でき、長期間の動作信頼性を確保できる。
【0008】
また、本発明の好ましい態様として、前記人体検知手段は、光電センサからなり投光位置が上下動可能に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、1つのセンサにて、身長を細かく認識できるため、標的部の位置を細かく設定可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、前記標的部の肉厚が他の部分より薄く形成されていることにより、光を透過しにくい小便器の材質であっても、発光手段からの光を透過できるようにできる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様として、小便の受け面である後壁面を有する小便器において、前記後壁面には、光透過可能な複数の標的部と、前記標的部の背面に設けられた発光手段と、少なくとも1つ以上の人体検出手段と、前記人体検出手段の検出結果に基づき使用者の身長を判別する身長判別手段と、前記小便の尿流を検出する尿流検出手段とを有し、前記身長判別手段の判別結果に基づき、前記標的部を発光させると共に前記尿流検出手段の検出値に応じて標的部の発光パターンを変更することをを特徴とする。
本発明によれば、通常は、普通の小便器と同じ外観であるが、小便器を使用する際に、小便器を使用する人の身長と放尿位置の衝突角度を配慮して、最も効果的適切な放尿的の位置が発光させることができるため、使用者は、自分の身長にあった放尿的を認識することが可能であると共に、発光手段は、小便器内方に配置されているため尿や清掃時の洗浄液に触れることが無いので、発光手段がそれらによって劣化することを防止でき、長期間の動作信頼性を確保できる。また、使用者の尿流の流速によって発光パターンを変更することができるので、使用者に放尿位置に対する興味をその都度与えることができ、飽きのこない放尿的を有する小便器を提供できる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様として、前記尿流検出手段は、人体検出を同時に行うことを特徴とする。
本発明によれば、人体検出を同時に行わせることにより、人体検出手段の数を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、体格差を配慮した適切な姿勢での排尿の実現と、尿飛散防止効果を両立し、かつ、継続的な使用で飽き勝ちである使用者の特性に配慮すると共に、排尿位置の視認確認性を向上させる構成を示すことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施例であるストール小便器の外観を示す正面図である。ストール小便器10の後壁部22表面であって、小便跳ねの少ない領域に対して、使用者の背の高さに応じた適正な標的部26と28が設けられている。なお、標的部は、詳細を後述するように、外観からは、見えないよう小便器の内部に設置されている。使用者の背の高さは、小便器の上方に設けられた人体検出手段11に基づいて、後述の身長判別手段12で検出する。前記標的部として、本実施例は2ヵ所を明示しているが、個数は2ヵ所に限るものではない。使用者の身長、想定される陰茎位置、および、ストール小便器10の後壁部22の形状的に飛散が少ない領域を勘案して、標的部は数を変更することが可能である。なお標的部の数を変更する場合は、後述の身長判別手段も対応する数だけ身長を判別する必要がある。
【0014】
図2は、本発明の一実施例であるストール小便器の断面図である。前記標的部26と28は後壁部22に設けられると共に、対応する発光手段36と38が設けられている。発光手段としては、省電力で輝度が高く、コンパクトな発光ダイオード(LED)が推奨されるが、他の方法であっても良い。一般的に小便器は陶器製であるが、後壁部22を局部的に薄肉とすることで、薄肉部では、光を透過し、それ以外の部分では、周囲に光が漏れないようになっている。電装部品である発光手段は陶器の壁を介して導電性・腐食性を持つ尿や洗浄水から絶縁されており、長期間の動作信頼性が得られるように配慮されている。
また、後壁部22の背面には、小便器の後壁部22の表面にその有無がわからないように尿流検出手段60も配置されているが、その説明の詳細は、後述する。
【0015】
ストール小便器10の上方には、身長判別手段12として第一の人体検出手段14と第二の人体検出手段16が設けられている。上向の第一の人体検出手段14が検出している場合は高身長の使用者であり、上向の第一の人体検出手段14の検出が無く、下向きの第二の人体検出手段16のみが検出している場合は低身長の使用者を検出していることになる。標的部の中から背の高さに応じた適正な標的部が選択されることになる。人体検出手段11としては、例えば、赤外線を利用した光電スイッチを利用している。なお、人の存在の有無を検知できるものであれば、超音波センサーなどその他のセンサも利用できる。
なお、本実施例では、複数の人体検知手段の検知有無の組合せによって、身長を判別したが、1つの人体検知手段を非検知状態での上向きから下向き方向に移動可能に駆動できるようにし、人体検知手段が、人体を検知した位置(例えば、光電スイッチでは、可視、不可視光線の反射または遮光のいずれかによって人体を検出した位置)までの移動量を把握できるようにし、その移動量の複数の閾値を持っておき、その閾値によって身長を判別するようにしても良い。閾値によって判別された身長によって標的部の発光位置を決め発光させれば良い。
【0016】
次に、上記した構成に基づいて、小便器の使用動作について説明する。
小便器を利用しようとする使用者が小便器に近接すると人体検知手段11が、起動しその存在を検知する。上記したように人体検知手段は、上向の第一の人体検出手段14が検出している場合は高身長の使用者であり、上向の第一の人体検出手段14の検出が無く、下向きの第二の人体検出手段16のみが検出している場合は低身長の使用者を検出していることになるので、その状態を身長判別手段12が、判断し、その身長にあった標的部の発光手段を点灯させる。使用者が小便を済ませて人体検知手段11の検知範囲から遠ざかったことを確認することで、図示しない洗浄手段によって小便器が洗浄される。
【0017】
次に、図2に表記された尿流検出手段を用いた実施形態について説明する。
排泄された尿は、後壁部22とトラップ40を介して排水配管50に流出するが、後壁部22の背面には、尿流を検出する尿流検出手段60が設けられている。尿流検出手段としてはマイクロ波を利用したドップラーセンサーが推奨される。マイクロ波は、陶器を透過するため、センサは陶器を介して小便器内方に設置できるため、小便器の後壁部の表面に汚れの温床となる凹凸を形成することなく、意匠性の優れたものとなる。このように電装部品である尿流検出手段は陶器を透過してセンシングできるため、陶器の壁を介して導電性・腐食性を持つ尿や洗浄水から絶縁されており、長期間の動作信頼性が得られるように配慮されている。マイクロ波を利用したドップラーセンサーは動きを検出できるため、放尿した尿の流れの速さに合わせて発光手段を明滅させるなどの配慮が可能であり、発光パターンのバリエーションによって、使用者の慣れを防止し、使用者に飽きさせることなく尿飛散防止効果を維持することが可能である。
なお、尿流量検出手段として用いたドップラーセンサーは、比較的広範囲の人体検知をできることから、身長の高低にかかわらず人体の検知が可能であり、洗浄手段の動作を尿流量検出手段の検知の有無にて行わせるようにしても良い。また、このように人の有無判定が適切にできるので、尿流量検出手段を人体検知手段として利用し、図2に示す第1の人体検出手段14との併用で、尿流量検出手段で検知、第1の人体検出手段で検知の場合に高身長の使用者、尿流量検出手段で検知、第1の人体検出手段で非検知の場合に低身長の使用者と判別するようにして利用しても良い。
【0018】
図3は、本発明のシステムブロック図である。制御部100には、尿流検出手段60、身長判別手段12に連結されたn個の人体検出手段、および、発光パターン創成手段32に連結されたn個の発光手段が内蔵されている。発光パターン創成手段32は、尿流検出手段60の検出内容に相応した、発光手段の明滅パターンを創成する。70は、小便器を洗浄する洗浄手段70である。
【0019】
図4は、標的部の断面図である。一般的に陶器製小便器の肉厚は約10mmであるが、局部的に3mm程度まで薄肉化している。薄肉部の厚みについては、可視光域の透過率が10%以上あることで、発光源に対して視認が可能となるので、材質等によって適宜調整すれば良く、逆に薄肉部とそれ以外の部分については、可視光が通らないようにすることで、標的部の輪郭が明確にしめすことで可能となる。なお、意匠上輪郭をぼかしたい場合には、薄肉部の輪郭部分の肉厚を傾斜させるようにして徐々に厚く変化させても良い。加工方法としては、陶器を焼成成形した後に研削する方法、焼成前にえぐり加工する方法、および、穴を開けた後で薄肉の別体部材を接着する方法などがあるが、加工方法に左右されることは無く、素材の条件と焼成の条件などを総合的に勘案して加工方法は選択してよい。また、発光手段は、LEDのほか、電球や光ファイバーにより誘導された光源を使用し、極力小便器の壁面に近接して設置することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例であるストール小便器の外観を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施例であるストール小便器の断面図である。
【図3】本発明のシステムブロック図である。
【図4】本発明の標的部の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10…ストール小便器
11…人体検出手段
12…身長判別手段
14…第一の人体検出手段
16…第二の人体検出手段
22…後壁部
26・28…標的部
32…発光パターン創成手段
36・38…発光手段
40…トラップ
50…排水配管
60…尿流検出手段
70…洗浄手段
100…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便の受け面である後壁面を有する小便器において、
前記後壁面には、光透過可能な複数の標的部と、
前記標的部の背面に設けられた発光手段と、
少なくとも1つ以上の人体検出手段と、
前記人体検出手段の検出結果に基づき使用者の身長を判別する身長判別手段とを有し、
前記身長判別手段の判別結果に基づき、前記標的部の1つ以上を発光させることを特徴とする小便器。
【請求項2】
前記人体検知手段は、光電センサからなり投光位置が上下動可能に配置されていることを特徴とする請求項1記載の小便器。
【請求項3】
前記投光位置の移動量に基づいて身長判別出段により判別することを特徴とする請求項2記載の小便器。
【請求項4】
前記標的部の肉厚が他の部分より薄く形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の小便器。
【請求項5】
小便の受け面である後壁面を有する小便器において、
前記後壁面には、光透過可能な複数の標的部と、
前記標的部の背面に設けられた発光手段と、
少なくとも1つ以上の人体検出手段と、
前記人体検出手段の検出結果に基づき使用者の身長を判別する身長判別手段と、
前記小便の尿流を検出する尿流検出手段とを有し、
前記身長判別手段の判別結果に基づき、前記標的部を発光させると共に前記尿流検出手段の検出値に応じて標的部の発光パターンを変更できることをを特徴とする小便器。
【請求項6】
前記尿流検出手段は、人体検出を同時に行う
ことを特徴とする請求項5に記載の小便器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−47987(P2010−47987A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213327(P2008−213327)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】